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特許6995066樹脂箔を形成しかつ/又は処理する制御装置及び樹脂箔成形制御法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-16
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】樹脂箔を形成しかつ/又は処理する制御装置及び樹脂箔成形制御法
(51)【国際特許分類】
   B29C 48/92 20190101AFI20220128BHJP
   B29C 48/08 20190101ALI20220128BHJP
   B29C 48/305 20190101ALI20220128BHJP
   B29C 48/32 20190101ALI20220128BHJP
   B29C 55/04 20060101ALI20220128BHJP
   B29C 55/12 20060101ALI20220128BHJP
   B29C 55/14 20060101ALI20220128BHJP
   B29C 55/16 20060101ALI20220128BHJP
   B29C 55/02 20060101ALI20220128BHJP
   B29C 55/28 20060101ALI20220128BHJP
   B29L 7/00 20060101ALN20220128BHJP
   B29L 23/00 20060101ALN20220128BHJP
【FI】
B29C48/92
B29C48/08
B29C48/305
B29C48/32
B29C55/04
B29C55/12
B29C55/14
B29C55/16
B29C55/02
B29C55/28
B29L7:00
B29L23:00
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2018568708
(86)(22)【出願日】2017-06-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-09-05
(86)【国際出願番号】 EP2017065369
(87)【国際公開番号】W WO2018001852
(87)【国際公開日】2018-01-04
【審査請求日】2020-03-24
(31)【優先権主張番号】102016112121.5
(32)【優先日】2016-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510331593
【氏名又は名称】ブリュックナー・マシーネンバウ・ゲーエムベーハー・ウント・コー・カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100082049
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 敬一
(72)【発明者】
【氏名】レッスル・ジモン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァグナー・ヴィルヘルム
(72)【発明者】
【氏名】ツィンツ・ヴォルフガング
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-278324(JP,A)
【文献】特開平04-089225(JP,A)
【文献】特開平05-092472(JP,A)
【文献】特開平06-297568(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0023133(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 48/08,48/305,48/32,48/92,
55/02,55/04,55/12,55/14,
55/16,55/28
B29L 7/00,23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂箔、平面状の樹脂箔、流延樹脂箔、一軸延伸樹脂箔、単軸延伸樹脂箔、順次二軸延伸樹脂箔、同時二軸延伸樹脂箔、二重バブル樹脂箔、三重バブル樹脂箔又は多重バブル樹脂箔を含む吹込成形樹脂箔を形成する制御装置において、
制御装置は、検出装置又は検出器と、製品特性に依存する規格処理値又は目標処理値との少なくとも2要素で構成され、
制御装置に設けられる検出装置又は検出器から調節可能な機械変量が導出され、機械変量は、稼動中の樹脂箔成形装置の各部に発生する冷却水温度、加熱装置の加熱温度、通気装置のファン回転数、引出す長尺樹脂箔の横方向又は縦方向の引張応力を含む群からなる単一又は複数の機械上の変量であり、
機械変量は、検出装置又は検出器を介して樹脂箔製造装置側の製造変量に関連付けられ、製造変量は、最終製品の製品特性を得るのに必要な樹脂箔温度、樹脂箔に作用する横方向又は縦方向の引張力を含む群からなる単一又は複数の製造上の変量であり、
製造変量は、規格処理値又は目標処理値を介して制御装置により形成される樹脂箔の処理変量に相互に関連付けられ、
処理変量は、制御装置が形成する樹脂箔に発生する樹脂箔温度、引張強度、弾性係数、樹脂箔厚さ、樹脂箔濁りを含む群からなる単一又は複数の処理上の変量であり、
検出装置又は検出器から導出される機械変量と、製品特性に依存する規格処理値又は目標処理値とは、製造変量により互いに関連付けられ、
形成する樹脂箔の処理変量の変化する調節値により、機械変量を自動的に調節し又は機械変量を半自動的に作成し、表示し、検証し確認し又は変更可能に樹脂箔製造装置に付与し、
延伸した樹脂箔形態の最終製品の製品特性を得るのに必要な製造変量を定めて最終製品に先行する個別工程で所定の製品特性に調節することを特徴とする制御装置。
【請求項2】
製造変量は、調節可能に設定される機械変量から導出され又は機械変量に双方向に関連付けられ、
逆に、機械変量は、設定可能な処理変量に関連付けられ、
検出器に製造変量と機械変量を組み込んだ請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
設定可能な製造変量に双方向に接続され、製造変量から供用化され又は製造変量に関連付けられる樹脂箔の処理変量と、逆に、設定可能な処理変量に関連付けられ又は処理変量から共用化される製造変量とを規格処理値又は目標処理値に組み込んだ請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項4】
連続する複数の工程段階を有する形成工程又は製造工程の種々の段階に、同一数の方法媒介変数を設定する複数の装置領域又は装置区域が設けられ、かつ
適切な検出装置又は検出器は、装置領域又は装置区域に対応付けられる機械変量が製造変量に関連付けられ、
関連する規格処理値及び/又は目標処理値は、適切な製造変量を処理変量に関連付けられる請求項1~3の何れか1項に記載の制御装置。
【請求項5】
先行する装置領域又は装置区域の出口工程値は、後続の装置領域又は後続の装置区域の対応する入口工程値に連続して、装置領域特性又は装置区域特性に依存する処理変量は、樹脂箔の移動通路又は引出通路に沿い段階的に相互に連結される請求項4に記載の制御装置。
【請求項6】
製品の領域特性又は区域特性に依存する処理変量は、直近の領域又は区域の出口での処理変量を処理すべき長尺樹脂の製品特性に対応して、処理する樹脂箔の長尺材料の前進方向に互いに関連付けられる請求項4又は5に記載の制御装置。
【請求項7】
適切な製品特性、処理変量及び機械変量は、表示装置内に可視化されかつ/又は表示装置に入力される請求項1~6の何れか1項に記載の制御装置。
【請求項8】
種々の検出装置又は検出器に規格処理値又は目標処理値を組み合わせた請求項1~7の何れか1項に記載の制御装置。
【請求項9】
樹脂箔、平面状の樹脂箔、流延樹脂箔、一軸延伸樹脂箔、単軸延伸樹脂箔、順次二軸延伸樹脂箔、同時二軸延伸樹脂箔、二重バブル樹脂箔、三重バブル樹脂箔又は多重バブル樹脂箔を含む樹脂箔成形制御法において、
機械変量が導出される検出装置又は検出器と、製品特性に依存する規格処理値又は目標処理値との少なくとも2要素を備える制御装置を準備する工程と、
稼動中の樹脂箔成形装置の各部に設けられる検出装置又は検出器から、冷却水温度、加熱装置の加熱温度、通気装置のファン回転数、引出す長尺樹脂箔の横方向又は縦方向の引張応力を含む群からなる単一又は複数の機械上の変量を調節可能な機械変量を発生する工程と、
最終製品の製品特性を得るのに必要な樹脂箔温度、樹脂箔に作用する横方向又は縦方向の引張力を含む群からなる単一又は複数の樹脂箔製造装置側の製造変量に、調節可能な機械変量を、検出装置又は検出器を介して関連付ける工程と、
