IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ザ ケマーズ カンパニー エフシー リミテッド ライアビリティ カンパニーの特許一覧

特許6995108ハロゲン化オレフィンを製造するための方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-16
(45)【発行日】2022-02-21
(54)【発明の名称】ハロゲン化オレフィンを製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 17/275 20060101AFI20220214BHJP
   C07C 21/18 20060101ALI20220214BHJP
   C07C 17/278 20060101ALI20220214BHJP
   C07C 19/10 20060101ALI20220214BHJP
   C07C 17/25 20060101ALI20220214BHJP
   C07C 19/01 20060101ALI20220214BHJP
   B01J 31/24 20060101ALI20220214BHJP
   B01J 23/26 20060101ALI20220214BHJP
   B01J 27/12 20060101ALI20220214BHJP
   B01J 23/04 20060101ALI20220214BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20220214BHJP
【FI】
C07C17/275
C07C21/18
C07C17/278
C07C19/10
C07C17/25
C07C19/01
B01J31/24 Z
B01J23/26 Z
B01J27/12 Z
B01J23/04 Z
C07B61/00 300
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019503744
(86)(22)【出願日】2017-07-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-08-22
(86)【国際出願番号】 US2017043497
(87)【国際公開番号】W WO2018022500
(87)【国際公開日】2018-02-01
【審査請求日】2020-07-21
(31)【優先権主張番号】62/367,412
(32)【優先日】2016-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515269383
【氏名又は名称】ザ ケマーズ カンパニー エフシー リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シェン ペン
(72)【発明者】
【氏名】マリオ ジョセフ ナッパ
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー ジャクソン
(72)【発明者】
【氏名】ロバート ディー.ロウゼンバーグ
【審査官】奥谷 暢子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/067865(WO,A1)
【文献】特開昭52-012102(JP,A)
【文献】特開2015-163630(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0046547(US,A1)
【文献】国際公開第2012/067864(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
B01J
C07B
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属鉄及びホスフィンからなる触媒系の存在下でCF3CCl3をCH2=CHXと接触させてCF3CCl2CH2CHClXを製造する工程であって、X=F又はClである工程と、
気相中でフッ素化触媒の存在下でのHFとの反応によって、CF 3 CCl 2 CH 2 CHClXをフッ素化して、CF 3 CF 2 CH=CHF及びCF 3 CF 2 CH=CHClを製造する工程と、
を含む方法。
【請求項2】
前記ホスフィンはトリフェニルホスフィンである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
CH2=CHXはフッ化ビニルである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
CH2=CHXは塩化ビニルである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記フッ素化触媒はクロム触媒である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記フッ素化触媒は、酸化クロム及びクロムオキシフルオリドからなる群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
金属鉄及びホスフィンからなる触媒系の存在下でCF 3 CCl 3 をCH 2 =CHXと接触させてCF 3 CCl 2 CH 2 CHClXを製造する工程であって、X=F又はClである工程と、
液相中で第2のフッ素化触媒の存在下でのHFとの反応によって、CF 3 CCl 2 CH 2 CHClXをフッ素化して、CF3CF2CH2CHF2、CF3CF2CH2CHFCl、及びCF3CF2CH2CHCl2のうちの少なくとも1つを含む化合物の混合物を製造する工程と
を含む方法。
【請求項8】
前記第2のフッ素化触媒は、SbF5、SnCl4、TaCl5、TiCl4、NbCl5、及びこれらのフッ素化された種からなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第2のフッ素化触媒はSbF5を含む、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
相間移動触媒の存在下で、CF3CF2CH2CHF2、CF3CF2CH2CHFCl、又はCF3CF2CH2CHCl2の少なくとも1つを塩基水溶液と接触させて、CF3CF2CH=CHF又はCF3CF2CH=CHClの少なくとも1つを製造する工程を更に含む、請求項7から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記塩基水溶液は、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムを含む、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は概して、フッ素化オレフィンを合成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フルオロカーボン業界は、過去数十年の間、モントリオール議定書の結果として、段階的に廃止されるオゾン層破壊性のクロロフルオロカーボン(CFC)及びヒドロクロロフルオロカーボン(HCFC)の代替冷媒を見出すことに取り組んできた。多くの用途に対する解決策は、冷媒、溶剤、消火剤、発泡剤及び噴射剤として使用するためのヒドロフルオロカーボン(HFC)化合物の商品化であった。現時点で最も広く使用されているHFC冷媒、HFC-134a及びHFC-125、並びに発泡剤HFC-134a及び245faなどのこれらの新しい化合物は、オゾン層破壊係数がゼロであるため、モントリオール議定書の結果として現在の規制の段階的廃止によって影響されない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
オゾン層破壊の問題に加えて、これら用途の多くにおける別の環境問題は、地球温暖化である。したがって、低オゾン層破壊規格を満たし、かつ低地球温暖化係数を有する組成物が必要とされている。特定のヒドロフルオロオレフィン及びヒドロクロロフルオロオレフィンが両方の目的を満たすと考えられている。したがって、地球温暖化係数が低いハロゲン化炭化水素及びフルオロオレフィンを提供する製造方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書で開示されるのは、金属鉄及びホスフィンからなる触媒系の存在下でハロアルカン反応物をオレフィンと接触させてハロアルカン挿入生成物を生成することを含む方法であって、このハロアルカン反応物は、F、Cl、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのハロゲンで置換されたアルカンである、方法である。
