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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-16
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/538 20060101AFI20220106BHJP
   A61K 31/46 20060101ALI20220106BHJP
   A61K 47/06 20060101ALI20220106BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20220106BHJP
   A61K 9/72 20060101ALI20220106BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20220106BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20220106BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20220106BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20220106BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20220106BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20220106BHJP
   A61P 11/08 20060101ALI20220106BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220106BHJP
   A61M 15/00 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
A61K31/538
A61K31/46
A61K47/06
A61K9/12
A61K9/72
A61K47/32
A61K47/10
A61K47/12
A61K47/24
A61P11/00
A61P11/06
A61P11/08
A61P43/00 121
A61M15/00 Z
【請求項の数】 20
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020140849
(22)【出願日】2020-08-24
(62)【分割の表示】P 2019515270の分割
【原出願日】2017-09-18
(65)【公開番号】P2020200334
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2020-08-25
(31)【優先権主張番号】1615912.1
(32)【優先日】2016-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1620513.0
(32)【優先日】2016-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】516030797
【氏名又は名称】メキシケム フロー エセ・ア・デ・セ・ヴェ
(74)【代理人】
【識別番号】100113365
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 雅晴
(74)【代理人】
【識別番号】100131842
【弁理士】
【氏名又は名称】加島 広基
(74)【代理人】
【識別番号】100209336
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 悠
(72)【発明者】
【氏名】スチュアート・コール
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー・ジェームズ・ノークス
【審査官】古閑 一実
(56)【参考文献】
【文献】特許第6781831(JP,B1)
【文献】特表2014-528470(JP,A)
【文献】特表2006-510680(JP,A)
【文献】特表2016-503390(JP,A)
【文献】特表2014-513146(JP,A)
【文献】「フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律施行規則第一条第三項及びフロン類算定漏えい量等の報告に関する命令第二条第三号の規定に基づき、国際標準化機構の規格八一七に基づき、環境大臣及び経済産業大臣が定める種類並びにフロン類の種類ごとに地球の温暖化をもたらす程度の二酸化炭素にかかる当該程度に対する比を示す数値として国際的に認められた知見に基づき環境大臣及び経済産業大臣が定める係数」等の改正案の概要,環境省 経済産業省,2016年02月09日,p.1-5
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61K 41/00-45/08
A61P 1/00-43/00
A61M 15/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)チオトロピウム、臭化チオトロピウムおよび臭化チオトロピウム一水和物から選択される少なくとも1つのチオトロピウム化合物と、オロダテロールおよびその薬学的に許容される塩から選択される少なくとも1つのオロダテロール化合物とを含む、薬物成分と、
(ii)噴射剤成分であって、前記噴射剤成分の少なくとも90重量%が1,1-ジフルオロエタン(HFA-152a)である噴射剤成分と、
を含む、医薬組成物。
【請求項2】
前記組成物が、前記医薬組成物の総重量に基づいて、500ppm未満の水を含有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記組成物が、前記医薬組成物の総重量に基づいて、0.5ppm超の水を含有する、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記薬物成分が、臭化チオトロピウムまたは臭化チオトロピウム一水和物とオロダテロールとの混合物である、請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記薬物成分が、前記医薬組成物の総重量の0.01~2.5重量%から成り、かつ、前記噴射剤成分が、前記医薬組成物の総重量の80.0~99.99重量%から成る、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記噴射剤成分の少なくとも95重量%が、1,1-ジフルオロエタン(HFA-152a)である、請求項1~5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記噴射剤成分の少なくとも99重量%が、1,1-ジフルオロエタン(HFA-152a)である、請求項1~6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記噴射剤成分が、0.5~10ppmの不飽和不純物を含有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記組成物の少なくとも95重量%が、前記2つの成分(i)および(ii)からなる、請求項1~8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
少なくとも1つの界面活性剤化合物を含む界面活性剤成分をさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記少なくとも1つの界面活性剤化合物が、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール界面活性剤、オレイン酸、およびレシチンから選択される、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
極性賦形剤をさらに含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記極性賦形剤が、エタノールである、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
極性賦形剤を含まない、請求項1~11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
コーティングされていないアルミニウム容器に40℃および75%の相対湿度で3カ月貯蔵された後に、前記少なくとも1つのチオトロピウム化合物および前記不純物の総重量に基づいて、前記少なくとも1つのチオトロピウム化合物の分解から0.3重量%未満の不純物を生ずる、請求項1~14のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
調製直後の前記医薬組成物中に最初に含有される前記少なくとも1つのチオトロピウム化合物の少なくとも98.0重量%が、コーティングされていないアルミニウム容器に40℃および75%の相対湿度で3カ月貯蔵された後に前記組成物中に存在する、請求項1~15のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記医薬組成物が、(i)有孔微細構造体、(ii)酸安定剤、および(iii)クロモグリク酸およびネドクロミルの両方の薬学的に許容される塩、の1つ以上を含まない、請求項1~16のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記2つの成分(i)および(ii)からなる、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項19】
記医薬組成物中の医薬活性化合物が、前記したチオトロピウム化合物およびオロダテロール化合物からなる、請求項1~18のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか一項に記載の医薬組成物を含有する密封された加圧エアロゾル容器を備えた、定量噴霧式吸入器(MDI)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1,1-ジフルオロエタン(HFA-152a)を含む噴射剤を使用する定量噴霧式吸入器(MDI)などの医療用デバイスからの薬物製剤の送達に関する。より具体的には、本発明は、HFA-152aの噴射剤および噴射剤中に溶解または懸濁された薬物製剤を含む医薬組成物、ならびにそれらの組成物を含有する医療用デバイスに関する。本発明の医薬組成物は、定量噴霧式吸入器(MDI)を使用する加圧エアロゾル容器からの送達に特に適している。
【背景技術】
【0002】
MDIは、吸入薬物送達系の最も重要な種類であり、当業者には周知である。これらは、薬物が溶解、懸濁、または分散した液化噴射剤を使用して、個別かつ正確な量の薬物を患者の気道へと応需型で送達するように設計される。MDIの設計および操作は、多くの標準テキストおよび特許文献に記載されている。これらは全て、薬物製剤を収容する加圧容器、ノズル、および起動時に制御された量の薬物を、ノズルを通して分注することができるバルブアセンブリを備える。ノズルおよびバルブアセンブリは、典型的には、マウスピースを備え付けた筐体の中に位置する。薬物製剤は、薬物が溶解、懸濁、または分散した噴射剤を含むことになり、また極性添加剤、界面活性剤、および防腐剤などの他の物質を含有してもよい。
【0003】
