(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-16
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】動力サイクルシステムにおけるペルフルオロヘプテンの使用
(51)【国際特許分類】
F01K 25/10 20060101AFI20220106BHJP
C09K 5/04 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
F01K25/10 B
C09K5/04 F
C09K5/04 E
C09K5/04 C
C09K5/04 B
C09K5/04 A
C09K5/04 D
(21)【出願番号】P 2018542190
(86)(22)【出願日】2017-02-24
(86)【国際出願番号】 US2017019323
(87)【国際公開番号】W WO2017147400
(87)【国際公開日】2017-08-31
【審査請求日】2020-02-05
(32)【優先日】2016-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515269383
【氏名又は名称】ザ ケマーズ カンパニー エフシー リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コンスタンティノス コントマリス
(72)【発明者】
【氏名】ルーク デイビッド シモーニ
【審査官】吉田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-512991(JP,A)
【文献】国際公開第2015/077570(WO,A1)
【文献】特表2014-529033(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01K 25/10
C09K 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遷移臨界有機ランキンサイクルにおいて熱を機械仕事に変換するためのプロセスであって、
(a) 作動流体の臨界圧を超える圧力に液体作動流体を圧縮して、圧縮された作動流体を形成する工程と、
(b) 前記圧縮された作動流体を、前記熱源によって供給される熱を使用して加熱して、加熱された作動流体を形成する工程と、
(c) 加熱された作動流体を膨張させて機械仕事を発生させ、前記作動流体の前記圧力をその臨界圧より低下させる工程と、
(d) 工程(c)の作動流体を冷却して、冷却された液体作動流体を形成する工程と、
(e) 工程(d)の冷却された液体作動流体を工程(a)に循環させて、前記サイクルを繰り返す工程と、
を含み、
前記作動流体が
2-ペルフルオロヘプテンと3-ペルフルオロヘプテンとの混合物からなることを特徴とする、プロセス。
【請求項2】
前記作動流体が、
20%の2-ペルフルオロヘプテンと
、80%の3-ペルフルオロヘプテンとの混合物からなる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
HFC-245faを含む作動流体が充填された有機ランキンサイクルシステムの前記作動流体を交換する方法であって、
(a)前記有機ランキンサイクルシステムからHFC-245faを含む前記作動流体を排出することと、
(b)
2-ペルフルオロヘプテンと3-ペルフルオロヘプテンとの混合物からなる作動流体で前記ORCシステムを充填することと、
を含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、その開示が全体として参照により本明細書に組み込まれている、2016年2月25日出願の米国仮出願番号62/299,580号の利益を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、一般に動力サイクルシステム、より具体的には、有機ランキンサイクルシステム、より詳細には、このようなシステムにおける有機作動流体の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
有機ランキンサイクル(ORC)システムという名は、かかるシステムが地熱、バイオマス燃焼器、産業廃棄物熱などの低温熱源から熱を捕捉することを可能にする、有機作動流体の使用に由来する。捕捉された熱は、ORCシステムによって機械仕事及び/又は電気に変換され得る。有機作動流体は、水よりも低い沸騰温度を有するなど、気液相変化特質のために選択される。
【0004】
典型的なORCシステムは、熱を吸収して液体有機作動流体を蒸気に蒸発させる蒸発器と、蒸気が膨張するタービンなどの膨張装置と、膨張した蒸気を凝縮させて液体に戻す凝縮器と、サイクルを繰り返すために蒸発器を通して液体作動流体を循環させるコンプレッサ又は液体ポンプと、を含む。有機流体蒸気がタービンを介して膨張すると、それによってタービンが回り、次いで出力シャフトが回転する。回転する出力軸は、機械的エネルギーを生成する又は発電機を回して電気を生成するため、更に機械的リンケージを介して接続されてもよい。
【0005】
