IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電子株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-試料取付装置 図1
  • 特許-試料取付装置 図2
  • 特許-試料取付装置 図3
  • 特許-試料取付装置 図4
  • 特許-試料取付装置 図5
  • 特許-試料取付装置 図6
  • 特許-試料取付装置 図7
  • 特許-試料取付装置 図8
  • 特許-試料取付装置 図9
  • 特許-試料取付装置 図10
  • 特許-試料取付装置 図11
  • 特許-試料取付装置 図12
  • 特許-試料取付装置 図13
  • 特許-試料取付装置 図14
  • 特許-試料取付装置 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-16
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】試料取付装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/20 20060101AFI20220106BHJP
   G01N 1/28 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
H01J37/20 A
G01N1/28 W
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019178678
(22)【出願日】2019-09-30
(65)【公開番号】P2021057172
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2020-08-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000004271
【氏名又は名称】日本電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】特許業務法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川村 節久
(72)【発明者】
【氏名】木村 英昭
【審査官】大門 清
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-085840(JP,A)
【文献】特開2017-050181(JP,A)
【文献】特開平02-030573(JP,A)
【文献】特開2019-083191(JP,A)
【文献】特開2018-077966(JP,A)
【文献】国際公開第2015/152385(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/20
G01N 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カートリッジに試料を、保持具を介して取り付ける試料取付装置において、
液体内に収容される載置台と、
前記載置台に形成され、前記カートリッジが載置される載置凹部と、
前記載置凹部に形成され、前記載置凹部に前記カートリッジを載置した際に、前記カートリッジにおける上下方向の下側に位置し、前記液体及び気泡が通過可能な圧力開放凹部と、
を備えた試料取付装置。
【請求項2】
前記載置台に設けられ、前記保持具を前記カートリッジの試料取付部に向けて案内するガイド部材を備え、
前記ガイド部材は、前記載置凹部及び前記圧力開放凹部と対向し、前記保持具が挿入される筒孔が形成されたガイド筒部を有する
請求項1に記載の試料取付装置。
【請求項3】
前記載置凹部は、前記カートリッジの長手方向の長さよりも長く延在して形成される
請求項1又は2に記載の試料取付装置。
【請求項4】
前記圧力開放凹部は、前記ガイド筒部と対向する対向部における上下方向の深さが最も浅く形成され、前記対向部から端部に向かうにつれてその深さが深く形成されている
請求項に記載の試料取付装置。
【請求項5】
前記圧力開放凹部における前記ガイド筒部と対向する対向部には、前記気泡における前記対向部に向かう移動を規制する気泡規制突起が設けられる
請求項又は4に記載の試料取付装置。
【請求項6】
前記載置台には、前記ガイド部材を保持するガイド保持部が設けられる
請求項2に記載の試料取付装置。
【請求項7】
前記筒孔に配置された前記保持具を前記試料取付部に向けて押し込む押出治具を備え、
前記押出治具は、
