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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-16
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】止水装置および止水装置の設置方法
(51)【国際特許分類】
   E06B 7/22 20060101AFI20220106BHJP
   E06B 5/00 20060101ALI20220106BHJP
   E04H 9/14 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
E06B7/22 F
E06B5/00 Z
E04H9/14 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020000521
(22)【出願日】2020-01-06
(62)【分割の表示】P 2015119048の分割
【原出願日】2015-06-12
(65)【公開番号】P2020045763
(43)【公開日】2020-03-26
【審査請求日】2020-01-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000239714
【氏名又は名称】文化シヤッター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】及川 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】大井 勝
(72)【発明者】
【氏名】中島 厚二
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-190129(JP,A)
【文献】実開昭52-095241(JP,U)
【文献】独国実用新案第202005014669(DE,U1)
【文献】米国特許第05581946(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 7/22
E06B 5/00
E04H 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に沿う立位状態で、構造物の屋外側と屋内側とを連通する開口部を止水する止水パネルと、
前記止水パネルと、前記開口部を形成する幅方向において離間して設置される止水対象である一対の枠部材と、の間に介在することで止水する一対の第1止水部材と、
前記止水パネルと、前記止水パネルを設置する止水対象である設置面と、の間に介在することで止水する第2止水部材と、
前記止水パネルを前記立位状態に保持することで、一対の前記枠部材に対する前記止水パネルの位置関係を保持し、一対の前記第1止水部材と一対の前記枠部材との密接した状態を維持し、前記第2止水部材と前記設置面との密接した状態を維持する一対の保持機構と、
一対の前記第1止水部材の前記幅方向の位置を調整し、一対の前記第1止水部材を一対の前記枠部材に対向させて一対の前記枠部材に密着させる一対の位置決め機構と、
を備え、
前記第1止水部材と前記第2止水部材との少なくとも一方は、
前記止水パネルの挿入空間部に挿入され、保持される挿入部と、
前記挿入部から前記止水パネルの外部に突出し、かつ止水時に前記止水対象および前記挿入空間部を形成する部材に接触する突出部と、
を備え、
前記挿入部および前記突出部は、弾性部材であり、
前記突出部における前記止水対象と対向する面に、前記止水対象側に突出する挿入突起部が形成され、
前記挿入突起部は、前記止水パネルの厚み方向での前記面の中央部に一つのみ形成されており、
前記挿入突起部が前記止水対象と接触して弾性圧縮された場合に、前記挿入突起部の一部が凸部となって前記止水対象に設けられた凹部に入る、ことを特徴とする止水装置。
【請求項2】
請求項1に記載の止水装置であって、
前記挿入空間部は、前記第1止水部材と前記第2止水部材とのうち当該挿入空間部に挿入される方の挿入方向と反対方向に延在し且つ互いに前記厚み方向に離間した一対の壁部材から構成され、
前記突出部は、前記止水対象から離間した状態で、前記一対の壁部材のそれぞれの先端部に対して前記厚み方向の一方側および前記厚み方向の他方側に突出する、止水装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の止水装置であって、
一対の固定機構を備え、
一対の前記枠部材は、前記幅方向で互いに互いに対向する一対の対向面を有し、
一対の前記固定機構は、前記幅方向において対向する前記対向面にそれぞれ接触するとともに、前記幅方向外側にそれぞれ押圧されることで、一対の前記枠部材のそれぞれに固定される、止水装置。
【請求項4】
請求項1~のうちいずれか一つに記載の止水装置であって、
前記保持機構は、
前記止水パネルの上面に取り付けられた支持部材と、
前記支持部材に支持され、前記止水パネルが前記枠部材に対して屋内外方向のうち屋外側に相対移動することを規制するフックと、
を備える、止水装置。
【請求項5】
請求項1~のうちいずれか一つに記載の止水装置であって、
一対の前記枠部材は、前記幅方向で互いに対向する一対の対向面を有し、
前記位置決め機構は、
前記止水パネルに取り付けられた本体部と、
前記本体部に支持され、前記対向面と前記幅方向において対向するように配置された位置決め部材と、
前記位置決め部材を前記止水パネルに対して前記幅方向において移動自在とし、かつ前記止水パネルに対して前記幅方向における位置を保持する移動保持機構と、
を備える、止水装置。
【請求項6】
上下方向に沿う立位状態で、構造物の屋外側と屋内側とを連通する開口部を止水する止水パネルと、
前記止水パネルと、前記開口部を形成する幅方向において離間して設置される止水対象である一対の枠部材と、の間に介在することで止水する一対の第1止水部材と、
前記止水パネルと、前記止水パネルを設置する止水対象である設置面と、の間に介在することで止水する第2止水部材と、
前記止水パネルを前記立位状態に保持することで、一対の前記枠部材に対する前記止水パネルの位置関係を保持し、一対の前記第1止水部材と一対の前記枠部材との密接した状態を維持し、前記第2止水部材と前記設置面との密接した状態を維持する一対の保持機構と、
一対の前記第1止水部材の前記幅方向の位置を調整し、一対の前記第1止水部材を一対の前記枠部材に対向させて一対の前記枠部材に密着させる一対の位置決め機構と、
を備え、
前記第1止水部材と前記第2止水部材との少なくとも一方は、
前記止水パネルの挿入空間部に挿入され、保持される挿入部と、
前記挿入部から前記止水パネルの外部に突出し、かつ止水時に前記止水対象および前記挿入空間部を形成する部材に接触する突出部と、
を備え、
前記挿入部および前記突出部は、弾性部材であり、
前記突出部における前記止水対象と対向する面に、前記止水対象側に突出する挿入突起部が形成され、
前記挿入突起部は、前記止水パネルの厚み方向での前記面の中央部に一つのみ形成されている止水装置、の設置方法であって、
一対の前記第1止水部材が一対の前記枠部材に密着するように、一対の前記第1止水部材の下方側端部を一対の前記枠部材に押し当てながら、前記第2止水部材を前記設置面に置く工程と、
一対の前記位置決め機構により一対の前記第1止水部材の前記幅方向の位置を調整し、一対の前記第1止水部材を一対の前記枠部材に対向させて一対の前記枠部材に密接させる工程と、
前記保持機構により前記止水パネルを前記立位状態に保持する工程と、
を含
前記挿入突起部が前記止水対象と接触して弾性圧縮された場合に、前記挿入突起部の一部が凸部となって前記止水対象に設けられた凹部に入る、止水装置の設置方法。
【請求項7】
請求項に記載の止水装置の設置方法であって、
前記挿入空間部は、前記第1止水部材と前記第2止水部材とのうち当該挿入空間部に挿入される方の挿入方向と反対方向に延在し且つ互いに前記厚み方向に離間した一対の壁部材から構成され、
前記突出部は、前記止水対象から離間した状態で、前記一対の壁部材のそれぞれの先端部に対して前記厚み方向の一方側および前記厚み方向の他方側に突出する、止水装置の設置方法。
【請求項8】
請求項6または7に記載の止水装置の設置方法であって、
前記止水装置は、一対の固定機構を備え、
一対の前記枠部材は、前記幅方向で互いに互いに対向する一対の対向面を有し、
一対の前記固定機構は、前記幅方向において対向する前記対向面にそれぞれ接触するとともに、前記幅方向外側にそれぞれ押圧されることで、一対の前記枠部材のそれぞれに固定される、止水装置の設置方法。
【請求項9】
請求項のうちいずれか一つに記載の止水装置の設置方法であって、
前記保持機構は、
