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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-16
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】改善されたインターフェロン療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20220128BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20220128BHJP
   A61K 38/21 20060101ALI20220128BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220128BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220128BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220128BHJP
【FI】
A61K39/395 T
A61K35/76
A61K38/21
A61K48/00
A61P35/00
A61P43/00 121
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018561193
(86)(22)【出願日】2017-02-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-03-28
(86)【国際出願番号】 US2017017568
(87)【国際公開番号】W WO2017142818
(87)【国際公開日】2017-08-24
【審査請求日】2019-09-30
【審判番号】
【審判請求日】2020-05-19
(31)【優先権主張番号】62/295,268
(32)【優先日】2016-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519162156
【氏名又は名称】トライゼル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】パーカー, ナイジェル
【合議体】
【審判長】原田 隆興
【審判官】冨永 みどり
【審判官】進士 千尋
(56)【参考文献】
【文献】BALD, T. et al.,Cancer Discov,2014年,Vol.4, No.6,p.674-87
【文献】河村伊久雄,結核,2013年,Vol.88, No.3,p.315-21
【文献】BOEHM, B.E. et al.,Urol Clin North Am,2015年,Vol.42,pp.159-68
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K38/00,39/395
CAplus(STN)
MEDLINE(STN)
BIOSIS(STN)
EMBASE(STN)
Google
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インターフェロンでヒトがん患者を処置する方法において使用するための組合せ物であって、前記組合せ物は、インターフェロンを誘導する剤と、プログラム細胞死タンパク質1に対するモノクローナル抗体とを含み、前記方法は、
a.インターフェロンで処置され得るがんを有すると診断されたヒト患者に、インターフェロンを誘導する前記剤を治療有効量で投与するステップであって、インターフェロンが、プログラム細胞死タンパク質リガンド(PD-L1)をアップレギュレートする、ステップと、
b.前記ヒトに、プログラム細胞死タンパク質1に対する前記モノクローナル抗体を投与するステップであって、プログラム細胞死タンパク質1に対する前記モノクローナル抗体が、インターフェロンが引き起こすT細胞機能の減少を改善するのに有効な量で投与される、ステップと
を含み、これによりプログラム細胞死タンパク質1に対する前記モノクローナル抗体が、インターフェロンにより引き起こされるT細胞機能の減少を改善し、前記剤は、がんを有すると診断された前記ヒト患者によるインターフェロンの内因的な発現を誘導し、前記剤は、発現可能なインターフェロン導入遺伝子を有するウイルスベクターであり、かつ、インターフェロンはI型インターフェロンであって、前記I型インターフェロンがインターフェロンアルファを含む、組合せ物。
【請求項2】
インターフェロンでヒトがん患者を処置する方法において使用するための組合せ物であって、前記組合せ物は、インターフェロンを誘導する剤と、プログラム細胞死タンパク質1に対するモノクローナル抗体とを含み、前記方法は:前記ヒトがん患者に、インターフェロンを誘導する前記剤を治療有効量で投与するステップであって、インターフェロンが、プログラム細胞死タンパク質リガンド(PD-L1)をアップレギュレートする、ステップと、プログラム細胞死タンパク質1に対する前記モノクローナル抗体をインターフェロンのT細胞抑制効果を改善するのに有効な量で投与するステップとを含み、前記剤は、前記がん患者によるインターフェロンの内因的な発現を誘導し、前記発現が、治療有効量のインターフェロンの発現を含み、前記剤は、発現可能なインターフェロン導入遺伝子を有するウイルスベクターであり、かつ、インターフェロンはI型インターフェロンであって、前記I型インターフェロンがインターフェロンアルファを含む、組合せ物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
出願人: FKD Therapies Limited,Chinnor,Oxfordshire England,英国の国民
【0002】
関連出願:本願は、2016年2月15日に出願された米国仮出願番号第62/295268号に基づく優先権を主張しており、その内容は、参考として本明細書に援用される。
【0003】
政府に支援された研究&開発:なし
【0004】
共同研究契約:出願人は、とりわけ、M.D.Anderson Cancer Center(Houston,Texas)およびThe Mayo Clinic (Rochester,Minnesota)と、本願に関する研究のための研究契約を有している。
【0005】
配列表:なし
【0006】
発明者による先の公示:なし
【背景技術】
【0007】
背景
インターフェロンは、多くの臨床的利益を有する。例えば、インターフェロンは、免疫系をアップレギュレートすることが公知である。したがって、それは、がん細胞を識別および攻撃するために患者の自然免疫系をリクルートするのに有用である可能性がある。しかしながら、抗がん剤としてのインターフェロン有効性は現在までに、十分ではないことが証明されている。これは不可解なことであった。
【0008】
例えば、現在米国で承認されている最も有効な膀胱がん処置は、尿道内Bacillus Calmette-Guerinワクチンである。この抗原性ワクチンは、膀胱細胞がインターフェロンを発現するように刺激し、これは、今度は、患者の自然免疫系をリクルートして、より良くがん細胞表面抗原を認識し、がん細胞を攻撃すると考えられている。しかしながら、症例の3分の1より多くでは、ワクチンは有効ではない。
【0009】
同様に、外因的に製造されたインターフェロンポリペプチドの膀胱内注入が、膀胱がんを処置するために試験されているが、期待したほど有効でないことが分かっている。
【0010】
本発明者は、その理由を発見し、それを手直しする方法を考え出した。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
簡単な説明