前記液体及び前記気泡が通過可能な通路が形成された筒状の軸部と、
前記軸部の先端部に接続され、前記保持具に当接する筒状の押出部と、を有し、
前記軸部には、前記通路に連通し、前記液体及び前記気泡が通過可能な孔が形成され、
前記押出部の筒孔は、前記軸部の前記通路に連通路を介して連通する
請求項2に記載の試料取付装置。
【請求項8】
前記筒孔に配置された前記保持具を、前記筒孔における上下方向の下端部まで押し込み、前記保持具を前記筒孔の下端部に仮セットする仮セット治具を備え、
前記仮セット治具は、
前記保持具に当接する押出部と、
前記押出部に設けられ、前記筒孔の内壁面に当接するストッパと、を有し、
前記押出治具は、前記仮セット治具により仮セットされた前記保持具を前記試料取付部に向けて押し込む
請求項7に記載の試料取付装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば荷電粒子線装置や電子顕微鏡によって観察されるカートリッジに試料をセットする試料取付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、荷電粒子装置や電子顕微鏡によって観察される試料は、平板状のカートリッジに取り付けられて用いられる。また、試料は、弾性を有するCリングからなる保持具を介してカートリッジに取り付けられる。
【0003】
さらに、カートリッジに試料をセットする装置としては、例えば、特許文献1に記載されているようなものがある。特許文献1には、カートリッジに設けた試料取付部への試料の取り付け作業が可能な作業面部を有する載置台と、載置台の作業面部に形成され、カートリッジが摺動可能に載置される溝部と、を備えた技術が記載されている。
【0004】
また、載置台を液体窒素等の液体内に配置した状態で、カートリッジに試料や保持具をセットする作業が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-77966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、試料や保持具をカートリッジにセットする際に、カートリッジと溝部の間に介在された液体から試料に圧力が加わり、試料が破損するおそれがあった。
【0007】
本発明の目的は、上記の問題点を考慮し、試料の破損を防止することができる試料取付装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、本発明の試料取付装置は、カートリッジに試料を、保持具を介して取り付ける試料取付装置である。試料取付装置は、載置第と、載置凹部と、液体及び気泡が通過可能な圧力開放凹部と、を備えている。載置台は、液体内に収容される。載置凹部は、載置台に形成され、カートリッジが載置される。圧力開放凹部は、載置凹部に形成され、載置凹部にカートリッジを載置した際に、カートリッジにおける上下方向の下側に位置する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の試料取付装置によれば、試料の破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施の形態例にかかる試料取付装置を示す概略構成図である。
図2】本発明の第1の実施の形態例にかかる試料取付装置の試料取付ユニットを示す斜視図である。
図3】本発明の第1の実施の形態例にかかる試料取付装置の試料取付ユニットを示す平面図である。
図4】本発明の第1の実施の形態例にかかる試料取付装置の試料取付ユニットを示す断面図である。
図5】カートリッジを示す斜視図である。
図6】カートリッジを示す平面図である。
図7】カートリッジの試料取付部を拡大して示す平面図である。
図8】カートリッジの試料取付け部を示す断面図である。
図9】本発明の第1の実施の形態例にかかる試料取付装置の仮セット治具を示す正面図である。
図10】本発明の第1の実施の形態例にかかる試料取付装置のCリング押出治具を示す図であり、図10Aは正面図、図10Bは先端部を拡大して示す断面図である。
図11】本発明の第1の実施の形態例にかかる試料取付装置を用いてカートリッジにCリングを仮セットする状態を示す断面図である。
図12】本発明の第1の実施の形態例にかかる試料取付装置を用いてカートリッジにCリング及び試料をセットする状態を示す断面図である。
図13】本発明の第2の実施の形態例にかかる試料取付装置の試料取付ユニットを示す断面図である。
図14】本発明の第2の実施の形態例にかかる試料取付装置の試料取付ユニットを示す断面図である。