【0005】
本明細書では、金属鉄及びホスフィンからなる触媒系の存在下でCFCClをCH=CHXと接触させてCFCClCHCHClXを製造する方法であって、X=F又はClである、方法も開示される。HFO-1336ze及び/又はHCFO-1335zdを製造するための一連の更なる反応も開示される。
【0006】
本明細書では、化合物CFCFCH=CHClを含む新規組成物も開示される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
上記に数多くの態様及び実施形態が記述されているが、これらは単に例示であり、限定するものではない。本明細書を読んだ後、当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく、他の態様及び実施形態が可能であることを理解するであろう。
【0008】
実施形態のうちの任意の1つ以上の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0009】
本開示の態様は、ハロアルカン反応物へのオレフィンの挿入により、ハロアルカン挿入生成物などの所望の生成物を得るための金属及び配位子の使用を含む金属触媒オレフィン挿入方法に関する。具体的には、いくつかの態様は、ハロアルカンのオレフィン挿入のための、高い変換率及び選択率を有する鉄及びトリフェニルホスフィン触媒系に関する。
【0010】
一実施形態では、金属鉄及びホスフィンからなる触媒系の存在下でハロアルカン反応物をオレフィンと接触させてハロアルカン挿入生成物を生成することを含むオレフィン挿入方法であって、このハロアルカン反応物は、F、Cl、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのハロゲンで置換されたアルカンである、オレフィン挿入方法が提供される。
【0011】
いくつかの実施形態では、ハロアルカン反応物は、クロロカーボン、ヒドロクロロカーボン、クロロフルオロカーボン、ヒドロクロロフルオロカーボン、及びヒドロフルオロカーボンからなる群から選択される。
【0012】
一実施形態では、クロロカーボンは、炭素及び塩素のみを有する化合物であり、四塩化炭素(CCl)、パークロロエタン(CClCCl)などを含むが、これらに限定されない。
【0013】
一実施形態では、ヒドロクロロカーボンは、炭素、水素、及び塩素を有する化合物であり、クロロメタン(CHCl)、塩化メチレン(CHCl)、トリクロロメタン(CHCl)、クロロエタン(CHCHCl)、ジクロロエタン(CHCHCl又はCHClCHCl)などを含むが、これらに限定されない。
【0014】
一実施形態では、クロロフルオロカーボンは、炭素、水素、フッ素、及び塩素を有する化合物であり、ジクロロジフルオロメタン(CCl)、トリクロロフルオロエタン(CClF)、1,1,1-トリクロロ-2,2,2-トリフルオロエタン(CFC-113a、CFCCl)、1,1,2-トリクロロ-1,2,2-トリフルオロエタン(CFC-113、CFClCFCl)などを含むが、これらに限定されない。
【0015】
一実施形態では、ヒドロクロロフルオロカーボンは、炭素、水素、フッ素、及び塩素を有する化合物であり、クロロジフルオロメタン(CHFCl)、ジクロロフルオロメタン(CHFCl)、クロロフルオロメタン(CHFCl)、2,2-ジクロロ-1,1,1-トリフルオロエタン(CHClCF)、1,2-ジクロロ-1,1,2-トリフルオロエタン(CHFClCClF)、2,2-ジクロロ-1,1,2-トリフルオロエタン(CHFCFCl)、2-クロロ-1,1,1,2-テトラフルオロエタン(CHFClCF)などを含むが、これらに限定されない。
【0016】
一実施形態では、ヒドロクロロフルオロカーボンは、炭素、水素、及びフッ素を有する化合物であり、トリフルオロメタン(CHF)、ジフルオロメタン(CH)、フルオロメタン(CHF)、1,1-ジフルオロエタン(CHFCH)、3,3,3-トリフルオロエタン(CFCH)、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(CHFCF)、1,1,2,2-テトラフルオロエタン(CHFCHF)、ペンタフルオロエタン(CFCHF)などを含むが、これらに限定されない。
【0017】
一実施形態では、ハロアルカン反応物はC1~C5化合物である。別の実施形態では、ハロアルカン反応物は、C1、C2、又はC3化合物である。
【0018】
一実施形態では、オレフィンは、任意選択的にCl、F、又はこれらの組み合わせで置換されていてもよい、少なくとも1つの二重結合を有する不飽和炭化水素である。別の実施形態では、オレフィンは、塩化ビニル(CH=CHCl)、エチレン(CH=CH)、3,3,3-トリフルオロプロペン(CFCH=CH)、フッ化ビニル(CH=CHF)、塩化ビニリデン(CH=CCl)、フッ化ビニリデン(CH=CF)、塩化アリル(CH=CHCHCl)などからなる群から選択される。
【0019】
一実施形態では、鉄及びホスフィン触媒系の各成分は、使用されるオレフィン系反応物のモルに対して特定の濃度を有する。したがって、いくつかの実施形態では、ハロカーボン反応物のモル数対オレフィンのモルの比は、約3:1~1:1である。別の実施形態では、ハロカーボン反応物対オレフィンのモルのモル比は、約2.25:1~1:1である。別の実施形態では、ハロカーボン反応物対オレフィンのモルのモル比は約2:1~1:1である。
【0020】
一実施形態では、鉄のモル数対オレフィンのモル数の比は、約0.01:1~0.1:1である。別の実施形態では、鉄対オレフィンのモル比は、約0.03:1~0.06:1である。別の実施形態では、鉄対オレフィンの比は、約0.07:1~0.1:1である。例えば、鉄粉対塩化ビニルのモル比は、オレフィン1モル当たり鉄0.03~0.06モルであり得るが、別の例では、そのモル比は塩化ビニル1モル当たり鉄0.07~0.1モルである。更に別の例では、鉄対塩化ビニルの比は0.0465:1であり得るが、更なる例では、鉄対塩化ビニルの比は0.093:1であり得る。
【0021】
本開示の一態様では、ホスフィン配位子のモル数は、反応系に存在するオレフィンのモル数に対して測定することができる。例えば、一実施形態では、ホスフィン配位子対オレフィンのモル比は、約0.01:1~0.04:1であり得る。別の実施形態では、ホスフィン配位子対オレフィンのモル比は、約0.02:1~0.06:1であり得る。例えば、ホスフィン配位子対オレフィンのモル比は、0.023:1であり得るが、別の例では、ホスフィン配位子対オレフィンのモル比は、0.046:1であり得る。本発明の一態様では、トリフェニルホスフィン対塩化ビニルのモル比は0.023:1であり、別の例では、トリフェニルホスフィン対塩化ビニルのモル比は0.046:1である。
【0022】
一実施形態では、挿入反応は高温で行うことができる。別の実施形態では、挿入反応は、約50℃~250℃の温度で行うことができる。別の実施形態では、挿入反応は、約100℃~200℃の温度で行うことができる。別の実施形態では、反応は約120℃~180℃の温度で行うことができる。別の実施形態では、反応は約130℃~170℃の温度で行うことができる。
【0023】
一実施形態では、1,1,1-トリクロロ-2,2,2-トリフルオロエタン(CFC-113a、CFCCl)とのオレフィン挿入反応を利用して、現時点でフルオロケミカル産業にとって関心のある化合物、CFCFCH=CHF(1,3,3,4,4,4-ヘキサフルオロ-1-ブテン、HFO-1336ze)及びCFCFCH=CHCl(1-クロロ-3,3,4,4,4-ペンタフルオロ-1-ブテン、HCFO-1335zd)、を製造することができる。これらの化合物は、低いGWP、低い毒性、不燃性、及びそれらをフルオロケミカル用途において有用にする他の望ましい特性を有する。HFO-1336ze(E異性体又はZ異性体のいずれか)は、発泡膨張剤、冷媒、高温ヒートポンプ用の作動流体、及び有機ランキンサイクルなどのパワーサイクルとして使用することができる。HCFO-1335zd(E又はZ異性体のいずれか)は、消火剤、溶媒、冷媒、高温ヒートポンプ用の作動流体、及び有機ランキンサイクルなどのパワーサイクルとして有用であり得る。