前記止水パネルの上面に取り付けられた支持部材と、
前記支持部材に支持され、前記止水パネルが前記枠部材に対して屋内外方向のうち屋外側に相対移動することを規制するフックと、
を備える、止水装置の設置方法。
【請求項10】
請求項のうちいずれか一つに記載の止水装置の設置方法であって、
一対の前記枠部材は、前記幅方向で互いに対向する一対の対向面を有し、
前記位置決め機構は、
前記止水パネルに取り付けられた本体部と、
前記本体部に支持され、前記対向面と前記幅方向において対向するように配置された位置決め部材と、
前記位置決め部材を前記止水パネルに対して前記幅方向において移動自在とし、かつ前記止水パネルに対して前記幅方向における位置を保持する移動保持機構と、
を備える、止水装置の設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、止水部材を備える止水装置および止水装置の設置方法に関し、開口部を止水する止水パネルに用いられる止水部材を備える止水装置および止水装置の設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、豪雨、津波、河川の氾濫などの水害時に、外部である屋外からの氾濫水などの水は、構造物の開口部から内部である構造物内(屋内)に浸入するため、構造物の開口部に止水パネルが設けられている。止水パネルは、例えば、開口部を形成する幅方向において離間して設置される一対の枠部材の間に設置され、止水パネルと一対の枠部材および止水パネルと設置面との間に止水部材としてゴムなどが介在され、開口部の止水を行うものである(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4264300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、一対の枠部材あるいは設置面の止水対象は、止水部材と対向する面が平坦の場合に限られず、目地や溝などの凹部が形成されたものがある。凹部が形成されている止水対象の場合は、止水部材の止水対象と対向する面が平坦であると、止水対象のうち、平坦な部分に対する密着性は高いが、凹部に対する密着性が低い。止水部材の止水対象に対する密着性の低下は、止水性能の低下となる。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、止水対象に凹部があっても、止水性能の低下を抑制することができる止水部材を備える止水装置および止水装置の設置方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る止水装置は、上下方向に沿う立位状態で、構造物の屋外側と屋内側とを連通する開口部を止水する止水パネルと、前記止水パネルと、前記開口部を形成する幅方向において離間して設置される止水対象である一対の枠部材と、の間に介在することで止水する一対の第1止水部材と、前記止水パネルと、前記止水パネルを設置する止水対象である設置面と、の間に介在することで止水する第2止水部材と、前記止水パネルを前記立位状態に保持することで、一対の前記枠部材に対する前記止水パネルの位置関係を保持し、一対の前記第1止水部材と一対の前記枠部材との密接した状態を維持し、前記第2止水部材と前記設置面との密接した状態を維持する一対の保持機構と、一対の前記第1止水部材の前記幅方向の位置を調整し、一対の前記第1止水部材を一対の前記枠部材に対向させて一対の前記枠部材に密着させる一対の位置決め機構と、を備え、前記第1止水部材と前記第2止水部材との少なくとも一方は、前記止水パネルの挿入空間部に挿入され、保持される挿入部と、前記挿入部から前記止水パネルの外部に突出し、かつ止水時に前記止水対象および前記挿入空間部を形成する部材に接触する突出部と、を備え、前記挿入部および前記突出部は、弾性部材であり、前記突出部における前記止水対象と対向する面に、前記止水対象側に突出する挿入突起部が形成され、前記挿入突起部は、前記止水パネルの厚み方向での前記面の中央部に一つのみ形成されており、前記挿入突起部が前記止水対象と接触して弾性圧縮された場合に、前記挿入突起部の一部が凸部となって前記止水対象に設けられた凹部に入る、ことを特徴とする。
また、本発明に係る上記止水装置、の設置方法は、一対の前記第1止水部材が一対の前記枠部材に密着するように、一対の前記第1止水部材の下方側端部を一対の前記枠部材に押し当てながら、前記第2止水部材を前記設置面に置く工程と、一対の前記位置決め機構により一対の前記第1止水部材の前記幅方向の位置を調整し、一対の前記第1止水部材を一対の前記枠部材に対向させて一対の前記枠部材に密接させる工程と、前記保持機構により前記止水パネルを前記立位状態に保持する工程と、を含み、前記挿入突起部が前記止水対象と接触して弾性圧縮された場合に、前記挿入突起部の一部が凸部となって前記止水対象に設けられた凹部に入る
【0007】
この発明によれば、突出部は、止水対象と対向する面に、挿入突起部が形成されているため、止水対象に凹部が形成されていても、凹部に挿入突起部が侵入することで、凹部を挿入突起部により埋めることができ、凹部に対する密着性の低下を抑制して、止水性能の低下を抑制することができる。
【0008】
また、上記止水装置において、例えば、前記挿入空間部は、前記第1止水部材と前記第2止水部材とのうち当該挿入空間部に挿入される方の挿入方向と反対方向に延在し且つ互いに前記厚み方向に離間した一対の壁部材から構成され、前記突出部は、前記止水対象から離間した状態で、前記一対の壁部材のそれぞれの先端部に対して前記厚み方向の一方側および前記厚み方向の他方側に突出する。
【0010】
た、上記止水装置は、例えば、一対の固定機構を備え、一対の前記枠部材は、前記幅方向で互いに互いに対向する一対の対向面を有し、一対の前記固定機構は、前記幅方向において対向する前記対向面にそれぞれ接触するとともに、前記幅方向外側にそれぞれ押圧されることで、一対の前記枠部材のそれぞれに固定される。
また、上記止水装置において、例えば、前記保持機構は、前記止水パネルの上面に取り付けられた支持部材と、前記支持部材に支持され、前記止水パネルが前記枠部材に対して屋内外方向のうち屋外側に相対移動することを規制するフックと、を備える。
また、上記止水装置において、例えば、一対の前記枠部材は、前記幅方向で互いに対向する一対の対向面を有し、前記位置決め機構は、前記止水パネルに取り付けられた本体部と、前記本体部に支持され、前記対向面と前記幅方向において対向するように配置された位置決め部材と、前記位置決め部材を前記止水パネルに対して前記幅方向において移動自在とし、かつ前記止水パネルに対して前記幅方向における位置を保持する移動保持機構と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る止水部材では、止水部材の止水パネルに対する保持力と、止水性能の両立を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施形態に係る止水部材を用いた止水装置の概略構成例を示す正面図である。
図2図2は、実施形態に係る止水部材を用いた止水装置の一部平面図である。
図3図3は、実施形態に係る止水部材を用いた止水装置の一部背面図である。
図4図4は、止水パネルのパネル材の断面図である。
図5図5は、止水パネルの側面部材の平面図である。
図6図6は、実施形態に係る第1止水部材を延在方向から見た図(非挿入状態)である。
図7図7は、実施形態に係る第2止水部材を延在方向から見た図(非挿入状態)である。
図8図8は、位置決め機構を示す平面図である。
図9図9は、実施形態に係る止水部材を用いた止水装置(立位状態)の動作説明図である。
図10図10は、第2止水部材の設置面に対する接地状態を示す図である。
図11図11は、実施形態に係る止水部材を用いた止水装置(傾斜状態)の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明にかかる止水装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0015】
〔実施形態〕
まず、実施形態に係る止水パネルについて説明する。図1は、実施形態に係る止水部材を用いた止水装置の概略構成例を示す正面図である。図2は、実施形態に係る止水部材を用いた止水装置の一部平面図である。図3は、実施形態に係る止水部材を用いた止水装置の一部背面図である。図4は、止水パネルのパネル材の断面図である。図5は、止水パネルの側面部材の平面図である。図6は、実施形態に係る第1止水部材を延在方向から見た図(非挿入状態)である。図7は、実施形態に係る第2止水部材を延在方向から見た図(非挿入状態)である。図8は、位置決め機構を示す平面図である。なお、図4は連結状態のパネル材を幅方向から見た図である。また、図8においては、止水パネル2および第1止水部材3R,3Lを模式的に作図(二点鎖線)している。ここで、各図における「屋内外方向」とは開口部を挟んで屋外側と屋内側とを結ぶ方向であり、「幅方向」とは屋内外方向と直交し、一対の枠部材が離間して設置される方向であり、「上下方向」とは屋内外方向および幅方向と直交する方向である。
