(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-16
(45)【発行日】2022-02-21
(54)【発明の名称】排気器具および排気システム
(51)【国際特許分類】
A61B 17/32 20060101AFI20220214BHJP
A61B 18/08 20060101ALN20220214BHJP
【FI】
A61B17/32 510
A61B18/08
(21)【出願番号】P 2020091213
(22)【出願日】2020-05-26
【審査請求日】2021-08-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520184804
【氏名又は名称】江藤 忠明
(73)【特許権者】
【識別番号】507096124
【氏名又は名称】株式会社トライテック
(74)【代理人】
【識別番号】100131842
【氏名又は名称】加島 広基
(72)【発明者】
【氏名】江藤 忠明
(72)【発明者】
【氏名】竹▲崎▼ 博
【審査官】宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3152014(JP,U)
【文献】特表2011-523881(JP,A)
【文献】特開2018-174988(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0080876(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/32
A61B 18/08
A61B 17/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切開のためのエネルギー発生部が先端に設けられた切開用エネルギーデバイスの円筒状シャフトに装着される排気器具であって、
前記円筒状シャフトの略全長に亘って延びている、可撓性を有する本体部と、
前記本体部に設けられた、前記円筒状シャフトを捉えるための一対の捕捉部と、
前記エネルギー発生部から発生するミストの流路を内部で形成する流路形成部と、
を備え、
前記本体部が撓んで前記一対の捕捉部が開くことにより前記円筒状シャフトに対する着脱を行うことができるようになって
おり、
各前記捕捉部における前記円筒状シャフトとの接触箇所には、前記円筒状シャフトに対する前記排気器具の固定位置が移動することを防止するための摩擦材が設けられている、排気器具。
【請求項2】
切開のためのエネルギー発生部が先端に設けられた切開用エネルギーデバイスの円筒状シャフトに装着される排気器具であって、
前記円筒状シャフトの略全長に亘って延びている、可撓性を有する本体部と、
前記本体部に設けられた、前記円筒状シャフトを捉えるための一対の捕捉部と、
前記エネルギー発生部から発生するミストの流路を内部で形成する流路形成部と、
を備え、
前記本体部が撓んで前記一対の捕捉部が開くことにより前記円筒状シャフトに対する着脱を行うことができるようになっており、
各前記捕捉部により円筒状シャフトを捉えるための空間と、前記流路形成部により形成される前記流路との間には隙間が形成されている、排気器具。
【請求項3】
切開のためのエネルギー発生部が先端に設けられた切開用エネルギーデバイスの円筒状シャフトに装着される排気器具であって、
前記円筒状シャフトの略全長に亘って延びている、可撓性を有する本体部と、
前記本体部に設けられた、前記円筒状シャフトを捉えるための一対の捕捉部と、
前記エネルギー発生部から発生するミストの流路を内部で形成する流路形成部と、
を備え、
前記本体部が撓んで前記一対の捕捉部が開くことにより前記円筒状シャフトに対する着脱を行うことができるようになっており、
排気チューブが取り付けられる被取付部を更に備え、前記被取付部に取り付けられた前記排気チューブが前記流路形成部により形成される前記流路と連通する、排気器具。
【請求項4】
各前記捕捉部間の距離は、前記円筒状シャフトの外径よりも小さくなっている、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の排気器具。
【請求項5】
切開のためのエネルギー発生部が先端に設けられた切開用エネルギーデバイスと、
前記切開用エネルギーデバイスの円筒状シャフトに装着される排気器具と、
を備え、
前記排気器具は、
可撓性を有する本体部と、
前記本体部に設けられた、前記円筒状シャフトを捉えるための一対の捕捉部と、
前記エネルギー発生部から発生するミストの流路を内部で形成する流路形成部と、
を有しており、
