(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-16
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】半導体発光素子および半導体発光素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 33/58 20100101AFI20220106BHJP
H01L 33/44 20100101ALI20220106BHJP
【FI】
H01L33/58
H01L33/44
(21)【出願番号】P 2021001667
(22)【出願日】2021-01-07
【審査請求日】2021-07-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 紀隆
(72)【発明者】
【氏名】稲津 哲彦
【審査官】大西 孝宣
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-207925(JP,A)
【文献】特開2020-113741(JP,A)
【文献】特開2013-254893(JP,A)
【文献】国際公開第2016/181625(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/042909(WO,A1)
【文献】特開2012-182211(JP,A)
【文献】特表2015-500576(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0231849(US,A1)
【文献】特開2020-177996(JP,A)
【文献】特開2017-204571(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00 - 33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
n型AlGaN系半導体材料から構成されるn型半導体層と、
前記n型半導体層の第1上面に設けられ、AlGaN系半導体材料から構成される活性層と、
前記活性層上に設けられるp型半導体層と、
前記p型半導体層の上面に設けられ、Rhを含むp側コンタクト電極と、
前記n型半導体層の第2上面に設けられるn側コンタクト電極と、
前記p側コンタクト電極上に設けられるp側パッド開口と、前記n側コンタクト電極上に設けられるn側パッド開口とを有し、前記n型半導体層、前記活性層および前記p型半導体層の側面を被覆し、前記p側パッド開口とは異なる箇所において前記p側コンタクト電極を被覆し、前記n側パッド開口とは異なる箇所におい
て前記n側コンタクト電極を被覆する保護層と、
前記p側パッド開口において前記p側コンタクト電極と接続するp側パッド電極と、
前記n側パッド開口において前記n側コンタクト電極と接続するn側パッド電極と、を備え、
前記保護層は、SiO
2から構成される第1誘電体層と、前記第1誘電体層とは異なる酸化物材料から構成され、前記第1誘電体層を被覆する第2誘電体層と、SiO
2から構成され、前記第2誘電体層を被覆する第3誘電体層とを含み、
前記第1誘電体層の炭素濃度は、前記第3誘電体層の炭素濃度よりも小さく、
前記第1誘電体層、前記第2誘電体層および前記第3誘電体層のそれぞれは、前記活性層が発する深紫外光の波長に対する透過率が80%以上である半導体発光素子。
【請求項2】
前記第1誘電体層の厚さは、前記n側コンタクト電極の厚さおよび前記p側コンタクト電極の厚さよりも大きい、請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項3】
前記第1誘電体層の厚さは、500nm以上1000nm以下であり、
前記第2誘電体層の厚さおよび前記第3誘電体層の厚さは、10nm以上100nm以下である、請求項1または2に記載の半導体発光素子。
【請求項4】
n型AlGaN系半導体材料から構成されるn型半導体層の第1上面にAlGaN系半導体材料から構成される活性層を形成する工程と、
前記活性層上にp型半導体層を形成する工程と、
前記n型半導体層の第2上面が露出するように前記p型半導体層および前記活性層の一部を除去する工程と、
前記p型半導体層の上面にRhを含むp側コンタクト電極を形成する工程と、
前記n型半導体層の前記第2上面にn側コンタクト電極を形成する工程と、
第1酸化物材料から構成され、前記n型半導体層、前記活性層および前記p型半導体層の側面を被覆し、前記p側コンタクト電極および前記n側コンタクト電極を被覆する第1誘電体層を形成する工程と、
前記第1酸化物材料とは異なる第2酸化物材料から構成され、前記第1誘電体層を被覆する第2誘電体層を形成する工程と、
SiO
2から構成され、前記第2誘電体層を被覆する第3誘電体層を原子層堆積法で形成する工程と、
前記p側コンタクト電極上の前記第1誘電体層、前記第2誘電体層および前記第3誘電体層を除去してp側パッド開口を形成する工程と、
前記n側コンタクト電極上の前記第1誘電体層、前記第2誘電体層および前記第3誘電体層を除去してn側パッド開口を形成する工程と、
前記p側パッド開口において前記p側コンタクト電極と接続するp側パッド電極を形成する工程と、
前記n側パッド開口において前記n側コンタクト電極と接続するn側パッド電極を形成する工程と、を備え、
前記第1誘電体層、前記第2誘電体層および前記第3誘電体層のそれぞれは、前記活性層が発する深紫外光の波長に対する透過率が80%以上である、半導体発光素子の製造方法。
【請求項5】
前記第1誘電体層は、プラズマ励起化学気相成長法で形成され、前記第2誘電体層は、原子層堆積法で形成される、請求項4に記載の半導体発光素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光素子および半導体発光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体発光素子は、基板上に積層されるn型半導体層、活性層およびp型半導体層を有し、n型半導体層上にn側電極が設けられ、p型半導体層上にp側電極が設けられる。半導体発光素子の表面には酸化シリコンから構成される保護膜が設けられる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
耐湿性の高い保護膜として窒化シリコンが知られているが、窒化シリコンは紫外光を吸収する特性があるため、発光効率の低下につながりうる。