樹脂箔製造装置が形成する樹脂箔に発生する樹脂箔温度、引張強度、弾性係数、樹脂箔厚さ、樹脂箔濁りを含む群からなる単一又は複数の処理上の変量を樹脂箔の処理変量とする工程と、
規格処理値又は目標処理値と機械変量とを、製造変量を介して互いに関連付ける工程と、
規格処理値又は目標処理値を介して、樹脂箔の処理変量に製造変量を関連付ける工程と、
形成すべき樹脂箔の処理変量の調節量が変化するとき、制御装置により機械変量を自動化して調節し又は制御装置により機械変量を半自動的に表示して、処理変量を操作し又は変更する工程と、
延伸した樹脂箔形態の最終製品の製品特性を得るのに必要な製造変量を定めて、最終製品に先行する個別工程で、所定の製品特性に調節する工程と、を含むことを特徴とする樹脂箔成形制御法。
【請求項10】
調節可能に設定される機械変量に製造変量を双方向に関連付ける工程と、逆に設定可能な処理変量に関連付けられる機械変量を検出器に設定する工程とを含む請求項9に記載の樹脂箔成形制御法。
【請求項11】
規格処理値又は目標処理値は、樹脂箔処理の処理変量と、製造変量とを含み、
処理変量は、設定可能な製造変量に双方向に関連付けられ、製造変量は、逆に設定可能な処理変量に関連付けられる請求項9又は10に記載の樹脂箔成形制御法。
【請求項12】
製造工程の種々の工程段階に、同一数の方法媒介変数を設定する複数の装置領域又は装置区域を設ける工程と、
機械変量を装置領域又は装置区域に対応付け、検出装置及び/又は検出器に製造変量を関連付ける工程と、
関連する規格処理値又は目標処理値により、適切な製造変量を処理変量に関連付ける工程とを含む請求項9~11の何れか1項に記載の樹脂箔成形制御法。
【請求項13】
先行する装置領域又は装置区域の出口工程値を後続の装置領域又は装置区域の対応する入口値に対応させて、装置領域特性又は装置区域特性に依存する処理変量を樹脂箔の移動通路に沿い段階的に結合する工程を含む請求項9~12の何れか1項に記載の樹脂箔成形制御法。
【請求項14】
直近の装置領域又は装置区域の出口での処理変量を処理すべき長尺樹脂の製品特性に対応させて、処理すべき長尺樹脂箔の進行方向の装置領域特性又は装置区域特性に処理変量を依存させる工程を含む請求項12又は13に記載の樹脂箔成形制御法。
【請求項15】
適切な製品特性、処理変量及び機械変量を可視化して表示装置に表示し又は入力する工程を含む請求項9~14の何れか1項に記載の樹脂箔成形制御法。
【請求項16】
規格処理値又は目標処理値を異なる複数の検出装置又は検出器に組み込む工程を含む請求項9~15の何れか1項に記載の樹脂箔成形制御法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に樹脂箔を形成しかつ/又は処理する制御装置及び樹脂箔成形制御法に関連する。
【背景技術】
【0002】
本発明の制御装置は、樹脂箔(プラスチックフィルム)、特に平面(シート)状の樹脂箔を形成する全制御工程に関する。流延樹脂箔(注型樹脂箔)の形成法も、本発明に属する。また、二重バブル樹脂箔の成形制御法と呼ばれる所謂、吹込成形樹脂箔の形成法も本発明に属する。
【0003】
また、本発明は、樹脂箔を形成する全製造方法に関連するが、流延樹脂箔の形成法を含む種々の樹脂延伸装置でも、二重バブル樹脂箔成形制御法による樹脂箔の形成法を含む平面状樹脂箔の形成法は、当業者には基本的に公知であり、公知の解決法を参照できる。
【0004】
樹脂箔又は流延樹脂箔の成形装置全体に関する制御装置は、樹脂延伸装置のみならず、細粒樹脂の供給又は樹脂重合から最終樹脂箔形成までに関連する。製造装置全体の一部に過ぎない樹脂箔の順次延伸又は同時延伸には、本発明は、限定されない。
【0005】
本発明の樹脂箔成形制御法は、所謂、流延樹脂箔成形装置に適用される。適切な流延樹脂箔成形装置の各構成装置は、当業者に周知である。樹脂箔成形制御法と二重バブル樹脂箔形成法にも本発明の制御方法を原理的に適用できる。
【0006】
稼動中の樹脂箔成形装置の各部に発生する多数の機械上の変量(「機械変量」という。)と、成形工程中の樹脂箔に発生する多数の処理上の変量(「処理変量」という)とを樹脂箔形成製造装置の中央制御装置で制御する方法は、極めて複雑である。得られる機械変量と処理変量に関する多数のデータを編集し、互いに組合せなければならない。特に、経験的に獲得する膨大な量の経験値を使用して、制御装置を正しく開始し、駆動しかつ制御しなければならない。換言すると、関与する製造(工程)技術者と装置操作者の経験と知識の量と質とに依存する制御が極めて重要である。
【0007】
図10は、所定品質の樹脂箔を形成する従来の制御装置の略示工程図の一例、即ち、樹脂箔製造装置の従来の機械制御法の基本的構成手順を示す。製造技術者及び/又は装置操作者の能力と経験的データに基づき、各製造工程(例えば、押出、樹脂箔形成、縦延伸及び/又は横延伸等)の各製造変量と各機械変量とを適切な方法で互いに関連付けなければならない。
【0008】
従来の樹脂箔成形装置の駆動時に、例えば、温度又は圧力等の樹脂箔成形装置の各構成機器の測定値を表す機械変量m(mは、1000を越える値)が測定技術で求められる。
【0009】
その後、制御技術により機械変量を調節して、制御系を制御して所定の処理変量を得なければならない。
【0010】
調節する全機械変量と全処理変量は、互いに依存し、製品特性は、機械変量と処理変量とに依存する。
【0011】
図10は、装置操作者(1人又は複数の操作者)をPで表し、制御装置又は制御器具Eの一部として工程可視化装置MVが設けられ、操作者は、工程可視化装置MVを介して制御装置又は制御器具E全体を制御する。
【0012】
図10の工程可視化装置は、考慮し、管理し、検査しかつ/又は個別に調節すべき多数の測定量又は媒介変数(パラメータ、補助変数、機械変量、工程変量)等を表示するため、工程可視化装置の全体構造は、多大でかつ極めて見通し難いものとなる。
【0013】
図11は、公知の解決法を実施する縦延伸装置(MDO, 延伸方向付装置、横延伸装置)の概念図を示す。
【0014】
図11は、特殊な縦延伸装置の種々の予備加熱装置群VH1~VH2(例示に過ぎない)と、中央から右手に配置される各対の搬送ローラと、搬送ローラに続く種々の回転速度で異なる延伸工程を実行する長手延伸ローラLWとを備える延伸装置を示す。その後、例えば、延伸装置LR1~LR4が続き、後加熱処理ローラNH1~NH4が配置され、更に、横延伸装置(図1点線枠17内)又は選択的な被覆装置(図1点線枠15内)に樹脂箔が供給される。
【0015】
樹脂流延装置(図1点線枠9内:回転ローラ上に液状薄膜樹脂を供給する装置)のローラ装置が通常入口側に接続され、溶融樹脂箔は、通常冷却ローラに供給され、水槽を通して案内され、その後、縦延伸装置の第1の予備加熱ローラに流延樹脂箔が供給される。
【0016】
図11に示す縦延伸装置では、長手延伸装置又は樹脂箔成形装置の構成機器の上部と下部に、多数の媒介変数、機械変量及び温度値等を通常読出し、管理しかつ/又は調節することができる。即ち、各製造工程及び製造段階での機械変量の変化を通じて、経験値に基づき極力正確な所望特性値の最終製品、特に樹脂箔形態の長尺材料を形成できる。
【0017】
例えば、図11は、縦延伸ローラの各目標温度と実際温度、トルク、延伸間隙等の媒介変数値(影響量)を送信する縦延伸装置用の工程可視化装置MVの例を示す。
【0018】
図11の例では、機械変量m値は、縦延伸比、各ローラの前後温度、樹脂箔の収縮量等の製造変量に勿論影響を与える。製造変量は、先行する工程毎に調節されかつ後続の工程では、各工程毎に設定される。
【0019】
同様に各工程毎に製品特性も設定される。
【0020】
製法技術者/装置操作者の知識と経験により、所望の製品特性を得ることができる。
【0021】
処理変量nは、機械変量mより極めて小さい状態:n<<mが重要と考えられる。
【0022】
しかしながら、従来の処理変量の設定は、最適な処理変量を決して表すものではなく、少なくとも1つの製品特性、例えば、曇り値、即ち樹脂箔の曇り値又はエネルギ消費量等の最適な製造変量を推定するものに過ぎない。従って、顧客が要求する製品特性を更に改良できかつエネルギ消費量を最小限に抑制できる可能性がある。
【0023】
補足すると、樹脂箔成形装置の他に、特に流延箔成形装置での流延樹脂箔の形成も重要である。通常、流延樹脂箔成形装置では、幅広ノズルを通じて冷却ローラ上に樹脂溶融物を供給し、形成する比較的厚い又は厚い樹脂箔は、その後他の延伸工程を受けない。その後、例えば、後の深絞工程で、得られる比較的厚い樹脂箔を更に加工することができる。
【0024】
