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特許6995068自動運転車両の軌跡設計走行制御検証方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-16
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】自動運転車両の軌跡設計走行制御検証方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20220106BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20220106BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20220106BHJP
   B60W 50/00 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
G08G1/00 A
G08G1/09 V
G08G1/16 D
B60W50/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019007522
(22)【出願日】2019-01-21
(65)【公開番号】P2020119060
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2020-05-07
(73)【特許権者】
【識別番号】515213711
【氏名又は名称】先進モビリティ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085257
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 有
(72)【発明者】
【氏名】籾山 冨士男
(72)【発明者】
【氏名】江尻 賢治
(72)【発明者】
【氏名】周 永康
(72)【発明者】
【氏名】湯 博洋
【審査官】田中 純一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-220028(JP,A)
【文献】特開2017-134725(JP,A)
【文献】特開2010-179841(JP,A)
【文献】特開2013-073480(JP,A)
【文献】特開2003-215241(JP,A)
【文献】特開2015-031978(JP,A)
【文献】特開2009-018623(JP,A)
【文献】特開2016-091039(JP,A)
【文献】特開2018-060512(JP,A)
【文献】特開2018-060511(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0101172(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
G01C 21/00 - 21/36
G01C 23/00 - 25/00
B60T 7/12 - 8/1769
B60T 8/32 - 8/96
B60W 10/00 - 10/30
B60W 30/00 - 60/00
B62D 6/00 - 6/10
G06Q 10/00 - 10/10
G06Q 30/00 - 30/08
G06Q 50/00 - 50/20
G06Q 50/26 - 99/00
G09B 23/00 - 29/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検討対象となる自動運転車両が所定の走行区間を走行する際の軌跡をコンピュータの画面に表示することで、走行軌跡の設計や走行速度制御の検証に資する軌跡設計走行制御検証方法であって、
前記コンピュータの画面には、地図作成手段によって作成された行程域の地図と、描画手段によって作成された目標軌跡を辿る自車両の移動画及び他車両の移動画と、確認手段による自車両と他車両の相対位置変化が表示され、前記自車両の目標軌跡は始点と終点を含む経路線形の変化点の経度緯度を取得してXY座標にして、各変化点間を補完し、コーステーブルを作成し、また車両運動方程式を用いて自車の横すべり角、ヨー角、前後運動距離及び横移動距離を算出して自車位置と自車姿勢を前記コンピュータの画面に表示し、更に演算時間ごとに前記自車の横すべり角、ヨー角、前後運動距離及び横移動距離を差し替えることで自車位置と自車姿勢を前記コンピュータの画面に動画表示することを特徴とする軌跡設計走行制御検証方法。
