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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-16
(45)【発行日】2022-02-21
(54)【発明の名称】キナクリドン色素とその調製プロセス
(51)【国際特許分類】
   C09B 48/00 20060101AFI20220214BHJP
   C07D 471/04 20060101ALN20220214BHJP
【FI】
C09B48/00 A CSP
C09B48/00 B
C07D471/04 112X
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2018559819
(86)(22)【出願日】2017-05-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-08-15
(86)【国際出願番号】 IB2017052796
(87)【国際公開番号】W WO2017195158
(87)【国際公開日】2017-11-16
【審査請求日】2020-05-01
(31)【優先権主張番号】201621016839
(32)【優先日】2016-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】511300949
【氏名又は名称】ガルダ,ケキ,ホルムスジ
【住所又は居所原語表記】Gharda House,48 Hill Road,Bandra(West),Mumbai 400 050,Maharashtra,India
(74)【代理人】
【識別番号】100125184
【弁理士】
【氏名又は名称】二口 治
(74)【代理人】
【識別番号】100188488
【弁理士】
【氏名又は名称】原谷 英之
(72)【発明者】
【氏名】ガルダ,ケキ,ホルムスジ
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-149493(JP,A)
【文献】特表2007-500254(JP,A)
【文献】特開平09-110867(JP,A)
【文献】国際公開第2005/014728(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第1823141(CN,A)
【文献】特開昭61-254670(JP,A)
【文献】米国特許第04758664(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B
C07D 471/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
学式(I)の2,9-ビス(イソプロピル)キナクリドンから成るキナクリドン色素の調製工程であって、前記のプロセスは次のステップから成る:
i) 4-イソプロピルアニリン(II)とジメチル スクシニルコハク酸(III)を少なくとも一つの鉱物酸触媒の存在下で、少なくとも一つの第一の液媒体の中で圧力範囲0.5 kg/cm 2 ~2.0kg/cm 2 、温度範囲65~90 ℃で第一の所定時間圧縮し、ジメチル2,5-ビス(4-イソプロピルフェニルアミノ)シクロヘキサ-1,4-ジエン-1,4-ジカルボン酸IV)を生産し、前記のジメチル2,5-ビス(4-イソプロピルフェニルアミノ)シクロヘキサ-1,4-ジエン-1,4-ジカルボン酸(IV)を温度範囲108~115 ℃へ圧力範囲1.0~4.0 kg/cm2で、メタニトロベンゼンスルフォン酸、少なくとも一つのアルカリ、水の存在下で加熱し、2,5-ビス(4-イソプロピルフェニルアミノ)ベンゼン-1,4-二酸のアルカリ金属塩を取得し、これを酸性化処理すると粗2,5-ビス(4-イソプロピルフェニルアミノ)ベンゼン-1,4-二酸(V)が得られ、また選択的に、前記の粗2,5-ビス(4-イソプロピルフェニルアミノ)ベンゼン-1,4-二酸(V)を第2液体媒体で洗浄しても2,5-ビス(4-イソプロピルフェニルアミノ)ベンゼン-1,4-二酸(V)を得る
【化2】

ii) 前記の2,5-ビス(4-イソプロピルフェニルアミノ)ベンゼン-1,4-二酸(V)を所定量のポリリン酸の存在下で温度範囲 90~150 ℃で所定時間環化し、粗2,9-ビス(イソプロピル)キナクリドン(VI)を得る。
【化3】
さらに、