既知の吹込成形樹脂箔製造装置と二重バブル樹脂箔/三重バブル樹脂箔製造法等にも必要な制御方法を原理的に使用することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明の課題は、従来技術から出発して、樹脂箔を形成しかつ/又は処理する改良された制御装置及びこの種の樹脂箔製造装置を制御する改良された樹脂箔成形制御法を提供することにあり、工程可視化装置を使用する改良された樹脂箔成形制御法では、従来の制御装置に比較して容易に全操作を行うことができる。
【課題を解決するための手段】
【0026】
制御装置の課題への解決手段を請求項1に記載し、樹脂箔成形制御法の課題への解決手段を請求項11に記載する。
【0027】
本発明の好適な実施の形態は、請求項1と請求項11の各下位請求項に記載される。
【0028】
特に、従来技術とは完全に異なる構成の制御装置と樹脂箔成形制御法を提供する本発明の解決手段により、適切な樹脂箔、特に種々の材料で構成される樹脂箔を極めて容易に形成する樹脂箔成形装置(平面状樹脂箔の全形成法及び流延樹脂箔、吹込成形樹脂箔及び/又は所謂二重バブル樹脂箔又は三重バブル樹脂箔の製法等の製造方法)を構成できる特徴がある。
【0029】
従来の機械制御法と比較して、本発明の樹脂箔成形制御法は、顕著に簡略化される。本発明では、複雑な制御構成全体と樹脂箔成形制御法を簡略化できる。本発明では、従来考慮すべき機械変量数より倍数10だけ小さくて、例えば、制御又は調節すべき処理変量数が10桁から100桁の間になり、従来の制御方法で考慮すべき機械変量(通常、1000桁より極めて多い機械変量がある)を極めて少ない処理変量数に減少できる。
【0030】
工程変数量を減少する本発明では、装置操作者と製法技術者は、技術手段を用いて取扱う一定の高品質製品と高効率の製造方法の技量と知識を模擬しかつ予測することもできる。
【0031】
本発明の制御装置又は制御器具は、全制御構成体が2つの要素に大別されて互いに関連付けられると同時に、互いに個別のユニットとして分離され又は分離可能な複数の個別の機能要素(モジュール、ユニット)を構成できる特徴がある。
【0032】
制御装置は、検出装置(センサ要素、センサモジュール)SMとも称する複数の検出装置である。
【0033】
検出装置に協働する他の複数の要素は、規格処理値及び/又は目標処理値とも称する複数の処理要素(プロセスモジュール)PMに関するものである。
【0034】
制御装置の稼動中に検出する多数の機械変量を検出装置に付与する検出器(標準センサ)を有する実際の直列接続測定技術を検出装置に用いことが好ましい。
【0035】
機械変量は、特に樹脂箔形態の長尺材料の製造工程全体で作動する機械各部の温度データ、速度データ、力学データ等の全変数データを含む。温度データは、例えば、原材料、ノズル(特に、幅広スリットノズル)からの粘流動性原材料の溶融樹脂箔又は流延樹脂箔の押出温度、冷却ローラのローラ温度(表面温度)、水槽温度、使用する複数のローラの表面温度、加熱装置及び/又は冷却装置の温度を含む。速度データは、例えば、樹脂の縦延伸を行う種々のローラの駆動速度、樹脂箔を把持しかつ搬送する周回式把持装置の駆動速度、加熱装置及び/又は冷却装置の送風速度を含む。力学データは、牽引ローラ、例えば、巻取ローラ形式の巻取装置等の応力、引張力等のデータも必要とし、機械変量と呼ぶ。
【0036】
製造工程を構成する各製造領域内の長尺樹脂箔用の所定の製造変量に所定の各機械変量を対応させて、各データに関する多数の検出個別データを含む機械変量を制御装置の検出器内で処理することができる。
【0037】
例えば、長尺樹脂箔形成用の初期材料、長尺樹脂箔の種々の加工工程間の温度、縦延伸比、横延伸比、所定の長尺応力を発生しかつ所定の長手方向引張力を長尺材料に作用しつつ、縦方向又は横方向に延伸される樹脂箔の後処理形成等の製造変量は、制御装置への所定の各機械変量に関連付けられ(結合され、接続され、リンケージされ)る製造変量に関係する。例えば、製造変量は、機械変量のある変数に依存して決まる量又はその対応量を表す関数である。
【0038】
検出装置又は検出器に規格処理値又は目標処理値を設定し、樹脂箔成形装置の製造変量に基づき、規格処理値又は目標処理値で各形成領域内の所望の処理変量を調節して、例えば、初期材料、温度、縦延伸比及び/又は横延伸比、長尺横応力、縦方向引張力等の処理変量と、目標処理値形式の規格処理値とを所定の伝達関数により関連付けることができる。
【0039】
換言すると、機械変量は、最終的に製造変量の関数であり、逆に製造変量は、機械変量の関数である。
【0040】
また、樹脂箔に関する処理変量は、製造変量の関数であり、逆に、製造変量は、機能的に処理変量に関連する。
【0041】
本発明では、例えば、縦方向及び/又は横方向に延伸される樹脂箔の製造段階で、例えば、所定の形成工程での樹脂箔の厚さ、発生する収縮量、弾性係数(Eモジュール)、樹脂箔の透明性又は濁(曇)り等の各製造工程に関する製造変量を適切に調節して、最終的に形成する樹脂箔の所定の製品特性を決定することができる。
【0042】
また、延伸した樹脂箔形態の最終製品の製品特性を得るのに必要な製造変量を定めることができ、最終製品に先行する個別工程で、流延樹脂箔の形成、樹脂箔の冷却又は加熱の時点で実施される縦延伸と事後の横延伸及び後処理等で、所定の製品特性に調節することができる。
【0043】
前記の通り、本発明の構成要素又は特徴は、検出器と、検出器上に設定される目標処理値との2つの要素又は少なくとも2つの要素を利用する新規な技術的着想である。また、「製品可視化装置」と、例えば「支援装置」を同時に設けることができる。このように、本発明では、従来技術とは完全に異なる構成特徴と、データを検出して処理する従来の制御法及び従来の装置とは全く別の新規な制御装置と樹脂箔成形制御法とが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
本発明の実施の形態を図面について詳細に以下説明する。
【0045】
図1】樹脂箔成形装置の基本構造を示す分解斜視図
図2】検出装置/実装検出器と、検出装置/実装検出器に接続され組込まれる目標処理値を含む規格処理値を使用する本発明の解決手段の第1の基本構成図
図3】本発明の原理を示す具体的構成図
図4】縦延伸装置の可視化工程を示すグラフ
図5】製造条件最適化工程での水槽温度と冷却ローラ表面温度との関連特性を示すグラフ
図6】製造条件最適化工程の温度範囲を示すグラフ
図7】製造条件最適化手順例のフローチャート
図8】最良の品質値を正確に選択する手順例のフローチャート
図9】複数の最良品質値を選択する手順例のフローチャート
図10】従来の基本的機械制御法の基本構成図
図11】従来の機械制御法を示す可視化工程図
【発明を実施するための形態】
【0046】
一軸延伸、単軸延伸、同時二軸延伸又は順次二軸延伸等の延伸法を実施する図1の平面状樹脂箔形成装置と形成法により、流延樹脂箔が形成される。
【0047】
例えば、貯留槽1内に保持される樹脂原料は、貯留槽1から押出され、押出機3に供給される。重合体(ポリマー)の樹脂原料は、直接幅広スリットノズルから所謂直接流延装置に供給される。種々の添加物と機能材料とを重合体溶融樹脂流又は細粒樹脂に原則的に添加することができる。押出機3内で均一に混錬される重合体溶融樹脂は、幅広スリットノズルから冷却ローラを備える樹脂箔引出機(冷却ドラム)9上に押出される。
【0048】
延伸ローラ11の前段で樹脂箔引出機9に押出されるほぼ無定形の樹脂箔(例えば、ポリエチレンテレフタレート)又は結晶性の樹脂箔(例えば、ポリプロピレン)は、温度調節される二軸延伸工程の延伸ローラ11により順次案内されて、ガラス遷移温度を摂氏数度上回る延伸温度に新たに加熱される。
【0049】
一軸延伸工程と単軸延伸工程では、樹脂箔は、1方向にのみ延伸される。端縁が自由な一軸延伸では、重合体単繊維延伸と比較して、樹脂箔端縁の自由なくびれが許容されるが、単軸延伸では、樹脂箔端縁が側方で固定されてくびれが阻止される点が、両延伸工程間の差になる。
【0050】
異なる周速度の延伸ローラ11を使用して延伸するとき、処理すべき長尺樹脂箔の表面と延伸ローラ11の表面との間の摩擦力により、ほぼ単軸延伸が行われ、この場合の樹脂箔の側方くびれは僅かである。縦延伸と横延伸との間又は同時延伸の前に、例えば、被覆処理等の選択的表面処理15を施すことができる。巻取の前又は後でも、表面処理を最終樹脂箔に行うことができる。
【0051】
二軸方向に樹脂箔を延伸する順次二軸延伸と同時二軸延伸工程17では、順次又は同時に二軸延伸を行うことができる。異なる周速度で回転する2延伸ローラ間で縦方向延伸が行われる。高速回転式の新樹脂箔成形装置では、樹脂箔の縦延伸は、2段階で実施される。順次延伸工程では、延伸炉内の縦延伸に続き、長手方向に垂直な横延伸が行われる。
【0052】
同時二軸延伸法では、押出されて冷却される樹脂箔は、未延伸状態で同時二軸延伸工程17の延伸炉内に案内された後に延伸される。例えば、延伸の前後で表面処理等の付加処理を樹脂箔に施すことができる。引出装置19の後段で、樹脂箔は、最終的にローラ上に巻取られる。
