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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-16
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】サイドエアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/2338 20110101AFI20220106BHJP
   B60R 21/207 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
B60R21/2338
B60R21/207
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020537397
(86)(22)【出願日】2019-07-24
(86)【国際出願番号】 JP2019029030
(87)【国際公開番号】W WO2020036048
(87)【国際公開日】2020-02-20
【審査請求日】2020-11-13
(31)【優先権主張番号】P 2018152740
(32)【優先日】2018-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】山田 喜大
(72)【発明者】
【氏名】小林 優斗
(72)【発明者】
【氏名】大里 秀一
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2017-0051824(KR,A)
【文献】米国特許第9994181(US,B1)
【文献】国際公開第2017/179839(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/037110(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員が着座する車両座席のシートフレームに取り付けられるインフレータと、
前記インフレータから供給されるガスによって膨張展開するエアバッグと、を備えたサイドエアバッグ装置において、
前記エアバッグは、
前記乗員の肩部側方で膨張展開する第1膨張部と、
前記第1膨張部よりも前方で膨張展開する第2膨張部と、
前記第1膨張部よりも後方で膨張展開する第3膨張部と、
前記第2膨張部と前記第3膨張部との間において、前記第1膨張部に向かって延びるように形成された凹部と、を備え、
前記サイドエアバッグ装置は、
前記凹部を橋渡すように前記第2膨張部及び前記シートフレームに取り付けられ、前記凹部を介して前記第1膨張部に対向するテザーをさらに備えており、
前記エアバッグの膨張展開時に前記テザーが前記乗員の肩部を受けると、それにより前記第2膨張部が前記乗員の前部に近づく方向に変形する、サイドエアバッグ装置。
【請求項2】
前記エアバッグは、膨張展開時に、前記テザーによって変形した前記第2膨張部が、前記第1膨張部及び前記第3膨張部とともに前記乗員の少なくとも肩部周りを包み込むように構成されている、請求項1に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項3】
前記エアバッグは、膨張展開時に、前記車両座席の隣にある車両座席のシートバッグに干渉しつつ、前記第2膨張部が前記テザーによって前記乗員の前方に回り込み、前記乗員の少なくとも肩部周りを包み込むように構成されている、請求項2に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項4】
前記テザーの前記シートフレームへの取付点は、前記シートフレームの内側に設けられる、請求項1から3のいずれか一項に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項5】
前記テザーの前記シートフレームへの取付点は、前記シートフレームの外側に設けられる、請求項1から3のいずれか一項に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項6】
前記テザーの前記第2膨張部への取付点は、前記第2膨張部における前記凹部側の部位に設けられる、請求項1から5のいずれか一項に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項7】
前記テザーの前記第2膨張部への取付点は、前記第2膨張部における前記乗員側の部位に設けられる、請求項1から6のいずれか一項に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項8】