噴射剤をMDI中で十分に機能させるためには、噴射剤がいくつかの特性を有する必要がある。これらは、適切な沸点および蒸気圧を含むことで、室温の閉鎖された容器中で液化し得るが、周囲温度が低くても、MDIを起動して薬物を噴射製剤として送達するときに十分な高圧を生じさせるようにする。さらに、噴射剤は、急性および慢性毒性が低く、心臓感作に対する許容限界が高くなければならない。噴射剤は、薬物、容器、ならびにMDIデバイスの金属および非金属構成要素との接触において化学的安定性が高く、MDIデバイス中の任意のエラストマー材料から低分子量物質を抽出する(extract)傾向が低くなければならない。噴射剤はまた、使用時に薬物の再現性ある送達を可能にするように、均一な溶液、安定した懸濁液、または安定した分散液中に充分な時間、薬物を維持することが可能でなければならない。薬物が噴射剤の懸濁液中にある場合、液体中の薬物粒子の急激な沈降または浮揚を避けるために、液体噴射剤の密度は固体薬物の密度と同様であることが望ましい。最後に、噴射剤は、使用中の患者に重大な燃焼リスクを示すべきでない。特に、気道中で空気と混ざったときに、不燃性であるかまたは可燃性の低い混合物が形成されなければならない。
【0004】
ジクロロジフルオロメタン(R-12)は、特性の好適な組み合わせを有し、しばしばトリクロロフルオロメタン(R-11)と混合されて、長年に渡って最も広く使用されたMDI噴射剤であった。ジクロロジフルオロメタンおよびトリクロロフルオロメタンなどの完全におよび部分的にハロゲン化されたクロロフルオロカーボン(CFC)が地球の保護オゾン層を破壊しているという国際的な懸念から、多くの国がモントリオール議定書の協定を締結し、その製造および使用を厳しく制限し、最終的には完全に廃止すると規定した。ジクロロジフルオロメタンおよびトリクロロフルオロメタンは、冷凍用途では1990年代に廃止されたが、MDIセクターにおいては、モントリオール議定書における必須用途のための例外を受けて、依然として少量で使用されている。
【0005】
1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFA-134a)は、R-12の代わりの冷媒およびMDI噴射剤として導入された。1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFA-227ea)はまた、MDIの分野においてジクロロテトラフルオロエタン(R-114)の代替の噴射剤として導入され、この用途のために、場合によっては単独でまたはHFA-134aと混合して使用される。
【0006】
HFA-134aおよびHFA-227eaは低いオゾン破壊係数(ODP)を有するが、それぞれ1430および3220の地球温暖化係数(GWP)を有し、これは、特にそれらが大気中に放出される場合の散布的な使用に関しては、現在では一部の規制団体によっては高すぎるとみなされている。
【0007】
最近、特に注目を集めている1つの工業分野は、European Mobile Air Conditioning Directive(2006/40/EC)の結果としてHFA-134aの使用が規制管理下となっている、自動車用空調セクターである。産業界は、自動車用空調および他の用途における、低い温室効果温暖化係数(GWP)およびオゾン破壊係数(ODP)を有するHFA-134aの多くの可能性ある代替手段を開発している。これらの代替手段の多くは、ヒドロフルオロプロペン、特に、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)および1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)などのテトラフルオロプロペンを含む。
【0008】
提案されているHFA-134aに対する代替手段は低いGWPを有するが、成分の多く(例えば、フルオロプロペンのうちのいくつか)の毒素学上の性状は不明であり、仮に使用されたとしてもMDIの分野における使用について長年に渡って許容される可能性は低い。
【0009】
臭化チオトロピウム((1α、2β、4β、5α、7β)-7-[(ヒドロキシジ-2-チエニルアセチル)オキシ]-9,9-ジメチル-3-オキサ-9-アゾニアトリシクロ[3.3.1.02,4]ノナンブロミド))は、特にその一水和物の形態で、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の管理に使用される長時間作用型ムスカリン性抗コリン作用性(LAMA)気管支拡張剤である。
【0010】
残念ながら、チオトロピウムをMDIを用いて送達に好適な形態で製剤化することは、その物理的および化学的安定性が制限されていることに起因して、困難であることが立証されている。安定性の問題は、チオトロピウムが、賦形剤、溶媒、例えば、エタノール、および他の治療剤を含む、薬学的製剤で使用されることが多い他の成分に曝露するときに特に顕著であり得る。
【0011】
チオトロピウムの薬学的製剤の不安定性により、周囲温度での保存期間が制限され得、使用前の冷蔵保存が必要となり得る。
【0012】
US2003/171586は、結晶性の臭化チオトロピウムの一水和物としての製造を記載しており、HFA-134aまたはHFA-227eaを使用してエアロゾル形態で噴射させることができることを述べている。US2003/171586はまた、医薬の貯蔵寿命および安全性を決定する際の化学的安定性の重要性、およびチオトロピウム製剤の物理的または化学的安定性におけるいかなる改善も重要な利点であることを強調する。
【0013】
MDIを使用して送達することができ、HFA-134aおよびHFA-227eaと比較してGWPが低下した噴射剤を使用する、チオトロピウムの医薬組成物が必要とされている。改善された安定性を示すチオトロピウムの医薬組成物もまた必要とされている。
【発明の開示】
【0014】
1,1-ジフルオロエタン(HFA-152a)を含む噴射剤を使用することによって、特に製剤が少量の水を含有する場合に、MDIにおけるチオトロピウムベースの製剤の使用に関連する問題を克服できることを見出した。これらの製剤は、化学的安定性の改善、薬物送達の改善のためのエアロゾル化(aerosolisation)性能の改善、良好な懸濁安定性、GWPの低下、標準的なコーティングされていないアルミニウム缶との良好な適合性、ならびに標準的なバルブおよび密封(seal)との良好な適合性を示すことができる。
【0015】
本発明の第1の態様によれば、医薬組成物、例えば、薬剤懸濁液または薬剤溶液が提供され、該組成物は、
(i)チオトロピウムおよびその薬学的に許容される誘導体から選択される少なくとも1つのチオトロピウム化合物を含む薬物成分と、
(ii)1,1-ジフルオロエタン(HFA-152a)を含む噴射剤成分と、を含む。
【0016】
本発明の第1の態様の医薬組成物は、典型的には、医薬組成物の総重量に基づいて、500ppm未満の水を含有する。特に、医薬組成物が、医薬組成物の総重量に基づいて、100ppm未満、好ましくは50ppm未満、より好ましくは10ppm未満、特に5ppm未満の水を含有するときに、化学的安定性の改善が観察される。医薬組成物の含水量について言及する場合、組成物中の自由水(free water)の含有量を指し、薬物成分の一部として使用され得る任意の含水(hydrated)薬物化合物中に偶然存在する任意の水を指すものではない。特に好ましい実施形態において、医薬組成物は水を含まない。あるいは、第1の態様の医薬組成物は、0.5ppm超、例えば、1ppm超であるが上記で論じられた量未満の水を含有してもよく、これは、組成物から全ての水を取り除き、次いでそのような水を含まない状態に保持することが実際には困難であり得るためである。
【0017】
したがって、本発明の第1の態様の好ましい実施形態は、医薬組成物、例えば、薬学的懸濁液または薬学的溶液を提供し、該組成物は、
(i)チオトロピウムおよびその薬学的に許容される誘導体から選択される少なくとも1つのチオトロピウム化合物を含む薬物成分と、
(ii)1,1-ジフルオロエタン(HFA-152a)を含む噴射剤成分と、を含み、
医薬組成物の総重量に基づいて、100ppm未満、好ましくは50ppm未満、より好ましくは10ppm未満、特に5ppm未満の水を含有する。
【0018】
好ましい実施形態では、本発明の第1の態様の医薬組成物は、医薬組成物の総重量に基づいて、1000ppm未満、好ましくは500ppm未満、より好ましくは100ppm未満、特に50ppm未満の溶存酸素を含有する。特に好ましい実施形態では、医薬組成物は酸素を含まない。あるいは、第1の態様の医薬組成物は、0.5ppm超、例えば1ppm以上であるが上記で論じられた量未満の酸素を含有してもよく、これは、組成物を酸素を含まない状態に保持することが実際には困難であり得るためである。薬物化合物の分解が低下する傾向にあり、その結果、より化学的安定性の高い組成物がもたらされるため、酸素含有量が低いことが好ましい。
【0019】
したがって、本発明の第1の態様の好ましい実施形態は、医薬組成物、例えば、薬学的懸濁液または薬学的溶液を提供し、該組成物は、
(i)チオトロピウムおよびその薬学的に許容される誘導体から選択される少なくとも1つのチオトロピウム化合物を含む薬物成分と、
(ii)1,1-ジフルオロエタン(HFA-152a)を含む噴射剤成分と、を含み、
組成物は、医薬組成物の総重量に基づいて、1000ppm未満、好ましくは500ppm未満、より好ましくは100ppm未満、特に50ppm未満の酸素を含有する。
【0020】
本発明の医薬組成物は、定量噴霧式吸入器(MDI)を使用する気道への送達に好適である。
【0021】
本明細書に開示される全ての態様および実施形態における本発明の医薬組成物中の少なくとも1つのチオトロピウム化合物は、好ましくは、微粉化形態である。さらに、本明細書に開示される全ての態様および実施形態における本発明の医薬組成物は、好ましくは、有孔微細構造体(perforated microstructure)を含まない。
【0022】
少なくとも1つのチオトロピウム化合物は、噴射剤中に分散または懸濁させることができる。そのような懸濁液中の薬物粒子は、好ましくは、直径100ミクロン未満、例えば、50ミクロン未満である。しかしながら、代替の実施形態では、本発明の医薬組成物は、例えばエタノールなどの極性賦形剤の補助により噴射剤に溶解された、少なくとも1つのチオトロピウム化合物を含む溶液である。
【0023】
チオトロピウムの好適な薬学的に許容される誘導体には、とりわけ、薬学的に許容される塩、薬学的に許容されるプロドラッグ、薬学的に許容される溶媒和物、薬学的に許容される水和物、薬学的に許容されるエステル、薬学的に許容される塩の溶媒和物、薬学的に許容されるプロドラッグの溶媒和物、薬学的に許容される塩の水和物、および薬学的に許容されるプロドラッグの水和物が含まれる。チオトロピウムの好ましい薬学的に許容される誘導体は、臭化チオトロピウム、好ましくは臭化チオトロピウム一水和物である。特に好ましい実施形態では、本発明の第1の態様の医薬組成物中の少なくとも1つのチオトロピウム化合物は、臭化チオトロピウムおよび/または臭化チオトロピウム一水和物、より好ましくは臭化チオトロピウム一水和物である。
【0024】
したがって、本発明の上記の医薬組成物では、少なくとも1つのチオトロピウム化合物は、好ましくは、臭化チオトロピウムおよび臭化チオトロピウム一水和物から選択される。
【0025】
本発明の第1の態様の医薬組成物中の薬物成分の量は、典型的には、医薬組成物の総重量に基づいて0.01~2.5重量%の範囲であろう。好ましくは、薬物成分は、医薬組成物の総重量の0.01~2.0重量%、より好ましくは0.05~2.0重量%、特に0.05~1.5重量%を構成するであろう。薬物成分は、チオトロピウムおよびその薬学的に許容される誘導体から選択される少なくとも1つのチオトロピウム化合物から本質的になるか、またはそれらから完全になることができる。「から本質的になる」という用語は、薬物成分の少なくとも98重量%、より好ましくは少なくとも99重量%、特に少なくとも99.9重量%が、少なくとも1つのチオトロピウム化合物からなることを意味する。あるいは、薬物成分は、少なくとも1つの長時間作用型β-2アゴニスト(LABA)および/または少なくとも1つのコルチコステロイドなどの他の薬物を含んでもよい。