【0005】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、耐湿性および発光効率の双方を向上できる半導体発光素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様の半導体発光素子は、n型AlGaN系半導体材料から構成されるn型半導体層と、n型半導体層の第1上面に設けられ、AlGaN系半導体材料から構成される活性層と、活性層上に設けられるp型半導体層と、p型半導体層の上面に設けられ、Rhを含むp側コンタクト電極と、n型半導体層の第2上面に設けられるn側コンタクト電極と、p側コンタクト電極上に設けられるp側パッド開口と、n側コンタクト電極上に設けられるn側パッド開口とを有し、n型半導体層、活性層およびp型半導体層の側面を被覆し、p側パッド開口とは異なる箇所においてp側コンタクト電極を被覆し、n側パッド開口とは異なる箇所においてn側コンタクト電極を被覆する保護層と、p側パッド開口においてp側コンタクト電極と接続するp側パッド電極と、n側パッド開口においてn側コンタクト電極と接続するn側パッド電極と、を備える。保護層は、SiO2から構成される第1誘電体層と、第1誘電体層とは異なる酸化物材料から構成され、第1誘電体層を被覆する第2誘電体層と、SiO2から構成され、第2誘電体層を被覆する第3誘電体層とを含む。第1誘電体層の炭素濃度は、第3誘電体層の炭素濃度よりも小さい。第1誘電体層、第2誘電体層および第3誘電体層のそれぞれは、活性層が発する深紫外光の波長に対する透過率が80%以上である。
【0007】
本発明の別の態様は、半導体発光素子の製造方法である。この方法は、n型AlGaN系半導体材料から構成されるn型半導体層の第1上面にAlGaN系半導体材料から構成される活性層を形成する工程と、活性層上にp型半導体層を形成する工程と、n型半導体層の第2上面が露出するようにp型半導体層および活性層の一部を除去する工程と、p型半導体層の上面にRhを含むp側コンタクト電極を形成する工程と、n型半導体層の第2上面にn側コンタクト電極を形成する工程と、第1酸化物材料から構成され、n型半導体層、活性層およびp型半導体層の側面を被覆し、p側コンタクト電極およびn側コンタクト電極を被覆する第1誘電体層を形成する工程と、第1酸化物材料とは異なる第2酸化物材料から構成され、第1誘電体層を被覆する第2誘電体層を形成する工程と、SiO2から構成され、第2誘電体層を被覆する第3誘電体層を原子層堆積法で形成する工程と、p側コンタクト電極上の第1誘電体層、第2誘電体層および第3誘電体層を除去してp側パッド開口を形成する工程と、n側コンタクト電極上の第1誘電体層、第2誘電体層および第3誘電体層を除去してn側パッド開口を形成する工程と、p側パッド開口においてp側コンタクト電極と接続するp側パッド電極を形成する工程と、n側パッド開口においてn側コンタクト電極と接続するn側パッド電極を形成する工程と、を備える。第1誘電体層、第2誘電体層および第3誘電体層のそれぞれは、活性層が発する深紫外光の波長に対する透過率が80%以上である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、半導体発光素子の耐湿性および発光効率の双方を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態に係る半導体発光素子の構成を概略的に示す断面図である。
【
図2】半導体発光素子の製造工程を概略的に示す図である。
【
図3】半導体発光素子の製造工程を概略的に示す図である。
【
図4】半導体発光素子の製造工程を概略的に示す図である。
【
図5】半導体発光素子の製造工程を概略的に示す図である。
【
図6】半導体発光素子の製造工程を概略的に示す図である。
【
図7】半導体発光素子の製造工程を概略的に示す図である。
【
図8】半導体発光素子の製造工程を概略的に示す図である。
【
図9】半導体発光素子の製造工程を概略的に示す図である。
【
図10】半導体発光素子の製造工程を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、説明の理解を助けるため、各図面における各構成要素の寸法比は、必ずしも実際の発光素子の寸法比と一致しない。
【0011】
本実施の形態に係る半導体発光素子は、中心波長λが約360nm以下となる「深紫外光」を発するように構成され、いわゆるDUV-LED(Deep UltraViolet-Light Emitting Diode)チップである。このような波長の深紫外光を出力するため、バンドギャップが約3.4eV以上となる窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)系半導体材料が用いられる。本実施の形態では、特に、中心波長λが約240nm~320nmの深紫外光を発する場合について示す。
【0012】
本明細書において、「AlGaN系半導体材料」とは、少なくとも窒化アルミニウム(AlN)および窒化ガリウム(GaN)を含む半導体材料のことをいい、窒化インジウム(InN)などの他の材料を含有する半導体材料を含むものとする。したがって、本明細書にいう「AlGaN系半導体材料」は、例えば、In1-x-yAlxGayN(0<x+y≦1、0<x<1、0<y<1)の組成で表すことができ、AlGaNまたはInAlGaNを含む。本明細書の「AlGaN系半導体材料」は、例えば、AlNおよびGaNのそれぞれのモル分率が1%以上であり、好ましくは5%以上、10%以上または20%以上である。
【0013】
また、AlNを含まない材料を区別するために「GaN系半導体材料」ということがある。「GaN系半導体材料」には、GaNやInGaNが含まれる。同様に、GaNを含まない材料を区別するために「AlN系半導体材料」ということがある。「AlN系半導体材料」には、AlNやInAlNが含まれる。
【0014】
図1は、実施の形態に係る半導体発光素子10の構成を概略的に示す断面図である。半導体発光素子10は、基板20と、ベース層22と、n型半導体層24と、活性層26と、p型半導体層28と、p側コンタクト電極30と、p側電流拡散層32と、n側コンタクト電極34と、n側電流拡散層36と、保護層38と、p側パッド電極40pと、n側パッド電極40nとを備える。
【0015】
図1において、矢印Aで示される方向を「上下方向」または「厚み方向」ということがある。また、基板20から見て、基板20から離れる方向を上側、基板20に向かう方向を下側ということがある。
【0016】
基板20は、第1主面20aと、第1主面20aとは反対側の第2主面20bとを有する。第1主面20aは、ベース層22からp型半導体層28までの各層を成長させるための結晶成長面である。基板20は、半導体発光素子10が発する深紫外光に対して透光性を有する材料から構成され、例えば、サファイア(Al2O3)から構成される。第1主面20aには、深さおよびピッチがサブミクロン(1μm以下)である微細な凹凸パターン(不図示)が形成されてもよい。このような基板20は、パターン化サファイア基板(PSS;Patterned Sapphire Substrate)とも呼ばれる。第2主面20bは、活性層26が発する深紫外光を外部に取り出すための光取り出し面である。基板20は、AlNから構成されてもよいし、AlGaNから構成されてもよい。基板20の第1主面20aは、パターン化されていない平坦面で構成されてもよい。
【0017】