有機作動流体は、ORCシステムにおいて、圧縮機を介したほぼ断熱の圧力上昇、蒸発器を介したほぼ等圧の加熱、膨張器内でのほぼ断熱の膨張、及び凝縮器内でのほぼ等圧の熱遮断というサイクルを経る。1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(「R245fa」又は「HFC-245fa」としても知られる)は、低温熱源、非可燃性特質、及びゼロオゾン破壊係数(ODP)との使用に好適な、その熱力学的特性により、ORCシステムで使用する作動流体として一般に選択される。しかし、市販されているほとんどの動力サイクル機器の最大許容作動圧力は約3MPaに制限され、これにより、HFC-245faを作動流体として動作するサイクルの蒸発温度は約145℃未満に制限される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
より広範囲の条件下で熱を捕捉することができ、化学的に安定し、しかも環境にやさしい代替有機作動流体を探すことが継続的に必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
動力サイクルにおいて熱を機械仕事に変換するためのプロセスが提供される。動力サイクルは、作動流体を加圧するのに十分な温度まで、作動流体を熱源で加熱する工程と、加圧した作動流体に機械仕事を実行させる工程と、を含む。作動流体は、2-ペルフルオロヘプテン、3-ペルフルオロヘプテン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるペルフルオロヘプテンを含んでもよい。プロセスは、亜臨界動力サイクル、遷移臨界動力サイクル又は超臨界動力サイクルを利用することができる。
【0009】
ランキンサイクルにおいて熱を機械仕事に変換するためのプロセスが更に提供される。ランキンサイクルは、低温熱源で液体作動流体を気化させる工程と、結果として生じる蒸気を膨張装置によって膨張させて機械仕事を発生させる工程と、結果として生じる膨張蒸気を冷却して蒸気を液体に凝縮させる工程と、液体作動流体を熱源にポンピングしてプロセスを繰り返す工程と、を含む。作動流体は、2-ペルフルオロヘプテン、3-ペルフルオロヘプテン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるペルフルオロヘプテンを含んでもよい。
【0010】
熱を機械仕事に変換するため、HFC-245faを含む作動流体を利用するように構成されている一次ループを有する有機ランキンサイクルシステムが、なお更に提供される。一次ループには、2-ペルフルオロヘプテン、3-ペルフルオロヘプテン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるペルフルオロヘプテンを有する作動流体が充填されてもよい。有機ランキンサイクルシステムはまた、遠隔熱源から一次ループに熱を伝達するように構成されている二次熱交換ループを含んでもよい。二次熱交換ループにはまた、ペルフルオロヘプテンを有する作動流体が充填されてもよい。
【0011】
HFC-245faが充填された有機ランキンサイクルシステムの作動流体を交換する方法が、なお更に提供される。この方法は、ORCシステムからHFC-245faを含む作動流体を排出する工程と、ペルフルオロヘプテンを含む作動流体で任意追加的にORCシステムをフラッシングする工程と、2-ペルフルオロヘプテン、3-ペルフルオロヘプテン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されたペルフルオロヘプテンを有する作動流体でORCシステムを充填する工程と、を含む。
【0012】
2-ペルフルオロヘプテン、3-ペルフルオロヘプテン、及びこれらの混合物などのペルフルオロヘプテンは、HFC-245faと比較した場合、より高い臨界温度とより低い蒸気圧とを有し、より低いGWPを有することが期待される。ペルフルオロヘプテンを含む作動流体は、既存のORCシステム内のHFC-245faの直接交換物として使用され得る。HFC-245faを含む作動流体を2-ペルフルオロヘプテンと3-ペルフルオロヘプテンとの混合物を含む作動流体と交換することによって、ORCシステムのサイクル効率を上げつつ(例えば、1.8%)、最も一般的な商用機器構成部品(例えば、熱交換器)の最大設計圧力をかなり下回るレベルまで、蒸発器の熱交換器の動作圧力を低下させ、作動流体GWPを99.5%超低減させることができると予測される。
【0013】
更に、本発明の特徴及び利点は、非制限例のみとして与えられ、添付図面を参照する、本発明の実施形態に関する以下の発明を実施するための形態を読むことでより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】例示的な有機ランキンサイクルシステムのブロック図である。
【
図2】二次ループシステムを有する例示的な有機ランキンサイクルシステムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
定義
以下に記載される実施形態の詳細に言及する前に、次の用語を定義又は明確化する。
【0016】
「a」又は「an」は、本明細書に記載される要素及び成分を説明するために採用される。これは、単に便宜上、及び本発明の範囲の一般的な意味を与えるためのものである。この記載は、1つ又は少なくとも1つを含むものと解釈されるべきであり、単数形は、別の意味を有することが明白でない限り、複数形も含む。
