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特許6995129水管パネル部及び流動層反応器の水管パネル部の製造方法
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  • 特許-水管パネル部及び流動層反応器の水管パネル部の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-16
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】水管パネル部及び流動層反応器の水管パネル部の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F22B 37/10 20060101AFI20220106BHJP
   F23C 10/00 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
F22B37/10 602C
F23C10/00
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019543821
(86)(22)【出願日】2018-02-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-03-26
(86)【国際出願番号】 FI2018050131
(87)【国際公開番号】W WO2018158497
(87)【国際公開日】2018-09-07
【審査請求日】2019-10-10
(31)【優先権主張番号】15/448,852
(32)【優先日】2017-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】506425251
【氏名又は名称】スミトモ エスエイチアイ エフダブリュー エナージア オサケ ユキチュア
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】マーフィー,ジョン
【審査官】吉澤 伸幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-141086(JP,A)
【文献】特開昭60-196502(JP,A)
【文献】特開2003-050003(JP,A)
【文献】特開2007-169733(JP,A)
【文献】特開2008-116150(JP,A)
【文献】特表2010-510074(JP,A)
【文献】登録実用新案第3201314(JP,U)
【文献】特開2012-037115(JP,A)
【文献】実開平06-046102(JP,U)
【文献】特開平09-072502(JP,A)
【文献】米国特許第05910290(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22B 37/10
F23C 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動層反応器の水管パネル部の製造方法であって、
(a)第1の端部と、第2の端部と、前記第1の端部と前記第2の端部との間の中央部とを備え、前記第1の端部及び前記第2の端部の各々は外面と略一定の外径OD1とを有し、前記中央部は外面と前記外径OD1よりも小さい略一定の外径OD2とを有する、複数の金属管を提供するステップと、
(b)Dが(OD1-OD2)/2であるところ、前記中央部の前記外面において、前記中央部の前記外面を覆うように、最大でDの略一定の厚さを有する、周方向に延びる金属コーティングをスパイラル溶接オーバーレイとして提供するステップと、
(c)前記複数の金属管を平面内に互いに並列に配置するステップと、
(d)隣り合って並列に配置された金属管の各対の間にフィンを連続的に溶接することによって前記水管パネル部を形成するステップと、
を備える、方法。
【請求項2】