【0024】
これらの化合物は両方ともE-異性体又はZ-異性体として存在し、各々のいくつかは、いずれかの異性体の任意のサンプル中に低レベルで存在し得る。本明細書に開示される方法は、約90%でE-HFO-1336ze及びE-HCFO-1335zdを選択的に製造する。
【0025】
HFO-1335zdは新規化合物である。したがって、一実施形態では、化合物CFCFCH=CHClを含む組成物が、本明細書に開示される。特定の実施形態では、CFCFCH=CHClは、E異性体、Z異性体、又はこれらの組み合わせである。
【0026】
本開示は、先に開示された方法よりも改善された変換性及び選択率を提供する2ステップ又は3ステップ法の経路によるHFO-1336ze及びHCFO-1335zdの製造方法を記載する。
【0027】
2ステップ法は、下記のように、フッ化ビニル(CH=CHF、VF)又は塩化ビニル(CH=CHCl、VC)のいずれかとCFC-113aの挿入反応と、それに続く触媒の存在下でのHFとの反応による気相フッ素化を含む。
【0028】
【化1】
【0029】
ステップ1の反応は、金属鉄触媒及びホスフィン配位子の存在下で、反応ゾーンにおいてCFCClをCH=CHXと接触させて、CFCClCHCHClXを製造することを含み、式中、X=F又はClである。このステップは、バッチ、半バッチ、半連続、又は連続モードで作動する液相反応器中で行うことができる。
【0030】
オレフィン挿入方法の一実施形態では、ハロアルカン反応物はCFCClであり、オレフィンはCH=CHFであり、ハロアルカン挿入生成物はCFCClCHCHClFである。
【0031】
オレフィン挿入方法の別の実施形態では、ハロアルカン反応物はCFCClであり、オレフィンはCH=CHClであり、ハロアルカン挿入生成物はCFCClCHCHClである。
【0032】
一実施形態では、挿入反応は、反応の規模に対して適切なサイズの任意の反応容器を含む反応ゾーンで実施することができる。一実施形態では、反応ゾーンは、耐腐食性の材料から構成された反応容器である。一実施形態では、これらの材料は、Hastelloy(登録商標)などのニッケル基合金、商標Inconel(登録商標)(以下、「Inconel(登録商標)」)でSpecial Metals Corp.から市販されているニッケル-クロム合金、若しくは商標Monel(登録商標)でSpecialMetalsCorp.(New Hartford,New York)から市販されているニッケル-銅合金などの合金、又はフルオロポリマーのライニングを有する容器を含む。別の実施形態では、反応容器は、ステンレス鋼、具体的にはオーステナイト型のもの、及び銅クラッド鋼を含む他の構造材料から作られてもよい。
【0033】
特定の実施形態では、触媒の金属鉄成分は、鉄成分の任意の供給源(供給源の組み合わせを含む)に由来することができ、鉄粉、鉄線、鉄スクリーン又は鉄の削り屑であってもよい。
【0034】
いくつかの実施形態では、ホスフィン配位子は、アルキルホスフィン又はアリールホスフィンであってもよく、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィンなどを含むが、これらに限定されない。一実施形態では、ホスフィン配位子はトリフェニルホスフィンを含む。別の実施形態では、ホスフィン配位子はトリフェニルホスフィンから本質的になる。別の実施形態では、ホスフィン配位子は、トリフェニルホスフィンからなる。
【0035】
一実施形態では、鉄及びホスフィン触媒系の各成分は、使用されるオレフィン系反応物のモルに対して特定の濃度を有する。したがって、いくつかの実施形態では、CFC-113aのモル数対VF又はVCのモル数の比は、約3:1~1:1である。別の実施形態では、CFC-113対VF又はVCのモル比は、約2.25:1~1:1である。別の実施形態では、CFC-113対VF又はVCのモル比は、約2:1~1:1である。
【0036】
一実施形態では、鉄のモル数対VF又はVCのモル数の比は、約0.01:1~0.1:1である。別の実施形態では、鉄対VF又はVCのモル比は、約0.03:1~0.06:1である。別の実施形態では、鉄対VF又はVCの比は、約0.07:1~0.1:1である。例えば、鉄粉対塩化ビニルのモル比は、オレフィン1モル当たり鉄0.03~0.06モルであり得るが、別の例では、そのモル比は塩化ビニル1モル当たり鉄0.07~0.1モルである。更に別の例では、鉄対塩化ビニルの比は0.0465:1であり得るが、更なる例では、鉄対塩化ビニルの比は0.093:1であり得る。
【0037】
本開示の一態様では、ホスフィン配位子のモル数は、反応系に存在するVF又はVCのモル数に対して測定することができる。例えば、一実施形態では、ホスフィン配位子対VF又はVCのモル比は、約0.01:1~0.04:1であり得る。別の実施形態では、ホスフィン配位子対VF又はVCのモル比は、約0.02:1~0.06:1であり得る。例えば、ホスフィン配位子対オレフィンのモル比は、0.023:1であり得るが、別の例では、配位子対オレフィンのモル比は、0.046:1であり得る。本発明の一態様では、トリフェニルホスフィン対塩化ビニルのモル比は0.023:1であり、別の例では、トリフェニルホスフィン対塩化ビニルのモル比は0.046:1である。
【0038】
一実施形態では、挿入反応は高温で行うことができる。別の実施形態では、挿入反応は、約50℃~250℃の温度で行うことができる。別の実施形態では、挿入反応は、約100℃~200℃の温度で行うことができる。別の実施形態では、反応は約120℃~180℃の温度で行うことができる。別の実施形態では、反応は約130℃~170℃の温度で行うことができる。
【0039】
オレフィン挿入反応における副生成物は、CFCCl(CHCHX)Clなどの、より高いVC又はVFが挿入されたテロマーであろう。
【0040】
オレフィン挿入方法の別の実施形態では、ハロアルカン反応物はCFCClであり、オレフィンはCH=CHCFであり、ハロアルカン挿入生成物はCFCClCHCHClCFである。
【0041】
オレフィン挿入方法の別の実施形態では、ハロアルカン反応物はCClであり、オレフィンはCH=CHであり、ハロアルカン挿入生成物はCClCHCHClである。
【0042】
オレフィン挿入方法の別の実施形態では、ハロアルカン反応物はCFCClであり、オレフィンはCH=CClであり、ハロアルカン挿入生成物はCFCClCHCClである。
【0043】
オレフィン挿入方法の別の実施形態では、ハロアルカン反応物はCFCClであり、オレフィンはCH=CFであり、ハロアルカン挿入生成物はCFCClCHCClFである。
【0044】
オレフィン挿入方法の別の実施形態では、ハロアルカン反応物はCFCClであり、オレフィンはCH=CHCHClであり、ハロアルカン挿入生成物はCFCClCHCHClCHClである。
【0045】
本方法のステップ2は、触媒の存在下で気相中でCFCClCHCHClXをHFと接触させてCFCFCH=CHF及びCFCFCH=CHClを製造することを含む。一実施形態では、触媒はクロム触媒である。
【0046】
本方法に有用な触媒としては、クロムオキシフルオリドなどのクロム系触媒が挙げられ、その触媒は担持されていなくてもよく、又は活性炭、グラファイト、フッ化黒鉛、又はフッ化アルミナなどの担体に担持されてもよい。クロム触媒は単独で使用されてもよく、又はニッケル、コバルト、マンガン、若しくは亜鉛塩から選択される共触媒の存在下で使用されてもよい。一実施形態では、クロム触媒は、高表面積酸化クロム、又はフッ化アルミナ上の30クロム/ニッケル(Cr/Ni/AlF)であり、その調製は、欧州特許第486,333号に報告されている。
【0047】
クロムオキシフルオリド触媒は、Cr(酸化クロム)をHF、CClF、又はヒドロフルオロカーボンで処理することによって製造することができる。本発明の一実施形態では、クロムオキシフルオリド触媒は、乾燥CrをCClF又はHFなどのフッ素化剤で処理することによって製造される。この処理は、Crを適切な容器(フッ素化反応を実施するために使用される反応器であり得る)に入れ、その後適切な温度(例えば、約200℃~450℃)で適切な時間(例えば、約15~300分)乾燥Cr上にHFを通すことによって達成できる。
【0048】