【0017】
「臨界圧」は、温度がどれだけ変化しても流体が気液相転移しない圧力以上の圧力である。
【0018】
「臨界温度」は、圧力がどれだけ変化しても流体が気液相転移しない温度以上の温度である。
【0019】
「サイクル効率」(熱効率とも呼ばれる)は、動力サイクル(例えば、有機ランキンサイクル)の加熱段階中に作動流体が熱を受ける割合で割った正味のサイクル動力出力である。
【0020】
「地球温暖化係数(GWP)」は、1キログラムの二酸化炭素の排出と比較した、1キログラムの特定の温室効果ガスの大気排出に起因する相対的な地球温暖化への寄与を推定するための指数である。GWPは、様々な対象期間について計算することができ、所与のガスの大気寿命の効果を示す。100年間という対象期間のGWPが、一般的に参照される値である。
【0021】
「低品位熱」は、より小さいエクセルギー密度を有し、有用な仕事に効率よく変換できない低温熱を意味する。温度300℃未満の熱源は、その温度未満では蒸気ランキンサイクルを使用しても熱が効率よく変換されないと見なされるため、低品質熱源と見なされることが概ね理解される。
【0022】
「正味のサイクル動力出力」は、圧縮機(例えば、液体ポンプ)によって消費される機械仕事の割合を差し引いたORCの膨張機(例えば、タービン)における機械仕事の発生の割合である。
【0023】
「標準沸点(NBP)」は、液体の蒸気圧が1/10メガパスカル(1気圧)となる温度である。
【0024】
発電の「体積能力」は、動力サイクル(例えば、有機ランキンサイクル)を通して循環される作動流体の単位体積(膨張機の出口における条件で測定したとき)当たりの正味のサイクル動力出力である。
【0025】
「過冷却」は、液体が、その液体の所定の圧力での飽和温度を下回る温度へ低下することである。飽和温度は、蒸気組成物が完全に液体へと凝縮される温度である(泡立ち点とも呼ばれる)。過冷却は、所定の圧力において、液体をより低温の液体に冷却し続ける。過冷却量は、飽和温度未満の冷却の量(度単位)、又は液体組成物がその飽和温度をどれだけ下回って冷却されるかである。
【0026】
「過熱」とは、蒸気組成物が、蒸気組成物の飽和蒸気温度をどれだけ上回って加熱されるかを定義する用語である。飽和蒸気温度は、蒸気組成物が冷却され、最初に液滴が形成される温度であり、「露点」とも呼ばれる。
【0027】
改善された作動流体を有するORCシステム
図1は、ペルフルオロヘプテンを含む作動流体を用いることにより、熱を有用な機械的動力に変換するための例示的なORCシステム10を示している。ORCシステム10は、閉鎖された作動流体ループ20を介して作動流体を循環させるため、第1の熱交換器40、膨張装置32、第2の熱交換器34、及びポンプ38又は圧縮機38を有する閉鎖された作動流体ループ20を含む。第1の熱交換器40は、ORCシステム10によって比較的低温の熱が捕捉され、シャフトをその長手方向軸周りに回転させるなどの有用な機械仕事に変換される低品質熱源46に直接熱接触してもよい。ORCシステムは、第2の熱交換器34の下流であって圧縮機38又はポンプ38の上流に、任意のサージタンク36を含んでもよい。
【0028】
熱エネルギーは、第1の熱交換器40を介して熱源46から作動流体サイクルに伝達される。加熱された作動流体は、第1の熱交換器40を出て、膨張装置32に入り、そこで膨張した作動流体のエネルギーの一部が機械仕事に変換される。例示的な膨張装置32は、タービンのようなターボ若しくは動的膨張器、又はスクリュー膨張機、スクロール膨張機、ピストン膨張機、及び回転翼膨張機などの容積流量膨張機を含んでもよい。膨張装置を出た膨張及び冷却された作動流体は、第2の熱交換器34に入り、更に冷却される。ポンプ38又は圧縮機38は、第2の熱交換器34の下流及び第1の熱交換器40の上流に位置し、ORCシステム10を介して作動流体を循環させてプロセスを繰り返す。
【0029】
回転シャフトは、所望の速度及び必要なトルクに依存して、ベルト、プーリー、ギア、トランスミッション、又は類似の装置の従来の構成を採用することによって任意の機械仕事を行うために使用することができる。回転シャフトは、誘電発電機などの発電装置30に接続されてもよい。生成される電気は、局所的に用いてもよく、グリッドに送達してもよい。
【0030】
図2は、二次熱交換ループ25’を有するORCシステムを示している。二次熱交換ループ25’は、遠隔源46’から供給熱交換器40’に熱エネルギーを搬送するために使用され得る。遠隔熱源46’からの熱は、二次熱交換器ループ25’を介して循環する伝熱媒体を使用して、供給熱交換器40’に移送される。伝熱媒体は、熱供給熱交換器40’からポンプ42’まで流れ、ポンプによって伝熱媒体は熱源46’まで戻されてサイクルが繰り返される。この構成は、遠隔熱源から熱を除去し、ORCシステム10’に熱を送達する別の手段を提供する。二次熱交換ループ25’の供給熱交換器40’は、
図1のORCシステム10の熱交換器40と同じであってもよいが、二次熱交換ループ25’の伝熱媒体は、ORCシステム10’の作動流体と非接触的に熱連通する。換言すれば、熱は、二次ループ25’の伝熱媒体からORCシステム10’の作動流体に伝達されるが、二次ループの伝熱媒体は、ORCシステム10’の作動流体と混じり合わない。この構成は、二次ループ及びORCシステムで使用するための様々な流体の使用を容易にすることによって可撓性をもたらす。