前記複数の金属管の各々は、前記金属管の前記第1の端部と前記第2の端部との間にDに等しい一定の深さを有する周方向に延びる凹部を形成することで前記金属管の前記中央部を作製することによって形成され、前記凹部は前記外径OD2を有するように前記金属管の前記中央部の前記外面を囲む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数の金属管の各々は、前記外径OD2を有する第1の管部の両端を、第2の管部の一端及び第3の管部の一端にそれぞれ同軸で当接するように接続することによって形成され、前記第2及び第3の管部は前記外径OD1を有しており、それによって前記第1の管部は前記金属管の前記中央部を形成し、前記第2及び第3の管部はそれぞれ前記金属管の前記第1及び第2の端部を形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記周方向に延びる金属コーティングを提供するステップは、前記金属コーティングの少なくとも一端が、前記各金属管の隣接する端部の前記外面と滑らかに同一平面になるように行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記複数の金属管の各々及び前記金属管の間の前記フィンを、前記金属管の前記第1の端部の軸線方向から前記金属管の前記第1の端部の軸線方向と前記平面の法線との両方に垂直な軸を中心として屈曲方向へ曲げることによって、前記水管パネル部の中央区域に第1の角度の第1の屈曲を形成するステップと、前記屈曲方向から第2の方向へ、前記第1の角度とは反対且つ前記第1の角度と等しいか又はそれよりも大きい第2の角度の第2の屈曲を形成するステップと、を更に備える、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記金属管の各々の前記金属コーティングは、前記第1及び第2の屈曲にわたって延びる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記金属管の各々の前記金属コーティングは、前記第2の屈曲から前記金属管の前記第2の端部に向かうよりも前記第1の屈曲から前記金属管の前記第1の端部に向かう方が長い距離にわたって延びている、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
流動層反応器の水管パネル部であって、
第1の端部と、第2の端部と、前記第1の端部と前記第2の端部との間の中央部とを備え、前記第1の端部及び前記第2の端部の各々は、外面と、略一定の外径OD1とを有する、複数の金属管と、
前記複数の金属管の前記中央部に前記中央部の前記外面を囲むように形成された、周方向に延びる凹部であって、それによって前記中央部は、外面と、前記外径OD1よりも小さい略一定の外径OD2とを有する、凹部と、
Dが(OD1-OD2)/2であるところ、平面内に互いに並列に配置された前記複数の金属管の各々の前記凹部を覆うように、最大でDの一定の厚さを有し、スパイラル溶接オーバーレイとして提供される、周方向に延びる金属コーティングと、
並列に配置された隣り合う金属管の各対の間に、前記水管パネル部を形成するように連続的に溶接されたフィンと、
を備える、水管パネル部。
【請求項9】
前記周方向に延びる金属コーティングは、前記凹部の少なくとも一端において、前記各金属管の隣接する端部の前記外面と滑らかに同一平面になる、請求項8に記載の水管パネル部。
【請求項10】
前記水管パネル部は、前記複数の金属管の各々及び前記金属管の間の前記フィンが前記金属管の前記第1の端部の軸線方向から前記金属管の前記第1の端部の軸線方向と前記平面の法線との両方に垂直な軸を中心として屈曲方向へ曲げられた、前記水管パネル部の中央区域の第1の角度の第1の屈曲と、前記屈曲方向から第2の方向へ、前記第1の角度とは反対且つ前記第1の角度と等しいか又はそれよりも大きい第2の角度の第2の屈曲と、を備える、請求項8に記載の水管パネル部。
【請求項11】
前記金属管の各々の前記金属コーティングは、前記第1及び第2の屈曲にわたって延びる、請求項10に記載の水管パネル部。
【請求項12】
前記金属管の各々の前記金属コーティングは、前記第2の屈曲から前記金属管の前記第2の端部に向かうよりも前記第1の屈曲から前記金属管の前記第1の端部に向かう方が長い距離にわたって延びている、請求項11に記載の水管パネル部。
【請求項13】