ベース層22は、基板20の第1主面20aの上に設けられる。ベース層22は、n型半導体層24を形成するための下地層(テンプレート層)である。ベース層22は、例えば、アンドープのAlN層であり、具体的には高温成長させたAlN(HT-AlN;High Temperature-AlN)層である。ベース層22は、AlN層上に形成されるアンドープのAlGaN層を含んでもよい。基板20がAlN基板またはAlGaN基板である場合、ベース層22は、アンドープのAlGaN層のみで構成されてもよい。つまり、ベース層22は、アンドープのAlN層およびAlGaN層の少なくとも一方を含む。
【0018】
ベース層22は、第1上面22aと、第2上面22bとを有する。第1上面22aは、n型半導体層24が形成される部分であり、第2上面22bは、n型半導体層24が形成されない部分である。ここで、第1上面22aが位置する領域を「第1領域W1」と定義し、第2上面22bが位置する領域を「第2領域W2」と定義する。第2領域W2は、半導体発光素子10の外周に沿って枠状に定義される。第1領域W1は、第2領域W2の内側に定義される。
【0019】
n型半導体層24は、ベース層22の第1上面22aに設けられる。n型半導体層24は、n型のAlGaN系半導体材料層であり、例えば、n型の不純物としてSiがドープされるAlGaN層である。n型半導体層24は、活性層26が発する深紫外光を透過するように組成比が選択され、例えば、AlNのモル分率が25%以上、好ましくは、40%以上または50%以上となるように形成される。n型半導体層24は、活性層26が発する深紫外光の波長よりも大きいバンドギャップを有し、例えば、バンドギャップが4.3eV以上となるように形成される。n型半導体層24は、AlNのモル分率が80%以下、つまり、バンドギャップが5.5eV以下となるように形成されることが好ましく、AlNのモル分率が70%以下(つまり、バンドギャップが5.2eV以下)となるように形成されることがより望ましい。n型半導体層24は、1μm~3μm程度の厚さを有し、例えば、2μm程度の厚さを有する。
【0020】
n型半導体層24は、不純物であるSiの濃度が1×1018/cm3以上5×1019/cm3以下となるように形成される。n型半導体層24は、Si濃度が5×1018/cm3以上3×1019/cm3以下となるように形成されることが好ましく、7×1018/cm3以上2×1019/cm3以下となるように形成されることが好ましい。ある実施例において、n型半導体層24のSi濃度は、1×1019/cm3前後であり、8×1018/cm3以上1.5×1019/cm3以下の範囲である。
【0021】
n型半導体層24は、第1上面24aと、第2上面24bとを有する。第1上面24aは、活性層26が形成される部分であり、第2上面24bは、活性層26が形成されない部分である。ここで、第1上面24aが位置する領域を「第3領域W3」と定義し、第2上面24bが位置する領域を「第4領域W4」と定義する。第4領域W4は、第3領域W3に隣接している。
【0022】
活性層26は、n型半導体層24の第1上面24aに設けられる。活性層26は、AlGaN系半導体材料で構成され、n型半導体層24とp型半導体層28の間に挟まれてダブルへテロ構造を形成する。活性層26は、波長355nm以下の深紫外光を出力するためにバンドギャップが3.4eV以上となるように構成され、例えば、波長320nm以下の深紫外光を出力できるようにAlN組成比が選択される。
【0023】
活性層26は、例えば、単層または多層の量子井戸構造を有し、アンドープのAlGaN系半導体材料で形成される障壁層と、アンドープのAlGaN系半導体材料で形成される井戸層の積層体で構成される。活性層26は、例えば、n型半導体層24と直接接触する第1障壁層と、第1障壁層の上に設けられる第1井戸層とを含む。第1井戸層とp型半導体層28の間に、障壁層および井戸層の一以上のペアが追加的に設けられてもよい。障壁層および井戸層は、1nm~20nm程度の厚さを有し、例えば、2nm~10nm程度の厚さを有する。
【0024】
活性層26は、p型半導体層28と直接接触する電子ブロック層をさらに含んでもよい。電子ブロック層は、アンドープのAlGaN系半導体材料層であり、例えば、AlNのモル分率が40%以上、好ましくは、50%以上となるように形成される。電子ブロック層は、AlNのモル分率が80%以上となるように形成されてもよく、実質的にGaNを含まないAlN系半導体材料で形成されてもよい。電子ブロック層は、1nm~10nm程度の厚さを有し、例えば、2nm~5nm程度の厚さを有する。
【0025】
p型半導体層28は、活性層26の上に形成される。p型半導体層28は、p型のAlGaN系半導体材料層またはp型のGaN系半導体材料層であり、例えば、p型の不純物としてマグネシウム(Mg)がドープされるAlGaN層またはGaN層である。p型半導体層28は、例えば、20nm~400nm程度の厚さを有する。
【0026】
p型半導体層28は、複数の層が積層された積層構造を有してもよい。p型半導体層28は、例えば、p型クラッド層とp型コンタクト層を有してもよい。p型クラッド層は、p型コンタクト層と比較してAlN比率の高いp型AlGaN層であり、活性層26と直接接触するように設けられる。p型コンタクト層は、p型クラッド層と比較してAlN比率の低いp型AlGaN層またはp型GaN層である。p型コンタクト層は、p型クラッド層の上に設けられ、p側コンタクト電極30と直接接触するように設けられる。p型クラッド層は、p型第1クラッド層と、p側第2クラッド層とを有してもよい。
【0027】
p型第1クラッド層は、活性層26が発する深紫外光を透過するように組成比が選択される。p型第1クラッド層は、例えば、AlNのモル分率が25%以上、好ましくは、40%以上または50%以上となるように構成される。p型第1クラッド層のAlN比率は、例えば、n型半導体層24のAlN比率と同程度、または、n型半導体層24のAlN比率よりも大きい。p型クラッド層のAlN比率は、70%以上または80%以上であってもよい。p型第1クラッド層は、10nm~100nm程度の厚さを有し、例えば、15nm~70nm程度の厚さを有する。
【0028】
p型第2クラッド層は、p型第1クラッド層上に設けられる。p型第2クラッド層は、AlN比率が中程度のp型AlGaN層であり、p型第1クラッド層よりもAlN比率が低く、p型コンタクト層よりもAlN比率が高い。p型第2クラッド層は、例えば、AlNのモル分率が25%以上、好ましくは、40%以上または50%以上となるように形成される。p型第2クラッド層のAlN比率は、例えば、n型半導体層24のAlN比率の±10%程度となるように形成される。p型第2クラッド層は、5nm~250nm程度の厚さを有し、例えば、10nm~150nm程度の厚さを有する。なお、p型第2クラッド層が設けられなくてもよく、p型クラッド層がp型第1クラッド層のみで構成されてもよい。
【0029】
