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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-16
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】輸液セット
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/14 20060101AFI20220106BHJP
【FI】
A61M5/14 500
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020004576
(22)【出願日】2020-01-15
(65)【公開番号】P2021109046
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2020-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】597154690
【氏名又は名称】株式会社コメッツ
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】浦野 聖人
(72)【発明者】
【氏名】米澤 成二
【審査官】竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0018765(US,A1)
【文献】国際公開第2007/083599(WO,A1)
【文献】特表2017-501753(JP,A)
【文献】特表2018-533459(JP,A)
【文献】特開2016-059535(JP,A)
【文献】特開2018-164530(JP,A)
【文献】特開平08-084770(JP,A)
【文献】特開2018-027193(JP,A)
【文献】中国実用新案第202554599(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/14
A61M 39/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
輸液ポンプ装置に装着される輸液セットであって、
内部容積を膨縮可能な軟質の本体を有し、当該本体の内部に不純物を除去するフィルターを有する点滴筒と、
前記点滴筒の出口に接続されたチューブと、
前記チューブに設けられた流量調整部と、
前記チューブの前記点滴筒と前記流量調整部との間に設けられた、前記点滴筒内に液体を溜めておくためのクランプと、
前記点滴筒の入口に接続され、生理食塩水バッグと血液バッグに接続可能な2本の上流チューブと、
前記各上流チューブに設けられた上流クランプと、
を備え、
前記チューブは、
輸液ポンプ装置に装着される第1のチューブと、
前記点滴筒の出口と前記第1のチューブの入口に接続された第2のチューブと、
前記第1のチューブの出口に接続された第3のチューブと、を有し、
前記クランプは、前記第2のチューブに設けられ、
前記流量調整部は、前記第3のチューブに設けられ、
前記第1のチューブと前記第2のチューブ、及び前記第1のチューブと前記第3のチューブは、コネクタにより接続されている、輸液セット。
【請求項2】
前記第1のチューブは、前記第2のチューブ及び前記第3のチューブよりも軟質である、請求項2に記載の輸液セット。
【請求項3】
前記クランプは、前記チューブにおける前記点滴筒の出口から100cm以内の位置に設けられている、請求項1又は2に記載の輸液セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸液セットに関する。
【背景技術】
【0002】
輸血などの輸液時に使用される輸液セットがある。輸液セットは、一般的に図8に示すように、点滴筒200と、血液バッグ201と点滴筒200に接続される上流チューブ202と、生理食塩水バッグ203と点滴筒200に接続される上流チューブ204と、点滴筒200の出口に接続されたチューブ206と、チューブ206に設けられた、輸液の流速を調整可能なローラクレンメ207と、上流チューブ202、204にそれぞれ設けられたクランプ208、209などを備えている。チューブ206の先端には、患者に既に挿入された留置針に接続可能な先端コネクタ210が取り付けられている。
【0003】
輸液セットを用いて輸液を行う際には、先ず輸液の準備作業として、看護師は、図9に示すようにクランプ209をまず開放し、点滴筒200を揉み生理食塩水バッグ203の生理食塩水Aを上流チューブ204を通じて点滴筒200に導入し、そして次にローラクレンメ207を開放して、点滴筒200の生理食塩水Aを点滴筒200からチューブ206の先端コネクタ210まで供給する。これは、患者の体内に気泡が混入することを防止するために予めチューブ206内の気体を抜いておく必要があるのと、初めから点滴筒200に血液を供給すると、点滴筒200のフィルター211が詰まる恐れがあり、点滴筒200のフィルター211に生理食塩水Aを予め導入して血液を希釈する必要があるためである。