本発明者は、インターフェロン発現を刺激することに加えて、(外因的に投与されたか、または内因的発現をアップレギュレートするワクチンもしくは他の剤に応答して発現したいずれかの)インターフェロンはまた、CD279とも呼ばれる、プログラム細胞死タンパク質1の発現を刺激することを発見した。したがって、本発明者は、以前に認識されていないインターフェロン療法の副作用を識別した。インターフェロンは、患者の免疫系のある特定の局面を有利に刺激するが、プログラム細胞死タンパク質1の発現もまたアップレギュレートする。結果としてのプログラム細胞死タンパク質1の増加は、今度は、保護的T細胞機能をダウンレギュレートする。これは、がん細胞表面抗原を有する細胞を識別および攻撃することにおけるT細胞の有効性を損なう。したがって、インターフェロンは、2つの相反する作用を生成する。それは免疫系活性を増大させるが、がん細胞表面抗原を識別する免疫系の能力を阻害する。
【0012】
したがって、本発明者は、プログラム細胞死タンパク質1の発現を阻害する剤を共投与することによるインターフェロン療法の改善を提案する。これは、インターフェロンがその療法的可能性をより完全に達成することを可能にする。
本発明の実施形態の例として、以下の項目が挙げられる。
(項目1)
インターフェロンでヒト患者を処置する方法であって、
a.ヒト患者において、インターフェロンで処置され得る状態を診断するステップと、その後、
b.第1の剤を投与するステップであって、前記第1の剤が、ヒト免疫系チェックポイントの機能に影響するのに十分な量で前記ヒト患者のインターフェロンレベルを増大させることができ、これにより前記チェックポイントが免疫機能を減少させる、ステップと、
c.前記ヒトに、同じヒト免疫系チェックポイントの機能に影響する第2の剤を投与するステップであって、前記第2の剤が、前記第1の剤が前記チェックポイントに対して有する免疫機能の減少を実質的に改善するのに有効な量で投与される、ステップと
を含み、これにより第2の化合物が、前記第1の剤により引き起こされる前記免疫機能の減少を実質的に改善する、方法。
(項目2)
本質的に項目1に記載の方法からなる方法。
(項目3)
前記患者が、前記第1の剤および前記第2の剤でほぼ同時に処置される、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記第1の剤が、外因的に生成されたインターフェロンポリペプチドを含む、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記第1の剤が、前記患者がインターフェロンを内因的に発現することを誘導する剤を含む、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記第1の剤が、発現可能なインターフェロン導入遺伝子を有するベクターである、項目5に記載の方法。
(項目7)
前記第1の剤が、微生物抗原、ウイルス抗原および微生物またはウイルス抗原アナログからなる群から選択される、項目5に記載の方法。
(項目8)
前記第1の剤が、ポリI:Cを含むウイルス抗原アナログを含む、項目7に記載の方法。
(項目9)
前記第1の剤が、細菌抗原を含む、項目7に記載の方法。
(項目10)
前記第1の剤が、ウイルス抗原を含む、項目7に記載の方法。
(項目11)
前記第1の剤が、抗原性ウイルスを含む、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記ヒト患者のインターフェロンレベルが、阻害性ヒト免疫系チェックポイントの機能を増大させるのに十分な量で増大される、項目1に記載の方法。
(項目13)
前記阻害性チェックポイントが、プログラム細胞死タンパク質1および細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4からなる群から選択される、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記阻害性チェックポイントが、プログラム細胞死タンパク質1を含み、前記第2の剤が、プログラム細胞死タンパク質1またはプログラム細胞死タンパク質1リガンドに結合する、項目13に記載の方法。
(項目15)
前記状態が、がんを含む、項目1に記載の方法。
(項目16)
ヒト免疫系チェックポイントの機能に影響し、これにより前記チェックポイントがヒト免疫機能を抑制しない剤であって、ヒト患者に対するインターフェロンの免疫抑制効果を消失させることにおける使用のためであり、インターフェロンの前記免疫抑制効果を低減させるのに有効な量で提供される、剤。
(項目17)
ヒト療法剤としてのインターフェロンの有効性を改善するための方法であって、
a.ヒト患者において、インターフェロンで処置され得る状態を診断するステップと、その後、
b.前記ヒトに、阻害性ヒト免疫系チェックポイントを阻害する第2の剤を投与するステップであって、前記剤が、免疫活性を減少させることに対する前記チェックポイントの活性を低減させるのに十分な量で投与される、ステップと、
c.前記ヒトに、前記状態を処置するのに有効な量で前記ヒト患者のインターフェロンレベルを増大させる第1の剤を投与するステップと
を含む、方法。
(項目18)
本質的に、
a.ヒトに、阻害性ヒト免疫系チェックポイントを阻害する第2の剤を投与するステップと、
b.前記ヒトに、前記ヒト患者のインターフェロンレベルを増大させる第1の剤を投与するステップと
からなる方法。
(項目19)
前記第2の剤が、前記チェックポイントの活性を低減させるのに十分な量で投与される、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記第2の剤が、前記患者がインターフェロンを内因的に発現することを誘導し、前記第2の剤が、発現可能なインターフェロン導入遺伝子を有するベクターを含む、項目19に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、RT112およびSW780ヒト細胞株について、インターフェロン曝露に応答したPD-L1発現を測定するグラフである。横軸:インターフェロン量。縦軸:発現したポリペプチド。
【0014】
図2図2は、RT112およびSW780ヒト細胞株について、インターフェロン曝露に応答したTRAIL発現を測定するグラフである。横軸:インターフェロン量。縦軸:発現したポリペプチド。
【0015】
図3図3は、RT112およびSW780ヒト細胞株について、インターフェロン曝露に応答したIRF1発現を測定するグラフである。横軸:インターフェロン量。縦軸:発現したポリペプチド。
【0016】
図4図4は、SW780ヒトがん細胞株における、増加するインターフェロンアルファに対するin vitro用量応答を示すPAGEゲルの写真である。横軸:インターフェロン量。縦軸:発現したポリペプチド。
【0017】
図5図5は、インターフェロン曝露に応答したIRF1、FOXA1およびPD-L1のRT112細胞における発現を測定する。実施例2を参照のこと。IRF1を、インターフェロンで刺激される遺伝子対照として使用した。FOXA1は、インターフェロン曝露後に発現を変化しなかったI型インターフェロンで調節される遺伝子の例である。
【0018】
図6図6は、インターフェロン曝露に応答したIRF1、FOXA1およびPD-L1のUC3細胞における発現を測定する。実施例2を参照のこと。IRF1を、インターフェロンで刺激される遺伝子対照として使用した。FOXA1は、インターフェロン曝露後に発現を変化しなかったI型インターフェロンで調節される遺伝子の例である。
【0019】
図7図7は、インターフェロン曝露に応答したIRF1、FOXA1およびPD-L1のT24細胞における発現を測定する。実施例2を参照のこと。IRF1を、インターフェロンで刺激される遺伝子対照として使用した。FOXA1は、インターフェロン曝露後に発現を変化しなかったI型インターフェロンで調節される遺伝子の例である。
【0020】
図8図8は、インターフェロン曝露に応答したIRF1、FOXA1およびPD-L1のUC14細胞における発現を測定する。実施例2を参照のこと。IRF1を、インターフェロンで刺激される遺伝子対照として使用した。FOXA1は、インターフェロン曝露後に発現を変化しなかったI型インターフェロンで調節される遺伝子の例である。
【0021】
