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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-16
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】試料プレートホルダ
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/20 20060101AFI20220106BHJP
   H01J 37/28 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
H01J37/20 A
H01J37/28 B
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019162089
(22)【出願日】2019-09-05
(65)【公開番号】P2021039916
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2020-08-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000004271
【氏名又は名称】日本電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 聖
(72)【発明者】
【氏名】村上 雄大
(72)【発明者】
【氏名】阿部 修平
【審査官】後藤 大思
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-183317(JP,A)
【文献】特開平08-254511(JP,A)
【文献】特開2019-128547(JP,A)
【文献】中国実用新案第206921783(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/20
H01J 37/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
x方向に並ぶm(但しmは2以上の整数)個の試料プレートを収容することが可能な収容空間を有するホルダ本体と、
前記収容空間内において前記x方向に直交するy方向の一方側に設けられ、前記x方向に並ぶm×n(但しnは2以上の整数)個の押上要素からなる第1の押上要素列と、
前記収容空間内において前記y方向の他方側に設けられ、前記x方向に並ぶm×n個の押上要素からなる第2の押上要素列と、
前記収容空間における試料領域を露出させつつ前記収容空間を覆うカバーと、
を含み、
前記第1の押上要素列及び前記第2の押上要素列は、それぞれ、前記カバーによって覆われる位置に設けられ、
前記収容空間に前記m個以下の試料プレートが収容されている状態において、前記各試料プレートのy方向一方側端部に対して前記第1の押上要素列中のn個の押上要素から押上げ力が与えられ、且つ、前記各試料プレートのy方向他方側端部に対して前記第2の押上要素列中のn個の押上要素から押上げ力が与えられ、これにより前記各試料プレートの上面が前記カバーの内面に押し付けられる、
ことを特徴とする試料プレートホルダ。
【請求項2】
請求項1記載の試料プレートホルダにおいて、
前記各試料プレートはスライドガラスである、
ことを特徴とする試料プレートホルダ。
【請求項3】
請求項記載の試料プレートホルダにおいて、
前記mは3であり、
前記nは2である、
ことを特徴とする試料プレートホルダ。
【請求項4】
請求項1記載の試料プレートホルダにおいて、
前記ホルダ本体に対して前記カバーを開閉運動させるヒンジ部と、
前記カバーが閉状態にある場合に前記カバーを前記ホルダ本体に対してロックするロック機構と、
を含む、ことを特徴とする試料プレートホルダ。
【請求項5】
請求項1記載の試料プレートホルダにおいて、
前記ホルダ本体は、
前記y方向の一方端に設けられた第1の側壁と、
前記y方向の他方端に設けられた第2の側壁と、
を有し、
前記第1の側壁の上面及び前記第2の側壁の上面が基準レベルを規定し、
前記カバーの閉状態において前記カバーの内面が前記第1の側壁の上面及び前記第2の側壁の上面に当たり、これにより前記各プレートの上面レベルが基準レベルに揃う、
ことを特徴とする試料プレートホルダ。
【請求項6】
請求項5記載の試料プレートホルダにおいて、
前記第1の側壁には第1のスケールが設けられ、
前記第2の側壁には第2のスケールが設けられている、
ことを特徴とする試料プレートホルダ。
【請求項7】
請求項1記載の試料プレートホルダにおいて、
前記各試料プレートは透明性を有し、
前記収容空間の底面に光反射を抑制する作用をもった背景面が設けられている、