図15】本発明の第3の実施の形態例にかかる試料取付装置の試料取付ユニットを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の試料取付装置の実施の形態例について、図1図15を参照して説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。また、説明は以下の順序で行うが、本発明は、必ずしも以下の形態に限定されるものではない。
【0012】
1.第1の実施の形態例
1-1.試料取付装置の構成
まず、本発明の第1の実施の形態例(以下、「本例」という。)にかかる試料取付装置について図1から図4を参照して説明する。
図1は、本例の試料取付装置を示す概略構成図である。
【0013】
図1に示す装置は、例えば、試料を凍結させて観察を行うクライオ電子顕微鏡に用いられるカートリッジに試料をセットする試料取付装置である。図1に示すように、試料取付装置1は、収容部2と、試料取付ユニット3と、を備えている。また、試料取付装置1は、仮セット治具200(図9参照)及びCリング押出治具300(図10A参照)、を備えている。
【0014】
収容部2は、上下方向の上面が開口した容器状に形成されている。収容部2の内部には、試料取付ユニット3が配置される。この収容部2の内部には、例えば、液体窒素M1が充填される。収容部2の内部に配置された試料取付ユニット3の全てが浸かる量の液体窒素M1が収容部2に収容される。なお、収容部2の内壁に、液体窒素M1を入れる量の目安となる目印を設けてもよい。
【0015】
また、液体として液体窒素M1を適用した例を説明したが、これに限定されるものではなく、その他各種の冷却用の液体が適用されるものである。
【0016】
[試料取付ユニット]
次に、図2から図4を参照して試料取付ユニット3について説明する。
図2は、試料取付ユニット3を示す斜視図である。図3は、試料取付ユニット3を示す平面図、図4は、試料取付ユニット3を示す断面図である。
【0017】
図2及び図3に示すように、試料取付ユニット3は、載置台11と、保持具ガイド部材の一例を示すCリングガイド部材13、ガイド保持部14と、2つの軸支持部17、17とを有している。
【0018】
載置台11は、略直方体状に形成されている。また、載置台11は、試料S1及びCリング105(図5参照)の取付作業を行う作業面部11aを有している。以下、水平方向と平行でかつ載置台11の長手方向と平行をなす方向を第1の方向Xとする。水平方向と平行でかつ載置台11の短手方向と平行をなす方向、すなわち第1の方向Xと直交する方向を第2の方向Yとする。また、第1の方向X及び第2の方向Yと直交する方向、すなわち水平方向と直交する方向を第3の方向Zとする。
【0019】
作業面部11aは、載置台11における第3の方向Zの一側の上面部に形成されている。作業面部11aには、載置凹部15が形成されている。載置凹部15は、作業面部11aにおける第1の方向Xの一端部から他端部にかけて延在している。載置凹部15は、作業面部11aから第3の方向Zの他側に向けて一段凹んだ凹部である。この載置凹部15には、カートリッジ100が摺動可能に配置される。
【0020】
作業面部11aには、Cリングガイド部材13と、ガイド保持部14が設けられている。また、作業面部11aには、軸支持部17、17が設けられている。Cリングガイド部材13と、ガイド保持部14及び軸支持部17、17は、載置凹部15の近傍に配置されている。Cリングガイド部材13及び軸支持部17、17は、載置凹部15の第2の方向Yの一側に配置され、ガイド保持部14は、第2の方向Yの他側に配置されている。
【0021】
2つの軸支持部17、17は、載置凹部15が延在する方向、すなわち第1の方向Xに間隔を空けて配置されている。軸支持部17、17には、回動軸18が設けられている。回動軸18は、その軸方向が第1の方向Xと平行になるように配置される。回動軸18には、Cリングガイド部材13が回動可能に支持されている。
【0022】
Cリングガイド部材13は、ガイド部材21と、支持部材22とを有している。支持部材22は、舌片状の回動片24と、軸受け部25とを有している。軸受け部25は、回動軸18に回動可能に支持される。回動片24は、軸受け部25から突出している。軸受け部25が回動軸18を中心に回動すると、回動片24は、載置凹部15と第3の方向Zに間隔を空けて対向する。
【0023】
回動片24には、貫通孔24aが形成されている(図3参照)。この貫通孔24aには、ガイド部材21が挿入される(図4参照)。
【0024】
