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  • 特許-フライアッシュの使用方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-16
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】フライアッシュの使用方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 18/08 20060101AFI20220106BHJP
   C04B 7/26 20060101ALI20220106BHJP
   B09B 5/00 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
C04B18/08 Z
C04B7/26 ZAB
B09B5/00 N
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018553169
(86)(22)【出願日】2018-03-08
(86)【国際出願番号】 JP2018008968
(87)【国際公開番号】W WO2018168637
(87)【国際公開日】2018-09-20
【審査請求日】2020-12-28
(31)【優先権主張番号】P 2017048734
(32)【優先日】2017-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】大村 昴平
(72)【発明者】
【氏名】関 卓哉
【審査官】浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-60115(JP,A)
【文献】特開平4-78481(JP,A)
【文献】特開2002-59148(JP,A)
【文献】実開平7-41228(JP,U)
【文献】特表2011-526827(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00-32/02
B09B 1/00-5/00
G01N 33/22
G01N 33/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粉炭焚きボイラにて発生するフライアッシュの未燃カーボン含有量を測定し、予め設定された未燃カーボン含有量の2つの閾値a,b(但し、a>bとする)に応じてフライアッシュを、以下のX1,X2及びX3の3種に分類し、
X1: x<bを満足するもの
X2: b≦x≦aを満足するもの
X3: x>aを満足するもの
フライアッシュX1は、サイロD3に一旦貯蔵し、フライアッシュX2はサイロD4に一旦貯蔵し、フライアッシュX3は、サイロD5に一旦貯蔵するとともに、
サイロD3に貯蔵されたフライアッシュX1とサイロD4に貯蔵されたフライアッシュX2とは、未燃カーボン含有量xが一定の値となるように混合し、得られた混合粉を、微粉と粗粉とに分級し、該微粉を、セメント混合材用又はコンクリート混合材用フライアッシュとして使用し、該粗粉は、セメントクリンカー製造原料として使用し、
サイロD5に貯蔵されたフライアッシュX3は、セメントクリンカー製造原料として使用することを特徴とするフライアッシュの使用方法。
【請求項2】
前記未燃カーボン含有量xの閾値aが、1~10質量%の範囲に設定されている請求項1に記載のフライアッシュの使用方法。
【請求項3】
前記フライアッシュX1とフライアッシュX2との混合粉についてなされる分級の閾値が20~150μmの範囲に設定されている請求項1に記載のフライアッシュの使用方法。
【請求項4】
前記微粉炭焚きボイラが石炭火力発電プラントに備えられたものであり、当該石炭火力発電プラント内にて、微粉炭焚きボイラにて発生したフライアッシュを集塵設備で捕集し、捕集されたフライアッシュを一旦サイロに貯蔵する請求項1に記載のフライアッシュの使用方法。
【請求項5】
前記集塵設備の排出口から前記サイロの排出口までの間にサンプリング口を設け、該サンプリング口から採取されたフライアッシュについて未燃カーボン含有量の測定を行い、この測定値に基づいて、該フライアッシュを分別貯蔵設備に移送する請求項4に記載のフライアッシュの使用方法。
【請求項6】
