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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-16
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】試料チップ作業台及びリテーナ
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/20 20060101AFI20220106BHJP
   G01N 1/28 20060101ALI20220106BHJP
   G02B 21/34 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
H01J37/20 A
H01J37/20 B
G01N1/28 W
G01N1/28 F
G02B21/34
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019178460
(22)【出願日】2019-09-30
(65)【公開番号】P2021057169
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2020-08-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000004271
【氏名又は名称】日本電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 知久
(72)【発明者】
【氏名】小入羽 祐治
(72)【発明者】
【氏名】池田 悠太
(72)【発明者】
【氏名】春田 知洋
【審査官】大門 清
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-077950(JP,A)
【文献】特開2014-041711(JP,A)
【文献】特開平04-324240(JP,A)
【文献】特開平07-021960(JP,A)
【文献】特開2000-074803(JP,A)
【文献】特開2011-197040(JP,A)
【文献】特開2002-148216(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第00045620(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/20
G01N 1/28
G02B 21/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顕微鏡観察用の試料チップを収容するチップ収容部を備えたリテーナが載置される載置面と、
前記チップ収容部からの前記試料チップの取り出しの際に、前記試料チップの姿勢を変化させる取り出し支援機構と、
を含み、
前記取り出し支援機構は前記試料チップの姿勢を水平姿勢から傾斜姿勢へ変化させる、
ことを特徴とする試料チップ作業台。
【請求項2】
請求項1記載の試料チップ作業台において、
前記取り出し支援機構は前記試料チップの姿勢を水平姿勢から傾斜姿勢へ変化させてその下側に隙間を生じさせる、
ことを特徴とする試料チップ作業台。
【請求項3】
顕微鏡観察用の試料チップを収容するチップ収容部を備えたリテーナが載置される載置面と、
前記チップ収容部からの前記試料チップの取り出しの際に、前記試料チップの姿勢を変化させる取り出し支援機構と、
を含み、
前記試料チップは、試料を保持した部分と、当該部分の周囲に設けられたフレームと、を有し、
前記取り出し支援機構は、前記フレームを押し上げることにより前記試料チップの姿勢を変化させる
ことを特徴とする試料チップ作業台。
【請求項4】
請求項3記載の試料チップ作業台において、
前記取り出し支援機構は、前記チップ収容部の底面から突出して前記フレームにおける2つの角部分を突き上げる一対の突き上げピンを有する、
ことを特徴とする試料チップ作業台。
【請求項5】
請求項記載の試料チップ作業台において、
前記取り出し支援機構は、
使用者によって操作される操作部材と、
前記操作部材に与えられた操作力によって上昇運動を行い、これにより前記試料チップを押し上げて前記傾斜姿勢を生じさせる押し上げ部材と、
を含むことを特徴とする試料チップ作業台。
【請求項6】
請求項記載の試料チップ作業台において、
前記リテーナは、複数の試料チップを収容する複数のチップ収容部を備え、
前記取り出し支援機構は、前記複数のチップ収容部に設けられた複数の押し上げ部材を有し、
前記複数の押し上げ部材により前記複数の試料チップの姿勢が前記水平姿勢から前記傾斜姿勢へ変化し、
前記複数の押し上げ部材は互いに独立して動作する、
ことを特徴とする試料チップ作業台。
【請求項7】
請求項6記載の試料チップ作業台において、
前記複数の押し上げ部材を連動させる部材を含む、
ことを特徴とする試料チップ作業台。
【請求項8】
請求項1記載の試料チップ作業台において、
前記載置面上に載置されたリテーナの浮上運動を規制する部材を含む、
ことを特徴とする試料チップ作業台。
【請求項9】
顕微鏡観察用の試料チップを収容するチップ収容部を備えたリテーナが載置される載置面と、
前記チップ収容部からの前記試料チップの取り出しの際に、前記試料チップの姿勢を変化させる取り出し支援機構と、
を含み、
前記リテーナはリテーナ本体とカバーとを含み、