【0016】
本実施形態に係る止水部材である第2止水部材4を用いる止水装置1は、図1に示すように、開口部100を止水するものであり、止水パネル2と、第1止水部材3R,3Lと、第2止水部材4と、一対の押圧機構5R,5Lと、一対の固定機構6R,6Lと、保持機構7R,7Lと、一対の位置決め機構8R,8Lとを備える。ここで、開口部100は、構造物の屋内側と屋外側とを連通するものであり、例えば、高い意匠性が要求される店舗の入り口などを構成する。また、構造物は、開口部100を有していればよく、所定の敷地を囲む屋根のない塀なども含まれる。この場合は、屋内側とは囲いの内側となり、屋外側とは囲いの外側となる。開口部100は、少なくとも一対の枠部材200R,200Lと、設置面300とにより形成されている。本実施形態における一対の枠部材200R,200Lは、幅方向において離間して設置されるものであり、設置面300から立設されている。枠部材200R,200Lは、第1止水部材3R,3Lの突出部32と対向する面に、凹部が形成されておらず、平坦である。本実施形態における設置面300は、止水対象である、床や、地面などであり、第2止水部材4の突出部42と対向する面として、少なくとも1以上、例えば複数の凹部301が形成されている(図10参照)。凹部301は、例えば設置面300がタイル面である場合は目地、排水用の溝などである。本実施形態における開口部100は、開閉体が設けられていない場合について説明するが、これに限定されるものではなく、例えば、扉、自動扉、シャッターなどの開閉体が存在していてもよい。また、本実施形態における枠部材200R,200Lは、例えば、金属製の方立である。
【0017】
止水パネル2は、設置面300に接地されるものであり、開口部100を止水するものである。本実施形態における止水パネル2は、設置面300のうち、開口部100の屋外側に配置されることで、屋外側から屋内側に浸入する水を図2に示す形状の止水パネル2においては屋外側の側面2aで受け止め、堰き止めるものである。止水パネル2は、矩形状に形成されており、幅方向における長さが開口部100の幅方向における長さよりも長く設定されている。つまり、止水パネル2は、幅方向における両端部が一対の枠部材200R,200Lと、屋内外方向においてそれぞれ対向する。止水パネル2は、図1および図4に示すように、上段パネル材21と、中段パネル材22と、下段パネル材23と、一対の側面部材24R,24Lと、第1係合部25と、第2係合部26と、第3係合部27と、第4係合部28と、突起部29と、収容空間部Sと、パネル止水部材Gとを備える。本実施形態における止水パネル2は、上段パネル材21と下段パネル材23との間に1枚の中段パネル材22が配置されている場合について説明するが、これに限定されるものではなく、中段パネル材22を上段パネル材21と下段パネル材23との間に複数枚配置してもよい。これにより、止水パネル2は、立位状態における上下方向での高さを調整することができる。止水パネル2の高さは、ユーザーが十分に跨ぐことができる高さに設定されていることが好ましく、例えば、30CMから60CM程度が好ましい。従って、止水装置1が設置状態であっても、開口部100を使用して、外部と構造物の内部との間を止水パネル2を跨ぐことで、行き来することができる。止水パネル2は、屋外側の側面2aにおいて受け止めた水の水圧に耐えうる強度を有し、かつ、ユーザーが単独で持ち運びできる程度の重量であることが好ましいため、アルミニウム、アルミニウム合金あるいはステンレスなど、軽量で強度の高い材料で構成されている。
【0018】
上段パネル材21は、止水パネル2の上下方向における上方側端部を構成するものである。上段パネル材21は、上下方向における下方側に、幅方向における中段パネル材22の両端部まで連続する空間部21aが形成されている。空間部21aは、下方側が開口して形成されている。空間部21aには、上方側端部を構成する部分にビス止め部21bが形成されている。ビス止め部21bは、幅方向における上段パネル材21の両端部まで延在し、かつ側面部材24R,24Lを介して挿入されるビスBが螺合するものである(ビス止め部22c,22d,23d,23eも同様の構成である)。上段パネル材21は、下方側、すなわち中段パネル材22側に、第1係合部25および第3係合部27が設けられている。本実施形態における上段パネル材21は、幅方向から見た場合に、厚み方向(止水パネル2が立位状態において屋内外方向)の両端部を構成する部分、すなわち上段パネル材21の両側面(止水パネル2の側面2a,2b)を構成する部分の下方側端部に第1係合部25および第3係合部27がそれぞれ設けられている。
【0019】
中段パネル材22は、止水パネル2の上下方向における中央部を構成するものであり、上段パネル材21の下方側に配置され、上段パネル材21と上下方向において隣り合うものである。中段パネル材22は、幅方向における中段パネル材22の両端部まで連続する内部空間として、第1空間部22aと、第2空間部22bとが形成されている。第1空間部22aは、上下方向において閉塞されている。第1空間部22aは、上方側を構成する部分に下方側に突出してビス止め部22cが形成されている。第2空間部22bは、第1空間部22aの下方側に位置し、下方側が開口して形成されている。第2空間部22bは、上方側を構成する部分に下方側に突出してビス止め部22dが形成されている。中段パネル材22は、上方側、すなわち上段パネル材21側に、第2係合部26および第4係合部28が設けられている。本実施形態における中段パネル材22は、幅方向から見た場合に、上方側端部を構成する部分において、厚み方向に離間した状態で、上段パネル材21側に突出して第2係合部26および第4係合部28がそれぞれ設けられている。中段パネル材22は、下方側、すなわち下段パネル材23側に、第1係合部25および第3係合部27が設けられている。本実施形態における中段パネル材22は、幅方向から見た場合に、厚み方向の両端部を構成する部分、すなわち中段パネル材22の両側面(止水パネル2の側面2a,2b)を構成する部分の下方側端部に第1係合部25および第3係合部27がそれぞれ設けられている。
【0020】
下段パネル材23は、止水パネル2の上下方向における下方側端部を構成するものであり、中段パネル材22が上方側に配置され、中段パネル材22と上下方向において隣り合うものである。下段パネル材23は、幅方向における中段パネル材22の両端部まで連続する内部空間として、第1空間部23aと、第2空間部23bと、挿入空間部23cとが形成されている。第1空間部23aは、上下方向において閉塞されている。第1空間部23aは、上方側を構成する部分に下方側に突出したビス止め部23dおよび下方側を構成する部分に上方側に突出したビス止め部23eが形成されている。第2空間部23bは、第1空間部23aの下方側に位置し、下方側が開口して形成されている。挿入空間部23cは、第1空間部23aの下方側に位置し、下方側が開口して形成されている。挿入空間部23cは、厚み方向において第2空間部23bと隣り合って形成されている。挿入空間部23cは、第1空間部23aの下方側を構成する部分である下段パネル材23の底面部23fと、底面部23fから下方側に突出、すなわち第2止水部材4の挿入方向(上方向)と反対方向に延在する一対の壁部材23g,23hとにより構成されている。一対の壁部材23g,23hは、厚み方向において離間して形成されており、下方側端部、すなわち先端部に爪部23i,23lがそれぞれ形成されている。爪部23i,23lは、それぞれ挿入空間部23c側、すなわち厚み方向における内側に突出して形成されている。つまり、挿入空間部23cの開口は、一対の爪部23i,23lの間に形成されている。
【0021】
第1係合部25および第2係合部26は、厚み方向で対向することで係合し、上下方向において隣り合うパネル材21~23を連結する連結部材である。また、第3係合部27および第4係合部28は、厚み方向で対向することで係合し、上下方向において隣り合うパネル材21~23を連結する連結部材である。
【0022】