【0053】
本発明の樹脂箔成形制御法では、流延樹脂箔成形装置を同様に使用できる。流延樹脂箔成形装置でも、後述の関連する制御装置により、本発明の樹脂箔成形制御法を実施できる。
【0054】
前記の通り、既知の延伸装置の使用を含む平面状樹脂箔の形成のみならず、吹込成形樹脂箔、二重バブル樹脂箔又は三重バブル樹脂箔又はそれらと比較でき又は同様の方法で樹脂箔を形成する際も、本発明の樹脂箔成形制御法を通常使用することができる。
【0055】
この種の樹脂箔成形装置の適切な装置構成機器は、当業者には周知である。その限りでは、公知の方法を参照できる。
【0056】
本発明の制御装置
本発明の制御装置の基本構造及び長尺樹脂箔を形成する本発明の樹脂箔成形制御法を図2図3について以下説明する。
【0057】
本発明に係る解決法を詳記する前に、下記定義を説明する。
【0058】
製法技術者/装置操作者又は専任者
装置操作者は、製品を形成する目的で、装置に必要なデータを入力して出力値を解釈する自然人である。
【0059】
工程可視化
工程可視化は、装置操作者が主に処理変量を目視して変更する操作である。
【0060】
工程可視化装置
工程可視化装置は、操作者が主に機械変量を目視して変更できる操作指示装置(インターフェイス)である。
【0061】
支援装置
支援装置は、所定の課題を解消する際に操作者を案内するデータ表示装置である。支援装置に格納される動作手順データは、より簡単、より確実かつより効果的に操作者の操作を支援する。
【0062】
処理変量
処理変量は、全製造工程を通じて加工すべき材料の物理的特性を表す。典型的な処理変量は、樹脂箔温度、樹脂箔引張力、樹脂箔厚さ等である。処理変量は、製造変量と製品特性とを含む。
【0063】
製品特性
製品特性は、最終製品を記録する処理変量、例えば、樹脂箔厚さである。
【0064】
製造変量
製造変量は、全製造段階での製造工程を記録する処理変量、例えば、樹脂箔温度と箔引張力である。
【0065】
目標処理値/規格処理値
目標処理値(モデル処理値)は、製造変量と製品特性との間を質的及び量的に関連(結合)付ける。目標処理値は、製造変量から製品特性を推定し、逆に製品特性から製造変量を推定して、双方向に作用する。規格処理値(処理値モジュール)内に目標処理値を組み込むことができる。
【0066】
検出器/検出装置
検出器は、機械変量と処理変量との間を質的及び量的に関連(結合)付ける。検出器は、機械変量から処理変量を推定し、逆に処理変量から機械変量を推定して、双方向に作用する。検出装置内に検出器を実装することができる。
【0067】
機械変量
機械変量は、例えば、冷却水温度、ファン回転数等の機械特性を表す。
【0068】
図10に示す公知の基本的機械制御法の説明から、調節装置を介して所望の製品特性を有する樹脂箔を最終的に正確に形成しなければならないことは明らかである。
【0069】
換言すると、機械変量と製品特性との関連(結合)付けにより、極力正確に所望の媒介変数を有する所望の樹脂箔を常に最終的に形成しなければならない。
【0070】
図10に示す従来の基本的機械制御法による制御装置の構造とは異なり、図2図3は、2つの要素又は少なくとも2つの要素を特徴とする本発明の制御装置の構成を示す。制御装置は、検出装置又は検出器に関連する第1の要素と、規格処理値又は目標処理値に関連する第2の要素とを備える。また、図2の制御装置に工程可視化装置又は支援装置を設け又は実装して、容易に全操作を行うことができる。必要に応じて、操作者が全装置を操作する工程可視化装置及び/又は支援装置を付加装置又は第3の要素と見ることができる。
【0071】
制御装置全体を構成する図2の2要素は、検出装置を構成する検出器を有する。
【0072】
形成方法又は制御装置の第2の構成要素又は第2の要素は、別体の規格処理値内に組み込まれる所謂目標処理値に関連する。
【0073】
二要素構成
操作者から見て、図2の制御装置は、所定の機械変量を巧みに調節して、所定の製品特性を有する所望の製品を効率的に形成できる。
【0074】
本発明の解決手段の核心的視点は、所定の機械変量から製品特性を予測する目的でも、所与の製品特性を達成する機械変量を検出する目的でも、機械変量と製品特性とを互いに関係付ける有意義な方法を確立することにある。
【0075】
機械変量と製品特性との直接関連付けは、不可能ではないが、特に著しく多い調節可能な機械変量の変動量を直接関連付ける可能性が著しく制限される難点があった。
【0076】
制御装置の動作を別にして、基礎工程を考慮すると、処理法から見える制御装置の多数の調節法にも同一の作用があることを確認できる。また、具体的な装置の駆動と調節状態よりも、極めて少ない数値で樹脂箔の製造工程を特徴付けることができる。
【0077】
この着想を更に敷衍すると、工程(処理)自体が製品特性に重要なことは明らかである。所定の製造工程時点での樹脂箔形成法(製品変量)が重要であり、樹脂箔特性を具体的な装置のみでは達成できない。
-製品特性と製造変量との間の関係では、機械変量と製品特性との相互間の関連性を構造化すべきである。
-また、機械変量と製造変量とを関連付けるべきである。
【0078】
機械変量と製造変量とを実際に分離することは、極めて不合理である。前記の通り、機械変量と製品特性とを互いに部分的に関連付けることは、困難であるが、全く不可能ではない。従って、特に処理変量の部分量である製造変量に焦点を当てて、機械変量と処理変量との関連性を第2の関係として表現することがより有効である。
【0079】
本発明の解決手段は、
-製品特性と製造変量との関連性としての目標処理値
-製造変量に焦点を当てた機械変量と処理変量との関連性としての検出器
形式のこの種の論理的構造化を内容とする。
【0080】
従って、制御装置の2要素が必要となる。
【0081】
目標処理値
要素「目標処理値」は、製造変量を対応する特定の製品特性に関連付ける:所定の製造変量により所定の製品特性が得られる。製造変量から導出される製品特性は、機械変量の関数であるが、機械変量自体は重要ではなく、機械変量の関数である製品特性を達成する目標処理値の機能を満たすために、機械変量自体を知る必要がない。全処理変量は、具体的な機械特性(機械変量)自体に依存せず、処理変量は、装置で実行する工程のみを表す。
【0082】
検出器
要素「検出器」は、製品特性も製造変量も、機械変量に処理変量を関係付ける:特定の所定の機械変量により、対応する所定の処理変量が得られる。製造変量は、製品特性から導き出される機械変量の関数であり、処理変量は、製造変量の関数であり、製造変量は、検出器からの特定の機械変量を対応する所定の処理変量に関連付けることが要点である。
【0083】
2要素は、双方向に作用する:所定の製品特性は、特定の製造変量から導出され、逆に特定の製造変量は、対応する製品特性から導出される。所定の処理変量、即ち所定の製品特性も所定の製造変量も、特定の機械変量から導出され、逆に特定の機械変量は、対応する所定の処理変量、即ち対応する所定の製品特性も特定の製造変量から導出される。
【0084】
2要素構造により、機械変量から製品特性を著しく容易に導出でき又は製品特性を機械変量から部分的に導出することもできる。
【0085】
例えば、機械学習手順、モデル計算、製造条件最適化方法、データバンク、対応付け(例えば、ルックアップテーブル形式等)、単純なオペレーション又は製造条件最適化法と可能性のある方法等の任意の方法を使用して2要素を検出装置(検出器)に組込み又は実装することができる。
【0086】
本発明の解決手段の利点
注目すべき本発明の解決手段の利点は、驚くべきものである。
【0087】
即ち、機械特性(機械変量)に依存する検出器と、製品特性に依存する目標処理値を使用する制御装置との2要素により、多数の調節工程を著しく簡略化でき、他の機械変量を使用する他の装置に、所定の樹脂箔形成法を簡単に移転でき、より迅速かつより効率的に新製品を展開でき、製品交換もより迅速に準備することができる。
【0088】
本発明の実施の形態での本発明の解決手段の技術的特徴と得られる作用効果を以下詳細に説明する:
【0089】
可視化工程
前記の通り、本発明では、図10図11に示す従来公知の工程可視化装置を本発明に係る可視化工程に交換できる。図4は、可視化工程の抜粋例を示す。
【0090】
図4は、操作者Pが樹脂箔温度を間接的に調節して、送風機の速度変化と送風機領域温度(各延伸領域内での)の変化を調節する代表的な樹脂箔成形制御法を示す。
【0091】
例えば、図4の中央に示す棒グラフ中、左側の第1の棒グラフは、可視化した縦延伸6段階(例えば、図11に示す縦延伸装置に設けられる工程可視化装置を構成する液晶表示器に表示される)での樹脂箔引張力を示し、第1の棒グラフの隣の第2の棒グラフは、縦引張力(延伸力)を示す。
【0092】
縦延伸6段階の各上部に、各段階に関連する可視化ローラ温度を示す。