前記金属管の各々の前記金属コーティングは、前記第1の屈曲から前記金属管の前記第1の端部に向かって、少なくとも1メートルの距離にわたって延びている、請求項10に記載の水管パネル部。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本発明は、水管パネル部と、流動層反応器の水管パネル部を製造する方法とに関する。本発明は特に、流動層反応器の水管パネル部の配置と、流動層反応器の水管パネル部の浸食保護の提供方法とに関する。本発明はとりわけ、循環流動層(CFB)反応器の水壁の耐火被覆された下部の上縁に隣接する、垂直水管パネル部において適用可能である。
【背景技術】
【0002】
[0002] 従来のメンブレン表面、すなわち水管パネルは、例えば流動層反応器の筐体を形成する壁を構築するように、金属片、いわゆるフィンによって接続された並列な金属管で作製されている。管の内部には、反応器内の高温の粒子及びガスから熱を抽出するために、高圧水が流れている。バイオマス燃焼ボイラ、石炭燃焼ボイラ、廃棄物固形燃料(RDF)ボイラなどの様々なボイラにおいて、水管及びメンブレン表面は、従来、炭素鋼、低合金鋼、又はフェライト鋼等の基材で作製されている。これらの材料は一般に、良好な強度及び構造的完全性と、伝熱に関わる高温高圧水及び高圧蒸気に対する優れた耐性とを提供する。
【0003】
[0003] 活発に移動するベッド粒子により、流動層反応器の水壁のいくつかの領域、特に下部には、浸食のおそれがある。浸食を最小化するために、水壁の下部、すなわち水管パネルは、従来、耐火物の層によって保護されている。耐火物層の上縁は通常、棚を形成し、その棚には反応器の水壁に沿って下向きに流れる粒子が連続的に当たる。これによって、棚から跳ね返った粒子が、耐火物の上方で、垂直水管パネルの浸食を引き起こす。この領域における浸食を更に最小限に抑えるべく、元々は米国特許第5,091,156号明細書に提案されているように、耐火物の上縁は、耐火物の内側又は火側の表面がその上方の垂直の管壁又は水壁と同一平面であるか若しくはそれよりも凹むように、水壁の外向きに屈曲された部分に配置されることが多い。
【0004】
[0004] たとえ耐火物層の上縁が水壁の外向きの屈曲部に配置されていても、場合によっては、耐火物層の上縁の上方で、垂直水壁の不連続部において作り出された乱流渦によって引き起こされる浸食のおそれがあることがわかっている。浸食は、特に、低灰分・高揮発性石炭などの燃料の伝統的なパラメータの外で流動層反応器、例えば循環流動層(CFB)ボイラを用いるとき、あるいは、当初の設計の燃料から別のより経済的な燃料へと切り替えるときに起こり得る。
【0005】
[0005] 欧州特許出願公開第1640660号明細書は、例えば、異なる耐浸食特性の少なくとも2つの区画を有する溶射金属のシールドで壁の内面を被覆することによって、耐火物層の上方での流動層反応器の壁の浸食を最小化することを教示している。
【0006】
[0006] 米国特許第8,518,496号明細書は、管の火側表面上に耐浸食・耐腐食コーティングを提供することによって流動層ボイラの耐火物棚との界面における管壁の垂直管の浸食及び腐食作用を遅らせる方法を開示している。このコーティングは、厚さが上に向かって滑らかに且つ徐々に減っていくもので、耐火物棚に近接して凹部を有している。
【0007】
[0007] 韓国登録特許第101342266号公報は、循環流動層ボイラの水壁の耐火被覆された下部の上縁の上方の、管壁の外向きの屈曲部の区域において、管壁の内面上に2つの異なるコーティング層を提供することを提案している。
【0008】
[0008] 欧州特許出願公開第1640660号明細書、米国特許第8,518,496号明細書、及び韓国登録特許第101342266号公報に記載された方法の問題は、耐浸食性コーティングの表面が、少なくともある程度、被覆領域の上方の剥き出しの管壁の外面よりも高いレベルにあるということである。このことは、反応器内を流れる材料の乱流渦を引き起こすとともに、被覆領域の上方での管壁の浸食を増大させる。
【0009】
