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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-16
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】選択的エストロゲン受容体分解剤
(51)【国際特許分類】
   C07D 491/052 20060101AFI20220106BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220106BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220106BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220106BHJP
   A61K 31/4741 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
C07D491/052 CSP
A61P43/00 121
A61P35/00
A61K45/00
A61K31/4741
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2021500536
(86)(22)【出願日】2019-07-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-11
(86)【国際出願番号】 US2019041334
(87)【国際公開番号】W WO2020014435
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-01-08
(31)【優先権主張番号】62/697,100
(32)【優先日】2018-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】594197872
【氏名又は名称】イーライ リリー アンド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【弁理士】
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【弁理士】
【氏名又は名称】呉 英燦
(72)【発明者】
【氏名】ジョリー・アン・バスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー・ダニエル・コーエン
(72)【発明者】
【氏名】アルムデナ・ルビオ
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・ジョン・ソール
(72)【発明者】
【氏名】ジェニファー・アン・マクマホン
【審査官】安藤 倫世
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-519721(JP,A)
【文献】特開2020-73493(JP,A)
【文献】特表2016-522262(JP,A)
【文献】特表2018-504384(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 491/052
A61P 43/00
A61P 35/00
A61K 45/00
A61K 31/4741
CAplus/REGISTRY/MARPAT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式の化合物
【化1】
(式中、RまたはRのいずれかは、独立して、Cl、F、-CF、または-CHから選択され、他方は、水素である)、
またはその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
前記化合物が、
【化2】
である、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
前記化合物が、
【化3】
である、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
前記化合物が、
【化4】
である、請求項2に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項5】
前記薬学的に許容される塩が、ベンゼンスルホン酸塩である、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
前記薬学的に許容される塩が、4-メチルベンゼンスルホン酸塩である、請求項4に記載の化合物。
【請求項7】
前記化合物が、
【化5】
である、請求項4に記載の化合物。
【請求項8】
前記化合物が、
【化6】
である、請求項3に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項9】
前記薬学的に許容される塩が、ベンゼンスルホン酸塩である、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