前記本体部が撓んで前記一対の捕捉部が開くことにより前記円筒状シャフトに対する着脱を行うことができるようになっており、
各前記捕捉部における前記円筒状シャフトとの接触箇所には、前記円筒状シャフトに対する前記排気器具の固定位置が移動することを防止するための摩擦材が設けられている、排気システム。
【請求項6】
切開のためのエネルギー発生部が先端に設けられた切開用エネルギーデバイスと、
前記切開用エネルギーデバイスの円筒状シャフトに装着される排気器具と、
を備え、
前記排気器具は、
可撓性を有する本体部と、
前記本体部に設けられた、前記円筒状シャフトを捉えるための一対の捕捉部と、
前記エネルギー発生部から発生するミストの流路を内部で形成する流路形成部と、
を有しており、
前記本体部が撓んで前記一対の捕捉部が開くことにより前記円筒状シャフトに対する着脱を行うことができるようになっており、
各前記捕捉部により円筒状シャフトを捉えるための空間と、前記流路形成部により形成される前記流路との間には隙間が形成されている、排気システム。
【請求項7】
切開のためのエネルギー発生部が先端に設けられた切開用エネルギーデバイスと、
前記切開用エネルギーデバイスの円筒状シャフトに装着される排気器具と、
を備え、
前記排気器具は、
可撓性を有する本体部と、
前記本体部に設けられた、前記円筒状シャフトを捉えるための一対の捕捉部と、
前記エネルギー発生部から発生するミストの流路を内部で形成する流路形成部と、
を有しており、
前記本体部が撓んで前記一対の捕捉部が開くことにより前記円筒状シャフトに対する着脱を行うことができるようになっており、
排気チューブが取り付けられる被取付部を更に備え、前記被取付部に取り付けられた前記排気チューブが前記流路形成部により形成される前記流路と連通する、排気システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気器具および排気システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療分野では、腹腔鏡や胸腔鏡などの内視鏡を用いた体腔内の観察下に、電気メスや超音波凝固切開装置などのエネルギー装置を用いて臓器組織の切開や止血操作を行う外科手術が幅広く行われるようになった。腹腔鏡手術や腹腔鏡手術は、その低侵襲性、整容性などから外科手術に占める割合も年々増加している。
【0003】
上述の内視鏡を用いた手術が行われる際、先端のメス刃部分と臓器組織が接触する部位に熱によって水蒸気や煙などのミストが発生する。これらは視野を悪化させるばかりでなく、内視鏡の先端に付着することによりレンズの汚れと内視鏡画像の劣化をきたすため、たびたび内視鏡光学視管の先端を洗浄・清拭することが必要になり、手術を中断させる要因になる。このミストを除去するために、手術器具を体腔内に挿入するための筒型のアクセス装置(トロッカー外筒)を介して、排煙することが一般的であるが、ミスト発生部位であるデバイスの先端と離れたトロッカー外筒の排煙部が離れているため、効率的な排煙が困難であるという問題がある。
【0004】
より詳細に説明すると、内視鏡を用いた手術に必要な情報は、当該内視鏡により得られる画像(視覚)情報のみであり、腹腔内での水蒸気や煙などのミストの発生による視野悪化や、内視鏡観察窓部の汚れは、安全な手術の施行の妨げとなる。そのために手術中は、ミストが晴れるのを待ったり、内視鏡を体外に一旦取り出して洗浄したりするのに時間を要するため手術時間の延長につながり、結果的に患者に大きな負担となったり予期せぬ合併症が発症したりするおそれがある。
【0005】
このようなミストによる問題を解決するために、種々の装置や器具が提案されている。例えば、特許文献1~5には、腹腔内のミストを取り除くための装置が提案されている。しかしながら、これらは大掛かりな装置となり、多大な費用を要し、大きな設置スペースを要するものであった。
【0006】
また、特許文献6では、内視鏡下手術用排気チューブが提案されているが、腹腔内のミストを効率的に排出させることは難しい。更に、特許文献7、特許文献8には電気メス用排煙器具およびこれを備えた電気メス装置が提案されているが、これらは開腹手術時に使用されるものであり内視鏡下手術のような閉鎖空間である体腔内における手術時での使用を想定したものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平05-329164号公報
【文献】特開2006-288754号公報
【文献】特開2017-80170号公報
【文献】特開2006-288553号公報
【文献】特開平11-309156号公報
【文献】特開平8-196622号公報
【文献】特開2004-89510号公報