本発明の別の実施形態では、クロムオキシフルオリド触媒は、高温でCrをヒドロフルオロカーボンで処理することによって製造される。本発明の他の実施形態では、クロムオキシフルオリド触媒はその場で製造される。例えば、反応体HFC-E-1234zeは、反応器中でCrと一緒に加熱することによってクロムオキシフルオリド触媒の形成に使用することができる。Crは、Engelhard Corporation(101 Wood Avenue,P.O.Box 770,Iselin,NJ 08830-0770)から市販されている。
【0049】
Crは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,036,036号に開示されているように、重クロム酸アンモニウムの熱分解によって調製することもできる。
【0050】
Crは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,828,818号に開示されているように、酸化クロム(VI)とメタノールなどの還元溶媒との反応によっても調製することもできる。
【0051】
Crは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第3,258,500号に開示されているように、水中の酸化クロム(VI)をエタノールなどの適切な還元剤で還元することによっても調製することができる。
【0052】
クロム触媒は、典型的には、触媒を窒素流下である時間にわたって350~400℃に加熱した後、その触媒をHF及び窒素又は空気流下で更にある時間にわたって加熱する手順によって、使用前に活性化させることが好ましい。
【0053】
一実施形態では、気相フッ素化は、反応の規模に適した大きさの任意の反応容器を含む反応ゾーンで行うことができる。一実施形態では、反応ゾーンは、耐腐食性の材料から構成された反応容器である。一実施形態では、これらの材料は、Hastelloy(登録商標)などのニッケル基合金、商標Inconel(登録商標)(以下、「Inconel(登録商標)」)でSpecial Metals Corp.から市販されているニッケル-クロム合金、若しくは商標Monel(登録商標)でSpecial Metals Corp.(New Hartford,New York)から市販されているニッケル-銅合金などの合金、又はフルオロポリマーのライニングを有する容器を含む。別の実施形態では、反応容器は、ステンレス鋼、具体的にはオーステナイト型のもの、及び銅クラッド鋼を含む他の構造材料から作られてもよい。
【0054】
反応ゾーンに供給されるHF対有機物のモル比は、一実施形態では、約6:1~約25:1である。別の実施形態では、反応ゾーンに供給されるHF対有機物のモル比は、一実施形態において、約10:1~約20:1である。
【0055】
一実施形態では、フッ素化反応のための接触時間は、約2秒~約80秒であることができる。別の実施形態では、フッ素化反応のための接触時間は、約10秒~約60秒であることができる。別の実施形態では、フッ素化反応のための接触時間は、約20秒~約50秒であることができる。
【0056】
一実施形態では、フッ素化反応のための反応ゾーンのための適切な温度は約120℃~約200℃である。別の実施形態では、反応ゾーンの適切な温度は約150℃~約180℃である。
【0057】
一実施形態では、フッ素化反応のための反応ゾーン内の圧力は、約0~1MPa(約0~200psig)であることができる。別の実施形態では、反応ゾーンの圧力は、約0.2~1.2MPa(約30~180psig)であることができる。
【0058】
フッ素化反応については、反応器流出物は過剰のHF、HCl並びに反応生成物HFO-1336ze及びHCFO-1335zdを含有するであろう。出発物質のいくつか、CFCClCHCHClXも反応器流出物中にあると思われる。
【0059】
反応生成物は、分別蒸留によって単離することができる化合物の混合物である。過剰な酸は、必要に応じて蒸留又は洗浄により除去することができる。
【0060】
3ステップ法は、CFC-113aとフッ化ビニル(CH=CHF、VF)又は塩化ビニル(CH=CHCl、VC)のいずれかとの挿入反応を更に含むが、その後に、下記に示すように、フッ素化触媒の存在下でのHFとの反応による液相フッ素化、及び液相脱ハロゲン化水素化が続く。
【0061】
【化2】
【0062】
3ステップ法のステップ1は、本明細書において前述したのと同じCFC-113aのVF又はVCへの挿入である。
【0063】
3ステップ法のステップ2は、第2のフッ素化触媒の存在下で液相中でCFCClCHCHClX(式中、X=F又はCl)をHFと接触させて、CFCFCHCHF(HFC-347mcfとも呼ばれる)、CFCFCHCHFCl(HCFC-346mcfとも呼ばれる)、又はCFCFCHCHCl(HCFC-345mcfとも呼ばれる)の少なくとも1つを含む化合物の混合物を製造することを含む。このステップは、バッチ、半バッチ、半連続、又は連続モードで作動する液相反応器中で行うことができる。
【0064】
一実施形態では、液相フッ素化は、反応の規模に対して適切なサイズの任意の反応容器を含む反応ゾーンで行うことができる。一実施形態では、反応ゾーンは、耐腐食性の材料から構成された反応容器である。一実施形態では、これらの材料は、Hastelloy(登録商標)などのニッケル基合金、商標Inconel(登録商標)(以下、「Inconel(登録商標)」)でSpecial Metals Corp.から市販されているニッケル-クロム合金、若しくは商標Monel(登録商標)でSpecial Metals Corp.(New Hartford,New York)から市販されているニッケル-銅合金などの合金、又はフルオロポリマーのライニングを有する容器を含む。別の実施形態では、反応容器は、ステンレス鋼、具体的にはオーステナイト型のもの、及び銅クラッド鋼を含む他の構造材料から作られてもよい。
【0065】
反応ゾーンに供給されるHF対有機物のモル比は、一実施形態では、約6:1~約30:1である。別の実施形態では、反応ゾーンに供給されるHF対有機物のモル比は、一実施形態において、約10:1~約25:1である。
【0066】
第2のフッ素化触媒は、金属ハロゲン化物触媒などのルイス酸触媒を含み、ハロゲン化アンチモン、ハロゲン化スズ、ハロゲン化タリウム、ハロゲン化鉄、及びこれらの2つ以上の組み合わせを含む、液相フッ素化ステップにおいて有用な任意の触媒であることができ、それを用いることができる。特定の実施形態では、金属塩化物及び金属フルオリドが使用され、SbCl、SbCl、SbF、SnCl、TiCl、NiF、FeCl、及びこれらの2つ以上の組み合わせを含むが、これらに限定されない。SbFは低温で液体であることに留意されたい。
【0067】
液相フッ素化触媒の非限定的な例は、ハロゲン化アンチモン、ハロゲン化スズ、ハロゲン化タンタル、ハロゲン化ニオブ、ハロゲン化モリブデン、ハロゲン化鉄、フッ化クロムハロゲン化物、フッ素化クロム酸化物、又はこれらの組み合わせである。液相フッ素化触媒の特定の非限定的な例は、SbCl、SbCl、SbF、SnCl、TaCl、TiCl、NbCl、MoCl、FeCl、SbClのフッ素化された種、SbClのフッ素化された種、SnClのフッ素化された種、TaClのフッ素化された種、TiClのフッ素化された種、NbClのフッ素化された種、MoClのフッ素化された種、FeClのフッ素化された種、又はこれらの組み合わせである。
【0068】
これらの触媒は、それらが不活性化した場合には、当技術分野において公知の任意の手段によって容易に再生することができる。触媒を再生する1つの適切な方法は、触媒を通して塩素流を流すことを含む。例えば、毎時約0.9~約90g(毎時約0.002~約0.2ポンド)の塩素を、0.5キログラム毎(ポンド毎)の液相フッ素化触媒につき液相反応に添加することができる。これは、例えば、約1~約2時間、又は連続的に、約65℃~約100℃の温度で行うことができる。
【0069】
一実施形態では、液相フッ素化触媒(又は第2のフッ素化触媒)は、SbF、SnCl、TaCl、TiCl、NbCl、及びこれらのフッ素化された種からなる群から選択される。別の実施形態では、液相フッ素化触媒(又は第2のフッ素化触媒)は、SbF、SnCl、TaCl、TiCl及び/又はこれらのフッ素化された種からなる群から選択される。別の実施形態では、液相フッ素化触媒(又は第2のフッ素化触媒)はSbFである。
【0070】
反応ゾーン中のHFに対する触媒の量は、一実施形態では、約0.1モルパーセント~10モルパーセントであることができる。別の実施形態では、反応ゾーン中のHFに対する触媒の量は、一実施形態において、特に触媒がSbFである場合、約0.5モルパーセント~5モルパーセントであることができる。
