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特許6995053インピーダンス分光法を用いたバイオマスセンサを校正するための方法及び当該方法を実施するための懸濁液の使用
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  • 特許-インピーダンス分光法を用いたバイオマスセンサを校正するための方法及び当該方法を実施するための懸濁液の使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-16
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】インピーダンス分光法を用いたバイオマスセンサを校正するための方法及び当該方法を実施するための懸濁液の使用
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/02 20060101AFI20220106BHJP
   G01N 27/22 20060101ALI20220106BHJP
   C12Q 1/06 20060101ALI20220106BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20220106BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
G01N27/02 E
G01N27/22 B
C12Q1/06
C12M1/00 A
C12M1/34 B
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2018546613
(86)(22)【出願日】2017-03-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-03-28
(86)【国際出願番号】 EP2017054751
(87)【国際公開番号】W WO2017149005
(87)【国際公開日】2017-09-08
【審査請求日】2020-02-20
(31)【優先権主張番号】102016203576.2
(32)【優先日】2016-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501401397
【氏名又は名称】ハミルトン・ボナドゥーツ・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マルレーネ・フランク
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・アルクィント
(72)【発明者】
【氏名】テオ・ガウプ
【審査官】村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】特表昭61-501728(JP,A)
【文献】特表2012-529033(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01085316(EP,A2)
【文献】米国特許出願公開第2008/0312843(US,A1)
【文献】特表平06-504613(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01138758(EP,A1)
【文献】独国特許出願公開第102009007060(DE,A1)
【文献】入交昭彦ほか一名,細胞内オルガネラの誘電分散,生物物理,1984年,Vol.24,No.6,p.50-53
【文献】DEBROS et al.,Cole-Cole,linear and multivariate modeling of capacitance data for on-line monitoring of biomas,BIOPROCESS AND BIOSYSTEMS ENGINEERING,SPRINGER,2009年,Vol.32,No.2,p.161-173
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00-27/10
G01N 27/14-27/24
C12Q 1/06
C12M 1/00-1/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インピーダンス分光法を用いたバイオマスセンサの校正方法であって、前記バイオマスセンサは、電場方向が周期的に変化する電場を用いて、バイオマス内の生細胞の量及び/又は大きさに関する情報を検出するように構成されており、以下のステップ:
-導電性の粘性-流動性又は粘弾性の担体物質と、前記担体物質に受容された導電性の固体粒子、及び/又は、半導体固体粒子とを含み、生細胞又は死細胞又は細胞膜の形態にある生物学的な成分を含まない校正用懸濁液を準備するステップ、
-電場方向が周期的に変化する、前記校正用懸濁液に作用する電場を形成するステップ、
-電場方向変化の異なる周波数の、少なくとも2つの電場において、前記校正用懸濁液の誘電率を表す少なくとも1つずつの誘電率値を検出するステップ、及び、
-検出された前記誘電率値の差分を表す差分値を算定するステップ、を含んでいる校正方法において、さらに以下のステップ:
-前記差分値を、前記校正用懸濁液に割り当てられた基準値と比較するステップ、
を含んでいることを特徴とする校正方法。
【請求項2】
前記電場の形成前又は形成中に、前記校正用懸濁液の、前記バイオマスセンサの少なくとも一部との接触を含むことを特徴とする、請求項1に記載の校正方法。
【請求項3】