【文献】実用新案登録第3152014号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述した様々な従来の特許文献に開示される技術の問題点を考慮してなされたものである。すなわち、胸腔鏡や腹腔鏡等の内視鏡を用いた手術が行われる際、超音波凝固切開装置および電気メス装置等の切開用エネルギーデバイスの使用により、腹腔内に水蒸気や煙などのミストが発生し視野を悪化した場合、切開用エネルギーデバイスの円筒状シャフトに容易に着脱することができ、発生したミストを確実に排出できる排気器具および排気システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の排気器具は、
切開のためのエネルギー発生部が先端に設けられた切開用エネルギーデバイスの円筒状シャフトに装着される排気器具であって、
前記円筒状シャフトの略全長に亘って延びている、可撓性を有する本体部と、
前記本体部に設けられた、前記円筒状シャフトを捉えるための一対の捕捉部と、
前記エネルギー発生部から発生するミストの流路を内部で形成する流路形成部と、
を備え、
前記本体部が撓んで前記一対の捕捉部が開くことにより前記円筒状シャフトに対する着脱を行うことができるようになっていることを特徴とする。
【0010】
本発明の排気器具においては、各前記捕捉部間の距離は、前記円筒状シャフトの外径よりも小さくなっていてもよい。
【0011】
また、前記本体部および各前記捕捉部の材料がプラスチックであってもよい。
【0012】
また、各前記捕捉部における前記円筒状シャフトとの接触箇所には、前記円筒状シャフトに対する前記排気器具の固定位置が移動することを防止するための摩擦材が設けられていてもよい。
【0013】
また、各前記捕捉部により円筒状シャフトを捉えるための空間と、前記流路形成部により形成される前記流路との間には隙間が形成されていてもよい。
【0014】
また、本発明の排気器具は、排気チューブが取り付けられる被取付部を更に備え、前記被取付部に取り付けられた前記排気チューブが前記流路形成部により形成される前記流路と連通してもよい。
【0015】
本発明の排気システムは、切開のためのエネルギー発生部が先端に設けられた切開用エネルギーデバイスと、前記切開用エネルギーデバイスの円筒状シャフトに装着される排気器具と、を備え、前記排気器具は、可撓性を有する本体部と、前記本体部に設けられた、前記円筒状シャフトを捉えるための一対の捕捉部と、前記エネルギー発生部から発生するミストの流路を内部で形成する流路形成部と、を有しており、前記本体部が撓んで前記一対の捕捉部が開くことにより前記円筒状シャフトに対する着脱を行うことができるようになっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の排気器具および排気システムによれば、超音波凝固切開装置および電気メス装置等の切開用エネルギーデバイスに容易に着脱することができ、切開用エネルギーデバイスの先端近くからミストを吸引することにより効率的に排出できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施の形態による排気器具が取り付けられた超音波凝固切開装置により人体の腹腔内で手術を行うときの概要を示す図である。
【
図2】本発明の実施の形態による排気器具が取り付けられた超音波凝固切開装置の側面図である。
【
図3】
図2に示す超音波凝固切開装置の拡大側面図である。
【
図4】
図3に示す超音波凝固切開装置に取り付けられた排気器具のA-A矢視による断面図である。
【
図5】本発明の実施の形態による排気器具の被取付部の構成を示す斜視図である。
【
図6】
図5に示す被取付部を排気チューブ接続側から見た時の構成を示す側面図である。
【
図8】(a)~(i)は、本発明による他の様々な構成の排気器具の断面図である。
【
図9】本発明による排気器具が取り付けられた電気メス装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1乃至
図6は、本実施の形態に係る排気器具およびこの排気器具が取り付けられた超音波凝固切開装置である。なお、
図7は、従来の超音波凝固切開装置の側面図である。
【0019】
図1は、本実施の形態による排気器具50が取り付けられた超音波凝固切開装置10により人体2の腹腔4で手術を行うときの概要を示す図である。
図1に示すように、人体2の腹腔4にある臓器6等に対して手術を行う際に、超音波凝固切開装置10および腹腔鏡100が用いられる。具体的には、人体2の腹腔4に二酸化炭素ガスを入れてこの腹腔4を膨らませた後、腹腔鏡100により人体2の腹腔4を観察しながら超音波凝固切開装置10により臓器組織の凝固および切開を行う。