前記載置面に載置されたリテーナ本体への試料チップの搭載後に、前記リテーナ本体が前記カバーによって覆われ、これにより前記試料チップが前記リテーナ本体と前記カバーとの間に挟み込まれ、
前記取り出し支援機構は、前記リテーナ本体が前記カバーによって覆われていない状況において、前記試料チップの姿勢を変化させる、
ことを特徴とする試料チップ作業台。
【請求項10】
請求項9記載の試料チップ作業台において、
前記載置面に隣接してカバー載置面が設けられ、
前記カバー載置面上から前記リテーナ本体上へ前記カバーをスライドさせることにより、前記試料チップの挟み込み状態が形成される、
ことを特徴とする試料チップ作業台。
【請求項11】
作業チップ作業台に載置され得るリテーナであって、
試料チップを収容するチップ収容部と、
前記チップ収容部に形成され、前記試料チップを押し上げてその姿勢を変化させる押し上げ部材を通過させる開口部と、
を含み、
前記試料チップは試料を保持した部分とその周囲に設けられたフレームとを有し、
前記押し上げ部材は前記フレームにおける2つの角部分を突き上げる2つの突き上げピンを有し、
前記開口部は前記2つの角部分に対応する2つの開口を有し、
前記2つの突き上げピンが前記2つの開口を介して上方へ運動する、
ことを特徴とするリテーナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料チップ作業台及びリテーナに関し、特に、リテーナからの試料チップの取り出しを支援する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電子顕微鏡や光学顕微鏡で試料を観察する場合、必要に応じて、試料チップが利用される。試料チップは、例えば、試料を支持するメンブレン及びそれを取り囲む基板により構成される。典型的には、リテーナという保持器に試料チップが配置された上で、そのリテーナが電子顕微鏡の試料室内に配置され、あるいは、光学顕微鏡の試料ステージ上に配置される。リテーナには、通常、凹部又は角溝としてのチップ収容部が形成されており、そのチップ収容部の中に試料チップが落とし込まれる。その配置に当たっては、必要に応じて、ピンセット等の工具が利用される。
【0003】
特許文献1には、グリッド交換作業を支援する器具が開示されている。リテーナに相当する試料ホルダからグリッドを取り外す際に、器具の先端に設けられた突起によりグリッド全体が下方から押し上げられ、試料ホルダからグリッドが水平姿勢で浮上した状態が形成されている。その器具は試料ホルダを載置又は保持するものではなく、すなわち、その器具は試料ホルダからの試料の取り出し作業を支援する作業台ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-41711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
リテーナのチップ収容部に試料チップが収容されている状況において、試料チップをピンセット等の工具で掴むことは容易ではない。工具による試料チップの掴みが不完全な場合、工具からの試料チップの落下のおそれが生じる。試料チップの落下は、試料の損傷や汚染をもたらすものである。工具による試料チップの掴み位置が不適切な場合、試料チップの損傷や試料自体の損傷のおそれが生じる。そのような問題が生じないとしても、リテーナから試料チップを取り出す作業を容易化することが望まれる。
【0006】
本発明の目的は、リテーナからの試料チップの取り出しを支援することにある。あるいは、本発明の目的は、試料チップの取り出しを支援できる作業台及びその作業台に適合するリテーナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る試料チップ作業台は、顕微鏡観察用試料チップを収容するチップ収容部を備えたリテーナが載置される載置面と、前記チップ収容部からの前記試料チップの取り出しの際に、前記試料チップの姿勢を変化させる取り出し支援機構と、を含む。
【0008】
上記構成によれば、チップ作業台に設けられている取り出し支援機構を動作させることにより、試料チップの姿勢を変化させて、その状態で、試料チップを取り出せる。これにより取り出し作業が容易となる。
【0009】
試料チップは、電子顕微鏡、光学顕微鏡等によって観察される試料を備えたものである。チップ収容部は、通常、凹部又は角溝として構成され、試料チップを水平姿勢で保持するものである。リテーナは、試料チップを保持する器具である。例えば、リテーナそれ自体が透過型電子顕微鏡の試料室内に配置され、あるいは、リテーナそれ自体が光学顕微鏡の試料ステージ上に配置される。取り出し支援機構は、ユーザーが生じさせた操作力、又は、アクチュエータ等によって生成された操作力によって動作し、試料チップの取り出しを容易化するために、試料チップの姿勢を変化させる。
【0010】
試料チップの姿勢の変化により、試料チップの下側に隙間が生じるならば、その隙間にピンセット等の工具を差し込むことが可能となる。姿勢変化後において、チップ収容部内に試料チップの少なくとも一部が収容され続け、試料チップが水平方向に自由に運動し得ない状態が維持されるならば、リテーナからの試料チップの不用意な脱落等を防止できる。そのような状態において、試料チップの取り出しが行われる。
【0011】
実施形態において、前記取り出し支援機構は前記試料チップの姿勢を水平姿勢から傾斜姿勢へ変化させる。試料チップの傾斜姿勢においては、その下側に楔形の隙間が生じる。そこに工具を差し込むことが可能となる。例えば、傾斜姿勢にある試料チップが斜め方向から差し込まれたピンセットにより捕獲される。