ことを特徴とする試料プレートホルダ。
【請求項8】
請求項1記載の試料プレートホルダにおいて、
前記ホルダ本体及び前記カバーの内の少なくとも一方に、前記収容空間に収容された前記m個以下の試料プレートの上面へガスを吹き付ける流路構造が設けられた、
ことを特徴とする試料プレートホルダ。
【請求項9】
請求項1記載の試料プレートホルダにおいて、
前記カバーは観察窓を有し、
前記観察窓には導電性メッシュが設けられた、
ことを特徴とする試料プレートホルダ。
【請求項10】
請求項1記載の試料プレートホルダにおいて、
前記ホルダ本体及び前記カバーは導電性材料により構成され、
前記ホルダ本体及び前記カバーの内の一方に電圧印加用の端子が設けられ、
前記ホルダ本体には可動ステージに対して結合される絶縁性材料で構成された係合ブロックが設けられた、
ことを特徴とする試料プレートホルダ。
【請求項11】
請求項1記載の試料プレートホルダにおいて、
前記カバーには1又は複数の位置決め用マークが設けられた、
ことを特徴とする試料プレートホルダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は試料プレートホルダに関し、特に、走査型電子顕微鏡で用いられる試料プレートホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
走査型電子顕微鏡における試料室の内部には可動ステージが設けられており、その可動ステージ上に、観察対象となった試料を載せたホルダが搭載される。スライドガラス等の試料プレート上に試料が設けられている場合、その試料プレートそれ全体を試料室の内部に設置して、試料の観察を行えれば好都合である。特に、複数の試料プレートを試料室の内部に設置して、複数の試料を連続的に観察できるようにすることが望まれる。そのための専用ホルダの実現が求められている。なお、厚みの異なる複数種類の試料プレートが提供されている。
【0003】
特許文献1には、荷電粒子線描画装置に設置されるホルダが開示されている。そのホルダは、1枚のガラス基板を保持するものであり、ガラス基板に対してはその下方から押上げ力が与えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-159236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、複数の試料プレートを保持することが可能な試料プレートホルダを実現することにある。あるいは、本発明の目的は、試料プレートの厚みによらずにその上面レベルを基準レベルに揃えながら試料プレートを保持する試料プレートホルダを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る試料プレートホルダは、x方向に並ぶm(但しmは2以上の整数)個の試料プレートを収容することが可能な収容空間を有するホルダ本体と、前記収容空間内において前記x方向に直交するy方向の一方側に設けられ、前記x方向に並ぶ複数の押上要素からなる第1の押上要素列と、前記収容空間内において前記y方向の他方側に設けられ、前記x方向に並ぶ複数の押上要素からなる第2の押上要素列と、前記収容空間における試料領域を露出させつつ前記収容空間を覆うカバーと、を含み、前記収容空間に前記m個以下の試料プレートが収容されている状態において、前記第1の押上要素列及び前記第2の押上要素列によって前記各試料プレートに押上げ力が与えられ、これにより前記各試料プレートの上面が前記カバーの内面に押し付けられる、ことを特徴とするものである。
【0007】
上記構成によれば、1又は複数の試料プレートがホルダ本体の収容空間に収容され、1又は複数の試料プレートがカバーによって覆われる。実施形態において、カバーは閉状態において水平姿勢を有し、その内面が水平面を構成する。カバーの閉状態において、各試料プレートに対して第1の押上要素列及び第2の押上要素列からの押上げ力が及ぶが、各試料プレートの上方への運動はカバーによって規制される。その際、各試料プレートの上面のレベルがカバーの内面のレベル、つまり基準レベルに揃うことになる。保持される各試料プレートの厚みによらずに、各試料プレートの上面のレベルが基準レベルに自然に揃う。これにより、顕微鏡観察時において、フォーカス深さを変えずに又はそれを大きく変えずに、複数の試料を順次観察することが可能となる。
【0008】
実施形態において、前記第1の押上要素列及び前記第2の押上要素列は、それぞれ、独立して動作するm個以上の押上要素により構成される。個々の押上要素は、スプリング、弾性部材、等により構成され得る。個々の試料プレートの一方側端部及び他方側端部の両方に押上げ力が加わるので、個々の試料プレートの姿勢が安定化される。上方から見て、試料が存在し得る試料領域を避けた位置に、具体的にはその両側に(つまりカバーによって覆われる位置に)、第1の押上要素列及び第2の押上要素列設けられる。