突起部29は、第4係合部28よりも厚み方向における外側に形成されている。突起部29は、パネル材22,23の上方側端部を構成する部分の厚み方向における第4係合部28側の端部から、上方側に突出して設けられている。つまり、突起部29は、パネル材22,23の両側面のうち、第4係合部28側の側面の上方側端部を構成する。突起部29は、幅方向から見た場合に、上方側端部において厚み方向における内側が面取り、実施形態では円弧に形成されている。これは、後述するパネル材21~23の連結時に、第3係合部27が突起部29と接触しても、第3係合部27を上方側に容易に案内するためである。
【0023】
収容空間部Sは、パネル止水部材Gを収容するものであり、第4係合部28と突起部29との間に形成されている。収容空間部Sは、第4係合部28と突起部29との間に開口S1が形成されている。
【0024】
パネル止水部材Gは、上下方向において隣り合うパネル材21~23の間、すなわち本実施形態では、上段パネル材21と中段パネル材22との間、中段パネル材22と下段パネル材23との間に介在するものである。パネル止水部材Gは、弾性部材であり、弾性変形が大きい軟質ゴム、あるいは発泡ゴムなどである。パネル止水部材Gは、収容空間部Sに収容された際に、第4係合部28および突起部29に接触することで弾性圧縮され、開口S1から一部が突出するように形成されている。本実施形態におけるパネル止水部材Gは、幅方向から見た場合に円形である。また、パネル止水部材Gは、幅方向における長さがパネル材21~23の幅方向における長さよりも長く設定されている。例えば、パネル止水部材Gは、収容空間部Sに収容された状態で、幅方向における両端部がパネル材21~23の幅方向における両端部よりもそれぞれ2mm程度突出する。
【0025】
一対の側面部材24R,24Lは、図1に示すように、パネル材21~23の幅方向における両端部をそれぞれ閉塞するものであり、連結されたパネル材21~23の幅方向における両端部の上方側端部から下方側端部まで閉塞するものである。側面部材24R,24Lは、一方に対して他方が、屋内外方向を基準に線対称であり、図5に示すように、上下方向における側面部材24R,24Lの両端部まで連続する空間として、第1空間部24aと、挿入空間部24bとが形成されている。第1空間部24aは、幅方向における内側に開口が形成され、開口を介して、パネル材21~23の幅方向における端部が挿入されるものである。挿入空間部24bは、第1空間部24aの厚み方向における一方側(止水パネル2が立位状態において屋内側)に位置し、一方側が開口して形成されている。本実施形態における挿入空間部24bは、幅方向から見た形状が、上下方向から見た挿入空間部23cと同一形状である。挿入空間部24bは、第1空間部24aの厚み方向における一方側を構成する部分である側面部材24R,24Lの側面部24jと、側面部24jから一方側に突出、すなわち第1止水部材3R,3Lの挿入方向(止水パネル2が立位状態において屋外方向)と反対方向に延在する一対の壁部材24f,24gとにより構成されている。一対の壁部材24f,24gは、幅方向において離間して形成されており、一方側の端部、すなわち先端部に爪部24h,24iがそれぞれ形成されている。爪部24h,24iは、それぞれ挿入空間部24b側、すなわち幅方向における内側に突出して形成されている。つまり、挿入空間部24bの開口は、一対の爪部24h,24iの間に形成されている。側面部材24R,24Lは、幅方向においてパネル材21~23と対向する位置にビス穴24cが形成されている。本実施形態におけるビス穴24cは、パネル材21~23に形成される各ビス止め部21b,22c,22d,23d,23eとそれぞれ幅方向において対向する位置に複数個形成されている。側面部材24R,24Lは、幅方向においてパネル材21~23と対向する側に、側面止水部材24dがそれぞれ形成されている。側面止水部材24dは、弾性部材であり、弾性変形が大きい軟質ゴム、あるいは発泡ゴムなどである。側面止水部材24dは、各ビス止め部21b,22c,22d,23d,23eと幅方向において対向する位置にそれぞれ貫通穴24eが形成されている。側面止水部材24dは、側面部材24R,24Lによりパネル材21~23の幅方向における両端部をそれぞれ閉塞した状態で、パネル材21~23の幅方向における両端面と圧縮状態で接触している。従って、屋外側側面2aから止水パネル2の内部空間、すなわち各空間部21a,22a,22b,23aに浸入した水である内部浸入水は、パネル材21~23の幅方向における両端面と側面部材24R,24Lとの間が側面止水部材24dにより止水されているため、パネル材21~23の幅方向における両端面と側面部材24R,24Lとの間から止水パネル2の屋内側に漏れ出すことを防止することができる。さらに、側面止水部材24dは、側面部材24R,24Lによりパネル材21~23の幅方向における両端部をそれぞれ閉塞した状態で、パネル止水部材Gと側面止水部材24dとが圧縮状態で接触している。従って、内部浸入水は、収容空間部Sと側面部材24R,24Lとの間が側面止水部材24dおよびパネル止水部材Gにより止水されているため、収容空間部Sと連通するパネル材21~23の間から止水パネル2の屋内側に漏れ出すことを防止することができる。
【0026】
一対の第1止水部材3R,3Lは、図1に示すように、枠部材200R,200Lと止水パネル2との間にそれぞれ介在することで、止水するものである。第1止水部材3R,3Lは、止水パネル2の屋内側の側面2bの幅方向における両端部にそれぞれ設けられている。第1止水部材3R,3Lは、側面部材24R,24Lの挿入空間部24bにそれぞれ保持されている。第1止水部材3R,3Lは、同一形状であり、止水パネル2の上下方向における両端部までの長さを有する帯状に形成されている。ここで、第1止水部材3R,3Lは、第1止水部材3Rを枠部材200Rと屋内外方向において対向させた際に、第1止水部材3Lが枠部材200Lと屋内外方向において対向するように、止水パネル2に対する幅方向の間隔が設定されている。本実施形態における第1止水部材3R,3Lは、枠部材200R,200Lの幅方向における幅よりも狭い幅で形成されている。また、第1止水部材3R,3Lは、第1止水部材3Rの幅方向における開口部100側の端部を枠部材200Rの幅方向における開口部100側の端部と一致させた場合に、第1止水部材3Lの幅方向における開口部100側と反対側の端部が枠部材200Lの幅方向における開口部100側と反対側の端部と同じまたはこの端部よりも開口部100側に位置するように、止水パネル2に対して設けられている。なお、第1止水部材3R,3Lは、止水パネル2の上下方向における下方側端部から上方に向かって形成されていればよく、この場合は止水装置1が想定する止水すべき設置面300からの高さよりも高い位置まで形成されていればよい。第1止水部材3R,3Lは、図5および図6に示すように、挿入部31と、突出部32とを備える。
【0027】
挿入部31は、挿入空間部24bに挿入され、保持されるものである。挿入部31は、弾性部材であり、突出部32を構成する材料の硬度よりも高い硬度の材料で構成されている。挿入部31は、本体部31aと、ストッパー部31b~31eとを有する。本体部31aは、第1止水部材3R,3Lの延在方向から見た場合に、矩形状に形成されている。ストッパー部31b~31eは、挿入部31が挿入空間部24bに挿入された挿入状態において、本体部31aから一対の壁部材24f,24g側に向かってそれぞれ形成されている。本実施形態におけるストッパー部31b~31eは、挿入状態において、本体部31aと一対の壁部材24fとの間に2つストッパー部31b,31cが位置し、本体部31aと一対の壁部材24gとの間に2つストッパー部31d,31eが位置する。ストッパー部31b~31eは、第1止水部材3R,3Lの厚み方向における外側で、かつ、突出部32側に向かって形成されている。つまり、ストッパー部31b~31eは、挿入方向と反対方向に傾斜して形成されている。挿入部31は、第1止水部材3R,3Lの延在方向に延在する貫通孔31fが形成されている。本実施形態における貫通孔31fは、延在方向から見た場合に、長穴状に形成され、延在方向における両端部まで連通している。
【0028】
突出部32は、止水パネル2の外部に突出して形成されるものである。突出部32は、止水パネル2による開口部100の止水時に、枠部材200R,200Lおよび挿入空間部24bを形成する部材、すなわち一対の壁部材24f,24gに接触するものである。突出部32は、弾性部材であり、挿入部31を構成する材料の硬度よりも低い硬度の材料で構成されている。突出部32は、延在方向から見た場合に、矩形状に形成されている。突出部32は、厚み方向における長さが挿入状態において、挿入部31側の面が爪部24h,24iと接触できる長さに設定されている。つまり、突出部32は、止水時に爪部24h,24iの両方、すなわち一対の壁部材24f,24gの両方と接触することとなる。突出部32の枠部材200R,200Lと対向する対向面32aは、平坦に形成されている。これは、枠部材200R,200Lの突出部32と対向する面が平坦であることから、突出部32の枠部材200R,200Lに対する密着性を向上するためである。