【0093】
縦延伸6段階での長尺樹脂箔に作用する樹脂箔引張力棒グラフを図4の中央に示し、特に縦延伸装置の予熱段階での可視化温度変化グラフを図4の左側に示す。
【0094】
図4左側は、予備延伸段階での樹脂箔入口温度45℃を示す。出口温度は、120℃である。樹脂箔最高表面温度は、樹脂箔頂部で105℃、樹脂箔底部で130℃である。先行する延伸装置に対する速度差を3.5%で示す。
【0095】
間接的に調節するとき、操作者は、ローラ温度を介して樹脂箔温度を調節できる。
【0096】
直接的に調節するとき、操作者は、組込論理変換により樹脂箔温度を直接変化させる。
【0097】
組込論理では、数m(従来の機械制御では、数mは、通常1000桁を遥かに上回る媒介変数値であった)を削減して、代わりに最終的に10桁から100桁(段落0029(原文第8頁、22行)に下限を10で示す)数の変量を調節すればよく、例えば、調節媒介変数は、50である。
【0098】
例えば、この種の組込論理構造により、制御装置を支援し実装することもできる。
【0099】
操作者が、製造すべき樹脂箔の所定の処理変量を変更するとき、ソフトウェア制御の支援プログラムにより、変更すべき最良の媒介変数を工程可視化装置に表示(提示、提案)して、所望の目的を達成できる。
【0100】
前記の通り、本発明の制御装置は、機械特性(機械変量)に依存する検出器と、検出器に設定される製品特性に依存する目標処理値との2要素を備え、工程制御自体には検出装置の出力データに配慮する必要がないので、2要素構成が可能となる。即ち、「基礎構成」として2要素の検出装置内に機械特性(機械変量)に依存するデータを実質的に格納して、処理変量と機械変量の双方向の対応付けにより自動的に適切に工程を調節できる。
【0101】
また、検出器の機械変量と製造変量との関係を伝達関数又は数式で表しかつ/又は所定の機械変量を所定の処理変量に関係付ける最も簡単なデータ配列(ルックアップテーブル形式)で設定できよう。
【0102】
操作者が目視不能なプログラム(検出器に搭載するプログラムと製造装置)により処理変量と製品特性に機械変量を最終的に変換する複雑な全論理演算を実施できる。
【0103】
本発明の好適な実施の形態では、下記のように、機械変量と処理変量とを関連付けるデータを各製造区域で個別に格納できる。各製造段階又は各製造区域(冷却ローラ上に流延樹脂箔を放出し、予備熱処理し、縦延伸し、横延伸し、後処理等を行う段階又は区域)で、格納データにより種々の温度推移、種々の厚さ推移及び種々の曇り度(濁度、濁り)を付与し、各区域で異なる特殊な製造法及び/又は処理法により、異なる縦方向引張力及び/又は横方向引張力を樹脂箔に付与し、形成し又は加工することができる。
【0104】
異なる樹脂箔成形装置間での調節値の伝達及び/又は比較可能性
【0105】
例えば、所定の初期材料と所定の種々の樹脂箔層等を使用する小型の実験室設備により所定の樹脂箔試験を行い、その後大型の製造装置でその樹脂箔を形成するとき、従来では、工程可視化装置により大型の製造装置で全調節値と、関連する全機械変量を新たに調節して、複雑な反復調節工程を通じて、正確な製品特性の樹脂箔を最終的に形成しなければならなかった。
【0106】
本発明では、2要素を備える制御装置又は2要素制御法及び/又は2要素形成法を実施する小型の装置から大型の装置への製造工程移行時に、機械調節を介さずに(機械調節を操作者が考慮する必要のない)、所謂目標処理値のみを介して完全に異なる機械変量を調整することができる。
【0107】
これは、種々の製造段階又は製造区域、各形成工程を介して、目標処理値の樹脂箔特性を調節し、所望の製品特性を有する樹脂箔を最終的に形成できることを意味する。
【0108】
従って、各形成段階で適切な製造変量を対応付け(該当する製造変量に関連し)て、検出器を介して関連する機械変量に応じて制御装置により自動的に目標処理値が調節される。
【0109】
極めて重要な小さい偏差が装置毎に生じることが少なくともあるため、従来では、同種の装置間での製造条件(調節値)の転移又は移動は、極めて困難であった。即ち、或る装置からそれ自体同種の他の装置に最適調節値と思われる機械値を転移すると、偏差が増大する難点があった。
【0110】
本発明の制御装置は、検出器から導出され、機械変量から導き出されかつ/又は機械変量から共用化(共通化)される例えば、樹脂箔温度又は樹脂箔引張力等の製造変量を提供する。機械に基づく又は機械特性(機械変量)に依存するが、機械変量から共用化される工程上重要な変量(製造変量)を任意の他の装置に直接転移して、その後、当該他の装置により同一の工程を実施して、同一の製品特性で同一品質の樹脂箔を形成できる。その後、使用する目標処理値により最終的に形成する樹脂箔の製品特性と、関連する処理変量を当該他の装置上で調節して、双方向に可逆的に機能する目標処理値と、下位段階として目標処理値に依存する検出器とを介して最終的に正確な機械調節を行うことができる。
【0111】
本発明の制御装置を搭載する同一原料型の複数の装置では、異なる装置間での調節値の転移又は異動を著しく簡略化することができる。
【0112】
迅速かつ効率的な製品展開
例えば、既に設置される樹脂箔成形装置上で、所定の製品特性を有する樹脂箔を形成するとき、従来では、多数の電子構成機器の調節を基本的に必要とした。
【0113】
本発明の制御装置では、完成した最終的な樹脂箔製品特性を直接調節すれば、所定の製品特性を得ることができる。例えば、第1の要素としての機械依存の検出器と、第2の要素としての製品依存の目標処理値とを備える2要素調節値プログラム(標準調節値)を樹脂箔成形装置に実装し、装置自体の電子構成機器の調節値をプログラムにより自動的に支援し、装備され設定される伝達関数又は相関条件により、例えば、樹脂箔温度、樹脂箔引張力、縦延伸力と横延伸力等の製品変量は、樹脂箔厚さ、樹脂箔収縮量、弾性係数、樹脂箔の曇り(濁り)等の形成すべき樹脂箔の規格処理値、即ち目標処理値に関連付けられる。各樹脂箔形成段階の処理変量は、更に最終的かつ完成した最終的に有効な樹脂箔製品特性に関連付けられる。
【0114】
また、本発明の制御装置の2要素により、操作者は、極めて迅速かつ簡単に製品特性を調節し又は変更して、例えば、「仮の事態(what if)」を仮定して、所定の重要な中間結果を工程上で検査することもできる。種々の処理変量と工程上の検査により、急激に変化する最終特性を予測できる。
【0115】
製品変量と製造変量との質的かつ量的な関連性を認識して、新規な製品変量から出発して、制御装置を迅速に調節することができる。目標処理値を適用して初めて、7.5トン/時を上回る近時の生産能力で新規展開の樹脂箔を効率的に生産することができる。
【0116】
例えば、機械学習手順等の適切な方法を通じて、所定の製品特性から出発して目標処理値により必要な製品変量を定めることができる。
【0117】
機械学習手順と共に、全処理変量に関連する全樹脂箔製造工程を説明する。
【0118】
具体的な製造装置に適合する適切な検出器に対する必要な機械変量を決定して、所与の処理変量を達成できる。最も簡単な例では、機械変量と処理変量とを単純に対応付けることができる;例えば、機械操作上調節可能な縦延伸装置内の2つの駆動装置間の相対的な速度差は、縦延伸比MDに相当する。
【0119】
尤も、製造条件最適化法と組み合わせて広範な計算を行って適切な機械変量を決定する必要が通常ある。プログラマブルメモリを備える既存の制御装置、例えば、単一又は複数の制御装置に搭載した機械変量を自動的に転移して、適切な方法で効率的に機械変量を設定できる。非自動調節装置では、利用者は、適切な方法で機械変量を手動で調節できる。
【0120】
制御装置の全構成機器は、最終的に制御装置が求める機械変量に調節される。
【0121】
2要素は、双方向に有効であるから、検出器を用いて少なくとも1つの製造変量、場合により個別の製品特性も、機械変量から決定することができる。その後、目標処理値を介して欠如する全製品特性を決定することができる。
【0122】
即ち、機械変量の変更に基づき、製品特性を予測することができる。また、機械調節値のみならず、例えば、周囲温度の測定値も同様に予測することができる。
【0123】
迅速な製造製品交代
製品交代は、10時間から約2日毎に製造装置上で製品を入れ替える反復工程である。生産能力向上のため、企画の成果と失敗により効率的に製品を交代する必要性が常にあり得る。製品交代の必要性により、支援装置を介して交換すべき製品を案内する一方、他方で、検出器と目標処理値を介して、装置は所望値に調節される。所定値への調節は、機械学習を行わずに既に実現できる。適切な装置により支援される「高知能型装置」は、最適な駆動法により所定の製品特性を付与できる。その場合に、最適な駆動法を決定することもできる。
【0124】
良好な工程把握