【0004】
そして輸液を開始する際には、看護師は、図10に示すようにクランプ209を閉じてからクランプ208を開放し、血液バッグ201の血液Bを点滴筒200に導入することによって、点滴筒200には生理食塩水Aと希釈された血液B'が導入される。そして、看護師は、チューブ206をポンプ装置212にセットし、チューブ206の先端コネクタ210を、患者にすでに挿入された留置針に接続してから、ポンプ装置212を作動させ、血液バッグ201の血液を点滴筒200からチューブ206の先端コネクタ210まで流し、患者に供給する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図10に示したように輸液を開始する際には、先ずチューブ206内に満たされた生理食塩水Aが患者に供給され、次に点滴筒200などで生理食塩水により希釈された血液B'が患者に供給され、その後生理食塩水を含まない純粋な血液Bが患者に供給されることになる。このとき、チューブ206内の全ての生理食塩水Aが患者の体内に導入され純粋な血液Bが患者の体内に供給され始めるまでに15分程度かかる。
【0006】
看護師は、輸液の血液が患者に適合するか否かを確認するため、患者に純粋な血液Bが供給され始めてから15分程度、患者に拒絶反応があるか否かを見る必要がある。よって、看護師は、輸液が開始されてから、チューブ206全体の生理食塩水Aがすべて患者に導入され、点滴筒200の希釈された血液B'が患者に導入され終わるまでの15分程度に加え、純粋な血液Bが患者に導入され始めてから15分程度の間、ずっと病室で輸液の様子を見ている必要がある。
【0007】
このように、従来の輸液セットを用いた輸液では、輸液の準備作業から患者の拒絶反応の有無を確認するまでに多くの時間を要し、看護師の作業時間が長く、看護師の負担が大きくなる。
【0008】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、看護師等の作業者の輸液時の作業に要する時間を大幅に短縮することができる輸液セットを提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る輸液セットは、点滴筒と、点滴筒の出口に接続されたチューブと、チューブに設けられた流量調整部と、チューブの点滴筒と流量調整部との間に設けられた、点滴筒内に液体を溜めておくためのクランプを備えている。
【0010】
本態様によれば、作業者の輸液時の作業に要する時間を大幅に短縮することができる。
【0011】
チューブは、輸液ポンプ装置に装着可能な区間を有し、流量調整部は、その区間又はその区間よりも下流側に設けられ、クランプは、その区間よりも上流側に設けられているようにしてもよい。
【0012】
チューブは、輸液ポンプ装置に装着可能な第1のチューブと、点滴筒の出口と第1のチューブの入口に接続された第2のチューブと、第1のチューブの出口に接続された第3のチューブと、を有し、クランプは、第2のチューブに設けられ、流量調整部は、第3のチューブに設けられていてもよい。
【0013】
クランプは、チューブにおける点滴筒の出口から100cm以内の位置に設けられているようにしてもよい。
【0014】
クランプは、チューブに沿って移動自在であってもよい。
【0015】
輸液セットは、チューブの流量調整部とクランプとの間に設けられた、フリーフローを防止するクランプをさらに備えるようにしてもよい。
【0016】
輸液セットは、点滴筒の入口に接続され、液体バッグに接続可能な上流チューブと、上流チューブに設けられたクランプをさらに備えるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、作業者の輸液時の作業に要する時間を大幅に短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施の形態の輸液セットの構成の一例を示す模式図である。
図2】Mクランプを示す説明図である。
図3】本実施の形態の輸液セットの点滴筒に生理食塩水を入れた様子を示す説明図である。
図4】本実施の形態の輸液セットの点滴筒に血液を供給し、生理食塩水と希釈した様子を示す説明図である。
図5】本実施の形態の輸液セットにおいてチューブ内の気体を抜いた状態を示す説明図である。
図6】本実施の形態の輸液セットの輸液時の様子を示す説明図である。
図7】上流チューブが1本の場合の別の実施の形態の輸液セットの構成の一例を示す模式図である。
図8】従来の輸液セットの構成を示す模式図である。
図9】従来の輸液セットのチューブに生理食塩水を満たした様子を示す説明図である。
図10】従来の輸液セットの点滴筒に血液を供給した様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態について説明する。なお、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。さらに、図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。また、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明はこの実施の形態に限定されるものではない。