図9図9は、6レーンのPAGEゲルの写真である。それは、BBN972細胞をマウスインターフェロンに曝露した後のPD-L1ポリペプチドの存在を測定する。レーンは、(左から右へ)0(零)、1×10、1×10、1×10、1×10および1×10国際単位インターフェロン/培地mLである。
【0022】
図10図10は、6レーンのPAGEゲルの写真である。それは、MB49 #1(MB49-luc)細胞をマウスインターフェロンに曝露した後のPD-L1ポリペプチドの存在を測定する。レーンは、(左から右へ)0(零)、1×10、1×10、1×10、1×10および1×10国際単位インターフェロン/培地mLである。
【0023】
図11図11は、6レーンのPAGEゲルの写真である。それは、BBN972細胞をマウスインターフェロンに曝露した後のアクチンポリペプチドの存在を測定する。レーンは、(左から右へ)0(零)、1×10、1×10、1×10、1×10および1×10国際単位インターフェロン/培地mLである。
【0024】
図12図12は、6レーンのPAGEゲルの写真である。それは、MB49 #1細胞をマウスインターフェロンに曝露した後のアクチンポリペプチドの存在を測定する。レーンは、(左から右へ)0(零)、1×10、1×10、1×10、1×10および1×10国際単位インターフェロン/培地mLである。
【0025】
図13図13は、ポリI:Cの腹腔内注射に応答したマウスにおける血清インターフェロンを測定する。
【0026】
図14図14は、6時間でのポリI:Cの腫瘍内注射に応答したマウスにおける血清インターフェロンを測定する。
【0027】
図15図15は、ポリI:C(500μg)腹腔内注射24時間後の腫瘍内PD-L1発現を測定する。
【0028】
図16図16は、ヒトインターフェロンアルファ2B導入遺伝子を有するINSTILADRIN(商標)組換え複製欠損アデノウイルス遺伝子療法ベクターで処置したヒトにおけるRNA発現を示す。
【0029】
図17図17は、皮下C57BL6/J腫瘍についての、時間に対するMB49腫瘍サイズを示す(1群当たりn=5匹の雌マウス)。処置は、腫瘍移植後10日目に開始する200μg q3(1日1回、3日間)である。エラーバーは、SEMを表す。
【0030】
図18図18は、腫瘍を植え付け、生理食塩水(最低部の線)、IgG(次に高い線)、抗PD1モノクローナル抗体(次に高い線)、ポリI:C(次に高い線)およびポリI:Cと抗PD1モノクローナル抗体との組合せ(最も高い線)で処置した雌マウスについてのカプラン・マイヤー生存曲線を示す。
【0031】
図19図19は、雄マウスにおける:経時的に正規化(平均値+/-SD)放射を比較する。ログ・ランク検定を使用して、これらのデータは、組合せ療法がIgG対照よりも優れており(p=0.06)、ポリI:C単独療法よりも優れており(p=0.32)、かつ抗PD1モノクローナル抗体よりも優れている(p=0.14)ことを示す。
【0032】
図20図20は、「生存部分」、すなわち、図19につき処置した雄マウスにおける、:経時的に生存する傾向の生存を示すデータを示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
詳細な説明
インターフェロン療法
インターフェロンは、一群のシグナル伝達タンパク質である。それらは、いくつかの抗原性病原体、例えばウイルス、細菌および寄生生物ならびにまた腫瘍細胞の存在に応答してヒト細胞により発現および分泌される。典型的に、ウイルス感染細胞は、インターフェロンを放出し、近傍のバイスタンダー細胞にそれらの抗ウイルス防御を高めるようにシグナル伝達する。また、インターフェロンは、免疫細胞、例えばナチュラルキラー細胞およびマクロファージを活性化する。インターフェロンは、主要な組織適合性複合抗原の発現を増大させ、これは、今度は、免疫系への外来抗原の提示を増大させる。
【0034】
インターフェロンは、それらがシグナル伝達する受容体の種類に従って選別または分類することができる。したがって、ヒトについて、インターフェロンは多くの場合、3つの種類:I型(ヒトIFN-α/β受容体に結合するインターフェロン)、II型(ヒトIFN-γ受容体に結合するインターフェロン)およびIII型(ヒトIFN-λ受容体に結合するインターフェロン)に選別される。
【0035】
全てのインターフェロンは、いくつかの共通の効果を共有する。それらは、抗ウイルス剤であり、それらは免疫系の機能を調節する。I型IFNの投与は、実験動物において腫瘍増殖を阻害することが示されているが、ヒト腫瘍における有益な作用は、広く実証されてはいない。ウイルス感染細胞は、近傍の細胞に感染し得るウイルス粒子を放出する。しかしながら、感染細胞は、インターフェロンを放出することにより、ウイルスによる感染の可能性に対して近隣の細胞を準備させることができる。インターフェロンに応答して、細胞は、大量のタンパク質キナーゼR(PKR)として公知の酵素を生成する。この酵素は、新しいウイルス感染に応答してeIF-2として公知のタンパク質をリン酸化する。リン酸化eIF-2は、eIF2Bと呼ばれる別のタンパク質と不活性複合体を形成して、細胞内のタンパク質合成を低減させる。別の細胞酵素、RNアーゼL(これもまたインターフェロン作用により誘導される)は、細胞内のRNAを破壊して、ウイルスおよびホスト遺伝子両方のタンパク質合成をさらに低減させる。タンパク質合成の阻害のために、ウイルスおよび感染ホスト細胞の両方が破壊される。加えて、インターフェロンは、ウイルスおよびインターフェロンにより生成される他の作用と戦う役割を有する数百の他のタンパク質(インターフェロンで刺激される遺伝子(ISG)として集合的に公知)の生成を誘導する。また、それらは、アポトーシスを促進することによりウイルス感染細胞を殺滅するp53活性を増大させることにより、ウイルス拡散を制限する。また、p53に対するIFNの効果は、ある特定のがんに対するその保護的役割に連結されている。
【0036】
インターフェロンの別の機能は、主要な組織適合性複合体分子、MHC IおよびMHC IIの発現をアップレギュレートし、免疫プロテアソーム活性を増大させることである。より高いMHC I発現は、細胞傷害性T細胞へのウイルスペプチドの提示を増大させ、一方で、免疫プロテアソームは、MHC I分子上へのローディングのためにウイルスペプチドを処理し、これにより感染細胞の認識および殺滅を増大させる。より高いMHC II発現は、ヘルパーT細胞へのウイルスペプチドの提示を増大させ、これらの細胞は、他の免疫細胞にシグナル伝達し、かつそれらの活性を協調させるサイトカイン(例えば、数ある中で、より多くのインターフェロンおよびインターロイキン)を放出する。
【0037】
インターフェロンの生成は、主に微生物、例えばウイルスおよび細菌ならびにそれらの生成物に応答して起こる。パターン認識受容体、例えば膜結合Toll様受容体または細胞質受容体RIG-IもしくはMDA5による、微生物で独特に見られる分子(ウイルス糖タンパク質、ウイルスRNA、細菌エンドトキシン(リポ多糖)、細菌鞭毛、CpGモチーフ)の結合は、IFNの放出を誘発し得る。Toll様受容体3(TLR3)は、二本鎖RNAウイルスの存在に応答してインターフェロンを誘導するために重要であり、この受容体に対するリガンドは、二本鎖RNA(dsRNA)である。dsRNAの結合後、この受容体は、転写因子IRF3およびNF-κBを活性化し、これらは多くの炎症性タンパク質の合成を開始するのに重要である。RNA干渉技術ツール、例えばsiRNAまたはベクターベースの試薬は、インターフェロン経路を発現停止することも、または刺激することもできる。細胞からのIFN(特にリンパ系細胞におけるIFN)の放出もまた、マイトジェンにより誘導される。また、他のサイトカイン、例えばインターロイキン1、インターロイキン2、インターロイキン-12、腫瘍壊死因子およびコロニー刺激因子は、インターフェロン生成を高め得る。
【0038】