【0009】
実施形態において、前記mは3であり、前記第1の押上要素列及び前記第2の押上要素列は、それぞれ、m×n(但しnは1以上の整数)個の押上要素により構成される。例えば、nは2である。その場合、各押上要素列は6個の押上要素で構成され、それらは望ましくは均等間隔をもって配置される。
【0010】
実施形態において、試料プレートホルダは、前記ホルダ本体に対して前記カバーを開閉運動させるヒンジ部と、前記カバーが閉状態にある場合に前記カバーを前記ホルダ本体に対してロックするロック機構と、を含む。この構成によれば、カバーが閉姿勢にある場合においてその浮上を防止できる。
【0011】
実施形態において、前記ホルダ本体は、前記y方向の一方端に設けられた第1の側壁と、前記y方向の他方端に設けられた第2の側壁と、を有し、前記第1の側壁の上面及び前記第2の側壁の上面が基準レベルを規定し、前記カバーの閉状態において前記カバーの内面が前記第1の側壁の上面及び前記第2の側壁の上面に当たり、これにより前記各プレートの上面レベルが基準レベルに揃う。
【0012】
実施形態において、前記第1の側壁には第1のスケールが設けられ、前記第2の側壁には第2のスケールが設けられている。各スケールは位置決め用の目盛又はマーカー列に相当するものである。例えば、1枚の試料プレートが配置される場合、2枚の試料プレートが配置される場合、及び、3枚の試料プレートが配置される場合においてプレート位置を規定する第1及び第2のスケールを設けるのが望ましい。
【0013】
実施形態において、前記各試料プレートは透明性を有し、前記収容空間の底面に光反射を抑制する作用をもった背景面が設けられている。この構成によれば、各試料プレート上の試料の目視観察が容易となる。
【0014】
実施形態において、前記ホルダ本体及び前記カバーの内の少なくとも一方に、前記収容空間に収容された前記m個以下の試料プレートの上面へガスを吹き付ける流路構造が設けられる。例えば、試料領域を低真空領域としたい場合に、試料領域にガスが吹き付けられる。実施形態において、前記カバーは観察窓を有し、前記観察窓には導電性メッシュが設けられる。この構成によれば、試料付近の電場を安定化でき、また電荷の蓄積を防止できる。
【0015】
実施形態において、前記ホルダ本体及び前記カバーは導電性材料により構成され、前記ホルダ本体及び前記カバーの内の一方に電圧印加用の端子が設けられ、前記ホルダ本体には可動ステージに対して結合される絶縁性材料で構成された係合ブロックが設けられる。この構成によれば、ホルダ全体の電位を制御することが可能となる。実施形態において、前記カバーには1又は複数の位置決め用マークが設けられる。それらは試料プレートホルダの位置決めに際して利用され得る。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、複数の試料プレートを保持することが可能な試料プレートホルダを提供できる。あるいは、本発明によれば、試料プレートの厚みによらずにその上面レベルを基準レベルに揃えながら試料プレートを保持し得る試料プレートホルダを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態に係る試料プレートホルダの開状態を示す斜視図である。
図2】ステージに対して試料プレートホルダを設置した状態を示す模式図である。
図3】第1実施形態に係る試料プレートホルダの閉状態を示す斜視図である。
図4】第1実施形態に係る試料プレートホルダの初期状態を示す斜視図である。
図5】第1実施形態に係る試料プレートホルダを示す断面図である。
図6】第2実施形態に係る試料プレートホルダの開状態を示す斜視図である。
図7】第2実施形態に係る試料プレートホルダの閉状態を示す斜視図である。
図8】第3実施形態に係る試料プレートホルダを示す分解斜視図である。
図9】第3実施形態に係る試料プレートホルダを示す斜視図である。
図10】第4実施形態に係る試料プレートホルダを示す斜視図である。
図11】第5実施形態に係る試料プレートホルダを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1図5には、第1実施形態に係る試料プレートホルダが示されている。この試料プレートホルダは、具体的には、試料観察用のスライドガラスホルダであり、走査型電子顕微鏡の試料室内に設置されるものである。観察対象となる試料は、例えば、前処理された粉塵である。アスベストを含む粉塵や切片状の生物組織が観察対象とされてもよい。他の試料が観察対象とされてもよい。
【0020】