【0029】
第2止水部材4は、図1に示すように、設置面300と止水パネル2との間に介在することで、止水するものである。第2止水部材4は、止水パネル2の底面2d、すなわち上下方向における下方側の面に設けられている。本実施形態における第2止水部材4は、下段パネル材23の挿入空間部23cに保持されている。第2止水部材4は、止水パネル2の幅方向における両端部までの長さを有する帯状に形成されている。第2止水部材4は、幅方向における両端部が第1止水部材3R,3Lとそれぞれ連結されている。例えば、第2止水部材4の幅方向における両端部が止水パネル2の屋内側の側面2bに延在しており、側面2bにおいて第1止水部材3R,3Lと第2止水部材4とが屋内外方向において重なっている。または、第1止水部材3R,3Lと第2止水部材4との間に、第2止水部材4の幅方向における両端部と、第1止水部材3R,3Lの下方側端部とを連結する連結止水部材を介在させる。本実施形態における第2止水部材4は、第1止水部材3R,3Lと共通の断面形状であるが、これに限定されるものではなく、止水パネル2の自重および押圧機構5R,5Lによる押圧力により変形することを考慮して、外力が作用していない状態で、第1止水部材3R,3Lよりも突出部42の挿入方向における長さを長く形成するようにしてもよい。第2止水部材4は、図7に示すように、挿入部41と、突出部42と、挿入突起部43とを備える。
【0030】
挿入部41は、挿入空間部23cに挿入され、保持されるものである。挿入部41は、弾性部材であり、突出部42を構成する材料の硬度よりも高い硬度の材料で構成されている。挿入部41は、本体部41aと、ストッパー部41b~41eとを有する。本体部41aは、第2止水部材4の延在方向から見た場合に、矩形状に形成されている。ストッパー部41b~41eは、挿入部41が挿入空間部23cに挿入された挿入状態において、本体部41aから一対の壁部材23g,23h側に向かってそれぞれ形成されている。本実施形態におけるストッパー部41b~41eは、挿入状態において、本体部41aと一対の壁部材23gとの間に2つストッパー部41b,41cが位置し、本体部41aと一対の壁部材23hとの間に2つストッパー部41d,41eが位置する。ストッパー部41bから41eは、第2止水部材4の厚み方向における外側で、かつ、突出部42側に向かって形成されている。つまり、ストッパー部41bから41eは、挿入方向と反対方向に傾斜して形成されている。挿入部41は、第2止水部材4の延在方向に延在する貫通孔41fが形成されている。本実施形態における貫通孔41fは、延在方向から見た場合に、長穴状に形成され、延在方向における両端部まで連通している。
【0031】
突出部42は、止水パネル2の外部に突出して形成されるものである。突出部42は、止水パネル2による開口部100の止水時に、止水対象である設置面300、および挿入空間部23cを形成する部材、すなわち一対の壁部材23g,23hに接触するものである。突出部42は、弾性部材であり、挿入部41を構成する材料の硬度よりも低い硬度の材料で構成されている。突出部42は、延在方向から見た場合に、矩形状に形成されている。突出部42は、厚み方向における長さが挿入状態において、挿入部41側の面が爪部23i,23lと接触できる長さに設定されている。つまり、突出部42は、止水時に爪部23i,23lの両方、すなわち一対の壁部材23g,23hの両方と接触することとなる。
【0032】
挿入突起部43は、止水対象における突出部42と対向する面が平坦でない場合に、この面への追従性を高めるものである。挿入突起部43は、突出部42の止水対象、本実施形態では、設置面300と対向する面42aに、設置面300側に突出して形成されている。本実施形態に係る挿入突起部43は、突出部42の厚み方向における中央部に形成されており、挿入方向の長さ、すなわち高さが設置面300の凹部301の深さを考慮して、例えば数mm程度に設定されている。挿入突起部43は、第2止水部材4の延在方向(挿入方向および厚み方向と直交する方向)に延在して形成されており、延在方向における両端部が第2止水部材4の延在方向における両端部まで位置する。
【0033】
ここで、本実施形態における各止水部材3R,3L,4は、ゴム材料により構成されている。つまり、挿入部31,41は硬質ゴムであり、突出部32,42および挿入突起部43は軟質ゴム(発泡ゴムを含む)となる。挿入部31,41と突出部32,42および挿入突起部43との硬度差は、45度から60度が好ましく、45度から50度がより好ましい。また、挿入部31,41の硬度は、30度~65度が好ましく、40度~65度がより好ましい。また、突出部32,42の硬度は、3度~10度が好ましく、5度~10度がより好ましい。本実施形態における挿入部31,41は硬度が65度のエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)であり、突出部32,42および挿入突起部43は硬度が5度のエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)である。また、挿入部31,41と、突出部32,42および挿入突起部43とは、一体で形成されてもよいし、別体で形成されてもよい。一対の場合は、硬度の異なる2種類の材料を用い、例えば、2色成型により製造する。一方、別体の場合は、挿入部31,41と、突出部32,42および挿入突起部43をそれぞれ製造し、接着剤、あるいは貼着テープなどで固定する。
【0034】
止水パネル2は、図1に示すように、下方から上方に向けて、下段パネル材23、中段パネル材22、上段パネル材21の順番となるように、上下方向に隣り合うパネル材21~23を連結し、連結状態のパネル材21~23の幅方向における両端部に一対の側面部材24R,24Lを固定することで、組み立てられる。パネル材21~23の連結は、図4に示すように、第1係合部25および第2係合部26が係合状態で、かつパネル止水部材Gが第3係合部27および第4係合部28と接触した状態で、第3係合部27および第4係合部28が係合状態となることで行われる。一対の側面部材24R,24Lの取り付けは、図5に示すように、ビスBを側面部材24R,24Lのビス穴24cおよび側面止水部材24dの貫通穴24eに挿入し、各ビス止め部21b,22c,22d,23d,23eにそれぞれ螺合することで行われる。
【0035】
次に、止水パネル2に各止水部材3R,3L,4を取り付ける。ここでは、止水パネル2の挿入空間部24bに第1止水部材3R,3Lを挿入し、挿入空間部23cに第2止水部材4を挿入する。このとき、ストッパー部31b~31e,41b~41eは、図4および図5に示すように、厚み方向における内側に弾性変形する。弾性変形したストッパー部31b~31e,41b~41eは、挿入方向において爪部23i,23l,24h,24iと対向する。従って、挿入空間部24b,23cに挿入された挿入部31,41は、挿入方向と反対方向に引っ張られても、ストッパー部31b~31e,41b~41eが爪部23i,23l,24h,24iに引っ掛かり、挿入空間部部23c,24bから抜けることが抑制される。これにより、各止水部材3R,3L,4の止水パネル2に対する保持力を高くすることができる。
【0036】
一対の押圧機構5R,5Lは、止水パネル2が傾斜状態から立位状態となることで、止水パネル2を設置面300に押圧するものである。押圧機構5R,5Lは、図1図3に示すように、枠部材200R,200Lに固定された固定機構6R,6Lと、止水パネル2との間で幅方向周りに回転自在に支持されるものである。押圧機構5R,5Lは、枠部材200R,200Lにそれぞれ対応して設けられ、一方に対して他方が、屋内外方向を基準に線対称である。押圧機構5R,5Lは、支持部材51と、押圧部材52と、回転軸53とを備える。
【0037】
支持部材51は、押圧部材52を幅方向周りに回転自在に支持するものである。支持部材51は、止水パネル2の屋内側の側面2bに取り付けられている。
【0038】
押圧部材52は、後述するノブ65を介して固定機構6R,6Lを幅方向周りに回転自在にそれぞれ支持するものである。本実施形態における押圧部材52は、屋内外方向から見た場合に、上下方向に延在する板状部材であり、上下方向における下方側端部に支持穴52aが形成され、上方側端部にねじ穴52bが形成されている。支持穴52aは、幅方向に形成された貫通穴であり、回転軸53が幅方向周りに回転自在に挿入されるものである。ねじ穴52bは、幅方向に形成された貫通穴であり、ノブ65の軸部65aが螺合する雌ねじが形成されている。ここで、押圧部材52の上下方向の長さは、止水パネル2が立位状態において、固定機構6R,6Lの後述する接触部材61が止水パネル2の上面2cと非接触となるように設定されている。また、押圧部材52は、上下方向から見た場合に、幅方向において枠部材200R,200Lに固定された固定機構6R,6Lの後述する支持部材64との間に間隙が形成可能に配置されている。