インターフェロン療法は、一部のがんの処置として(化学療法および放射線との組合せで)使用されている。この処置は、血液系腫瘍;有毛細胞白血病、慢性骨髄性白血病、結節性リンパ腫および皮膚性T細胞リンパ腫を含む白血病ならびにリンパ腫で使用され得る。再発性黒色腫を有する患者は、組換えIFN-a2bを受容する。B型肝炎およびC型肝炎の両方は、多くの場合他の抗ウイルス薬との組合せで、IFN-bで処置される。インターフェロンで処置される患者の一部は、持続するウイルス学的応答を有し、肝炎ウイルスを消失させることができる。最も有害な株(C型肝炎遺伝子型Iウイルス)は、現在のインターフェロンの標準処置、RIBAVIRIN(商標)および最近承認されたプロテアーゼ阻害剤、例えばTelaprevir(Incivek(商標))2011年5月、Boceprevir(VICTRELIS(商標))2011年5月またはヌクレオチドアナログポリメラーゼ阻害剤Sofosbuvir(SOVALDI(商標))2013年12月で60~80%の成功率にて処置することができる。処置を受けた患者の生検は、肝臓損傷および肝硬変の低減を示す。一部の証拠は、感染直後にインターフェロンを与えることが慢性C型肝炎を予防し得ることを示すが、C型肝炎感染初期では身体的症状が希薄であるので、感染初期の診断は困難である。IFNによる慢性C型肝炎の制御は、肝細胞癌腫の低減を伴う。
【0039】
本分野は、インターフェロンが外因性ポリペプチドとして投与され得ることを教示する。
【0040】
あるいは、天然インターフェロン遺伝子の内因的発現を誘導することができる。例えば、本分野は、例えば抗原性Bacillus Calmette-GuerinまたはMycobacterium属もしくはAdenovirusワクチンを教示する。かかる抗原性調製物は、患者自身の細胞がインターフェロンを発現することを誘導する。
【0041】
あるいは、インターフェロン導入遺伝子を送達するベクターをホスト細胞にトランスフェクトすることにより、非天然インターフェロン導入遺伝子の内因的発現を誘導することができる。実際に、外因的に投与したインターフェロンポリペプチドそれ自体でさえも、インターフェロン生成を刺激するメッセンジャーとして働く。
【0042】
本明細書で使用されるとき、「インターフェロン」(「IFN」と略される)という用語は集合的に、1型および2型インターフェロンを指し、その欠失、挿入または置換バリアント、生物学的に活性な断片および対立遺伝子形態を含む。本明細書で使用されるとき、インターフェロン(「IFN」と略される)という用語は集合的に、1型および2型インターフェロンを指す。1型インターフェロンは、インターフェロン-α、-βおよび-ωならびにそれらのサブタイプを含む。ヒトインターフェロン-αは、少なくとも14個の識別されたサブタイプを有し、一方で、インターフェロン-βは、3つの識別されたサブタイプを有する。特に、好ましいインターフェロン-アルファは、非限定的にα-1(GenBank受託番号NP076918)、α-1b(GenBank受託番号AAL35223)、α-2、α-2a(GenBank受託番号NP000596)、α-2b(GenBank受託番号AAP20099)、α-4(GenBank受託番号NP066546)、α-4b(GenBank受託番号CAA26701)、α-5(GenBank受託番号NP002160およびCAA26702)、α-6(GenBank受託番号CAA26704)、α-7(GenBank受託番号NP066401およびCAA26706)、α-8(GenBank受託番号NP002161およびCAA26903)、α-10(GenBank受託番号NP002162)、α-13(GenBank受託番号NP008831およびCAA53538)、α-14(GenBank受託番号NP002163およびCAA26705)、α-16(GenBank受託番号NP002164およびCAA26703)、α-17(GenBank受託番号NP067091)、α-21(GenBank受託番号P01568およびNP002166)を含むヒトインターフェロンアルファサブタイプならびに1996年7月30日発行のStabinsky、米国特許第5,541,293号、1990年1月30日発行のStabinsky、米国特許第4,897,471号および1987年9月22日発行のStabinsky、米国特許第4,695,629号で説明されているコンセンサスインターフェロン(当該特許の教示は、参照により本明細書に組み込まれる)および1983年11月8日発行のGoeddelら、米国特許第4,414,150号で説明されているハイブリッドインターフェロン(当該特許の教示は、参照により本明細書に組み込まれる)を含む。2型インターフェロンは、インターフェロンγ(EP77,670AおよびEP146,354A)およびサブタイプと呼ばれる。ヒトインターフェロンガンマは、インターフェロンオメガ1(GenBank受託番号NP002168)を含む、少なくとも5つの特定されたサブタイプを有する。発現のためのインターフェロンをコードするDNA配列の構築は、上記に参照され、かつ2002年11月19日発行のGoeddelら、米国特許第6,482,613号で説明されている周知のアミノ酸配列に基づいて従来の組換えDNA技術により達成することができ、当該特許の教示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0043】
インターフェロンの「生物学的に活性な」断片は、本分野で周知の技術(例えばOpenakkerら、上記;Mossman、J. Immunol. Methods、65巻:55頁(1983年)を参照のこと)により測定される、任意の抗腫瘍または抗増殖活性を有するものとして識別することができ、IFN受容体媒介機構を通してIFN応答性遺伝子を活性化する。可溶性IFN-αおよびIFN-βタンパク質は一般的に、1型IFN受容体複合体(GenBank受託番号NP000865)と会合するものとして識別されており、同様の細胞内シグナル伝達経路を活性化する。IFN-γは一般的に、II型IFN受容体と会合するものとして識別されている。両方の種類のIFN受容体のリガンドが誘導した会合は、ヤヌスキナーゼによる受容体のリン酸化をもたらし、次にSTAT(signal transducers and activators of transcription)タンパク質および追加のリン酸化事象を活性化し、これはIFN誘導性遺伝子に存在するIFN応答エレメントに結合するIFN誘導性転写因子の形成をもたらす。1型および/または2型IFN受容体との会合後にIFN経路を活性化するものとして識別されるポリペプチドは、本発明の目的のためのインターフェロンと考えられる。
【0044】
プログラム細胞死タンパク質1
プログラム細胞死タンパク質1(「PD-1」)は、CD279としても公知であり、ヒトにおいてPDCD1遺伝子によりコードされるタンパク質である。PD-1は、免疫グロブリンスーパーファミリーに属し、細胞表面受容体として機能し、2つの公知のリガンド、PD-L1およびPD-L2に結合する。
【0045】
PD-1は、T細胞の活性化を防ぐことによりヒト免疫系をダウンレギュレートする重要な役割を果たし、これは、今度は、自己免疫を低減し、「自己免疫寛容」を促進する。PD-1の免疫調節効果は、サプレッサーT細胞を保護する一方で、活性T細胞を選別して取り除くことにより影響される。PD-1は、リンパ節において抗原特異的T細胞のアポトーシスを促進するが、調節性(「サプレッサー」)T細胞でアポトーシスを低減する。
【0046】
PD-L1は、ある特定の腫瘍で高く発現され得る。これは、腫瘍における免疫細胞の増殖の低減、または消失さえももたらし、患者の自然免疫系ががん細胞表面抗原を認識し、このようにして識別されたがん細胞と戦う能力を損なう。
【0047】
PD-1は、T細胞およびプロB細胞上で発現される。免疫チェックポイントとして機能するPD-1は、T細胞の活性化を防ぐことにより免疫系をダウンレギュレートする重要な役割を果たし、これは、今度は、自己免疫を低減し、自己免疫寛容を促進する。PD-1の阻害効果は、リンパ節において抗原特異的T細胞のアポトーシス(プログラム細胞死)を促進し、一方で同時に調節性T細胞(サプレッサーT細胞)においてアポトーシスを低減する二重の機構を通して達成される。