【0020】
超音波凝固切開装置10の具体的な構成について
図2および
図3を用いて説明する。
図2よび
図3に示すように、超音波凝固切開装置10は、術者が把持するハンドル等の把持部20と、把持部20に取り付けられた円筒状シャフト30を有している。円筒状シャフト30の先端には、臓器組織の凝固および切開を行うためのエネルギー発生部32が設けられている。エネルギー発生部32は加熱された状態で臓器組織の凝固および切開を行うため、人体2の腹腔4においてエネルギー発生部32から水蒸気や煙などのミストが発生する。
図2において、エネルギー発生部32から発生したミストを参照符号Fで示す。
【0021】
エネルギー発生部32から発生したミストを排気するために、超音波凝固切開装置10の円筒状シャフト30には排気器具50が取り付けられている。また、排気器具50の基端には排気チューブ70が取り付けられている。排気チューブ70には図示しない吸引機器が取り付けられており、この吸引機器により吸引が行われることにより、エネルギー発生部32から発生したミストが排気器具50により吸引されてこの排気器具50から排気チューブ70に送られる。
【0022】
図4は、
図3に示す超音波凝固切開装置10に取り付けられた排気器具50のA-A矢視による断面図である。
図4に示すように、排気器具50は、円筒状シャフト30の略全長に亘って延びている、可撓性を有する本体部51と、本体部51に設けられた、円筒状シャフト30を捉えるための一対の捕捉部52と、超音波凝固切開装置10から発生するミストの流路56を内部で形成する流路形成部54とを備えている。そして、本体部51は可撓性を有しており、本体部51が撓むことにより一対の捕捉部52が開いて円筒状シャフト30に対する着脱を行うことができるようになっている。
【0023】
より詳細には、
図4に示すように、各捕捉部52間の距離は、円筒状シャフト30の直径よりも小さくなっている。このことにより、各本体部51が撓むことによって各捕捉部52間の距離が円筒状シャフト30の直径よりも大きくならないと、円筒状シャフト30に対して排気器具50を着脱することができないようになる。このため、円筒状シャフト30に対して排気器具50を装着したときにこの排気器具50が円筒状シャフト30から外れにくくなる。また、このような構成によれば、術者は円筒状シャフト30に対する排気器具50の着脱を容易に行うことができるようになる。
【0024】
また、本体部51および各捕捉部52の材料がプラスチックである。また、
図2および
図3に示すように、排気器具50は円筒状シャフト30の略全長に亘って延びている。
【0025】
また、各捕捉部52における円筒状シャフト30との接触箇所には、円筒状シャフト30に対する排気器具50の固定位置が移動することを防止するための摩擦材53が設けられている。摩擦材53としては、例えばウレタンゴム等が挙げられる。このような摩擦材53が設けられていることにより、超音波凝固切開装置10の使用中に円筒状シャフト30に対して排気器具50の位置がずれてしまうことを防止することができる。
【0026】
また、
図4に示すように、各捕捉部52により円筒状シャフト30を捉えるための空間と、流路形成部54により形成される流路56との間には隙間58が形成されている。このような隙間58により、本体部51をより一層撓ませやすくなるため、術者は円筒状シャフト30に対する排気器具50の着脱をより一層容易に行うことができるようになる。
【0027】
また、排気器具50は、排気チューブ70が取り付けられる被取付部60を更に備えている。このような被取付部60の構成の詳細について
図5および
図6を用いて説明する。なお、
図5は、被取付部60の構成を示す斜視図である。また、
図6は、
図5に示す被取付部60を奥側から手前側に向かって見た時の構成を示す側面図である。
【0028】
図5および
図6に示すように、被取付部60は、本体部分62と、排気チューブ70が取り付けられるチューブ取付部分64と、円筒状シャフト30の受け部分66とを有している。本体部分62は、断面が略C形状となっている。また、チューブ取付部分64の周囲に排気チューブ70が嵌められるようになっている。チューブ取付部分64の内部にはミストの流路が形成されている。また、
図6に示すように、受け部分66により円筒状シャフト30が受けられるようになっている。また、受け部分66により円筒状シャフト30が受けられる領域と、チューブ取付部分64の内部の流路との間には隙間68が形成されている。
【0029】