前記校正用懸濁液の、前記バイオマスセンサの少なくとも一部との接触が、前記バイオマスセンサの少なくとも1つのセンサ電極、好ましくは全てのセンサ電極を、前記校正用懸濁液で湿らせることを含むことを特徴とする、請求項2に記載の校正方法。
【請求項4】
例えば前記校正用懸濁液の攪拌及び/又は振とうによる、前記校正用懸濁液の均質化のステップを含むことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の校正方法。
【請求項5】
前記校正用懸濁液の均質化のステップが、前記誘電率値の検出の前、好ましくは直前に実施されることを特徴とする、請求項4に記載の校正方法。
【請求項6】
前記誘電率値が、50kHzより低くない、好ましくは110kHzより低くない、特に好ましくは250kHzより低くない、かつ、110MHzより高くない、好ましくは50MHzより高くない、特に好ましくは30MHzより高くない周波数において検出され、これらの境界値もそれぞれ含まれていることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の校正方法。
【請求項7】
前記差分値と前記基準値との比較の結果に応じた、前記バイオマスセンサ、又は、前記バイオマスセンサと信号が伝達されるように連結されたデータ処理装置の調整を含むことを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の校正方法。
【請求項8】
バイオマス内の生細胞の量及び/又は大きさに関する情報を、インピーダンス分光法を用いて検出するための方法であって、
-請求項1から7のいずれか一項に記載の校正方法、
-それに続いて、バイオマスセンサの浄化、
-それに続いて、バイオマス内の生細胞の量及び/又は大きさに関する情報の、バイオマスセンサと、バイオマスセンサによって形成される、電場方向が周期的に変化する電場とを用いた、インピーダンス分光法による検出、
-任意でそれに続いて、請求項1から7のいずれか一項に記載の校正方法、
を含む方法。
【請求項9】
周期的に電場方向が変化する電場を用いて、バイオマス内の生細胞の量及び/又は大きさに関する情報を検出するように構成された、インピーダンス分光法を用いたバイオマスセンサの校正のための、導電性の粘性-流動性又は粘弾性の担体物質と、前記担体物質に受容された導電性の固体粒子、及び/又は、半導体固体粒子とを含み、生細胞又は死細胞又は細胞膜の形態にある生物学的な成分を含まない懸濁液の使用。
【請求項10】
前記担体物質が、回転式粘度計で測定した、1Pasよりも低くない、好ましくは50Pasよりも低くない、かつ、50000Pasよりも高くない、好ましくは10000Pasよりも高くない、特に好ましくは1000Pasよりも高くない動的粘度を有することを特徴とする、請求項9に記載の懸濁液の使用。
【請求項11】
前記担体物質が、水等のベース液体と増粘剤とを含んでいることを特徴とする、請求項9又は10に記載の懸濁液の使用。
【請求項12】
前記増粘剤が、例えば多糖、特にグリコーゲン、デンプン、ペクチン、キサンタン、カラギーナン、グアーガム、アラビアゴム、セルロース等のバイオポリマー、又は、例えばカルボキシメチルセルロース、リグニン、キチン、キトサン、ゼラチン、アガー、アルギン酸塩等のセルロース誘導体、又は、例えばポリビニルピロリドン、ポリDADMAC若しくはポリAMPS等のポリマー、又は、グリコールを含むことを特徴とする、請求項11に記載の懸濁液の使用。
【請求項13】
前記担体物質が、ポリマー及び/若しくはゲル、特にヒドロゲルを含んでいるか、又は、ポリマー及び/若しくはゲル、特にヒドロゲルであることを特徴とする、請求項9から12のいずれか一項に記載の懸濁液の使用。
【請求項14】
前記担体物質が、0.01mS/cmから500mS/cm、好ましくは0.1mS/cmから200mS/cm、特に好ましくは1mS/cmから50mS/cmの範囲の導電性を有することを特徴とする、請求項9から13のいずれか一項に記載の懸濁液の使用。
【請求項15】
前記担体物質が、例えば塩の溶液若しくは溶融物によって、及び/又は、酸若しくは塩基のプロトリシス等によって、反対の電荷極性の可動イオンを有することを特徴とする、請求項9から14のいずれか一項に記載の懸濁液の使用。
【請求項16】
前記担体物質における反対の電荷極性のイオンの濃度が、誘電率に関して、その他の点では同じ条件において前記担体物質内のイオン濃度の上昇が校正用懸濁液の誘電率値の上昇をもたらさないように飽和していることを特徴とする、請求項15に記載の懸濁液の使用。
【請求項17】
前記固体粒子が、0.01μmから500μm、好ましくは0.1μmから200μm、特に好ましくは1μmから20μmの範囲の粒径を有しており、前記粒径は、ふるい分けによって決定されることを特徴とする、請求項9から16のいずれか一項に記載の懸濁液の使用。
【請求項18】
前記固体粒子が、5×10-3S/mから7×10S/m、好ましくは1×10S/mから4×10S/mの範囲の導電性を有する材料から形成されていることを特徴とする、請求項9から17のいずれか一項に記載の懸濁液の使用。
【請求項19】
前記固体粒子が、金属及び/若しくは半金属及び/若しくは半導体材料及び/若しくは導電性有機材料及び/若しくはグラファイト及び/若しくは活性炭を含んでいるか、又は、これらの材料の少なくとも1つから構成されていることを特徴とする、請求項9から18のいずれか一項に記載の懸濁液の使用。
【請求項20】
-バイオマス内の生細胞の量及び/又は大きさに関する情報を、周期的に電場方向が変化する電場を用いて検出するように構成された、インピーダンス分光法を用いたバイオマスセンサ、