【0048】
プログラム死1は、268個のアミノ酸のI型膜タンパク質である。PD-1は、T細胞レギュレータの拡張されたCD28/CTLA-4ファミリーのメンバーである。タンパク質の構造は、細胞外IgVドメイン、それに続く膜貫通領域および細胞内尾部を含む。細胞内尾部は、免疫受容体チロシンベースの阻害性モチーフおよび免疫受容体チロシンベースのスイッチモチーフに位置する2つのリン酸化部位を含有し、このことは、PD-1がTCRシグナルを負に調節することを示唆する。これは、リガンド結合に際してのPD-1の細胞質尾部へのSHP-1およびSHP-2ホスファターゼの結合と一致する。加えて、PD-1ライゲーションは、E3ユビキチンリガーゼCBL-bおよびc-CBLをアップレギュレートし、これはT細胞受容体ダウンモジュレーションを誘発する。PD-1は、活性化T細胞、B細胞およびマクロファージの表面上で発現され、このことはCTLA-4と比較して、PD-1は免疫応答をより広く負に調節することを示唆する。
【0049】
PD-1は、B7ファミリーのメンバーである2つのリガンド、PD-L1およびPD-L2を有する。PD-L1タンパク質は、LPSおよびGM-CSF処置に応答してマクロファージおよび樹状細胞(DC:dendritic cell)上で、ならびにTCRおよびB細胞受容体シグナル伝達に際してT細胞およびB細胞上でアップレギュレートされ、一方で、安静時のマウスでは、PD-L1 mRNAは、心臓、肺、胸腺、脾臓および腎臓で検出され得る。
【0050】
がんの処置のために、免疫系をブーストする、PD-1を標的にするモノクローナル抗体が開発されている。多くの腫瘍細胞は、免疫抑制性PD-1リガンドであるPD-L1を発現する。PD-1とPD-L1との間の相互作用の阻害は、in vitroでT細胞応答を高め、前臨床抗腫瘍活性を媒介し得る。これは、免疫チェックポイント阻害として公知である。
【0051】
1つのかかる抗PD-1抗体薬物、ニボルマブ(OPDIVO(商標)、Bristol Myers Squibb Co.、Princeton、NJから市販されている)は、全部で296人の患者での臨床試験において、非小細胞肺がん、黒色腫および腎細胞がんで完全なまたは部分的な応答を生成した。結腸および膵臓がん患者は、応答を有しなかった。ニボルマブ(OPDIVO(商標)、Bristol Myers Squibb)は、またPD-1受容体を標的にするものであり、2014年7月に日本で、および2014年12月に米国FDAにより、転移性黒色腫を処置するために承認された。
【0052】
ペンブロリズマブ(KEYTRUDA(商標)またはMK-3475、Merck & Co.、Rahway、NJから市販されている)は、またPD-1受容体を標的にするものであり、2014年9月にFDAにより、転移性黒色腫を処置するために承認されている。ペンブロリズマブは、2015年3月に英国でUK Early Access to Medicines Scheme(EAMS)により進行期黒色腫患者に使用可能になっている。それは、肺がん、リンパ腫および中皮腫について米国における臨床試験で使用されている。それは正確に測定され成功を有し、ほとんど副作用がなかった。2015年10月2日に、ペンブロリズマブは、疾患が他の処置後に進行した進行期(転移性)非小細胞肺がん(NSCLC)患者についてFDAにより承認された。
【0053】
PD-1受容体を標的にする初期開発段階にある他の薬物(多くの場合、「チェックポイント阻害剤」と呼ばれる):ピディリズマブ(CT-011、Cure Tech)、BMS 936559(Bristol Myers Squibb)、MPDL328OA(Roche)およびアテゾリズマブ(Amgen)。
【0054】
組合せ療法
本発明者は、インターフェロンでのがん処置(インターフェロンポリペプチドを投与することによるか、または細胞がインターフェロンを発現することを誘導する剤を投与することによる)は、同時にPD-1発現を誘導することを発見した。
【0055】
したがって、本発明者は、インターフェロンを、PD-1活性を阻害する化合物と共投与することによりインターフェロンベースのがん療法の有効性を改善することを提案する。
【0056】
これは、例えば、がん療法として有効な量でインターフェロンポリペプチドを静脈内投与すること、ならびにインターフェロンが引き起こしたPD-1発現の増大を防ぐのに有効な量でおよび好ましくはPD-1の効果を低減させる量でモノクローナル抗体チェックポイント阻害用阻害剤を静脈内投与することを必要とする。
【0057】
あるいは、これは、がん療法として有効な量でインターフェロン発現を誘導する剤を膀胱内に注入すること、ならびにインターフェロンが引き起こしたPD-1発現の増大を防ぐのに有効な量でおよび好ましくはPD-1の効果を低減させる量でチェックポイント阻害用阻害剤を予防的に静脈内投与することを必要とする。この剤は、インターフェロン発現を誘導する抗原性ワクチン(例えばウイルスまたはBCGワクチンもしくはMycobacteriumワクチン)であってもよい。あるいは、この剤は、ホスト細胞を発現可能なインターフェロン導入遺伝子で形質転換する導入遺伝子ベクターであってもよい。あるいは、これは、これもまたインターフェロン導入遺伝子を送達する抗原性ウイルスまたは細菌であってもよい。
【実施例
【0058】
(実施例1)
IFNαは、PD-L1およびTRAIL発現を誘導する。
【0059】
インターフェロン-アルファ(IFNa)は、臨床的に顕著に有効ではなかった。本発明者は、これが、ベクター媒介IFNa遺伝子療法の設定においてはより有効であり得ると仮定した。数年前、本発明者は、INSTILADRIN(商標)ブランドのアデノウイルスベクター媒介インターフェロンアルファ2bのフェーズIIヒト臨床試験を開始した。この実験では、本発明者は、インターフェロンへの曝露に応答したPD-L1、TRAIL、IRF1およびLamin Aの発現を測定した。
【0060】
材料および方法:RT112およびSW780細胞を培地中で培養し、その後インターフェロンアルファポリペプチドを含有する培地に曝露した。インターフェロン量は、0(対照)~10国際単位/mLに及んだ。遺伝子発現を、市販されている抗体およびプライマーを使用して、ウェスタンブロットおよび定量的リアルタイムPCRにより評価した。MIRVANA(商標)キット(Thermo Fisher)で、培養物中の細胞からRNAを単離した。TAQMAN(商標)Array Cards(AおよびB)(Thermo Fisher)を使用して、RT112においてmIRをプロファイルした。Illumina HumanHT_12_v4 BEADCHIP(商標)アレイ(47323個のプローブ)で、RT112およびUC3において全ゲノムmRNA発現プロファイリングを行った。
【0061】
結果:結果を図1~4に示す。インターフェロンへの曝露に応答して、両方の細胞株は、PD-L1、TRAILおよびIRF1発現をアップレギュレートし、Lamin A発現に対しては測定可能な効果を有しなかった。PD-L1、TRAILおよびIRF1発現について、異なる細胞株では、効果は異なる大きさであった。図1、2、3、4を参照のこと。
【0062】
結論:がん細胞株のパネルでは、インターフェロン曝露は、PD-L1免疫チェックポイント発現の顕著な増大をもたらす。本発明者は、この発見が、現在までの本分野で、有効ながん療法としてインターフェロンを使用することができなかった理由を示唆するので、それは驚くべきことであると見出した。インターフェロンは理論的には有効な抗がん剤であるはずであるが、インターフェロンはまた、PD-L1発現をアップレギュレートし、したがってインターフェロンの療法効果を妨げ得る。
【0063】
(実施例2)
IFNαは、用量依存的様式でPD-L1発現を誘導する。
【0064】
ここで、本発明者は、インターフェロンアルファでの処理後に免疫チェックポイントPD-L1の発現、マイクロ-RNA(miR)およびmRNA発現プロファイルを測定した。
【0065】