iii) 前記の粗2,9-ビス(イソプロピル)キナクリドン(VI)を少なくとも一つの第三の液体媒体で洗浄し、乾燥して2,9-ビス(イソプロピル)キナクリドン(I)を得る。
【請求項2】
請求項で請求されるプロセスであって、ここに、第一の所定時間は3~7時間である。
【請求項3】
請求項で請求されるプロセスであって、ここに、第一の所定時間は5時間である。
【請求項4】
請求項で請求されるプロセスであって、ここに、少なくとも一つの鉱物酸触媒を硫酸、塩酸、リン酸から成るグループから選択する。
【請求項5】
請求項で請求されるプロセスであって、ここに、前記の少なくとも一つの鉱物酸触媒は硫酸である。
【請求項6】
請求項1で請求されるプロセスであって、ここに、メタニトロベンゼンスルフォン酸の数量対ジメチル スクシニルコハク酸 (III)の数量モル比範囲は0.5:1~1:1である。
【請求項7】
請求項で請求されるプロセスであって、ここに、前記のメタニトロベンゼンスルフォン酸とジメチル スクシニルコハク酸(III)数量モル比は0.8:1である。
【請求項8】
請求項で請求されるプロセスであって、ここに、ポリリン酸と2,5-ビス(4-イソプロピルフェニルアミノ)ベンゼン-1,4-二酸(V)の数量モル比は3:1~7:1である。
【請求項9】
請求項で請求されるプロセスであって、ここに、ポリリン酸と2,5-ビス(4-イソプロピルフェニルアミノ)ベンゼン-1,4-二酸(V)の数量モル比は3.5:1である。
【請求項10】
請求項で請求されるプロセスであって、ここに、第一の液媒体と第2液体媒体は少なくとも一つの、ジメチルアセトアミド、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、水とその混合液から成るグループから独立的に選択する。
【請求項11】
請求項で請求されるプロセスであって、ここに、前記の第一の液媒体はメタノール、前記の第2液体媒体は水である。
【請求項12】
請求項で請求されるプロセスであって、ここに、前記第三の液体溶媒はイソブチルアルコール、ジメチルアセトアミド、メタノール、プロパノール、イソプロパノール、水からなる群から少なくとも1つを選択する。
【請求項13】
請求項で請求されるプロセスであって、ここに、4-イソプロピルアニリン(II)とジメチル スクシニルコハク酸(III)の数量モル比2.1:1~4:1である。
【請求項14】
請求項で請求されるプロセスであって、ここに、4-イソプロピルアニリン(II)とジメチル スクシニルコハク酸(III)の数量モル比は2.1:1である。
【請求項15】
請求項で請求されるプロセスであって、ここに、ジメチル スクシニルコハク酸(III)と水の数量モル比は1:300~1:900である。
【請求項16】
請求項で請求されるプロセスであって、ここに、ジメチル スクシニルコハク酸(III)と水の数量モル比は1:500である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明はキナクリドン色素に関する。
【0002】
用語の定義
本発明で使用される以下の用語は一般的に次の定義の意味を持つものとして意図されており、文脈上別段の意味を示す場合を除く。
【0003】
レジスト塩: 「レジスト塩」という用語はマイルドな酸化剤として機能するメタニトロベンゼンスルフォン酸を意味する。
【背景技術】
【0004】
発明技術の背景
キナクリドン色素は濃い赤系と青系のマゼンタシェードを呈し、優れる耐熱性と耐光堅ろう性があり、卓越した着色力がある。粗キナクリドン色素化合物の粉体は暗い茶色で、色素としての価値はない。粗キナクリドン色素化合物は仕上げ後には強い赤系の黄色か赤系の青いシェードを呈する。キナクリドン色素はプラスチック、インク、コーティング等類似の用途に幅広く応用可能である。
【0005】
置換と非置換キナクリドン色素化合物はともに粗形態の対応するジヒドロキナクリドンを酸化して調製し、粗キナクリドン色素化合物を粉砕し、相指向性有機化合物と接触させるなど適合する仕上げ工程によってターゲットの色素に変換する。
【0006】
本明細書にはキナクリドン色素とその調製プロセスを開示する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明の目的
本発明の目的の一部は少なくとも1つの実施例を本明細書において取り上げることでじゅうぶんであるが、以下のものである。
【0008】
本発明の一つの目的はキナクリドン色素を提供することである。