次に、このような構成からなる排気器具50が取り付けられた超音波凝固切開装置10の動作について説明する。
【0030】
上述したように、人体2の腹腔4にある臓器6等に対して手術を行う際に、人体2の腹腔4に二酸化炭素ガスを入れてこの腹腔4を膨らませた後、腹腔鏡100により人体2の腹腔4を観察しながら超音波凝固切開装置10により臓器組織の凝固および切開を行う。この際に、超音波凝固切開装置10のエネルギー発生部32は加熱された状態で臓器組織の凝固および切開を行うため、人体2の腹腔4においてエネルギー発生部32から水蒸気や煙等のミストが発生する(エネルギー発生部32から発生したミストを
図2の参照符号Fで示す)。
【0031】
一方、排気チューブ70には図示しない吸引機器が取り付けられており、この吸引機器により吸引が行われることにより、エネルギー発生部32から発生したミストが排気器具50により吸引されてこの排気器具50から排気チューブ70に送られる。ここで、本実施の形態では、排気器具50の本体部51は円筒状シャフト30の略全長に亘って延びている。このため、排気器具50の先端は、円筒状シャフト30の先端に設けられたエネルギー発生部32の近傍の位置となる。このことにより、エネルギー発生部32から発生したミストはこのエネルギー発生部32から腹腔内に大きく広がることなく排気器具50によって排気することができる。
【0032】
このように、エネルギー発生部32から発生したミストを排気器具50により排気することができるため、エネルギー発生部32から発生したミストによって腹腔鏡100による視野が悪化することを抑制することができる。このことにより、腹腔鏡100の観察窓部の洗浄または清浄化のために手術を度々中断する必要がなくなるため、手術効率を向上させることができる。
【0033】
以上のような構成からなる本実施の形態の排気器具50によれば、超音波凝固切開装置10の円筒状シャフト30の略全長に亘って延びている、可撓性を有する本体部51と、本体部51に設けられた、円筒状シャフト30を捉えるための一対の捕捉部52と、超音波凝固切開装置10から発生するミストの流路56を内部で形成する流路形成部54とを備え、本体部51が撓んで一対の捕捉部52が開くことにより円筒状シャフト30に対する着脱を行うことができるようになっている。このような排気器具50によれば、本体部51が撓んで一対の捕捉部52が開くことにより円筒状シャフト30に対する着脱を行うことができるため、超音波凝固切開装置10に対して排気器具50を容易に着脱することができる。このため、ミストの流路56が組織片等によって詰まった場合でも、円筒状シャフト30から排気器具50を容易に取り外すことができるため、排気器具50の洗浄を簡単に行うことができる。また、円筒状シャフト30に、その略全長に亘って延びている排気器具50を取り付けることにより、発生したミストを確実に排出できる。
【0034】
また、本発明に係る排気システムは、上述した超音波凝固切開装置10および排気器具50を組み合わせたものである。このような排気システムでも、本体部51が撓んで一対の捕捉部52が開くことにより円筒状シャフト30に対する着脱を行うことができるため、超音波凝固切開装置10に対して排気器具50を容易に着脱することができる。また、排気器具50を円筒状シャフト30に取り付けることにより、発生したミストを確実に排出できる。
【0035】
なお、
図7は、従来の超音波凝固切開装置110の側面図である。このような従来の超音波凝固切開装置110の具体的な構成について簡単に説明する。
図7に示すように、従来の超音波凝固切開装置110は、術者が把持するハンドル等の把持部120と、把持部120に設けられた円筒状シャフト130とを有している。円筒状シャフト130の先端には、臓器組織の凝固および切開を行うためのエネルギー発生部132が設けられている。エネルギー発生部132は加熱された状態で臓器組織の凝固および切開を行うため、人体2の腹腔4においてエネルギー発生部132から水蒸気や煙などのミストが発生する。
図7において、エネルギー発生部132から発生したミストを参照符号Fで示す。
【0036】
また、超音波凝固切開装置110は、腹腔内に刺された筒状のアクセスポート140(トロッカー外筒)を介して腹腔内に挿入されている。
図7に示すように、アクセスポート140は、円筒状シャフト130を覆う筒状部材142と、筒状部材142の体外部に設けられた取付部材143と、取付部材143に接続される排気チューブ144とを有している。アクセスポート140は取付部材143によって円筒状シャフト130に取り付けられる。また、取付部材143の内部には流路が形成されており、この流路を介して筒状部材142の内部空間および排気チューブ144が連通している。