材料および方法:RT112、T24、UC3およびUC14細胞を培地中で培養し、その後、対照培地または1000IU/mlのインターフェロンアルファポリペプチドを含有する培地のいずれかに6時間曝露した。PD-L1発現を、市販されている抗体およびプライマーを使用して、ウェスタンブロットおよび定量的リアルタイムPCRにより評価した。MIRVANA(商標)キット(Thermo Fisher)で、培養物中の細胞からRNAを単離した。TAQMAN(商標)Array Cards(AおよびB)(Thermo Fisher)を使用して、RT112においてmIRをプロファイルした。Illumina HumanHT_12_v4 BEADCHIP(商標)アレイ(47323個のプローブ)で、RT112およびUC3において全ゲノムmRNA発現プロファイリングを行った。統計的信頼性を増大させるために、全ての実験を三重で行った。
【0066】
結果:全ての細胞株は、IFNaへの曝露に応答してPD-L1発現をアップレギュレートした。この効果は、UC3細胞(図6)よりも、RT112細胞(図5を参照のこと)で最も明白であった。対照的に、RT112:1233細胞(p=0.0036)、19b-1#(p=0.0157)および222#(p=0.0061)において、3つの可能性のあるoncomIR領域の発現は、IFNaへの曝露後に顕著にダウンレギュレートされた。IFNa曝露後にログ(発現)(偽陽性率<0.001)で少なくとも2倍の差を有する差次的に発現した遺伝子を分析すると、RT112およびUC3細胞株で、それぞれ、302個および181個の差次的に発現した遺伝子があった。両方の細胞株でトップランクのIFNa誘導遺伝子は、膀胱がんで以前に記載されていない数個を含み、IFIT2(転移の負のレギュレータ)およびIFI27(TRAILへの感受性と関連する)を含んだ。また、IFNa誘導PD-L1発現は、リアルタイムPCRデータに対応する倍変化で、mRNA遺伝子チップで実証可能であった。
【0067】
結論:がん細胞株のパネルでは、IFNa曝露は、PD-L1免疫チェックポイント発現の顕著な増大をもたらす。アレイベースのマイクロRNAおよびmRNAプロファイリングは、膀胱がんにおけるIFNa応答の新しい可能性のあるメディエータを明らかにした。この膀胱IFNaプロファイルは、アデノウイルスIFNa遺伝子療法への応答を測定するための中間エンドポイントとして有用であり得る。IFNa療法でのPD-L1発現の将来予測は、免疫チェックポイント阻害剤を利用する合理的な組合せ処置をもたらし得る。
(実施例3)
マウスインターフェロンは、PD-L1発現を誘導する
【0068】
材料および方法:BBN972およびMB49#1(MB49-luc)細胞を培養し、その後、0(零)~1×10国際単位のマウスインターフェロンを含有する培地に曝露した。続くPD-L1および(対照としての)アクチンの発現を測定した。
【0069】
結果:マウスインターフェロンは、いずれの細胞株でもアクチン発現に対して効果がなかった。図11、12を参照のこと。対照的に、マウスインターフェロンは、PD-L1発現に対して顕著な用量依存的効果を有した。図9、10を参照のこと。
【0070】
結論:これらのデータは、PD-L1発現に対するインターフェロンの効果が、ヒトインターフェロンアルファ2aに限定されず、実際にはヒトインターフェロンに限定されないことを示す。むしろ、PD-L1発現に対するインターフェロンの効果は、概してインターフェロンに一般的であるように見える。
(実施例4)
ポリイノシン酸:ポリシチジル酸(ポリI:C)は、PD-L1を誘導する
【0071】
材料および方法:上記データは、インターフェロンがPD-L1発現を誘導し、用量依存的様式でそれを行い、迅速にそれを行い、かつ異なる種からのインターフェロンに応答して明らかにそれを行うことを示す。インターフェロンを採取した動物種にかかわらず、効果があるので、本発明者は、この効果はインターフェロンに限定されず、他の種類の免疫刺激剤により、より一般的に引き起こされ得ると仮定した。この概念を試験するために、本発明者は、ポリイノシン酸:ポリシチジル酸(多くの場合、「ポリI:C」と略される)を評価した。ポリI:Cは、免疫刺激剤である。それはウイルス感染をシミュレートするために、そのナトリウム塩形態で使用される。ポリI:Cは、構造的に二本鎖RNAに類似している。dsRNAは、一部のウイルスに存在する。本発明者は、ポリI:Cを、移植したplcまたはulc腫瘍を有する研究用マウスに腹腔内注射により投与した。
【0072】
結果。図13は、対照マウス(n=3)が、血清インターフェロンaの僅少のベースライン測定を示したことを示す。対照的に、ポリI:Cの腹腔内注射は、血清インターフェロンaの時間依存的増加を生成する。図14は、6時間でのポリI:Cの腫瘍内注射の結果を示す。データ(各組についてn=1)は、腫瘍内インターフェロンaは、plc腫瘍で顕著に増加し、ulc腫瘍でいくらか増加し、対照腫瘍では測定可能なほど増加しないことを示す。図15は、また、ポリI:C(500μg)が腫瘍内でPD-L1発現を(24時間で)誘導することを示す(マン・ホイットニー p=0.0495)。
【0073】
結論:これらのデータは、PD-L1発現が、インターフェロンによってのみではなく、dsRNAを模倣し、インターフェロン発現を誘導する化合物であるポリI:Cによっても誘導されることを示す。
(実施例5)
インターフェロンウイルス遺伝子療法は、ヒトにおいてPD-L1を誘導する
【0074】
材料および方法:これらのデータは、BCG療法に非応答性であるか、またはBCG療法後に難治性である患者における、ヒトインターフェロンアルファ2b導入遺伝子を有するINSTILADRIN(商標)複製欠損アデノウイルス遺伝子療法ベクターについてのヒトフェーズIIヒト臨床試験から取られる。その研究計画は、公開されており、参照により本明細書に組み込む。
【0075】
結果:図16は、ヒトインターフェロンアルファ2B導入遺伝子を有するINSTILADRIN(商標)組換え複製欠損アデノウイルス遺伝子療法ベクターで処置したヒトにおける8処置サイクルのRNA発現を示す。奇数(白色に色分けした)カラムは、処置前のRNA転写を測定し、偶数(水色に色分けした)カラムは、後を測定する。RNA量は定量的に示され、薄緑色は最も少ないもの、桃色は最も多いものを示す。カラム1および2は、-2処置前から+2後に増大するPD-L1 RNAを示す。カラム3および4は同様に、-2処置前から+3後に増大するPD-L1 RNAを示す。全てにおいて、処置ペアの3分の1は、処置後にPD-L1発現の顕著な増大を示す。また、処置は、他の免疫チェックポイントマーカーをアップレギュレートした。
【0076】
結論:これらのデータは、患者の3分の1は、インターフェロン遺伝子療法での処置後にT細胞および免疫チェックポイントマーカー(PD-L1を含む)の誘導を示すことを示す。
(実施例6)
組合せ療法は、生存を増大させる
【0077】
材料および方法:研究用雌ラットに腫瘍細胞を植え付け、細胞を測定可能な腫瘍に発達させた。その後、ラットを、生理食塩水(対照)、IgG(対照として)、抗PD1モノクローナル抗体(単独療法)、ポリI:C(インターフェロン発現を誘導する単独療法)およびポリI:Cと抗PD1モノクローナル抗体との組合せ(組合せ療法)で処置した。
【0078】
結果:図17は、皮下C57BL6/J腫瘍についての、時間に対するMB49腫瘍サイズを示す(1群当たりn=5匹の雌マウス)。処置は、腫瘍移植後10日目に開始する200μg q3((1日1回、3日間))デある。エラーバーは、SEMを表す。最も高い(黄色)線は、40日目で最も大きな腫瘍体積を示しており、対照群である(全ての群はn=5、雌のみ)。次に低い(青色)線は、IgG対照である。次に低い(赤色)線は、ポリI:Cである。次に低い(緑色)線は、抗PD1モノクローナル抗体である。最も低い(黒色)線は、X軸それ自体の上にかかっており、組合せ療法である。
【0079】