【0031】
ペルフルオロヘプテンを含む作動流体はまた、二次熱交換ループ流体として使用することができるが、ただし、ループ内の圧力は、ループ内の作動流体の温度において流体の飽和圧以上に維持される。あるいは、ペルフルオロヘプテンを含む作動流体は、熱交換システムで作動流体を蒸発させて、流量を維持するのに十分大きな流体密度差を生じさせる(熱サイホン効果)動作モードで、熱源から熱を抽出するための二次熱交換ループ流体又は熱媒体流体として使用されてもよい。更に、グリコール、ブライン、シリコーン、又は他の本質的に不揮発性の流体などの高沸点流体は、二次ループ構成において顕熱伝達用に使用されてもよい。
【0032】
ペルフルオロヘプテン(Perfluroheptene)を含む作動流体
高圧蒸気駆動(無機)動力サイクルの温度に比べて比較的低温で使用可能な熱を使用して、有機ランキン動力サイクルを介した機械仕事を発生させることができる。ペルフルオロヘプテンを含む作動流体の使用により、動力サイクルは、HFC-245faなどの既知の現在の作動流体の臨界温度より高い温度で、蒸発を介して熱エネルギーを受けることができ、それにより、より高いサイクルエネルギー効率をもたらし得る。「HFC-245fa」は、その化学名1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンでも知られ、HoneywellからEnovate(登録商標)及びGenetron(登録商標)という商標名で市販されている。ペルフルオロヘプテンとしては、2-ペルフルオロヘプテン(CF3CF2CF2CF2CF=CFCF3)及び3-ペルフルオロヘプテン(CF3CF2CF2CF=CFCF2CF3)が挙げられ得、Chemours Company,LLCから入手可能である。ペルフルオロヘプテンは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている、米国特許第5,347,058号に開示されているように、フッ素化オレフィンを製造するためのプロセスにより製造され得る。
【0033】
ペルフルオロヘプテンは、HFC-245faと比較した場合に、より高い臨界温度とより低い蒸気圧とを有し、より低いGWPを有することが期待される。ペルフルオロヘプテンを含む作動流体は、HFC-245faを含む作動流体を利用するように設計された既存のORCシステムにおいて、HFC-245faの直接交換物として使用されてもよい。作動流体は、2-ペルフルオロヘプテン、3-ペルフルオロヘプテン、又はそれらの組み合わせを含み得る。HFC-245faを含む作動流体を、2-ペルフルオロヘプテンと3-ペルフルオロヘプテンとの混合物を含む作動流体と交換すると、ORCシステムのサイクル効率を上げつつ(例えば、1.8%)一般に入手可能な商用機器構成部品(例えば、熱交換器)の最大設計圧力をかなり下回るレベルまで、蒸発器の熱交換器の動作圧力を低下させ、作動流体GWPを99.5%超低減させることができると予測される。
【0034】
改善された作動流体は、2-ペルフルオロヘプテン及び3-ペルフルオロヘプテンからなる群から選択される少なくとも1種のペルフルオロヘプテンを含み得る。表1に示されているように、2-ペルフルオロヘプテン(20%)と3-ペルフルオロヘプテン(80%)(純度:99.20%)との混合物の臨界温度及び圧力は、それぞれ198℃及び1.54MPaである。この混合物の標準沸点は、72.5℃である。2-ペルフルオロヘプテンと3-ペルフルオロヘプテンとの混合物の臨界温度が高いほど、作動流体は、198℃に近づくより高い温度で、凝縮を介して熱を受けることが可能になる。
【0035】
ペルフルオロヘプテンを含む作動流体は、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)、ヒドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)、ヒドロフルオロカーボン(HFC)、ヒドロフルオロエーテル(HFE)、ヒドロフルオロエーテルオレフィン(HFEO)、アルコール、エーテル、ケトン及び炭化水素(HC)からなる群から選択される少なくとも1つの化合物を更に含む。より具体的には、ペルフルオロヘプテンを含む作動流体は、Vertrel(登録商標)Sinera(商標)(Vertrel(登録商標)HFX-110としても知られる、Chemours