p型コンタクト層は、相対的に低AlN比率のp型AlGaN層またはp型GaN層である。p型コンタクト層は、p側コンタクト電極30と良好なオーミック接触を得るためにAlN比率が20%以下となるよう構成され、好ましくは、AlN比率が10%以下、5%以下または0%となるように形成される。つまり、p型コンタクト層は、実質的にAlNを含まないp型GaN系半導体材料で形成されうる。その結果、p型コンタクト層は、活性層26が発する深紫外光を吸収しうる。p型コンタクト層は、活性層26が発する深紫外光の吸収量を小さくするために薄く形成されることが好ましい。p型コンタクト層は、5nm~30nm程度の厚さを有し、例えば、10nm~20nm程度の厚さを有する。
【0030】
p側コンタクト電極30は、p型半導体層28の上に設けられる。p側コンタクト電極30は、p型半導体層28(具体的にはp型コンタクト層)とオーミック接触可能であり、活性層26が発する深紫外光に対する反射率が高い材料で構成される。p側コンタクト電極30は、ロジウム(Rh)などの白金族金属を含む。p側コンタクト電極30には、紫外光反射率の低下の要因となりうる金(Au)が含まれないことが好ましい。p側コンタクト電極30の厚さは、50nm~200nm程度である。
【0031】
p側コンタクト電極30は、Rh層とAl層の積層構造を有してもよい。この場合、Rh層は、p型半導体層28の上面に直接接触するように設けられる。Al層は、Rh層の上に設けられる。Rh層の厚さは、10nm以下とすることが好ましく、5nm以下とすることがより好ましい。Al層の厚さは、20nm以上とすることが好ましく、100nm以上とすることがより好ましい。p側コンタクト電極30は、Rh層の厚さを10nm以下とし、Al層の厚さを20nm以上とすることで、1×10-2Ω・cm2以下(例えば1×10-4Ω・cm2以下)のコンタクト抵抗と、波長280nmの紫外光に対して70%以上(例えば71%~81%程度)の反射率を得ることができる。
【0032】
p側コンタクト電極30は、Rh層またはAl層の上に設けられるTi層と、Ti層の上に設けられるTiN層とをさらに有してもよい。Ti層は、Rh層またはAl層の酸化および腐食を防ぐために設けられる。Ti層の厚さは、10nm以上であり、例えば25nm~50nm程度である。TiN層は、導電性を有する窒化チタン(TiN)から構成される。導電性を有するTiNの導電率は、1×10-5Ω・m以下であり、例えば4×10-7Ω・m程度である。TiN層の厚さは、5nm以上であり、例えば10nm~50nm程度である。なお、p側コンタクト電極30は、Ti層およびTiN層の少なくとも一方を有しなくてもよい。
【0033】
p側電流拡散層32は、p側コンタクト電極30の上に設けられる。p側電流拡散層32は、p側コンタクト電極30の上面30aおよび側面30bを被覆するように設けられる。p側電流拡散層32は、p側パッド電極40pから注入される電流を横方向(水平方向)に拡散させるためにある程度の厚さを有することが好ましい。p側電流拡散層32の厚みは、100nm以上500nm以下であり、例えば200nm~300nm程度である。
【0034】
p側電流拡散層32は、第1TiN層、金属層および第2TiN層を順に積層させた積層構造を有する。p側電流拡散層32の第1TiN層および第2TiN層は、導電性を有する窒化チタンから構成される。p側電流拡散層32の第1TiN層および第2TiN層のそれぞれの厚みは、10nm以上であり、例えば50nm~200nm程度である。
【0035】
p側電流拡散層32の金属層は、単一の金属層または複数の金属層から構成される。p側電流拡散層32の金属層は、チタン(Ti)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)またはロジウム(Rh)などの金属材料から構成される。p側電流拡散層32の金属層は、材料の異なる複数の金属層を積層させた構造を有してもよい。p側電流拡散層32の金属層は、第1金属材料から構成される第1金属層と、第2金属材料から構成される第2金属層とを積層させた構造を有してもよい。p側電流拡散層32の金属層は、複数の第1金属層と複数の第2金属層を交互に積層させた構造を有してもよい。p側電流拡散層32の金属層は、第3金属材料から構成される第3金属層をさらに有してもよい。p側電流拡散層32の金属層の厚みは、第1TiN層および第2TiN層のそれぞれの厚みよりも大きい。p側電流拡散層32の金属層の厚みは、50nm以上であり、例えば100nm~300nm程度である。
【0036】
n側コンタクト電極34は、n型半導体層24の第2上面24bに設けられる。n側コンタクト電極34は、活性層26が設けられる第3領域W3とは異なる第4領域W4に設けられる。n側コンタクト電極34は、n型半導体層24とオーミック接触が可能であり、かつ、活性層26が発する深紫外光に対する反射率が高い材料で構成される。
【0037】
n側コンタクト電極34は、n型半導体層24に直接接触するTi層と、Ti層に直接接触するAl層とを含む。Ti層の厚さは1nm~10nm程度であり、5nm以下であることが好ましく、1nm~2nmであることがより好ましい。Ti層の厚さを小さくすることで、n型半導体層24から見たときのn側コンタクト電極34の紫外光反射率を高めることができる。Al層の厚さは、200nm以上であることが好ましく、例えば300nm~1000nm程度である。Al層の厚さを大きくすることで、n側コンタクト電極34の紫外光反射率を高めることができる。
【0038】
n側コンタクト電極34は、Al層の上に設けられるTi層と、Ti層の上に設けられるTiN層とをさらに有してもよい。Ti層は、Al層の酸化を防ぐために設けられる。Ti層の厚さは、10nm以上であり、例えば25nm~50nm程度である。TiN層は、導電性を有する窒化チタンから構成される。TiN層の厚さは、5nm以上であり、例えば10nm~50nm程度である。なお、n側コンタクト電極34は、Ti層およびTiN層の少なくとも一方を有しなくてもよい。
【0039】
n側電流拡散層36は、n側コンタクト電極34の上に設けられる。n側電流拡散層36は、n側コンタクト電極34の上面34aおよび側面34bを被覆するように設けられる。n側電流拡散層36は、n側パッド電極40nから注入される電流を横方向(水平方向)に拡散させるためにある程度の厚さを有することが好ましい。n側電流拡散層36の厚みは、100nm以上500nm以下であり、例えば200nm~300nm程度である。
【0040】
n側電流拡散層36は、p側電流拡散層32と同様、第1TiN層、金属層および第2TiN層を順に積層させた積層構造を有する。n側電流拡散層36の第1TiN層および第2TiN層は、導電性を有する窒化チタンから構成される。n側電流拡散層36の第1TiN層および第2TiN層のそれぞれの厚みは、10nm以上であり、例えば50nm~200nm程度である。
【0041】