【0012】
実施形態において、前記試料チップは、試料を保持した部分と、当該部分の周囲に設けられたフレームと、を有し、前記取り出し支援機構は、前記フレームを押し上げることにより前記傾斜姿勢を生じさせる。この構成は、硬質のフレームに力学的作用を及ぼすことにより、試料又はそれを保持した部分(例えば膜)の保護を図るものである。フレームの直下において突出運動する部材(例えばピン)によりフレームが押し上げられてもよいし、フレームの下側へ水平方向から差し込まれた部材(例えば爪部材)を上昇運動させることによりフレームが押し上げられてもよい。
【0013】
実施形態において、前記取り出し支援機構は、前記チップ収容部の底面から突出して前記フレームにおける2つの角部分を突き上げる一対の突き上げピンを有する。フレームにおける2つの角部分は通常、構造的に強い部分であり、そのような部分に対して突き上げ力を及ぼすものである。一対の突き上げピンを連動して動作させるのが望ましい。なお、フレームにおける特定の辺縁部の中央部を単一のピンで押し上げる変形例や、フレームにおける特定の辺縁部を板状の部材で押し上げる変形例も考えられる。
【0014】
実施形態において、前記取り出し支援機構は、使用者によって操作される操作部材と、前記操作部材に与えられた操作力によって上昇運動を行い、これにより前記試料チップを押し上げて前記傾斜姿勢を生じさせる押し上げ部材と、を含む。この構成によれば、試料チップ作業台にアクチュエータ等の部品を設ける必要がないので、試料チップ作業台の構成を簡易化できる。また、試料チップの姿勢変化を確認しながら、試料チップの姿勢を変化させる操作を行うことが可能となる。
【0015】
実施形態において、前記リテーナは、複数の試料チップを収容する複数のチップ収容部を備え、前記取り出し支援機構は、前記複数のチップ収容部に設けられた複数の押し上げ部材を有し、前記複数の押し上げ部材により前記複数の試料チップの姿勢が前記水平姿勢から前記傾斜姿勢へ変化し、前記複数の押し上げ部材は互いに独立して動作する。この構成によれば、電子顕微鏡の試料室内に複数の試料チップを同時に配置でき、あるいは、光学顕微鏡の試料ステージに複数の試料チップを同時に配置できる。上記構成によれば、例えば、複数の押し上げ部材を順次動作させて、複数の試料チップを順番に交換できる。
【0016】
実施形態に係る試料チップ作業台は、前記複数の押し上げ部材を連動させる部材を含む。この構成によれば、複数の試料チップの姿勢を同時に変化させることが可能となる。実施形態に係る試料チップ作業台は、前記載置面上に載置されたリテーナの浮上運動を規制する部材を含む。この構成によれば、仮に突き上げ力がリテーナに及んでも、その浮上を防止できる。
【0017】
実施形態において、前記リテーナはリテーナ本体とカバーとを含み、前記載置面に載置されたリテーナ本体への試料チップの搭載後に、前記リテーナ本体が前記カバーによって覆われ、これにより前記試料チップが前記リテーナ本体と前記カバーとの間に挟み込まれ、前記取り出し支援機構は、前記リテーナ本体が前記カバーによって覆われていない状況において、前記試料チップの姿勢を変化させる。
【0018】
実施形態において、前記載置面に隣接してカバー載置面が設けられ、前記カバー載置面上から前記リテーナ本体上へ前記カバーをスライドさせることにより、前記試料チップの挟み込み状態が形成される。カバーを開閉運動させる方式として、軸回り回転方式及びスライド方式が考えられるところ、上記構成は後者の方式を採用したものである。回転方式とスライド方式とが組み合わされてもよい。なお、取り出し支援機構とは切り離して、スライド方式を採用してもよい。スライド方式はリテーナそれ自体における構造的特徴ともいえる。
【0019】
本開示に係るリテーナは、作業チップ作業台に載置され得るリテーナであって、試料チップを収容するチップ収容部と、前記チップ収容部に形成され、前記試料チップを押し上げてその姿勢を変化させる押し上げ部材を通過させる開口部と、を含む。この構成によれば、押し上げ部材の運動を許容するリテーナを提供できる。
【0020】
実施形態において、前記試料チップは試料を保持した部分とその周囲に設けられたフレームとを有し、前記押し上げ部材は前記フレームにおける2つの角部分を突き上げる2つの突き上げピンを有し、前記開口部は前記2つの角部分に対応する2つの開口を有し、前記2つの突き上げピンが前記2つの開口を介して上方へ運動する。通常、フレームにおける各角部分は、一般に、構造的に強い部分である。2つの角部分に突き上げ力を及ぼせば、試料やそれを支持している部分を保護できる。
【0021】
実施形態には、試料チップ作業台を利用した新規の試料チップ取り出し方法が含まれる。その方法には、顕微鏡観察後に試料チップを備えたリテーナを試料チップ作業台に置く工程と、前記試料チップ作業台が有する取り出し支援機構を動作させて前記試料チップの傾斜姿勢を生じさせる工程と、前記傾斜状態にある試料チップを取り外す工程と、が含まれる。
【発明の効果】
【0022】
本開示によれば、リテーナからの試料チップの取り出しを支援できる。あるいは、本開示によれば、試料チップの取り出しを支援できる作業台及びその作業台に適合するリテーナを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第1実施形態に係る試料チップ作業台の斜視図である。