前記テザーは、前記エアバッグの前後方向に延在しており、その前後方向における両端部がそれぞれ前記第2膨張部及び前記シートフレームに取り付けられる、請求項1から7のいずれか一項に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項9】
前記第2膨張部は、前記第3膨張部よりも前記乗員側に突出している、請求項1から8のいずれか一項に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項10】
前記第1膨張部は、前記エアバッグの前後方向における中央に位置する、請求項1から9のいずれか一項に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項11】
前記第3膨張部は、前記インフレータを内部に含み、当該インフレータとともに前記シートフレームに共締めされている、請求項1から10のいずれか一項に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項12】
前記エアバッグは、前記第1膨張部、前記第2膨張部及び前記第3膨張部よりも上方に、前記乗員の頭部側方で膨張展開する第4膨張部をさらに備えた、請求項1から11のいずれか一項に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項13】
前記第4膨張部は、前記第1膨張部の直上に設けられている、請求項12に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項14】
前記エアバッグは、膨張展開時に、前記テザーによって変形した前記第2膨張部が、前記第1膨張部及び前記第3膨張部とともに前記乗員の少なくとも肩部周りを包み込んだ後、前記第4膨張部が、前記乗員の頭部を拘束するように構成されている、請求項12又は13に記載のサイドエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されるサイドエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のサイドエアバッグ装置として、例えば特許文献1~3に記載のものが知られている。このうち、特許文献1では、エアバッグの乗員側外面の上部及び下部のそれぞれにテザーを前後方向に取り付けている。この場合、各テザーの長さをエアバッグの前後の取付点の長さよりも短くすることで、エアバッグの展開時に各テザーとエアバッグとの間に空間を形成するようにしている。特許文献1によれば、エアバッグが展開した際は、まず乗員が各テザーに側方衝突し、この側方衝突によって押された各テザーがエアバッグを引っ張るようにし、それによりエアバッグの展開時の形状を一定に維持しようとしているとのことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】韓国出願公開2004-24278号公報
【文献】韓国出願公開2004-24280号公報
【文献】特表2017-514746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1では、テザーの両端がエアバッグに取り付けられているため、乗員から押されたテザーによって引っ張られるのは、エアバッグの前部及び後部となる。このように、エアバッグが前後の両側から引っ張られると、意図しない方向に引っ張られて、エアバッグが意図しない形状となる可能性がある。また、車両の側面衝突時に乗員は前方に移動させられ得るところ、このような乗員の動きを拘束するようなエアバッグの挙動については特許文献1では十分に検討されておらず、改善の余地がある。
【0005】
本発明は、エアバッグを意図した形状へと適切に変形させることができ、乗員保護性能を向上したサイドエアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るサイドエアバッグ装置は、乗員が着座する車両座席のシートフレームに取り付けられるインフレータと、インフレータから供給されるガスによって膨張展開するエアバッグと、を備え、エアバッグは、乗員の肩部側方で膨張展開する第1膨張部と、第1膨張部よりも前方で膨張展開する第2膨張部と、第1膨張部よりも後方で膨張展開する第3膨張部と、第2膨張部と第3膨張部との間において第1膨張部に向かって延びるように形成された凹部と、を備え、サイドエアバッグ装置は、凹部を橋渡すように第2膨張部及びシートフレームに取り付けられて凹部を介して第1膨張部に対向するテザーをさらに備えており、エアバッグの展開時にテザーが乗員の肩部を受けると、それにより第2膨張部が乗員の前部に近づく方向に変形する。