ガイド部材21は、略円筒状のガイド筒部26と、フランジ部27とを有している。ガイド筒部26の筒孔26aは、軸方向の一端から他端に向かうにつれて内径が連続的に小さくなるようにテーパー状に形成されている。この筒孔26aには、Cリング105及び後述する仮セット治具200及びCリング押出治具300が挿入される。
【0025】
ガイド筒部26は、回動片24の貫通孔24aに挿入される。また、ガイド筒部26の外径は、貫通孔24aの直径よりも小さく設定されている。ガイド筒部26を貫通孔24aに挿入した際、ガイド筒部26の軸方向の他端部は、回動片24における載置凹部15と対向する一面から突出する。
【0026】
ガイド筒部26の筒孔26aは、その外径が軸方向の先端部(他端部)に近づくにつれて連続して小さくなるテーパー状に形成されている。そして、ガイド部材21は、ガイド筒部26の筒孔26aに挿入されたCリング105を後述するカートリッジ100に設けた試料取付部101に向けて案内する。
【0027】
フランジ部27は、ガイド筒部26の外周面における軸方向の一端部から半径方向の外側に向けて突出している。ガイド筒部26を貫通孔24aに挿入した際、フランジ部27は、回動片24における載置凹部15と対向する一面とは反対側の他面に載置される。フランジ部27を回動片24の他面に、例えば固定ねじによって固定することで、ガイド部材21は、支持部材22に固定される。
【0028】
上述したように、貫通孔24aの直径をガイド筒部26の外径よりも大きく形成したことで、ガイド筒部26を貫通孔24aに挿入した後に、ガイド部材21における支持部材22に対する位置を調整することができる。
【0029】
ガイド保持部14は、回転軸14aを介して、作業面部11aに回転可能に支持されている。ガイド保持部14が回転すると、ガイド保持部14は、支持部材22の回動片24に重なり合う。これにより、ガイド保持部14は、作業中にガイド部材21及び支持部材22が回動することを防止している。
【0030】
また、載置凹部15には、圧力開放凹部16が形成されている。圧力開放凹部16は、載置凹部15から第3の方向Zの他側に向けて凹んだ凹部である。また、圧力開放凹部16は、載置凹部15の第1の方向Xの一端部から他端部にかけて延在している。圧力開放凹部16における第1の方向Xの長さは、カートリッジ100の第1の方向Xの長さよりも長く設定されている。また、圧力開放凹部16の第2の方向Yの長さは、載置凹部15及びカートリッジ100の第2の方向Yの長さよりも短く設定されている。
【0031】
また、載置凹部15にカートリッジ100を載置した際、圧力開放凹部16は、カートリッジ100における第3の方向Zの他側に位置する。試料S1をセットする際に、カートリッジ100と載置凹部15の間の液体窒素M1(図1参照)及び気泡Q1は、圧力開放凹部16に流れる。これにより、試料S1をセットする際に、液体窒素M1からの圧力が試料S1に加わることを防ぐことがきる。
【0032】
圧力開放凹部16におけるガイド筒部26の筒孔26aと対向する箇所である対向部16aの第3の方向Zの長さ、すなわち深さは、圧力開放凹部16の第1の方向Xの両端部16bの深さよりも短く設定されている。圧力開放凹部16における対向部16aの深さが最も浅く設定されている。すなわち、圧力開放凹部16は、対向部16aから両端部16bにかけて連続して深さが深くなるように傾斜している。そして、圧力開放凹部16の対向部16aの容積は、両端部16bの容積よりも小さい。
【0033】
[カートリッジ]
次に、上述した試料取付装置1に収容されるカートリッジ100の構成について図5から図8を参照して説明する。
図5は、カートリッジ100及び試料S1を示す斜視図、図6は、カートリッジを示す平面図、図7は、カートリッジ100の試料取付部101を拡大して示す平面図、図8は、カートリッジの試料取付部101を示す断面図である。
【0034】
図5及び図6に示すように、カートリッジ100は、矩形をなす略平板状に形成されている。カートリッジ100には、試料取付部101が形成されている。試料取付部101は、略円形に開口した貫通孔である。
【0035】
図7及び図8に示すように、試料取付部101は、載置部101aと、嵌合部101bとを有している。試料取付部101には、試料S1と保持具の一例を示すCリング105が取り付けられる。載置部101aは、試料取付部101の軸方向の中途部に形成されている。また、載置部101aは、試料取付部101の内壁から半径方向の内側に向けて突出する内フランジ部である。この載置部101aには、試料S1が載置される。