【0071】
いくつかの実施形態では、SbFが触媒であるとき、液相フッ素化は約30℃~120℃の温度で行われてもよい。別の実施形態では、SbFが触媒であるとき、液相フッ素化は約40℃~110℃の温度で行われてもよい。別の実施形態では、SbFが触媒であるとき、液相フッ素化は約50℃~100℃の温度で行われてもよい。
【0072】
タンタル触媒を使用する場合、いくつかの実施形態では、液相フッ素化は、約75℃~200℃の温度で実行することができる。別の実施形態では、タンタル触媒を使用する場合、液相フッ素化は、約85℃~180℃の温度で実行することができる。別の実施形態では、タンタル触媒を使用する場合、液相フッ素化は、約100℃~160℃の温度で実行することができる。
【0073】
いくつかの実施形態では、チタン触媒を使用する場合、液相フッ素化は、約40℃~120℃の温度で実行することができる。別の実施形態では、チタン触媒を使用する場合、液相フッ素化は、約50℃~110℃の温度で実行することができる。別の実施形態では、チタン触媒を使用する場合、液体相フッ素化は、約60℃~100℃の温度で実行することができる。
【0074】
いくつかの実施形態では、ニオブ触媒を使用する場合、液相フッ素化は約90℃~250℃の温度で実行することができる。別の実施形態では、ニオブ触媒を使用する場合、液体相フッ素化は約100℃~220℃の温度で実行することができる。別の実施形態では、ニオブ触媒を使用する場合、液体相フッ素化は約120℃~200℃の温度で実行することができる。
【0075】
一実施形態では、出発材料がCFCClCHCHCl(HCFC-343mabとも呼ばれる)であるときの液相フッ素化反応は、CFCFCHCHCl(HCFC-345mcfとも呼ばれる)を生成することができ、CFCClFCHCHF(HCFC-345mbfとも呼ばれる)、CFCClFCHCHClF(HCFC-344mbfとも呼ばれる)、CFCClCHCHF(HFC-345mafとも呼ばれる)、又はCFCClCH=CHCl(HCFO-1333zdとも呼ばれる)の少なくとも1つを生成することもできる。
【0076】
別の実施形態では、出発材料がCFCClCHCHClF(HCFC-344mafとも呼ばれる)であるときの液相フッ素化反応は、CFCFCHCHF又はCFCFCHCHFClの少なくとも1つを生成することができ、CFCClFCHCHClF(HCFC-344mbfとも呼ばれる)、CFCClFCHCHF(HCFC-345mbfとも呼ばれる)、CFCClCHCHF(HFC-345mafとも呼ばれる)、及びCFCClCH=CHF(HCFO-1334mazとも呼ばれる)のうちの少なくとも1つを生成することもできる。反応のこれらの追加の生成物は、更なるフッ素化のために液相フッ素化反応ゾーンに再循環して戻すことができる。所望の生成物の単離は反応器流出物の分別蒸留によって達成することができる。次いで、所望の生成物を反応順序の次のステップに供給することができる。過剰の酸はこの時点で除去されるか、又は次のステップに持ち込まれてもよく、そこで塩基水溶液によって中和される。
【0077】
3ステップ法のステップ3は、相間移動触媒の存在下でCFCFCHCHF、CFCFCHCHFCl、又はCFCClCHCHClの少なくとも1つを塩基水溶液と接触させて、CFCFCH=CHF(HFO-1336ze)又はCFCFCH=CHCl(HCFO-1335zd)の少なくとも1つを製造することを含む。
【0078】
このステップ3の反応のように、CFCFCHCHFを塩基水溶液と接触させると、脱ハロゲン化水素によりCFCFCH=CHF(HFO-1336ze)が生成される。
【0079】
このステップ3の反応のように、CFCFCHCHFClを塩基水溶液と接触させると、脱ハロゲン化水素によりCFCFCH=CHF(HFO-1336ze)も生成される。
【0080】
このステップ3の反応のように、CFCClCHCHClを塩基水溶液と接触させると、脱ハロゲン化水素によりCFCFCH=CHCl(HCFO-1335zd)が生成される。
【0081】
このステップは、バッチ、半バッチ、半連続、又は連続モードで作動する液相反応器中で行うことができる。
【0082】
一実施形態では、脱ハロゲン化水素は、反応の規模に対して適切なサイズの任意の反応容器を含む反応ゾーンで実施することができる。一実施形態では、反応ゾーンは、耐腐食性の材料から構成された反応容器である。一実施形態では、これらの材料は、Hastelloy(登録商標)などのニッケル基合金、商標Inconel(登録商標)(以下、「Inconel(登録商標)」)でSpecial Metals Corp.から市販されているニッケル-クロム合金、若しくは商標Monel(登録商標)でSpecial Metals Corp.(New Hartford,New York)から市販されているニッケル-銅合金などの合金、又はフルオロポリマーのライニングを有する容器を含む。別の実施形態では、反応容器は、ステンレス鋼、具体的にはオーステナイト型のもの、及び銅クラッド鋼を含む他の構造材料から作られてもよい。
【0083】
一実施形態では、水性塩基溶液中の塩基は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、及びこれらの混合物の水酸化物、酸化物、炭酸塩、又はリン酸塩からなる群から選択される。一実施形態では、使用することができる塩基としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウムなど、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0084】
本明細書で使用するとき、水性塩基溶液は液体(溶液、分散液、エマルジョン、又は懸濁液などにかかわらず)であり、それは主に7を超えるpHを有する水性液体である。いくつかの実施形態では、塩基性水溶液は、8を超えるpHを有する。いくつかの実施形態では、塩基性水溶液は、10を超えるpHを有する。いくつかの実施形態では、塩基性水溶液は、10~13のpHを有する。いくつかの実施形態では、水性塩基溶液は、水と混和性又は非混和性であり得る少量の有機液体を含有する。いくつかの実施形態では、水性塩基溶液中の液体媒体は少なくとも90%の水である。一実施形態では、水は、水道水であり、他の実施形態では、水は脱イオン水又は蒸留水である。
【0085】
液相脱ハロゲン化水素反応ステップに必要とされる(水性塩基溶液中の)塩基の量は、ほぼ化学量論量、又は有機物1モルに対して塩基約1モルである。一実施形態では、塩基対有機物の比を1よりも大きくすることが(例えば、反応速度を上げるために)望ましい場合がある。いくつかの実施形態では、所望の生成物の更なる反応が起こり得るので、(塩基性水溶液中の)大過剰の塩基は避けられるべきである。したがって、いくつかの実施形態では、二次反応を最小限に抑えるために、化学量論量よりわずかに少ない量の塩基(塩基性水溶液中)を使用することが必要であり得る。したがって、一実施形態では、塩基(水性塩基溶液中)対有機物のモル比は、約0.75:1~約10:1である。別の実施形態では、塩基(水性塩基溶液中)対有機物のモル比は、約0.9:1~約5:1である。別の実施形態では、塩基対有機物のモル比は約1:1~約4:1である。別の実施形態では、塩基対有機物のモル比は約1:1~約1.2:1である。
【0086】
一実施形態では、固体塩基(例えば、KOH、NaOH、LiOH、又はこれらの混合物)を水に溶解するか、あるいは塩基の濃縮溶液(例えば、50重量%水酸化カリウム水溶液)を水で所望の濃度に希釈する。
【0087】
本明細書で使用するとき、相間移動触媒は、水相又は固相から有機相へのイオン性化合物の移動を促進する物質を意味することを意図する。相間移動触媒は、これらの類似していない不適合な成分の反応を促進する。様々な相間移動触媒は異なる方法で機能し得るが、それらの作用メカニズムは、相間移動触媒が脱ハロゲン化水素反応を促進する限り、本発明におけるそれらの有用性を決定するものではない。
【0088】
いくつかの実施形態では、相間移動触媒はイオン性又は中性であり得る。一実施形態では、相間移動触媒は、クラウンエーテル、オニウム塩、クリプタンド及びポリアルキレングリコール、並びにこれらの混合物及び誘導体からなる群から選択される。
【0089】