【0007】
この態様によれば、テザーの一つの取付点がエアバッグの第2膨張部となり、テザーのもう一つの取付点が車両座席のシートフレームとなるため、展開時に乗員の肩部を受けて押されたテザーによって引っ張られるエアバッグの部位は、第2膨張部となる。これにより、エアバッグの他の部位を引っ張ることなく、第2膨張部を乗員の前部に近づく方向へ確実に導くことができる。したがって、膨張展開したエアバッグについて、意図した方向へ引っ張り、意図した形状へと適切に変形させることができる。加えて、この変形においては、第2膨張部が乗員の前部に近づくようになるため、車両の側面衝突時における乗員の動きを第2膨張部で拘束することも可能となる。
【0008】
なお、本発明の一態様に係るサイドエアバッグ装置は、好ましくは、座席の間で乗員に対して車両のドアとは反対側に位置する部位に設けられるサイドエアバッグ(ファーサイドエアバッグまたはフロントセンターエアバッグ)に用いると良い。
【発明の効果】
【0009】
本発明のサイドエアバッグ装置によれば、エアバッグを意図した形状へと適切に変形させることができ、乗員保護性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係るサイドエアバッグ装置について、膨張展開した状態のエアバッグを乗員及び車両座席とともに示す斜視図である。
図2図1のサイドエアバッグ装置について、膨張展開した状態のエアバッグを乗員及び車両座席とともに示す平面図である。
図3図1のサイドエアバッグ装置について、膨張展開した状態のエアバッグ及びその内部のインフレータをシートフレームの一部とともに示す部分平面透視図である。
図4】他の実施態様に係るサイドエアバッグ装置について、膨張展開した状態のエアバッグ及びその内部のインフレータをシートフレームの一部とともに示す部分平面透視図である。
図5図1のサイドエアバッグ装置におけるエアバッグの変形過程を示す平面図であり、(A)はエアバッグの展開直後を示し、(B)は乗員の肩部がテザーに接触してエアバッグの第2膨張部が乗員の前部に近づいた状態を示し、(C)はエアバッグの第2膨張部が乗員の前部にさらに近づいた状態であって、乗員がセンター方向にたおれ込んだ初期状態を示し、(D)は乗員がセンター方向にさらにたおれ込んだ状態を示す。
図6図1のサイドエアバッグ装置におけるエアバッグの変形過程を示す正面図であり、(A)は図5(A)に対応する状態、すなわちエアバッグの展開直後を示し、(B)は図5(C)に対応する状態、すなわち乗員がセンター方向にたおれ込んだ初期状態を示し、(C)はその後エアバッグの第4膨張部が乗員の頭部を拘束した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態に係るサイドエアバッグ装置を説明する。
【0012】
図1及び2に示すように、サイドエアバッグ装置10は、車両内の座席100の側方で膨張展開するエアバッグ12と、エアバッグ12に膨張展開用のガスを供給するインフレータ14(参照:図3)と、を有している。インフレータ14は、車両側と電気的に接続されている。例えば、インフレータ14は、車両の側面衝突時にその衝撃を検知した信号を車両側から受信して作動し、エアバッグ12に向けてガスを瞬時に供給する。インフレータ14としては、ガス発生剤、圧縮ガス又はこれらの両方が充填されたものなど、各種のものを利用することができる。一例を挙げると、インフレータ14は、有底の円筒体の開放端部に着火装置を有し、この着火装置によって円筒体内のガス発生剤を着火することにより、ガスを発生させ、円筒体の周面にある複数の噴出孔からエアバッグ12内に膨張展開用のガスを供給する。
【0013】
座席100は、例えば、運転席又は助手席であるが、後部座席であってもよい。座席100は、乗員200が着座するシートクッション110と、乗員200の背中を支えるシートバック120と、を有している。シートバック120は、その骨格を構成するシートフレーム130(参照:図3)を有している。シートフレーム130は、金属部品又は硬質樹脂を加工してなり、これが乗員200の背中に直接接触するシートトリムで覆われている。
【0014】
サイドエアバッグ装置10は、車両に搭載される際、例えば、シートバック120の車外側(車両のサイドドア側)の側部に内蔵され、エアバッグ12及びインフレータ14がシートフレーム130に取り付けられる(参照:図3)。そして、サイドエアバッグ装置10は、例えば車両の側面衝突時に、エアバッグ12を膨張展開させることで、エアバッグ12でシートトリムを突き破って、エアバッグ12をシートバック120外に露出させて座席100と車両のサイドドアとの間に配備する。これにより、膨張展開したエアバッグ12によって、乗員200を側方から拘束するようにする。