[0009] 米国特許第5,910,920号明細書は、反応器の水壁の下部の内側に耐火物ライニングを有するとともに、その耐火物ライニングの上方の水壁の内面上に凹部が形成された、流動層反応器を開示している。凹部は少なくとも上端壁及び下端壁によって定義され、凹部にはコーティングが提供される。コーティングは、凹部の上端壁から耐火物ライニングまで延在している。コーティングの表面がコーティングの上方の管壁と同一平面であれば、被覆領域の上方の剥き出しの管壁の浸食の増大を回避することができる。米国特許第5,910,920号明細書に記載された方法の問題は、水壁の内面の凹部と、その凹部内に精度よく形成された表面を有するコーティングとを作製するのが困難であるということである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
[0010] 本発明の目的は、経済的且つ効率的な水管パネル部を提供すること、及び、流動層反応器の水管パネル部において、特に循環流動層反応器の水壁の耐火被覆された下部の上縁に隣接する垂直水管パネル部において浸食によって引き起こされる問題を最小化する、流動層反応器の水管パネル部の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
[0011] 一態様によれば、本発明は、流動層反応器の水管パネル部の製造方法を提供するものであり、この方法は、(a)第1の端部と、第2の端部と、第1の端部と第2の端部との間の中央部とを備え、第1の端部及び第2の端部の各々は外面と略一定の外径OD1とを有し、中央部は外面と外径OD1よりも小さい略一定の外径OD2とを有する、複数の金属管を提供するステップと、(b)Dが(OD1-OD2)/2であるところ、中央部の外面において、中央部の外面を覆うように、最大でDの略一定の厚さを有する、周方向に延びる金属コーティングを提供するステップと、(c)複数の金属管を平面内に互いに並列に配置するステップと、(d)隣り合って並列に配置された金属管の各対の間にフィンを連続的に溶接することによって水管パネル部を形成するステップと、を備える。
【0012】
[0012] 別の一態様によれば、本発明は、流動層反応器の水管パネル部を提供するものであり、この水管パネル部は、第1の端部と、第2の端部と、第1の端部と第2の端部との間の中央部とを備え、第1の端部及び第2の端部の各々は、外面と、略一定の外径OD1とを有する、複数の金属管と、複数の金属管の中央部に中央部の外面を囲むように形成された、周方向に延びる凹部であって、それによって中央部は、外面と、外径OD1よりも小さい略一定の外径OD2とを有する、凹部と、Dが(OD1-OD2)/2であるところ、平面内に互いに並列に配置された複数の金属管の各々の凹部を覆うように、最大でDの一定の厚さを有する、周方向に延びる金属コーティングと、並列に配置された隣り合う金属管の各対の間に、水管パネル部を形成するように連続的に溶接されたフィンと、を備えている。
【0013】
[0013] 本発明は、たとえ浸食保護が水管パネルの片面でのみ所望される場合であっても、水管パネルを形成する金属管に対して回転対称浸食防止処置を提供することによって、水管パネル部において優れた浸食保護が効率的且つ経済的に提供され得るという、発明者の驚くべき観察に基づいている。このように、優れた浸食保護を有する水管パネル部は、有利なことには、まず各管に、その金属管の中央部の外面を囲む適当な長さ及び深さの周方向に延びる凹部を配置し、次にその凹部を覆うように周方向に延びる金属コーティングを提供することによって用意された金属管で作製され得る。凹部の深さは、当然、必要な壁厚が水管のすべての部分において残るようなものである。
【0014】
[0014] そのような周方向に延びる凹部は、従来の方法によって、例えば高精度の旋盤によって、効率的に製造され得る。また、そのような凹部に、一定で精密に定義された厚さを有する、周方向に延びる金属コーティングが、効率的に提供され得る。その後、複数の金属管は平面内に互いに並列に配置され、隣り合って並列に配置された金属管の各対の間にフィンを連続的に溶接することによって、水管パネル部が形成される。
【0015】
[0015] 管の中央部に凹部を備えた金属管は、代替的には、外径OD2を有する第1の管部の両端を、第2の管部の一端及び第3の管部の一端にそれぞれ同軸で当接するように接続することによって提供されてもよい。この第2及び第3の管部は、外径OD1を有する。これによって、第1の管部が金属管の中央部を形成し、第2及び第3の管部がそれぞれ金属管の第1及び第2の端部を形成する。