Co.,Wilmington,Delaware,USAから入手可能なメチルペルフルオロヘプテンエーテル異性体の混合物である)、HFO-153-10mzzy、F22E、HFO-1438mzz(E)、HFO-1438mzz(Z)、HFO-1438ezy(Z)、HFO-1438ezy(E)、HFO-1336ze(Z)、HFO-1336ze(E)、HFO-1336mzz(Z)、HFO-1336mzz(E)、HFO-1234ze(E)、HFO-1234ze(Z)、HFO-1234yf、HCFO-1233zd(Z)、HCFO-1233zd(E)、HFC-43-10mee、HFC-365mfc、HFC-236ea、HFC-245fa、HFE-7000(HFE-347mcc又はn-C3F7OCH3としても知られる)、HFE-7100(HFE-449mccc又はC4F9OCH3としても知られる)、HFE-7200(HFE-569mccc又はC4F9OC2H5としても知られる)、HFE-7300(1,1,1,2,2,3,4,5,5,5-デカフルオロ-3-メトキシ-4-(トリフルオロメチル)-ペンタン又はC7H3F13Oとしても知られる)、HFE-7500(3-エトキシ-1,1,1,2,3,4,4,5,5,6,6,6-ドデカフルオロ-2-トリフルオロメチル-ヘキサン又は(CF3)2CFCF(OC2H5)CF2CF2CF3としても知られる)、ペンタン、ヘキサン、メタノール、エタノール、プロパノール、フルオリノール、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、及びジエトキシエタンからなる群から選択される少なくとも1つの成分を更に含み得る。HFE-7000、HFE-7100、HFE-7200、HFE-7300、及びHFE-7400は、3M(登録商標)からNovec(登録商標)Engineered Fluidsとして市販されている。
【0036】
代替として、改善された作動流体は、2-ペルフルオロヘプテン、3-ペルフルオロヘプテン、及び2-ペルフルオロヘプテンと3-ペルフルオロヘプテンとの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの成分からなり得る。また、別の代替として、作動流体組成物は、2-ペルフルオロヘプテンからなり得る。また、別の代替として、作動流体組成物は、3-ペルフルオロヘプテンからなり得る。また、別の代替として、作動流体組成物は、2-ペルフルオロヘプテンと3-ペルフルオロヘプテンとの混合物からなり得る。
【0037】
上に示されているように、2-ペルフルオロヘプテン(20%)と3-ペルフルオロヘプテン(80%)との混合物(純度:99.20%)の臨界温度は、198℃である。したがって、ペルフルオロヘプテンを含む作動流体は、HFC-245faを含む作動流体用に設計及び構成されているORCシステムが、より高い蒸発温度で熱を抽出し、HFC-245faを含む作動流体の場合より高いエネルギー効率を実現することを可能にする。既存のORCシステムにおけるHFC-245faを含む作動流体を、ペルフルオロヘプテンを含む作動流体と交換して、これらの既存のシステムの効率を上げることができる。
【0038】
亜臨界サイクル
一実施形態では、本発明は、ペルフルオロヘプテンを含む作動流体を使用して、亜臨界動力サイクルを使用することにより、熱を機械仕事へ変換するプロセスに関する。ORCシステムは、作動流体が作動流体の臨界圧より低い圧力で熱を受けた場合に亜臨界サイクルで作動し、作動流体は全サイクルにわたってその臨界圧未満に留まる。このプロセスは、(a)液体作動流体をその臨界圧未満の圧力に圧縮する工程と、(b)工程(a)の圧縮された液体作動流体を、熱源によって供給される熱を使用して加熱し、蒸気作動流体を形成する工程と、(c)膨張装置において工程(b)の蒸気作動流体を膨張させて機械仕事を発生させる工程と、(d)工程(c)の膨張した作動流体を冷却して、冷却された液体作動流体を形成する工程と、(e)工程(d)の冷却された液体作動流体を工程(a)へ循環させて、サイクルを繰り返す工程と、を含む。
【0039】
亜臨界サイクルで動作する場合、ペルフルオロヘプテンを含む作動流体が熱源から熱を吸収する蒸発温度は、約100℃~約190℃、好ましくは約125℃~約185℃、より好ましくは約150℃~約185℃の範囲内である。亜臨界サイクルの典型的な膨張機の入口圧力は、臨界圧未満の約0.25MPa~約0.01MPaの範囲内である。亜臨界サイクルの典型的な膨張機の出口圧力は、約0.01MPa~約0.25MPa、より典型的には約0.04MPa~約0.12MPaの範囲内である。
【0040】
亜臨界サイクル動作の場合、作動流体に供給される熱の大部分は、作動流体の蒸発中に供給される。結果として、作動流体が単一の流体成分からなる場合、又は作動流体が擬似共沸の多成分流体混合物である場合、作動流体の温度は、熱源から作動流体への伝熱の間ずっと本質的に一定である。
【0041】
遷移臨界ランキンサイクル
亜臨界サイクルと対照的に、流体をその臨界圧を超える圧力で相変化することなく等圧加熱したとき、作動流体の温度は変動し得る。したがって、熱源の温度が変動するとき、その臨界圧よりも高い圧力の流体を使用して熱源から熱を抽出することにより、亜臨界熱抽出の場合と比べて、熱源の温度と作動流体の温度とをより一致させることができる。その結果、超臨界サイクル又は遷移臨界サイクルにおける、温度が変動する熱源と、単一成分又は擬似共沸の作動流体との間の熱交換システムの効率は、多くの場合、亜臨界サイクルのものよりも高い(Chen et al,Energy,36,(2011)549~555及びその中における参照文献を参照されたい)。
【0042】