複数の微粉炭焚きボイラにて発生したフライアッシュを一つのサイロに受け入れ、該受入サイロの下部にサンプリング口を設け、該サンプリング口から採取されたフライアッシュについて未燃カーボン含有量の測定を行う請求項1記載のフライアッシュの使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフライアッシュの使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石炭火力発電所では石炭の燃焼残渣である石炭灰が多量に発生し、その処理の大部分は、セメント分野や土木分野に依存している。特にセメント分野への依存は大きく、セメントクリンカー製造原料として石炭灰全体の65%程度が利用されている。
【0003】
一方、石炭火力発電プラントの新設や稼働率増加に伴い石炭灰発生量の増加が予測されており、セメントクリンカー製造原料以外の用途拡大を図ることが急務とされる。
【0004】
石炭火力発電プラントのボイラは、微粉炭焚きボイラ(pulverized coal combustion boiler)と流動層ボイラ(fluidized bed combustion boiler)の2つに大別され、微粉炭焚き方式からはフライアッシュとクリンカアッシュが、流動層方式からはフライアッシュが常時排出される。
フライアッシュは、電気集塵機やバグフィルター等の集塵設備から回収されるものであり、一方、クリンカアッシュは、ボイラの底部から回収されるものであって、何れもSiO(シリカ)とAl(アルミナ)とを主成分とするものであるが、例えば、フライアッシュは球状の緻密な粒子であるのに対し、クリンカアッシュは多孔質の粒子であるため、それぞれの性状に適した処理技術、有効利用技術が求められる。
【0005】
フライアッシュには、微粉炭焚きボイラから発生するもの(以下、PCFアッシュと呼ぶことがある)と流動層ボイラから発生するもの(以下、FBFアッシュと呼ぶことがある)とで大きく性状が異なっており、例えば、FBFアッシュは、脱硫の影響により、CaO(Lime)、無水石膏、水酸化カルシウムなどを含んでいる場合もある。
【0006】
このようなフライアッシュにおいて、PCFアッシュについては、セメントクリンカー製造原料以外の用途として、例えば、セメント混合材又はコンクリート混合材としての用途があり、このような混合材としての用途においては、未燃カーボン含有量が少ないものが望ましく、さらに粉末度や化学成分などその他の性状においても一定の規格(例えばJIS A 6201)を満足していることが要求され、かつロット毎の品質変動が小さいことが求められる。
一方、FBFアッシュでは粒子形状や成分等の特徴の違いから物性もPCFアッシュとは異なり、上記のセメント混合材やコンクリート混合材としての規格外となることも多く、このような用途への有効利用は困難である。
【0007】
ところで、各種用途に適して性状を有するフライアッシュを発電プラントにおいて安定的に発生させるには、燃料である石炭や発電プラント運転条件を適宜のものに限定して運転すればよいが、発電プラントは発電を目的とした設備である以上、副産物であるフライアッシュの品質に重点を置いた運転は実用的でなく、現実的には困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2001-121084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、セメントクリンカー製造原料以外に多量の石炭灰を処理可能な用途としては、セメント混合材、コンクリート混合材としての用途が挙げられるが、石炭火力発電プラントにおいて、未燃カーボン含有量が少なく、粉末度や化学成分などその他の性状においても一定の基準を満たしたフライアッシュを安定的に発生させることは困難である。
【0010】
従って、本発明の目的は、石炭火力発電プラントの運用に伴って生じる様々な性状のフライアッシュを、セメント混合材やコンクリート混合材として効率よく使用できるフライアッシュの使用方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、微粉炭焚きボイラにて発生するフライアッシュの未燃カーボン含有量を測定し、予め設定された未燃カーボン含有量の2つの閾値a,b(但し、a>bとする)に応じてフライアッシュを、以下のX1,X2及びX3の3種に分類し、
X1: x<bを満足するもの
X2: b≦x≦aを満足するもの
X3: x>aを満足するもの
フライアッシュX1は、サイロD3に一旦貯蔵し、フライアッシュX2はサイロD4に一旦貯蔵し、フライアッシュX3は、サイロD5に一旦貯蔵するとともに、
サイロD3に貯蔵されたフライアッシュX1とサイロD4に貯蔵されたフライアッシュX2とは、未燃カーボン含有量xが一定の値となるように混合し、得られた混合粉を、微粉と粗粉とに分級し、該微粉を、セメント混合材用又はコンクリート混合材用フライアッシュとして使用し、該粗粉は、セメントクリンカー製造原料として使用し、