【0016】
[0016] 本発明の例示的な一実施形態によれば、約3メートルの長さの金属管は、当初、63.5ミリメートルの外径OD1と、約9ミリメートルの壁厚WT1とを有している。その後、管の中央部に、例えば2.5メートルの長さ及び2ミリメートルの深さを有する凹部が作製される。これによって、各管の凹になった部分は、59.5ミリメートルの減じられた外径OD2と、7ミリメートルの減じられた又は残りの壁厚WT2とを有する。各管の両端には、依然として当初の直径及び壁厚を有する非凹端部があり、これらの端部の長さは、例えば、40センチメートル及び10センチメートルである。
【0017】
[0017] 凹部は、有利なことには、適当な金属材料、好適には適当な合金の、厚さ2ミリメートルのスパイラル溶接オーバーレイコーティングで満たされる。コーティングは、例えば米国特許出願公開第2012/0214017号明細書に記載された方法を用いることによって、所望の厚さと、特に滑らかな表面とを有するように作製され得る。これにより、管の外面上に一連の連続的なスパイラル溶接ビード部を盛ることによって、スパイラル溶接オーバーレイ又は360度の溶接オーバーレイが作製される。
【0018】
[0018] 溶接オーバーレイは、有利なことには、浸食を効率的に遅らせる高硬度の金属結合された材料から成り、同時に、十分な腐食保護を提供するように合金化もされる。一例として、溶接オーバーレイクラッディングは、少なくとも20%のCr及び低Fe含有量を有する合金材料で作製され得る。流動層反応器内の条件に応じて、様々なステンレス鋼及びニッケル基合金を含め、幅広い種類の他の耐腐食合金及び耐浸食/腐食合金を用いることもできる。
【0019】
[0019] 上記では、いかにして金属コーティングが凹部内に溶接オーバーレイとして提供されるのかを説明した。溶接オーバーレイを用いるのが好適な方法ではあるが、本発明は溶接オーバーレイの使用に限られるものではなく、適当な金属コーティングをもたらす任意の他の方法、例えばアーク溶射(arc based thermal spraying)が代替的に用いられてもよい。
【0020】
[0020] 上述の処置の後、金属管は互いに並列に平面内に配置され、隣り合って並列に配置された金属管の各対の間にフィンを連続的に溶接することによって、水管パネル部が形成される。水管パネルが特に過酷な条件において使用される場合には、米国特許第5,910,920号明細書において提案されているように、フィンの中央部が、有利なことにはフィンに形成された凹部に配置された、従来の片面金属コーティングによって被覆されてもよい。フィンに形成された凹部の金属コーティングは、有利なことには、金属溶射によって、あるいは所謂180度の溶接オーバーレイとして、すなわち水管の軸に並列な複数の直線溶接ビードで作製され得る。
【0021】
[0021] 当然、管及びその凹部の寸法、ならびにコーティング材料は、適用の必要に応じて変わり得る。本発明の本質的な特徴は、各管の凹部が一定の深さを有するということ、そして、各金属コーティングが、凹部を覆うように、最大で凹部の深さDの一定の厚さを有することである。好適には、金属コーティングは、コーティングが凹部の少なくとも一端において各金属管の隣接する外面と滑らかに同一平面になるように行われる。この構成によれば、金属管の各端部の被覆された金属管と剥き出しの金属管との間の界面における乱流渦及び浸食を最小化することが可能である。
【0022】
[0022] 米国特許第5,910,920号明細書に開示された従来技術は、本発明と類似の目的を有するものであるが、金属管に周方向に延びる凹部を形成すること、及び凹部に周方向に延びる金属コーティングを提供することを教示しておらず、又は示唆していない。本発明は、従来技術において示されるものよりもずっと効率的な浸食保護の作製手法を提供する。更に、本発明は、もっと高精度な凹部を作成すること、及び、コーティングと隣接する剥き出しの金属管との間の界面において乱流渦を引き起こす浸食を回避するために、より滑らかでより正確なコーティングを得ることを可能にする。
【0023】