クラウンエーテルは、エーテル基がジメチレン結合によって結合している環状分子であり、化合物は、水酸化物のアルカリ金属イオンを「受容」又は保持することができ、それによって反応を促進することができると考えられる分子構造を形成する。いくつかの実施形態では、クラウンエーテル相間移動触媒を、塩基性水溶液に使用される特定の塩基と適合させることが好ましい。一実施形態では、18-クラウン-6を含むクラウンエーテルは、水酸化カリウム塩基性水溶液と組み合わせて使用される。15-クラウン-5は、水酸化ナトリウム塩基性水溶液と組み合わせて使用される。12-クラウン-4は、水酸化リチウム塩基性水溶液と組み合わせて使用される。上記のクラウンエーテルの誘導体、例えばジベンゾ-18-クラウン-6、ジシクロヘキサノ-18-クラウン-6、及びジベンゾ-24-クラウン-8、並びに12-クラウン-4も有用である。アルカリ金属化合物から製造された塩基性水溶液との組み合わせにおいて、特に有用な他のポリエーテルは、米国特許第4,560,759号に記載されており、その開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。クラウンエーテルに類似し、同じ目的に有用な他の化合物は、ヘキサメチル-[14]-4,11-ジエンNなどの他の種類のドナー原子、特にN又はSによる1つ以上の酸素原子の置換によって異なる化合物である。
【0090】
いくつかの実施形態では、オニウム塩は、本発明の方法において相間移動触媒として使用され得る第四級ホスホニウム塩及び第四級アンモニウム塩を含み、そのような化合物は、以下の式II及びIIIによって表すことができる。
(+)X’(-) (II)
(+)X’(-) (III)
式中、R、R、R及びRは、それぞれ、同じであっても異なっていてもよく、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基であり、X’は、F、Cl、Br、I、OH、CO、HCO、SO、HSO、HPO、HPO及びPOからなる群から選択される。これらの化合物の具体例としては、塩化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラメチルアンモニウム、塩化ベンジルトリエチルアンモニウム、塩化メチルトリオクチルアンモニウム、塩化テトラ-n-ブチルアンモニウム、臭化テトラ-n-ブチルアンモニウム、硫酸水素テトラ-n-ブチルアンモニウム、塩化テトラ-n-ブチルホスホニウム、臭化テトラフェニルホスホニウム、塩化テトラフェニルホスホニウム、臭化トリフェニルメチルホスホニウム、及び塩化トリフェニルメチルホスホニウムが挙げられる。一実施形態では、塩化ベンジルトリエチルアンモニウムは強塩基性条件下で使用される。このクラスの化合物の中の他の有用な化合物には、4-ジアルキルアミノピリジニウム塩、塩化テトラフェニルアルソニウム、塩化ビス[トリス(ジメチルアミノ)ホスフィン]イミニウム、及び塩化テトラトリス[トリス(ジメチルアミノ)ホスフィンイミノ]ホスホニウムを含む高温安定性(例えば、約200℃まで)を示すものが含まれ、後者の2つの化合物は、高温の濃水酸化ナトリウムの存在下で安定であるとも報告されているので、特に有用であり得る。
【0091】
いくつかの実施形態において、ポリアルキレングリコールエーテルは相間移動触媒として有用である。いくつかの実施形態では、ポリアルキレングリコールエーテルは、以下の式によって表すことができる:
O(RO) (IV)
式中、Rは2つ以上の炭素を含むアルキレン基であり、R及びRはそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基であり、tは少なくとも2の整数である。そのような化合物には、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ヘキサエチレングリコール、ジイソプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、及びテトラメチレングリコールなどのグリコール、並びにモノメチルなどのモノアルキルエーテル、このようなグリコールのモノエチル、モノプロピル、及びモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル及びペンタエチレングリコールジメチルエーテルなどのジアルキルエーテル、フェニルエーテル、ベンジルエーテル、並びにポリエチレングリコール(平均分子量約300)などのポリアルキレングリコール、ジメチルエーテルポリエチレングリコール(平均分子量約300)のジブチルエーテル、及びポリエチレングリコール(平均分子量約400)のジメチルエーテル、が含まれる。なかでも、R-及びR-が両方ともアルキル基、アリール基又はアラルキル基である化合物が好ましい。
【0092】
他の実施形態では、クリプタンドは、相間移動触媒として本発明において有用な別のクラスの化合物である。これらは、橋頭構造を、適切な間隔で配置されたドナー原子を含む鎖と結合することによって形成される3次元ポリ大環状キレート剤である。例えば、2.2.2-クリプタンド(Cryptand(商標)222及びKryptofix(商標)222の商品名で入手可能である、4,7,13,16,21,24-ヘキサオキサ-1,10-ジアザビシクロ-(8.8.8)ヘキサコサン)のように、窒素橋頭を(--OCHCH--)基の鎖と結合することから生じる2環式分子。架橋のドナー原子はすべてO、N、又はSであってもよく、又は化合物は架橋ストランドがそのようなドナー原子の組み合わせを含む混合ドナー大環状化合物であってもよい。
【0093】
1つの群内からの上記の相間移動触媒の組み合わせ及び混合物も、例えば、クラウンエーテル及びオニウムなどの2つ以上の群から、又は3つ以上の群、例えば、第四級ホスホニウム塩及び第四級アンモニウム塩、並びにクラウンエーテル及びポリアルキレングリコールエーテルから選択された2つ以上の相間移動触媒の組み合わせ又は混合物と同様に、有用であり得る。
【0094】
一実施形態では、使用される相間移動触媒の量は、存在する塩基の総量に基づいて約0.001~約10モルパーセントであろう。別の実施形態では、使用される相間移動触媒の量は、存在する塩基の総量に基づいて約0.01~約5モルパーセントであろう。更に別の実施形態では、使用される相間移動触媒の量は、存在する塩基の総量に基づいて約0.05~約5モルパーセントであろう。
【0095】
一実施形態では、液相脱ハロゲン化水素反応は、約0℃~120℃の温度で行われる。別の実施形態では、液相脱ハロゲン化水素反応は、約20℃~100℃の温度で行われる。別の実施形態では、液相脱ハロゲン化水素反応は、約30℃~80℃の温度で行われる。
【0096】
本発明で使用するとき、用語「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」、又はこれらの他の任意の変化形は、非排他的な包含を網羅することを意図する。例えば、要素のリストを含むプロセス、方法、物品、又は装置は、これらの要素に必ずしも限定されるものではなく、そのようなプロセス、方法、物品、又は装置に対して明示的に記載されていない、又はこれらに固有のものではない、他の要素も含む場合がある。
【0097】
また、「a」又は「an」の使用は、本明細書に記載される要素及び成分を説明するために用いられる。これは、単に便宜上、及び本発明の範囲の一般的な意味を与えるためのものである。この記載は、1つ又は少なくとも1つを含むものと解釈されるべきであり、単数形は、別の意味を有することが明白でない限り、複数形も含む。
【0098】
特に定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術的及び科学的用語は、本発明の属する当該技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同一の意味を有する。本明細書に記載されるものと類似又は同等の方法及び材料を、本発明の実施形態の実施又は試験において使用することができるが、好適な方法及び材料を以下に記載する。本明細書において言及する全ての刊行物、特許出願、特許、及び他の参照文献は、特定の一節を引用するものでない限り、その全文が参照により本明細書に組み込まれる。矛盾がある場合は、定義を含む本明細書が優先するものとする。更に、材料、方法、及び実施例は、単なる例証であり、限定することを意図するものではない。
【実施例
【0099】