【0020】
図1は、本実施の形態にかかる輸液セット1の構成の一例を示す説明図である。輸液セット1は、例えば点滴筒10と、点滴筒10の出口に接続されたチューブ11と、チューブ11に設けられた流量調整部としてのローラクレンメ12と、チューブ11における点滴筒10とローラクレンメ12との間に設けられたMクランプ13と、点滴筒10の入口に接続され、第1のバッグ20に接続可能な第1の上流チューブ14と、点滴筒10の入口に接続され、第2のバッグ21に接続可能な第2の上流チューブ15と、第1の上流チューブ14に設けられた第1のクランプ16と、第2の上流チューブ15に設けられた第2のクランプ17と、を備えている。
【0021】
点滴筒10は、円筒状の本体30を有し、本体30の上部に滴下部31を有し、本体30の下部に出口部32を有している。本体30は、軟質の樹脂で構成され、手で揉むことにより気体と液体を交換するように構成されている。また点滴筒10は、本体30内に不純物を除去濾過するためのフィルター33を有している。点滴筒10は、液滴が滴下部31から滴下され、フィルター33を通じて本体30内に貯留し、出口部32から排出されるように構成されている。
【0022】
チューブ11は、例えば輸液ポンプ装置40に装着可能な第1のチューブ50と、点滴筒10の出口と第1のチューブ50の入口に接続された第2のチューブ51と、第1のチューブ50の出口に接続された第3のチューブ52を有している。
【0023】
例えば第1のチューブ50は、第1のチューブ50を引きのばして輸液ポンプ装置40内に装着するため、第2のチューブ51及び第3のチューブ52よりも軟質である。例えば第1のチューブ50は、その両端にコネクタ60、61を有している。上流側の第1のコネクタ60は、第1のチューブ50と第2のチューブ51を接続している。下流側の第2のコネクタ61は、第1のチューブ50と第3のチューブ52を接続している。なお、第2のチューブ51及び第3のチューブ52の材質を第1のチューブ50と同じにして1本のチューブとすることも可能である。
【0024】
例えば第1のコネクタ60及び第2のコネクタ61は、第1のチューブ50を輸液ポンプ装置40に嵌め込んで装着するための装着機能を備えている。第2のコネクタ61は、輸液ポンプ装置40の操作パネルが開くなど誤動作した場合等に、第1のチューブ50を開閉するクランプとしての機能も備えている。例えば第2のコネクタ61は、輸液ポンプ装置40に装着されたときに、第1のチューブ50を開放するように構成されている。なお、例えば輸液ポンプ装置40には、第1のチューブ50を装着する際に開閉される蓋が設けられていてもよく、このとき第2のコネクタ61は、例えば輸液ポンプ装置40の蓋が開けられたときに第1のチューブ50を閉鎖するフリーフローの防止機能を備えていてもよい。すなわち、この場合第2のコネクタ61は、輸液ポンプ装置40に取り付け可能なフリーフローを防止するクランプとして機能する。
【0025】
第3のチューブ52は、その出口側の端部に、先端コネクタ80を有している。先端コネクタ80は、患者側に取り付けられた留置針のコネクタ、或いはその留置針のコネクタに接続された接続チューブに対し接続可能である。
【0026】
ローラクレンメ12は、第3のチューブ52に設けられている。ローラクレンメ12は、手動でローラ12aを回すことで、第3のチューブ52の開閉度を変更し、チューブ11を流れる液体の流速を調整することができる。なお、ローラクレンメ12は、第3のチューブ52に沿って移動自在であるが、第1のチューブ50には移動できない。
【0027】
Mクランプ13は、第2のチューブ51に設けられている。Mクランプ13は、第2のチューブ51を開閉する機能を有している。Mクランプ13は、生理食塩水と血液を同時に点滴筒Aの中に溜めておくために用いることができる。Mクランプ13は、例えば第2のチューブ51の点滴筒10の出口から100cm以内の位置、より好ましくは10cm以内の位置、より好ましくは5cm以内の位置、さらに好ましくは点滴筒10の直下に設けられる。Mクランプ13は、点滴筒10の出口の近傍、すなわち点滴筒10の出口から3cm以内に設けられるとよい。Mクランプ13は、図2に示すように略楕円のリング形状を有する。Mクランプ13は、第2のチューブ51を間に挟んで互いに対向する挟み部13a、13bと、留め部13cを有している。Mクランプ13は、挟み部13a、13bが互いに近づく方向に押圧されることで第2のチューブ51を閉鎖し、その閉鎖状態を留め部13cで留めることができる。またMクランプ13は、留め部13cが外されることで挟み部13a、13bが互いに離れ、第2のチューブ部51を開放することができる。Mクランプ13は、チューブ11に沿って移動自在のものである。なお、Mクランプ13は、チューブ11の所定位置に固定されていてもよい。Mクランプ13は、チューブ11から取り外し可能であってもよい。また、Mクランプ13は、クランプ16、17と別の種類のクランプである。