支援装置により製造変量を決定すると、本発明では、操作者による基礎工程は、純粋に機械調節を判断すべき従来の工程より遥かに明瞭になる。
【0125】
迅速な異常品質原因分析
機械変量mを処理変量nに変換(機械依存の機械変量を有する検出器を使用する本発明の2要素によってのみ変換できる)すると、製品特性に異常が生じた原因をより迅速かつより所望に分析することができる。
【0126】
製造条件最適化
所定の製品特性を得るには多くの可能性がある。本発明の制御装置又は樹脂箔成形制御法では、適切な支援装置により、最適な駆動法により所定の製品特性を得ることができる。また、所定の駆動法の意味を規定することもできる。
【0127】
検出装置及び/又は検出器
具体的な検出装置を実装する本発明の実施の形態の例を以下説明する。
【0128】
例えば、調節すべき樹脂箔温度の「温度算出」について、機械変量と製造変量との関連性を以下明確に説明する。
【0129】
ポリプロピレン材で作業する樹脂箔製造装置の重要な工程中間状態での長尺樹脂箔温度を計算できる。順次延伸樹脂箔製造装置と同時延伸樹脂箔製造装置にもこれを適用できる。
【0130】
溶融物ノズルの出口開口部から始めて、特に正確に各装置区域内で長尺樹脂箔の視点から一定の基本的な媒介変数を制御する方法で、製造装置は、複数の論理的区域に分割され、工程中間状態が決定される。これは、特に
・樹脂箔と機械環境又は周囲環境との間の熱伝達係数
・機械温度又は周囲環境温度
の計算を行う。
【0131】
各装置区域での装置内速度に伴う長尺樹脂箔の滞留時間と厚さが計算される。また、材料の熱特性、材料通過量及び溶融樹脂温度が入力量となる。
【0132】
第1の区域での開始温度の入口温度を含む第1の区域から各区域に沿う溶融物の温度変化は、適切な手順で計算される。この計算には、下記全媒介変数値が算入される:
・樹脂箔と装置環境又は周囲環境との間の熱伝達係数(物理的変量)
・装置温度又は周囲温度(制御値又は測定値)
・滞留時間(滞留速度から)
・長尺樹脂箔の厚さ(特に速度から)
・材料熱特性(密度、熱容量、熱伝導性)
・材料通過量(材料移送量から)
・各区域の入口温度(先行区域/溶融物温度から)
【0133】
各装置区域の端部での樹脂箔温度は、次の隣接区域への入口温度として伝達される。区域毎の算出作業により、特に工程技術上重要な位置での計算が可能である。
【0134】
バインダー・シュミット法、有限要素法(FEMモデル)又はフーリエ変換又は他の適切な方法で、熱伝達量が計算される。
【0135】
樹脂箔と機械環境/周囲環境との間の熱流量を計算する計算データでは、材料通過量を無視して熱伝達量を原理上算出して、工程エネルギ需要量を説明できる。
【0136】
例えば、調節すべき機械変量と、実際に発生する樹脂箔温度との温度相関関係を設定できる。両者の相関条件は、双方向に有効である。換言すると、相関条件により、所定の機械変量を適切に調節すると、所定の温度に樹脂箔を調節できる、逆に、機械変量により温度値が変化するとき、相関条件又は伝達関数により、樹脂箔温度の変更値が得られる。
【0137】
尤も、長尺樹脂箔の多段形成工程全体ではなく、区域毎(例えば、正確には流延樹脂箔を製造する単一段階の形成工程)に相関関係又は伝達関数が調整される。前記の通り、樹脂箔成形装置全体は、樹脂箔引出方向に多数の装置区域又は装置領域に分割され、測定可能又は計算可能な条件、例えば、樹脂箔と機械環境又は周囲環境との間の等しい熱伝達係数及び同一の装置温度又は周囲温度が各区域を支配する特徴がある。
【0138】
従って、一体取扱可能な単位区域装置、特に、装置区域として、多数の各加熱段階、通風機等を備える区域を取り扱うことができる。
【0139】
その場合、形成すべき樹脂箔が順次通過する連続区域で、具体的な各樹脂箔に対し製造条件を最適化する適切な機械変量と相関関係にある樹脂箔温度値を計算することができる。
【0140】
その計算法により、機械変量から導出されかつ共用化される明確な工程値の算出法と、機械調節法全体とを顕著に簡略化できる。
【0141】
横延伸装置又は同時延伸装置の延伸炉内の通常の樹脂箔成形装置では、約20個~約30個の通風機が設けられ、樹脂箔厚さと装置速度に依存する約6箇所~約8箇所の空気温度の調節により、樹脂箔の予熱量が機械的に調節される。
【0142】
樹脂箔の最終温度のみ、場合により駆動開始温度と滞留時間中の単純な温度推移から、同一の樹脂箔の予熱量を簡単に修正できる。
【0143】
従って、目標処理値と、必要に応じて使用する機械学習手順を顕著に簡略化し又は調節値又は媒介変数を削減して、装置から独立する課題を顕著に容易に取扱うことができる。
【0144】
僅かな数の調節値を用いて、方法工程全体を制御することができる。
【0145】
このように、機械変量(例えば、装置の温度調節値)から実質的に一方向にかつ最終的に装置固有の相関関係特性又は伝達関数を付与し、その相関関係特性又は伝達関数により温度工程値を設定し、特に長尺樹脂箔の引出方向に互いに連続して好適に温度工程値を付与し、設定し又は複数の装置分割区域又は装置領域に形成する方法を説明した。
【0146】
機械変量と処理変量との間の相関関係特性又は誘導値は、単方向ではなく双方向に可逆的に関連付けて設定されるので、同様に、樹脂箔が連続して通過する各装置区域又は各装置領域では、予め設定する処理変量で機械変量を個別にかつ適切に対応付けることが好ましい。流延樹脂箔の形成法の複数の実施の形態の例を以下簡単に説明する。
【0147】
流延樹脂箔の形成時に、溶融樹脂は、(ノズルリップを介して)幅広スリットノズルから所定の温度に維持される冷却ローラ上に供給される。水槽内に配置される冷却ローラ上に樹脂箔を供給する延伸構造も使用される。幅広スリットノズルから放出される流延樹脂箔は、選択的に水槽中に案内され、回転するローラ周りに角度180°を超える大きな巻付角度で偏向された後に、上昇されて、次のローラに通常案内される。
【0148】
水槽と冷却ローラの表面は、所定の温度に保持される。
【0149】
図5のX軸は、冷却ローラ温度T-Cを表し、Y軸は、水槽温度T-Wを表す。図5中のX点は、冷却ローラのローラ表面と水槽中の水との両最適温度T-Xを示す。図示の例では、ローラ表面の最適温度は35℃であり、最適な水温は40℃であるが、冷却ローラ表面温度は、下限20℃と上限50℃との中間値を好適に選択でき、水槽温度も下限20℃と上限50℃との中間値を選択できる。
【0150】
図6に示す方形又は矩形の温度領域内には複数の最適値があるため、流延樹脂箔の処理法では、冷却ローラの表面温度と水槽温度は、必ずしも同一の温度値とは限らない。
【0151】
冷却ローラのローラ表面温度と水温との最良の温度領域を求める方法が問題である。
【0152】
例えば、流延樹脂箔温度等の所定の工程量に最適な機械変量を最終的に推定できる全ての方法を適用温度領域内に設定できる。
【0153】
実施可能な一製造条件最適化法は、情報処理機能(インテリジェント)試験の原理により作動する製造条件最適化法による。
【0154】
最適の媒介変数を定める任意の関数により製造条件最適化法を構成できる。樹脂箔温度検出装置では、樹脂箔温度計算法により、最適な機械調節値を求めることができる。
【0155】
普遍的な到達法による最終的に任意の関数により製造条件最適化法を構成できるので、本来の一方向計算を捕足して双方向に適用できる。原則的に検出器のみならず、目標処理値にもその計算を適用できる。
【0156】
製造条件最適化法の原理を図6について説明する。最適な水槽温度と最適なローラ表面温度との特性例は、究極的に2次元領域にあり、図5の温度特性の実施例と図6から明らかなように、図6に示す矩形、長方形(又は方形)区域内で右下に下降する分離線の内側に該当する水槽の温度領域T-Wと冷却ローラの温度領域T-Cがより最適である。
【0157】
製造条件最適化法
図7に示す製造条件最適化法では、特に20℃~50℃の温度境界G内のローラ表面温度T-Cと、同様に選択される温度値20℃~50℃の水槽温度T-Wとの2次元媒介変数領域Rを説明する。図7の「スタート(ステップS1)」から製造条件最適化手順を開始する。
【0158】
2次元(n=2)媒介変数領域Rの選択値Gが充分な精度を達成するか否か、充分に狭い限界値か否か(図示の実施例では、温度値20℃~50℃間を最適と推定する)が、決定される(ステップS2)。
【0159】
ステップS3では、制御装置が選択値Gの精度が充分高い(ローラ表面温度と水温とが、2つの温度値の上限と下限の領域内にある)と判断すると、2次元媒介変数領域Rの中心点を最適な媒介変数設定E1として利用することが好ましい。
【0160】
このように、選択値Gの結果E1が確定される。
【0161】