【請求項2】
請求項1に記載の自動運転車両の軌跡設計走行制御検証方法において、横方向のつり合い式と回転のつり合い式を備える車両運動モデル式を用いるシミュレーションにより、車体横すべり角のない極低速時と車体横すべり角がある車速上昇時の車両旋回姿勢を算出することで走行占有領域の検討を可能としたことを特徴とする軌跡設計走行制御検証方法。
【請求項3】
請求項1に記載の自動運転車両の軌跡設計走行制御検証方法において、自車の計画車速、他車の計画車速を設定し、その車速が信号現示時間に対応するようにする車速の検討を可能にする自動運転車両の軌跡設計走行制御検証方法。
【請求項4】
請求項1に記載の自動運転車両の軌跡設計走行制御検証方法において、右折ギャップを時間軸と距離軸で表現して、他車との接触回避距離と接触回避時間を算出して、自車速度の増減検討ができるようにする自動運転車両の軌跡設計走行制御検証方法。
【請求項5】
請求項1に記載の自動運転車両の軌跡設計走行制御検証方法において、自車の重心点を原点とする極座標で他車位置を捉え、自車の巾方向、前後方向の他車干渉余裕代を設けて自車の速度増減検討ができる自動運転車両の軌跡設計走行制御検証方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動運転車両が狭隘路や交通混雑を通り抜ける際の走行占有領域の検討、及び他車両等との接触を回避して走行する制御則検討に供する自動運転車両の軌跡設計走行制御検証方法に関する。
【背景技術】
【0002】
交通流シミュレータの報告がある。事前に予測することが難しい「イベントの開催、道路工事等のための交通管制/規制の影響、ETC等の導入効果など」を予測・評価するため、或いは「信号の変化や車両の合流、分岐、歩行者の横断といった道路上で起こる事象を、1台ごとの車両に反映して、数千台の車両からなる渋滞などを予測するためのものである。
【0003】
交通渋滞のような交通現象のみでなく交通事故などのシミュレーションも行える予防安全シミュレータの報告がある。道路設計のために大型連結車両等の走行軌跡空間を確認するための建築設計のためのCADがある。
【0004】
自動運転車両の開発が進行している。予定された経路上、特に交差点で生じる事象に対応して安全かつ円滑に走行する方法を理論的視覚的に検討する計算解析ツールの提供が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-129874号公報
【文献】特開2011-86110号公報
【文献】特開2008-203913号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】自動車技術会交通事故予測シミュレーション検証マニュアル
【文献】建築設計製図CAD事例
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
予定された経路、特に信号交差点を通過しようとする自動運転車両が他の車両などとの位置関係を把握し安全を判断して走行する方法を検討するには、その自動運転車両が交差点等で遭遇する事象を洗い出す手法としての道具と、洗い出された事象に対処する装備と制御についてシミュレーションを実施して評価・確認する道具が必要である。
【0008】
上述の先行技術文献が参考になるも、特許文献1はシミュレーション対象通路のレーンを決めて、自動車、自転車または歩行者の刻々と移動する先の位置を計算して、複数種別の複数の移動体が移動する位置の時系列変化をシミュレーションする装置であり、自動運転車両の走行占有領域の検討や他車両などとの接触等を回避する制御の在り方の検討に供するものではない。
【0009】
特許文献2は、運転支援装置に対するドライバの反応を考慮して交通流をシミュレーションするもので、自動運転車両の走行占有領域の検討や他車両などとの接触等を回避する制御の在り方の検討に供するものではない。
【0010】
特許論文3は、仮想ドライバの知覚ミス、認識ミス、判断ミスによる交通事故率をシミュレーションする装置であって、自動運転車両の走行占有領域の検討や他車両などとの接触等を回避する制御の在り方の検討に供するものではない。
【0011】