サイロD5に貯蔵されたフライアッシュX3は、セメントクリンカー製造原料として使用することを特徴とするフライアッシュの使用方法が提供される。
尚、以下の説明において、aよりも小さな値の閾値bを補助閾値bと呼ぶことがある。
【0012】
本発明のフライアッシュの使用方法においては、
(1)前記未燃カーボン含有量xの閾値aが、1~10質量%の範囲に設定されていること、
(2)前記フライアッシュX1とフライアッシュX2との混合粉についてなされる分級の閾値が20~150μmの範囲に設定されていること、
が好適である。
【0013】
また、本発明においては、
(3)前記微粉炭焚きボイラが石炭火力発電プラントに備えられたものであり、当該石炭火力発電プラント内にて、微粉炭焚きボイラにて発生したPCFアッシュを集塵設備で捕集し、捕集されたPCFアッシュを一旦サイロに貯蔵すること、
(4)前記集塵設備の排出口から前記サイロの排出口までの間にサンプリング口を設け、該サンプリング口から採取されたPCFアッシュについて未燃カーボン含有量の測定を行い、この測定値に基づいて、該PCFアッシュを分別貯蔵設備に移送すること、
(5)複数の微粉炭焚きボイラにて発生したPCFアッシュを一つのサイロに受け入れ、該受入サイロの下部にサンプリング口を設け、該サンプリング口から採取されたPCFアッシュについて未燃カーボン含有量の測定を行うこと、
という手段を採用することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、石炭火力発電プラントから排出されるフライアッシュを効率よく、その性状に適した用途に用いることができ、またセメント混合材、コンクリート混合材として利用可能なフライアッシュを従来よりも安定的に供給することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明にしたがってフライアッシュが所定の用途に適用されるまでのフローの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<フライアッシュ>
本発明において使用されるフライアッシュとは、既に述べたように、微粉炭焚きボイラ又は流動層ボイラにて石炭を主とする燃料を燃焼させた際に発生する石炭灰の内、集塵機にて捕集されたものである。
上記のようなボイラは、種々の燃焼設備が備えており、どのような燃焼設備が備えているボイラの集塵機から発生するフライアッシュにも本発明を適用することができるが、特に大量に発生し、工業的利用が可能であり、ある程度一定の品質を有していることから、石炭火力発電所の集塵設備により捕集されたフライアッシュについて、本発明は好適に適用される。
【0017】
本発明においては、上記のフライアッシュの内、微粉炭焚きボイラで発生したフライアッシュ(PCFアッシュ)については、未燃カーボン含有量による分別及び粒径による分別(分級)を行い、流動層ボイラで発生したフライアッシュ(FBFアッシュ)は、分別処理は行わず、使用に供される。
【0018】
即ち、微粉炭焚きボイラの集塵機から捕集されたPCFアッシュの原粉は、一般に、シリカ(SiO)を40質量%以上、特に45~60質量%含み、アルミナ(Al)を15質量%以上、特に20~35質量%含み、SiO/Al質量比が1.5~2.5程度の範囲にあり、その他の酸化物として、Fe、MgO、CaOなどを含んでおり、さらには未燃カーボンを含んでいる。また、その粒径は幅広く、平均すると10~50μm程度である。
【0019】
しかるに、このようなPCFアッシュをセメントに混合したとき、その未燃カーボン含有量や粒径は、セメントやコンクリートの品質に影響を与える。例えば、未燃カーボン含有量が多いと、モルタルやコンクリート表面に未燃カーボンが浮き出てしまい、黒色を呈するようになり、その外観を損なうおそれがある。また、未燃カーボンが、セメントやコンクリートに含まれるAE減水剤などの薬剤を吸着し、この結果、セメントやコンクリートのワーカビリティが低下することもある。
さらに、粒径の大きなものは活性炭的な性質を有しており、化学混和剤等の薬剤吸着量が多く、セメントやコンクリートの混合材としては、望ましいものではない。
尚、モルタルは、セメントと水を混合して得られるセメントペーストに砂を練り込んだものであり、コンクリートは、セメントペーストに砂(細骨材)及び小石(砂利)を練り込んで固化させたものである。
【0020】
従って、セメントやコンクリートの混合材として使用するPCFアッシュについては、JIS或いはASTMなどにより品質規格が設けられており(JIS A-6201、ASTM C618)、本発明では、このようなPCFアッシュについては、未燃カーボン含有量による分別及び粒径による分別(分級)を行う。