【0039】
回転軸53は、支持部材51に幅方向に平行に固定され、押圧部材52を回転軸53周り、すなわち幅方向周りに支持するものである。つまり、押圧機構5R,5Lは、止水パネル2の屋内側の側面2bに対して、幅方向周りに回転自在に支持されることとなる。
【0040】
一対の固定機構6R,6Lは、枠部材200R,200Lに着脱自在にそれぞれ固定されるものであり、一方に対して他方が、屋内外方向を基準に線対称である。本実施形態における固定機構6R,6Lは、止水パネル2に対する幅方向における位置を変化させることで、枠部材200R,200Lの幅方向において対向する対向面201にそれぞれ接触するとともに、幅方向外側にそれぞれ押圧することで、枠部材200R,200Lにそれぞれ固定される。固定機構6R,6Lは、接触部材61と、第1緩衝部材62と、第2緩衝部材63と、支持部材64と、ノブ65とを備える。
【0041】
接触部材61は、枠部材200R,200Lに接触するものである。本実施形態における接触部材61は、対向面201と接触するものであり、屋内外方向における屋外側の端部が幅方向における開口部100側と反対側に延在しており、枠部材200R,200Lの屋外側の屋外側面202とも接触する。接触部材61は、幅方向において枠部材200R,200Lをそれぞれ押圧することが可能な強度を有する、例えば、金属製である。
【0042】
第1緩衝部材62は、接触部材61の対向面201と対向する部分に設けられ、接触部材61と対向面201との間に介在するものである。また、第2緩衝部材63は、接触部材61の屋外側面202と対向する部分に設けられ、接触部材61と屋外側面202との間に介在するものである。第1緩衝部材62および第2緩衝部材63は、接触部材61が枠部材200R,200Lと直接接触することで、枠部材200R,200Lが損傷することを抑制するものである。第1緩衝部材62および第2緩衝部材63は、例えば、弾性変形が小さい硬質ゴムなどにより構成されている。
【0043】
支持部材64は、接触部材61の幅方向において対向面201側と反対側に取り付けられている。支持部材64は、屋内外方向から見た場合に、幅方向において接触部材61側と反対側に向かって突出する凸形状に形成されており、接触部材61との間で空間部64aが形成されている。支持部材64は、幅方向において接触部材61側と反対側に、空間部64aと連通する挿入穴64bが形成されている。
【0044】
ノブ65は、接触部材61を幅方向周りに回転自在に支持するものである。ノブ65は、軸部65aと、把持部65bとを備える。軸部65aは、棒状であり、外周面に雄ねじが形成されている。軸部65aの幅方向における両端部のうち、一方の端部、すなわち先端部が支持部材64に挿入され、他方の端部が把持部65bに固定されている。軸部65aは、押圧部材52のねじ穴52bに、先端部が幅方向における外側、すなわち枠部材200R,200Lと対向するように螺合されている。つまり、ノブ65は、幅方向周りに回転しなければ、押圧部材52に対する幅方向における位置は変化しない。軸部65aは、支持部材64の空間部64aに位置している先端部に抜け止め部材65cが取り付けられている。つまり、ノブ65は、接触部材61が幅方向周りに回転自在に支持された状態で、接触部材61から先端部が抜けることが規制されている。これにより、固定機構6R,6Lは、押圧機構5R,5Lに対して、幅方向周りに回転自在に支持され、枠部材200R,200Lに着脱自在にそれぞれ固定される。把持部65bは、軸部65aを幅方向周りに回転させるものであり、ユーザーが把持するものである。把持部65bは、軸部65aよりも大きな外径で形成されている。なお、把持部65bは、ユーザーによる把持を容易とするために、外周面に凹凸が形成されていてもよい。
【0045】
保持機構7R,7Lは、止水パネル2の立位状態を保持することで、枠部材200R,200Lに対する止水パネル2の位置関係を保持するものであり、一方に対して他方が、屋内外方向を基準に線対称である。本実施形態における保持機構7R,7Lは、押圧機構5R,5Lにそれぞれ対応して一対設けられており、上下方向から見た場合に、止水パネル2と押圧機構5R,5Lとの間の屋内外方向における距離が広がることを規制するものである。保持機構7R,7Lは、支持部材71と、フック72と、回転軸73とを備える。
【0046】
支持部材71は、フック72を幅方向周りに回転自在に支持するものである。支持部材71は、止水パネル2の上面2cに取り付けられている。支持部材71は、上面2cのうち、押圧部材52の幅方向における両端部のうち枠部材200R,200L側の端部よりも枠部材200R,200L側と屋内外方向において対向する位置に取り付けられている。
【0047】
フック72は、押圧機構5R,5Lおよび固定機構6R,6Lの少なくとも一方を係止するものである。本実施形態におけるフック72は、ノブ65の軸部65aを係止するものである。フック72は、上下方向から見た場合に、屋内外方向に延在する略矩形状部材であり、屋内外方向における一方の端部に支持穴72aが形成され、他方の端部、すなわち先端部に係止溝72bが形成されている。支持穴72aは、幅方向に形成された貫通穴であり、回転軸73が幅方向周りに回転自在に挿入されるものである。係止溝72bは、軸部65aの一部が挿入されるものであり、止水パネル2が枠部材200R,200Lに対して屋内外方向のうち屋外側に相対移動することを規制するものである。
【0048】
回転軸73は、支持部材71に幅方向に平行に固定され、フック72を回転軸73周り、すなわち幅方向周りに支持するものである。つまり、フック72は、止水パネル2の上面2cに対して、幅方向周りに回転自在に支持されることとなる。
【0049】
一対の位置決め機構8R,8Lは、図8に示すように、止水パネル2の屋内側の側面2bに設けられ、枠部材200R,200Lに対する止水パネル2の幅方向における位置を決めるものである。位置決め機構8R,8Lは、一方に対して他方が、屋内外方向を基準に線対称であり、本体部材81と、位置決め部材82と、移動・保持部材83,84とを備える。
【0050】
本体部材81は、位置決め部材82を支持するものである。本体部材81は、止水パネル2の屋内側の側面2bに取り付けられている。本実施形態における本体部材81は、側面2bのうち、支持部材51よりも上下方向における下方側に取り付けられている。本体部材81は、上下方向から見た場合に、屋内外方向において止水パネル2と対向する部分と、幅方向において枠部材200R,200Lと対向する部分とを有し、L字状に形成されている。本体部材81は、幅方向において枠部材200R,200Lと対向する部分に図示しない挿入穴が形成されている。
【0051】
位置決め部材82は、枠部材200R,200Lの間に配置、すなわち対向面201と幅方向において対向するように配置される。位置決め部材82は、本体部82aと、軸部82bとを備える。本体部82aは、枠部材200R,200Lと接触する場合があるものであり、円板状に形成されている。本体部82aは、例えば、弾性変形が小さい硬質ゴムなどにより構成されている。軸部82bは、棒状であり、外周面に雄ねじが形成されている。軸部82bの幅方向における両端部のうち、一方の端部、すなわち先端部が上記挿入穴に挿入され、他方の端部が本体部82aに固定されている。なお、位置決め部材82は、開口部100に対して止水パネル2を傾斜状態で配置した際に、幅方向において枠部材200R,200Lと対向するように、本体部材81に対して支持されている。
【0052】
移動・保持部材83,84は、幅方向に図示しない貫通穴が形成されており、図示しない内周面に位置決め部材82の軸部82bが螺合する雌ねじが形成されている。移動・保持部材83,84は、本体部材81の挿入穴を挟んで幅方向に配置され、螺合する軸部82bを介して位置決め部材82を止水パネル2に対して幅方向において移動自在とし、かつ止水パネル2に対して幅方向における位置を保持する。
【0053】