前記薬学的に許容される塩が、4-メチルベンゼンスルホン酸塩である、請求項8に記載の化合物。
【請求項11】
前記化合物が、
【化7】
である、請求項8に記載の化合物。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩を、薬学的に許容される賦形剤、担体、または希釈剤と組み合わせて含む、薬学的組成物。
【請求項13】
1つ以上の他の治療薬剤を含む、請求項12に記載の薬学的組成物。
【請求項14】
乳癌、卵巣癌、子宮内膜癌、前立腺癌、子宮癌、胃癌、または肺癌の治療剤であって、請求項1~11のいずれか1項に記載の化合物もしくはその薬学的に許容される塩、または請求項12~13のいずれか1項に記載の薬学的組成物を含む、治療剤。
【請求項15】
前記乳癌が、ER陽性乳癌である、請求項14に記載の治療剤。
【請求項16】
前記胃癌が、ER陽性胃癌である、請求項14に記載の治療剤。
【請求項17】
前記肺癌が、ER陽性肺癌である、請求項14に記載の治療剤。
【請求項18】
治療における使用のための、請求項12~13のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項19】
乳癌、卵巣癌、子宮内膜癌、前立腺癌、子宮癌、胃癌、または肺癌の治療剤の製造における使用のための、請求項1~11のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項20】
前記治療剤がER陽性乳癌の治療剤である、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
前記治療剤がER陽性胃癌の治療剤である、請求項19に記載の使用。
【請求項22】
前記治療剤がER陽性肺癌の治療剤である、請求項19に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
選択的エストロゲン受容体分解剤(SERD)は、エストロゲン受容体(ER)に結合し、ER媒介転写活性を下方制御する。SERDによって引き起こされるこの分解と下方制御は、がんなどの細胞増殖障害の治療に役立つ可能性がある。SERDのいくつかの小分子の例が文献に開示されている(例えば、WO2005073204、WO2014205136、およびWO2016097071を参照されたい)。しかしながら、既知のSERDは、がんを効果的に治療するために必要なほど有用ではない。例えば、薬物動態(PK)および薬力学(PD)の特性が高く、診療所での効率が高く、経口バイオアベイラビリティが良好なSERDを見つけることは、がんの治療に非常に役立つ。ER媒介転写を強力に阻害する純粋なアンタゴニストSERDは、がんの治療に明らかに有益である。乳癌、卵巣癌、子宮内膜癌、前立腺癌、子宮癌、胃癌、および肺癌などのがん、ならびに、新たな耐性による変異を治療するための新しいSERDが必要である。特に、ER陽性乳癌、胃癌、および/または肺癌を治療するための新しいSERDが必要である。
【発明の概要】
【0002】
式:
【化1】
の化合物、およびその薬学的に許容される塩、ならびにその薬学的組成物が本明細書に提供される。この式のRまたはRのいずれかは独立して、Cl、F、-CF3、または-CHから選択され、他方は水素である。
【0003】
乳癌、卵巣癌、子宮内膜癌、前立腺癌、子宮癌、胃癌、または肺癌を治療するために、本明細書に記載の化合物、その薬学的に許容される塩、およびその薬学的組成物を使用する方法も提供される。この方法は、治療有効量の本明細書に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩を、必要とする患者に投与することを含む。
【0004】
治療に使用するための、本明細書に記載の化合物、およびその薬学的に許容される塩がさらに提供される。本明細書に記載の化合物、およびその薬学的に許容される塩は、乳癌、卵巣癌、子宮内膜癌、前立腺癌、子宮癌、胃癌、または肺癌の治療に使用することができる。
【0005】
乳癌、卵巣癌、子宮内膜癌、前立腺癌、子宮癌、胃癌、または肺癌を治療するための医薬の製造のための、本明細書に記載の化合物およびその薬学的に許容される塩の使用がさらに提供される。
【発明を実施するための形態】
【0006】
SERDとして作用する新規な四環式化合物およびその医薬塩が本明細書に開示されている。本明細書に記載の新たに発明されたSERDはER媒介転写の阻害を提供し、これは、乳癌、卵巣癌、子宮内膜癌、前立腺癌、子宮癌、胃癌、および肺癌などのがん、ならびに新たな耐性による変異の治療に有用である。これらのSERDは、乳癌、胃癌、および/または肺癌などのホルモン受容体陽性がんを治療するために、単剤として、または選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)、アロマターゼ阻害剤、CDK4阻害剤、CDK6阻害剤、PI3K阻害剤、およびmTOR阻害剤などの他のクラスの薬剤と組み合わせて使用できる。
【0007】
本明細書に記載の新規化合物は、式I:
【化2】