【0009】
本発明のもう一つの目的はキナクリドン色素の簡素な調製プロセスを提供することである。
【0010】
本発明のその他の目的と優位性は本発明の範囲をこれに限定することは意図されていない次の悦明によってさらに明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明の要約:
本発明の一つの局面に従って、化学式(I)で表す2,9-ビス(イソプロピル) キナクリドンから組成されるキナクリドン色素を提供する。
【化1】
【0012】
本発明の他の一つの局面に従って、化学式Iの化合物で組成されるキナクリドン色素の調製プロセスを提供する。このプロセスは次から構成される: 4-イソプロピルアニリン(II)とジメチル スクシニルコハク酸(III)を 少なくとも一つの鉱物酸触媒の存在下において少なくとも一つの第一の液媒体の中に圧力範囲0.5~2.0 kg/cm2、温度範囲65~90 ℃で圧縮し、ジメチル2,5-ビス(4-イソプロピルフェニルアミノ)シクロヘキサ-1,4-ジエン-1,4-ジカルボン酸 (IV)を生産し、ジメチル2,5-ビス(4-イソプロピルフェニルアミノ)シクロヘキサ-1,4-ジエン-1,4-ジカルボン酸(IV)を温度範囲108~115 ℃、圧力範囲1.0~4.0 kg/cm2でレジスト塩、少なくとも一つのアルカリ、水の存在下において加熱し、2,5-ビス(4-イソプロピルフェニルアミノ)ベンゼン-1,4-二酸のアルカリ金属塩を取得し、これを酸性にすると2,5-ビス(4-イソプロピルフェニルアミノ)ベンゼン-1,4-二酸(V)に変換されるが、代替的には、2,5-ビス(4-イソプロピルフェニルアミノ)ベンゼン-1,4-二酸(V)を少なくとも一つの第2液体媒体で洗浄して精製して精製2,5-ビス(4-イソプロピルフェニルアミノ)ベンゼン-1,4-二酸 (V)を取得し、次に、精製2,5-ビス(4-イソプロピルフェニルアミノ)ベンゼン-1,4-二酸(V)を所定量のポリリン酸の存在下で温度範囲90~150 ℃で第二の所定時間環化し、粗2,9-ビス(イソプロピル)キナクリドン(VI)を得、粗2,9-ビス(イソプロピル)キナクリドン(VI)を少なくとも一つの第三の液体媒体で洗浄し、2,9-ビス(イソプロピル)キナクリドン(I)から組成されるキニアクリドン色素を取得する。請求項2で請求されるプロセスであって、ここに、第一の所定時間は3~7時間である。
【0013】
本発明の実施形態に従い、少なくとも一つの鉱物酸触媒を硫酸、塩酸、リン酸から成るグループから選択する。
【0014】
本発明の実施形態に従い、レジスト塩とジメチル スクシニルコハク酸(III)の数量比は範囲0.5:1~1:1である。
【0015】
本発明の実施形態に従い、ポリリン酸と2,5-ビス(4-イソプロピルフェニルアミノ)ベンゼン-1,4-二酸 (V)の数量比は3:1~7:1とする。
【0016】
本発明の実施形態に従い、第一の液媒体と第2液体媒体は少なくとも一つの、ジメチルアセトアミド、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、水とその混合液から成るグループから独立的に選択するものとする。
【0017】
本発明の実施形態に従い、第三の液体媒体は少なくとも一つのイソブチルアルコール、ジメチルアセトアミド、メタノール、プロパノール、イソプロパノール、水から成るグループから選択する液とする。
【0018】
本発明の実施形態に従い、4-イソプロピルアニリン(II)とジメチル スクシニルコハク酸(III)の数量比は2:1~4: 1である。
【0019】
本発明の実施形態に従い、ジメチル スクシニルコハク酸(III)と水の数量比は1:300~1:900である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
発明の詳細な説明
本発明はキナクリドン色素及びその調製プロセスに関する。
【0021】
本発明の一つの局面に従い、化学式Iで表す2,9-ビス(イソプロピル)キナクリドンから成るキナクリドン色素を提供する。
【化2】
【0022】
本発明のもう1つの側面に従い、以下の手順から構成されるイオン液の調製プロセスを提供する:
【0023】
ステップI: 圧縮後、酸化および加水分解
【化3】
【0024】