[0023] 本発明による水管パネル部は、固体分離器の出口の近くなど、流動層反応器内の浸食を起こしやすい任意の箇所に有利に設置され得る。これによって、適当な寸法の水管パネル部が、新たな流動層反応器の水冷筐体を形成するように、又は既存の流動層反応器の保守点検時に交換部品として、流動層反応器の他のパネル部と関連して溶接される。
【0024】
[0024] 上述の水管パネル部は、流動層反応器の水壁の下部に、水壁の耐火被覆された下部の上縁に隣接して設置されるのに特に適している。例えば、米国特許第5,091,156号明細書に示されるように、耐火物コーティングの上縁が水壁の外向きの屈曲部に配置されている場合には、水管パネル部は、反応器内に設置される前に、適当な形状に曲げられる必要がある。水管パネルの屈曲は、有利なことには、複数の金属管の各々及び金属管の間のフィンを、金属管の第1の端部の方向から金属管の第1の端部と平面の法線との両方に垂直な軸を中心として屈曲方向へ曲げることによって、水管パネル部の中央区域に第1の角度の第1の屈曲を形成すること、ならびに、屈曲方向から第2の方向へ、第1の角度とは反対且つ第1の角度と同じ又はそれよりも大きい第2の角度の第2の屈曲を形成することによって作製される。第1及び第2の屈曲は、有利なことには、管に形成される金属コーティングが両方の屈曲にわたって延びるように作製される。
【0025】
[0025] 好適には、水管パネルの屈曲は、金属コーティングの一端、例えば金属コーティングの第1端からの距離が、金属コーティングの他端、例えば第2端からの距離よりも長くなるように、作製される。換言すれば、金属管の金属コーティングは、第2の屈曲から金属管の第2の端部に向かうよりも第1の屈曲から金属管の第1の端部に向かう方が長い距離にわたって延びている。好適には、金属管の金属コーティングは、第1の屈曲から金属管の第1の端部に向かって、少なくとも1メートルの距離にわたって、更に好適には少なくとも2メートルの距離にわたって延びている。
【0026】
[0026] 水管パネル部の屈曲を行った後で金属コーティングの特性を維持するために、金属コーティングは、所望であれば、水管パネル部が形成される前、又は所望の形状へのパネル部の屈曲の前若しくは後に、適当なプロセスによって熱処理されてもよい。
【0027】
[0027] 上述のように曲げられた水管パネル部は、垂直位置で流動層反応器の水壁の下部に、金属管の第1の端部が上向きになるように設置される。その後、水壁の下部には、パネルの第1の、すなわち高い方の屈曲のレベル以下まで延びるように、耐火物コーティングが適用される。凹部及び金属コーティングは、有利なことには、第2の屈曲の下から、第1の屈曲から金属管の第1の端部に向かって少なくとも1メートルの距離まで延びているので、金属管は、耐火物コーティングの上縁から少なくとも1メートル上向きに延びる区域において、浸食から保護される。
【0028】
[0028] 凹部の深さ及び金属コーティングの厚さは、有利なことには、コーティングの所望の強度及び信頼性が得られるように、その一方で水壁の所望の強度も維持されるように、決定される。合金化された金属の溶接オーバーレイの熱伝導率は典型的には卑金属の熱伝導率よりも低いので、金属コーティングの厚さは、流動層から水管内の水への所望の伝熱も達成されるように、決定される。
【0029】
[0029] 上記の簡単な説明ならびに本発明の更なる目的、特徴、及び利点は、添付の図面と併せて、以下の本発明の現在好適であるが例示的な実施形態の詳細な説明を参照することにより、より完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】[0030] 循環流動層ボイラの底部を概略的に示す。
図2】[0031] 本発明の一実施形態による金属コーティングを有する金属管を概略的に示す。
図3】[0032] 本発明の一実施形態による水管パネル部の平面図を概略的に示す。
図4】[0033] 図3に示す平面図に対応した、耐火物コーティングを備える例示的な水管パネル部の側面図を概略的に示す。
図5】[0034] 図3に示す平面図に対応した、耐火物コーティングを備える別の例示的な水管パネル部の側面図を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