図2】第1実施形態に係る試料チップ作業台の上面図である。
図3】第1実施形態に係る試料チップ作業台の断面図である。
図4】第1実施形態に係る試料チップ作業台及びリテーナの斜視図である。
図5】第1実施形態に係る試料チップ作業台及びリテーナの上面図である。
図6】第1実施形態における試料チップ収容前の状態を示す上面図である。
図7】第1実施形態における試料チップ収容後の状態を示す上面図である。
図8】水平姿勢を示す模式図である。
図9】傾斜姿勢を示す模式図である。
図10】第2実施形態に係る試料チップ作業台の斜視図である。
図11】第2実施形態に係る試料チップ作業台の上面図である。
図12】第2実施形態に係る試料チップ作業台の断面図である。
図13】第2実施形態に係るリテーナの斜視図である。
図14】第2実施形態に係るリテーナの上面図である。
図15】第2実施形態に係るリテーナの断面図である。
図16】第2実施形態に係るリテーナの底面図である。
図17】リテーナ本体を配置した状態を示す図である。
図18】複数の試料チップを配置した状態を示す図である。
図19】カバーを配置した状態を示す図である。
図20】カバーをスライドさせた状態を示す図である。
図21】スライドが完了した状態を示す図である。
図22】カバーを取り出した状態を示す図である。
図23】複数の試料チップの一括押し上げを示す図である。
図24】押し上げピンの作用を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
【0025】
図1図9には第1実施形態に係る試料チップ作業台が示されている。試料チップ作業台は、リテーナに対して試料チップを搭載し、及び、リテーナから試料チップを取り外す際に利用される台座である。試料チップ作業台を試料チップ交換台と称してもよい。リテーナ及び試料チップについては後に詳述する。
【0026】
図1において、試料チップ作業台10は、ブロック状の本体12を有している。本体12は、アルミニウム等の金属により構成される。それが樹脂によって構成されてもよい。本体12の上部には、窪み状のリテーナ保持部14が形成されてもいる。リテーナ保持部14は、x方向に離れた2つの溝18A,18Bと、それらの間に形成された凹部16と、を有する。2つの溝18A,18Bの底面が載置面20A,20Bである。載置面20A,20B上にリテーナが載置される。これにより、リテーナ保持部14によってリテーナが保持された状態が形成される。載置面20Bには、位置決めピン22が設けられている。位置決めピン22は、リテーナ保持の際にリテーナ本体に形成された位置決め孔に挿入される。
【0027】
本体12の上面12Aは平坦面であり、そこにはロック板24が設けられている。具体的には、ねじ26によりロック板24が旋回可能に保持されている。ロック板24が旋回し、それが部分的に溝18B上に出て、その長手方向が上方から見てy方向に平行となった場合、リテーナ保持部14に保持されたリテーナの上面がロック板24の下面に接し、リテーナの浮上運動が規制される。つまり、リテーナが完全に拘束されて、それが試料チップ作業台10から外れないロック状態が形成される。
【0028】
リテーナ保持部14は、位置決めピン22及びロック板24と相俟って、リテーナの水平運動を規制する。それらによりリテーナが試料チップ作業台10と事実上一体化される。その状態で、試料チップの交換が行われる。
【0029】
凹部16は、2つの溝18A,18Bよりも、z方向及びy方向に広がっている。リテーナ保持状態において、リテーナの裏面と凹部16の底面16Aとの間に隙間が生じ、また、リテーナの2つの長手側辺と凹部16の2つの側壁(y方向に直交する2つの側壁)との間に隙間が生じる。前者の隙間により、試料チップが凹部16の底面16Aに接触することが防止される。後者の隙間は指先や工具を差し込む空間として機能する。
【0030】
底面16Aには、2つの開口が形成されており、それらの開口を介して2つの突き上げピン28,30が浮上運動する。2つの突き上げピン28,30は、押し上げ部材として機能し、取り出し支援機構34の要部を構成するものである。2つの突き上げピン28,30は、試料チップの取り出し時に試料チップの姿勢を水平姿勢から傾斜姿勢へ変化させる押し上げ作用又は突き上げ作用を発揮する。
【0031】
取り出し支援機構34は、ユーザーによって押し込み操作されるボタン32を有している。本体12の内部には空洞が形成され、その中に取り出し支援機構34が埋設されている。空洞はカバー36によって覆われている。ボタン32を操作すると、後に詳述するように、2つの突き上げピン28,30が連動して上方へ運動し、試料チップの2つの角部分を上方へ突き上げる。これにより、試料チップの傾斜姿勢が形成される。
【0032】
なお、x方向は第1水平方向であり、y方向は第2水平方向であり、z方向は垂直方向ある。それらの3つの方向は互いに直交している。
【0033】
図2には、試料チップ作業台の上面が示されている。既に説明したように、凹部の底面16Aに、2つの開口38A,38Bが形成されており、それらを通じて、2つの突き上げピン28,30が上方へ運動する。それらの運動はボタンの押し込み操作40によって生じる。なお、ボタンを操作していない自然状態において、2つの突き上げピン28,30は、2つの開口38A,38Bよりも下方に位置しており、つまり引っ込んだ状態にある。
【0034】