【0015】
他の実施態様では、サイドエアバッグ装置10は、シートバック120の車内側の側部に内蔵されてもよい。すなわち、サイドエアバッグ装置10は、ファーサイドエアバッグであってもよい。この場合、膨張展開するエアバッグ12は、例えば、座席100と車両の中央コンソールとの間に配備されてもよい。中央コンソールは、例えば、2個の座席の間に配置される。
【0016】
エアバッグ12は、例えば、1枚又は複数枚の基布等を適宜の位置で縫合又は接着することによって袋状に形成されており、膨張展開用ガスの供給を受けて扁平状態から展開状態へと変形する。扁平状態のエアバッグ12は、例えば、ロール状、アコーディオン状又はこれらを組み合わせた形態で巻回又は折り畳まれており、シートバック120の車幅方向側部に収納される。エアバッグ12は、インフレータ14から供給されるガスによって上方に向かって膨張展開し、正規着座状態の乗員200の肩部210、腕部220、胸部230、腹部240、頭部250などを保護する。
【0017】
図2及び3に示すように、展開状態におけるエアバッグ12について、正規着座状態の乗員200に対する位置の関係で領域分けすると、エアバッグ12は、第1~第4の膨張部21、22、23、24を有すると言うことができる。第1膨張部21は、乗員200の肩部210の側方で膨張展開する。第2膨張部22は、第1膨張部21よりも前方で膨張展開する。例えば、第2膨張部22は、乗員200の正面側から見て乗員200の上腕部の少なくとも一部を覆うように、乗員200の前方で展開する。第3膨張部23は、第1膨張部21よりも後方で膨張展開する。第3膨張部23は、シートフレーム130との関係では、シートフレーム130の側方で膨張展開する。第4膨張部24は、第1膨張部21、第2膨張部22及び第3膨張部23よりも上方にて、乗員200の頭部250の側方で膨張展開する。
【0018】
第1膨張部21、第2膨張部22及び第3膨張部23の各高さは、例えば、乗員200の肩部210から腹部240までに亘る高さとなっている。また、第1膨張部21、第2膨張部22及び第3膨張部23の前後方向の各長さは、例えば、エアバッグ12の前後方向の長さを約3等分した長さとなっている。このため、第1膨張部21は、エアバッグ12の前後方向における中央に位置している。第4膨張部24は、第1膨張部22の直上に設けられている。第2膨張部22は、第3膨張部23よりも乗員200側に突出している。また、第2膨張部22は、シートフレーム130との関係では、シートフレーム130のサイドフレーム端部132よりもシート中央側(乗員200側)に突出している。
【0019】
第3膨張部23は、インフレータ14を内部に含んでおり、インフレータ14とともにシートフレーム130に共締めされている。例えば、インフレータ14とシートフレーム130とを締結するスタッドボルト26が、第3膨張部23を構成する基布を貫通し、当該基布をインフレータ14とともにシートフレーム130の外面に固定している。他の実施態様では、共締めではなく、第3膨張部23をインフレータ14とは別にシートフレーム130に取り付けてもよい。ただし、上記のような共締めをすることで、シートフレーム130へのインフレータ14の固定を有効に利用して、エアバッグ12をシートフレーム130に固定することができる。
【0020】
第1~第4の膨張部21、22、23、24は、1つの膨張室として形成してもよいし、複数の膨張室として形成してもよい。例えば、第1~第4の膨張部21、22、23、24をそれぞれ又はいくつかを互いに独立した膨張室として形成し、各膨張室をガスが流通可能に相互に連結してもよい。複数の膨張室として形成する場合、エアバッグ12は、1つ又は複数の非膨張部を有してもよい。
【0021】
エアバッグ12は、第2膨張部22と第3膨張部23との間に形成された凹部31を有している。凹部31は、エアバッグ12を上方から見たときに乗員200の肩部210から遠ざかるように、あるいは、第1膨張部21に向かって延びるように形成された空間である。別の見方をすると、凹部31が形成されているために、エアバッグ12では、第2膨張部22及び第3膨張部23が第1膨張部21よりも乗員200側に突出している。凹部31は、第1膨張部21と同様に、エアバッグ12の前後方向における中央に位置している。また、凹部31は、例えば、第1膨張部21、第2膨張部22及び第3膨張部23の高さ方向に亘って形成されている。
【0022】