[0035] 図1は、循環流動層ボイラの流動層反応器10の底部を概略的に示す。反応器10は、水管パネル14で形成された水壁12と、水壁12の内向きに傾斜した下部18上の耐火物コーティング16とを備えている。水管パネル14は、外向きの第1の屈曲20と、内向きの第2の屈曲22とを備えており、第2の屈曲22の角度は第1の屈曲20の角度よりも大きい。耐火物コーティング16の上縁24は屈曲20,22の領域に配置されており、したがって上縁24は、水壁12の耐火被覆された下部の上方で、垂直水管パネル14の火側表面より凹んでいる。
【0032】
[0036] 流動層反応器10は、従来のウインドボックス26と、流体反応器10内で燃料及び他のベッド粒子を流動化させるための流動化ガス、通常は空気を導入するための流動化ノズル28とを備えている。流動化ガス及びベッド粒子は反応器10内を主に上向きに流れるが、特に水壁12の付近には、ベッド粒子30の下向きの流れも存在する。屈曲20,22の領域に耐火物コーティング16の上縁を有する配置は、耐火コーティング16の上縁24の上方の区域32における水管パネル14の浸食を最小限に抑える。しかしながら、特に浸食性のある燃料又は他の床材料を使用する場合、この区域には、水壁12の不連続性によって引き起こされる、下向きに流れるベッド粒子の乱流渦34に起因して、依然として水管パネル14の浸食のおそれがある。そこで、本発明は、水管パネル14の水管上に金属コーティング36を作製する、特に効率的な方法を開示する。
【0033】
[0037] 図2は、長さL1の金属管40を概略的に示しており、この金属管40は、第1の端部42と第2の端部44との間の中央部に、金属管40の外面上に形成された、深さD及び長さL2の、周方向に延びる凹部46を有する。金属チューブ40は、当初は外径OD1及び壁厚WT1を有している。凹部46が形成されると、管40の中央部では、外径OD1が値OD2まで、壁厚が値WT2まで縮小される。図2に示される管40の寸法比は、実用における通常の寸法比とは明らかに異なっている。現実では、管40は通常はずっと長く、管40の壁厚及び凹部46の深さは、管40の外径OD1と比較して、図2に示されるものよりもずっと小さい。
【0034】
[0038] 本発明によれば、凹部46内に、周方向に延びる金属コーティング48が提供される。凹部46は比較的滑らかな外面と一定の厚さとを有しており、金属コーティング48の厚さは、周方向に延びる凹部46の深さDと同一である。金属コーティング48の長さは、周方向に延びる凹部46の長さL2と対応して同一である。これによって金属コーティング48は凹部46を覆い又は満たし、こうして形成された金属コーティングされた部分の外径は、金属管40の当初の外径OD1と同一となる。
【0035】
[0039] 金属コーティング48の目的は、流動層反応器10内に設置されたときに有害な乱流渦を引き起こすことなく金属管40を浸食から保護することであるから、金属コーティング48の表面は、好適には凹部46の少なくとも一端において、金属管40の隣接する端部の外面と滑らかに同一平面になっている。すべての表面性状を除去するために、この表面は、有利なことには、上記の管表面と同一平面になるように軽く研削又は研磨されてもよい。所望の滑らかさを達成するために、金属コーティング48は、有利なことには適当なスパイラル溶接オーバーレイ工法によって提供される。
【0036】
[0040] 図3は、図2に示されるタイプの複数の金属管40,40′で形成された平面状の水管パネル部50の概略的な平面図である。隣り合う金属管40,40′の各対の間には、従来のフィン52が溶接されて、水管パネル部50を形成している。図2の特徴について用いられた参照番号は、図3から5の同一の又は対応する特徴についても用いられる。
【0037】
[0041] 金属管40,40′の各々の第1の端部42と第2の端部44との間には、周方向に延びる金属コーティング48が配置されている。上述したように、金属コーティング48は、周方向に延びる凹部(図3には図示しない)内に、その凹部を満たす又は覆うように作製される。所望の場合には、フィン52の中央部にも片面の金属コーティング48が提供されてもよい。
【0038】
[0042] 図3の水管パネル部が、水壁12の耐火被覆された下部の上縁24の上方の領域における浸食を最小化するために、流動層反応器10の水壁12に設置される場合、耐火物コーティング16の上縁24は水壁12の外向きの屈曲部に配置されるべきであり、水管パネル部50には適当な屈曲が形成されなければならない。