非特許文献1は、交通事故予測シミュレータが備えるべき仕様についてのマニュアルであり、自動運転車両の走行占有領域の検討や他車両などとの接触等を回避する制御の在り方の検討に供するものではない。
【0012】
非特許文献2は、大型車両や大型連結車両が通り抜けるために必要な道路空間の検討等に用いるCADであり、自動運転車両の走行占有領域の検討の参考にはなるが、他車両などとの接触等を回避する制御の在り方の検討に供するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、旅程(トリップスケジュール)上の、或る場所の或る車線を決めてその或る場所に入り出るまでの行程域において、検討対象の自動運転車両が移動する際の占有空間が刻々と描けて、自車両に備えるLiDAR等の周辺認識装置によって周辺交通事象を認識して、その行程域を通過する過程の制御則を見出す検討に使用する自動運転車両の軌跡設計走行制御検証方法を提供する。
【0014】
即ち、本発明に係る軌跡設計走行制御検証方法は、運行経路上の、或る場所の或る車線を決めてその或る場所に入り出るまでの行程において、検討対象の自動運転車両が移動する際の占有空間が刻々と描けて、自車両に備える周辺認識装置によって周辺交通事象を認識して、その行程域を通過する過程の制御則を見出す検討に使用する構成である。
【0015】
換言すれば本発明は、検討対象となる自動運転車両が所定の走行区間を走行する際の軌跡をコンピュータの画面に表示することで、走行軌跡の設計や走行制御の検証に資する軌跡設計走行制御検証方法であって、前記コンピュータの画面への表示は周辺認識装置によって認識した周辺交通事象を反映するとともに自動運転車両の移動につれた占有面積が表示される構成である。
【0016】
軌跡設計走行制御検証方法を実行する装置は、行程域の地図を作成する地図作成手段、目標軌跡を幾何学的に且つ動力学的に辿る自車両外形の移動画を描く描画手段、行程域の他車両等の目標軌跡を目的的に作成できその軌跡を幾何学的に辿る他車両外形の移動画を描く描画手段、緯度経度座標上で、自車両と他車両などとの相対位置変化を運動力学的、視覚的に確認する確認手段を含む。
【0017】
自車両の重心位置を原点とする極座標上で、自車両と他車両などとの相対位置変化を運動力学的、視覚的に確認することで、接触回避のための他車に対する自車の制御要件の検討を行う。
【0018】
前記したように、本発明に係る軌跡設計走行制御検証方法は、軌跡設計の検証及び走行制御の検証のうち一方のみの場合を含み、また検証には設計した軌跡により車両が狭い空間を通過できるか或いは設計した軌跡(クロソイド曲線)によりスムーズな走行が可能かの検証が含まれ、走行制御の検証には設計した軌跡に対応した車両速度の検証が含まれる。
【発明の効果】
【0019】
また本発明に係る「自動運転車両の軌跡設計制御検証方法」によれば、自車両の重心位置を原点とする極座標上で、自車両と他車両などとの相対位置関係変化の解析検討ができるので、自車両の周辺認識のため装備するカメラやレーザーなどに備えるべき仕様の設計検討に直接的に適用することができ、自動運転車両開発のための有効な開発ツールになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】当計算解析ツールの概念図である。
図2】当計算解析ツールの開発工程図である。
図3】目標軌跡の作成要領である。
図4】運動計算シムリンク図である。
図5】車両旋回姿勢の説明図である。
図6】車両旋回占有領域説明図である。
図7】右折ギャップの捉え方の説明図である。
図8】右折ギャップにおける自車速度制御の説明図である。
図9】自車両重心位置を原点とする極座標上での干渉検討要領である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、自動運転車両が狭隘路などを通り抜ける際の走行占有領域の検討、及び青信号や右折信号の合間に他の車両等との接触を回避して走行する制御方法を検討するための計算解析ツールに関するものである。自動運転車両の開発の現場の求めに直に答える計算解析ツールを提供するものであるので、現実の経路での運行計画に即して解析しての現実解が求められる。故に、現地現物に即しての有効な結果が得られるものでなくてはならない。
【0022】