【0026】
本発明の第1の態様の医薬組成物中の噴射剤成分は、1,1-ジフルオロエタン(HFA-152a)を含む。したがって、噴射剤成分がHFA-152aに加えて他の噴射剤化合物を含み得る可能性を除外しない。例えば、噴射剤成分は、例えば、HFA-227ea、HFA-134a、ジフルオロメタン(HFA-32)、プロパン、ブタン、イソブタン、およびジメチルエーテルから選択される1つ以上の追加のヒドロフルオロカーボンまたは炭化水素噴射剤化合物をさらに含んでもよい。好ましい追加の噴射剤は、HFA-227eaおよびHFA-134aである。
【0027】
HFA-134aまたはHFA-227eaなどの追加の噴射剤化合物を含む場合、噴射剤成分の少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも10重量%、より好ましくは50重量%がHFA-152aでなければならない。典型的には、HFA-152aは、噴射剤成分の少なくとも90重量%、例えば90~99重量%を構成する。好ましくは、HFA-152aは、噴射剤成分の少なくとも95重量%、例えば95~99重量%、より好ましくは少なくとも99重量%を構成するであろう。
【0028】
好ましい実施形態では、噴射剤成分は、250未満、より好ましくは200未満、さらにより好ましくは150未満の地球温暖化係数(GWP)を有する。
【0029】
特に好ましい実施形態では、噴射剤成分は、完全にHFA-152aからなり、その結果、本発明の医薬組成物は、HFA-152aを唯一の噴射剤として含む。「から完全になる」という用語は、言うまでもなく、HFA-152aの製造に使用されるプロセスの後に存在し得る少量の、例えば、最大で数百ppmの不純物の存在を除外しないが、但し、それらが医療用途における噴射剤の安定性に影響しないことを条件とする。好ましくは、HFA-152aの噴射剤は、10ppm以下、例えば0.5~10ppm、より好ましくは5ppm以下、例えば1~5ppmの不飽和不純物、例えば、フッ化ビニル、塩化ビニル、フッ化ビニリデン、およびクロロ-フルオロエチレン化合物を含有するであろう。
【0030】
本発明の医薬組成物中の噴射剤成分の量は、医薬組成物中の薬物および他の成分の量に応じて変わるであろう。典型的には、噴射剤成分は、医薬組成物の総重量の80.0~99.99重量%を構成するであろう。好ましくは、噴射剤成分は、医薬組成物の総重量の90.0~99.99重量%、より好ましくは96.5~99.99重量%、特に97.5~99.95重量%を構成するであろう。
【0031】
一実施形態では、本発明の第1の態様の医薬組成物は、上記で列挙した2つの成分(i)および(ii)から本質的になり、より好ましくはそれらから完全になる。「から本質的になる」という用語は、医薬組成物の少なくとも98重量%、より好ましくは少なくとも99重量%、特に少なくとも99.9重量%が、列挙した2つの成分からなることを意味する。
【0032】
別の実施形態では、本発明の第1の態様の医薬組成物は、エタノールなどの極性賦形剤をさらに含む。極性賦形剤は、定量噴霧式吸入器(MDI)を使用して送達される呼吸器障害を治療するための医薬組成物中でこれまでに使用されている。これらはまた、溶媒、共溶媒、担体溶媒、およびアジュバントとも称される。これらを含めることで、界面活性剤または薬物が噴射剤に可溶化し、および/または医薬組成物が保存されている容器からノズル出口に該組成物が通過する際に該組成物が接触する定量噴霧式吸入器の表面上に薬物粒子の沈着を抑制するように作用し得る。これらはまた、薬物が好適な極性添加剤と混合される2段階充填プロセスにおいて増量剤として使用される。最も一般的に使用される極性添加剤は、エタノールである。極性添加剤を使用する場合、極性添加剤は、典型的には、医薬組成物の総重量に基づいて、0.5~10重量%の量、好ましくは1~5重量%の量で存在するであろう。
【0033】
好ましい実施形態では、本発明の第1の態様の医薬組成物は、エタノールなどの極性添加剤を含まない。
【0034】
本発明の第1の態様の医薬組成物はまた、少なくとも1つの界面活性剤化合物を含む界面活性剤成分を含んでもよい。MDIの薬学的製剤でこれまで使用されてきた種類の界面活性剤化合物を、本発明の医薬組成物において使用することができる。好ましい界面活性剤は、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール界面活性剤、オレイン酸、およびレシチンから選択される。オレイン酸という用語は、必ずしも純粋な(9Z)-オクタデカ-9-エン酸を指すものではない。医療用途における界面活性剤としての使用のために販売される場合、オレイン酸は典型的にはいくつかの脂肪酸の混合物であり、(9Z)-オクタデカ-9-エン酸がその主な脂肪酸であり、例えば、界面活性剤の総重量に基づいて少なくとも65重量%で存在する。
【0035】
好ましい実施形態では、界面活性剤成分は、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、オレイン酸、およびレシチンから選択される少なくとも1つの界面活性剤化合物から本質的になり、さらにより好ましくはそれから完全になる。特に好ましい実施形態では、界面活性剤成分は、ポリビニルピロリドンおよびポリエチレングリコールから選択される少なくとも1つの界面活性剤から本質的になり、さらにより好ましくはそれから完全になる。「から本質的になる」という用語は、界面活性剤成分の少なくとも95重量%、より好ましくは少なくとも98重量%、特に少なくとも99重量%が、列挙した界面活性剤からなることを意味する。
【0036】
界面活性剤成分を使用する場合、該成分は、典型的には、医薬組成物の総重量に基づいて、0.1~2.5重量%の量、好ましくは0.2~1.5重量%の量で存在するであろう。
【0037】
本発明の医薬組成物はまた、長時間作用型β-2-アゴニスト(LABA)を含んでもよい。喘息および慢性閉塞性肺疾患の治療のためにこれまで使用され、MDIを使用して送達することができる長時間作用型β-2-アゴニストのいずれも、本発明の医薬組成物において使用することができる。好適な長時間作用型β-2-アゴニストには、ホルモテロール、アルホルモテロール、バンブテロール、クレンブテロール、サルメテロール、インダカテロール、オロダテロール、およびビランテロール、ならびにそれらの薬学的に許容される塩などのそれらの薬学的に許容される誘導体が含まれる。好ましい化合物には、ホルモテロール、サルメテロール、およびオロダテロール、ならびにそれらの薬学的に許容される塩が含まれる。特に好ましい化合物には、フマル酸ホルモテロール、フマル酸ホルモテロール二水和物、キシナホ酸サルメテロール、およびオラダテロールが含まれる。
【0038】
したがって、本発明の第2の態様は、医薬組成物、例えば、薬学的懸濁液または薬学的溶液を提供し、該組成物は、
(i)チオトロピウムおよびその薬学的に許容される誘導体から選択される少なくとも1つのチオトロピウム化合物、特に臭化チオトロピウムおよび臭化チオトロピウム一水和物、ならびに少なくとも1つの長時間作用型β-2-アゴニスト(LABA)、特にホルモテロール、サルメテロール、およびオロダテロールから選択される少なくとも1つの長時間作用型β-2-アゴニスト(LABA)、ならびにそれらの薬学的に許容される塩を含む、薬物成分と、
(ii)1,1-ジフルオロエタン(HFA-152a)を含む噴射剤成分と、を含む。
【0039】
本発明の第2の態様の医薬組成物は、典型的には、医薬組成物の総重量に基づいて、500ppm未満の水を含有する。好ましくは、本発明の第2の態様の医薬組成物は、医薬組成物の総重量に基づいて、100ppm未満、より好ましくは50ppm未満、特に10ppm未満、特に5ppm未満の水を含有する。噴射剤としてのHFA-152aの使用とともに少量の水があると、化学的安定性が改善された医薬組成物が得られ得ることが見出された。医薬組成物の含水量に言及する場合、組成物中の自由水の含有量を指し、薬物成分の一部として使用され得る任意の含水薬物化合物中に偶然存在する任意の水を指すものではない。特に好ましい実施形態では、本発明の第2の態様の医薬組成物は、水を含まない。あるいは、第2の態様の医薬組成物は、0.5ppm超、例えば、1ppm超であるが上記で論じられた量未満の水を含有してもよく、これは、組成物から全ての水を取り除き、次いでそのような水を含まない状態に保持することが実際には困難であり得るためである。
【0040】
好ましい実施形態では、本発明の第2の態様の医薬組成物は、医薬組成物の総重量に基づいて、1000ppm未満、好ましくは500ppm未満、より好ましくは100ppm未満、特に50ppm未満の溶存酸素を含有する。特に好ましい実施形態では、医薬組成物は、酸素を含まない。あるいは、第2の態様の医薬組成物は、0.5ppm超、例えば1ppm以上であるが上記で論じられた量未満の酸素を含有してもよく、これは、組成物を酸素を含まない状態に保持することが実際には困難であり得るためである。薬物化合物の分解が低下する傾向にあり、その結果、より化学的安定性の高い組成物がもたらされるため、酸素含有量が低いことが好ましい。
【0041】
好ましいチオトロピウム化合物は、本発明の第1の態様の医薬組成物に関して上記で論じたとおりである。
【0042】
本発明の第2の態様の医薬組成物中の薬物成分および噴射剤成分の典型的かつ好ましい量、ならびに噴射剤成分のための好適な典型的かつ好ましい組成物は、本発明の第1の態様の医薬組成物について上記で論じたとおりである。薬物成分は、少なくとも1つのチオトロピウム化合物および少なくとも1つの長時間作用型β-2アゴニスト(LABA)から本質的になるか、またはそれらから完全になることができる。「から本質的になる」という用語は、薬物成分の少なくとも98重量%、より好ましくは少なくとも99重量%、特に少なくとも99.9重量%が、少なくとも1つのチオトロピウム化合物および少なくとも1つの長時間作用型β-2アゴニストからなることを意味する。
【0043】
一実施形態では、本発明の第2の態様の医薬組成物は、上記に列挙した2つの成分(i)および(ii)から本質的になり、より好ましくはそれらから完全になる。「から本質的になる」という用語は、医薬組成物の少なくとも98重量%、より好ましくは少なくとも99重量%、特に少なくとも99.9重量%が、列挙した2つの成分からなることを意味する。
【0044】
別の実施形態では、本発明の第2の態様の医薬組成物は、本発明の第1の態様の医薬組成物について上記で論じた極性賦形剤および界面活性剤成分の一方または両方を含有してもよい。好適かつ好ましい極性賦形剤および界面活性剤は、本発明の第1の態様の医薬組成物について上記で論じたとおりである。極性賦形剤および界面活性剤成分の典型的かつ好ましい量は、本発明の第1の態様の医薬組成物について上記で論じたとおりである。
【0045】
本発明の第2の態様の特に好ましい実施形態では、薬物成分は、臭化チオトロピウムおよび臭化チオトロピウム一水和物から選択される少なくとも1つのチオトロピウム化合物と、ホルモテロール、サルメテロール、およびオロダテロール、ならびにそれらの薬学的に許容される塩から選択される少なくとも1つの長時間作用型β-2-アゴニストと、を含む。好ましくは、少なくとも1つの選択されたチオトロピウム化合物および少なくとも1つの選択された長時間作用型β-2-アゴニストは、本発明の第2の態様の医薬組成物中の唯一の薬学的活性物質である。
【0046】