【0028】
第1の上流チューブ14は、その上流側の端部に、第1のバッグ20に差し込んで接続するための接続部90を有している。同様に第2の上流チューブ15は、その上流側の端部に、第2のバッグ21に差し込んで接続するための接続部91を有している。本実施の形態において第1のバッグ20は、血液Bが貯留された血液バッグであり、第2のバッグ21は、生理食塩水Aが貯留された生理食塩水バッグである。なお、第2のバッグ21は、生理食塩水バッグに限られず、生理食塩水でない他の薬液が貯留された薬液バッグであってもよい。
【0029】
第1のクランプ16及び第2のクランプ17は、第1の上流チューブ14、第2の上流チューブ15をそれぞれ手動で開閉する機能を有している。
【0030】
輸液ポンプ装置40は、輸液の流速をプログラミングで自動制御するものであり、例えば第1のチューブ50に接続して点滴筒10の血液を所定の設定流速で先端コネクタ80に送ることができる。
【0031】
次に、以上のように構成された輸液セット1を用いて行われる輸液のプロセスについて説明する。第1のバッグ20(血液)が血液バンクからリリースされる前に、先ず看護師である作業者は、図1に示す輸液セット1のクランプ17、Mクランプ13を閉じ、ローラクレンメ12を閉じ、全チューブを閉鎖する。このとき、Mクランプ13は、第2のチューブ51の上端付近、すなわち点滴筒10の直下(点滴筒10と第2のチューブ51の接続部分)で第2のチューブ51を閉じる。
【0032】
次に、作業者は、第2の上流チューブ15の接続部91を例えば生理食塩水バッグとしての第2のバッグ21に接続し、第2のバッグ21を輸液のためのスタンド(図示せず)に吊り下げる。第2のクランプ17を開き第2の上流チューブ15を開放し、点滴筒10の本体30を揉んで本体30の内部容積を膨縮させることにより、図3に示すように第2のバッグ21の生理食塩水Aを点滴筒10の内部に流入させる。このとき、Mクランプ13により点滴筒10の直下で第2のチューブ51が閉鎖されており、生理食塩水Aが第2のチューブ51を経由し、第1のチューブ50、第3のチューブ52に流入することが止められている。生理食塩水Aが点滴筒10に貯留し、生理食塩水Aがフィルター33に浸透したら、作業者は第2のクランプ17を閉じ第2の上流チューブ15を閉鎖する。
【0033】
輸血承諾書などの書類の確認の後、作業者は、血圧、呼吸数、心拍数、体温などを測り異常がないことを確認して血液バンクに連絡し、血液バッグがリリースされる。作業者が、血液バッグを無事受け取った後、患者氏名、患者番号、血液型、書類の確認の後、第1の上流チューブ14の接続部90を血液バッグとしての第1のバッグ20に接続し、第1のバッグ20を輸液のためのスタンドに吊り下げる。
【0034】
次に作業者は、第1のクランプ16を開き第1の上流チューブ14を開放し、点滴筒10の本体30を揉んで、図4に示すように第1のバッグ20の血液Bを点滴筒10の内部に流入させる。このとき点滴筒10に入った血液Bは、予め入っていた生理食塩水Aと混合し、生理食塩水Aで希釈された血液B'となる。また、Mクランプ13により点滴筒10の直下で第2のチューブ51が閉鎖されているため、血液B'は点滴筒10に留まる。
【0035】
続いて作業者は、第2のクランプ17を閉じたままの状態で、第1のクランプ16は開いたままの状態で、Mクランプ13を開き第2のチューブ51を開放し、ローラクレンメ12を開き第3のチューブ52も開放する。これにより、図5に示すように点滴筒10の血液B'が、第2のチューブ51、第1のチューブ50及び第3のチューブ52をこの順で通り、先端コネクタ80まで到達し、チューブ11内の全ての気体を血液B'が押し流し、気体が抜かれる この気体を抜く作業は、チューブ11が輸液ポンプ装置40内に装備されていないため、大気開放されており抵抗が小さいため、短時間で行われる。
【0036】
続いて作業者は、第1のチューブ50を輸液ポンプ装置40に取り付ける。このとき、第1のチューブ50の第1のコネクタ60と第2のコネクタ61が輸液ポンプ装置40の所定部分に嵌め込まれ、第1のチューブ50が輸液ポンプ装置40に固定される。次に作業者は、輸液ポンプ装置40において輸液速度等の設定(例えば100mL/hour)をプログラミングし、図6に示すようにチューブ11の先端コネクタ80を患者側のコネクタ100に接続する。作業者は、輸液ポンプ装置40を作動させて、患者への血液の輸液を開始する。このとき、血液はほんの少量の生理食塩水が混合された血液が患者に供給されるが拒絶反応、副作用の有無はすぐ判断できる。
【0037】