別の実施形態では、本発明は、ペルフルオロヘプテンを含む作動流体を使用して、遷移臨界動力サイクルを使用することにより、熱エネルギーを機械仕事へ変換するプロセスに関する。ORCシステムは、作動流体が作動流体の臨界圧より高い圧力で熱を受ける場合に、遷移臨界サイクルとして動作する。遷移臨界サイクルでは、作動流体は、サイクル全体にわたってその臨界圧より高い圧力には留まらない。このプロセスは、(a)作動流体の臨界圧を超える圧力に液体作動流体を圧縮する工程と、(b)工程(a)の圧縮された作動流体を、熱源によって供給される熱を使用して加熱する工程と、(c)工程(b)の加熱された作動流体を膨張させて、作動流体の圧力をその臨界圧未満に低下させ、機械仕事を発生させる工程と、(d)工程(c)の膨張した作動流体を冷却して、冷却された液体作動流体を形成する工程と、(e)工程(d)の冷却された液体作動流体を工程(a)へ循環させて、サイクルを繰り返す工程と、を含む。
【0043】
上述した遷移臨界動力サイクルシステムの第1の工程において、液相の作動流体は、その臨界圧を超えて圧縮される。第2の工程において、熱交換器が熱源と熱連通している膨張機に作動流体が入る前に、より高温に加熱される熱交換器に当該作動流体を通す。熱交換器は、熱伝達の任意の公知の手段によって熱源から熱エネルギーを受け取る。ORCシステムの作動流体は、熱供給熱交換器を循環し、そこで流体は熱を受け取る。
【0044】
次の工程において、加熱された作動流体の少なくとも一部が熱交換器から取り出され、膨張機に送られ、そこで流体膨張により、作動流体の熱エネルギー含量の少なくとも一部が、シャフトエネルギーなどの機械的エネルギーに変換される。作動流体の圧力を作動流体の臨界圧未満に低下させ、それによって蒸気相作動流体を生成する。
【0045】
次の工程において、作動流体を膨張機から凝縮機に送り、蒸気相作動流体を凝縮させて液相作動流体を生成する。上記工程は、ループシステムを形成し、多数回繰り返してよい。
【0046】
更に、遷移臨界動力サイクルについては、いくつかの異なる動作モードがある。1つの動作モードでは、遷移臨界動力サイクルの第1の工程において、作動流体は、当該作動流体の臨界圧よりも高い圧力に、実質的に等エントロピー的に圧縮される。次の工程において、作動流体は、実質的に一定圧力(等圧)条件下で、その臨界温度よりも高い温度に加熱される。次の工程において、作動流体を、当該作動流体を蒸気相で維持する温度で、実質的に等エントロピー的に膨張させる。膨張の終わりに、作動流体は、その臨界温度以下の温度の過熱蒸気である。このサイクルの最後の工程で、作動流体は冷却され、熱が冷却媒体へ放出されながら凝縮する。この工程中、作動流体は、液体に凝縮される。作動流体は、この冷却工程の最後に過冷却されてもよい。
【0047】
遷移臨界ORC動力サイクルの別の動作モードでは、第1の工程において、作動流体を、当該作動流体の臨界圧よりも高い圧力に、実質的に等エントロピー的に圧縮する。次いで、次の工程において、作動流体は、実質的に一定圧力条件下で、その臨界温度よりも高い温度まで加熱されるが、加熱の程度は、次の工程において作動流体が実質的に等エントロピー的に膨張し、その温度が低下したときに、当該作動流体が、当該作動流体の部分的凝縮又はミスト化が起こり得る飽和蒸気に十分に近くなるような程度までだけである。しかし、この工程の終わりにおいて、作動流体は、依然としてわずかに過熱されている蒸気である。最後の工程で、作動流体は、冷却され、熱が冷却媒体へ放出されながら凝縮される。この工程中、作動流体は、液体に凝縮される。作動流体は、この冷却/凝縮工程の最後において過冷却されてもよい。
【0048】
遷移臨界ORC動力サイクルの別の動作モードでは、第1の工程において、作動流体を、当該作動流体の臨界圧よりも高い圧力に、実質的に等エントロピー的に圧縮する。次の工程において、作動流体は、実質的に一定圧力条件下で、その臨界温度よりも低いか又はほんのわずかに高い温度まで加熱される。この段階では、作動流体の温度は、当該作動流体を次の工程で実質的に等エントロピー的に膨張させるとき、当該作動流体が部分的に凝縮するような温度である。最後の工程で、作動流体は、冷却され、熱が冷却媒体へ放出されながら完全に凝縮する。作動流体は、この工程の最後において過冷却されてもよい。
【0049】
遷移臨界ORCサイクルの上記実施形態は、実質的に等エントロピー膨張及び圧縮、並びに実質的に等圧加熱又は冷却を示すが、このような等エントロピー的又は等圧条件が維持されないが、それにもかかわらず、サイクルが遂行される他のサイクルも、本発明の範囲内である。
【0050】
典型的に遷移臨界ORCの場合、作動流体が熱源から熱を使用して加熱される温度は、約195℃~約300℃、好ましくは約200℃~約250℃、より好ましくは約200℃~225℃の範囲内である。遷移臨界サイクルの典型的な膨張機の入口圧力は、ほぼ臨界圧の1.79MPaから約7MPaまで、好ましくはほぼ臨界圧から約5MPaまで、より好ましくはほぼ臨界圧から約3MPaまでの範囲内である。遷移臨界サイクルの典型的な膨張機の出口圧力は、亜臨界サイクルのその圧力に相当する。
【0051】
超臨界ランキンサイクル