図3には、試料チップ作業台の断面が示されている。取り出し支援機構34は、y方向に運動する操作部材42と、z方向に運動するブロック44と、ブロック44に設けられた2つの突き上げピン28,30と、により構成される。操作部材42の端部がボタン32として機能している。操作部材42のもう一方の端部には斜面42Aが形成されている。ブロック44には斜面44Aが形成されている。斜面42Aと斜面44Aは互いに当たっており、操作部材42が図3においてy方向に前進すると、ブロック44に対して上方への運動力が生じる。すなわち、2つの斜面42A,44Aの当たり関係によって、水平運動力が垂直運動力に転換されている。リンクやカム等を利用して運動方向が転換されてもよい。
【0035】
操作部材42に対してはバネ45からの後退運動力が与えられている。自然状態では操作部材42は後退端にあり、その状態では、2つの突き上げピン28,30が最下位レベルに位置する。操作部材42が前進運動すると、2つの突き上げピン28,30が上昇運動する。例えば、試料チップの一部(傾斜姿勢における上辺部分)が凹部の上面開口レベルに揃うかそれよりも高い位置になるように、2つの突き上げピン28,30のストローク量が設定されている。カバー36はL字の形態を有しており、その一方端がねじ46で本体に対して固定されており、その他方端がねじ48で本体に対して固定されている。
【0036】
図4には、リテーナを保持した試料チップ作業台が示されている。リテーナ50はリテーナ保持部14内に配置されており、それによって保持されている。リテーナ50は、リテーナ本体52及びカバー54によって構成される。カバー54は、リテーナ本体52に設けられた回転軸を中心として回転運動するものである。
【0037】
リテーナ本体50及びカバー54は、銅、リン青銅、ベリリウム銅等の金属により構成される。電子顕微鏡への配置の観点から、電子線へ影響を与えない材料でリテーナ50を構成するのが望ましい。リテーナ本体52は試料チップを収容するチップ収容部56を有している。それは凹部又は角溝である。その底には観察用の開口が形成されている。カバー54はそれ全体として板バネ状の部材であり、それはチップ押さえ58を有している。チップ押さえ58は、試料チップのフレームを抑え込む2つの押さえ片を有している。
【0038】
図5には、リテーナ及びチップ作業台の上面が示されている。リテーナ50においてカバーは閉状態にある。上記のように、本体12にはリテーナ保持部14が形成されており、リテーナ保持部14によりリテーナ50が保持される。
【0039】
図6には、リテーナ50のカバー54が開いた状態が示されている。ロック板24によってリテーナ本体52の浮上運動が規制されている。リテーナ本体52にはチップ収容部56が形成されており、その底面における4つの角部分に4つの開口62が形成されている。底面における中央部には観察用の開口60が形成されている。4つの開口62の内で、図6において下側に示されている2つの開口62を通じて、2つの突き上げピン28,30が上下運動を行う。
【0040】
図7には、試料チップの配置状態が示されている。チップ収容部56内に試料チップ64が落とし込まれており、試料チップ64は水平姿勢を有している。試料チップ64は以下に説明するように、試料支持膜としてのメンブレンとそれを囲む基板としてのフレームとからなる。フレームにおける特定の2つの角部分64a,64b(図7において下側の2つの角部分)が2つの突き上げピン28,30によって下方から突き上げられる。これにより、試料チップ64の姿勢が水平姿勢から傾斜姿勢へ変化する。
【0041】
なお、試料チップ64における特定の2つの角部分64a,64bに対応してチップ収容部56の底面に2つの開口が形成されている。それらの開口とは別に、試料チップ64における他の2つの角部分(図7において上側の2つの角部分)に対応して2つの開口が形成されている。それらを除外してもよい。
【0042】
図8には、チップ収容部56に収容された試料チップ64の水平姿勢が示されている。図9には、試料チップ64の傾斜姿勢が示されている。図8及び図9においては、試料チップ64の形態、特に厚みが誇張して表現されている。
【0043】
図8において、試料チップ64は、メンブレン70及びフレーム66により構成される。メンブレン70は、観察対象である試料72を支持する薄膜であり、それは例えばSiN膜である。メンブレン70の裏面に薄い試料72が貼付されている。試料72を電子的に又は光学的に観察するために、チップ収容部56の底面には、メンブレン70(及び試料72)を下側に露出させる開口60が形成されている。メンブレン70は電子線等を透過させる材料及び厚みで形成される。
【0044】
例えば、試料チップ64の一辺の長さは、例えば、5~10mmの範囲内にあり、メンブレン70のサイズをAmm×Bmmと定義した場合、Aは0.5~3mmの範囲内にあり、Bは0.5~7mmの範囲内にある。メンブレン70の厚みは、20nm~120nmの範囲内にある。本願明細書で挙げる数値はいずれも例示に過ぎないものであり、諸状況に応じて変更し得る。
【0045】
フレーム66は例えばSi基板である。フレーム66の開口内にメンブレン70が設けられている。その開口は電子線を通過させるものである。フレーム66を構成する材料及びメンブレン70を構成する材料として、上記で挙げたもの以外を採用してもよい。
【0046】