図1において、試料プレートホルダ10はホルダ本体12及びカバー14により構成される。それらは例えばステンレスやアルミニウム等の金属により構成される。それらが他の材料で構成されてもよい。図1において、x方向は第1水平方向であり、y方向は第2水平方向であり、z方向が垂直方向である。3つの方向は直交関係にある。なお、試料室内の可動ステージ上に試料プレートホルダ10が設置された場合、その可動ステージの姿勢に応じて試料プレートホルダ10の姿勢が変わり得る。上記の第1水平方向、第2水平方向及び垂直方向は、試料プレートホルダ10が水平面上に設置されてそれが基本姿勢を有している場合を前提とするものである。
【0021】
ホルダ本体12は、水平板としてのベース20を有している。ベース20の上面には薄い背景板22が設けられている。背景板22は、光の反射を低減又は抑制する材料で構成され、あるいは、背景板22の表面に対して光の反射を低減又は抑制する処理が施されている。その処理として、メッキ(例えばクロムメッキ)、粗面加工、着色等が挙げられる。
【0022】
ホルダ本体12は、y方向の一方端及び他方端に設けられたサイドプレート24,26を有する。それらは起立した板状の形態を有している。また、ホルダ本体12は、x方向の一方端(前端)及び他方端(後端)に設けられたフロントプレート28及びバックプレート30を有している。それらも起立した板状の形態を有している。
【0023】
ホルダ本体12の内部、具体的には、背景板22の上側且つ4つのプレート24,26,28,30で囲まれた空間は、収容空間であり、その収容空間に、1又は複数の試料プレートが収容及び配置される。図1においては、収容空間に2つの試料プレート16,18が配置されている。それらはいずれも透明性を有するスライドガラスであり、それらの上面には試料が載せられている。但し、図1においては試料の図示が省略されている。
【0024】
個々の試料プレート16,18の上面において、y方向の両端部やy方向に平行な側辺の近傍を除いた部分が個別試料領域である。複数の試料プレート16,18における複数の個別試料領域の全体を包含する領域として、全体試料領域が観念される。y方向が各試料プレート16,18の長手方向に相当しており、x方向が各試料プレート16,18の短手方向に相当している。
【0025】
ホルダ本体12において、y方向の一方側、具体的には、サイドプレート24の近傍には、第1押上要素列として機能するスプリング列34が設けられている。スプリング列34は、図示の構成例において、直線状に均等間隔で並んだ6つのスプリング35により構成されている。ホルダ本体12において、y方向の他方側、具体的には、サイドプレート26の近傍には、第2押上要素列としてのスプリング列36が設けられている。スプリング列36は、スプリング列34と同様、直線状に均等間隔で並んだ6つのスプリング35により構成されている。各スプリング35は、それが接する試料プレートに対して弾性力又は付勢力としての押上げ力を及ぼすものである。複数のスプリング35に代えて複数の弾性体を用いてもよい。
【0026】
x方向に並ぶ試料プレートの最大数をmとし、m個の試料プレートが並んだ状態において個々の試料プレートごとに左右にそれぞれn個のスプリングを設ける場合、各スプリング列34,36は、m×n個のスプリング35により構成される。mは2以上の整数であり、nは1以上の整数である。図示の例においてmは3であり、nは2である。
【0027】
図1に例示された態様では、収容空間に2個の試料プレート16,18が配置されている。それらはx方向の中間位置で接している。その場合、各試料プレート16,18の各端部が2個のスプリングによって支持される。収容空間に3個の試料プレートが設けられる場合も、各試料プレートの各端部が2個のスプリングによって支持される。収容空間に1個の試料プレートが設けられる場合、具体的には、x方向の中間位置に試料プレートが設けられる場合、その試料プレートの各端部が2個のスプリングによって支持される。
【0028】
いずれの場合においても、個々の試料プレートが安定的に支持される。逆に言えば、保持する試料プレート数によらずに個々の試料プレートが安定的に支持されるように、2つのスプリング列34,36が構成されている。
【0029】
サイドプレート24とサイドプレート26は互いに同一又は対称の形態を有し、ここではサイドプレート24を代表させてその形態について説明する。サイドプレート24は基準レベルを規定する上面24Aを有する。サイドプレートも同様の上面26Aを有する。サイドプレート24は、x方向に並ぶ複数の凸部38,40,42,44を有する。隣接する2つの凸部38,40,42,44の間に凹部52,54,56が設けられている。凸部40,42の上面には、マーカー48,50が設けられている。3枚の試料プレートが配置される場合、マーカー48,50が試料プレート間位置を示す。2枚の試料プレートが配置される場合、マーカー48,50が各試料プレートのセンター位置を示す。1枚の試料プレートが配置される場合、マーカー48,50が試料プレートのx方向両端を示す。凹部54にはx方向の中間位置を示すマーカー57が設けられている。