図1に、当計算解析ツールの概念図を示す。事例として、新宿5丁目東交差点の場合で示す。本発明が目的の一つとする“(1)走行占有領域の検討”の概念を図中(1)、(2)、(3)、(4)に示す。(1)は縁石に乗り上げない後輪軌跡、(2)は隣接車線に張り出さない軌跡、(3)は円滑操舵軌跡である。(2)の対策によって(4)の他車追突防止ができる。
【0023】
本発明の目的の二つ目である“青信号や右折信号の合間に他の車両等との接触を回避して走行する制御方法を検討”の概念を図中(2)の(5)に示す。右折車の走行軌跡と直進車の走行軌跡が交差する点から、直進車の車頭までの距離時間を右折ギャップと称する。そのギャップを確保する制御則はどうあるべきか。そのギャップは、曲がった先の状況(3)の(6)も予測しての行動が求められる。
【0024】
図1の右に自車の重心点を原点とする極座標を示す。この極座標で捉えた他車軌跡を、自車に搭載するジャイロ、加速度計から算出する自車の平面軌跡に重畳させると図1の左側部に示すように、他車座標を計算でき、右折ギャップの計算ができる。また、極座標上で自車の前後長、横巾に対しする接触余裕を確保する自車速度調整ができる。
【0025】
図2に当計算解析ツールの開発工程図を示す。工程(1)で、対象交差点等の現場検証をする。現地に赴いて解析に必要な現地データを取得する。工程(2)で対象交差点等の地図を作成する。Google Earthを利用するか。国土地理院の地図を入手するかなどをする。現地に赴いて現場計測もする。工程(3)で目標軌跡を作成する。直線部は線形補間し、曲線部はクロソイド関数による曲線補間をすることによって自動運転に適した軌跡を設計する。工程(4)で自車・他車運動シムリンクを作成する。自車の移動軌跡、他社の移動軌跡、自車と他車の相対移動の解析ができる。自車軌跡は車両モデルを用いるも、他車についてはモデルを省略して点移動としても良い。工程(5)で、車両挙動と衝突回避の解析をする。自車移動領域・空間の成立確認、右折ギャップの余裕時間を求めて制御に用いる。
【0026】
対象交差点の現場解析の例としては、運行ルートの始点から終点に至る自車両の任務(Mission)を分析して、解析因子とその条件を定める。具体的には、走行ルートを辿り、曲率、勾配、舗装非舗装、車線数…等の道路仕様、交通標識と設置場所、路肩利用や交差点マナーなどの利用特性、利用車両の分布等々を調べ車頭間隔や車速分布や信号現示時間などの実測値を取り上げる。
【0027】
図3は、目標軌跡の作成要領である。(1)にて、始点、終点を含む経路線形の変化点の緯度経度を取得する。(2)にて緯度経度をXY座標に変換する。この変換は、「平面14年国土交通省告示第9号」で定義されている平面直角座標系(http://www.gsi.go.jp/sokuchikijun/jpc.html)を使用する。全国19の平面直角座標系で構成されており、各座標系の原点がそれぞれ定められている。例えば、関東地方に福島県を含むIX(9)系の原点は、東経139度50分0秒、北緯36度0分0秒と定められている。(3)にて、各変化点間を直線ないし曲線補間し、それを(4)にて地図に重ねる乃至グラフにして補間状態を確認し、(5)のコーステーブルにする。このテーブルには、時間ではなく距離での同期をとるためのインデックス(ID)を付して、X座標、Y座標、方位角、曲率、経路長、計画速度、停止線位置が記録され制御に供される。
【0028】
図4は、運動計算シムリンクである。(A)の部分が自車解析、(B)の部分が他車解析、(C)の部分が自車他車相対解析に関する。
【0029】
(A)の自車解析について説明する。図3の(5)のコーステーブルから計画車速(詳細(13)で説明)、目標軌跡曲率が(1)にて式(1)により前輪実舵角が算出される。
【0030】
【数1】
【0031】
式(1)によって算出された実舵角δに修正実舵角δFB(詳細(11)で説明)が加算され(2)の車両運動モデル式に計画車速と共に代入される。車両運動モデル式(詳細後述)は、車両の横運動のつり合い式と回転運動のつり合い式による連立微分方程式である。車両重心点の横速度を前後速度で除算した値である車両横すべり角(β)と、車両重心点まわりの回転角速度ヨーレイト(γ)が算出される。このヨーレイトを積分するとヨー角(φ)になる。
【0032】