図18は、腫瘍を植え付け、生理食塩水(最低部の線)、IgG(次に高い線)、抗PD1モノクローナル抗体(次に高い線)、ポリI:C(次に高い線)およびポリI:Cと抗PD1モノクローナル抗体との組合せ(最も高い線)で処置した雌マウスのカプラン・マイヤー生存曲線を示す。これらのデータは、インターフェロン誘導剤(ポリI:C)とPD1阻害剤(抗PD1モノクローナル抗体)とを組み合わせることは、顕著に生存を増大させることを示す。50日目で、対照動物の約20%が生存し、ポリI:C動物の50%が生存し、組合せ処置動物の100%が生存する。
【0080】
図19は、雄マウスにおける:経時的に正規化(平均値+/-SD)放射を比較する。ログ・ランク検定を使用して、これらのデータは、組合せ療法がIgG対照よりも優れており(p=0.06)、ポリI:C単独療法よりも優れており(p=0.32)、かつ抗PD1モノクローナル抗体よりも優れている(p=0.14)ことを示す。
【0081】
図20は、「生存部分」、すなわち、:経時的に生存する傾向の生存を示すデータを示す。
【0082】
結論:これらのデータは、組合せ療法は、単なる相加的効果より多くのものを与え、相乗的に有効であることを示す。
(実施例7)
表在拡大型黒色腫
【0083】
材料および方法:表在拡大型黒色腫と診断されたヒト患者を、広範囲局所切除術およびセンチネルリンパ節生検により処置して、リンパ系または遠位器官への疾患の広がりがないことを確認する。その後、患者をINSTILADRIN(商標)とKEYTRUDA(商標)との組合せで処置する。処置は、外科的切除後実施可能な限りすぐに開始する。
【0084】
INSTILADRIN(商標)ブランドのアデノウイルスは、インターフェロンアルファ2b導入遺伝子を有する複製欠損組換えアデノウイルス遺伝子療法ベクターである。かかる遺伝子療法ベクターの製造は、例えばMuralidhara Ramachandraら、SelectivelyReplicating Viral Vector、米国特許証第7691370号で説明されている。インターフェロン導入遺伝子の単離は、例えばCharles Weissmann、DNA Sequences, RecombinantDNA Molecules and Processes for Producing Human Interferon-Like Polypeptides、米国特許証第6835557号で説明されている。
【0085】
KEYTRUDA(商標)ブランドのペンブロリズマブは、ヒト化モノクローナル抗プログラム細胞死-1(PD-1)抗体(Fc領域に安定化配列改変を有するIgG4/カッパアイソタイプ)である。
【0086】
INSTILADRIN(商標)は、単回用量バイアルで提供される。INSTILADRIN(商標)の1用量を、注射用滅菌生理食塩水中に再構成し、切除部位に局所的に皮下投与する。投与は、4週毎に1回繰り返す。1バイアルのKEYTRUDA(商標)粉末は、50mgのペンブロリズマブを含有する。KEYTRUDA(商標)を、30分間にわたる静脈内点滴として投与し、3週毎に繰り返し、疾患進行または許容できない毒性があるまで患者を処置する。非定型応答(すなわち、最初の数ヶ月以内の腫瘍サイズの最初の一過的な増大または新しい小病変、続く腫瘍縮小)が観察され得る。疾患進行の初期の証拠を有する臨床的に安定な患者については、疾患進行が確認されるまで処置を続けることが好ましい。
【0087】
試験対象を登録し、その後処置群:切除後KEYTRUDA(商標)のみ、切除後INSTILADRIN(商標)のみ、切除後KEYTRUDA(商標)およびINSTILADRIN(商標)を同時、切除後INSTILADRIN(商標)およびNSAID(COX-2阻害剤)、ならびに切除後KEYTRUDA(商標)およびINSTILADRIN(商標)およびNSAIDを同時:に割り当てる。
【0088】
結果:主要有効性評価項目は、進行を伴わない生存(例えばIntegrated Radiology and Oncology Assessment review using Response Evaluation Criteria in Solid Tumours([RECIST(固形がんの処置効果判定基準)]を使用した放射線学および腫瘍学総合査定概要)により査定される)、全体的な生存、およびセンチネルリンパ節生検である。他の有効性評価項目は、全体的な応答速度および応答持続期間であり得る。続くセンチネルリンパ節生検は、疾患の広がりがないことを示すことが予測される。
【0089】
本発明者は、COX-2阻害剤を伴うINSTILADRIN(商標)の投与は、INSTILADRIN(商標)のみに優る有効性を示すと予測する。本発明者は、KEYTRUDA(商標)およびINSTILADRIN(商標)の同時投与は、いずれかの剤単独の投与と比較して優れた有効性評価項目を示すと予測し、この利点は単なる相加的なものより大きいと予測する。本発明者は、KEYTRUDA(商標)およびINSTILADRIN(商標)およびNSAIDの同時投与は、KEYTRUDA(商標)単独またはINSTILADRIN(商標)およびNSAID単独の投与と比較して優れた有効性評価項目を示すと予測し、この利点は単なる相加的なものより大きいと予測する。
(実施例8)
表在拡大型黒色腫
【0090】
材料および方法:上記の実施例のKEYTRUDA(商標)。
【0091】
インターフェロン源として、SYLATRON(商標)ペグ化インターフェロンアルファ2bを、6μg/kgで毎週1回8用量(誘導)、続いて3μg/kgで毎週1回最大5年間(維持)皮下投与する。有害反応のために処置の1~8週(誘導)中にSYLATRON(商標)投与量調節が必要な場合、元の投与量(毎週1回6μg/kg)からの3ステップ減少が好ましい(すなわち、投与量を毎週1回3μg/kgに減少し;必要に応じて、毎週1回2μg/kgに減少し;その後必要に応じて、さらに毎週1回1μg/kgに減少する)。有害反応のために処置の9~260週(維持)中に投与量調節が必要な場合、元の投与量(毎週1回3μg/kg)からの2ステップ減少が推奨される(すなわち、投与量を毎週1回2μg/kgに減少し;必要に応じて、毎週1回1μg/kgに減少する)。
【0092】
試験対象を登録し、その後処置群:切除後KEYTRUDA(商標)のみ、切除後SYLATRON(商標)のみ、切除後KEYTRUDA(商標)およびSYLATRON(商標)を同時的、切除後SYLATRON(商標)およびNSAID(COX-2阻害剤)、ならびに切除後KEYTRUDA(商標)およびSYLATRON(商標)およびNSAIDを同時的:に割り当てる。
【0093】
結果:主要有効性評価項目は、進行を伴わない生存(例えばIntegrated Radiology and Oncology Assessment review using Response Evaluation Criteria in Solid Tumours([RECIST(固形がんの処置効果判定基準)]を使用した放射線学および腫瘍学総合査定概要)により査定される)、全体的な生存、およびセンチネルリンパ節生検である。他の有効性評価項目は、全体的な応答速度および応答持続期間であり得る。続くセンチネルリンパ節生検は、疾患の広がりがないことを示すことが予測される。
【0094】
本発明者は、COX-2阻害剤を伴うSYLATRON(商標)の投与は、SYLATRON(商標)のみに優る有効性を示すと予測する。本発明者は、KEYTRUDA(商標)およびSYLATRON(商標)の同時投与は、いずれかの剤単独の投与と比較して優れた有効性評価項目を示すと予測し、この利点は単なる相加的なものより大きいと予測する。本発明者は、KEYTRUDA(商標)およびSYLATRON(商標)およびNSAIDの同時投与は、KEYTRUDA(商標)単独またはSYLATRON(商標)およびNSAID単独の投与と比較して優れた有効性評価項目を示すと予測し、この利点は単なる相加的なものより大きいと予測する。
(実施例9)
非小細胞肺がん
【0095】