本発明の医薬組成物はまた、コルチコステロイドも含む。喘息および慢性閉塞性肺疾患を治療するためにこれまで使用され、MDIを使用して送達することができるコルチコステロイドのいずれも、本発明の医薬組成物において使用することができる。好適なコルチコステロイドには、ブデソニド、モメタゾン、ベクロメタゾン、およびフルチカゾン、ならびにそれらの薬学的に許容される誘導体、例えばそれらの薬学的に許容される塩およびエステルが含まれる。好ましい化合物には、ブデソニド、フランカルボン酸モメタゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、およびプロピオン酸フルチカゾンが挙げられる。最も好ましいコルチコステロイドは、ブデソニド、モメタゾン、フルチカゾン、およびベクロメタゾン、特にブデソニドおよびモメタゾン、とりわけブデソニドである。
【0047】
したがって、本発明の第3の態様は、医薬組成物、例えば、薬学的懸濁液または薬学的溶液を提供し、該組成物は、
(i)チオトロピウムおよびその薬学的に許容される誘導体、特に臭化チオトロピウムおよび臭化チオトロピウム一水和物から選択される少なくとも1つのチオトロピウム化合物と、少なくとも1つのコルチコステロイド、特に、フルチカゾン、ブデソニド、モメタゾン、およびベクロメタゾン、ならびにそれらの薬学的に許容される誘導体から選択される少なくとも1つのコルチコステロイド、とりわけブデソニドと、を含む薬物成分と、
(ii)1,1-ジフルオロエタン(HFA-152a)を含む噴射剤成分と、を含む。
【0048】
本発明の第3の態様の医薬組成物は、典型的には、医薬組成物の総重量に基づいて、500ppm未満の水を含有する。好ましくは、本発明の第3の態様の医薬組成物は、医薬組成物の総重量に基づいて、100ppm未満、より好ましくは50ppm未満、特により好ましくは10ppm未満、とりわけ5ppm未満の水を含有する。噴射剤としてのHFA-152aの使用とともに少量の水があると、化学的安定性が改善された医薬組成物が得られ得ることが見出された。医薬組成物の含水量に言及する場合、組成物中の自由水の含有量を指し、薬物成分の一部として使用され得る任意の含水薬物化合物中に偶然存在する任意の水を指すものではない。特に好ましい実施形態では、本発明の第3の態様の医薬組成物は、水を含まない。あるいは、第3の態様の医薬組成物は、0.5ppm超、例えば、1ppm超であるが上記で論じられた量未満の水を含有してもよく、これは、組成物から全ての水を取り除き、次いでそのような水を含まない状態に保持することが実際には困難であり得るためである。
【0049】
好ましい実施形態では、本発明の第3の態様の医薬組成物は、医薬組成物の総重量に基づいて、1000ppm未満、好ましくは500ppm未満、より好ましくは100ppm未満、特に50ppm未満の溶存酸素を含有する。特に好ましい実施形態では、医薬組成物は、酸素を含まない。あるいは、第3の態様の医薬組成物は、0.5ppm超、例えば1ppm以上であるが上記で論じられた量未満の酸素を含有してもよく、これは、組成物を酸素を含まない状態に保持することが実際には困難であり得るためである。薬物化合物の分解が低下する傾向にあり、その結果、より化学的安定性の高い組成物がもたらされるため、酸素含有量が低いことが好ましい。
【0050】
好ましいチオトロピウム化合物は、本発明の第1の態様の医薬組成物に関して上記で論じたとおりである。
【0051】
本発明の第3の態様の医薬組成物中の薬物成分および噴射剤成分の典型的かつ好ましい量、ならびに噴射剤成分のための好適な典型的かつ好ましい組成物は、本発明の第1の態様の医薬組成物について上記で論じたとおりである。薬物成分は、少なくとも1つのチオトロピウム化合物および少なくとも1つのコルチコステロイドから本質的になるか、またはそれらから完全になることができる。「から本質的になる」という用語は、薬物成分の少なくとも98重量%、より好ましくは少なくとも99重量%、特に少なくとも99.9重量%が、少なくとも1つのチオトロピウム化合物および少なくとも1つのコルチコステロイドからなることを意味する。
【0052】
一実施形態では、本発明の第3の態様の医薬組成物は、上記に列挙した2つの成分(i)および(ii)から本質的になり、より好ましくはそれらから完全になる。「から本質的になる」という用語は、医薬組成物の少なくとも98重量%、より好ましくは少なくとも99重量%、特に少なくとも99.9重量%が、列挙した2つの成分からなることを意味する。
【0053】
別の実施形態では、本発明の第3の態様の医薬組成物は、本発明の第1の態様の医薬組成物について上記で論じた極性賦形剤および界面活性剤成分の一方または両方を含有してもよい。好適かつ好ましい極性賦形剤および界面活性剤は、本発明の第1の態様の医薬組成物について上記で論じたとおりである。極性賦形剤および界面活性剤成分の典型的かつ好ましい量は、本発明の第1の態様の医薬組成物について上記で論じたとおりである。
【0054】
本発明の第3の態様の特に好ましい実施形態では、薬物成分は、臭化チオトロピウムおよび臭化チオトロピウム一水和物から選択される少なくとも1つのチオトロピウム化合物と、ブデソニドと、を含む。好ましくは、少なくとも1つの選択されたチオトロピウム化合物およびブデソニドは、本発明の第3の態様の医薬組成物中の唯一の薬学的活性物質である。
【0055】
本発明の医薬組成物はまた、長時間作用型β-2-アゴニスト(LABA)およびコルチコステロイドも含み得る。喘息および慢性閉塞性肺疾患の治療のためにこれまで使用され、MDIを使用して送達することができる、長時間作用型β-2-アゴニストおよびコルチコステロイドのいずれも、本発明の医薬組成物において使用することができる。好適かつ好ましい長時間作用型β-2-アゴニストは、本発明の第2の態様について上記で論じたとおりである。好適かつ好ましいコルチコステロイドは、本発明の第3の態様について上記で論じたとおりである。
【0056】
したがって、本発明の第4の態様は、医薬組成物、例えば、薬学的懸濁液または薬学的溶液を提供し、該組成物は、
(i)チオトロピウムおよびその薬学的に許容される誘導体から選択される少なくとも1つのチオトロピウム化合物、特に臭化チオトロピウムおよび臭化チオトロピウム一水和物と、少なくとも1つの長時間作用型β-2-アゴニスト(LABA)、とりわけホルモテロール、サルメテロール、およびオロダテロール、ならびにそれらの薬学的に許容される塩から選択される少なくとも1つの長時間作用型β-2-アゴニスト(LABA)と、少なくとも1つのコルチコステロイド、特にフルチカゾン、ブデソニド、モメタゾン、およびベクロメタゾン、ならびにそれらの薬学的に許容される誘導体から選択される少なくとも1つのコルチコステロイド、特にブデソニドと、を含む薬物成分と、
(ii)1,1-ジフルオロエタン(HFA-152a)を含む噴射剤成分と、を含む。
【0057】
本発明の第4の態様の医薬組成物は、典型的には、医薬組成物の総重量に基づいて、500ppm未満の水を含有する。好ましくは、本発明の第4の態様の医薬組成物は、医薬組成物の総重量に基づいて、100ppm未満、より好ましくは50ppm未満、特により好ましくは10ppm未満、とりわけ5ppm未満の水を含有する。噴射剤としてのHFA-152aの使用とともに少量の水があると、化学的安定性が改善された医薬組成物が得られ得ることが見出された。医薬組成物の含水量に言及する場合、組成物中の自由水の含有量を指し、薬物成分の一部として使用され得る任意の含水薬物化合物中に偶然存在する任意の水を指すものではない。特に好ましい実施形態では、本発明の第4の態様の医薬組成物は、水を含まない。あるいは、第4の態様の医薬組成物は、0.5ppm超、例えば、1ppm超であるが上記で論じられた量未満の水を含有してもよく、これは、組成物から全ての水を取り除き、次いでそのような水を含まない状態に保持することが実際には困難であり得るためである。
【0058】
好ましい実施形態では、本発明の第4の態様の医薬組成物は、医薬組成物の総重量に基づいて、1000ppm未満、好ましくは500ppm未満、より好ましくは100ppm未満、特に50ppm未満の溶存酸素を含有する。特に好ましい実施形態では、医薬組成物は、酸素を含まない。あるいは、第4の態様の医薬組成物は、0.5ppm超、例えば1ppm以上であるが上記で論じられた量未満の酸素を含有してもよく、これは、組成物を酸素を含まない状態に保持することが実際には困難であり得るためである。薬物化合物の分解が低下する傾向にあり、その結果、より化学的安定性の高い組成物がもたらされるため、酸素含有量が低いことが好ましい。
【0059】
好ましいチオトロピウム化合物は、本発明の第1の態様の医薬組成物に関して上記で論じたとおりである。
【0060】
本発明の第4の態様の医薬組成物中の薬物成分および噴射剤成分の典型的かつ好ましい量、ならびに噴射剤成分のための好適な典型的かつ好ましい組成物は、本発明の第1の態様の医薬組成物について上記で論じたとおりである。薬物成分は、少なくとも1つのチオトロピウム化合物、少なくとも1つの長時間作用型β-2アゴニスト(LABA)、および少なくとも1つのコルチコステロイドから本質的になるか、またはそれから完全になることができる。「から本質的になる」という用語は、薬物成分の少なくとも98重量%、より好ましくは少なくとも99重量%、特に少なくとも99.9重量%が、少なくとも1つのチオトロピウム化合物、少なくとも1つの長時間作用型β-2アゴニスト、および少なくとも1つのコルチコステロイドからなることを意味する。
【0061】
一実施形態において、本発明の第4の態様の医薬組成物は、上記で列挙した2つの成分(i)および(ii)から本質的になり、より好ましくはそれらから完全になる。「から本質的になる」という用語は、医薬組成物の少なくとも98重量%、より好ましくは少なくとも99重量%、特に少なくとも99.9重量%が、列挙した2つの成分からなることを意味する。
【0062】
別の実施形態では、本発明の第4の態様の医薬組成物は、本発明の第1の態様の医薬組成物について上記で論じた極性賦形剤および界面活性剤成分の一方または両方を含有してもよい。好適かつ好ましい極性賦形剤および界面活性剤は、本発明の第1の態様の医薬組成物について上記で論じたとおりである。極性賦形剤および界面活性剤成分の典型的かつ好ましい量は、本発明の第1の態様の医薬組成物について上記で論じたとおりである。
【0063】
本発明の第4の態様の特に好ましい実施形態では、薬物成分は、臭化チオトロピウムおよび臭化チオトロピウム一水和物から選択される少なくとも1つのチオトロピウム化合物と、ホルモテロール、サルメテロール、およびオロダテロール、ならびそれらの薬学的に許容される塩から選択される少なくとも1つの長時間作用型β-2-アゴニストと、ブデソニドと、を含む。好ましくは、少なくとも1つの選択されたチオトロピウム化合物、少なくとも1つの選択された長時間作用型β-2-アゴニスト、およびブデソニドは、本発明の第4の態様の医薬組成物中の唯一の医薬活性物質である。
【0064】
臭化チオトロピウム一水和物などのチオトロピウム化合物と、噴射剤と、を含有する医薬組成物における1,1-ジフルオロエタン(HFA-152a)を含む噴射剤の使用は、噴射剤としてHFA-134aまたはHFA-227eaのいずれかを含有する製剤で示す安定性と比較して、チオトロピウム化合物の安定性を予想外に改善することができることが見出された。
【0065】
したがって、本発明の第5の態様では、噴射剤成分と、チオトロピウムおよびその薬学的に許容される誘導体から選択される少なくとも1つのチオトロピウム化合物を含む薬物成分と、を含む医薬組成物の安定性を改善する方法であって、1,1-ジフルオロエタン(HFA-152a)を含む噴射剤成分を使用することを含む、方法を提供する。
【0066】