例えば、ステップS3にて、制御装置が2点より多い複数の選択値Gを選択して、選択値Gの精度が極めて低いと判断すると、通常、n次元媒介変数領域R内の点mを選択(ステップS4)し、n次元媒介変数領域R内で、図6内の2次元領域内の2点が選択される。両点mに対し製造条件最適化関数fを適用(ステップS5)して、品質値gが維持される。
【0162】
次に、最良の品質値gを表す点Pが選択される(ステップS6)。
【0163】
その後、例えば、下限値温度20℃を30℃に上昇し、上限値温度50℃を40℃に下降する等、境界領域を領域G'に縮小して、再び縮小した領域G'中央の最適値を表す点Pが定められる(ステップS7)。
【0164】
続いて、新規に選択した中央値G'を初期点4Gに設定(ステップS8)し、図7に示すステップS2への帰還ループを通過する。
【0165】
図8は、最良の品質値を正確に選択する方法の手順を示す。
【0166】
図8では、生産に使用する装置の稼働時間(L)と、装置の工程(E)との区別が、重要であり、装置の工程(E)は、例えば、検出装置の出力変動の媒介変数であり、具体的な機械に適合し又は規格処理値の出力変動の媒介変数で具体的な工程に適合するものである。
【0167】
生産に使用する装置の稼働時間(L)が満了すると、製造条件最適化法(アルゴリズム)により、最適な複数の等価品質値に移行して、複数の最適な品質値から無作為に品質値が選択される。
【0168】
装置の工程(E)に適合するとき、製造条件最適化法(アルゴリズム)により、正確に単一の品質値を得る他の品質判断基準を実施可能か否か判断し、実施不能時は、スタートに戻り、実施可能時は、他の品質判断基準を導入して、スタートに戻る。
【0169】
図9は、複数の最良品質値を選択する手順例を示す。
【0170】
図9では、0を超え又は0に等しい数値の各品質値は、判断基準i:k1…kiにより特徴付けられる。品質値の数値が減少する程、品質は、改善する。また、判断基準kxの指数xが小さい程、判断基準の優先順位は、上昇する。
【0171】
x=1で判断基準の最高優先順位k1の最良品質値g1から開始し、判断基準の低い優性順位の品質値gmに徐々にm個の品質値を限定することを目的とする。優先順位により、正確に1品質値gに限定することが理想的であるが、m個の全判断基準を考えて、一定の個数mの品質値g1~gmを常に最適と考えることもできる。
【0172】
複数の品質値を付与できれば、装置の稼動時間を決定し又は装置の出力変動時点で他の判断基準を設定することができる(前記の通り)。
【0173】
規格処理値及び/又は目標処理値
検出装置又は検出器を前記に説明した。
【0174】
規格処理値又は目標処理値を詳細に以下説明する。
【0175】
目標処理値は、変動し又は製造中の製造変量と、製造時に形成する製品の特性との関連性を与える。従って、目標処理値は、特に情報技術付与型装置により、目標処理値が指令する機械加工を行うべき本質的な製造工程処理を指示する。
【0176】
また、目標処理値は、具体的な装置を通じて供用化されて、本質的な変更を行わずに目標処理値で支援する検出器を備える各装置に転移又は伝達できる。
【0177】
製品特性の決定
製品特性の視点から、目標処理値は、所定の工程から得られる製品特性を示す。換言すると、これは、製造対象物が「何」か、即ち、製造すべき対象物の説明である。
【0178】
例:「ポリプロピレン樹脂箔二軸延伸」工程の目標処理値は、機械方向引張強度200MPaの製造樹脂箔を示す。引張強度値を「縦延伸引張強度」ともいえる。
【0179】
製造変量の決定
製造変量の視点から、目標処理値は、所定の工程に必要な製造変量と、必要なら製造変量を変更する帯域幅とを示す。これは、製造法「どのように」を示す。
【0180】
例:「ポリプロピレン樹脂箔二軸延伸」工程の目標処理値は、機械方向(「長手方向」)延伸係数(ファクター)4.5だけ樹脂箔を延伸し、具体的工程では、3.5と5の間の許容値を示す。また、温度130℃に樹脂箔を保持するとき、温度調節領域128℃~132℃が許容される。
【0181】
延伸係数(ファクター)を「縦延伸比」ともいえる。特に、樹脂箔温度を「機械方向延伸前の樹脂箔温度」と称する。
【0182】
接続(リンケージ)
例えば、機械学習手順(アルゴリズム)等の適切な方法により、目標処理値は、処理変量と製品特性とを関連付け(接続、リンケージ)ることができる。換言すると、目標処理値の媒介変数は、「何をどのように」を関連付け(結合)し、即ち、対象物とその製造法を関連付ける。
【0183】
対象物とその製造法は、双方向に関連付けら(結合さ)れる。また、製造変量は、何にどの程度影響するかの影響度も明示し又は暗示して規定する。
【0184】
例:「ポリプロピレン樹脂箔二軸延伸」工程の目標処理値は、機械(長手)方向に延伸係数4.5だけ樹脂箔を延伸し、温度130℃での引張強度200MPaを示す。
【0185】
即ち、目標処理値は、樹脂箔温度130℃で引張強度200MPaの樹脂箔を長手方向延伸係数4.5だけ延伸すべきことを示す。
【0186】
具体的装置間での共用化
所定の製造変量で所定の製品特性を達成する限り、装置の形成法と調節法は、目標処理値に影響を与えない。
【0187】
例:樹脂箔温度130℃の加熱法は、目標処理値に影響を与えない。例えば、加熱ローラを通じて樹脂箔を移送し、適切な赤外線放射器に樹脂箔を通過させ、次に展開すべき処理法又は複数の組合せ処理法により、樹脂箔を加熱できるので、加熱法は、目標処理値に影響を与えない。このように、必要に応じて使用するローラの温度、赤外線放射器又は他の機械構成の調節法は、目標処理値の対象にならない。
【0188】
検出器の選択
機械調節は、機械による測定に基づく機械変量である。機械変量は、検出器を介して処理変量(製品特性と製造変量)に関連付けられる。
【0189】
目標処理値も検出器も、関連付けの設定に使用するが、目標処理値は、具体的な機械特性に依存せず、検出器は、完全に機械固有であり、各機械に対し通常特別に形成しなければならない。
【0190】
例:機械で達成する樹脂箔温度130℃の具体的なデータは、検出器に由来する。
【0191】
加熱ローラを備える機械の検出器は、樹脂箔温度を達成する最良のローラ温度を示す。赤外線放射器を備える機械の検出器は、樹脂箔温度130℃を達成する放熱器の放熱強度を示す。加熱ローラに加えて、赤外線放射器も設置することができる。
【0192】
ローラ温度と放熱強度を示す基本的に異なる2種の検出器は、目標処理値を修正せずに、2種の検出器に表示できる処理変量「樹脂箔温度」を表す目標処理値への統一的な接続媒体(インターフェイス)となる。
【0193】
変量例と適用設定
所定の製品特性を達成する所定の工程は、所定の製造変量に基づいて付与される。製造変量と製品特性との関連付け(結合)は、目標処理値によって保証される。
【0194】
製造工程又は形成工程は、所定の製造装置又は形成装置により実施される。製造装置又は形成装置の検出器を介して、各工程の処理変量と各装置の機械変量とが関連付けられる。工程側では、処理変量、即ち製造変量と、製品特性とが関連付けられ、勿論、主として製造変量に関連付けられ、製品特性は、測定技術上の検出値でのみ又は機械変量との単純な関係でのみ関連付けられる。
【0195】
前記の例に基づき、適切な制御装置では、検出装置/検出器(例えば、温度、縦延伸力及び横延伸力等の製造変量を調節できる機械変量に関連付ける)に設定される規格処理値/目標処理値(所定の樹脂箔の製品特性を関連する製造変量に関連付ける)を使用して、説明する複数の例を実施できる。
【0196】
引出方向と横延伸方向への樹脂箔速度上昇時の温度追跡例:
【0197】
樹脂箔の引出速度が増加すると、搬送通路に設けられる加熱領域、冷却領域又は所定の領域での樹脂箔の滞留時間が必然的に減少して、樹脂箔温度が変化する。速度上昇により樹脂箔の温度低下(加熱領域での滞留時間の短縮時)を補償する温度調節適合化が通常必要である。本発明では、「情報処理機能制御装置」により所望の温度適合化を自動的に実施して、該当する温度を最適な温度値に自動的に調節することができる。
【0198】
また、本発明の制御装置は、機械変量、エネルギ節減工程等の技術事項を提示し説明(可視化工程制御装置上に技術事項の提案を表示)するので、操作者は、自由調整室を開き、手動又は自動的に該当する提案事項を調節し又は半自動的に変換できる。
【0199】
横延伸装置内の良好な加熱エネルギ効率への適合
延伸装置内の延伸炉(TDO)内の予熱後かつ幅延伸前の製品特性「樹脂箔温度」に関する可能な制御領域を以下詳細に説明する。制御領域での樹脂箔温度は、検出器を介して予熱領域内で調節する空気温度と通風機回転数とに関連付けられる。このとき、検出器は、樹脂箔温度を達成する機械変量の論理計画で決定的かつ固定的に設定すると判断する。
【0200】
例えば、2つの下記アプローチにより、論理計画を実施できる。
・空気温度の上昇、及び/又は
・通風機回転数の上昇(大量の暖気を供給する)
【0201】