【0030】
個々のマーカー48,50,57は、y方向に平行なライン又は溝である。複数の凹部52,54,56は指先やピンセット等の工具を差し込む溝としても機能する。サイドプレート26は、上記のように、サイドプレート24と同様の形態を有している。サイドプレート24,26に設けられた複数の凸部38,40,42,44、複数の凹部52,54,56、及び、複数のマーカー48,50,57のそれぞれはスケール要素として機能し、換言すれば、それら全体がスケールとして機能する。
【0031】
ホルダ本体12の前側には下側係合部32が設けられている。下側係合部32は図示の構成例では2つの突起76,78及びロック用金具80により構成されている。
【0032】
カバー14は、ホルダ本体12に設けられたヒンジ部58によって回転可能に保持されている。図1においては、カバー14は開姿勢を有しており、つまり試料プレートホルダ10が開状態にある。カバー14は、矩形の開口としての観察窓60を有する。カバー14は、観察窓60を取り囲む形態を有し、具体的には、y方向一方側に設けられた縁部62、及び、観察窓60のy方向他方側に設けられた縁部64を有する。
【0033】
2つの縁部62,64は平板であり、それぞれがプレート端部押さえ片として機能する。縁部62に連なる部分として折り曲げ片66が設けられており、縁部64に連なる部分として折り曲げ片68が設けられている。カバー14は上側係合部70を有し、それは2つの突起72,74により構成されている。
【0034】
カバー14が開姿勢となり、試料プレートホルダ10が開状態にある場合、収容空間にある各試料プレート16,18は、その直下にある複数のスプリング35に支えられ、下方から最上レベルへ押し上げられた状態にある。カバー14が閉姿勢となり、試料プレートホルダ10が閉状態になった場合、カバー14の内面(裏面)14Aが複数の試料プレート16,18の両端部を下方に押し下げる。カバー14の内面14Aが2つのサイドプレート24,25の上面24A,26Aに当たった時点で、カバー14の下方への運動が規制される。その状態では、複数の試料プレート16,18の上面の両端部がカバー14の内面14Aに密着し、複数のスプリング35とカバー14との間に複数の試料プレート16,18が挟まれた状態となる。
【0035】
その際、各試料プレート16,18の上面レベルはカバー14の内面レベル、つまり2つのサイドプレート24,26の上面のレベル(基準レベル)に揃うことになる。仮に複数の試料プレート16,18の厚みが異なっていても、それらの上面レベルは常に基準レベルに揃う。
【0036】
カバー14の閉姿勢では、下側係合部32と上側係合部70とによりロック状態が形成される。具体的には、2つの突起76,78に取り付けられた金具80が、2つの突起72,74に引っ掛けられる。その操作はユーザーによって行われるが、閉動作過程で自動的にロック状態が形成されるようにしてもよい。
【0037】
図2には、走査型電子顕微鏡の一部分が模式的に示されている。走査型電子顕微鏡は、試料室82及び鏡筒84を有する。符号90は電子線を示している。試料室82内には可動ステージ(試料ステージ)86が設けられている。図示されていない制御部により、可動ステージ86の位置及び姿勢が制御される。可動ステージ86上に試料プレートホルダ10が搭載される。
【0038】
図3には、閉状態にある試料プレートホルダ10が示されている。すなわち、ホルダ本体12がカバー14によって覆われている。図3においては、3つの試料プレート92,94,96が保持されている。試料プレート92,94,96の両端部92a,92b,94a,94b,96a,96bが、カバー14の2つの縁部62,64によって押さえ付けられている。3つの個別試料領域92A,94A,96Aの全体を包含する全体試料領域97が観察窓60を通じて露出している。下側係合部32と上側係合部70によりロック機構98が構成される。
【0039】
図4には、開状態にある試料プレートホルダ10が示されている。図4は、いずれの試料プレートも設置されていない初期状態を示すものである。ホルダ本体12に設けられた各スプリング列34,36は6個のスプリング35により構成されている。
【0040】
図5には、試料プレートホルダ10のyz断面が示されている。試料プレートホルダ10は、既に説明したように、ホルダ本体12とそれを覆うカバー14により構成される。カバー14の内面が2つのサイドプレート24,26の上面24A,26Aに当接している。試料プレート16に対しては複数のスプリング35からの押上げ力が及んでいるが、試料プレート16の端部16a,16bが2つの縁部62,64の内面62A,64Aに接しており、試料プレート16の更なる浮上が規制されている。