チップ収容部の底面には上記のように4つの開口62が形成されており、その内で特定の2つの開口62が突き上げピン28,30を挿通させるものとして機能する。試料チップ作業台の凹部の底面には2つの開口38A,38Bが形成されている。それらを通じて、2つの突き上げピン28,30が上昇運動を行う。2つの突き上げピン28,30は、リテーナ本体に形成された2つの開口38A,38Bを通じて、試料チップ64のフレーム66に到達し、その姿勢を水平姿勢から傾斜姿勢へ変化させる。
【0047】
図9には、試料チップの傾斜姿勢が示されている。試料チップ64における大半(特に下部)はチップ収容部56内に収容されており、そこからの脱落が防止されている。一方、試料チップ64における上辺部分(具体的にはフレーム下面における端部)はチップ収容部56の上面開口レベル又はそれ以上に達しており、その下側には楔状の隙間が生じている。その隙間に対して工具等を差し込むことが可能である。例えば、試料チップ64における上辺部分がチップ収容部56の上面開口レベルよりも更に上方に引き上げられてもよい。その場合、上辺部分とリテーナ本体の上面との間に隙間が生じるので、試料チップ64の取り出しをより容易化できる。
【0048】
傾斜姿勢においても、試料チップ64の水平方向の運動はチップ収容部56によって完全に又はある程度規制されるので、リテーナからの試料チップ64が不用意に脱落することはない。試料チップ64の取り出し後、新たな試料チップをチップ収容部に配置する場合には、2つの突き上げピンを機能させてもよいし、させなくてもよい。
【0049】
突き上げを行う部材として、単一の突き上げピンを利用してもよい。あるいは板状の部材によって試料チップの特定の辺縁部が押し上げられてもよい。試料チップの下側へ水平方向からレバーを差し込み、そのレバーを上昇させることにより、試料チップの傾斜姿勢が形成されてもよい。試料チップ作業台にアクチュエータを設け、そこで生じた駆動力により、押し上げ部材を上昇運動させてもよい。実施形態においては、試料チップの前側が持ち上げられていたので、試料チップに対してその手前側から工具を差し込み易いという利点を得られる。
【0050】
図10図24には、第2実施形態に係る試料チップ作業台が示されている。図10において、試料チップ作業台80は、ブロック状の本体82を有する。本体82はアルミニウム等の金属により構成される。それが樹脂によって構成されてもよい。本体82の上部には、リテーナ保持部84が形成されている。リテーナ保持部84は、溝状の形態を有し、その底面がリテーナ本体載置面84Aである。リテーナ本体載置面84Aに隣接してそれと平行に、カバー載置面88が形成されている。それも溝状の形態を有する。リテーナ本体載置面84Aには位置決めピン94が設けられている。リテーナ本体載置面84A上にリテーナ本体を載せた際に、位置決めピン94がリテーナ本体に形成された位置決め孔に差し込まれる。
【0051】
本体82には、リテーナ保持部84に連絡している複数の凹部90A,90B,90Cが形成されている。また、本体82には、リテーナ保持部84に連絡している複数の凹部92A,92B,92Cが形成されている。
【0052】
高さ関係について説明すると、本体82の上面から一段下がったレベルにカバー載置面88が形成されており、そこから更に一段下がったレベルにリテーナ本体載置面84Aが形成されている。各凹部90A,90B,90C,92A,92B,92Cの底面レベルは、リテーナ本体載置面84Aよりも低い。なお、本体の82のx方向の幅は例えば3~4cmの範囲内にあり、そのy方向の幅は例えば5~6cmの範囲内にある。
【0053】
リテーナ本体載置面84Aには開口列96が形成されている。開口列96の中に、突き上げピン列98が上下運動可能に設けられている。開口列96は、図示の例では、x方向に並んだ5つの開口により構成される。突き上げピン列98は、図示の例では、x方向に並んだ8個の突き上げピン(動作単位で考えると4つの突き上げピンペア)により構成される。
【0054】
本体82の上面にはロック板109が旋回自在に設けられている。本体82の内部には、4つの突き上げピンペアを個別的に動作させる取り出し支援機構108が設けられている。それについては後に詳述する。また、本体82には、2つのアーム202,204を介してハンドル200が取り付けられている。ハンドル200は回転運動するものである。ハンドル200及びアーム202,204は、例えば、ステンレスにより構成される。本体82の前面にはボタン列106が設けられている。ボタン列106はx方向に並んだ4つのボタンからなる。
【0055】
図11には、試料チップ作業台の上面が示されている。開口列96は、上記のように、5つの開口96A,96B,96C,96D,96Eにより構成される。それらの内で、開口96B,96C,96Dは、x方向に伸長した長孔であり、それぞれ2本の突き上げピンを挿通させる通路として機能する。両端の2つの開口96A,96Eは、それぞれ1つの突き上げピンを挿通させる円形の孔である。
【0056】
突き上げピン列98は、上記のように、4つの突き上げピンペアにより構成される。具体的には、突き上げピン98A,98Bが第1の突き上げピンペアを構成し、突き上げピン100A,100Bが第2の突き上げピンペアを構成し、突き上げピン102A,102Bが第3の突き上げピンペアを構成し、突き上げピン104A,104Bが第4の突き上げピンペアを構成している。このように4つの試料チップに対応して4つの突き上げピンペアが設けられている。4つの突き上げピンペアは個別的に動作する。もっとも、後に説明するように、ハンドルを用いてそれらを一括して動作させることも可能である。
【0057】