によって表されるか、またはその薬学的に許容される塩であり、式中、RまたはRのいずれかは独立してCl、F、-CF、または-CHから選択され、他方が水素である。当業者は、式Iによって記載されるような化合物、またはその薬学的に許容される塩がキラル中心を含み、その位置が上述の*で示されることを理解するであろう。当業者はまた、キラル中心のカーン・インゴルド・プレローグ順位則(R)または(S)指定が、キラル中心の周りの置換パターンに応じて変化することを理解するであろう。式Iの化合物のキラル中心は、式IIによって示されるR-エナンチオマー形態:
【化3】
、および式IIIによって示されるS-エナンチオマー形態:
【化4】
を提供する。ラセミ体を含む式I、式II、および式IIIによる化合物の、全ての個々の立体異性体、エナンチオマー、およびジアステレオマー、ならびにそのエナンチオマーおよびジアステレオマーの混合物は、本明細書に記載の化合物の範囲内に含まれる。キラル中心を含む医薬用途の化合物は、しばしば単一のエナンチオマーまたはジアステレオマーとして単離され、式I、式II、および式IIIのそのような単離された化合物は、本明細書に開示される化合物の範囲内に含まれる。当業者はまた、本明細書に記載の式I、式II、および式IIIの化合物、およびそれらの薬学的に許容される塩を重水素化することができ(水素を重水素で置き換えることができる)、そのような分子が本明細書に開示される化合物の範囲内に含まれると考えられることを理解するであろう。
【0008】
式Iの化合物の具体例(IUPAC命名法名を含む)を以下に示す。
【化5】
5-(4-{2-[3-(フルオロメチル)アゼチジン-1-イル]エトキシ}フェニル)-8-(トリフルオロメチル)-5H-[1]ベンゾピラノ[4,3-c]キノリン-2-オール;
【化6】
5-(4-{2-[3-(フルオロメチル)アゼチジン-1-イル]エトキシ}フェニル)-7-(トリフルオロメチル)-5H-[1]ベンゾピラノ[4,3-c]キノリン-2-オール;
【化7】
8-クロロ-5-(4-{2-[3-(フルオロメチル)アゼチジン-1-イル]エトキシ}フェニル)-5H-[1]ベンゾピラノ[4,3-c]キノリン-2-オール;
【化8】
7-クロロ-5-(4-{2-[3-(フルオロメチル)アゼチジン-1-イル]エトキシ}フェニル)-5H-[1]ベンゾピラノ[4,3-c]キノリン-2-オール;
【化9】
8-フルオロ-5-(4-{2-[3-(フルオロメチル)アゼチジン-1-イル]エトキシ}フェニル)-5H-[1]ベンゾピラノ[4,3-c]キノリン-2-オール;
【化10】
7-フルオロ-5-(4-{2-[3-(フルオロメチル)アゼチジン-1-イル]エトキシ}フェニル)-5H-[1]ベンゾピラノ[4,3-c]キノリン-2-オール;
【化11】
5-(4-{2-[3-(フルオロメチル)アゼチジン-1-イル]エトキシ}フェニル)-8-メチル-5H-[1]ベンゾピラノ[4,3-c]キノリン-2-オール;
【化12】
5-(4-{2-[3-(フルオロメチル)アゼチジン-1-イル]エトキシ}フェニル)-7-メチル-5H-[1]ベンゾピラノ[4,3-c]キノリン-2-オール。
【0009】
上述のキラル中心のために、上述の式Iの化合物のこれらの具体例のそれぞれは、表1に示すように、R-およびS-エナンチオマー形態(すなわち、式IIのR-エナンチオマー化合物および式IIIのS-エナンチオマー化合物)を有する。
【表1-1】
【表1-2】
【0010】
また、本明細書に記載の式I、式II、および式IIIの化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩を、薬学的に許容される賦形剤、担体、または希釈剤と組み合わせて含む薬学的組成物も本明細書に記載される。本明細書に記載の薬学的組成物は、薬学的に許容される添加剤を使用して調製することができる。本明細書において使用されるとき、「薬学的に許容される添加剤」という用語は、組成物または製剤の他の成分と互換性があり、患者に有害でない1つ以上の担体、希釈剤、および賦形剤を指す。本明細書に記載の式I、式II、および式IIIの化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩は、経口またはIVなどの様々な経路によって投与される薬学的組成物として製剤化することができる。バイオアベイラビリティはしばしばがん治療における因子であり、有効成分のバイオアベイラビリティを制御または最適化するための投与方法および薬学的組成物を選択する能力は有用である。例えば、経口で生物学的に利用可能なSERD組成物は特に有用であろう。本明細書に記載の式I、式II、および式IIIの化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩は、経口バイオアベイラビリティを有すると考えられている。薬学的組成物およびそれらの調製のためのプロセスの例は、“Remington:The Science and Practice of Pharmacy”,L.V.Allen Jr,Editor,22nd Ed.,Mack Publishing Co.,2012に見出され得る。薬学的に許容される担体、希釈剤、および賦形剤の非限定的な例には、以下のものが挙げられる:生理的食塩水、水、デンプン、糖、マンニトール、およびシリカ誘導体、カルボキシメチルセルロースおよび他のセルロース誘導体、アルギン酸塩、ゼラチン、ならびにポリビニルピロリドンなどの結合剤、カオリンおよびベントナイト、ならびにポリエチルグリコール。