【0021】
一方、流動層ボイラから発生するFBFアッシュは、粒子形状が球形でないことからモルタル又はコンクリートの流動性を向上させる効果が小さかったり、石炭以外に由来する成分変動(例えば脱硫用のCa成分変動や石炭以外の燃料混焼により成分変動)によってセメントやコンクリートに混合したときに反応性が変動したりするなどの不都合を生じる。 このため、本発明では、FBFアッシュについては、PCFアッシュについて行われるような分別処理は行わず、焼成が行われるセメントクリンカー製造原料として使用する。
【0022】
<未燃カーボン含有量による分別>
本発明においては、PCFアッシュについては、先ず未燃カーボン含有量を測定し、未燃カーボン量の多いものと少ないものとに分別する。このPCFアッシュを400℃以上の温度に加熱することにより未燃カーボン含有量を低減させる方法が知られているが、このような熱処理を行うと、加熱条件によってはPCFアッシュが本来有しているセメントとの反応性が損なわれたり、また、粒子の焼結を生じてしまい、PCFアッシュが有する流動性も損なわれてしまう。従って、本発明では、未燃カーボン含有量を低減するための熱処理は行わず、未燃カーボン含有量によって分別し、この含有量によって、異なる形態でPCFアッシュを使用する。
【0023】
未燃カーボン含有量の測定方法は特に限定されないが、例えば、燃焼させて発生したCO・COガスを赤外線検出する方法;JIS A 6201に記載された方法で、1000℃での強熱減量を測定し、該強熱原料から未燃カーボン量を推定する方法;あるいはJCAS I-61により測定されたメチレンブルー吸着量に基づいて算出する方法;密かさ比重試験;マイクロ波を照射して未燃カーボン量を推定する方法などが挙げられる。
この測定は、所定時間毎に行うこともできるし、オンラインで連続して実施することもできる。
【0024】
未燃カーボン含有量による分別を行うための閾値としては、1~10質量%、特に3~7質量%の範囲から設定することである。この場合、この閾値よりも小さな補助閾値を設定し、所定の閾値よりも少ない未燃カーボン含有量を有するPCFアッシュを、さらに分別することもできる。即ち、補助閾値により分別された2種のPCFアッシュを適宜混合して使用することにより、未燃カーボン含有量の変動を小さくし、品質変動を有効に抑制することができる。
【0025】
<未燃カーボン含有量の少ないPCFアッシュ>
上記のように未燃カーボン含有量によって分別されたPCFアッシュの内、未燃カーボン量の少ないものは分級され、粒径の大きな粗粉と粒径の小さな微粉とに分別される。
このような分級により、セメント混合材やコンクリート混合材に適した粒度の微粉と、このような用途に適していない粒度の粗粉とが得られる。
即ち、上記の粗粉は、適宜、FBFアッシュと混合して、セメントクリンカー製造用原料として使用され、微粉は、セメント混合材やコンクリート混合材として使用される。
【0026】
分級の閾値は、通常、20~150μm、特に20~75μmの範囲内の値に設定される。
【0027】
分級方法は特に限定されず、一般に粉体の分級に用いられる分級方法が使用可能である。使用可能な分級方法の一例として、篩分級、気流分級等が挙げられる。特に篩分級を採用した際には、フライアッシュに含まれる未燃カーボンが更に低減されるため好ましい。換言すれば、篩分級を採用すれば、前記未燃カーボン含有量の値によってフライアッシュを分別する際の閾値を、より高い点に設定することができ、このため、より多くのフライアッシュを、セメント或いはコンクリートの混合材として得ることができる。
以下の表1に、FA1からFA3までの3種のフライアッシュ原粉を、75μm、45μm又は20μmの目開きの篩で分級した際の、微粉と粗粉の強熱減量(未燃カーボン量と強い相間がある)を示す。
【0028】
【表1】
【0029】
<未燃カーボン含有量の多いPCFアッシュ>
前述した未燃カーボン含有量によって分別されたPCFアッシュの内、未燃カーボン量の多いものは、セメント或いはコンクリートの混合材として不適当である。従って、このPCFアッシュは、上記の分級により得られた粗粉或いはFBFアッシュと混合されて、セメントクリンカー製造用原料として使用される。
【0030】
<使用までのフロー>
上記のようにPCFアッシュについて未燃カーボン含有量による分別及び粒径による分別を行い、分別されたPCFアッシュを、その性状に応じて、セメント或いはコンクリートの混合材、またはセメントクリンカー製造原料として使用するまでのフローの一例を図1に示した。