-前記インピーダンス分光法を用いたバイオマスセンサを校正するための、校正用懸濁液、及び、
-動作に応じてバイオマスセンサによって放出されたセンサ信号を処理するように構成されたデータ処理装置、を含む校正アセンブリにおいて、
前記校正用懸濁液が、生細胞又は死細胞又は細胞膜の形態にある生物学的な成分を含まず、導電性の粘性-流動性又は粘弾性の担体物質と、前記担体物質に受容された導電性の固体粒子、及び/又は、半導体固体粒子とを含んでいることを特徴とする校正アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インピーダンス分光法を用いたバイオマスセンサを校正するための方法と、さらに、当該校正方法のための懸濁液の使用と、に関する。
【背景技術】
【0002】
電気インピーダンス分光法は、生体物質の周波数に依存する受動的電気特性を、非破壊にその場で(in situ)、及び、生体内(in vivo)で決定するための測定方法として用いられる。このような生体物質は、例えば、以下において「バイオマス」と表記される、液体と液体内に受容された生体細胞とから成る、細胞培養容器等から得られるような物質であり得る。
【0003】
上述の、バイオマスの周波数に依存する受動的電気特性は、特に生細胞の数及び細胞の活動力に関する情報を与えることができる。その他に、バイオマスのさらなる特性を、周波数に依存する受動的電気特性を通じて検出することができるが、生細胞の数及び細胞の活動力の決定は、生物工学的応用において、最も重要な意味を有している。
【0004】
全く原則的に、かつ、概略的に説明すると、バイオマスにおける生細胞の量及び/又は大きさに関する情報の、インピーダンス分光法を用いた検出は、以下のように行われる:担体液体に受容された生体細胞の懸濁液に、電場方向が所定の周波数で周期的に変化する電場を印加する。選択された変化の周波数に依存して、バイオマスに、様々な分極機構が作用する。従って、バイオマスの受動的電気特性は、純粋なイオン溶液とは異なって、周波数に依存しており、典型的には、いわゆる分散を形成する。バイオマス内に生細胞が存在する場合、付加的な効果が生じる。生細胞は、自由に移動できるイオンにとって、移動の妨げになるので、細胞は、その横断面面積に依存して、バイオマスの抵抗を増大させ、従って、その伝導性を減少させる。バイオマスの細胞の内部に存在するイオンも、電場によって検出される。導電性の低い細胞膜では、電荷分離が生じ、当該電荷分離は、膜における分極につながる。当該分極は、電気二重層として生じる。この場合、電場によって生じさせられた電流は、ほぼ専ら、バイオマスの細胞外の担体物質を通って流れる。それゆえ、分極は、測定可能な容量の増大と、従って、電場を形成する電極間の誘電率の増大とに反映される。
【0005】
いわゆる「α分散」は、mHzからkHzの周波数領域において生じ、細胞表面での電荷担体の移動及び吸着によって引き起こされる。さらに、活性細胞膜効果と、活性イオン膜チャネルとが、α分散に影響を与える。
【0006】
数kHzから100MHzの周波数領域では、いわゆるβ分散が生じる。β分散は、細胞膜の容量特性、細胞内の細胞小器官、及び、膜構造自体に基づいている。細胞膜内の脂肪及びタンパク質は、高抵抗の構造を形成する。膜構造は、いわゆる界面分極につながる。
【0007】
約0.1GHzから100GHzの、さらに高い周波数領域では、いわゆるγ分散が生じる。γ分散は、例えば水及びタンパク質のような、極性媒体の両性機構によって引き起こされる。電場では、高い周波数において、例えばタンパク質のような大きな分子が、双極子モーメントで整列する。
【0008】
本出願に係る方法において、特に重要である、バイオマス内の生細胞の量及び/又は大きさに関する情報の検出にとっては、特にβ分散領域が重要である。バイオマスの分散領域、及び、その描写に用いられる周波数に依存する誘電率又は容量の曲線に関するさらなる情報については、非特許文献1及び非特許文献2を参照のこと。
【0009】
バイオマス内の生細胞の量及び/又は大きさに関する情報の、周期的に電場方向が変化する電場を用いた、インピーダンス分光法による検出のための従来の方法は、特許文献1から知られている。このような測定に使用可能であるバイオマスセンサは、特許文献2から知られている。出願人によって「インサイト(Incyte)」という商品名で販売されているセンサも、上述の測定方法に基本的に適している。
【0010】
その際、上述のインピーダンス分光法による測定技術の使用者は-その際、「測定技術」は、全く一般的に、方法の側面に関しても、用いられるセンサに関しても理解されるべきであるが-通常、センサの動作信頼性を信頼しなければならないという状況に直面している。なぜなら、使用者は一般的に、後続の測定動作にとって重要である校正動作において、センサを、その機能的能力に関して検査する可能性を有さないからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】米国特許第7930110号明細書
【文献】米国特許第6596507号明細書
【非特許文献】
【0012】
【文献】H.P.Schwan, “The practical success of impedance techniques from an historical perspective”, Proceedings of the X. International Conference on Electrical Bio-Impedance, Barcelona (1998), p.3-16.