【0036】
嵌合部101bは、試料取付部101において載置部101aよりもCリング105及び試料S1が挿入される側に形成されている。嵌合部101bは、載置部101aから試料取付部101におけるCリング105及び試料S1が挿入される側の開口にかけてその内径が連続的に小さくなるように形成されている。この嵌合部101bと載置部101aの間には、挿入されたCリング105が嵌合される。
【0037】
載置部101a及び嵌合部101bの外縁部には、2つの切り欠き101c、101cが形成されている。2つの切り欠き101c、101cは、互いに対向する位置に形成されている。2つの切り欠き101c、101cには、載置部101aや嵌合部101b内の液体窒素M1が通過する。
【0038】
Cリング105は、後述する仮セット治具200を用いて、ガイド筒部26の筒孔26aに押し込まれる。また、Cリング105及びS1は、後述するCリング押出治具300を用いて試料取付部101に押し込まれる。
【0039】
[仮セット治具]
次に、仮セット治具200について図9を参照して説明する。
図9は、仮セット治具200を示す正面図である。
【0040】
図9に示すように、仮セット治具200は、使用者が把持する把持部201と、軸部202と、押出部203と、ストッパ204と、を有している。軸部202は、棒状に形成されており、その一端部が把持部201に接続されている。軸部202の軸方向の他端部(先端部)には、押出部203及びストッパ204が設けられている。
【0041】
押出部203は、略円筒状に形成されている。また、押出部203には、複数のスリット203aが形成されている。押出部203の外周面には、ストッパ204が形成されている。押出部203は、ストッパ204の先端部から所定の長さで突出している。
【0042】
ストッパ204の先端部には、その外径が軸方向の先端部に近づくにつれて連続して小さくなるテーパー部204aが形成されている。また、ストッパ204のテーパー部204aの外径は、ガイド筒部26の筒孔26aにおける最も直径が小さくなる箇所よりも大きく設定されている。
【0043】
そして、押出部203及びストッパ204をガイド筒部26の筒孔26aに挿入した際に、ストッパ204のテーパー部204aは、筒孔26aの内壁面に当接する(図11参照)。また、押出部203におけるストッパ204からの突出長さは、テーパー部204aが筒孔26aに当接したときにおける、テーパー部204aの先端から筒孔26aの先端までの長さよりも短く設定される。この仮セット治具200は、Cリング105をガイド筒部26の筒孔26a内に仮セットする。
【0044】
[Cリング押出治具]
次に、押出治具を示すCリング押出治具300について図10A及び図10Bを参照して説明する。
図10Aは、Cリング押出治具300を示す正面図、図10Bは、Cリング押出治具300の先端部を示す断面図である。
【0045】
図10Aに示すように、Cリング押出治具300は、使用者が把持する把持部301と、軸部302と、押出部303と、を有している。図10Bに示すように、軸部302は、中空の筒状に形成されている。軸部302の軸方向の一端部は、把持部301に接続されている。
【0046】
軸部302には、軸方向の一端部から他端部にかけて連続する通路305が形成されている。また、軸部302の外周面には、複数の孔302aが形成されている。孔302aは、軸部302の外周面を貫通し、通路305に連通している。
【0047】
軸部302の軸方向の他端部(先端部)には、押出部303が接続されている。押出部303は、その外径が軸方向の先端部に近づくにつれて連続して小さくなる、いわゆるテーパー状に形成されている。
【0048】
また、押出部303の先端部には、複数のスリット303aが形成されている。スリット303aは、押出部303の先端部から軸方向に沿って所定の長さで形成されている。複数のスリット303aが設けられたことで、押出部303の先端部は、半径方向の中心に向かって縮径可能に構成されている。
【0049】
また、押出部303の筒孔は、連通路306を介して、軸部302に設けた通路305に連通している。そして、連通路306、通路305及び孔302aには、液体窒素M1や気泡Q1が通過する。
【0050】
1-2.試料取付装置を用いた試料のセット作業
次に、上述した試料取付装置1を用いて試料S1をカートリッジ100にセットする作業の一例について図1図4図11図12を参照して説明する。
図11は、Cリング105を仮セットする状態を示す図、図12は、試料S1及びCリングをセットする状態を示す図である。