n側電流拡散層36の金属層は、単一の金属層または複数の金属層から構成される。n側電流拡散層36の金属層は、p側電流拡散層32と同様、チタン(Ti)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)またはロジウム(Rh)などの金属材料から構成される。n側電流拡散層36の金属層は、材料の異なる複数の金属層を積層させた構造を有してもよい。n側電流拡散層36の金属層は、第1金属材料から構成される第1金属層と、第2金属材料から構成される第2金属層とを積層させた構造を有してもよい。n側電流拡散層36の金属層は、複数の第1金属層と複数の第2金属層を交互に積層させた構造を有してもよい。n側電流拡散層36の金属層は、第3金属材料から構成される第3金属層をさらに有してもよい。n側電流拡散層36の金属層の厚みは、第1TiN層および第2TiN層のそれぞれの厚みよりも大きい。n側電流拡散層36の金属層の厚みは、50nm以上であり、例えば100nm~300nm程度である。
【0042】
保護層38は、p側パッド開口38pおよびn側パッド開口38nを有し、p側パッド開口38pおよびn側パッド開口38nとは異なる箇所において半導体発光素子10の上面全体を被覆するように設けられる。p側パッド開口38pは、p側コンタクト電極30およびp側電流拡散層32の上に設けられる。n側パッド開口38nは、n側コンタクト電極34およびn側電流拡散層36の上に設けられる。
【0043】
保護層38は、n型半導体層24の側面24c、活性層26の側面26cおよびp型半導体層28の側面28cを被覆する。保護層38は、p側パッド開口38pとは異なる箇所においてp側コンタクト電極30およびp側電流拡散層32を被覆する。保護層38は、p側コンタクト電極30およびp側電流拡散層32とは異なる箇所において、p型半導体層28の上面28aを被覆する。保護層38は、n側パッド開口38nとは異なる箇所においてn側コンタクト電極34およびn側電流拡散層36を被覆する。保護層38は、n側コンタクト電極34およびn側電流拡散層36とは異なる箇所において、n型半導体層24の第2上面24bを被覆する。保護層38は、ベース層22の第2上面22bに接する。
【0044】
保護層38は、第1誘電体層42と、第2誘電体層44と、第3誘電体層46とを含む。第1誘電体層42、第2誘電体層44および第3誘電体層46のそれぞれは、活性層26が発する深紫外光を実質的に吸収しない材料から構成され、活性層26が発する深紫外光の波長に対する透過率が80%以上となる材料から構成される。このような材料として、酸化シリコン(SiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化ハフニウム(HfO2)などの酸化物材料が挙げられる。
【0045】
第1誘電体層42は、n型半導体層24、活性層26、p型半導体層28、p側電流拡散層32およびn側電流拡散層36と直接接触する。第1誘電体層42は、第1酸化物材料から構成され、SiO2、Al2O3またはHfO2から構成される。第1誘電体層42は、好ましくはSiO2から構成される。第1誘電体層42の厚さは、300nm以上1500nm以下であり、例えば600nm~1000nm程度である。第1誘電体層42の厚さは、p側コンタクト電極30の厚さおよびn側コンタクト電極34の厚さよりも大きい。第1誘電体層42は、プラズマ励起化学気相成長(PECVD;Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition)法により形成できる。PECVD法を用いることで、厚みの大きい誘電体層を容易に形成できる。
【0046】
第2誘電体層44は、第1誘電体層42の上に設けられ、第1誘電体層42の全体を被覆するように設けられる。第2誘電体層44は、第1誘電体層42とは異なる第2酸化物材料から構成され、SiO2、Al2O3またはHfO2から構成される。第2誘電体層44は、好ましくはAl2O3から構成される。第2誘電体層44の材料を第1誘電体層42の材料と異ならせることで、第1誘電体層42に発生しうるピンホールを塞ぐことができ、封止性を高めることができる。第2誘電体層44の厚さは、10nm以上100nm以下であり、例えば20nm~50nm程度である。したがって、第2誘電体層44の厚さは、第1誘電体層42の厚さよりも小さく、第1誘電体層42の厚さの10%以下または5%以下である。第2誘電体層44は、原子層堆積(ALD;Atomic Layer Deposition)法により形成できる。ALD法を用いることで、緻密で膜密度の高い誘電体膜を形成できる。
【0047】
第3誘電体層46は、第2誘電体層44の上に設けられ、第2誘電体層44の全体を被覆するように設けられる。第3誘電体層46は、第2酸化物材料とは異なる第3酸化物材料から構成され、好ましくはSiO2から構成される。第3誘電体層46の材料を第2誘電体層44の材料と異ならせることで、第2誘電体層44に発生しうるピンホールを塞ぐことができ、封止性を高めることができる。第3誘電体層46の厚さは、10nm以上100nm以下であり、例えば20nm~50nm程度である。したがって、第3誘電体層46の厚さは、第2誘電体層44の厚さと同程度であり、第1誘電体層42の厚さよりも小さい。第3誘電体層46は、ALD法により形成できる。ALD法を用いてSiO2膜を形成することで、耐湿性の優れた第3誘電体層46を形成できる。
【0048】
第1誘電体層42および第3誘電体層46がSiO2から構成される場合、第1誘電体層42の炭素濃度は、第3誘電体層46の炭素濃度よりも小さい。第1誘電体層42の炭素濃度は、例えば、4×1017cm-3以上2×1018cm-3以下である。第1誘電体層42は、実質的に炭素を含まないSiO2から構成され、例えば、シラン(SiH4)などの炭素を含まないシリコン化合物と、酸素(O2)、水(H2O)、窒素酸化物(NxOy)などの炭素を含まない酸素化合物とを用いて形成できる。第1誘電体層42の炭素濃度を小さくすることで、第1誘電体層42の膜質および紫外光透過率を向上できる。一方、第3誘電体層46の炭素濃度は、例えば、5×1018cm-3以上3×1019cm-3以下である。第3誘電体層46は、ALD法で成膜する観点から、トリス(ジメチルアミノ)シラン(3DMAS)、ビス(ジエチルアミノ)シラン(BDEAS)、ビス(ターシャリーブチルアミノ)シラン(BTBAS)などの炭素を含む有機シリコン化合物を用いて形成されることが好ましい。その結果、第3誘電体層46は、炭素を含むSiO2から構成され、第1誘電体層42に比べて膜質および紫外光透過率が低下しうる。しかしながら、第3誘電体層46の炭素濃度はわずかであるため、炭素が含まれることによる悪影響は小さく、活性層26が発する深紫外光の波長に対する第3誘電体層46の透過率を80%以上にできる。
【0049】
第1誘電体層42および第3誘電体層46がSiO2から構成される場合、第3誘電体層46の膜密度は、第1誘電体層42の膜密度と同じであってもよい。なお、第3誘電体層46の膜密度は、第1誘電体層42の膜密度よりも大きくてもよいし、第1誘電体層42の膜密度よりも小さくてもよい。第1誘電体層42または第3誘電体層46のいずれかの膜密度を大きくすることで、保護層38の耐湿性を向上できる。
【0050】