【0037】
また、排気チューブ144には図示しない吸引機器が取り付けられており、この吸引機器により吸引が行われることにより、筒状部材142の先端に設けられた開口142aの周囲の気体が筒状部材142の内部の流路を通って取付部材143から排気チューブ144に送られる。
【0038】
図7に示す超音波凝固切開装置110では、筒状部材142の先端に設けられた開口142aは円筒状シャフト130の先端から遠い位置にあるため、エネルギー発生部132から発生したミストが開口142aに入るまでの間に広がってしまうという問題があった。
【0039】
これに対して、本実施の形態の排気器具50を超音波凝固切開装置10に取り付けた場合には、上述した従来の排気システムの課題を解消することができる。
【0040】
なお、本発明による排気器具は、上述したような態様に限定されることはなく、様々な変更を加えることができる。
【0041】
例えば、排気器具の断面は
図4に示すような形状のものに限定されることはない。
図8(a)~(i)は、本発明による他の様々な構成の排気器具の断面図である。
【0042】
図8(a)に示す排気器具150は、円筒状シャフト30の略全長に亘って延びている、可撓性を有する本体部151と、本体部151に設けられた、円筒状シャフト30を捉えるための一対の捕捉部152と、超音波凝固切開装置10の先端から発生するミストの2つの流路156を内部で形成する流路形成部154とを備えている。そして、本体部151が撓むことにより一対の捕捉部152が開いて円筒状シャフト30に対する着脱を行うことができるようになっている。より詳細には、
図8(a)に示すように、各捕捉部152間の距離は、円筒状シャフト30の直径よりも小さくなっている。このことにより、本体部151が撓むことによって各捕捉部152間の距離が円筒状シャフト30の直径よりも大きくならないと、円筒状シャフト30に対して排気器具150を着脱することができないようになる。本体部151および各捕捉部152の材料がプラスチックである。また、各捕捉部152により円筒状シャフト30を捉えるための空間と、流路形成部154により形成される2つの流路156の各々とが連通している。
【0043】
図8(b)に示す排気器具250は、円筒状シャフト30の略全長に亘って延びている、可撓性を有する本体部251と、本体部251に設けられた、円筒状シャフト30を捉えるための一対の捕捉部252と、超音波凝固切開装置10の先端から発生するミストの流路256を内部で形成する流路形成部254とを備えている。そして、本体部251が撓むことにより一対の捕捉部252が開いて円筒状シャフト30に対する着脱を行うことができるようになっている。より詳細には、
図8(b)に示すように、各捕捉部252間の距離は、円筒状シャフト30の直径よりも小さくなっている。このことにより、本体部251が撓むことによって各捕捉部252間の距離が円筒状シャフト30の直径よりも大きくならないと、円筒状シャフト30に対して排気器具250を着脱することができないようになる。本体部251および各捕捉部252の材料がプラスチックである。また、各捕捉部252により円筒状シャフト30を捉えるための空間と、流路形成部254により形成される流路256との間には隙間258が形成されている。
【0044】
図8(c)に示す排気器具350は、可撓性を有する本体部351と、本体部351に設けられた、円筒状シャフト30を捉えるための一対の捕捉部352と、超音波凝固切開装置10の先端から発生するミストの流路356を内部で形成する流路形成部354とを備えている。そして、本体部351が撓むことにより一対の捕捉部352が開いて円筒状シャフト30に対する着脱を行うことができるようになっている。より詳細には、
図8(c)に示すように、各捕捉部352間の距離は、円筒状シャフト30の直径よりも小さくなっている。このことにより、本体部351が撓むことによって各捕捉部352間の距離が円筒状シャフト30の直径よりも大きくならないと、円筒状シャフト30に対して排気器具350を着脱することができないようになる。本体部351および各捕捉部352の材料がプラスチックである。また、各捕捉部352により円筒状シャフト30を捉えるための空間と、流路形成部354により形成される流路356との間には隙間358が形成されている。
【0045】
図8(d)に示す排気器具450は、円筒状シャフト30の略全長に亘って延びている、可撓性を有する本体部451と、本体部451に設けられた、円筒状シャフト30を捉えるための一対の捕捉部452と、超音波凝固切開装置10の先端から発生するミストの流路456を内部で形成する流路形成部454とを備えている。そして、本体部451が撓むことにより一対の捕捉部452が開いて円筒状シャフト30に対する着脱を行うことができるようになっている。より詳細には、