【0011】
本明細書でさらに説明されるのは、がんを治療する方法である。本明細書に記載の方法は、そのような治療を必要とする患者に、有効量の本明細書に記載の式I、式II、および式IIIの化合物、またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む。例えば、有効量の本明細書に記載の式I、式II、および式IIIの化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩を投与する方法は、経口投与であり得る。がんは、エストロゲン応答性のがんであり得る。さらに、がんは、乳癌、卵巣癌、子宮内膜癌、前立腺癌、子宮癌、胃癌、または肺癌であり得る。例えば、がんは、ER陽性乳癌、ER陽性胃癌、またはER陽性肺癌であり得る。
【0012】
また、治療に使用するための本明細書に記載の式I、式II、および式IIIの化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩も記載されている。乳癌、卵巣癌、子宮内膜癌、前立腺癌、子宮癌、胃癌または肺癌の治療に使用するための、本明細書に記載の式I、式II、および式IIIの化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩も本明細書で提供される。特に、乳癌は、ER陽性乳癌、ER陽性胃癌、またはER陽性肺癌であり得る。例えば、式I、式II、および式IIIの化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩は、経口投与することができる。
【0013】
さらに、本明細書に記載の式I、式II、および式IIIの化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩は、がんの治療のための医薬の製造に使用することができる。例えば、医薬は経口投与することができる。本明細書に記載の医薬を治療に使用できる癌のタイプには、乳癌、卵巣癌、子宮内膜癌、前立腺癌、子宮癌、胃癌、または肺癌が含まれる。特に、がんは、ER陽性乳癌、ER陽性胃癌、またはER陽性肺癌であり得る。
【0014】
本明細書に記載の式I、式II、および式IIIの化合物、ならびにそれらの薬学的に許容される塩は、単剤として、または乳癌、卵巣癌、子宮内膜癌、前立腺癌、子宮癌、胃癌、肺癌などのがんの治療のための1つ以上の他の治療薬剤(例えば、抗がん剤)と組み合わせて、臨床的有用性を有し得る。他の治療薬剤(抗がん剤など)と組み合わせて使用する場合、本明細書に記載の式I、式II、および式IIIの化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩は、他の治療薬剤と同時に、逐次的に、または別々に使用することができる。本明細書に記載の式I、式II、および式IIIの化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩と組み合わせることができる薬物のクラスの例には、SERM、アロマターゼ阻害剤、CDK4阻害剤、CDK6阻害剤、PI3K阻害剤、およびホルモン受容体陽性乳がんの治療のためのmTOR阻害剤が含まれる。本明細書に記載の式I、式II、および式IIIの化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩を組み合わせることができる薬物のより具体的な例には、アベマシクリブ(CDK4/6阻害剤)、エベロリムス(mTOR阻害剤)、アルペリシブ(PIK3CA阻害剤)、および8-[5-(1-ヒドロキシ-1-メチルエチル)ピリジン-3-イル]-1-[(2S)-2-メトキシプロピル]-3-メチル-1,3-ジヒドロ-2H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-2-オン(PI3K/mTOR阻害剤)が含まれる。
【0015】
本明細書で使用されるとき、「有効量」という用語は、単回または複数回用量の患者への投与の際に、診断または治療下にある患者に所望の効果を提供する、本明細書に記載の式I、式II、および式IIIの化合物、またはそれらの薬学的に許容可能な塩の量または用量を指す。好ましくは、所望の効果は、腫瘍細胞増殖の阻害、腫瘍細胞死、またはその両方である。本明細書に記載の式I、式II、および式IIIの化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩は、一般に、広い投与量範囲にわたって有効である。例えば、1日あたりの投与量は、通常、約100mgから約2000mgの1日の範囲内にある。
【0016】
本明細書中で使用する場合、「治療する」、「治療すること」、または「治療」は、存在する症状または障害の進行または重症度を抑制、減速、停止、または反転させることを指す。