【文献】H.P.Schwan, “Electrical properties of tissue and cell suspensions”, Advances in Biological and Medical Physics, Vol.5 (1957), p.147-205.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、本発明の課題は、周期的に電場方向が変化する電場を用いた、バイオマス内の生細胞の量及び/又は大きさに関する情報を検出するための、インピーダンス分光法を用いたバイオマスセンサの有意義な校正を可能にする技術的教示を記載することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によると、本課題は、インピーダンス分光法を用いたバイオマスセンサを校正するための方法によって解決され、当該バイオマスセンサは、周期的に電場方向が変化する電場を用いて、バイオマス内の生細胞の量及び/又は大きさに関する情報を検出するように構成されており、当該方法は、以下のステップを含んでいる:
-導電性の粘性-流動性又は粘弾性の担体物質と、当該担体物質に受容された導電性の固体粒子、及び/又は、半導体固体粒子とを含む校正用懸濁液を準備するステップ、
-電場方向が周期的に変化する、校正用懸濁液に作用する電場を形成するステップ、
-電場方向変化の異なる周波数の、少なくとも2つの電場において、校正用懸濁液の誘電率を表す少なくとも1つずつの誘電率値を検出するステップ、
-検出された誘電率値の差分を表す差分値を算定するステップ、
-差分値を、校正用懸濁液に割り当てられた基準値と比較するステップ。
【0015】
導電性の粘性-流動性又は粘弾性の担体物質と、当該担体物質に受容された導電性の固体粒子、及び/又は、半導体固体粒子とを含む上述の校正用懸濁液は、冒頭に挙げたインピーダンス分光法を用いた測定技術方法のための、生細胞の量及び/又は大きさに関する情報を検出するバイオマスセンサと協働し、周期的に変化する電場に、バイオマス自体と類似した応答を供給することが明らかになっている。従って、電場方向に関して周期的に変化する電場への校正用懸濁液の応答から、使用されたバイオマスセンサの動作信頼性を推測することが可能である。
【0016】
従って、本発明に係る校正方法の範囲内では、周期的に電場方向が変化する、校正用懸濁液に作用する電場が形成され、当該電場は、現実の情報検出の際にバイオマスに作用する電場と概ね類似しているか、又は、同じである。
【0017】
冒頭において、インピーダンス分光法を用いた検出方法の技術的な関連の描写の枠内で説明したように、ここで重要なバイオマスの受動的電気特性と、従って同様に校正用懸濁液の受動的電気特性とは、周波数に依存しているので、電場方向変化の異なる周波数の少なくとも2つの電場において、少なくとも1つのバイオマスセンサを校正するために、それぞれ校正用懸濁液の誘電率を表す誘電率値が検出され得る。
【0018】
その際、これは必ずしも、誘電率を直接検出しなければならないということを意味してはいないことが明確にされる。述べたように、校正用懸濁液の誘電率を表す値の検出で十分である。これは例えば、通常、誘電率に比例する容量であり得る。
【0019】
電場方向変化の少なくとも2つの異なる周波数において、誘電率値が検出された場合、検出された誘電率値の差分を表す差分値が算出され得る。これは、単純に、それぞれの電場方向変化の周波数において検出された誘電率値の減算によって行われ得る。
【0020】
校正用懸濁液は、予め決められた化学的特性及び物理的特性を有するように製造され得るので、校正用懸濁液に関しては、複数の基準誘電率値、又は、複数の基準値-差分値が、予め、例えば実験室における基準測定によって決定され得る。このような基準値は、検出された差分値との比較に用いられ得る。算定された比較結果を用いて、少なくとも1つのバイオマスセンサの使用者は、上述の方法に従って校正されたバイオマスセンサの動作信頼性を評価することができる。
【0021】
差分値と、校正用懸濁液に割り当てられた基準値との比較の評価も、有利なさらなる発展形態として、校正方法に含まれ得る。例えばこれは、少なくとも1つのバイオマスセンサと信号を伝達するように接続された評価装置において完全に自動化して実施可能である。当該評価装置は、データ記憶装置を有しており、データ記憶装置には、割り当てられた少なくとも1つの基準値、又は、校正用懸濁液に割り当てられた複数の基準値が保存可能である。例えば、データ記憶装置には、特性要因図を保存することが可能であり、特性要因図には、1つ又は複数の校正用懸濁液に関して、誘電率値と電場方向変化周波数との間の関連が示されている。特性要因図の代わりに、評価装置が、校正方法において用いられる電場方向変化周波数に応じて、基準値を得ることを可能にする関数関係を保存することも可能である。
【0022】
差分値と基準差分値との比較とは、検出された誘電率値と対応する基準誘電率値との比較が同じである。最後に挙げられた基準値は、校正の間に誘電率値が検出される電場変化の周波数に関して、校正用懸濁液に割り当てられている。
【0023】
さらに、当該方法は、評価結果の、ディスプレイ又はプリンタ等の出力装置への出力を含んでいる。
【0024】