p側パッド電極40pおよびn側パッド電極40nは、半導体発光素子10をパッケージ基板などに実装する際にボンディング接合される部分である。p側パッド電極40pは、保護層38の上に設けられ、p側パッド開口38pにおいてp側電流拡散層32と接する。p側パッド電極40pは、p側電流拡散層32を介してp側コンタクト電極30と電気的に接続する。n側パッド電極40nは、保護層38の上に設けられ、n側パッド開口38nにおいてn側電流拡散層36と接する。n側パッド電極40nは、n側電流拡散層36を介してn側コンタクト電極34と電気的に接続される。
【0051】
p側パッド電極40pおよびn側パッド電極40nは、耐腐食性の観点からAuを含むように構成され、例えば、Ni/Au、Ti/AuまたはTi/Pt/Auの積層構造で構成される。p側パッド電極40pおよびn側パッド電極40nが金錫(AuSn)で接合される場合、金属接合材となるAuSn層をp側パッド電極40pおよびn側パッド電極40nが含んでもよい。p側パッド電極40pおよびn側パッド電極40nの厚さは、100nm以上であり、例えば200nm~1000nm程度である。
【0052】
つづいて、半導体発光素子10の製造方法について説明する。
図2~
図10は、半導体発光素子10の製造工程を概略的に示す図である。まず、
図2において、基板20の第1主面20aの上にベース層22、n型半導体層24、活性層26、p型半導体層28を順に形成する。
【0053】
基板20は、例えばパターン化サファイア基板である。ベース層22は、例えばHT-AlN層と、アンドープのAlGaN層とを含む。n型半導体層24、活性層26およびp型半導体層28は、AlGaN系半導体材料、AlN系半導体材料またはGaN系半導体材料から構成される半導体層であり、有機金属化学気相成長(MOVPE;Metal Organic Vapor Phase Epitaxy)法や、分子線エピタキシ(MBE;Molecular Beam Epitaxy)法などの周知のエピタキシャル成長法を用いて形成できる。
【0054】
次に、p型半導体層28の上面28aに第1マスク51を形成する。第1マスク51は、第3領域W3に設けられる。第1マスク51は、活性層26およびp型半導体層28の側面26c,28c(メサ面ともいう)を形成するためのエッチングマスクである。第1マスク51は、公知のフォトリソグラフィ技術を用いて形成できる。
【0055】
次に、
図3に示すように、第1マスク51を形成した状態において、p型半導体層28および活性層26をエッチングし、第3領域W3とは異なる領域にあるn型半導体層24を露出させる。このエッチング工程により、活性層26およびp型半導体層28の側面26c,28cが形成され、n型半導体層24の第2上面24bが形成される。
【0056】
図3のエッチング工程では、塩素系のエッチングガスを用いた反応性イオンエッチングを用いることができ、誘導結合型プラズマ(ICP;Inductively Coupled Plasma)エッチングを用いることができる。例えば、エッチングガスとして塩素(Cl
2)、三塩化ホウ素(BCl
3)、四塩化ケイ素(SiCl
4)などの塩素(Cl)を含む反応性ガスを用いることができる。なお、反応性ガスと不活性ガスを組み合わせてドライエッチングしてもよく、塩素系ガスにアルゴン(Ar)などの希ガスを混合させてもよい。n型半導体層24の第2上面24bを形成した後、第1マスク51が除去される。
【0057】
次に、
図4に示すように、p型半導体層28の上面28aに開口52aを有する第2マスク52を形成し、開口52aにおいてp型半導体層28の上面28aにp側コンタクト電極30を形成する。第2マスク52は、公知のフォトリソグラフィ技術を用いて形成できる。p側コンタクト電極30は、例えば、Rh/Al/Ti/TiNを順に積層することで形成できる。p側コンタクト電極30は、スパッタリング法で形成できる。
【0058】
つづいて、第2マスク52を除去した後に、p側コンタクト電極30にアニール処理を施す。p側コンタクト電極30のアニール処理は、Alの融点(約660℃)未満の温度で実行され、例えば500℃以上650℃以下、好ましくは550℃以上625℃以下の温度で実行される。p側コンタクト電極30にアニール処理をすることで、p側コンタクト電極30のコンタクト抵抗を1×10-2Ω・cm2以下(例えば1×10-4Ω・cm2以下)とし、波長280nmの紫外光に対する反射率を70%以上(例えば71%~81%程度)とすることができる。
【0059】
次に、
図5に示すように、n型半導体層24の第2上面24bに開口53aを有する第3マスク53を形成し、開口53aにおいてn型半導体層24の第2上面24bにn側コンタクト電極34を形成する。第3マスク53は、公知のフォトリソグラフィ技術を用いて形成できる。n側コンタクト電極34は、例えば、Ti/Al/Ti/TiNを順に積層することで形成できる。n側コンタクト電極34は、スパッタリング法で形成できる。
【0060】
つづいて、第3マスク53を除去した後に、n側コンタクト電極34にアニール処理を施す。n側コンタクト電極34のアニール処理は、Alの融点(約660℃)未満の温度で実行され、例えば500℃以上650℃以下、好ましくは550℃以上625℃以下の温度で実行される。アニール処理をすることで、n側コンタクト電極34のコンタクト抵抗を1×10-2Ω・cm2以下にできる。また、アニール温度を560℃以上650℃以下とすることで、アニール処理後のn側コンタクト電極34の平坦性を高め、紫外光反射率を80%以上(例えば90%程度)にできる。
【0061】
次に、
図6に示すように、p型半導体層28の上面28aにおいてp側コンタクト電極30よりも広い領域にp側開口54pを有し、n型半導体層24の第2上面24bにおいてn側コンタクト電極34よりも広い領域にn側開口54nを有する第4マスク54を形成する。第4マスク54は、公知のフォトリソグラフィ技術を用いて形成できる。つづいて、p側開口54pにおいてp側コンタクト電極30の上面30aおよび側面30bを被覆するp側電流拡散層32を形成し、n側開口54nにおいてn側コンタクト電極34の上面34aおよび側面34bを被覆するn側電流拡散層36を形成する。p側電流拡散層32およびn側電流拡散層36は、TiN層、金属層およびTiNを順に積層することで形成できる。p側電流拡散層32およびn側電流拡散層36は、スパッタリング法で形成できる。p側電流拡散層32およびn側電流拡散層36の形成後、第4マスク54が除去される。
【0062】
なお、p側電流拡散層32およびn側電流拡散層36は、同時に形成されなくてもよく、p側電流拡散層32およびn側電流拡散層36のそれぞれが別々に形成されてもよい。例えば、p側開口54pのみを有するマスクを用いてp側電流拡散層32を形成した後に、n側開口54nのみを有するマスクを用いてn側電流拡散層36を形成してもよい。この場合、p側電流拡散層32とn側電流拡散層36の形成順序は特に問わず、n側電流拡散層36を形成した後にp側電流拡散層32を形成してもよい。
【0063】
次に、
図7に示すように、活性層26、p型半導体層28、p側電流拡散層32およびn側電流拡散層36を被覆するように第5マスク55を形成する。第5マスク55は、第1領域W1に設けられ、第2領域W2には設けられていない。第5マスク55は、ベース層22の第2上面22bおよびn型半導体層24の側面24cを形成するためのエッチングマスクである。第5マスク55は、公知のフォトリソグラフィ技術を用いて形成できる。