本発明の別の実施形態は、ペルフルオロヘプテンを含む作動流体を使用して、超臨界動力サイクルを使用することにより、熱エネルギーを機械仕事へ変換するプロセスに関する。ORCシステムは、サイクルで使用される作動流体が、サイクル全体にわたるその臨界圧よりも高い圧力にある場合に、超臨界サイクルとして動作する。超臨界ORCの作動流体は、亜臨界又は遷移臨界ORCのような別個の気液二相転移を通過しない。当該方法は、(a)作動流体をその臨界圧よりも高い圧力からより高い圧力に圧縮する工程と、(b)工程(a)の圧縮された作動流体を、熱源によって供給された熱を使用して加熱する工程と、(c)工程(b)の加熱された作動流体を膨張させて、作動流体の圧力をその臨界圧を超える圧力まで低下させ、機械仕事を発生させる工程と、(d)工程(c)の膨張した作動流体を冷却して、その臨界圧を超える冷却された作動流体を形成する工程と、(e)工程(d)の冷却された作動流体を工程(a)へ循環させて圧縮する工程と、を含む。
【0052】
典型的に超臨界サイクルの場合、作動流体が熱源から熱を使用して加熱される温度は、約190℃~約300℃、好ましくは約200℃~約250℃、より好ましくは約200℃~225℃の範囲内である。膨張機における作動流体の圧力は、膨張機の入口圧力から膨張機の出口圧力に向かって低下する。超臨界サイクルの典型的な膨張機の入口圧力は、約2MPa~約7MPa、好ましくは約2MPa~約5MPa、より好ましくは約3MPa~約4MPaの範囲内である。超臨界サイクルの典型的な膨張機の出口圧力は、臨界圧を超える約0.01MPa以内である。
【0053】
低品質熱源
本発明の新規な作動流体は、低圧蒸気、産業廃熱、太陽エネルギー、地熱温水、低圧地熱蒸気(一次又は二次機構)などの比較的低温の熱源、あるいは燃料電池、又はタービン、マイクロタービン、若しくは内燃機関などの原動機を利用する分散型発電装置から抽出されるか又は受け取られる熱から機械仕事を発生させるためのORCシステムにおいて使用することができる。1つの低圧蒸気源は、二流体地熱ランキンサイクルとして知られているシステムであってよい。多量の低温蒸気は、化石燃料動力発電所などの多くの場所で見出すことができる。
【0054】
他の熱源としては、移動内燃機関(例えばトラック若しくは鉄道又は船のディーゼルエンジン)から排出されるガスから回収される廃熱、固定内燃機関(例えば固定ディーゼルエンジン発電機)からの排気ガスからの廃熱、燃料電池からの廃熱、複合冷暖房発電又は地域冷暖房プラントにおいて利用可能な熱、バイオマス燃料のエンジンからの廃熱、バイオガス、埋立地ガス、及び炭層メタンなどの種々の供給源からのメタンで動作する、天然ガス若しくはメタンガスバーナー又はメタン燃焼ボイラー又はメタン燃料電池(例えば、分散発電施設)からの熱、紙/パルプ工場における樹皮及びリグニンの燃焼からの熱、焼却炉からの熱、(「ボトミング」ランキンサイクルを運転するための)従来のスチーム発電所における低圧蒸気からの熱、及び地熱を含む熱源が挙げられる。
【0055】
本発明のランキンサイクルの1つの実施形態では、地上を循環している作動流体に地熱を供給する(例えば、バイナリーサイクル地熱発電所)。本発明のランキンサイクルの別の実施形態では、本発明の新規な作動流体組成物は、ランキンサイクルの作動流体として、及び「熱サイホン効果」として知られている、温度誘導性の流体密度変動によって大規模又は排他的に生じる流れを有する深井戸の地下を循環する地熱媒体として使用される(例えば、Davis,A.P.and E.E.Michaelides:「Geothermal power production from abandoned oil wells」,Energy,34(2009)866~872;Matthews,H.B.U.S.Pat.No.4,142,108-Feb.27,1979を参照されたい)。
【0056】
他の熱源としては、パラボラソーラーパネルアレイなどのソーラーパネルアレイからの太陽熱、集中型太陽光発電所からの太陽熱、高PVシステム効率を維持するためにPVシステムを冷却するために光起電力(PV)ソーラーシステムから取り出された熱が挙げられる。
【0057】
他の実施形態では、本発明はまた、他の種類のORCシステム、例えば、マイクロタービン又は小型容積式膨張機を用いた小規模(例えば1~500kW、好ましくは5~250kW)ランキンサイクルシステム(例えば、Tahir,Yamada and Hoshino:「Efficiency of compact organic Rankine cycle system with rotary-vane-type expander for low-temperature waste heat recovery」,Intl J.of Civil and Environ.Eng 2:1 2010)、複合、多段階、及びカスケードランキンサイクル、並びに膨張機を出た蒸気からの熱を回収するための復熱器を有するランキンサイクルシステムを使用する。
【0058】
他の熱源としては、海運業、精油業者、石油化学プラント、オイル及びガスパイプライン、化学工業、商業ビル、ホテル、ショッピングモール、スーパーマーケット、ベーカリー、食品業界、レストラン、塗料硬化オーブン、家具製造、プラスチック成形業者、セメントキルン、材木キルン、焼成作業、鉄鋼業、硝子工業、鋳造所、製錬、空調、冷凍、及びセントラルヒーティングからなる群から選択される少なくとも1つの業界に関連する少なくとも1つの作業が挙げられる。
【実施例】
【0059】
本明細書に記述される概念について以下の実施例で更に説明するが、これは、特許請求の範囲に記載する本発明の範囲を限定するものではない。
【0060】
(実施例1).