本発明の第5の態様の安定化方法における医薬組成物は、懸濁液または溶液であってもよい。
【0067】
特に、医薬組成物が、医薬組成物の総重量に基づいて、500ppm未満、好ましくは100ppm未満、より好ましくは50ppm未満、さらにより好ましくは10ppm未満、特に5ppm未満の水を含有する場合、化学的安定性の改善をもたらすことができる。医薬組成物の含水量について言及する場合、組成物中の自由水含有量を指し、薬物成分の一部として使用され得る任意の含水薬物化合物中に偶然存在する任意の水を指すものではない。特に好ましい実施形態では、医薬組成物は、水を含まない。あるいは、本発明の第5の態様で記述した医薬組成物は、0.5ppm超、例えば、1ppm超であるが上記で論じられた量未満の水を含有してもよく、これは、組成物から全ての水を取り除き、次いで組成物をそのような水を含まない状態に保持することが実際には困難であり得るためである。
【0068】
したがって、本発明の第5の態様の好ましい実施形態では、噴射剤成分と、チオトロピウムおよびその薬学的に許容される誘導体から選択される少なくとも1つのチオトロピウム化合物を含む薬物成分と、を含む医薬組成物の安定性を改善する方法であって、1,1-ジフルオロエタン(HFA-152a)を含む噴射剤成分を使用することと、医薬組成物の含水量を、医薬組成物の総重量に基づいて、100ppm未満、好ましくは50ppm未満、より好ましくは10ppm未満、特に5ppm未満に維持するように、医薬組成物の調製のための成分および条件を選択することと、を含む、方法が提供される。
【0069】
実際には、上記で述べた低い水分レベルの医薬組成物の調製には、噴射剤成分が通常は最終デバイスにおいて最大の質量であるので、好適に低い含水量の噴射剤成分を使用し、次いで医薬組成物を好適に乾燥された条件下、例えば乾燥窒素雰囲気下で調製することを伴う。乾燥条件下での医薬組成物の調製は周知であり、関与する技術は当業者に十分に理解されている。最終デバイスにおいて低い含水量を得るための他の工程には、デバイスの組み立て前および組み立て中に、缶およびバルブ構成部品を、湿度制御された雰囲気中、例えば乾燥窒素または空気中で乾燥し、保存することが含まれる。医薬組成物が有意な量のエタノールを含有する場合、エタノールおよび噴射剤の含水量を、例えば含水量を好適に低いレベルまで低下するように乾燥させることによって制御することが重要であり得る。好適な乾燥技術は当業者には周知であり、モレキュラーシーブまたは他の無機乾燥剤および膜乾燥プロセスの使用を含む。
【0070】
本発明の第5の態様の安定化方法において、好適かつ好ましいチオトロピウム化合物およびその誘導体は、本発明の第1の態様の医薬組成物について上記で記載したとおりである。加えて、本発明の第5の態様の安定化方法における薬物成分および噴射剤成分の典型的かつ好ましい量、ならびに噴射剤成分のための好適な典型的かつ好ましい組成物は、本発明の第1の態様の医薬組成物について上記で論じたとおりである。
【0071】
本発明の第5の態様の安定化方法における薬物成分は、チオトロピウムおよびその薬学的に許容される誘導体から選択される少なくとも1つのチオトロピウム化合物から本質的になるか、またはそれから完全になることができる。「から本質的になる」という用語は、薬物成分の少なくとも98重量%、より好ましくは少なくとも99重量%、特に少なくとも99.9重量%が、少なくとも1つのチオトロピウム化合物からなることを意味する。あるいは、薬物成分は、少なくとも1つのコルチコステロイドおよび/または少なくとも1つの長時間作用型β-2-アゴニストをさらに含み得る。コルチコステロイドおよび/または長時間作用型β-2-アゴニストを含む場合、好適かつ好ましいコルチコステロイドおよび好適かつ好ましい長時間作用型β-2-アゴニストは、本発明の第2および第3の態様の医薬組成物について上記のとおりである。
【0072】
一実施形態では、本発明の第5の態様における医薬組成物は、上記で定義した薬物成分および噴射剤成分から本質的になり、より好ましくはそれらから完全になる。「から本質的になる」という用語は、医薬組成物の少なくとも98重量%、より好ましくは少なくとも99重量%、特に少なくとも99.9重量%が、2つの成分からなることを意味する。
【0073】
代替の実施形態では、本発明の第5の態様の医薬組成物は、本発明の第1の態様の医薬組成物について上記で論じた極性賦形剤および界面活性剤成分の一方または両方を含有してもよい。好適かつ好ましい極性賦形剤および界面活性剤は、本発明の第1の態様の医薬組成物について上記で論じたとおりである。極性賦形剤および界面活性剤成分の典型的かつ好ましい量は、本発明の第1の態様の医薬組成物について上記で論じたとおりである。
【0074】
1つの好ましい安定化方法では、40℃および75%の相対湿度で1カ月間保存した後の結果として得られる医薬組成物は、少なくとも1つのチオトロピウム化合物および不純物の総重量に基づいて、少なくとも1つのチオトロピウム化合物の分解からの不純物を0.2重量%未満、好ましくは0.1重量%未満、より好ましくは0.05重量%未満生むことになる。
【0075】
医薬組成物がまた少なくとも1つのコルチコステロイドおよび/または少なくとも1つの長時間作用型β-2-アゴニストも含む、別の好ましい安定化方法では、40℃および75%の相対湿度で1カ月間保存した後の結果として得られる医薬組成物は、少なくとも1つのチオトロピウム化合物および不純物の総重量に基づいて、少なくとも1つのチオトロピウム化合物の分解からの不純物を0.2重量%未満、好ましくは0.1重量%未満、より好ましくは0.05重量%未満生むことになる。
【0076】
さらに好ましい安定化方法では、40℃および75%の相対湿度で3カ月間保存した後の結果として得られる医薬組成物は、少なくとも1つのチオトロピウム化合物および不純物の総重量に基づいて、少なくとも1つのチオトロピウム化合物の分解からの不純物を0.3重量%未満、好ましくは0.2重量%未満、より好ましくは0.15重量%未満生むことになる。
【0077】
医薬組成物がまた少なくとも1つのコルチコステロイドおよび/または少なくとも1つの長時間作用型β-2-アゴニストも含む、別の好ましい安定化方法では、40℃および75%の相対湿度で3カ月間保存した後の結果として得られる医薬組成物は、少なくとも1つのチオトロピウム化合物および不純物の総重量に基づいて、少なくとも1つのチオトロピウム化合物の分解からの不純物を0.3重量%未満、好ましくは0.2重量%未満、より好ましくは0.15重量%未満生むことになる。
【0078】
さらに別の好ましい安定化方法では、調製直後の医薬組成物中に最初に(originally)含有される少なくとも1つのチオトロピウム化合物の少なくとも97.0重量%、好ましくは少なくとも98.0重量%、より好ましくは少なくとも98.5重量%が、40℃および75%の相対湿度で3カ月間保存した後に組成物中に存在するであろう。
【0079】
医薬組成物がまた少なくとも1つのコルチコステロイドおよび/または少なくとも1つの長時間作用型β-2-アゴニストも含む、さらに別の好ましい安定化方法では、調製直後の医薬組成物中に最初に含有される少なくとも1つのチオトロピウム化合物の少なくとも97.0重量%、好ましくは少なくとも98.0重量%、より好ましくは少なくとも98.5重量%が、40℃および75%の相対湿度で3カ月間保存した後に組成物中に存在するであろう。
【0080】
さらに好ましい安定化方法では、組成物の最初の薬学的活性の少なくとも97.0%、好ましくは少なくとも98.0%、より好ましくは少なくとも98.5%が、40℃および75%の相対湿度で3カ月間保存された後に保持される。
【0081】
本発明の第1、第2、第3、および第4の態様の1つの好ましい医薬組成物は、40℃および75%の相対湿度で1カ月間保存された後に、少なくとも1つのチオトロピウム化合物の分解からの総不純物を0.2重量%未満、好ましくは0.1重量%未満、より好ましくは0.05重量%未満生むことになる。
【0082】
本発明の第1、第2、第3、および第4の態様の別の好ましい医薬組成物は、40℃および75%の相対湿度で3カ月間保存した後で、少なくとも1つのチオトロピウム化合物の分解から総不純物を0.3重量%未満、好ましくは0.2重量%未満、より好ましくは0.15重量%未満生むことになる。
【0083】
上記で示した不純物の重量%は、少なくとも1つのチオトロピウム化合物および不純物の総重量に基づいている。
【0084】
本発明の第1、第2、第3、および第4の態様のさらに好ましい医薬組成物において、調製直後の本発明の医薬組成物中に最初に含有される少なくとも1つのチオトロピウム化合物の少なくとも97.0重量%、好ましくは少なくとも98.0重量%、より好ましくは少なくとも98.5重量%が、40℃および75%の相対湿度で3カ月間保存した後に組成物中に存在するであろう。
【0085】
本発明の第1、第2、第3、および第4の態様のさらに別の好ましい医薬組成物において、本発明の医薬組成物の最初の薬学的活性の少なくとも97.0%、好ましくは少なくとも98.0%、より好ましくは少なくとも98.5%が、40℃および75%の相対湿度で3カ月間保存した後に保持される。
【0086】
上記の安定化方法における医薬組成物の保存について言及する場合、特に、コーティングされていないアルミニウム容器中でのそれらの組成物の保存を指す。同様に、上記の医薬組成物の保存について言及する場合、特に、コーティングされていないアルミニウム容器中でのそれらの保存を指す。
【0087】
定量噴霧式吸入器を使用して送達されるように設計された臭化チオトロピウム一水和物などのチオトロピウム化合物および噴射剤を含む医薬組成物における1,1-ジフルオロエタン(HFA-152a)を含む噴射剤の使用は、HFA-134aまたはHFA-227eaのいずれかを噴射剤として使用したときに観察される性能と比較して、その組成物が定量噴霧式吸入器から送達されたときに、保存後の医薬組成物のエアロゾル化性能を予想外に改善することできることが見出された。特に、医薬組成物を50℃および75%の相対湿度で15日間保存した後の放出用量におけるチオトロピウム化合物の微粒子画分は、放出用量のチオトロピウム化合物の少なくとも45重量%である。
【0088】
したがって、本発明の第6の態様では、噴射剤成分と、チオトロピウムおよびその薬学的に許容される誘導体から選択される少なくとも1つのチオトロピウム化合物を含む薬物成分と、を含む医薬組成物の保存後のエアロゾル化性能を改善する方法であって、1,1-ジフルオロエタン(HFA-152a)を含む噴射剤成分を使用することを含む、方法を提供する。
【0089】
本発明の第6の態様の方法における医薬組成物は、懸濁液または溶液であってもよい。
【0090】
本発明の第6の態様の好ましい実施形態では、噴射剤成分と、チオトロピウムおよびその薬学的に許容される誘導体から選択される少なくとも1つのチオトロピウム化合物を含む薬物成分と、を含む医薬組成物の保存後のエアロゾル化性能を改善する方法であって、1,1-ジフルオロエタン(HFA-152a)を含む噴射剤成分を使用することと、定量噴霧式吸入器から送達されたときに、医薬組成物を50℃および75%の相対湿度で15日間保存した後でさえ、少なくとも1つのチオトロピウム化合物の放出用量の少なくとも45重量%である少なくとも1つのチオトロピウム化合物の微粒子画分を生ずる医薬組成物を提供することと、を含む、方法を提供する。
【0091】
放出用量の微粒子画分を増加させることは、肺の深い細気管支経路および肺胞経路に浸透して、喘息発作またはCOPDの作用の軽減を最大化することができる、微細薬物粒子であるため、非常に有益である。
【0092】
微粒子画分は、当該技術分野において広く認識された用語である。これは、5μmを下回る直径を有する放出されたエアロゾル粒子の質量分率の尺度であり、有効な肺胞薬物送達のために最も望ましい粒径範囲であると一般に受け入れられている。