図12には、試料チップ作業台の断面が示されている。取り出し支援機構108は、同一の構成を有する4つのユニットからなる。各ユニットは、操作部材、ブロック、及び、突き上げピンペアにより構成される。図12においては、特定のユニットを構成する、操作部材110、ブロック112、及び、突き上げピンペア100A,100Bが示されている。
【0058】
操作部材110の一方端部はボタン110Aとして機能する。その他方端部には斜面110aが形成されている。ブロック112は、本体に形成された空洞114内を上下運動するものである。その下端部には斜面112aが形成されている。斜面110aと斜面112aとが接合している。ブロック112には一対の突き上げピン100A,100Bが固定されている。
【0059】
操作部材110には、ばねにより後退方向への力が与えられている。カバー116の一方端がねじ118によって本体に固定され、その他方端がばね120によって本体に固定されている。
【0060】
ボタン110Aを操作し、それをy方向の奥側へ押し込むと、操作部材110が前進運動し、2つの斜面110a,112aの当たり関係によって、その前進運動力がブロック112を上方へ運動させる力に変換される。ブロック112の上昇運動に伴い、それに固定された一対の突き上げピン100A,100Bが上昇運動し、チップ収容部内に収容されている試料チップのフレームを下方から突き上げる。これにより、試料チップの姿勢が水平姿勢から傾斜姿勢へ変化する。
【0061】
第2実施形態に係る試料チップ作業台には、上記のように、取り出し支援機構が4つのユニットにより構成されている。4つのユニットは4つのボタンを有しており、その中から、作業対象となった試料チップに対応する特定のボタンが選択され、それが操作される。これにより特定のボタンを含む特定のユニットが動作する。第2実施形態では、4つのチップ収容部の並び方向に4つのユニットが並んでおり、また、その方向に4つのボタンが並んでいる。この構成によれば、操作するボタンを誤りなく選択し得る。
【0062】
図13には、試料チップ作業台に配置されるリテーナの構成例が示されている。図示されたリテーナ122は、リテーナ本体124及びカバー126により構成される。リテーナ本体122は外枠128を有する。その内部は、4つの試料チップを収容し、またカバー126を受け入れる空間132である。リテーナ本体122は突片130を有する。突片130は、図示されていないリテーナ保持装置によって保持される部分である。カバー126には開口部134が形成されている。それはx方向に連なった複数の開口及び複数のスリットを有する。
【0063】
図14には、リテーナ122の上面が示されている。図15にはリテーナの断面が示されている。図16には、リテーナの下面が示されている。
【0064】
図14において、リテーナ本体124は、x方向に並ぶ4つのチップ収容部を有する。個々のチップ収容部は凹部又は角溝であり、その中に試料チップが配置される。例えば、4つのチップが4つのチップ収容部に収容された状態で、リテーナ本体124がカバー126で覆われる。これにより、リテーナ本体124とカバー126との間に4つの試料チップが挟み込まれる。そのような挟み込みを行えるように、カバーを構成する材料及びその形態が定められている。
【0065】
カバー126は上記のように開口部134を有する。開口部134は、比較的に大きな長方形を有する開口134A,134B,134C,134Dを有する。また、開口部134は、スリット状の開口134E,134F,134Gを有し、更に切れ込み状の開口134H,134Iを有する。より具体的には、開口134A,134Bの間にそれらを連絡する溝として開口134Eが設けられており、開口134B,134Cの間にそれらを連絡する溝として開口134Fが設けられており、開口134C,134Dの間にそれらを連絡する溝として開口134Gが設けられている。開口134Aの外側(図14において左側)には開口134Hが連なっており、開口134Dの外側(図14において右側)には開口134Iが連なっている。
【0066】
開口134A,134B,134C,134Dは、電子線及び光を通過させるものである。開口部134それ全体がカバー126の中央に形成されたスリットとして機能する。これにより、カバー126が板バネのように作用し、個々の試料チップを弾性的に抑え込む。そのような作用が発揮されるように、カバーの自然状態での形態が定められている。
【0067】
リテーナ本体124は、長手壁135、136及び短手壁138,140を有し、それらによって外枠が構成されている。長手壁135にはカバー126を通す通路142が形成されており、長手壁136にはカバー126の端部が差し込まれる通路144が形成されている。リテーナ本体124の突片130は、それを保持する際に機能する位置決め孔130Aを有している。
【0068】
図15には、4つの試料チップ150がリテーナ本体124内に収容され、それらがカバー126によって覆われている状態が示されている。リテーナ本体124の底面板152とカバー126との間に4つの試料チップ150が挟み込まれている。なお、リテーナにセットする試料チップの個数は任意である。
【0069】
図16には、リテーナ本体の底面板152が示されている。上記のように、底面板152とカバー126との間に4つの試料チップ150が挟み込まれている。各試料チップ150はメンブレン150aを有する。
【0070】