【0064】
次に、
図8に示すように、第5マスク55が形成された状態において、n型半導体層24をエッチングし、第2領域W2においてベース層22を露出させる。このエッチング工程により、n型半導体層24の側面24cが形成され、ベース層22の第2上面22bが形成される。その後、第5マスク55が除去される。
【0065】
次に、
図9に示すように、素子構造の上面全体を被覆するように保護層38が形成される。まず、第1酸化物材料から構成される第1誘電体層42が形成される。第1誘電体層42は、SiO
2から構成されることができ、PECVD法を用いて形成できる。第1誘電体層42は、炭素を含まないシリコン化合物および酸素化合物を用いて形成され、実質的に炭素を含まないSiO
2から構成されうる。第1誘電体層42は、n型半導体層24の第2上面24bおよび側面24cと、活性層26の側面26cと、p型半導体層28の上面28aおよび側面28cと、p側電流拡散層32と、n側電流拡散層36とを被覆するように設けられる。第1誘電体層42は、第2領域W2においてベース層22の第2上面22bにも設けられる。
【0066】
つづいて、第1誘電体層42の上に第2酸化物材料から構成される第2誘電体層44が形成される。第2誘電体層44は、第1誘電体層42の上面全体を被覆するように形成される。第2誘電体層44は、Al2O3から構成されることができ、ALD法を用いて形成できる。その後、第2誘電体層44の上にSiO2から構成される第3誘電体層46が形成される。第3誘電体層46は、第2誘電体層44の上面全体を被覆するように形成される。第3誘電体層46は、ALD法を用いて形成できる。第3誘電体層46は、炭素を含む有機シリコン化合物を用いて形成され、微量の炭素を含むSiO2から構成されうる。
【0067】
次に、
図10に示すように、保護層38の上に外周開口56a、p側開口56pおよびn側開口56nを有する第6マスク56を形成する。外周開口56aは、第2領域W2に位置する。p側開口56pは、p側コンタクト電極30およびp側電流拡散層32の上に位置する。n側開口56nは、n側コンタクト電極34およびn側電流拡散層36の上に位置する。第6マスク56は、公知のフォトリソグラフィ技術を用いて形成できる。つづいて、外周開口56a、p側開口56pおよびn側開口56nにおいて保護層38をドライエッチングする。保護層38は、六フッ化エタン(C
2F
6)などのCF系のエッチングガスを用いてドライエッチングできる。このエッチング工程により、第1誘電体層42、第2誘電体層44および第3誘電体層46を貫通するp側パッド開口38pおよびn側パッド開口38nが形成される。また、第2領域W2においてベース層22の第2上面22bの一部が露出する。なお、
図9の工程において第2領域W2の一部にマスクを設けた状態で保護層38を形成することで、ベース層22の第2上面22bの一部に保護層38が形成されないようにしてもよい。この場合、
図10の工程にて使用する第6マスク56は、p側開口56pおよびn側開口56nを有し、外周開口56aを有しない。
【0068】
図10のドライエッチング工程にて、p側電流拡散層32およびn側電流拡散層36の第2TiN層がエッチングストップ層として機能する。TiNは、保護層38を除去するためのフッ素系のエッチングガスとの反応性が低く、エッチングによる副生成物が発生しにくい。そのため、保護層38のエッチング工程において、p側コンタクト電極30、p側電流拡散層32、n側コンタクト電極34およびn側電流拡散層36へのダメージを防止できる。p側パッド開口38pおよびn側パッド開口38nの形成後、第6マスク56が除去される。
【0069】
つづいて、p側パッド開口38pを塞ぐようにp側パッド電極40pを形成し、n側パッド開口38nを塞ぐようにn側パッド電極40nを形成する。p側パッド電極40pおよびn側パッド電極40nは、例えば、Ni層またはTi層を堆積し、その上にAu層を堆積することで形成できる。Au層の上にさらに別の金属層が設けられてもよく、例えばSn層、AuSn層、または、Sn/Auの積層構造を形成してもよい。p側パッド電極40pおよびn側パッド電極40nは、第6マスク56を利用して形成されてもよいし、第6マスク56とは別のレジストマスクを利用して形成されてもよい。p側パッド電極40pおよびn側パッド電極40nの形成後、第6マスク56または別のレジストマスクが除去される。
【0070】
以上の工程により、
図1に示す半導体発光素子10ができあがる。
【0071】
本実施の形態によれば、保護層38を構成する第1誘電体層42、第2誘電体層44および第3誘電体層46の全てが活性層26が発する深紫外光の波長に対して透過率が80%以上の材料で構成される。その結果、保護層38による深紫外光の吸収を防ぐことができ、半導体発光素子10の光取り出し効率を向上できる。
【0072】
本実施の形態によれば、第1誘電体層42と第2誘電体層44の材料を異ならせることで、第1誘電体層42に生じうるピンホールを第2誘電体層44によって塞ぐことができる。第2誘電体層44と第3誘電体層46の材料を異ならせることで、第2誘電体層44に生じうるピンホールを第3誘電体層46によって塞ぐことができる。また、第2誘電体層44および第3誘電体層46をALD法を用いて形成することで、第2誘電体層44および第3誘電体層46による被覆性を高めることができる。これにより、保護層38の封止性を高めることができる。
【0073】
本実施の形態によれば、保護層38の最表面を構成する第3誘電体層46を、ALD法を用いてSiO2から構成することで、保護層38の耐湿性を高めることができる。特に、SiO2から構成される第3誘電体層46を保護層38の最表面とすることで、Al2O3などで構成される第2誘電体層44が保護層38の最表面とする場合に比べて保護層38の耐湿性を向上できる。
【0074】
本実施の形態によれば、活性層26と直接接触する第1誘電体層42の炭素濃度を小さくすることで、活性層26が発する紫外光が第1誘電体層42にて吸収されてしまう影響を低減できる。これにより、半導体発光素子10の光取り出し効率を高めることができる。
【0075】
本実施の形態によれば、p側コンタクト電極30にRhを用いることで、p側コンタクト電極30の紫外光反射率を高めることができ、p側コンタクト電極30を高性能の反射電極として機能させることができる。また、p側コンタクト電極30としてRh層とAl層を組み合わせるとともに、Rh層の厚さを5nm以下とすることで、p側コンタクト電極30の反射率を80%以上にできる。この場合、Rh層単体でp側コンタクト電極30を構成する場合に比べて、光取り出し効率を約8%向上させることができる。
【0076】
以上、本発明を実施例にもとづいて説明した。本発明は上述の実施の形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。
【0077】
以下、本発明のいくつかの態様について説明する。