本発明に係る校正方法の利点は特に、それ自体がバイオマス、つまり生細胞又は死細胞又は細胞成分を含まなくても良く、従って実際のバイオマスにとって汚染のリスクとならないような校正用懸濁液を用いて、校正方法を、インピーダンス分光法を用いたバイオマス測定方法のように進行することができることにある。従って、少なくとも1つのバイオマスセンサが、少なくとも一部、特に測定技術的に有効な一部で、電場方向が周期的に変化する電場を形成する前及び/又は好ましくは間に、校正用懸濁液に接触することができる。当該校正方法が、現実のインピーダンス分光法を用いたバイオマス測定方法に、測定対象としての懸濁液まで含めて対応することによって、極めて正確な校正結果を得ることができる。それに加えて、少なくとも部分的に自動化された測定システムに関して、別個の校正プロセスの進行をプログラムに組み入れる必要はなく、現実の測定方法の進行を校正のためにも利用することが可能である。
【0025】
校正方法を、バイオマスセンサに校正用懸濁液を湿らせずに実施する場合、結果は得られるが、これらの結果は、実験条件が概ね同じであっても、著しく変動し、従ってセンサを湿らせる校正に比べて、その信頼性は減少している。
【0026】
それゆえ、可能な限り正確な校正結果を得るために、本発明の好ましいさらなる発展形態では、バイオマスセンサの少なくとも一部と校正用懸濁液との接触は、バイオマスセンサの少なくとも1つのセンサ電極、好ましくは全てのセンサ電極を校正用懸濁液で湿らせることを含んでいると規定されている。バイオマスセンサが1つのみよりも多いセンサ電極を有している限りにおいて、好ましくは、バイオマスセンサの全てのセンサ電極を、校正用懸濁液で湿らせる。インピーダンス分光法を用いたバイオマスの検出の場合は、当該電極をバイオマスによって湿らせるであろう。
【0027】
再現可能であり、従って確実かつ再検査可能な校正結果を供給するために、校正方法が、校正用懸濁液の均質化のステップを含んでいると好ましい。担体物質内に受容された固体粒子は、担体物質の粘性に応じて、時間が経つにつれて沈殿し、校正用懸濁液の外側の電場への応答挙動を変化させ得る。このような沈殿傾向に対抗するために、均質化のステップが実施され得る。当該均質化は、校正用懸濁液の攪拌及び/又は振とうによって行われ得る。当該均質化は、誘電率値の検出の前に、好ましくは直前に行われ、それによって、可能な限り均質な校正用懸濁液における検出が可能になる。
【0028】
誘電率値を決定するための校正時間の長さは、1秒から600秒の範囲、好ましくは1秒から300秒の範囲、特に好ましくは1秒から60秒の範囲である。この期間にわたっては、可能な限り沈殿が生じない方が良い。
【0029】
インピーダンス分光法を用いたバイオマスセンサの校正にとっては、特に冒頭に挙げたβ分散領域が、その信頼性ゆえに重要である。従って、本発明に係る校正方法にとっては、誘電率値が、50kHzより低くない、好ましくは110kHzより低くない、特に好ましくは250kHzより低くない、かつ、110MHzより高くない、好ましくは50MHzより高くない、特に好ましくは30MHzより高くない周波数において検出されることが好ましく、ここに挙げた境界値はそれぞれ含まれている。それによって、校正プロセスが、現実に検出されるべきバイオマスのβ分散領域の周波数に対応する周波数で実施される。
【0030】
当該校正方法の使用者は、使用者によって用いられたインピーダンス分光法を用いた少なくとも1つのバイオマスセンサの動作信頼性に関する印象を得るだけではなく、少なくとも1つのバイオマスセンサの検出エラーが生じた場合にそれを修正するために、校正結果を量的に利用することもできる。これは、少なくとも1つのバイオマスセンサを有する測定アセンブリの制御装置において、又は、上述の、少なくとも1つのバイオマスセンサと信号を伝達するように接続された評価装置において、自動的に行われ得る。従って、有利なさらなる発展形態に係る校正方法は、バイオマスセンサ又は当該バイオマスセンサと信号を伝達するように連結されたデータ処理装置の、差分値と基準値との比較の結果に応じた調整を含み得る。従って、例えばドリフトエラー等によって、実際は正しくない誘電率値の検出結果を供給するかもしれないバイオマスセンサは、差分値と基準値との比較に基づいて、当該バイオマスセンサによって検出された誘電率値が、その時々の測定状況下で実際に予想される誘電率値に相当するように調整され得る。特に、しかし限定的ではなく、差分値と基準値との比較結果に応じてバイオマスセンサを調整する可能性は、冒頭に記載したように、インピーダンス分光法を用いた検出方法において、バイオマスセンサが調整可能であるか又は調整可能なエラーを有する限りにおいて、常に正しい検出結果が得られることを確実化する可能性を創出する。このために、校正方法は、すでに記載され、さらに発展形態について記載されたように、バイオマスにおいて実施される現実の測定方法の前に、又は、一連の現実の測定方法の前に実施可能であり、それによって、校正プロセスの後で実施された少なくとも1つの測定方法の検出結果が正しいことが保証される。
【0031】
従って、本発明は、バイオマス内の生細胞の量及び/又は大きさに関する情報を、インピーダンス分光法を用いて検出するための方法にも関するものであり、当該方法は、以下を含んでいる:
-すでに記載され、さらに発展形態について記載された校正方法、
-それに続いて、バイオマスセンサの浄化、