2つのアプローチの何れかを選択すべき問題が生ずる。即ち
・空気中間温度で通風機の高回転数を選択すると、延伸炉内の高温空気と樹脂箔との間の熱伝達性が増加する反面、熱出力消費量は低いが、電気消費量が増加する。かつ/又は
・高温空気を優先して、通風機回転数を極力低下すると、電気出力消費量が低い反面、熱出力消費量は、増加する。
【0202】
このエネルギ問題に対し、本発明の制御装置では、最良のエネルギ効率を生ずる空気温度の設定値と、通風機の回転数を求めることができる。
【0203】
樹脂箔特性「樹脂箔の縦引張強度」の品質最適化
【0204】
例えば、所定の工程により引張強度を向上するとき、操作者は、検出器と目標処理値の適切な可視化形式の操作端末機で引張強度の所望の上昇率を調節できる。例えば、操作端末機により、製品特性-樹脂箔の引張強度を200MPaから220MPaに向上できる。
【0205】
目標処理値は、新しい製造変量を求めて、所望の製品特性を達成できる。製造変量「延伸時樹脂箔温度」及び/又は「縦延伸比」により、引張強度は、理論的に調節される。例えば、適切な手順により、装置は、樹脂箔温度を130℃から129℃に降下し、延伸比を4.5から4.7に上昇する。
【0206】
それにより、製造変量「延伸時樹脂箔温度」と「縦延伸比」とが変更される。
【0207】
装置の検出器は、機械変量:冷却ローラ温度、水槽温度、冷却ローラ速度及び縦延伸温度(MDO)予熱ローラの10段階温度を調節して、新規樹脂箔温度が設定される。溶融物温度と流延樹脂箔厚さは、測定値として使用される。
【0208】
例えば、製造条件最適化法により、制約として工程エネルギ需要量を最小限に抑制する最適な調節量に設定できる。また、冷却工程直後に加熱工程が続くため、本実施の形態では、エネルギ需要量の最小化を特に良好に実施することができる。
【0209】
検出器は、延伸比の上昇に伴う新駆動調節量を設定できる。所定の装置では、駆動装置の速度係数に対し延伸比を1:1で対応付ける簡単な計算で駆動調節量を達成できる。
【0210】
樹脂箔特性「曇り」の品質最適化
例えば、予め定められた工程で光学的により透明な樹脂箔を製造するとき、本発明の制御装置では、操作者は、例えば、製品特性「曇り(樹脂箔濁度)」の濁度値を3%から1.5%に変更できる。
【0211】
目標処理値は、新規製造変量を求めて、所望の曇り製品特性を達成できる。製造変量「流延装置(幅広スリットノズルから溶融樹脂箔を供給する冷却ローラ装置)後の樹脂箔温度」及び/又は「縦延伸比(長手方向延伸比)」により理論的に曇り製品特性を調節できる。尤も、目標処理値に影響を与えず、装置速度を変更しない縦延伸比MDの変化は望ましくない。そこで、制御装置は、適切な手順を介して、例えば、60℃から50℃に樹脂箔温度の低下を設定できる(冷却ローラ装置の後段)。縦延伸比MDは、変化しない。
【0212】
樹脂箔温度の低下を設定すると、「冷却装置後の樹脂箔温度」が変化する。本実施の形態では、単に調節する工程領域の例として流延装置を説明する;原料温度、原料組成及びアニール温度等は、目標処理値により大きい影響を与える。
【0213】
制御装置の検出器は、冷却ローラ温度、水槽温度及び冷却ローラ速度による機械変量を調節しつつ、新しい樹脂箔温度の設定法を定める場合がある:溶融物温度と流延樹脂箔厚さは、測定値として使用される。しかしながら、可能な調節法では、装置速度全体に直接影響を与える冷却ローラ速度は変化しない。
【0214】
例えば、製造条件最適化法により、工程エネルギ需要量を最小化する制約として最適調節法を設定することができる。
【0215】
製品交換時の切替時間短縮
ある工程内でより厚い樹脂箔を一定の速度で製造するとき、制御装置の操作者は、例えば、適切な装置内で製品特性「最終樹脂箔厚さ」を20μmから25μmに増加できる。
【0216】
約言すると、製品特性「最終樹脂箔厚さ」は、流延樹脂箔厚を別にして、各製造変量に依存しない。工程は変化せず、樹脂箔のみをより厚くできる。
【0217】
検出器を通じて、「冷却ローラ速度」を減少しかつ/又は機械変量「押出機生産能力」を向上しなければならない。生産能力向上は、速度減少より優先するので、例えば、検出器は、押出機生産能力を4000kg/hから5000kg/hに増大する。
【0218】
しかしながら、所与の温度調節では、製造変量・縦延伸温度(MDO)、横延伸温度(TDO)は、もはや樹脂箔厚さを増大できないことが明らかである。また、流延樹脂箔が過度に加熱されて、製造変量「流延箔温度」が高過ぎる難点がある。
【0219】
検出器は、冷却ローラ温度、水槽温度、縦延伸ローラ温度、横延伸温度及び通風機回転数への機械調節に適合する。溶融物温度と予期すべき流延樹脂箔厚は、測定値として使用される。
【0220】
前記機械調節は、製造条件が最適化されると、再び元の製造変量を達成できる。
【0221】
その場合に、「仮の事態(What if)」過程で全調節を観察して、生産能力の増大により影響を受ける検出器の製造変量を予測して、適切な機械調節を事前に計算できることが重要と認められる。全調整値を計算したとき、小規模の工程で機械調節量を変化させて、新しい調節量を達成することができる。
【0222】
類似装置間での調節値転移
装置の操作者が、新規製品、即ち新規樹脂箔又は流延樹脂箔を連続的に形成し、他の試験装置でその検査を行った後に、試験装置とは異なる樹脂箔製造装置で形成するものと仮定する。2つの樹脂箔製造装置は、互いに同一ではなく、小さいが重要な細部ではて互いに相違するものとする。この場合に、他の樹脂箔製造装置に1:1の全機械調節量を容易に移送することはできない。
【0223】
そのため、操作者は、機械調節量を伝達せずに、樹脂箔製造装置Aから樹脂箔製造装置Bに処理変量のみを伝達すればよい。処理変量に適する機械変量の検出は、樹脂箔製造装置Bの検出器に付託される。製造条件最適化過程又は調節過程の場合と同様に、適切な製造条件最適化法により樹脂箔を製造し、同様にエネルギ需要量等の周辺条件を考慮することができる。
【0224】
製造条件最適化法では、媒介変数の数が増加する程、通常計算時間が著しく増大するため、高速の支援計算モデル又は場合により支援テーブルに著しく依存することが必要となるが、検出器の処理変量レベルの手順は、前記品質最適化に対して原理上比較できる。2つの樹脂箔製造装置の差異は、比較的少ない処理変量数だけでなく、全処理変量に適切な機械変量を検出するに過ぎない。
【0225】
検出器が良好に機能しかつ2つの樹脂箔製造装置が近似の構造であることを前提として、樹脂箔製造装置Bの検出器は、樹脂箔製造装置Aの検出器に比較的類似する機械調節値を検出しなければならない。
【0226】
比較的小型の実験室設備からより大型製造装置への実用化
実験室設備上で予め試験を行い、新樹脂箔を実験室装置で形成すると仮定する。より小規模の装置上で予め試験を行う製品を製造するとき、より大規模の製造装置に対応する調節量を設定して、該当する工程の実用化を図る必要がある。
【0227】
装置調節値を伝達する実用化原理は、類似の実用化製造装置間では同一である。本実施の形態では、工程の共通化又は共用化が特に有効である:製造装置の検出器は、実験室設備の検出器とは明確に異なる機械調節の可能性が高い。しかしながら、処理変量は、変更なく、実験室設備から製造整備に処理変量をそのまま適用する工程は、同一である。
【0228】
支援装置
検出装置と規格処理値(例えば、統一的な機械設備内に導入し、設定し又は機械設備上検出装置と規格処理値とに区別しかつ任意に組合される)を備える本発明の制御装置は、マイクロプロセッサで制御される全体構造及び回路技術構造に基づき、所定の支援装置の実装にも適する。
【0229】
従って、所定の前記変更を装置に実施し又は装置の調節等を行うとき、制御装置は、対応する適切な機械値を自動的又は半自動的に検出(提案の範囲内)し又は操作者は、必要な変更を加える支援装置により、所定の各提案を実施して、徐々に案内され、その後その提案が容認され、その結果適切な機械値が設定される。
【0230】
しかしながら、例えば、高エネルギ消費量を要する適切な製造工程を、省エネルギ型で好適に実施すべきかとの種々の必要な提案を支援装置は、行うこともできる。また、本発明の制御装置は、機械変量の種々の好適な調節値を検出することができる。
【0231】
前記の通り、所望の製品特性から最終的に処理変量を導き出し、関連する目標処理値と、目標処理値に組み合わされる検出器とを介して、最終的に機械変量を正しく調節できるから、操作者は、本来形成すべき樹脂箔の各特性のみを配慮すればよい。
【符号の説明】
【0232】
1・・貯留槽、 3・・押出機、 9・・樹脂箔引出機、 11・・延伸ローラ、 15・・選択的表面処理、 17・・同時二軸延伸工程、 19・・引出装置、
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11