まず、4-イソプロピルアニリン (II)をジメチル スクシニルコハク酸 (III)とともに第一の液媒体内で少なくとも一つの鉱物酸触媒と接触させつつ、圧力範囲0.5~2.0 kg/cm2、温度範囲65~90 ℃で第一の所定時間圧縮し、ジメチル 2,5-ビス(4-イソプロピルフェニルアミノ)シクロヘキサ-1,4-ジエン-1,4-ジカルボン酸(IV)を取得する。
【0025】
次に、化合物IVを温度範囲108~115 ℃までレジスト塩(ナトリウム-3-ニトロベンゼンスルホン酸塩)、少なくとも一つのアルカリ、水と接触させつつ圧力範囲1.0 kg/cm2~4.0 kg/cm2で加熱し、2,5-ビス(4-イソプロピルフェニルアミノ)-1,4-二酸のアルカリ金属塩を取得し、これをさらに酸性化して粗2,5-ビス(4-イソプロピルフェニルアミノ)-1,4-二酸(V)を得る。
【0026】
あるいは、化合物Vをジメチルアセトアミド、メタノール、水ないしこれらの混合液等適切な液体媒体により洗浄して精製してもよい。
【0027】
本発明の実施形態に従い、第一の所定時間は3~7時間である。
【0028】
本発明の一実施形態に従い、第一の所定時間は5時間である。
【0029】
本発明の一実施形態に従い、 4-イソプロピルアニリン(II)とジメチル スクシニルコハク酸(III)の数量比は2.1:1である。
【0030】
化合物Vは97 %を超す純度で取得される。さらに、化合物Vの構造を陽子NMRと質量分光分析により確認する。
【0031】
本発明の実施形態に従い、第一の液媒体はメタノール、エタノール、イソプロパノール、プロパノール、ブタノールからなるグループから選択する少なくとも一つのものである。
【0032】
本発明の実施形態に従い、鉱物酸触媒は硫酸、塩酸、リン酸からなるグループから選択する少なくとも一つのものである。
【0033】
本発明の一実施形態に従い、鉱物酸触媒は硫酸である。
【0034】
本発明の実施形態に従い、4-イソプロピルアニリン(II)とジメチル スクシニルコハク酸(III)の数量比は2.:1~4:1である。
【0035】
本発明の一実施形態に従い、 4-イソプロピルアニリン(II)とジメチル スクシニルコハク酸(III)の数量比は2.1:1である。
【0036】
レジスト塩は酸化剤として用いる。
【0037】
本発明の一実施形態に従い、レジスト塩とジメチル スクシニルコハク酸(III)の数量モル比は0.5:1~1:1の範囲である。
【0038】
本発明の一実施形態に従い、レジスト塩とジメチル スクシニルコハク酸(III)の数量比は0.8:1である。
【0039】
本発明の実施形態に従い、アルカリはNaOHとKOHからなるグループから選択する少なくとも一つのものである。
【0040】
本発明の一実施形態に従い、アルカリはNaOHである。
【0041】
本発明の実施形態に従い、アルカリとジメチル スクシニルコハク酸 (III)の数量モル比は3:1~7:1の範囲である。
【0042】
本発明の実施形態に従い、ジメチル スクシニルコハク酸(III)と水の数量比は1:300~1:900の範囲である。
【0043】
本発明の一実施形態に従い、ジメチル スクシニルコハク酸(III)と水の数量比は1:500である。
【0044】
ステップII: Vの環化
【化4】
【0045】
化合物Vを温度範囲90~150 ℃でポリリン酸を使用して環化する。環化プロセスは3~5時間の範囲で行い、次に反応生成物を水中に浸し、残留物と上澄みを含む懸濁液を得る。残留物を分離して水で洗浄し、粗キナクリドン色素化合物VIを得る。
【0046】
本発明の一実施形態に従い、ポリリン酸と2,5-ビス(4-イソプロピルフェニルアミノ)ベンゼン-1,4-二酸(V)の数量比は3.5:1である。
【0047】
ステップIII: 精製
粗キナクリドン色素化合物(VI)を少なくとも一つの第三の液体媒体で洗浄し乾燥して、2,9-ビス(イソプロピル)キナクリドン色素(I)を得る。
【化5】
【0048】
本発明の実施形態に従い、第三の液体媒体は少なくとも一つのイソブチルアルコール、ジメチルアセトアミド、メタノール、プロパノール、イソプロパノール、水から成るグループから選択する液とする。
【0049】
本発明の実施形態に従い、2,9-ビス(イソプロピル)キナクリドン色素 Iのオイル吸収価は色素100 gに対し52 gである。
【0050】
2,9-ビス(イソプロピル)キナクリドン色素(I)の物性、薬品耐性、溶剤耐性、熱安定性等の堅牢性を検査した。
【0051】
色素(I)の酸とアルカリへの耐性を分析し、これらの特性を市販色素赤色122号と比較した。結果を表1に纏めた。