【0051】
予め図1に示すように、収容部2には液体窒素M1が収容され、試料取付ユニット3、カートリッジ100が冷却されている。まず、Cリングガイド部材13を回動させ、載置凹部15の上方を開放させる。次に、カートリッジ100を載置凹部15に載置させる。
【0052】
そして、Cリングガイド部材13を回動させて、ガイド部材21をカートリッジ100の上方に配置させる。これにより、ガイド部材21のガイド筒部26がカートリッジ100の試料取付部101に対向する。また、図2に示すように、ガイド保持部14を回転させて、支持部材22の回動片24にガイド保持部14を重ねる。これにより、Cリングガイド部材13の回動動作を規制し、Cリングガイド部材13のガタツキや位置ずれを抑制することができる。
【0053】
次に、図11に示すように、ガイド筒部26の筒孔26aにCリング105を挿入し、仮セット治具200を用いてCリング105を筒孔26aの軸方向の他端部に向けて押し込む。Cリング105は、ガイド筒部26の筒孔26aによって弾性変形し、縮径する。
【0054】
また、仮セット治具200におけるストッパ204のテーパー部204aがガイド筒部26の筒孔26aに当接する。これにより、仮セット治具200における挿入動作が規制される。
【0055】
上述したように、押出部203におけるストッパ204からの突出長さは、テーパー部204aが筒孔26aに当接したときにおける、テーパー部204aの先端から筒孔26aの先端までの長さよりも短く設定されている。そのため、押出部203の先端部は、筒孔26aにおける軸方向の他端部で停止する。これにより、押出部203によって押圧されたCリング105は、筒孔26aにおける軸方向の他端部(下端部)に仮セットされる。
【0056】
次に、作業者は、Cリングガイド部材13を回動させ、カートリッジ100の試料取付部101の上方を開放させる。作業者は、試料取付部101の載置部101aに試料S1を載置する。そして、再びCリングガイド部材13を回動させて、ガイド筒部26がカートリッジ100の試料取付部101に対向させる。
【0057】
このとき、カートリッジ100に設けられたねじ103等の微小な隙間や突起から気泡Q1が発生する。そして、この気泡Q1により試料S1やCリング105が浮き上がるおそれがあった。
【0058】
なお、後述するカートリッジ100に設けられたねじ103等の微小な隙間や突起から気泡Q1が発生する。そして、この気泡Q1により試料S1が浮き上がるおそれがあった。これに対して、本例の試料取付ユニット3の載置凹部15には、液体及び気泡Q1が通過可能な圧力開放凹部16が形成されている。そして、図4に示すように、発生した気泡Q1は、圧力開放凹部16を移動する。
【0059】
また、圧力開放凹部16は、対向部16aから両端部16bにかけて連続して深さが深くなるように傾斜している。そのため、発生した気泡Q1は、容積の小さい対向部16aから圧力開放凹部16を通り、容積の大きい両端部16bに移動する。
【0060】
上述したように、圧力開放凹部16の第1の方向Xの長さは、カートリッジ100の第1の方向Xの長さよりも長く設定されている。両端部16bに移動した気泡Q1を、カートリッジ100の第1の方向Xの両端部から逃がすことができる。すなわち、気泡Q1をガイド筒部26と対向する対向部16aから遠ざかる方向に逃がすことができる。これにより、気泡Q1によって試料S1が浮き上がることを防止することができる。
【0061】
次に、図12に示すように、Cリング押出治具300を用いてCリング105を試料取付部101に向けて押し込む。なお、筒孔26aの他端部に仮セットされたCリング105は、弾性変形することで拡径する方向に力が発生している。そのため、Cリング105は、Cリング押出治具300の押出部303の先端面に沿って略平行に押し込まれる。
【0062】
Cリング105をさらに押し込むと、Cリング105は、ガイド筒部26の筒孔26aから試料取付部101の嵌合部101bに移動する。また、嵌合部101bは、挿入側の開口から載置部101aに近づくにつれてその内径が広がっているため、Cリング105は、嵌合部101bの内壁に沿って拡径する。そのため、Cリング105が嵌合部101bと嵌合する。そして、試料S1は、その縁部がCリング105と載置部101aで挟持されて、試料取付部101に固定される。その結果、試料S1のセット作業が完了する。
【0063】