エアバッグ装置10では、テザー32が、凹部31を介して第1膨張部21に対向している。テザー32は、凹部31を橋渡すように第2膨張部22及びシートフレーム130に取り付けられる。具体的には、テザー32は、エアバッグ12の前後方向に延在しており、その前後方向における両端部40、41が第2膨張部22及びシートフレーム130にそれぞれ取り付けられる。テザー32の前側の端部40は、第2膨張部22における凹部31側の部位に取り付けられている。すなわち、テザー32の第2膨張部22への取付点は、第2膨張部22における凹部31側の部位に設けられている。また、この取付点は、第2膨張部22における乗員200側の部位にもなっている。一方、テザー32の後側の端部41は、シートフレーム130の内側に取り付けられる。すなわち、テザー32のシートフレーム130への取付点は、乗員側又は車内側であるシートフレーム130の内側に設けられる。ただし、他の実施態様では、図4に示すように、テザー32のシートフレーム130への取付点は、車外側であるシートフレーム130の外側に設けられてもよい。
【0023】
テザー32は、1枚または複数枚の基布で形成することができる。例えば、テザー32は、ポリアミド合成樹脂などの繊維材料で形成することできる。テザー32の第2膨張部22及びシートフレーム130への取り付けは、縫製、接着又は他の装置によって行うことができる。テザー32の長さは、エアバッグ12の展開状態においてテザー32に張力が作用した状態となるように、テザー32の二つの取付点間の距離よりも短くなっている。テザー32は、凹部31を橋渡すように第2膨張部22及びシートフレーム130に取り付けられる限り、様々な平面形状を有することができる。例えば、帯状、Y字状、U字状などである。テザー32の高さ方向の取り付け位置は、テザー32が乗員200の肩部210を受けることができる位置を含んでいればよい。したがって、テザー32は、第1膨張部21の高さ方向に亘って形成されてもよいし、その一部であってもよい。また、テザー32を高さ方向に複数本設けてもよい。
【0024】
次に、図5及び6を参照して、正規着座状態の乗員200に対するエアバッグ12の変形過程について説明する。ここでは、サイドエアバッグ装置10がファーサイドエアバッグであり、このサイドエアバッグ装置10が設けられた座席100(例えば運転席)の隣に別の座席400(例えば助手席)がある場合を例に説明する。
まず、車両の側面衝突時にインフレータ14が作動すると、エアバッグ12は、インフレータ14から供給されたガスによって、第1~第4の膨張部21~24が膨張展開し、図5(A)及び図6(A)に示す展開状態へと変形する。その後、乗員200は、側面衝突の衝撃により、前側又は横側に移動され得る。例えば、ファーサイドのテストモードでは、図5(A)に矢印300で示すように、乗員200は15度斜め前方に移動され得る。
【0025】
このような乗員200の移動があると、図5(B)に示すように、まず、サイドエアバッグ装置10では、乗員200の肩部210がテザー32に接触し、テザー32を凹部31側に押す。すると、押されたテザー32が、第2膨張部22を乗員200の前部に近づく方向に引っ張る。すなわち、押されたテザー32によって、第2膨張部22の乗員側後端部が凹部31側に引き込まれる。この段階では、凹部31はなくならない。換言すると、テザー32は、第1膨張部21における第3膨張部23側の部位との距離が徐々に縮まっていき、凹部31を狭めていくが、第1膨張部21とは空間を介して対向する。
【0026】
そして、乗員200の移動がさらに進行する、すなわち乗員200がセンター方向に(車両の中心側に)たおれ込み始めると、乗員200の肩部210がテザー32を凹部31側に押し続けていき、図5(C)及び図6(B)に示すように、第2膨張部22が乗員200の前部にさらに近づく。これは、乗員200によって押されたテザー32によって、第2膨張部22の乗員側後端部が凹部31側により一層引き込まれるからである。この段階では、テザー32は、第1膨張部21における第3膨張部23側の部位に接触する。また、少なくともこの段階では、凹部31側に引き込まれた第2膨張部22が乗員200の前部(例えば、肩部210、腕部220、胸部230及び腹部240の各前部)に接触しており、エアバッグ12は、センター方向にたおれ込み始めた乗員200の上体を包み込むように作用する。このように、エアバッグ12は、膨張展開時に、第2膨張部22が、乗員200の前方に回り込み始め、第1膨張部21及び第3膨張部23とともに乗員200の少なくとも肩部周りを包み込み始める。
【0027】