【0039】
[0043] 図4は、図3に示した平面図に対応する例示的な水管パネル部50の側面図を概略的に示す。金属管40の中央部には、管40の周りに周方向に設けられた金属コーティング48が見られる。金属コーティング48は、有利なことには、スパイラル溶接オーバーレイとして作製される。金属コーティング48の表面は、金属管40の上端部42及び下端部44の外面と同一平面である。管40の第1の端部42及び第2の端部44の側部には、隣り合う管40,40′の対の間に溶接されたフィン52が概略的に示されている。
【0040】
[0044] 金属コーティングされた管部48の下部には、水管パネル部50の側に向かう第1の屈曲54があり、これは、流動層反応器10内に設置されたとき、パネル部の外側になる。第1の屈曲54より更に先には第2の屈曲56があり、これは、パネル部50が流動層反応器10内に設置されたとき、下側の屈曲になる。図4に見られるように、第2の屈曲56は、反応器10への内向きの先細になった水壁12を形成するように、第1の屈曲54よりも大きな角度を成している。
【0041】
[0045] パネル部50が流動層反応器10内に設置されたときに下端部となる第2の端部44に隣接して見られるのは、耐火物コーティング58である。当業者には周知であるように、耐火物コーティング58は、従来、パネル部50が流動層反応器10内に設置されるときにのみ、パネル部50の火側表面に適用されている。耐火物コーティング58は、従来、第2の屈曲56の区域に上縁60を有する。
【0042】
[0046] 水壁12の方向の不連続性は耐火物コーティング58の上縁60の上方で乱流渦を誘発する傾向があるが、金属管40の金属コーティング48は、図4に示される区域Bにおいて、管40に効率的な浸食保護を提供する。有利なことには、金属コーティング48は、流動層反応器10内に設置されたとき、第1の屈曲から、好適には少なくとも1メートルの距離、更に好適には少なくとも2メートルの距離、明らかに上向きに延びている。また、有利なことには、金属コーティング48は、第2の屈曲56からいくらかの距離にわたって、少なくとも耐火物コーティング58によって覆われるであろう区域まで、対応して下向きにも延びている。
【0043】
[0047] 本発明によれば、耐火物コーティング58は、実際に浸食保護が必要とされるのが水管パネル部50の火側のみである場合でも、管40の周りに周方向に形成される。多くの場合、浸食保護は、金属管40上にのみあれば十分である。必要であれば、浸食保護は、隣り合う金属管40の間に溶接されたフィン52にも提供されてもよい。その場合、フィン52の浸食保護は、有利なことには、フィン52の所望の部分に形成された片側凹部に従来の片側金属コーティングを提供することによって作製される。フィン52の浸食保護は図4には図示されていない。
【0044】
[0048] 図5は、図3に示す平面図に対応した、別の例示的な水管パネル部50の側面図を概略的に示す。図5の水管パネル部50は、第2の屈曲56によって形成される角度が第1の屈曲54によって形成される角度と同じ大きさである点においてのみ、図4に示されるものと相違している。これにより、第2の端部44は、第1の端部42と並列になるが、パネル部が流動層反応器10内に設置されたときに、流動層反応器10からある程度外向きにシフトされる。場合によっては、第2の屈曲56よりも低いレベルに、反応器10の下部への内向きに先細になった水壁12を形成するように、第3の屈曲(図5には図示されていない)が存在する。
【0045】
[0049] 本明細書においては、本発明を、現時点において最も好適な実施形態であると考えられるものに関して例示的に説明してきたが、本発明は開示される実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲に定義される本発明の範囲内に含まれる特徴及びいくつかの他の適用の様々な組み合わせ又は変形をカバーすることが意図されていることが理解されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5