【0093】
本発明の第6の態様の方法では、好適かつ好ましいチオトロピウム化合物は、本発明の第1の態様の医薬組成物について上記のとおりである。加えて、本発明の第6の態様の方法において典型的かつ好ましい量の薬物成分および噴射剤成分、ならびに噴射剤成分のための好適な典型的かつ好ましい組成物は、本発明の第1の態様の医薬組成物について上記で論じたとおりである。
【0094】
本発明の第6の態様の方法における薬物成分は、少なくとも1つのチオトロピウム化合物、例えば臭化チオトロピウム一水和物から本質的になるか、またはそれらから完全になることができる。「から本質的になる」という用語は、薬物成分の少なくとも98重量%、より好ましくは少なくとも99重量%、特に少なくとも99.9重量%が、少なくとも1つのチオトロピウム化合物からなることを意味する。あるいは、薬物成分は、少なくとも1つの長時間作用型β-2アゴニスト(LABA)および/または少なくとも1つのコルチコステロイドをさらに含み得る。長時間作用型β-2アゴニストおよび/またはコルチコステロイドを含む場合、好適かつ好ましい長時間作用型β-2アゴニストおよび好適かつ好ましいコルチコステロイドは、本発明の第2および第3の態様の医薬組成物について上記のとおりである。
【0095】
一実施形態では、本発明の第6の態様における医薬組成物は、上記で定義した薬物成分および噴射剤成分から本質的になり、より好ましくはそれらから完全になる。「から本質的になる」という用語は、医薬組成物の少なくとも98重量%、より好ましくは少なくとも99重量%、特に少なくとも99.9重量%が、2つの成分からなることを意味する。
【0096】
代替の実施形態では、本発明の第6の態様の医薬組成物は、本発明の第1の態様の医薬組成物について上記で論じた極性賦形剤および界面活性剤成分の一方または両方を含有してもよい。好適かつ好ましい極性賦形剤および界面活性剤は、本発明の第1の態様の医薬組成物について上記で論じたとおりである。極性賦形剤および界面活性剤成分の典型的かつ好ましい量は、本発明の第1の態様の医薬組成物について上記で論じたとおりである。
【0097】
本発明の医薬組成物は、例えば定量噴霧式吸入器(MDI)を使用して、加圧エアロゾル容器からチオトロピウム化合物、ならびに、含む場合にはコルチコステロイドおよび長時間作用型β-2アゴニスト化合物の送達に特に有用である。この用途のために、医薬組成物を加圧エアロゾル容器中に含有し、HFA-152a噴射剤は微細なエアロゾルスプレーとして薬物を送達する働きをする。
【0098】
本発明の医薬組成物は、バルブ潤滑剤などの加圧MDI用の薬物製剤中で従来使用される種類の1つ以上の他の添加物を含んでもよい。他の添加物を医薬組成物中に含む場合、それらは、通常、当該技術分野における慣例的な量で使用される。
【0099】
本発明の医薬組成物は、通常、薬剤送達デバイスに関連して使用される加圧容器またはキャニスタ中で保存される。そのように保存されるとき、医薬組成物は、通常、液体である。好ましい実施形態では、加圧容器は、定量噴霧式吸入器(MDI)での使用のために設計される。特に好ましい実施形態では、加圧容器は、コーティングされたアルミニウム缶またはコーティングされていないアルミニウム缶、特に後者である。
【0100】
したがって、本発明の第7の態様は、本発明の第1、第2、第3、または第4の態様の医薬組成物を収容する加圧容器を提供する。第8の態様では、本発明は、本発明の第1、第2、第3、または第4の態様の医薬組成物を収容する加圧容器を有する薬剤送達デバイス、特に定量噴霧式吸入器を提供する。
【0101】
定量噴霧式吸入器は、典型的には、分注される医薬組成物を収容する容器に固着される(crimped)ノズルおよびバルブアセンブリを備える。エラストマーガスケットを使用して、容器とノズル/バルブアセンブリとの間に密封をもたらす。好ましいエラストマーガスケット材料は、EPDM、クロロブチル、ブロモブチル、およびシクロオレフィンコポリマーゴムであり、その理由は、これらがHFA-152aと良好な適合性を示し、またHFA-152aが容器から透過するのを防止または制限する良好なバリアを提供し得るからである。
【0102】
本発明の医薬組成物は、呼吸器障害、特に喘息もしくは慢性閉塞性肺疾患を患っているか、または患う可能性が高い患者を治療するための医薬品において使用される。
【0103】
したがって、本発明はまた、呼吸器障害、特に喘息もしくは慢性閉塞性肺疾患を患っているか、または患う可能性が高い患者を治療するための方法であって、患者に治療または予防有効量の上記で論じた医薬組成物を投与することを含む、方法を提供する。本医薬組成物は、好ましくは、MDIを使用して患者に送達される。
【0104】
本発明の医薬組成物を調製し、圧力充填および冷却充填などの当該技術分野において標準とされる技術を使用して、MDIデバイスを充填することができる。例えば、医薬組成物は、少なくとも1つのチオトロピウム化合物、任意に、少なくとも1つのコルチコステロイド、および/または少なくとも1つの長期間作用型β-2アゴニスト、任意に、界面活性剤成分、ならびにHFA-152aを含有する噴射剤を必要な割合で好適な混合容器中で一緒に混合するという簡単な混合操作により調製することができる。当該技術分野で一般的であるように、混合は撹拌によって促進することができる。好都合には、HFA-152aを含有する噴射剤を液化して、混合を助長する。医薬組成物を別々の混合容器中で作製する場合、該医薬組成物を、薬剤送達デバイス、特にMDIの一部として使用される加圧容器などの保存用加圧容器に移すことができる。
【0105】
本発明の医薬組成物はまた、エアロゾルキャニスタまたはバイアルなどの閉ざされた空間内で調製することができ、最終的にここから組成物がMDIなどの薬剤送達デバイスを使用してエアロゾルスプレーとして放出される。この方法では、秤量した量の少なくとも1つのチオトロピウム化合物、および任意に、少なくとも1つのコルチコステロイドおよび/または少なくとも1つの長時間作用型β-2アゴニスト化合物を蓋のない(open)容器に入れる。次いで、バルブを容器に固着し、任意に、まずバルブを通して容器を排気した後、液体形態のHFA-152aを含有する噴射剤成分をバルブを通して圧力下で容器に入れる。界面活性剤成分は、含める場合には薬物(複数可)と混合してもよく、あるいは単独でまたは噴射剤成分との予備混合物(premix)としてのいずれかでバルブを装着した後に容器に入れることができる。次いで、混合物全体を、例えば激しい撹拌または超音波槽を使用することによって処理し、噴射剤/界面活性剤の混合物中に薬物を分散させることができる。好適な容器は、プラスチック、金属、例えば、アルミニウム、またはガラスで作製され得る。好ましい容器は、金属、特に、コーティングされていても、コーティングされていなくてもよいアルミニウムで作製される。コーティングされていないアルミニウム容器が特に好ましい。
【0106】
容器には、複数の用量を提供するのに十分な医薬組成物が充填され得る。MDI中で使用される加圧エアロゾルキャニスタは、典型的には、50~150回の個別用量を含有する。
【0107】
本発明はまた、チオトロピウムおよびその薬学的に許容される誘導体から選択される少なくとも1つのチオトロピウム化合物を含む薬剤成分と、噴射剤成分と、を含む医薬組成物の地球温暖化係数(GWP)を低下させる方法であって、1,1-ジフルオロエタン(HFA-152a)を含む噴射剤成分を使用することを含む、方法も提供する。この方法は、全ての態様および実施形態における本明細書に開示される全ての医薬組成物の調製に適用可能である。
【0108】
好ましくは、使用される噴射剤成分の少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも95重量%、さらにより好ましくは少なくとも99重量%が、HFA-152aである。特に好ましい実施形態では、使用される噴射剤成分は、完全にHFA-152aである。
【0109】
使用される噴射剤成分は、好ましくは250未満、より好ましくは200未満、さらにより好ましくは150未満の地球温暖化係数(GWP)を有するであろう。
【実施例
【0110】
本発明は、これから以下の実施例によって説明されるが、これらの実施例によって限定されるものではない。
【0111】
実施例1
噴射剤としてHFA-134aまたはHFA-152aのいずれかを使用して、定量噴霧式吸入器(MDI)から送達される臭化チオトロピウム一水和物の薬学的製剤のインビトロエアロゾル化性能を調べるために、いくつかの実験を行った。
【0112】
臭化チオトロピウム一水和物の薬学的製剤を、HFA-134aまたはHFA-152a(Mexichem、UK)のいずれかで調製した。薬物を、標準的なコーティングされていない14mlのアルミニウムキャニスタ(C128、Presspart、Blackburn、UK)に直接秤量した。次いで、キャニスタに50μLのバルブ(Bespak、Kings Lynn、UK)を固着し、続いて、手動Pamasolクリンパ(crimper)/充填機(Pamasol、Switzerland)を使用して、噴射剤をバルブを通してキャニスタに充填した。最後に、キャニスタを20分間超音波処理して、懸濁液中の薬物の分散を助長した。臭化チオトロピウム一水和物の公称用量は、10μgであった。
【0113】
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用して、エアロゾル化研究後に薬物含有量を決定した(以下を参照のこと)。分析には、粒径が3.5μmの150mm×3mmのZorbax SB-C3プロピル-シリカカラムを使用した。カラムを、240nmの波長で操作されるUV検出器に連結した。オートサンプラを周囲温度で動作させ、分析のために100μlの試料をカラムに注射した。クロマトグラフィー条件を以下の表1に示す。
【表1】
【0114】
製剤のインビトロのエアロゾル化性能を、真空ポンプ(GE Motors、NJ、USA)に接続したNext Generation Impactor(NGI、Copley Scientific、Nottingham UK)を使用して研究した。試験前に、NGIシステムのカップを、ヘキサン中の1%v/vシリコーン油でコーティングして、粒子の反発をなくした。各実験について、バルブを3回作動させて、薬局方ガイドラインに従い、30L.分-1でNGIに放出した。エアロゾル化後にNGI装置を取り除き、アクチュエータおよびNGIの各部を体積が既知であるHPLC移動相に洗い流した。NGIの各部に沈着した薬物の質量を、上記の方法を用いてHPLCによって決定した。このプロトコルを各キャニスタについて3回繰り返し、続いて、微粒子量(FPD)および放出用量の微粒子画分(FPFED)を決定した。結果を表2に示す。
【表2】
【0115】
実施例2
初期調製後、およびストレス保存条件下で保存した後に、HFA-134a、HFA-227ea、またはHFA-152aのいずれかを噴射剤として使用して、定量噴霧式吸入器(MDI)から送達される臭化チオトロピウム一水和物の薬学的製剤のインビトロでのエアロゾル化性能を調査するために、いくつかの実験が行われた。上記の実験プロトコルを使用して、薬学的製剤を調製し、製剤のインビトロでのエアロゾル化性能を、上の実施例1に記載の方法を用いて、Next Generation Impactorを使用して調製した直後(時間t=0)に試験した。次いで、製剤を、ストレス保存条件下(バルブを下げて)、50℃および75%の相対湿度で5日間および15日間保存した。ストレス保存条件下で5日間および15日間保存した後、薬学的製剤のインビトロでのエアロゾル化性能を、上の実施例1に記載の方法を用いて、前述のとおりにNext Generation Impactorを使用して再度試験した。結果を以下の表3~5に示す。