材料および方法:上記実施例7による医薬剤。ヒト試験対象は、非小細胞肺癌腫を有すると診断されている。患者をGreene, Frederick L.、Cancer Staging Manual(American Joint Committee on Cancer、出版、第6版)に従ってスクリーニングして、同等の試験対象が同等の疾患を有することを保証する。試験対象を、検証された試験により確認される発現である腫瘍PD-L1発現に基づいて、処置についてスクリーニングする。
【0096】
KEYTRUDAの推奨される用量は、以前に化学療法で処置されていないNSCLCについて200mg、および以前に化学療法で処置されたNSCLCまたは黒色腫について2mg/kgである。
【0097】
INSTILADRIN(商標)を、胸膜内注入により投与する。この方法は、図2で米国特許公開公報2014/17202号にて示される。
【0098】
試験対象を登録し、その後処置群:KEYTRUDA(商標)のみ、INSTILADRIN(商標)のみ、KEYTRUDA(商標)およびINSTILADRIN(商標)を同時的、INSTILADRIN(商標)およびNSAID(COX-2阻害剤)、ならびにKEYTRUDA(商標)およびINSTILADRIN(商標)およびNSAIDを同時的:に割り当てる。
【0099】
結果:主要有効性評価項目は、進行を伴わない生存、全体的な生存、およびセンチネルリンパ節生検である。他の有効性評価項目は、全体的な応答速度および応答持続期間であり得る。続くセンチネルリンパ節生検は、疾患の広がりがないことを示すことが予測される。
【0100】
本発明者は、COX-2阻害剤を伴うINSTILADRIN(商標)の投与は、INSTILADRIN(商標)のみに優る有効性を示すと予測する。本発明者は、KEYTRUDA(商標)およびINSTILADRIN(商標)の同時投与は、いずれかの剤単独の投与と比較して優れた有効性評価項目を示すと予測し、この利点は単なる相加的なものより大きいと予測する。本発明者は、KEYTRUDA(商標)およびINSTILADRIN(商標)およびNSAIDの同時投与は、KEYTRUDA(商標)単独またはINSTILADRIN(商標)およびNSAID単独の投与と比較して優れた有効性評価項目を示すと予測し、この利点は単なる相加的なものより大きいと予測する。
要約
【0101】
上記実施例は、ある特定のがんの処置を論じている。しかしながら、本発明者らの発見はより一般的に、インターフェロンシグナル伝達から利益を得、かつCD279の過剰発現を患う任意の状態を処置するために使用することができる。
【0102】
添付した特許請求の範囲では、完全な治癒を必要とせず、緩和を必要とする「処置する」という用語を使用する。例えば、がんを「処置すること」は、がんを完全に消失させることによって、また例えば、かかる処置を有しない患者と比較して、腫瘍増殖を遅延させること、死亡のリスクを低減することまたは疾患進行を遅延させることによって達成され得る。
【0103】
本明細書中の本発明者らの開示から、当業者は、特定の適用またはその変形を容易に理解し得る。例えば、上記論述は、特定の種類のヒトインターフェロンについて言及しているが、同様に機能する他の種類およびインターフェロン誘導体またはアナログは、同じ利益を提供する。したがって、本発明者は、本発明者らの特許の法律上の範囲が、本発明者が論じている実施例ではなく、添付した法律上の特許請求の範囲およびその許容される均等物によって決定されることを意図する。
【0104】
添付した法律上の特許請求の範囲が、およそ「同時」に処置することを言及する場合(例えば元の請求項3を参照のこと)、これは、2つの化合物が同時に患者において働くことを必要とする。それは、同時期の投与を必要としない。したがって、第2の剤の効果が少なくとも1週間持続する場合、第1の剤を、第2の剤の投与1週間後に投与してもよい。
(項目1)
インターフェロンでヒト患者を処置する方法であって、
a.ヒト患者において、インターフェロンで処置され得る状態を診断するステップと、その後、
b.第1の剤を投与するステップであって、前記第1の剤が、ヒト免疫系チェックポイントの機能に影響するのに十分な量で前記ヒト患者のインターフェロンレベルを増大させることができ、これにより前記チェックポイントが免疫機能を減少させる、ステップと、
c.前記ヒトに、同じヒト免疫系チェックポイントの機能に影響する第2の剤を投与するステップであって、前記第2の剤が、前記第1の剤が前記チェックポイントに対して有する免疫機能の減少を実質的に改善するのに有効な量で投与される、ステップと
を含み、これにより第2の化合物が、前記第1の剤により引き起こされる前記免疫機能の減少を実質的に改善する、方法。
(項目2)
本質的に項目1に記載の方法からなる方法。
(項目3)
前記患者が、前記第1の剤および前記第2の剤でほぼ同時に処置される、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記第1の剤が、外因的に生成されたインターフェロンポリペプチドを含む、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記第1の剤が、前記患者がインターフェロンを内因的に発現することを誘導する剤を含む、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記第1の剤が、発現可能なインターフェロン導入遺伝子を有するベクターである、項目5に記載の方法。
(項目7)
前記第1の剤が、微生物抗原、ウイルス抗原および微生物またはウイルス抗原アナログからなる群から選択される、項目5に記載の方法。
(項目8)
前記第1の剤が、ポリI:Cを含むウイルス抗原アナログを含む、項目7に記載の方法。
(項目9)
前記第1の剤が、細菌抗原を含む、項目7に記載の方法。
(項目10)
前記第1の剤が、ウイルス抗原を含む、項目7に記載の方法。
(項目11)
前記第1の剤が、抗原性ウイルスを含む、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記ヒト患者のインターフェロンレベルが、阻害性ヒト免疫系チェックポイントの機能を増大させるのに十分な量で増大される、項目1に記載の方法。
(項目13)
前記阻害性チェックポイントが、プログラム細胞死タンパク質1および細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4からなる群から選択される、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記阻害性チェックポイントが、プログラム細胞死タンパク質1を含み、前記第2の剤が、プログラム細胞死タンパク質1またはプログラム細胞死タンパク質1リガンドに結合する、項目13に記載の方法。
(項目15)
前記状態が、がんを含む、項目1に記載の方法。
(項目16)
ヒト免疫系チェックポイントの機能に影響し、これにより前記チェックポイントがヒト免疫機能を抑制しない剤であって、ヒト患者に対するインターフェロンの免疫抑制効果を消失させることにおける使用のためであり、インターフェロンの前記免疫抑制効果を低減させるのに有効な量で提供される、剤。
(項目17)
ヒト療法剤としてのインターフェロンの有効性を改善するための方法であって、
a.ヒト患者において、インターフェロンで処置され得る状態を診断するステップと、その後、
b.前記ヒトに、阻害性ヒト免疫系チェックポイントを阻害する第2の剤を投与するステップであって、前記剤が、免疫活性を減少させることに対する前記チェックポイントの活性を低減させるのに十分な量で投与される、ステップと、
c.前記ヒトに、前記状態を処置するのに有効な量で前記ヒト患者のインターフェロンレベルを増大させる第1の剤を投与するステップと
を含む、方法。
(項目18)
本質的に、
a.ヒトに、阻害性ヒト免疫系チェックポイントを阻害する第2の剤を投与するステップと、
b.前記ヒトに、前記ヒト患者のインターフェロンレベルを増大させる第1の剤を投与するステップと
からなる方法。
(項目19)
前記第2の剤が、前記チェックポイントの活性を低減させるのに十分な量で投与される、項目18に記載の方法。
図1
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