本実施の形態によれば、輸液セット1が、点滴筒10と、点滴筒10の出口に接続されたチューブ11と、チューブ11に設けられたローラクレンメ12と、チューブ11における点滴筒10とローラクレンメ12との間に設けられたMクランプ13を備えている。これにより、図3に示したように点滴筒10とローラクレンメ12との間のMクランプ13でチューブ11を閉鎖した状態で、点滴筒10に生理食塩水Aを入れることができるので、点滴筒10より下流のチューブ11全体に生理食塩水Aを充填しなくてもよい。従って、図9に示した従来のようにチューブ206全体に生理食塩水Aを充填する作業がなくなる。そして、輸液が開始されると、図5に示した生理食塩水Aにより希釈された血液B'と純粋な血液Bがこの順で患者に供給され、図10に示した従来のようにチューブ206内に充填された生理食塩水Aが患者に供給されてから血液が供給されるということがない。したがって、輸液が開始されてから、純粋な血液Bが患者に供給され始めるまでの時間が短縮され、患者の拒絶反応の有無を確認し終えるまでの時間を短縮することができる。この結果、作業者の輸液時の作業に要する時間を大幅に短縮することができ、それによって作業者の拘束時間が短くなり作業者の負担を低減することができる。
【0038】
また、本実施の形態によれば、従来のように生理食塩水Aでチューブ全体を満たす必要がないため、生理食塩水Aの消費量を減らすことができる。
【0039】
Mクランプ13は、チューブ11における点滴筒10の出口から10cm以内の例えば点滴筒直下に設けられているので、生理食塩水Aで希釈される血液B'が少量となり、純粋な血液Bが患者に供給され始めるタイミングを早めることができる。よって、作業者の輸液時の作業に要する時間を短縮できる。また、血液B'を用いて気体を抜くことができるため、その後直ぐにチューブ11を患者側のコネクタ100に繋いで、血液Bを患者に導入することができる。その結果、チューブの生理食塩水や、生理食塩水による血液の希釈液を素早く抜くために、チューブ内な生理食塩水や希釈液を予めゴミ箱に捨てるという不衛生で不適切な行為も防止することができる。
【0040】
以上の実施の形態において、チューブ11が、第1のチューブ50、第2のチューブ51、第3のチューブ52を有するものであったが、チューブ11が一続きのチューブからなり、複数のチューブから構成されていなくてもよい。この場合、チューブ11には、ローラクレンメ12とMクランプ13との間に、フリーフロー防止機能付きのクランプが設けられていてもよい。
【0041】
また、以上の実施の形態では、チューブ11の輸液ポンプ装置40が装着される区間(第1のチューブ50)よりも下流側にローラクレンメ12が設けられていたが、チューブ11の輸液ポンプ装置40が装着される区間にローラクレンメ12が設けられてもよい。この場合も、チューブ11の輸液ポンプ装置40が装着される区間よりも上流側にMクランプ13が設けられる。
【0042】
輸液セット1は、上記実施の形態のように第1の上流チューブ14、第2の上流チューブ15、第1のクランプ16及び第2のクランプ17を予め備えたものであってもよいし、これらを備えず、別途用意された第1の上流チューブ14、第2の上流チューブ15、第1のクランプ16及び第2のクランプ17のセットを輸液セットと組み合わせて使用してもよい。
【0043】
輸液セット1は、上流チューブとクランプのセットを2組備えたものであったが、図7に示すように点滴筒10の入口に接続され、液体バッグ20(21)に接続可能な一つの上流チューブ120と、その上流チューブ120に設けられたクランプ121と、を備えるものであってもよい。かかる場合、上流チューブ120を初め生理食塩水バッグとしての第2のバッグ21に接続し、その後血液バッグとしての第1のバッグ20に交換接続するようにしてもよい。なお、本態様の輸液セット1の他の部分の構成は、例えば上記実施の形態と同様であってもよい。
【0044】
以上の実施の形態において、流量調整部は、ローラクレンメに限られず、例えばワンタッチクレンメ、スライドクレンメなどであってもよい。輸液セット1は、チューブ11が輸液ポンプ装置40に装着されるものであってもよいし、チューブ11が輸液ポンプ装置40に装着されないものであってもよい。輸液セット1は、輸血するためだけでなく、薬剤等を輸液する場合にも適用することができる。また、以上の実施の形態で記載した点滴筒10に供給される薬液は、生理食塩水Aに限られない。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明によれば、作業者の輸液時の作業に要する時間を大幅に短縮することができる輸液セットを提供することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 輸液セット
10 点滴筒
11 チューブ
12 ローラクレンメ
13 Mクランプ
14 第1の上流チューブ
15 第2の上流チューブ
16 第1のクランプ
17 第2のクランプ
40 輸液ポンプ装置
50 第1チューブ
51 第2チューブ
52 第3チューブ
60 第1のコネクタ
61 第2のコネクタ
80 先端コネクタ
A 生理食塩水
B' 生理食塩水で希釈された血液
B 純粋な血液
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10