【0052】
【表1】
【0053】
色素は両方とも、Iは酸とアルカリ耐性に優れ、色素Iの結果は市販の色素赤色122号とほぼ同じであった。2,9-ビス(イソプロピル)キナクリドン色素の薬品耐性は「極めて優れる」ことが判明した(2%塩酸と2%水酸化ナトリウム)
【0054】
さらに、色素Iの溶剤耐性を検査し、これらの特性を市販の色素赤色122号と比較した。表2に溶剤に対する薬品耐性を要約する。
【0055】
【表2】
【0056】
両色素とも溶剤耐性は極めてよいから優れることが判明した。溶剤耐性の結果は市販の色素赤色122号とほぼ同じであることが判明した。溶剤堅牢性(キシレン、メチルエチルケトン、n-ブタノール、メタノール、トルエン、酢酸ブチル等)は「極めてよい」から「優れる」ことが判明した
【0057】
色素(I)をQUVテストに1000時間暴露し、色素(I)の耐候性を検査した。結果を表3にまとめる。
【0058】
【表3】
DL* = 明度/暗さ値の差 (+ = より明るい ‐ = より暗い)
Da* = 赤/緑軸上の差(+ = 赤寄り‐ = 緑寄り)
Db* = 黄/青軸上の差(+ = 黄色寄り‐ = 青寄り)
DC* = 彩度の差(+ = 明るめ‐ = 暗め)
DH* = 色合いの差 DE* = 色値の差合計
【0059】
色素Iは耐候性に優れることが判明した。
【0060】
さらに、市販の色素赤色122号と比較して色素Iの耐光堅ろう性を検査した。結果を表4に纏めた。
【0061】
【表4】
【0062】
ブルーウールスケールで着色性能を計測およびキャリブレーションする。染料 従来このテストは工業用に開発されたものであるが、繊維品現在ではインク着色料の耐光堅ろう性尺度として印刷業界や色素業界が採用している印刷業。
【0063】
両方の色素とも耐光堅ろう性は優れることが判明した。
【0064】
塗料用途における2,9-ビス(イソプロピル)キナクリドン色素(VI)のL、a、b値は、L= 42.96、a*=57.23、b*=30.99、C*=65.08、h=28.44である。
【0065】
【表5】
【0066】
色素Iは温度が300 ℃を超すと安定化することが判明した。色素の熱安定性をキナクリドン色素赤色122号と色素紫19号で比較した。
【0067】
本発明を以下の限定されることのない実施形態によってさら説明する。但し、以下の例は説明のためにのみ既述されており、本発明の範囲を限定するものとは解釈されてはならない。以下の実験は大規模化して工業/商業スケールにでき、得られる結果は工業スケールまで外挿することができる。
【0068】
実験内容:
実験1:2,5-ビス(イソプロピルフェニルアミノ)ベンゼン-1,4-二酸(V)の調製
2リットルのオートクレーブにメタノール(1440g、45.0モル)、p-クミジン(283.5g、2.1モル)、硫酸(4.5g、0.0465モル)、ジメチル2,5-ジオキソシクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸(DMSS) (228g 1.0モル)を投入して第一の混合液を得た。第一の混合液を圧力1.2 kg/cm2 で78 ℃に5時間加熱した。反応の進行をTLCで観察した。反応の完了後、第一の混合液を室温まで冷まし、レジスト塩(198g、0.88モル)、焼灼アルカリ液(342g、4.10モル)、水(7000 g)を加えて第二の混合液とした。第二の混合液を115 ℃に圧力3.2 kg/cm2で5時間加熱した。反応の完了後、第二の混合液を水で希釈し、ろ過した。硫酸を添加してろ過し沈殿を得た。沈殿を水で洗浄して中性pHにし、洗浄した沈殿を乾燥して2,5-ビス(イソプロピルフェニルアミノ)ベンゼン-1,4-二酸(V)、390-399g (90~92%))を得た。HPLC分析で純度98.5%であることがわかった。
化合物VのLCMSはモル重量432であった。
【0069】
VのFTIRスペクトルは3363 cm-1で吸光帯域を示し、NHが帯域2959 cm-1で伸展していることを意味しており、COOHグループのヒドロキシルが存在することを示し、さらに帯域1655 cm-1ではCOOHグループのカルボニル基が存在するこを示した。
【0070】