底面板152には、開口列160、開口列162、及び、開口列164が形成されている。開口列160は、x方向に並んだ4つの開口160A,160B,160C,160Dにより構成される。個々の開口160A,160B,160C,160Dは各試料チップのメンブレンを露出させるものである。換言すれば、個々の開口160A,160B,160C,160Dは各試料を観察するための窓として機能する。それらは電子線及び光を通過させる。
【0071】
開口列162は、x方向に並んだ複数の開口162A,162B,162C,162D,162Eにより構成される。それらの内で、開口162B,162C,162Dは、x方向に伸長した長孔である。個々の開口162B,162C,162Dは、隣り合う2つの試料チップにおける2つの角部分を露出させるものである。同時に、開口162B,162C,162Dは、それぞれ、隣り合う2つの突き上げピンを挿通させる通路として機能する。長孔に代えて2つの円形の開口を設けてもよい。開口162A,162Eは、円形の開口であり、それらはそれぞれ1つの角部分を露出させるものである。開口162A,162Eは、それぞれ1つの突き上げピンを挿通させる通路として機能する。
【0072】
開口列164は、x方向に並んだ複数の開口164A,164B,164C,164D,164Eにより構成される。開口列164は、開口列162と同一の形態を有し、その説明を省略する。4つの試料チップの突き上げで機能するのは開口列162である。よって、開口列164を除外してもよい。
【0073】
なお、図16においては、カバー126の先端部分156が通路144に差し込まれている状態、及び、カバー126の後端部分154が通路142に差し込まれている状態が示されている。
【0074】
次に、第2実施形態に係る試料チップ作業台の動作又は作用について、図17図24を用いて説明する。図17図21にはリテーナ本体へ複数の試料チップをセットする過程が示されており、図22図24にはリテーナ本体から複数の試料チップを取り出す過程が示されている。
【0075】
図17に示すように、最初に、試料チップ作業台のリテーナ保持部84内にリテーナ本体124が配置される。続いて、図18に示すように、ロック板109の旋回によりリテーナ本体124をロックした状態が形成され、その状態において、4つのチップ収容部に対して4つの試料チップ150が配置される。その後、図19に示すように、本体82に形成されたカバー載置面88上にカバー126が載置される。その上で、図20に示すように、カバー126を水平にスライド運動させて、リテーナ本体124の上面へカバー126を滑り込ませる。図21には、リテーナ本体124がカバー126によって完全覆われた状態が示されている。4つの試料チップは、リテーナ本体124とカバー126との間に挟まれている。その後、ロック板を回転させ、リテーナが試料チップ作業台から取り外される。それに先立って、又は、その後に、リテーナの突片がリテーナ保持装置によって保持される。
【0076】
図22には、リテーナ本体124上のカバーをスライドさせてそのカバーを取り外した状態が示されている。リテーナ本体124はリテーナ保持部84によって保持されている。また、ロック板109によってその浮上運動が規制されている。その状態で、複数の試料チップの取り出しに先立って、ハンドルが操作される。具体的には、図23に示されているように、ハンドル200を下側に押し込んで(符号170を参照)、4つのボタンが同時に奥側に押し込まれる。これにより4つのユニットが同時に動作する。
【0077】
具体的には、各ユニットにおいて、操作部材110がy方向へ運動し、その水平運動が垂直運動に転換される。ブロック112が上昇運動し、それに伴って一対の突き上げピン100A,100Bが上昇運動し、それらにより試料チップ150の姿勢が変更される。
【0078】
具体的には、図24に示されているように、一対の突き上げピン100A,100Bが試料チップの手前側(図24において左側)の2つの角部分を突き上げ、試料チップ150姿勢をチップ収容部内で水平姿勢から傾斜姿勢へ変化させる。各突き上げピン100A,100Bの上端部172は丸みをもっている。傾斜姿勢を有する試料チップ150がピンセット等の工具によって掴まれる。試料チップ150が指先で掴まれてもよい。実施形態では、上記ハンドルの操作により、4つの試料チップの姿勢を同時に傾斜姿勢にすることが可能である。
【0079】
上記実施形態では、4つの試料チップがリテーナに直線配列をもって搭載されており、試料観察時に、リテーナをその中心軸回りにおいて回転させても、リテーナが他の構造物に衝突し難いという利点が得られる。リテーナに対して5個以上のチップ収容部を設けてもよく、あるいは、2個又は3個のチップ収容部を設けてもよい。リテーナが設置される光学顕微鏡の概念には蛍光顕微鏡が含まれる。
【符号の説明】
【0080】
10 試料チップ作業台、12 本体、14 リテーナ保持部、14A リテーナ載置面、28,30 突き上げピン、34 取り出し支援機構、50 リテーナ、56 チップ収容部、64 試料チップ、80 試料チップ作業台、82 本体、84 リテーナ保持部、84A リテーナ本体載置面、88 カバー載置面、98 突き上げピン列、108 取り出し支援機構、122 リテーナ、124 リテーナ本体、126 カバー、150 試料チップ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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