そして、図5(D)に示すように、乗員200がセンター方向にさらにたおれ込んだとき、エアバッグ12全体が乗員200とは反対方向にたおれる。このとき、エアバッグ12は隣の座席400のシートバッグ420と干渉する。エアバッグ12の前部は乗員200とは反対向きに動くが、エアバッグ12の前部にある第2膨張部22がテザー32によって乗員200の前方に回り込む。すなわち、乗員200とは反対方向にたおれたエアバッグ12が隣の座席400のシートバッグ420に干渉しつつ、第2膨張部22がテザー32によって乗員200の前方に回り込み、第1膨張部21及び第3膨張部23とともに乗員200の少なくとも肩部周りを包み込む。最終的に、第1膨張部21、第2膨張部22及び第3膨張部23が乗員200の上体を拘束した後、図6(C)に示すように、第4膨張部24が乗員200の頭部250を拘束する。
【0028】
以上説明したとおり、本実施形態のサイドエアバッグ装置10では、エアバッグ12が、第1膨張部21、第2膨張部22、第3膨張部23及び凹部31を有し、テザー32が、凹部31を橋渡すように第2膨張部22及びシートフレーム130に取り付けられ、凹部31を介して第1膨張部21に対向する。そして、エアバッグ12の膨張展開時にテザー32が乗員200の肩部210を受けると、それにより第2膨張部22が乗員200の前部に近づく方向に変形する。
【0029】
このような構成によれば、エアバッグ展開時に、乗員200の肩部210から押されたテザー32は、エアバッグ12の部位のうち、第2膨張部22を引っ張ることになる。これにより、テザー32がエアバッグ12の他の部位を引っ張らないため、第2膨張部22を乗員200の前部に近づく方向へ確実に導くことができる。したがって、膨張展開したエアバッグ12について、意図した方向へ引っ張り、意図した形状へと適切に変形させることができる。加えて、この変形においては、第2膨張部22が乗員200の前部に近づくため、車両の側面衝突時における乗員200の動きを第2膨張部22で拘束することができる。よって、乗員保護性能が向上する。
【0030】
とりわけ、エアバッグ12は、膨張展開時に、テザー32によって変形した第2膨張部22が、第1膨張部21及び第3膨張部23とともに乗員200の少なくとも肩部210周りを包み込むように構成されている。これにより、乗員200に対する拘束性が高まり、乗員保護性能がより一層向上する。
【0031】
また、テザー32のシートフレーム130への取付点をシートフレーム130の内側に設けている(参照:図3)。このため、この取付点をシートフレーム130の外側に設ける場合に比べて(参照:図4)、テザー32と第1膨張部21との距離を比較的長く確保することができる。これにより、テザー32が押された際に、テザー32が引っ張る第2膨張部22の移動量を増やすことができるので、第2膨張部22を乗員200の前部により近づけることができる。
【0032】
他方、テザー32のシートフレーム130への取付点をシートフレーム130の外側に設ける図4の態様についても、テザー32によって第2膨張部22を乗員200の前部に近づけることはできる。かかる態様は、テザー32をシートフレーム130に取り付ける作業性が良い点で有用である。
【0033】
また、テザー32の第2膨張部22への取付点を、第2膨張部22における凹部31側の部位に設けている。これにより、テザー32が第2膨張部22を引っ張る際に、第2膨張部22を乗員200の前部側へ引き込みやすくなる。また、テザー32の第2膨張部22への取付点は、第2膨張部22における乗員側の部位にもなっている。これにより、同様に、テザー32が第2膨張部22を引っ張る際に、第2膨張部22を乗員200の前部側へ引き込みやすくなる。
【0034】
さらに、エアバッグ12は、第4膨張部24を有しているため、乗員200の頭部も側方から拘束し保護することができる。とりわけ、エアバッグ12では、第1膨張部21、第2膨張部22及び第3膨張部23が乗員200の少なくとも肩部210周りを包み込んだ後(参照:図5(D))、図6(C)に示すように、第4膨張部24が乗員200の頭部250を拘束する。これにより、乗員200の上体を拘束してから、乗員200の頭部を拘束することができ、乗員保護性能がより一層向上する。
【0035】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。各実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0036】
10…サイドエアバッグ装置、12…エアバッグ、14…インフレータ、21…第1膨張部、22…第2膨張部、23…第3膨張部、24…第4膨張部、26…スタッドボルト、31…凹部、32…テザー、40…端部、41…端部、100…座席、110…シートクッション、120…シートバック、130…シートフレーム、132…サイドフレーム端部、200…乗員、210…肩部、220…腕部、230…胸部、240…腹部、250…頭部、300…矢印
図1
図2
図3
図4
図5
図6