図8(d)に示すように、各捕捉部452間の距離は、円筒状シャフト30の直径よりも小さくなっている。このことにより、本体部451が撓むことによって各捕捉部452間の距離が円筒状シャフト30の直径よりも大きくならないと、円筒状シャフト30に対して排気器具450を着脱することができないようになる。本体部451および各捕捉部452の材料がプラスチックである。また、各捕捉部452により円筒状シャフト30を捉えるための空間と、流路形成部454により形成される流路456とが連通している。
【0046】
図8(e)に示す排気器具550は、円筒状シャフト30の略全長に亘って延びている、可撓性を有する本体部551と、本体部551に設けられた、円筒状シャフト30を捉えるための一対の捕捉部552と、超音波凝固切開装置10の先端から発生するミストの流路556を内部で形成する流路形成部554とを備えている。そして、本体部551が撓むことにより一対の捕捉部552が開いて円筒状シャフト30に対する着脱を行うことができるようになっている。より詳細には、
図8(e)に示すように、各捕捉部552間の距離は、円筒状シャフト30の直径よりも小さくなっている。このことにより、本体部551が撓むことによって各捕捉部552間の距離が円筒状シャフト30の直径よりも大きくならないと、円筒状シャフト30に対して排気器具550を着脱することができないようになる。本体部551および各捕捉部552の材料がプラスチックである。また、各捕捉部552により円筒状シャフト30を捉えるための空間と、流路形成部554により形成される流路556とが連通している。
【0047】
図8(f)に示す排気器具650は、可撓性を有する本体部651と、本体部651に設けられた、円筒状シャフト30を捉えるための一対の捕捉部652と、超音波凝固切開装置10の先端から発生するミストの流路656を内部で形成する流路形成部654とを備えている。そして、本体部651が撓むことにより一対の捕捉部652が開いて円筒状シャフト30に対する着脱を行うことができるようになっている。より詳細には、
図8(f)に示すように、各捕捉部652間の距離は、円筒状シャフト30の直径よりも小さくなっている。このことにより、本体部651が撓むことによって各捕捉部652間の距離が円筒状シャフト30の直径よりも大きくならないと、円筒状シャフト30に対して排気器具650を着脱することができないようになる。本体部651および各捕捉部652の材料がプラスチックである。また、各捕捉部652により円筒状シャフト30を捉えるための空間と、流路形成部654により形成される流路656との間には隙間658が形成されている。
【0048】
図8(g)に示す排気器具750は、可撓性を有する本体部751と、本体部751に設けられた、円筒状シャフト30を捉えるための一対の捕捉部752と、超音波凝固切開装置10の先端から発生するミストの流路756を内部で形成する流路形成部754とを備えている。そして、本体部751が撓むことにより一対の捕捉部752が開いて円筒状シャフト30に対する着脱を行うことができるようになっている。より詳細には、
図8(g)に示すように、各捕捉部752間の距離は、円筒状シャフト30の直径よりも小さくなっている。このことにより、本体部751が撓むことによって各捕捉部752間の距離が円筒状シャフト30の直径よりも大きくならないと、円筒状シャフト30に対して排気器具750を着脱することができないようになる。本体部751および各捕捉部752の材料がプラスチックである。また、各捕捉部752により円筒状シャフト30を捉えるための空間と、流路形成部754により形成される流路756との間には隙間758が形成されている。
【0049】
図8(h)に示す排気器具850は、可撓性を有する本体部851と、本体部851に設けられた、円筒状シャフト30を捉えるための一対の捕捉部852と、超音波凝固切開装置10の先端から発生するミストの流路856を内部で形成する流路形成部854とを備えている。そして、本体部851が撓むことにより一対の捕捉部852が開いて円筒状シャフト30に対する着脱を行うことができるようになっている。より詳細には、
図8(h)に示すように、各捕捉部852間の距離は、円筒状シャフト30の直径よりも小さくなっている。このことにより、本体部851が撓むことによって各捕捉部852間の距離が円筒状シャフト30の直径よりも大きくならないと、円筒状シャフト30に対して排気器具850を着脱することができないようになる。本体部851および各捕捉部852の材料がプラスチックである。また、各捕捉部852により円筒状シャフト30を捉えるための空間と、流路形成部854により形成される流路856とが連通している。