-それに続いて、バイオマス内の生細胞の量及び/又は大きさに関する情報の、バイオマスセンサと、バイオマスセンサによって形成される、電場方向が周期的に変化する電場とを用いた、インピーダンス分光法による検出。
【0032】
高感度のインピーダンス分光法を用いた検出の適用に関して、すでに記載され、さらに発展形態について記載されたように、測定対象としてバイオマスを用いるインピーダンス分光法による検出の前だけではなく、この検出の後にも、校正プロセスを実施することを規定することすら可能である。それによって、バイオマスセンサが、バイオマスにおいて現実の検出のために使用される前後において正確に機能したことと、従ってバイオマスセンサが、インピーダンス分光法による検出の間、正確に機能したことが殆ど確実に見込まれることとを、例えば文書化及び証明の目的で保証かつ証明することができる。
【0033】
校正方法の核は、測定対象としてのバイオマスの、校正用懸濁液による交換であり、校正用懸濁液は、生物学的な成分を有さずに、所定の組成で製造可能であり、従って、バイオマスと他のバイオマスとの二次汚染が除外されている。それゆえ、本発明は、懸濁液の使用にも関するものであり、当該懸濁液は、導電性の粘性-流動性又は粘弾性の担体物質と、それらに受容された導電性の固体粒子、及び/又は、半導体固体粒子とを、インピーダンス分光法を用いたバイオマスセンサを校正するために含んでおり、当該バイオマスセンサは、周期的に電場方向が変化する電場を用いて、バイオマス内の生細胞の量及び/又は大きさに関する情報を検出するように構成されている。
【0034】
校正用懸濁液内の固体粒子が、少なくとも校正プロセスが続いている間は、考慮せずとも良い程度の沈殿傾向を有するということを保証するために、校正用懸濁液は、好ましくは、回転式粘度計で測定した、1Pasよりも低くない、好ましくは50Pasよりも低くない、かつ、50000Pasよりも高くない、好ましくは10000Pasよりも高くない、特に好ましくは1000Pasよりも高くない動的粘度を有する担体物質を有している。
【0035】
担体物質の動的粘度を効果的に調整するために、担体物質は、ベース液体と増粘剤とを含み得る。ベース液体は、水であって良い。
【0036】
増粘剤は、例えば多糖、特にグリコーゲン、デンプン、ペクチン、キサンタン、カラギーナン、グアーガム、アラビアゴム、セルロース等のバイオポリマー、又は、例えばカルボキシメチルセルロース、リグニン、キチン、キトサン、ゼラチン、アガー、アルギン酸塩等のセルロース誘導体、又は、例えばポリビニルピロリドン、ポリDADMAC若しくはポリAMPS等のポリマー、又は、グリコールを含む群から選択可能である。
【0037】
増粘剤によって粘性を増したベース液体の代わりに、担体物質は、ポリマー及び/又はゲルを含むか、又は、ポリマー及び/又はゲルであって良い。ゲルとしては、特にいわゆるヒドロゲルが用いられ得る。
【0038】
校正用懸濁液、校正用懸濁液に受容された固体粒子、及び、担体物質の物理パラメータに関する、本出願に記載された全てのデータは、室温かつ1013hPaの標準大気で検出された、又は、比較のために検出されるべきものであることが補足される。
【0039】
冒頭に述べたように、担体物質の利用可能性に関しては、当該担体物質が導電性を有することが重要である。特に適切であると明らかになっている担体物質は、その導電性が0.01mS/cmから500mS/cm、好ましくは0.1mS/cmから200mS/cm、特に好ましくは1mS/cmから50mS/cmの範囲にある担体物質である。最も好ましくは、導電性は、1mS/cmから10mS/cmの範囲にあって良い。
【0040】
本出願において、範囲に関する全ての記載では、記載された境界値が常に当該領域に含まれるものと理解すべきである。
【0041】
この導電性は、担体物質が、例えば塩の溶液若しくは溶融物によって、及び/又は、酸若しくは塩基のプロトリシス等によって、反対の電荷極性の可動イオンを有することによって調整可能である。その際、塩の溶液は、塩の溶解物よりも、そのために必要な熱的境界条件ゆえに好ましい。
【0042】
担体物質、及び、それに伴って校正用懸濁液のイオン含有量の変化が、校正結果に影響を与え得ることを排除するために、校正用懸濁液の使用の有利なさらなる発展形態によると、担体物質における反対の電荷極性のイオンの濃度は、誘電率に関して、その他の点では同じ条件において、担体物質内のイオン濃度の上昇が、校正用懸濁液の誘電率値の上昇をもたらさないように飽和している。その際、これらの条件は、特に、校正用懸濁液の誘電率を検出するための条件である。
【0043】
担体物質内に受容されるべき、又は、受容されている固体粒子に関して適用可能な粒径範囲は、0.01μmから500μmまでである。好ましくは、0.1μmから200μmまでの範囲の粒径を有する固体粒子が、校正用懸濁液で用いられる。これは、固体粒子のその時々の材料にも依存し得る。特に好ましくは、1μmから20μmまでの範囲の粒径を有する微細な固体粒子が、担体物質内で、校正用懸濁液を生成するために受容されている。その際、粒径は、ふるい分けによって決定され得る。粒径がふるい分けによっては十分正確に決定され得ない場合、光散乱によって行われ得る。
【0044】