作動流体としてHFC-245faを利用するORCシステムの予測サイクル効率を、作動流体として2-ペルフルオロヘプテンと3-ペルフルオロヘプテンとの混合物を利用するORCシステムの予測サイクル効率と比較した。ORCシステムの最大実現可能作動圧力は約3MPaであること、また、膨張機入口の作動流体のいずれかの温度を160℃に維持できる熱源が使用可能であることが想定された。
【0061】
表1に、亜臨界サイクルで作動流体として利用されたHFC-245faと、20%の2-ペルフルオロヘプテン及び80%の3-ペルフルオロヘプテンを含む混合物(混合純度:99.20%)との比較表を示す。作動流体としてHFC-245faを使用するORCシステムの作動パラメータは、「HFC-245fa」というラベルの列に示されている。作動流体として2-ペルフルオロヘプテン/3-ペルフルオロヘプテンの混合物を使用するORCシステムの作動パラメータは、「2-ペルフルオロヘプテン/3-ペルフルオロヘプテン」というラベルの列に示されている。2-ペルフルオロヘプテン/3-ペルフルオロヘプテンの混合物の実験的に決定した蒸気圧を下の表1Aに示す。
【0062】
【0063】
【0064】
上記実施例は、膨張機入口を160℃に維持するために熱を利用できることを想定している。HFC-245faを用いた蒸発温度は、蒸発器内の圧力が、CRCシステムに対して一般に利用可能な商用機器構成部品(例えば熱交換器)の最大許容設計作動圧力未満に留まることを保証にするため、145℃に制限した。
【0065】
2-ペルフルオロヘプテン/3-ペルフルオロヘプテンの混合物を用いた蒸発圧力は、HFC-245faの蒸発圧力よりも十分低い圧力に留まるため、ORCシステムに対して一般に利用可能な商用機器の最大作動圧力も、HFC-245fa用に設計されたORCシステムに対して一部の管轄区域で必要とされる付加的な安全対策の圧力閾値も超過しない。更に、ペルフルオロヘプテン混合物は、これらの作動パラメータ内で許容される化学的安定性を示すことが期待される。
【0066】
上記の実施例は、2-ペルフルオロヘプテン/3-ペルフルオロヘプテンの混合物を使用すると、HFC-245faを作動流体として使用するように設計されたORCシステムで使用した場合、HFC-245faに比べて1.8%高いサイクル効率を実現しつつ、作動流体GWPを99.5%超低減し得ることを示している。既存のORCシステムにおけるHFC-245faを含む作動流体は、作動流体を排出させ、2-ペルフルオロヘプテン、3-ペルフルオロヘプテン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるペルフルオロヘプテンを含む潤滑剤又は作動流体でORCシステムをフラッシングし、2-ペルフルオロヘプテン、3-ペルフルオロヘプテン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるペルフルオロヘプテンを有する作動流体でORCシステムを充填することによって交換され得る。
【0067】
(実施例2).
表2に、亜臨界サイクルの作動流体として及び遷移サイクルの作動流体として、利用される20%の2-ペルフルオロヘプテン及び80%の3-ペルフルオロヘプテンを含む混合物(混合純度:99.20%)の比較表を示す。膨張機入口温度は220℃に維持されている。
【0068】
【0069】
上の表は、膨張機の入口温度を220℃に維持することができる温度で熱を利用できる場合に、遷移臨界動作では、亜臨界動作の場合よりもサイクル熱効率及びサイクル容積がそれぞれ31.6%及び17.1%高くなることを示している。
【0070】
本発明は、特に、その好ましい実施形態の観点から図示及び説明されているが、特許請求の範囲に記載されている本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、詳細における様々な変更が成立し得ることが、当業者には理解される。