【0050】
図8(i)に示す排気器具950は、円筒状シャフト30の略全長に亘って延びている、可撓性を有する本体部951と、本体部951に設けられた、円筒状シャフト30を捉えるための一対の捕捉部952と、超音波凝固切開装置10の先端から発生するミストの流路956を内部で形成する流路形成部954とを備えている。そして、本体部951が撓むことにより一対の捕捉部952が開いて円筒状シャフト30に対する着脱を行うことができるようになっている。より詳細には、
図8(i)に示すように、各捕捉部952間の距離は、円筒状シャフト30の直径よりも小さくなっている。このことにより、本体部951が撓むことによって各捕捉部952間の距離が円筒状シャフト30の直径よりも大きくならないと、円筒状シャフト30に対して排気器具950を着脱することができないようになる。本体部951および各捕捉部952の材料がプラスチックである。また、各捕捉部952により円筒状シャフト30を捉えるための空間と、流路形成部954により形成される流路956とが連通している。
【0051】
また、本発明に係る排気器具は超音波凝固切開装置10に取り付けられるものに限定されることはない。本発明に係る排気器具が超音波凝固切開装置10以外の切開用エネルギーデバイスに取り付けられてもよい。
図9は、本発明による排気器具50が取り付けられた電気メス装置80(切開用エネルギーデバイス)の斜視図である。なお、
図9に示す電気メス装置80に取り付けられる排気器具50は、
図1乃至
図6に示す排気器具50と同じ構成であるため、その説明を省略する。
【0052】
電気メス装置80は、術者が把持する把持部82と、把持部82に取り付けられた円筒状シャフト90を有している。円筒状シャフト90の先端には、臓器組織の凝固および切開を行うためのエネルギー発生部92が設けられている。エネルギー発生部92は加熱された状態で血管または組織の凝固および切開を行うため、人体2の腹腔4においてエネルギー発生部92から水蒸気や煙などのミストが発生する。
【0053】
エネルギー発生部92から発生したミストを排気するために、電気メス装置80の円筒状シャフト90には排気器具50が取り付けられている。また、排気器具50の基端には排気チューブ70が取り付けられている。排気チューブ70には図示しない吸引機器が取り付けられており、この吸引機器により吸引が行われることにより、エネルギー発生部92から発生したミストが排気器具50により吸引されてこの排気器具50から排気チューブ70に送られる。
【0054】
図9に示すように排気器具50が電気メス装置80に取り付けられる場合でも、排気器具50は、電気メス装置80の円筒状シャフト90の略全長に亘って延びている、可撓性を有する本体部51と、本体部51に設けられた、円筒状シャフト90を捉えるための一対の捕捉部52と、電気メス装置80の先端から発生するミストの流路56を内部で形成する流路形成部54とを備え、本体部51が撓むことにより一対の捕捉部52が開いて円筒状シャフト90に対する着脱を行うことができるようになっている。このような排気器具50によれば、本体部51が撓むことにより円筒状シャフト90に対する着脱を行うことができるため、電気メス装置80に対して排気器具50を容易に着脱することができる。また、円筒状シャフト90に、その略全長に亘って延びている排気器具50を取り付けることにより、発生したミストを確実に排出できる。
【0055】
また、本発明に係る排気システムは、上述した電気メス装置80および排気器具50を組み合わせたものである。このような排気システムでも、本体部51が撓むことにより円筒状シャフト90に対する着脱を行うことができるため、電気メス装置80に対して排気器具50を容易に着脱することができる。また、排気器具50を円筒状シャフト90に取り付けることにより、発生したミストを確実に排出できる。
【0056】
また、本発明の排気器具は、取り付けられるシャフトが円筒状であれば、切開エネルギーデバイスとして上述した超音波凝固切開装置10や電気メス装置80以外にも様々な種類のものに取り付け可能である。
【符号の説明】
【0057】
10 超音波凝固切開装置
30 円筒状シャフト
32 エネルギー発生部
50 排気器具
51 本体部
52 捕捉部
53 摩擦材
54 流路形成部
56 流路
58 隙間
60 被取付部
80 電気メス装置
90 円筒状シャフト
92 エネルギー発生部