このヨー角(φ)と車両横すべり角(β)を(3)にて合算して、その余弦成分と正弦成分を得る。(4)において余弦成分に車速を乗じて積分すると前後移動距離(X1)が算出され、(5)において正弦成分に車速を乗じて積分すると横移動距離(Y1)が算出される。X1とY1の二乗和の平方根(6)から(7)の距離インデックスIDが得られる。このインデックスIDを、図3(5)のコーステーブルのIDに照らして、座標、方位角、曲率、経路長、計画車速、停止線位置を摘出して制御入力とする。
【0033】
前後移動距離(X1)、横移動距離(Y1)、車体横すべり角(β)及びヨー角(φ)から、XY座標における自車位置と自車姿勢が(15)の様に描かれる。これを演算時間毎に差し替えるとアニメーション(動画)になる。
【0034】
目標軌跡曲率に車速を(8)で乗じると道路線形から生じるヨーレイトになる。この道路線形ヨーレイトを車両ヨーレイトから差引き(9)にて積分すると道路線形に対する車両軌跡接線との角度偏差(e3)が得られる。(10)にて、横移動距離(Y1)から目標軌跡座標のY値を差引くと横偏差(e2)が得られる。
【0035】
得られた横偏差(e2)と角度偏差(e3)を(11)の修正実舵角の式に代入すると修正実舵角(δFB)が得られる。
【0036】
【数2】
【0037】
式(2)のeVtは制御サイクル時間tの間に生じる角度偏差得e3による横偏差である。それに、横遍差e2を加えた値に曲率(ρ=v/γ)を乗じて、修正操舵相当の曲率とし、その修正操舵相当曲率にl(エル)/lを乗じて前輪実舵角とする。ここにlは、ホィールベース、lは、重心から後軸までの距離である。δFBは、PIDコントローラ(12)にて、積分ゲインkI、比例ゲインkp、微分ゲインkDによって合わせ込まれ偏差e2,e3を最小化する。画して、車両モデルの軌跡は、目標軌跡に整合する。
【0038】
目標軌跡には停止線位置が仕込まれている。現示信号、対向車線などの状況から通過可否判定がされ、通過可能との判定であれば計画車速で通過し、通過不可能との判定であれば停止線で停止する。その制御を(13)の現示信号時間の適正化検討も含めて速度制御部で実施する。
【0039】
図4の(13)に信号1と信号2の信号現示例を示す。この場合、信号2が自車線方向、信号1が交差車線方向である。公共バスとしての車内転倒事故防止の観点から抑えられるべき減速度があり、貨物トラックとして荷痛み防止の観点から押さえられるべき減速度がある。その減速度を“Gain Block”に仕込み、その減速度で停止するための停止距離に対応する距離インデックスを“Constant Block”に仕込んで、信号現示と“AND Block”に取り込んで、信号に同期しての停止線停止ができる。
【0040】
図4の(B)の他車解析について説明する。(A)の自車には車両の運動を表現するモデル式を備えたけれども、他車については、目標軌跡を計画計画車速で移動して信号の切り替わりに対応すればよい。ここでは、一台のみを示すが、解析目的に応じて複数設定もする。他車の座標はXn、Ynとして出力される。ここに、サフィックスのnは他車台数により付記される。
【0041】
図4の(C)の他車解析について説明する。(A)の自車解析から自車座標X1,Y1、車体横すべり角β、ヨー角φが、(B)の他車解析から他車座標Xn,Ynが(C)へ入力されて、XY座標上にプロットされ、計算周期毎に移動する。自車の重心点に原点を置き自車前後方向をx軸、横方向をy軸とする移動座標(xy座標)が描かれる。
【0042】
自車位置(X1,Y1)と他車位置(Xn,Yn)の相対位置関係は式(3)、式(4)、式(5)になる。
【0043】
【数3】
【0044】
【数4】
【0045】
【数5】
【0046】
かくして、自車に対する他車の位置は、自車他車間相対距離(l(エル)と相対角度(θ)とする極座標(x,y)で表現され、自車に搭載されるカメラ、レーザー等の周辺認識装置との対応がとれる。
【0047】
図5は車両旋回姿勢の説明図である。(A)に車両運動モデル図、(B)に極低速時の旋回姿勢図、(C)に車速上昇時の旋回姿勢図を示す。(A)について説明する。ここでは、前1軸、後1軸の前後2軸車の場合について示す。他に、前1軸、後2軸の3軸車、前2軸、後1軸の3軸車、前2軸、後2軸の4軸車も備える。
【0048】
車両の前後軸(x軸)上に左右輪を合わせ置いた前1輪・後1輪の自転車モデルとする。速度一定と仮定すると、このモデル横方向のつり合い式(6)、回転のつり合い式(7)、補助方程式(8),(9),(10),(11)で表現され、補助方程式を式(6)、式(7)に代入すると式(12)、式(13)になる。