Vの1H-NMRを溶剤としてDMSO-d6で記録した。スペクトルは、イソプロピルグループのメチルグループ4個((V)構造上の位置1、2、19、20)の陽子12個に対応するδ 1.17-1.21で倍加。δ 2.74-2.94 cm-1 でマルチプレートが-CH陽子2個に(位置3,8)対応し、δ 7.10 -7.17でのダブレットが芳香陽子4個(位置4,6,15,17)に対応し、δ 7.06 -7.21でのダブレットが芳香陽子2個(位置5,7,14,16)に対応し、δ 7.82でのシングレットが芳香陽子2個(位置10,12)に対応し、δ 8.80での広域信号がNHグループの陽子2個(位置8、13)に対応し、δ 13.4での広域信号はNHグループの陽子2個(位置9、11)に対応する。以上からNMRスペクトルにより化合物(V)の構造を確認した。
【化6】
【0071】
実験2:2,5-ビス(イソプロピルフェニルアミノ)ベンゼン-1,4-二酸の環化
容量1リットルの3ネック樹脂ケトルにポリリン酸700 g (114-116%)を連続して攪拌しつつ投入し、ゆっくりと90 ℃まで加熱した。このケトルに2,5-ビス (イソプロピルフェニルアミノ) ベンゼン-1,4-二酸(V) 200gを添加した。(V)を添加後、反応物を122 ℃へ3時間で加熱し、次に反応物を冷水の中で冷却してスラリーを得た。このスラリーをろ過し、水で洗浄し、pH中性になるまで10%ソーダ灰水溶液を添加し、固形成分比率が22~28%の粗色素(VI)を95-96%の歩留まり(175 g)で得た。
【0072】
粗化合物(VI)は乾燥するとミュラーアプリケーションでは暗みがかった影に見え、色値は皆無であった。このようにメタノール、イソブチルアルコール、ジメチルアセトアミド、水またはこれらの混合液等各種の溶媒中の色素形成を実施し、色素Iを得た。
【0073】
2,9-ビス(イソプロピル)キナクリドンは表6に示すような元素分析値を示すのが特徴的である。
【0074】
【表6】
【0075】
2,9-ビス(イソプロピル)キナクリドンのC、H、Nの理論値は観測値と一致した。
2,9-ビス(イソプロピル)キナクリドンはFTIRスペクトルの吸光帯域3431cm-1となるのが特徴的であって、これは-NH伸展を示し、帯域1632 cm-1での吸光はカルボニルグループの存在を示す。
【0076】
実験3:精製
2,9-ビス(イソプロピル)キナクリドン(VI)の粗ウェットケーキ(22-28% 固形成分)をイソブチルアルコール、ジメチルアセトアミド、メタノール、水またはこれらの混合液で10~15回洗浄し、最終色素2,9-ビス(イソプロピル)キナクリドンIを得た。
【0077】
技術進歩
上記に説明された本発明はポリマーの経済的かつ効率的塩素処理であるポリマーの塩化プロセス実現に限定されることなく、以下の項目を実現する優位性を有する:
― キナクリドン色素、さらに
― キナクリドン色素の簡素な生産工程。
【0078】
本明細書を一貫して用語「成す」「構成する」やその類語としての「組成する」または「なしている」は記載されている要素、整数または手順または要素、整数または手順の群を含むがその他の要素、整数または手順またはその他の要素、整数または手順の群を除くことことなくこれらを含むことを含意している。
【0079】
「少なくとも」または「少なくとも1つの」という表現の使用は、1つまたは複数の目的物質または結果を得るために、本発明の実施例において使用される場合があることに従い、1つまたは複数の要素または成分または数量の使用を示唆している。本発明のいくつかの実施形態が説明されたが、これらの実施形態は例までとしてのみ記載されているのであって、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。本発明の調製に関する処方または変更は、本発明の範囲内である限り、本発明を検討すれば直ちに、当分野に関する技能を有する者には可能でありうる。このような変種や変更は本発明の意図する範囲に含まれる。
【0080】
異なる物理パラメータ、寸法や数量を表す数値は概数であって、物理パラメータ、寸法や数量に代入された数値より高い値は本発明の範囲に含まれることが意図されている。但し、明細書に逆の記載がなされている場合はこの限りではない。
【0081】
本発明の特定の特長を相当強調してきたが、異なる修正を行うことができ、また、発明の原理から乖離することなく優先実施形態には多くの追加が可能である。本発明または優先実施形態の特質を修正できることは、本発明分野の専門的技能を有する者には明らかであって、この際、以上の説明内容が単に本発明を説明するためのものであり、限定的なものとして解釈されてはならないことを明確に理解する必要がある。