【0031】
図1において、A~Cは、石炭火力発電所プラントを示し、プラントA及びBは、微粉集塵機A1或いは集塵機B1を有する微粉炭焚きボイラを備えており、プラントCは、集塵機C1を有する流動層ボイラを備えている。
【0032】
プラントA内には、集塵機A1で捕集されたPCFアッシュを貯留するサイロA2が配設されているが、このプラントA内には、サンプリング口は設けられていない。従って、集塵機A1で捕集されたPCFアッシュは、サイロA2に貯留された後、プラントA外に配設されているサイロD1に輸送される。このサイロD1の下部には、サンプリング口D2が設けられており、捕集されたPCFアッシュについて、未燃カーボン含有量が測定される。
【0033】
従って、サイロD1に貯留されたPCFアッシュは、測定された未燃カーボン含有量の閾値に応じて分別され、分別貯蔵サイロに移送される。
図1は、閾値a及び補助閾値b(a>b)によりPCFアッシュを分別する例であり、3つの分別貯蔵サイロD3、D4、D5が設けられている。即ち、サイロD1に貯留されたPCFアッシュの未燃カーボン含有量xが閾値aよりも大きい(x>a)フライアッシュX3は、サイロD5に移送され、未燃カーボン含有量xが閾値aと補助閾値bとの間(b≦x≦a)のフライアッシュX2は、サイロD4に移送され、未燃カーボン含有量xが補助閾値bよりも小さい(x<b)フライアッシュX1は、サイロD3に移送されることとなる。
【0034】
また、プラントBが備えている集塵機B1の排出口にはサンプリング口B2が設けられており、この集塵機B1で捕集されたPCFアッシュは、サンプリング口B2でサンプリングされて未燃カーボン含有量が測定された後、サイロB3に貯留される。この場合、集塵機B1にサンプリング口B2を設ける代わりに、サイロB3の下部にサンプリング口B4を設けることもできる。
【0035】
従って、サイロB3に貯留されたPCFアッシュは、測定された未燃カーボン含有量の閾値に応じて分別され、前述したサイロD2に貯留されたPCFアッシュと同様、分別貯蔵サイロに輸送される。
即ち、閾値a及び補助閾値b(a>b)が設定されている場合、未燃カーボン含有量xが閾値aよりも大きいフライアッシュX3は、サイロD5に移送され、未燃カーボン含有量が閾値aと補助閾値bとの間のフライアッシュX2は、サイロD4に移送され、未燃カーボン含有量が補助閾値bよりも小さいフライアッシュX1は、サイロD3に移送されることとなる。
【0036】
さらに、プラントCが備えている集塵機C1で捕集されたFBFアッシュは、一旦サイロC2に貯留された後、サイロD5に輸送される。即ち、FBFアッシュは、サイロD5で未燃カーボン含有量xが閾値aよりも大きいPCFアッシュ(フライアッシュX3)と混合されることとなる。
【0037】
上記のように分別され、サイロD3に貯蔵されたPCFアッシュ(フライアッシュX1)とサイロD4に貯蔵されたPCFアッシュ(フライアッシュX2)とは、未燃カーボン含有量が一定の値となるような割合で混合され、分級設備D6に供給され、粗粉と微粉とに分別される。勿論、サイロD3及びサイロD4に貯蔵されたPCFアッシュを混合せず、それぞれを直接分級設備D6に供給して微粉と粗粉とに分別することも可能である。
上記のようにして分別された微粉は、セメント混合剤或いはコンクリート混合材として使用される。また、粗粉は、セメントクリンカー製造原料として使用されることとなるが、サイロD5に供給してFBFアッシュと混合してもよい。
サイロD5に貯留されたFBFアッシュとPCFアッシュとの混合物は、セメントクリンカー製造原料として使用される。
【0038】
上述した図1の例において、未燃カーボン含有量について、補助閾値bを設定せず、閾値aのみを設定した場合には、サイロD3は省略され、分別貯留サイロは、D4及びD5の2つとなり、これに応じて、上記と同様の操作が行われることとなる。
【0039】
尚、各種のプラントで発生したフライアッシュを輸送もしくは移送する方法は特に限定されず、距離がある場合にはトラック、船舶等により輸送してもよいし、同一事業所内あるいは近接事業所に存在する場合には、コンベア、輸送管等により輸送してもよい。
【0040】
また、2種以上のフライアッシュを混合する方法は、一般に粉体混合用に用いられる混合機を使用するか、又は輸送過程で混合することができる。例えば、粉体用の混合機は機械撹拌式、気流式などが挙げられる。また、輸送過程での混合では連続式粉体輸送混合機、空気圧送設備内での流動混合などが挙げられる。
【符号の説明】
【0041】
A、B,C:石炭火力発電プラント
A1,B1,C1:集塵設備
B2,B4,D2:サンプリング口
D6:分級設備
図1