【0041】
ホルダ本体12には複数の孔100が形成されており、複数の孔100には複数のねじ部材102が差し込まれている。複数のねじ部材102の上端部に複数のスプリング35が取り付けられている。図5において、z0は基準レベルを示しており、それはカバー内面レベル及びサイドプレート上面レベルに一致している。
【0042】
以上のように、実施形態に係る試料プレートホルダによれば、試料プレートの厚みによらずに、試料プレートの上面レベルを基準レベルに自然に揃えることができる。よって、試料プレートの厚みに応じてフォーカス深さを変える必要がない又はそれを大きく変える必要がないという利点を得られる。また、複数の試料プレートを同時に保持して、それらを試料室の内部に同時にセットし、複数の試料を連続的に観察できるという利点を得られる。その際においても、試料プレートの厚みに応じてフォーカス深さを変える必要はなく又はそれを大きく変える必要はない。実施形態に係る試料プレートホルダにおいては、配置される試料プレート数にかかわらず、個々の試料プレートの各端部が2つスプリングによって安定的に支持される。各サイドプレートにはスケールとして機能する構造が設けられており、それらを目安とすることにより各試料プレートを正しく配置することが可能である。また、背面板の表面に光反射を抑える処理が施されているので、試料プレート及び試料の視認性を高められる。
【0043】
図6及び図7には、第2実施形態に係る試料プレートホルダ10Aが示されている。図6において、試料プレートホルダ10Aは、ホルダ本体12とカバー14Bにより構成されている。カバー14Bは観察窓60を有し、そこには金属製メッシュ104が設けられている。試料プレートホルダ10Aそれ全体が導電性材料で構成されている。図7には、閉状態にある試料プレートホルダ10Aが示されている。本体12がカバー14Bで覆われている。この第2実施形態によれば、電子顕微鏡観察時において、試料周辺の電場を安定化できるという利点、及び、チャージを防止できるという利点を得られる。
【0044】
図8及び図9には、第3実施形態に係る試料プレートホルダ10Bが示されている。図8において、試料プレートホルダ10Bは、ホルダ本体12とカバー106により構成され、カバー106は下カバー108及び上カバー110により構成されている。図8においては、説明のため、下カバー108と上カバー110とが分離されている。
【0045】
下カバー108には流路構造112が形成されている。流路構造112は、ガス流路114,116を有し、またガス導入口118、及び、複数のガス噴出口120,122,124,126,128,130を有する。それらは2つのガス噴出口列を構成する。
【0046】
図9においては、下カバー108と上カバー110とが合体されている。カバー106に形成された2つのガス噴出口列119,125から試料領域132に対してガスが送り込まれる(符号134を参照)。これにより試料を低真空環境下におくことが可能となる。すなわち、試料室の内部は一般に高真空におかれるが、局所的にガスを流してその部分を低真空にするものである。ガスとして、エア、窒素等を用いることが可能である。この構成は、様々な試料プレートホルダに適用することが可能である。
【0047】
図10には、第4実施形態に係る試料プレートホルダ10Cが示されている。ホルダ本体12の下面には絶縁性材料で構成された結合ブロック138が設けられている。結合ブロック138は可動ステージに連結される部分である。本体12の下面には端子136が設けられている。試料プレートホルダ10Cそれ全体が導電性材料で構成されている。端子136に信号線を接続し、そこに電圧を印加することにより、試料プレートホルダつまり試料を所望の電位にすることが可能である。
【0048】
図11には、第5実施形態に係る試料プレートホルダ10Dが示されている。カバー14の上面には、複数のアライメントマーク140a,140b、140cが形成されている。光学顕微鏡の観察時及び電子顕微鏡の観察時において、それらのアライメントマーク140a,140b、140cを利用して、試料プレートホルダ10Dの位置決めを行える。
【符号の説明】
【0049】
10 試料プレートホルダ、12 ホルダ本体、14 カバー、16,18 試料プレート(スライドガラス)、20 ベース、22 背景板、24,26 サイドプレート、34 第1スプリング列、36 第2スプリング列、60 観察窓、62 第1縁部、64 第2縁部。
図1
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図11