本明細書に記述される概念について以下の実施例で更に説明するが、これは、特許請求の範囲に記載する本発明の範囲を限定するものではない。
【0100】
鉄粉、塩化ビニル、Aliquat(登録商標)336(第四級アンモニウム塩)、水酸化カリウム、及び水酸化ナトリウムはすべて、Sigma Aldrich(St.Louis,MO,USA)から入手可能である。CFC-113a(CFCCl)、フッ化ビニル、フッ化水素、SbCl、TaCl、及び3,3,3-トリフルオロプロペンは、Synquest Labs、Inc.(Alachua,FL,USA)から購入する。
【0101】
凡例
CFC-113a=CFCCl又は1,1,1-トリクロロ-2,2,2-トリフルオロエタン
HFO-1336ze=CFCFCH=CHF又は1,3,3,4,4,4-ヘキサフルオロ-1-ブテン
HCFO-1335zd=CFCFCH=CHCl又は1-クロロ-3,3,4,4,4-ペンタフルオロ-1-ブテン
【0102】
(実施例1)
CFCClCHCHClを製造するためのCFC-113aの挿入
塩化ビニル、CH=CHCl(22.6g、0.354モル)を、210mLのHastelloy(登録商標)反応器中で、CFC-113a(100g、0.53モル)、Fe粉末(0.62g、0.011モル)、及びトリフェニルホスフィン(1.41g、0.0054モル)の混合物に加えた。反応器を150℃まで5時間加熱した。混合物を容器に移し、GCにより分析した:CFC-113aの変換率は100%であり、生成物、CFCClCHCHClに対する選択率は90%であった。(b.p.71~92℃/63Torr;H NMR(CDCl3、400MHz)δ 6.14(t、J=5.5Hz、1H)、3.24(d、J=5.5Hz、2H);19F NMR(CDCl3、376MHz))δ-80.08(s、3F);MS(EI):212(M-Cl))
【0103】
(実施例2)
CFCClCHCHClFを製造するためのCFC-113aの挿入
フッ化ビニル(16.3g、0.354モル)を、210mLのHastelloy(登録商標)反応器中で、CFC-113a(100g、0.53モル)、Fe粉末(0.62g、0.011モル)、及びトリフェニルホスフィン(1.41g、0.0054モル)の混合物に加えた。反応器を150℃まで3時間加熱した。混合物を容器に移し、GCにより分析した:CFC-113aの変換率は100%であり、生成物、CFCClCHCHClFに対する選択率は87.4%であった。(H NMR(500MHz、CDCl):δ 6.61(ddd、1H、CHFCl、H-F=50.7Hz、H-H=7.4,2.3Hz)、3.26~3.17(m、1H、CH)、3.06~2.96(m、1H、CH);19F NMR(470MHz、CDCl):δ-80.04(d、3F、CFF-F=2.5Hz)、-129.16~-129.49(m、1F、CHFCl);13C NMR(126MHz、CDCl):δ 121.7(q、CFC-F=282Hz)、97.1(d、CHFCl、C-F=246Hz)、80.4(q、CClC-F=36.5Hz)、49.8(d、CHC-F=22.5Hz);MS(EI):196(M-HCl)、198(M-HCl)、200(M-HCl))
【0104】
(実施例3)
HFO-1336ze及びHCFO-1335zdを製造するための気相フッ素化
インコネル(登録商標)パイプ1.3センチメートル外径、30センチメートル長、0.0864センチメートル壁厚(0.5インチ外径、10インチ長、壁厚0.034インチ)に6ccクロム触媒を充填する。反応器を250~325℃の目標温度に加熱する。CFCClCHCHClをISCOポンプ(4.27mL/時)及び170℃に制御された気化器を介して供給する。HFは、シリンダからマスターフローコントローラを通して反応器にガスとして供給される。HFは、反応器内の触媒を介して有機物と反応する。HF/有機物モル比は10:1であり、接触時間は10秒である。反応は0kPa(0psig)で行われる。Agilent(登録商標)6890GC/5973MSを使用して反応器流出物をオンラインで分析すると、出発材料の95%変換率、HFO-1336zeに対する70%選択率、及びHCFO-1335zdに対する30%選択率が示される。
【0105】
(実施例4)
CFCClCHCHClの液相フッ素化
240mLのHastelloy(登録商標)CシェーカーチューブにSbF(8g、0.037モル)を入れ、ドライアイス/アセトンで20℃に冷却した。HF(48g、2.4モル)を添加し、シェーカーチューブを冷却して、3回排気した。CFCClCHCHCl(30g、0.12モル)を加え、シェーカーチューブをNで3回パージした。次いで、シェーカーチューブを所望の温度に加熱し(異なる温度については表1参照)、20時間振盪した。反応が完了したら、シェーカーチューブを室温に冷却し、100mLの氷冷水をシェーカーチューブに注入した。次いで、シェーカーチューブを60℃に加熱し、全ての気相をシリンダに蒸気移動させ、残りの液体をプラスチックジャーに注いだ。液体生成物をGCにより分析し、結果を表1に示した。
【0106】
【表1】
【0107】
【表2】
【0108】
(実施例5)
液相脱ハロゲン化水素によるHFO-1336ze及びHCFO-1335ze
NaOH水溶液(6mL、0.06モル)を、Aliquat(登録商標)336(0.27g)の存在下、室温でCFCFCHCHClF(10g、0.05モル)及び水(6.8mL)に添加する。添加後、反応温度を80℃に上げ、ガスクロマトグラフィを用いて反応をモニタする。2時間後、8gの生成物(E-1336zeに対する選択率90%及びZ-1336zeに対する選択率10%、収率98%)をドライアイストラップに集めた。
【0109】
(実施例6)
液相脱ハロゲン化水素によるHFO-1336ze及びHCFO-1335ze
KOH水溶液(6mL、0.06モル)を、Aliquat(登録商標)336(0.27g)の存在下、室温でCFCFCHCHF(9.2g、0.05モル)及び水(6.8mL)に添加する。添加後、反応温度を80℃に上げ、ガスクロマトグラフィを用いて反応をモニタする。2時間後、7.5gの生成物(E-1336zeに対する選択率90%及びZ-1336zeに対する選択率10%、収率92%)をドライアイストラップに集めた。
【0110】
(実施例7)
液相脱ハロゲン化水素によるHFO-1336ze及びHCFO-1335ze
NaOH水溶液(6mL、0.06モル)を、Aliquat(登録商標)336(0.27g)の存在下、室温でCFCFCHCHCl(10.8g、0.05モル)及び水(6.8mL)に添加する。添加後、反応温度を80℃に上げ、ガスクロマトグラフィを用いて反応をモニタする。1時間後、8.5gの生成物(E-1335zdに対する選択率90%及びZ-1335zdに対する選択率10%、収率94%)をドライアイストラップに集める。
【0111】
(実施例8)
塩化ビニル(7.4g、0.118モル)を、210mLのHastelloy(登録商標)反応器中で、CFC-113a(100g、0.53モル)、Fe粉末(0.62g、0.011モル)、及びトリフェニルホスフィン(1.41g、0.0054モル)の混合物に添加した。反応器を175℃まで5時間加熱した。混合物を容器に移し、GCにより分析して、得られた変換率及び選択率を決定した。変換率及び選択率の結果を表3に示す。
【0112】
(実施例9)
塩化ビニル(7.4g、0.118モル)を、210mLのHastelloy(登録商標)反応器中で、CFC-113a(100g、0.53モル)、Fe粉末(0.62g、0.011モル)、及びトリフェニルホスフィン(1.41g、0.0054モル)の混合物に添加した。反応器を150℃まで5時間加熱した。混合物を容器に移し、GCにより分析して、得られた変換率及び選択率を決定した。変換率及び選択率の結果を表3に示す。
【0113】
(実施例10)
塩化ビニル(14.8g、0.236モル)を、210mLのHastelloy(登録商標)反応器中で、CFC-113a(100g、0.53モル)、Fe粉末(0.62g、0.011モル)、及びトリフェニルホスフィン(1.41g、0.0054モル)の混合物に添加した。反応器を150℃まで5時間加熱した。混合物を容器に移し、GCにより分析して、得られた変換率及び選択率を決定した。変換率及び選択率の結果を表3に示す。
【0114】
(実施例11)