【表3】
【表4】
【表5】
【0116】
HFA-227eaを噴射剤として使用して、臭化チオトロピウム一水和物をエアロゾル化した場合、薬物および噴射剤を含有する薬学的製剤を、ストレス保存条件下、50℃および75%の相対温度で5日間および15日間保存した後、エアロゾル化性能は、劇的に減少した。特に、微粒子用量および放出用量の微粒子画分は、劇的に減少した。
【0117】
HFA-134aを噴射剤として使用して、臭化チオトロピウム一水和物をエアロゾル化した場合、薬物および噴射剤を含有する薬学的製剤を、ストレス保存条件下、50℃および75%の相対温度で5日間および15日間保存した後、エアロゾル化性能は、劇的に減少した。特に、微粒子用量および放出用量の微粒子画分は、かなり減少した。
【0118】
対照的に、HFA-152aを噴射剤として使用して、臭化チオトロピウム一水和物をエアロゾル化した場合、薬物および噴射剤を含有する薬学的製剤を、ストレス保存条件下、50℃および75%の相対温度で5日間および15日間保存した後、良好なエアロゾル化性能が、維持された。
【0119】
実施例3
HFA-134aまたはHFA-152a中の臭化チオトロピウム一水和物の安定性を、時間ゼロ(T=0)と、コーティングされていないアルミニウム缶中、バルブを下げた状態で(valve down)、40℃および75%の相対湿度(RH)ならびに25℃および60%の相対湿度(RH)で1カ月間(T=1M)および3カ月間(T=3M)保存した後とで調べた。
【0120】
薬物製剤を、上記の実施例1に記載されるように調製し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて分析した。分析には、粒径が2.6μmの150mm×4.6mmのAccucore C18カラムを使用した。カラムを、240nmの波長で操作されるUV検出器に連結した。オートサンプラを周囲温度で動作させ、分析のために100μlの試料をカラムに注射した。クロマトグラフィー条件を以下の表6に示す。
【表6】
【0121】
移動相の組成物を、以下の表7に示されるように変化させた。
【表7】
【0122】
コーティングされていないアルミニウム缶の中に入ったHFA-152aおよびHFA-134a中の臭化チオトロピウム一水和物の化学的安定性の調査結果を、それぞれ、以下の表8および表9に示す。
【表8】
【表9】
【0123】
臭化チオトロピウム一水和物の薬学的薬製剤は、エアロゾル化噴射剤としてのHFA-152aとともにブレンドされたとき、優れた化学的安定性を呈することは、上記のデータから見ることができる。
【0124】
実施例4
臭化チオトロピウム一水和物、ならびにHFA-134aまたはHFA-152aのいずれかを含有する製剤を、PETバイアル中で調製し、製剤の懸濁安定性を、Turbiscan MA 2000を使用して決定した。Turbiscan計器は、平底の5mLの円筒形ガラスセルに沿って移動する読み取りヘッドを有し、最大試料高80mmで、40μmごとに透過光および後方散乱光の読み値を取る。読み取りヘッドは、近赤外線パルスおよび2つの同期検出器を使用する。透過検出器は、0°でサスペンションチューブを通して透過した光を拾い、後方散乱検出器は、135°で生成物による後方光を受ける。
【0125】
異なる製剤のフロックの沈殿およびサイズを、以下の表10に示す。
【表10】
【0126】
本発明は以下の態様を包含するものである。
[項1]
(i)チオトロピウムおよびその薬学的に許容される誘導体から選択される少なくとも1つのチオトロピウム化合物を含む薬物成分と、
(ii)1,1-ジフルオロエタン(HFA-152a)を含む噴射剤成分と、を含む医薬組成物。
[項2]
前記組成物が、前記医薬組成物の総重量に基づいて、500ppm未満、好ましくは100ppm未満、より好ましくは50ppm未満、さらにより好ましくは10ppm未満、特に5ppm未満の水を含有する、項1に記載の医薬組成物。
[項3]
前記組成物が、前記医薬組成物の総重量に基づいて、0.5ppm超、例えば1ppm超の水を含有する、項2に記載の医薬組成物。
[項4]
前記組成物が、前記医薬組成物の総重量に基づいて、1000ppm未満、好ましくは500ppm未満、より好ましくは100ppm未満、特に50ppm未満の酸素を含有する、項1~3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
[項5]
前記組成物が、前記医薬組成物の総重量に基づいて、0.5ppm超、例えば1ppm超の酸素を含有する、項4に記載の医薬組成物。
[項6]
前記少なくとも1つのチオトロピウム化合物が、臭化チオトロピウムおよび臭化チオトロピウム一水和物から選択される、項1~5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
[項7]
前記少なくとも1つのチオトロピウム化合物が、微粉化形態である、項1~6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
[項8]
前記薬物成分が、少なくとも1つの長時間作用型β-2-アゴニスト(LABA)をさらに含む、項1~7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
[項9]
前記少なくとも1つの長時間作用型β-2-アゴニストが、ホルモテロール、サルメテロール、オロダテロール、およびそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、項8に記載の医薬組成物。
[項10]
前記少なくとも1つの長時間作用型β-2-アゴニストが、フマル酸ホルモテロール、フマル酸ホルモテロール二水和物、キシナホ酸サルメテロール、およびオラダテロールからなる群から選択される、項9に記載の医薬組成物。
[項11]
前記少なくとも1つの長時間作用型β-2-アゴニストが、微粉化形態である、項8~10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
[項12]
前記薬物成分が、少なくとも1つのコルチコステロイドをさらに含む、項1~11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
[項13]
前記少なくとも1つのコルチコステロイドが、ブデソニド、モメタゾン、ベクロメタゾン、フルチカゾン、およびそれらの薬学的に許容される誘導体から選択され、好ましくはモメタゾン、ベクロメタゾン、フルチカゾン、およびそれらの薬学的に許容される誘導体から選択される、項12に記載の医薬組成物。
[項14]
前記少なくとも1つのコルチコステロイドが、ブデソニド、モメタゾン、フランカルボン酸モメタゾン、ベクロメタゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、フルチカゾン、およびプロピオン酸フルチカゾンから選択され、好ましくはモメタゾン、フランカルボン酸モメタゾン、ベクロメタゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、フルチカゾン、およびプロピオン酸フルチカゾンから選択される、項13に記載の医薬組成物。
[項15]
前記少なくとも1つのコルチコステロイドが、微粉化形態である、項12~14のいずれか一項に記載薬学的の医薬組成物。
[項16]
前記薬物成分が、前記医薬組成物の総重量の0.01~2.5重量%、好ましくは0.01~2.0重量%、より好ましくは0.05~2.0重量%、特に0.05~1.5重量%から成る、項1~15のいずれか一項に記載の医薬組成物。
[項17]
前記噴射剤成分が、前記医薬組成物の総重量の80.0~99.99重量%、好ましくは90.0~99.99重量%、さらに好ましくは96.5~99.99重量%、特に97.5~99.95重量%から成る、項1~16のいずれか一項に記載の医薬組成物。
[項18]
前記噴射剤成分の少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%、より好ましくは少なくとも99重量%が、1,1-ジフルオロエタン(HFA-152a)である、項1~17のいずれか一項に記載の医薬組成物。
[項19]
前記噴射剤成分が、完全に1,1-ジフルオロエタン(HFA-152a)である、項1~17のいずれか一項に記載の医薬組成物。
[項20]
前記噴射剤成分が、0.5~10ppm、例えば1~5ppmの不飽和不純物を含有する、項18または19に記載の医薬組成物。
[項21]
前記組成物の少なくとも95重量%、好ましくは少なくとも98重量%、より好ましくは少なくとも99重量%が、前記2つの成分(i)および(ii)からなる、項1~20のいずれか一項に記載の医薬組成物。
[項22]
少なくとも1つの界面活性剤化合物を含む界面活性剤成分をさらに含む、項1~21のいずれか一項に記載の医薬組成物。
[項23]
前記界面活性剤成分が、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール界面活性剤、オレイン酸、およびレシチンから選択される少なくとも1つの界面活性剤化合物を含む、項22に記載の医薬組成物。
[項24]
極性賦形剤をさらに含む、項1~23のいずれか一項に記載の医薬組成物。
[項25]
前記極性賦形剤が、エタノールである、項24に記載の医薬組成物。
[項26]
極性賦形剤を含まない、項1~23のいずれか一項に記載の医薬組成物。
[項27]
エタノールを含まない、項1~23のいずれか一項に記載の医薬組成物。
[項28]
完全に前記2つの成分(i)および(ii)からなる、項1~20のいずれか一項に記載の医薬組成物。
[項29]
コーティングされていないアルミニウム容器に40℃および75%の相対湿度で1カ月貯蔵された後に、前記少なくとも1つのチオトロピウム化合物および前記不純物の総重量に基づいて、前記少なくとも1つのチオトロピウム化合物の分解から0.2重量%未満、好ましくは0.1重量%未満、より好ましくは0.05重量%未満の不純物を生ずる、項1~28のいずれか一項に記載の医薬組成物。
[項30]
コーティングされていないアルミニウム容器に40℃および75%の相対湿度で3カ月貯蔵された後に、前記少なくとも1つのチオトロピウム化合物および前記不純物の総重量に基づいて、前記少なくとも1つのチオトロピウム化合物の分解から0.3重量%未満、好ましくは0.2重量%未満、より好ましくは0.15重量%未満の不純物を生ずる、項1~29のいずれか一項に記載の医薬組成物。
[項31]
調製直後の前記医薬組成物中に最初に含有される前記少なくとも1つのチオトロピウム化合物の少なくとも97.0重量%、好ましくは少なくとも98.0重量%、より好ましくは少なくとも98.5重量%が、コーティングされていないアルミニウム容器に40℃および75%の相対湿度で3カ月貯蔵された後に前記組成物中に存在する、項1~30のいずれか一項に記載の医薬組成物。
[項32]
前記組成物の最初の薬学的活性の少なくとも97.0%、好ましくは少なくとも98.0%、より好ましくは少なくとも98.5%が、コーティングされていないアルミニウム容器に40℃および75%の相対湿度で3カ月間貯蔵された後に保持される、項1~30のいずれか一項に記載の医薬組成物。
[項33]
懸濁液の形態である、項1~32のいずれか一項に記載の医薬組成物。
[項34]
溶液の形態である、項1~32のいずれか一項に記載の医薬組成物。
[項35]
有孔微細構造体を含まない、項1~34のいずれか一項に記載の医薬組成物。
[項36]
酸安定剤を含まない、項1~27および29~35のいずれか一項に記載の医薬組成物。
[項37]
クロモグリク酸およびネドクロミルの両方の薬学的に許容される塩を含まない、項1~36のいずれか一項に記載の医薬組成物。
[項38]