このとき、Cリング押出治具300における押出部303のテーパー部がガイド筒部26の筒孔26aに当接する。そして、Cリング押出治具300におけるカートリッジ100に近接する向きの移動がガイド筒部26によって規制される。その結果、Cリング押出治具300が試料取付部101にセットされた試料S1に触れて、試料S1に傷が付くことを防ぐことができる。
【0064】
また、Cリング105は、仮セット治具200により試料取付部101の近傍である筒孔26aの軸方向の他端部に仮セットされている。そのため、筒孔26aの軸方向の一端部から移動する試料取付部101に移動する場合よりも、Cリング105における筒孔26aから試料取付部101への移動距離が短くなる。これにより、Cリング105が筒孔26aから試料取付部101の嵌合部101bに移動する際に生じる衝撃力を軽減することができる。その結果、Cリング105が移動する際に生じる衝撃力により試料S1が破損することを防ぐことができる。
【0065】
また、載置部101aや嵌合部101bに位置する液体窒素M1は、切り欠き101cと通過して、載置部101aや嵌合部101bの外側に移動する。これにより、試料S1をセットする際に生じる液体窒素M1から試料S1に加わる圧力を軽減することができる。
【0066】
さらに、試料S1をセットする際に、カートリッジ100と載置凹部15の間の液体窒素M1や気泡Q1は、圧力開放凹部16に流れる。これにより、試料S1をセットする際に、液体窒素M1や気泡Q1から試料S1に加わる圧力を軽減することがき、試料S1が圧力によって破損することを防ぐことができる。
【0067】
また、Cリング押出治具300によってCリング105を押圧する際に、押出部303と試料S1との間に存在する液体窒素M1や発生した気泡Q1は、押出部303の筒孔及び連通路306を通過して軸部302の通路305に移動する。そして、気泡Q1は、通路305から外部に移動する。これにより、押出部303と試料S1との間に存在する液体窒素M1や発生した気泡Q1から試料S1に加わる圧力を軽減することができる。その結果、試料S1が圧力によって破損することを防ぐことができる。
【0068】
2.第2の実施の形態例
次に、図13及び図14を参照して第2の実施の形態例にかかる試料取付装置について説明する。
図13は、第2の実施の形態例にかかる試料取付装置の試料取付ユニットを示す断面図である。
【0069】
この第2の実施の形態例にかかる試料取付装置が、第1の実施の形態例にかかる試料取付装置1と異なる点は、試料取付けユニットの構成である。そのため、ここでは、試料取付ユニットについて説明し、第1の実施の形態例にかかる試料取付装置1と共通する部分には同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0070】
図13に示すように、試料取付ユニット40は、載置台41と、Cリングガイド部材43と、を有している。載置台41には、載置凹部45と、圧力開放凹部46が形成されている。Cリングガイド部材43及び載置凹部45の構成は、第1の実施の形態例にかかるCリングガイド部材13及び載置凹部15の構成と同様であるためその説明は省略する。
【0071】
圧力開放凹部46は、載置凹部45から第3の方向Zの他側に向けて凹んだ凹部である。第2の実施の形態例にかかる圧力開放凹部46では、対向部46aと両端部46bの深さは同一に設定されている。
【0072】
また、圧力開放凹部46には、気泡規制突起47が設けられている。気泡規制突起47は、圧力開放凹部46の底面から第3の方向Zの一側に向けて突出している。気泡規制突起47は、圧力開放凹部46におけるガイド筒部51と対向する対向部46aに設けられている。また、気泡規制突起47は、対向部46aにおける第1の方向Xの両側に配置されている。
【0073】
気泡規制突起47は、カートリッジ100に設けたねじ103等の微小な隙間や突起から気泡Q1が、圧力開放凹部46を介して対向部46aに移動することを規制している。これにより、試料S1が気泡Q1によって浮き上がることを防止することができる。
【0074】
図14は、ねじ103が設けられていないカートリッジ100Bを試料取付ユニット40に載置した状態を示す断面図である。
図14に示すように、ねじ103が設けられていないカートリッジ100Bにおいても、気泡規制突起47により気泡Q1が対向部46aに流れることを防ぐことができる。これにより、気泡Q1によって試料S1が浮き上がることを防止することができる。
【0075】
その他の構成は、上述した第1の実施の形態例にかかる試料取付ユニット3と同様であるため、それらの説明は省略する。このような構成を有する試料取付ユニット40においても、上述した第1の実施の形態例にかかる試料取付ユニット3と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0076】