【0049】
【数6】
【0050】
【数7】
【0051】
【数8】
【0052】
【数9】
【0053】
【数10】
【0054】
【数11】
【0055】
【数12】
【0056】
【数13】
【0057】
ここに、記号の説明は次の通りである。
M:車両質量、I:車両慣性モーメント、l:ホィールベース、l:重心点から前軸までの距離、l:重心点から前軸までの距離、V:重心点速度、Vf:前軸速度、Vr:後軸速度、δ:前輪実舵角、β:車体横すべり角、βf:前輪横すべり角、βr:後輪横すべり角、ψ’(=ω):ヨーレイト、CF:前軸のコーナリングフォース、CR:後軸のコーナリングフォース、Kf:前軸コーナリング係数。Kr:後軸コーナリング係数
【0058】
式(12)、式(13)は、タイヤ横すべりがある図6の(c)の状態を表現する式である。この式を次の様に展開すると、図5の(B)の極低速(≒速度ゼロ)の状態を表現する式になる。
【0059】
即ち、式(12)は、式(12‐1)から式(12-4)に展開され、式(13)は、式(13‐1)から式(13-6)に展開されて、図5の(B)を表現する式になる。
式(12)を展開する。
【0060】
【数12-1】
【0061】
【数12-2】
【0062】
【数12-3】
【0063】
【数12-4】
【0064】
【数13-1】
【0065】
【数13-2】
【0066】
【数13-3】
【0067】
【数13-4】
【0068】
【数13-5】
【0069】
【数13-6】
【0070】
図6は、車両旋回占有領域説明図である。式(13-6)で旋回すると、車両後部に対して、車両前部は外側に張り出して旋回する。刻々と変化する車両位置を動画として示すことで、車両旋回占有領域を視覚的に確認できる。
【0071】
図7は、右折ギャップの捉え方の説明図である。自車が右折する軌跡と対向車線を直進してくる他車との交点PGと直進他車との距離を右折ギャップと称する。自車からPu点までの距離lと角度α及び自車からP点までの距離lと角度αとすると、右折ギャップlは、式(14)になる。
【0072】
【数14】
【0073】
の微分値即ち距離変化速度、l2の微分即ち距離変化速度、αの微分値即ち角度変化速度、αの微分値即ち角度変化速度から、lの距離変化速度が分かる。即ち、l2の微分値は即ち自車速度であり、自明であるので、l、αG、αをライダー等で把握することにより、右折ギャップの変化速度、即ち、直進他車の車速が分かる。
【0074】
図8は、右折ギャップにおける自車速度の説明図である。式(14)に対応するシムリンクである。(1)にてlを微分してαの余弦を乗じた値から、(2)のlを微分してαの余弦を乗じた自車速度(3)を引くと(4)の他車速度VpOになり、これを積分して(5)の元のlから差引いた距離(6)は、(7)の様に時間変化する線になる。一方、自車速度(3)を(8)の元のlから差引いた距離(9)は、(10)の2本の点線の様に時間変化する。2本の点線の上側は自車が減速する場合であり、上側は増速する場合である。画して、(11)が他車に対する自車の接触回避距離であり、(12)が他車に対する自車の接触回避時間である。この回避距離、回避時間は自車の速度制御で拡大することが出来る。
【0075】
図9は、自車両重心位置を原点とする極座標上での干渉検討要領である。自車の重心を原点とする極座標である。(1)の半径rの右手前方に相手車両が存在する場合を例示している。式(14)は相手の横距離の式である。(1)のβは自車の車体横すべり角β、(2)のθは相手の存在方向角、(3)のγはヨーレイトで、それを成分しているからヨー角である(1)+(2)+(3)余弦に車速を乗じ積分した値は相手方向の自車の速度ベクトルである。それをrから差引いた距離に方向角θの正弦を乗じ自車に対する相手の横位置を求め、これが接触余裕代を含む巾Bの2分の1以上であれば、接触回避できる。
【0076】
式(15)は相手の前後距離の式である。式(15)の(5)の正弦部分を(7)の余弦に、(6)の巾Bの2分の一を前後長さLfに置き換えた式である。相手の存在位置がθ<±π/2の場合は自車速度を下げる方向が接触回避方向であり、θ>±π/2の場合は自車速度を上げる方向が接触回避方向である。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9