塩化ビニル(22.6g、0.354モル)を、210mLのHastelloy(登録商標)反応器中で、CFC-113a(100g、0.53モル)、Fe粉末(0.62g、0.011モル)、及びトリフェニルホスフィン(1.41g、0.0054モル)の混合物に添加した。反応器を150℃まで5時間加熱した。混合物を容器に移し、GCにより分析して、得られた変換率及び選択率を決定した。変換率及び選択率の結果を表3に示す。
【0115】
(実施例12)
鉄金属(0.62g、0.011モル)及びトリフェニルホスフィン(1.41g、0.0054モル)を圧力反応器に添加することができる。次いで、CCl(100g、0.53モル)を混合物に添加することができる。反応器を排気し、エチレン(22.6g、0.354モル)を充填することができる。次いで、混合物を約150℃まで5時間加熱することができる。5時間後、得られた混合物をガスクロマトグラフィ-質量分析法(GC-MS)によって分析することができる。
【0116】
(実施例13)
鉄金属(0.62g、0.011モル)及びトリフェニルホスフィン(1.41g、0.0054モル)を圧力反応器に添加することができる。次いで、CFC-113a(100g、0.53モル)を混合物に添加することができる。反応器を排気し、3,3,3-トリフルオロプロペン(34g、0.354モル)を充填することができる。次いで、混合物を約150℃まで5時間加熱することができる。5時間後、得られた混合物をGC-MSによって分析することができる。
【0117】
(実施例14)
鉄金属(0.62g、0.011モル)及びトリフェニルホスフィン(1.41g、0.0054モル)を圧力反応器に添加することができる。次いで、CFC-113a(100g、0.53モル)を混合物に添加することができる。反応器を排気し、フッ化ビニル(16g、0.354モル)を充填することができる。次いで、混合物を約150℃に5時間加熱することができる。5時間後、得られた混合物をGC-MSによって分析することができる。
【0118】
(実施例15)
鉄金属(0.62g、0.011モル)及びトリフェニルホスフィン(1.41g、0.0054モル)を圧力反応器に添加することができる。次いで、CFC-113a(100g、0.53モル)を混合物に添加することができる。反応器を排気し、フッ化ビニリデン(22.6g、0.354モル)を充填することができる。次いで、混合物を約150℃に5時間加熱することができる。5時間後、得られた混合物をGC-MSによって分析することができる。
【0119】
(実施例16)
鉄金属(0.62g、0.011モル)及びトリフェニルホスフィン(1.41g、0.0054モル)を圧力反応器に添加することができる。次いで、CFC-113a(100g、0.53モル)を混合物に添加することができる。反応器を排気し、塩化アリル(26.9g、0.354モル)を充填することができる。次いで、混合物を約150℃に5時間加熱することができる。5時間後、得られた混合物をGC-MSによって分析することができる。
【0120】
(実施例17)
鉄金属(0.62g、0.011モル)、FeCl(0.81g、0.005モル)、及びトリフェニルホスフィン(1.41g、0.0054モル)を圧力反応器に添加することができる。次いで、CFC-113a(100g、0.53モル)を混合物に添加することができる。反応器を排気し、3,3,3-トリフルオロプロペン(34g、0.354モル)を充填することができる。次いで、混合物を約150℃に5時間加熱することができる。5時間後、得られた混合物をGC-MSによって分析することができる。
【0121】
(実施例18)
鉄金属(0.62g、0.011モル)及びトリフェニルホスフィン(1.41g、0.0054モル)を圧力反応器に添加することができる。次いで、CFC-113a(100g、0.53モル)を混合物に添加することができる。反応器を排気し、塩化ビニリデン(34.3g、0.354モル)を充填することができる。次いで、混合物を約150℃に5時間加熱することができる。5時間後、得られた混合物をGC-MSによって分析することができる。
【0122】
(比較例1)
塩化ビニル(7.4g、0.118モル)を、210mLのHastelloy(登録商標)反応器中でCFC-113a(100g、0.53モル)、Fe粉末(0.62g、0.011モル)、及びリン酸トリブチル(1.43g、0.0054モル)の混合物に添加した。反応器を175℃まで5時間加熱した。混合物を容器に移し、GCにより分析して、得られた変換率及び選択率を決定した。変換率及び選択率の結果を表3に示す。
【0123】
(比較例2)
塩化ビニル(7.4g、0.118モル)を、210mのLHastelloy(登録商標)反応器中で、CFC-113a(100g、0.53モル)、FeCl(1.39g、0.011モル)、及びリン酸トリブチル(1.43g、0.0054モル)の混合物に添加した。反応器を175℃まで5時間加熱した。混合物を容器に移し、GCにより分析して、得られた変換率及び選択率を決定した。変換率及び選択率の結果を表3に示す。
【0124】
(比較例3)
塩化ビニル(6.1g、0.098モル)を、210mLのHastelloy(登録商標)反応器中で、CFC-113a(100g、0.53モル)、CuCl・2HO(2.2g、0.013モル)、Cu粉末(0.73g、0.0115モル)、及びCHCN(5.2g、0.127モル)の混合物に加えた。反応器を175℃まで5時間加熱した。混合物を容器に移し、GCにより分析して、得られた変換率及び選択率を決定した。変換率及び選択率の結果を表3に示す。
【0125】
以下の表3は、上記に示した実施例8~11及び比較例の例示的な結果の要約を提供する。この表は、限定を意味するものではなく、本開示の様々な態様の一例として役立つ。例示的な表に示されるように、いくつかの態様において、ハロアルカン及び/又はヒドロハロアルカンのオレフィン挿入のための鉄及びトリフェニルホスフィン触媒系は、1つ以上の態様に係る高い変換率及び選択率を提供する。いくつかの態様では、CFC-113aを用いて、上に概説した鉄及びトリフェニルホスフィン触媒系を用いて、オレフィン挿入によりHFC-343mafnを製造することができる。例えば、一態様では、CFC-113aと塩化ビニルを、鉄及びトリフェニルホスフィンの存在下で、150℃で5時間反応させ、そのような反応条件下で100%の変換率と95%の選択率が得られる。
【0126】
【表3】
【0127】
更なる態様によれば、113a:VCの比は2.25:1、Fe:VCの比は0.0465:1、トリフェニルホスフィン:VCの比は0.023:1である。鉄触媒式オレフィン挿入の本発明の例では、反応は、有機溶媒の不存在下で5モル%未満の金属触媒を使用して、比較例1~3よりも比較的短い期間で比較的低い温度で行われる。したがって、実施例8~11の鉄及びトリフェニルホスフィン条件の変換率及び選択率は、異なる金属と配位子との組み合わせを用いた比較例1~3の変換率及び選択率よりも比較的大きい。
【0128】
一般記述又は実施例において上述された作業の全てが必要なわけではなく、特定の作業の一部は必要でない場合があり、また、1つ以上の更なる作業を上述の作業に加えて実施してもよいことに注意されたい。また更に、作業が記載されている順序は、必ずしも実施される順序ではない。
【0129】
上述の明細書において、具体的な実施形態を参照して本発明の概念が記述されている。しかしながら、下記の特許請求の範囲に示されている本発明の範囲から逸脱することなく、様々な修正及び変更をなすことが可能であることが、当業者には理解されよう。したがって、本明細書及び図は、限定的な意味ではなく例示として見なされるものであり、そのような修正は全て、本発明の範囲内に含まれることが意図される。
【0130】
利益、その他の利点、及び問題の解決策が、具体的な実施形態に関連して上記に記述されている。しかしながら、これらの利益、利点、問題の解決策、及び、任意の利益、利点又は解決策を生じる場合がある又はより明らかにする場合があるようないかなる特徴も、特許請求の範囲の一部又は全てにおいて必須、必要、又は不可欠な特徴として解釈されるものではない。
【0131】
明確にするために、別個の実施形態の文脈において本明細書に記述されている特定の特徴は、単一の実施形態中で組み合わせて提供されてもよいことが理解されるべきである。逆に、簡潔にするために単一の実施形態の文脈で記載された様々な特徴は、別々に又は任意の下位組み合わせで提供することもできる。更に、範囲で記載した値に対する言及は、その範囲内の各値及び全ての値を含む。