例えば、粒径100μmから200μmのアルミニウム粉末(アルミニウム粒子)を、固体粒子として用いることが可能である。好ましくは、グラファイト粉末(グラファイト粒子)が、固体粒子として、担体物質内に受容されており、その際、グラファイト粒子に関しては、好ましくは1μmから20μmの範囲の粒径が用いられる。活性炭粒子も、固体粒子として、校正用懸濁液の生成のために、担体物質内に受容されていて良い。活性炭粒子の場合、好ましい粒径の範囲は、2μmから12μmである。
【0045】
固体粒子は、5×10-3S/mから7×10S/m、好ましくは1×10S/mから4×10S/mの範囲の導電性を有する材料から形成され得る。
【0046】
例えば、半導体固体粒子材料として、テルルを用いることができる。テルルは、その導電性が約5×10-3S/mであり、上述の範囲の下限にある。上述の導電性範囲の上限にあるのは、例えば銀であり、その導電性は例えば7×10S/mよりもわずかに低い。校正用懸濁液の固体粒子として、さらに可能な、好ましい材料は、50S/mの導電性を有する炭化ケイ素、4×10S/mよりもわずかに低い導電性を有するアルミニウム、約2×10S/mの導電性を有する活性炭、9×10S/mよりもわずかに高い伝導性を有するプラチナである。グラファイトが、固体粒子材料として用いられることが特に好ましい。グラファイトは、その平坦な層に対して平行な導電性方向において、3×10S/mの導電性を有している。
【0047】
その種類に関して、適切な固体粒子材料は、金属及び/若しくは半金属及び/若しくは半導体材料及び/若しくは導電性有機材料及び/若しくはグラファイト及び/若しくは活性炭を含んでいるか、又は、少なくとも1つの当該材料から構成され得る。校正用懸濁液は、好ましくは細胞、細胞膜等の細胞材料を含んでいない。
【0048】
技術的教示をより完全なものにするために、本発明は、校正アセンブリにも関しており、当該校正アセンブリは、
-すでに記載され、さらに発展形態について記載された校正用懸濁液、
-バイオマス内の生細胞の量及び/又は大きさに関する情報を、周期的に電場方向が変化する電場を用いて検出するように構成された、インピーダンス分光法を用いたバイオマスセンサ、及び、
-動作に応じてバイオマスセンサによって放出されたセンサ信号を処理するように構成され、特にすでに記載され、さらに発展形態について記載された方法を実施するように構成されたデータ処理装置、
を含んでいる。
【0049】
以下に、本発明を、添付の図面を用いて詳細に説明する。示されているのは以下の図である:
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】バイオマスの誘電率の周波数依存性の関係を極めて概略的に示した図である。
図2】バイオマスの周波数に依存する誘電率を、極めて概略的に、特に重要なβ分散領域において示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
図1には、バイオマス、すなわち例えば生体細胞を含む液体の誘電率の周波数依存性が、極めて一般的に、極めて概略的にのみ示されている。実線10は、周波数fに依存する誘電率εの実数部を示しており、破線12は、周波数に依存する誘電率εの虚数部を示している。
【0052】
これらのグラフは、バイオマスに、電場方向が周期的に変化する、又は、逆転する電場を印加することによって得られる。電場方向変化の周波数fは、単位Hzで、図1のグラフのX座標に沿って記されている。Y座標方向には、誘電率εが、pF/cmの単位で示されている。
【0053】
周波数fが、大きな周波数領域にわたり、徐々に上昇する場合、バイオマス内には、バイオマスに含まれる成分ゆえに、様々な分極効果が生じ、当該分極効果は、電場を形成する電極間の誘電率の(と同様に容量の)変化につながる。バイオマスの誘電率-周波数曲線における、それぞれ認識可能な段階は、H.P.Schwanによると、α分散、β分散、及び、γ分散と称される。α分散(図1のα分散領域14を参照のこと)は、mHzからkHzの領域の周波数において生じる。α分散は、現在の知識によると、細胞表面における電荷担体の移動及び吸着によって引き起こされる。さらに、α分散は、活性細胞膜効果及び活性イオン膜チャンネルによって影響を受ける。
【0054】
図1では、α分散の周波数領域14は、2つの部分分散α1及びα2を有しており、部分分散α1は領域16によって、部分分散α2は領域18によって示されている。
【0055】
β分散の周波数領域20は、数kHzから約100MHzまでの領域に位置しており、例えば脂肪及びタンパク質が高抵抗の構造を形成するゆえに、細胞膜の容量特性に基づいており、さらに、上述の周波数領域において界面分極が生じる細胞内の細胞小器官及び膜構造に基づいている。
【0056】
γ分散は、約0.1GHzから100GHzの周波数領域22において生じる。γ分散は、水及びバイオマスに同じく含まれるタンパク質のような極性媒体の両性機構によって引き起こされる。その際、双極子モーメントで、高い周波数において整列する大きな分子によってもたらされる配向分極が重要である。
【0057】
誘電率εの実数部10は、各分散の特性周波数において、転換点を有しており、当該転換点は、一般的には、2つの平坦域様の周波数領域の間に位置している。誘電率εの虚数部は、分散の各特性周波数において、局所的な最大値を有している。
【0058】
周波数領域22におけるγ分散を、当該領域において生じる分極効果ゆえに、生体の水分含量を決定するために用いることが可能である一方で、周波数領域20におけるβ分散領域は、バイオマスの評価にとって非常に重要である。なぜなら、誘電率ε、特にその実数部は、β分散領域20において、バイオマスに含まれる生細胞の数、細胞の活動力、及び、細胞の大きさに関する情報を供給するからである。