なお、気泡規制突起47を対向部46aにおける第1の方向Xの両側に配置した例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、カートリッジ100、100Bにおける突起や隙間等の気泡Q1が発生する起因がある部材側の片側のみに気泡規制突起47を設けてもよい。
【0077】
3.第3の実施の形態例
次に、図15を参照して第3の実施の形態例にかかる試料取付装置について説明する。
図15は、第3の実施の形態例にかかる試料取付装置の試料取付ユニットを示す断面図である。
【0078】
この第3の実施の形態例にかかる試料取付装置は、第1の実施の形態例にかかる試料取付ユニット3の構成と、第2の実施の形態例にかかる試料取付ユニット40の構成を組み合わせたものである。そのため、ここでは、試料取付ユニットについて説明し、第1の実施の形態例にかかる試料取付装置1と共通する部分には同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0079】
図15に示すように、試料取付ユニット70は、載置台71と、Cリングガイド部材73と、を有している。載置台71には、載置凹部75と、圧力開放凹部76が形成されている。Cリングガイド部材73及び載置凹部75の構成は、第1の実施の形態例にかかるCリングガイド部材13及び載置凹部15の構成と同様であるためその説明は省略する。
【0080】
圧力開放凹部76は、載置凹部75から第3の方向Zの他側に向けて凹んだ凹部である。圧力開放凹部76におけるCリングガイド部材73のガイド筒部81と対向する対向部76aは、その深さが最も浅く設定されている。そして、圧力開放凹部76は、対向部76aから第1の方向Xの両端部76bに向かうにつれて、その深さが連続して深くなるように形成されている。
【0081】
また、圧力開放凹部76には、気泡規制突起77が設けられている。気泡規制突起77は、圧力開放凹部76の底面から第3の方向Zの一側に向けて突出している。気泡規制突起77は、対向部76aに設けられている。また、気泡規制突起47は、対向部76aにおける第1の方向Xの両側に配置されている。
【0082】
その他の構成は、上述した第1の実施の形態例にかかる試料取付ユニット3及び第2の実施の形態例にかかる試料取付ユニット40と同様であるため、それらの説明は省略する。このような構成を有する試料取付ユニット70においても、上述した第1の実施の形態例にかかる試料取付ユニット3及び第2の実施の形態例にかかる試料取付ユニット40と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0083】
なお、本発明は上述しかつ図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0084】
なお、本明細書において、「平行」及び「直交」等の単語を使用したが、これらは厳密な「平行」及び「直交」のみを意味するものではなく、「平行」及び「直交」を含み、さらにその機能を発揮し得る範囲にある、「略平行」や「略直交」の状態であってもよい。
【符号の説明】
【0085】
1…試料取付装置、 2…収容部、 3、40、70…試料取付ユニット、 11、41、71…載置台、 11a…作業面部、 13、43、73…Cリングガイド部材、 14…ガイド保持部、 14a…回転軸、 15、45、75…載置凹部、 16、46、76…圧力開放凹部、 16a、46a、76a…対向部、 16b、46b、76b…両端部、 17…軸支持部、 18…回動軸、 21…ガイド部材、 22…支持部材、 24…回動片、 24a…貫通孔、 25…軸受け部、 26、51、81…ガイド筒部、 26a…筒孔、 27…フランジ部、 47、77…気泡規制突起、 100、100B…カートリッジ、 101…試料取付部、 101a…載置部、 101b…嵌合部、 105…Cリング(保持具)、 200…仮セット治具、 201…把持部、 202…軸部、 203…押出部、 204…ストッパ、 204a…テーパー部、 300…Cリング押出治具(押出治具)、 301…把持部、 302…軸部、 302a…孔、 303…押出部、 305…通路、 306…連通路、 M1…液体窒素(液体)、 Q1…気泡、 S1…試料
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15