ここで、位置決め機構8R,8Lは、位置決め部材82の本体部材81に対する幅方向における位置を変更することで、第1止水部材3R,3Lを枠部材200R,200Lと屋内外方向において確実に対向させるものである。具体的には、枠部材200Rに対応する位置決め部材82については、枠部材200Rに接触した際に、第1止水部材3Rの幅方向における開口部100側と反対側の端部を枠部材200Rの開口部100側と反対側の端部と同じまたはこの端部よりも開口部100側に位置させるとともに、第1止水部材3Lの幅方向における開口部100側の端部を枠部材200Lの開口部100側の端部と同じまたはこの端部よりも開口部100側と反対側に位置させるように、本体部材81に対する幅方向における位置を調整する。一方、枠部材200Lに対応する位置決め部材82については、枠部材200Lに接触した際に、第1止水部材3Lの幅方向における開口部100側と反対側の端部を枠部材200Lの開口部100側と反対側の端部と同じまたはこの端部よりも開口部100側に位置させるとともに、第1止水部材3Rの幅方向における開口部100側の端部を枠部材200Rの開口部100側の端部と同じまたはこの端部よりも開口部100側と反対側に位置させるように、本体部材81に対する幅方向における位置を調整する。これにより、止水パネル2を開口部100に対して傾斜状態で配置する際に、上下方向から見た場合に、位置決め部材82を枠部材200R,200Lとの間に挿入すれば、位置決め部材82を枠部材200R,200Lに接触させても、枠部材200R,200Lに対する止水パネル2の幅方向における位置を、第1止水部材3R,3Lが幅方向において枠部材200R,200Lからはみ出ることのない位置に位置決めすることができる。従って、第1止水部材3R,3Lを枠部材200R,200Lに確実に密接させることができ、ユーザーに正しい止水装置1の設置を促すことができるので、止水装置1の止水性能を維持することができる。
【0054】
次に、本実施形態に係る止水装置1の設置方法について説明する。図9は、実施形態に係る止水部材を用いた止水装置(立位状態)の動作説明図である。図10は、第2止水部材の設置面に対する接地状態を示す図である。図11は、実施形態に係る止水部材を用いた止水装置(傾斜状態)の動作説明図である。なお、図9および図11においては、止水パネル2、第1止水部材3R,3L、第2止水部材4を模式的に作図(二点鎖線)している。ここで、位置決め機構8R,8Lは、止水装置1を設置する前に予め、位置決め部材82の本体部材81に対する幅方向における位置が調整されている。また、固定機構6R,6Lは、止水装置1を設置する前に予め、接触部材61の対向面201と接触する部分同士の幅方向における距離が開口部100の幅よりも狭くなるように、ノブ65により調整されている。
【0055】
ユーザーは、豪雨、津波、河川の氾濫などの水害時に、外部である屋外からの氾濫水などの水が建造物の屋内に開口部100から浸入すると予想される場合に、開口部100とは異なる場所で保管されている止水装置1を開口部100の屋外側まで運搬する。次に、ユーザーは、止水パネル2の向きを第1止水部材3R,3Lが屋内外方向において開口部100と対向する向きとする。
【0056】
次に、ユーザーは、図11に示すように、止水パネル2を傾斜状態に配置する。ここで、傾斜状態とは、止水パネル2が設置面300に接地、すなわち第2止水部材4が設置面300に接地し、かつ、枠部材200R,200Lに対して屋外側に傾斜した状態である。なお、止水パネル2を傾斜状態に配置するときは、第1止水部材3R,3Lの両方の下方側端部が枠部材200R,200Lに密接するように、止水パネル2の下方側端部を枠部材200R,200Lに押し当てながら設置面300に置くようにする。このとき、第2止水部材4の挿入突起部43は、延在方向が設置面300の凹部301の延在方向と交差した状態で設置面300と対向する。また、上述のように、位置決め機構8R,8Lにより、枠部材200R,200Lに対する止水パネル2の幅方向における位置は、第1止水部材3R,3Lが幅方向において枠部材200R,200Lからはみ出ることのない位置に位置決めされる。次に、ユーザーは、止水パネル2の傾斜状態を維持したまま、固定機構6R,6Lを枠部材200R,200Lに固定する。ここでは、ユーザーは、接触部材61を対向面201に幅方向において対向させた状態で、ノブ65を一方向に回転させ、押圧部材52に対して軸部65aの先端部を対向面201側に移動させ先端部が接触する接触部材61を対向面201に向けて移動させる。ユーザーは、さらにノブ65を同一方向に回転させ、第1緩衝部材62を介して接触部材61を対向面201と接触させるとともに、第2緩衝部材63を介して屋外側面202と接触させる。ユーザーは、さらに、ノブ65を同一方向に回転させ、対向面201に接触した接触部材61により枠部材200R,200Lを幅方向においてそれぞれ押圧することで、接触部材61を枠部材200R,200Lに対して突っ張らせることで、接触部材61を枠部材200R,200Lに対して固定する。固定機構6R,6Lが枠部材200R,200Lに固定されると、止水パネル2はユーザーにより支持しなくても、傾斜状態を維持する。このとき、止水装置1を幅方向から見た場合に、軸部65aと、回転軸53と、止水パネル2および設置面300の接地点を結ぶ線がくの字状となる。
【0057】
次に、ユーザーは、止水パネル2を傾斜状態から立位状態とする。ここで、立位状態とは、幅方向から見た場合に、止水パネル2が枠部材200R,200Lに沿った状態をいう。ユーザーは、止水パネル2を屋内側に向けて押す。これにより、止水パネル2の上下方向における上方部分は、固定機構6R,6Lの中心、すなわち軸部65aを中心に矢印C方向に回転する。止水パネル2の上下方向における上方部分の回転中心は、枠部材200R,200Lに対する相対移動を行えない軸部65aであるため、回転軸53の軌跡により、枠部材200R,200Lに近づきながら、上下方向のうち下方に移動する。従って、第2止水部材4には、下方の押圧力Pが作用し、弾性変形する。つまり、第2止水部材4は、止水パネル2が傾斜状態から立位状態となることで、止水パネル2により設置面300に押圧され、図9に示すように、設置面300と密接する。
【0058】
この状態では、突出部32は、弾性圧縮された状態で、枠部材200R,200Lと、爪部24h,24iとにそれぞれ接触する。また、第1止水部材3R,3Lは、止水パネル2が傾斜状態から立位状態となることで、枠部材200R,200Lとそれぞれ密接する。
【0059】
一方、突出部42は、弾性圧縮された状態で、設置面300と、爪部23i,23lとにそれぞれ接触する。挿入突起部43は、図10に示すように、突出部42とともに弾性圧縮される。このとき、挿入突起部43のうち各凹部301と対向する部分は、各凹部301と挿入突起部43とで形成される凹部空間部MSに侵入し、凸部43aを形成する。凸部43aは、設置面300側に突出する形状となるので、凹部空間部MSの大部分を埋めることができる。
【0060】
次に、ユーザーは、止水パネル2が立位状態で、保持機構7R,7Lのフック72を回転軸73周りに一方向に回転させ、係止溝72bにノブ65の軸部65aをそれぞれ挿入させる。ここで、止水パネル2が立位状態において、幅方向から見た場合に、軸部65aよりも回転軸53が屋外側に位置している。従って、止水パネル2は、外力が作用しない場合、立位状態を維持することができず、傾斜状態になろうとする。しかしながら、保持機構7R,7Lにより、止水パネル2の立位状態を保持することで、一対の枠部材200R,200Lに対する止水パネル2の位置関係を保持するので、第1止水部材3R,3Lが枠部材200R,200Lと密接、および第2止水部材4が設置面300と密接した状態を維持することができる。これにより、第1止水部材3R,3Lにより枠部材200R,200Lと止水パネル2との間を止水し、第2止水部材4により設置面300と止水パネル2との間を止水する。この状態で、屋外側から開口部100を介して屋内側に水が浸入しようとすると、止水パネル2により開口部100から屋内側への水の浸入が防止される。止水パネル2の屋外側の水位が上昇すると、水圧を止水パネル2の側面2aが受けることになり、水圧が止水パネル2に対して屋内外方向における屋内側に作用する。これにより、第1止水部材3R,3Lによる枠部材200R,200Lに対する押圧力Pが増加し、第1止水部材3R,3Lと枠部材200R,200Lとの密接が高まり、枠部材200R,200Lと止水パネル2との間の止水をより確実に行うことができる。
【0061】
なお、止水装置1を取り外す場合は、保持機構7R,7Lのフック72を回転軸73周りに他方向に回転させ、係止溝72bからノブ65の軸部65aをそれぞれ離間させる。次に、ユーザーは、ノブ65をさらに他方向に回転させ、押圧部材52に対して軸部65aの先端部を開口部100側に移動させ先端部を接触部材61から離間させる。これにより、固定機構6R,6Lを枠部材200R,200Lから取り外すことができ、止水装置1を枠部材200R,200Lから取り外すことができる。