【0059】
図2には、バイオマスの周波数に依存する誘電率εの実数部が、純粋に質的に示されている。
【0060】
その際、質的に、以下の情報が、周波数fに依存する誘電率の実数部の曲線10から得られる。図2には、β分散領域20にとって特徴的な周波数fChの前に、平坦領域22が位置しており、当該平坦領域においては、誘電率εは、特性周波数fChの周囲の領域と比較して、周波数と共にわずかに変化するのみであること、及び、特性周波数fChの後には、さらなる平坦領域24が位置しており、平坦領域24は、特性周波数fChの前の平坦領域22とは異なっており、平坦領域24においては、誘電率εはやはり、特性周波数fChの周囲の領域と比較して、周波数と共に大きくは変化しないことが質的に示されている。
【0061】
従って、誘電率ε、より正確にはその実数部、を表している誘電率値εが、平坦領域22内で周波数fにおいて検出され、同じく、誘電率値εが、平坦領域24内で周波数fにおいて検出される場合、両方の周波数f及びfから算定された誘電率値ε又はεからは、両方の誘電率値の差分値Δεが算定される。その際、差分値Δεは、バイオマスに含まれる生細胞の数に関する基準である。2つの点と3つの線とで示された代替的な誘電率曲線30は、各測定周波数f及びfにおいて、より大きい値のΔεにつながる可能性を有しており、そこから、それに関して誘電率曲線30が得られたバイオマスは、同じ体積において、誘電率曲線10の基礎を成しているバイオマスよりも多くの生細胞を有していると、逆に推論することが可能である。
【0062】
完全性のために、特性周波数fChの変化は、細胞の大きさ又は細胞の生理学の変化を示していることに言及しておく。図2において、2つの点と1つの線とで表された誘電率曲線32は、より高い特性周波数を示している。
【0063】
その特性周波数fChの点における誘電率曲線の勾配は、細胞の大きさの分布に関する基準であり、勾配の増大は、細胞の大きさの分布の不均一性が増大していることを示しており、特性周波数fChの位置において、誘電率曲線10が、より平坦に推移するということは、細胞の大きさの分布が均一性を増していることを意味している。
【0064】
測定技術的に検出されるべきバイオマスに関して、β分散領域がある程度知られている場合、周波数f及びfが、測定点として知られている。
【0065】
本出願において記載されている校正用懸濁液は、測定周波数f及びfにおいて決定された異なる誘電率値ε又はεを供給しており、これらの誘電率値は、同様に決定される差分値Δεにつながるものである。
【0066】
校正用懸濁液は、使用された材料、すなわち担体物質及び固体粒子に関して、及び、当該懸濁液の製造の際に用いられた量の比率に関して知られているので、当該懸濁液を高い精度で再現することができる。
【0067】
従って、校正用懸濁液には、様々な周波数における誘電率値の対応する測定によって、基準値を割り当てることが可能であり、当該基準値は、例えば測定周波数及びその際測定された誘電率値等の、一対の値から構成され得る。測定を複数回繰り返すことによって、当該基準値を統計的に確実なものとすることができる。それゆえ、基準値を基準値の平均値の周りに拡散することも知られている。
【0068】
従って、所定の校正用懸濁液に関して、所定の異なる測定周波数f及びfにおいて、割り当てられた基準値から、校正に関して考慮される誘電率値の基準の差分値が算定され得る。校正されるべきバイオマスセンサを使用するが、バイオマスの代わりに所定の校正用懸濁液を使用する校正測定方法を実施する際には、従って、誘電率値の差分値がセンサによって検出され、基準の差分値と比較され得る。校正方法において検出される差分値と基準の差分値との間の一致度に応じて、校正方法で用いられたバイオマスセンサの動作信頼性を推測することが可能であるか、又は、バイオマスセンサを適切に調整することができるので、バイオマスセンサによって、所定の校正条件下で供給された、校正の誘電率値の差分値は、対応する基準の差分値と一致する。
【0069】
校正プロセスは、必要に応じて調整プロセスを伴って、定期的な間隔をおいて実施可能であるか、又は、バイオマスのセンサを用いた検出の実施の前に毎回実施しても良い。
【0070】
バイオマスセンサの動作信頼性が、測定プロセスの間に変化していないことを証明するために、校正プロセスを、バイオマスのセンサを用いた検出の後でも実施することが可能である。
【0071】
バイオマスセンサを校正するために、担体物質及び/若しくは固体粒子に関して、並びに/又は、担体物質に受容された固体粒子の量に関して異なっている、様々な校正用懸濁液を準備することが可能である。それによって、適切に選択された校正用懸濁液を用いた校正が、センサを用いてバイオマスを検出するために実施される測定プロセスに可能な限り類似して実施され得る。従って、同じバイオマスセンサを用いて実施される測定方法に関する校正方法の信頼性は、有利に増大し得る。
【符号の説明】
【0072】
10 誘電率εの実数部
12 誘電率εの虚数部
14 α分散の周波数領域
16 領域
18 領域
20 β分散の周波数領域
22 平坦領域
24 平坦領域
30 誘電率曲線
32 誘電率曲線
図1
図2