【0078】
本発明の第1の態様は、n型AlGaN系半導体材料から構成されるn型半導体層と、前記n型半導体層の第1上面に設けられ、AlGaN系半導体材料から構成される活性層と、前記活性層上に設けられるp型半導体層と、前記p型半導体層の上面に設けられ、Rhを含むp側コンタクト電極と、前記n型半導体層の第2上面に設けられるn側コンタクト電極と、前記p側コンタクト電極上に設けられるp側パッド開口と、前記n側コンタクト電極上に設けられるn側パッド開口とを有し、前記n型半導体層、前記活性層および前記p型半導体層の側面を被覆し、前記p側パッド開口とは異なる箇所において前記p側コンタクト電極を被覆し、前記n側パッド開口とは異なる箇所において前記n側コンタクト電極を被覆する保護層と、前記p側パッド開口において前記p側コンタクト電極と接続するp側パッド電極と、前記n側パッド開口において前記n側コンタクト電極と接続するn側パッド電極と、を備え、前記保護層は、SiO2から構成される第1誘電体層と、前記第1誘電体層とは異なる酸化物材料から構成され、前記第1誘電体層を被覆する第2誘電体層と、SiO2から構成され、前記第2誘電体層を被覆する第3誘電体層とを含み、前記第1誘電体層の炭素濃度は、前記第3誘電体層の炭素濃度よりも小さく、前記第1誘電体層、前記第2誘電体層および前記第3誘電体層のそれぞれは、前記活性層が発する深紫外光の波長に対する透過率が80%以上である半導体発光素子である。第1の態様によれば、保護層を構成する第1誘電体層と第2誘電体層の材料を異ならせることで、第1誘電体層に発生しうるピンホールを第2誘電体層によって好適に塞ぐことができる。また、保護層の最表面を構成する第3誘電体層をSiO2から構成することで、保護層の耐湿性を高めることができる。さらに、第1誘電体層の炭素濃度を小さくするとともに、第1誘電体層、第2誘電体層および第3誘電体層の深紫外光の波長に対する透過率を80%以上とすることで、保護層による深紫外光の吸収を防ぐことができ、発光素子の光取り出し効率を高めることができる。
【0079】
本発明の第2の態様は、前記第1誘電体層の厚さは、前記n側コンタクト電極の厚さおよび前記p側コンタクト電極の厚さよりも大きい、第1の態様に記載の半導体発光素子である。第2の態様によれば、第1誘電体層の厚さをコンタクト電極よりも厚くすることで、コンタクト電極を確実に封止することができ、発光素子の信頼性を高めることができる。
【0080】
本発明の第3の態様は、前記第1誘電体層の厚さは、500nm以上1000nm以下であり、前記第2誘電体層の厚さおよび前記第3誘電体層の厚さは、10nm以上100nm以下である、第1または第2の態様に記載の半導体発光素子である。第3の態様によれば、第1誘電体層の厚さを500nm以上1000nm以下とすることで、コンタクト電極を確実に封止できる。また、第2誘電体層および第3誘電体層の厚さを10nm以上100nm以下とすることで、第1誘電体層に発生しうるピンホールを第2誘電体層によって塞ぐとともに、第3誘電体層によって耐湿性を向上させることができる。
【0081】
本発明の第4の態様は、n型AlGaN系半導体材料から構成されるn型半導体層の第1上面にAlGaN系半導体材料から構成される活性層を形成する工程と、前記活性層上にp型半導体層を形成する工程と、前記n型半導体層の第2上面が露出するように前記p型半導体層および前記活性層の一部を除去する工程と、前記p型半導体層の上面にRhを含むp側コンタクト電極を形成する工程と、前記n型半導体層の前記第2上面にn側コンタクト電極を形成する工程と、第1酸化物材料から構成され、前記n型半導体層、前記活性層および前記p型半導体層の側面を被覆し、前記p側コンタクト電極および前記n側コンタクト電極を被覆する第1誘電体層を形成する工程と、前記第1酸化物材料とは異なる第2酸化物材料から構成され、前記第1誘電体層を被覆する第2誘電体層を形成する工程と、SiO2から構成され、前記第2誘電体層を被覆する第3誘電体層を原子層堆積法で形成する工程と、前記p側コンタクト電極上の前記第1誘電体層、前記第2誘電体層および前記第3誘電体層を除去してp側パッド開口を形成する工程と、前記n側コンタクト電極上の前記第1誘電体層、前記第2誘電体層および前記第3誘電体層を除去してn側パッド開口を形成する工程と、前記p側パッド開口において前記p側コンタクト電極と接続するp側パッド電極を形成する工程と、前記n側パッド開口において前記n側コンタクト電極と接続するn側パッド電極を形成する工程と、を備え、前記第1誘電体層、前記第2誘電体層および前記第3誘電体層のそれぞれは、前記活性層が発する深紫外光の波長に対する透過率が80%以上である、半導体発光素子の製造方法である。第4の態様によれば、保護層を構成する第1誘電体層と第2誘電体層の材料を異ならせることで、第1誘電体層に発生しうるピンホールを第2誘電体層によって好適に塞ぐことができる。また、保護層の最表面を構成する第3誘電体層をSiO2から構成するとともに、第3誘電体層をALD法で形成することで、より緻密で耐湿性の高い保護層にできる。さらに、第1誘電体層、第2誘電体層および第3誘電体層の深紫外光の波長に対する透過率を80%以上とすることで、保護層による深紫外光の吸収を防ぐことができ、発光素子の光取り出し効率を高めることができる。
【0082】
本発明の第5の態様は、前記第1誘電体層は、プラズマ励起化学気相成長法で形成され、前記第2誘電体層は、原子層堆積法で形成される、第4の態様に記載の半導体発光素子の製造方法である。第5の態様によれば、第1誘電体層をPECVD法で形成することで、第1誘電体層の厚さを容易に大きくすることができ、素子構造の上面全体を確実に封止できる。また、第2誘電体層をALD法で形成することで、より緻密で封止性の高い保護膜にできる。これにより、保護膜の信頼性をより高めることができる。
【符号の説明】
【0083】
10…半導体発光素子、20…基板、22…ベース層、24…n型半導体層、26…活性層、28…p型半導体層、30…p側コンタクト電極、32…p側電流拡散層、34…n側コンタクト電極、36…n側電流拡散層、38…保護層、42…第1誘電体層、44…第2誘電体層、46…第3誘電体層。
【要約】
【課題】半導体発光素子の信頼性および発光効率を向上させる。
【解決手段】半導体発光素子10は、p側コンタクト電極30上に設けられるp側パッド開口38pと、n側コンタクト電極34上に設けられるn側パッド開口38nとを有し、n型半導体層24、活性層26およびp型半導体層28の側面24c,26c,28cを被覆し、p側パッド開口38pとは異なる箇所においてp側コンタクト電極30を被覆し、n側パッド開口38nとは異なる箇所におい
てn側コンタクト電極34を被覆する保護層38を備える。保護層38は、SiO
2から構成される第1誘電体層42と、第1誘電体層42とは異なる酸化物材料から構成され、第1誘電体層42を被覆する第2誘電体層44と、SiO
2から構成され、第2誘電体層44を被覆する第3誘電体層46とを含む。第1誘電体層42の炭素濃度は、第3誘電体層46の炭素濃度よりも小さい。
【選択図】
図1