前記噴射剤成分が、250未満、好ましくは200未満、より好ましくは150未満の地球温暖化係数(GWP)を有する、項1~37のいずれか一項に記載の医薬組成物。
[項39]
項1~38のいずれか一項に記載の医薬組成物を含有する、密封容器。
[項40]
コーティングされていないアルミニウム缶である、項39に記載の密封容器。
[項41]
定量噴霧式吸入器(MDI)で使用するための加圧エアロゾル容器である、項39または項40に記載の密封容器。
[項42]
項41に記載の密封容器を備える、定量噴霧式吸入器(MDI)。
[項43]
呼吸器障害を患っているか、または患う可能性が高い患者を治療するための方法であって、前記患者に、治療有効量または予防有効量の項1~38のいずれか一項に記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。
[項44]
前記呼吸器障害が、喘息または慢性閉塞性肺疾患である、項43に記載の方法。
[項45]
前記医薬組成物が、定量噴霧式吸入器(MDI)を使用して前記患者に送達される、項43または44に記載の方法。
[項46]
噴射剤成分と、チオトロピウムおよびその薬学的に許容される誘導体から選択される少なくとも1つのチオトロピウム化合物とを含む薬物成分と、を含む医薬組成物の安定性を改善する方法であって、前記方法が、1,1-ジフルオロエタン(HFA-152a)を含む噴射剤成分を使用することを含む、方法。
[項47]
前記医薬組成物の含水量を、前記医薬組成物の総重量に基づいて、500ppm未満、好ましくは100ppm未満、より好ましくは50ppm未満、さらにより好ましくは10ppm未満、特に5ppm未満に維持するように、前記医薬組成物の調製のための成分および条件を選択することをさらに含む、項46に記載の方法。
[項48]
前記得られた医薬組成物の酸素含有量が、前記医薬組成物の総重量に基づいて、1000ppm未満、好ましくは500ppm未満、より好ましくは100ppm未満、特に50ppm未満である、項46または47に記載の方法。
[項49]
前記少なくとも1つのチオトロピウム化合物が、臭化チオトロピウムおよび臭化チオトロピウム一水和物から選択される、項46~48のいずれか一項に記載の方法。
[項50]
前記少なくとも1つのチオトロピウム化合物が、微粉化形態である、項46~49のいずれか一項に記載の方法。
[項51]
前記薬物成分が、少なくとも1つの長時間作用型β-2-アゴニスト(LABA)をさらに含む、項46~50のいずれか一項に記載の方法。
[項52]
前記少なくとも1つの長時間作用型β-2-アゴニストが、ホルモテロール、サルメテロール、オロダテロール、およびそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、項51に記載の方法。
[項53]
前記少なくとも1つの長時間作用型β-2-アゴニストが、フマル酸ホルモテロール、フマル酸ホルモテロール二水和物、キシナホ酸サルメテロール、およびオラダテロールからなる群から選択される、項52に記載の方法。
[項54]
前記少なくとも1つの長時間作用型β-2-アゴニストが、微粉化形態である、項51~53のいずれか一項に記載の方法。
[項55]
前記薬物成分が、少なくとも1つのコルチコステロイドをさらに含む、項46~54のいずれか一項に記載の方法。
[項56]
前記少なくとも1つのコルチコステロイドが、ブデソニド、モメタゾン、ベクロメタゾン、フルチカゾン、およびそれらの薬学的に許容される誘導体から選択され、好ましくはモメタゾン、ベクロメタゾン、フルチカゾン、およびそれらの薬学的に許容される誘導体から選択される、項55に記載の方法。
[項57]
前記少なくとも1つのコルチコステロイドが、ブデソニド、モメタゾン、フランカルボン酸モメタゾン、ベクロメタゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、フルチカゾン、およびプロピオン酸フルチカゾンから選択され、好ましくはモメタゾン、フランカルボン酸モメタゾン、ベクロメタゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、フルチカゾン、およびプロピオン酸フルチカゾンから選択される、項56に記載の方法。
[項58]
前記少なくとも1つのコルチコステロイドが、微粉化形態である、項55~57のいずれか一項に記載の方法。
[項59]
前記薬物成分が、前記医薬組成物の総重量の0.01~2.5重量%、好ましくは0.01~2.0重量%、より好ましくは0.05~2.0重量%、特に0.05~1.5重量%から成る、項46~58のいずれか一項に記載の方法。
[項60]
前記噴射剤成分が、前記医薬組成物の総重量の80.0~99.99重量%、好ましくは90.0~99.99重量%、より好ましくは96.5~99.99重量%、特に97.5~99.95重量%から成る、項46~59のいずれか一項に記載の方法。
[項61]
前記噴射剤成分の少なくとも90重量%、好ましくは95重量%、より好ましくは99重量%が、1,1-ジフルオロエタン(HFA-152a)である、項46~60のいずれか一項に記載の方法。
[項62]
前記噴射剤成分が、完全に1,1-ジフルオロエタン(HFA-152a)である、項46~60のいずれか一項に記載の方法。
[項63]
前記噴射剤成分が、0.5~10ppm、例えば1~5ppmの不飽和不純物を含有する、項61または62に記載の方法。
[項64]
前記医薬組成物の少なくとも95重量%、好ましくは少なくとも98重量%、より好ましくは少なくとも99重量%が、前記薬物成分および前記噴射成分からなる、項46~63のいずれか一項に記載の方法。
[項65]
前記医薬組成物が、少なくとも1つの界面活性剤化合物を含む界面活性剤成分をさらに含む、項46~64のいずれか一項に記載の方法。
[項66]
前記界面活性剤成分が、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール界面活性剤、オレイン酸、およびレシチンから選択される少なくとも1つの界面活性剤化合物を含む、項65に記載の方法。
[項67]
極性賦形剤をさらに含む、項46~66のいずれか一項に記載の方法。
[項68]
前記極性賦形剤が、エタノールである、項67に記載の方法。
[項69]
前記医薬組成物が、極性賦形剤を含まない、項46~66のいずれか一項に記載の方法。
[項70]
前記医薬組成物が、エタノールを含まない、項46~66のいずれか一項に記載の方法。
[項71]
前記医薬組成物が、完全に前記薬物成分および前記噴射剤成分からなる、項46~63のいずれか一項に記載の方法。
[項72]
コーティングされていないアルミニウム容器に40℃および75%の相対湿度で1カ月貯蔵された後に、前記医薬組成物が、前記少なくとも1つのチオトロピウム化合物および前記不純物の総重量に基づいて、前記少なくとも1つのチオトロピウム化合物の分解から0.2重量%未満、好ましくは0.1重量%未満、より好ましくは0.05重量%未満の不純物を生ずる、項46~71のいずれか一項に記載の方法。
[項73]
コーティングされていないアルミニウム容器に40℃および75%の相対湿度で3カ月貯蔵された後に、前記医薬組成物が、前記少なくとも1つのチオトロピウム化合物および前記不純物の総重量に基づいて、前記少なくとも1つのチオトロピウム化合物の分解から0.3重量%未満、好ましくは0.2重量%未満、より好ましくは0.15重量%未満の不純物を生ずる、項46~72のいずれか一項に記載の方法。
[項74]
調製直後の前記医薬組成物中に最初に含有される少なくとも1つのチオトロピウム化合物の少なくとも97.0重量%、好ましくは少なくとも98.0重量%、より好ましくは少なくとも98.5重量%が、コーティングされていないアルミニウム容器に40℃および75%の相対湿度で3カ月貯蔵された後に前記組成物中に存在する、項46~73のいずれか一項に記載の方法。
[項75]
前記組成物の前記最初の薬学的活性の少なくとも97.0%、好ましくは少なくとも98.0%、より好ましくは少なくとも98.5%が、コーティングされていないアルミニウム容器に40℃および75%の相対湿度で3カ月貯蔵された後に保持される、項46~73のいずれか一項に記載の方法。
[項76]
前記医薬組成物が、懸濁液の形態である、項46~75のいずれか一項に記載の方法。
[項77]
前記医薬組成物が、溶液の形態である、項46~75のいずれか一項に記載の方法。
[項78]
前記医薬組成物が、有孔微細構造体を含まない、項46~77のいずれか一項に記載の方法。
[項79]
前記医薬組成物が、酸安定剤を含まない、項46~70および72~78のいずれか一項に記載の方法。
[項80]
前記医薬組成物が、クロモグリク酸およびネドクロミルの両方の薬学的に許容される塩を含まない、項46~79のいずれか一項に記載の方法。
[項81]
前記噴射剤成分が、250未満、好ましくは200未満、より好ましくは150未満の地球温暖化係数(GWP)を有する、項46~80のいずれか一項に記載の方法。
[項82]
噴射剤成分と、チオトロピウムおよびその薬学的に許容される誘導体から選択される少なくとも1つのチオトロピウム化合物とを含む薬物成分と、を含む医薬組成物の保存後の前記エアロゾル化性能を改善する方法であって、前記方法が、1,1-ジフルオロエタン(HFA-152a)を含む噴射剤成分を使用することを含む、方法。
[項83]
前記方法が、定量噴霧式吸入器から送達されたときに、50℃および75%の相対湿度で15日間貯蔵した後でも、前記少なくとも1つのチオトロピウム化合物の放出用量の少なくとも45重量%である前記少なくとも1つのチオトロピウム化合物の微粒子フラクションを得る、医薬組成物を提供する、項82に記載の方法。
[項84]
前記医薬組成物が、項1~38のいずれか一項に記載される組成物である、項82または83に記載の方法。
[項85]
定量噴霧式吸入器から送達されたときに、50℃および75%の相対湿度で15日間保存した後でも、前記少なくとも1つのチオトロピウム化合物の放出用量の少なくとも45重量%である前記少なくとも1つのチオトロピウム化合物の微粒子フラクションを得る、項1~38のいずれか一項に記載の医薬組成物。
[項86]
前記加圧エアロゾル容器に取り付けられたノズルおよびバルブアセンブリと、EPDM、クロロブチル、ブロモブチル、およびシクロオレフィンコポリマーゴムから選択されるエラストマー材料製の、前記容器と前記ノズル/バルブアセンブリとの間に密封を提供するためのガスケットと、を備える、項42に記載の定量噴霧式吸入器。
[項87]
チオトロピウムおよびその薬学的に許容される誘導体から選択される少なくとも1つのチオトロピウム化合物を含む薬物成分と、噴射剤成分と、を含む医薬組成物の地球温暖化係数(GWP)を低下させる方法であって、前記方法が、1,1-ジフルオロエタン(HFA-152a)を含む噴射剤成分を使用することを含む、方法。
[項88]
前記使用される噴射剤成分の少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%、より好ましくは少なくとも99重量%が、1,1-ジフルオロエタン(HFA-152a)である、項87に記載の方法。
[項89]
前記噴射剤成分が、完全に1,1-ジフルオロエタン(HFA-152a)である、項87に記載の方法。
[項90]
前記医薬組成物が、項1~38のいずれか一項に記載のとおりである、項87に記載の方法。
[項91]
前記使用される噴射剤成分が、250未満、好ましくは200未満、より好ましくは150未満の地球温暖化係数(GWP)を有する、項87~90のいずれか一項に記載の方法。
[項92]
前記薬物成分を構成する化合物を、前記化合物が前記医薬組成物中に存在する割合とほぼ同じ割合で送達するように適合させる、項8~15のいずれか一項に記載の医薬組成物。