【0062】
以上のように、本実施形態に係る止水部材4は、突出部42が設置面300と接触した状態において、挿入突起部43により凹部空間部MSの大部分を埋めることができる。突出部42の設置面300と対向する面42aが平坦の場合は、突出部42が弾性圧縮されても、対向する面42aが平坦のままであるので、凹部301と対向する部分が弾性復帰しにくいため、突出部42のうち、凹部空間部MSに侵入する部分は少ない。一方、弾性圧縮された挿入突起部43は、対向する面42aよりも設置面300側に位置し、弾性復帰しようとする。従って、弾性圧縮された挿入突起部43のうち、凹部301と対向する部分は、弾性復帰しやすいため、凹部空間部MSに侵入する部分が多い。従って、凹部空間部MSに浸入する水の量は、挿入突起部43を設けた場合の方が、設けない場合よりも少なくすることができる。従って、突出部42は、設置面300と対向する面42aに、挿入突起部43が形成されているため、設置面300に凹部301が形成されていても、凹部301に挿入突起部43が侵入することで、凹部301を挿入突起部43により埋めることができる。これにより、設置面300の凹部301に対する第2止水部材4の密着性の低下を抑制することができ、止水性能の低下を抑制することができる。
【0063】
また、本実施形態に係る止水部材3R,3L,4は、挿入部31,41および突出部32,42が弾性部材であり、挿入部31,41の硬度が突出部32,42の硬度よりも高いので、挿入空間部23c,24bに挿入された状態で、容易に弾性変形することが抑制される。従って、弾性復帰しようとする力が壁部材23g,23h,24f,24gに作用し、挿入部31,41が挿入方向および反対方向に移動しにくくなり、挿入空間部23c,24bから抜けることを抑制することができる。これにより、各止水部材3R,3L,4の止水パネル2に対する保持力を高くすることができる。一方、突出部32,42は、挿入部31,41よりも硬度が低いので、止水時において接触する枠部材200R,200L、設置面300および壁部材23g,23h,24f,24gの爪部23i,23l,24h,24iに対する密着性を向上することができる。これにより、枠部材200R,200Lと、壁部材24f,24gの爪部24h,24iとの間、および設置面300と、壁部材23g,23hの爪部23i,23lとの間から、止水パネル2を介して水が屋外側から屋内側に漏れ出すことを抑制でき、止水性能を高くすることができる。
【0064】
また、固定機構6R,6Lを枠部材200R,200Lに固定した状態で、止水パネル2を傾斜状態で配置し、止水パネル2を傾斜状態から立位状態とすることで、一対の押圧機構5R,5Lにより止水パネル2が設置面300に押圧され、第2止水部材4を設置面300に対して確実に密接させることができる。つまり、枠部材200R,200Lに対して、止水パネル2を屋外側から接触させる動作で、第2止水部材4を設置面300に対して確実に密接させることができる。従って、第2止水部材4を設置面300に密接させるための機構が簡単であり、止水パネル2により設置面300との止水を確実に行うことができる。
【0065】
また、止水パネル2から各止水部材3R,3L,4を取り外す際に、ユーザーの指により取り外すことは困難である。ここで、ユーザーは、突出部32,42を指でつまみながら、各止水部材3R,3L,4を挿入方向と反対方向に引っ張ることも考えられるが、突出部32,42は止水を行う部分であるので、損傷・破損などをできる限り避けることが望ましい。そこで、挿入部31,41に各止水部材3R,3L,4の延在方向に延在する貫通孔31f、41fが形成されていることで、この貫通孔31f、41fに棒状部材を挿入し、各止水部材3R,3L,4を挿入方向と反対方向に引っ張ることができる。従って、挿入部31,41を挿入空間部23c,24bから取り外すことができるので、各止水部材3R,3L,4を止水パネル2から容易に取り外すことができる。これにより、各止水部材3R,3L,4の交換を容易に行うことができる。
【0066】
なお、上記実施形態では、突出部32,42は、厚み方向における長さが爪部23i,23l,24h,24iの両方に接触できるように設定されているが、止水パネル2および止水対象に接触すれば、止水することができるので、爪部23i,23l,24h,24iのいずれか一方と接触することができる長さであってもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、止水部材3R,3L,4を止水パネル2に用いる場合について説明したが、これに限定されるものではない。止水部材3R,3L,4は、例えば、止水を目的とした扉や、シャッターなどと、開口部を形成する床、枠部材、壁部材などの止水対象との間に介在させてもよい。これにより、開口部における止水性能を高くすることができるのみならず、煙などが開口部を介して一方の空間から他方の空間に移動することを抑制することができる。
【0068】
また、上記実施形態では、第2止水部材4に挿入突起部43を形成し、第1止水部材3R,3Lには設けなかったが、枠部材200R,200Lの第1止水部材3R,3Lの突出部32と対向する面にも凹部が形成されている場合は、第1止水部材3R,3Lに挿入突起部を設けてもよい。また、設置面300の第2止水部材4の突出部42と対向する面に凹部301が形成されておらず、枠部材200R,200Lの第1止水部材3R,3Lの突出部32と対向する面に、凹部が形成されている場合は、第1止水部材3R,3Lに挿入突起部を設け、第2止水部材4に挿入突起部43を設けなくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0069】
以上のように、本発明に係る止水部材は、止水パネルにより開口部を止水する際に有用であり、特に、屋外側から屋内側に向かう水の浸入を抑制するのに適している。
以下に、実施形態の付記を開示する。
止水部材は、構造物の屋外側と屋内側とを連通する開口部を止水する止水パネルと、前記止水パネルを設置する設置面、あるいは前記開口部を形成する幅方向において離間して設置される一対の枠部材の少なくともいずれかである止水対象と、の間に介在することで止水する止水部材であって、前記止水部材は、前記止水パネルの挿入空間部に挿入され、保持される挿入部と、前記挿入部から前記止水パネルの外部に突出し、かつ止水時に前記止水対象および前記挿入空間部を形成する部材に接触する突出部と、を備え、前記挿入部および前記突出部は、弾性部材であり、前記突出部は、前記止水対象と対向する面に、前記止水対象側に突出する挿入突起部が形成されていることを特徴とする。
上記止水部材によれば、突出部は、止水対象と対向する面に、挿入突起部が形成されているため、止水対象に凹部が形成されていても、凹部に挿入突起部が侵入することで、凹部を挿入突起部により埋めることができ、凹部に対する密着性の低下を抑制して、止水性能の低下を抑制することができる。
また、上記止水部材において、前記挿入空間部は、少なくとも前記止水部材の挿入方向と反対方向に延在する互いに離間した一対の壁部材から構成され、前記一対の壁部材の先
端部は、前記挿入空間部側に突出する爪部が形成されており、前記突出部は、前記止水時に前記一対の爪部のうち、少なくともいずれか一方に接触することが好ましい。
上記止水部材によれば、挿入空間部に挿入された挿入部は、挿入方向と反対方向に引っ張られても、爪部に引っ掛かるので、挿入空間部から抜けることが抑制されるので、止水部材の止水パネルに対する保持力をさらに高くすることができる。
また、上記止水部材において、前記挿入部は、前記止水部材の延在方向に延在する貫通孔が形成されていることが好ましい。
上記止水部材によれば、貫通孔に棒状部材を挿入し、止水部材を挿入方向と反対方向に引っ張ることで、挿入部を挿入空間部から取り外すことができるので、止水部材を止水パネルから容易に取り外すことができる。
【符号の説明】
【0070】
1 止水装置
2 止水パネル
21 上段パネル材
22 中段パネル材
23 下段パネル材
23c 挿入空間部
23g,23h 壁部材
23i,23l 爪部
24R,24L 側面部材
24b 挿入空間部
24f,24g 壁部材
24h,24i 爪部
3R,3L 第1止水部材
31 挿入部
32 突出部
4 第2止水部材
41 挿入部
42 突出部
42a 対向面
43 挿入突起部
5R,5L 押圧機構
6R,6L 固定機構
7R,7L 保持機構
100 開口部
200R,200L 枠部材
300 設置面
301 凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11