【0017】
本明細書で使用されるとき、「患者」という用語は、特定の疾患、障害、または状態に苦しんでいるヒトを指す。
【0018】
本明細書に記載の式I、式II、および式IIIの化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩は、当該技術分野において既知の様々な手順によって調製することができ、それらのうちのいくつかを、以下の調製物および実施例において示す。記載される各経路の具体的な合成ステップは、本明細書に記載の式I、式II、および式IIIの化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩を調製するために、様々な方法と、または異なる手順からのステップと共に組み合わされてもよい。生成物は、抽出、蒸発、沈殿、クロマトグラフィー、濾過、磨砕、および結晶化を含む、当該技術分野で周知の従来の方法によって回収することできる。試薬および出発材料は、当業者にとって容易に入手可能である。
【0019】
本明細書に記載の式I、式II、および式IIIの化合物の合成に有用な中間体およびプロセスは、この説明に含まれることが意図されている。さらに、本明細書に記載の特定の中間体は、1つ以上の保護基を含み得る。可変保護基は、実施される特定の反応条件および特定の変換に応じて、出現ごとに同じでも異なっていてもよい。保護および脱保護条件は、当業者に周知であり、文献(例えば、”Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis”,Fourth Edition,by Peter G.M.Wuts and Theodora W.Greene,John Wiley and Sons,Inc.2007を参照のこと)に記載されている。
【0020】
個々の異性体、エナンチオマー、およびジアステレオマーは、本明細書に記載の式I、式II、および式IIIの化合物の合成における任意の都合のよい時点において、選択的結晶化技術またはキラルクロマトグラフィー等の方法を用いて当業者によって分離または分解され得る(例えば、J.Jacques,et al.,“Enantiomers,Racemates,and Resolutions”,John Wiley and Sons,Inc.,1981,and E.L.Eliel and S.H.Wilen,“Stereochemistry of Organic Compounds”,Wiley-Interscience,1994を参照されたい)。個々の異性体、エナンチオマー、およびジアステレオマーは、前述のように分離または分離できるが、キラル中心のカーン・インゴルド・プレローグ順位則(R)または(S)の指定はまだ決定されていない可能性がある。カーン・インゴルド・プレローグ順位則(R)または(S)の指定が利用できない場合、識別子「異性体1」および「異性体2」が使用され、カーン・インゴルド・プレローグ順位則立体化学指定を伴わずにIUPAC名と組み合わされる。本明細書で「異性体1」または「異性体2」として識別される式I、式II、および式IIIの化合物は、以下の特定の実験の説明で定義されるように単離される。異性体が「1」であるか「2」であるかは、記載された条件下で、式I、式II、および式IIIの化合物がキラルクロマトグラフィーカラムから溶出する順序、すなわち「異性体1」が上記の条件下でカラムから溶出される最初のものである。キラルクロマトグラフィーが合成の初期に開始される場合、同じ指定が、式I、式II、および式IIIの後続の中間体および化合物に適用される。
【0021】
本明細書で使用される略語は、Aldrichimica Acta,Vol.17,No.1,1984に従って定義される。その他の略語は次のように定義される。「ACN」はアセトニトリルを指す。「BSA」はウシ血清アルブミンを指す。「cataCXium(登録商標)A Pd G3」は、[(ジ(1-アダマンチル)-ブチルホスフィン)-2-(2’-アミノ-1,1’-ビフェニル)]パラジウム(II)メタンスルホン酸を指す。「DCM」は、ジクロロメタンまたは塩化メチレンを指す。「DMA」はジメチルアセトアミドを指す。「DMEA」はジメチルエチルアミンを指す。「DMEM」とは、ダルベッコ改変イーグル培地を指す。「DMF」はN,N-ジメチルホルムアミドを指す。「DMSO」はジメチルスルホキシドを指す。「DNA」はデオキシリボ核酸を指す。「cDNA」は相補的DNAを指す。「DNase」はデオキシリボヌクレアーゼを指す。「DTT」はジチオスレイトールを指す。「EC50」は、事前定義された陽性対照化合物(絶対EC50)と比較して、標的活性の50%の応答を生じる薬剤の濃度を指す。「EDTA」は、エチレンジアミン四酢酸を指す。「ee」は鏡像体過剰率を指す。「ERα」はエストロゲン受容体アルファを指す。「ERβ」はエストロゲン受容体ベータを指す。「EtOAc」は酢酸エチルを指す。「EtOH」はエタノールまたはエチルアルコールを指す。「FBS」はウシ胎児血清を指す。「HBSS」はハンクス平衡塩類溶液を指す。「HEC」はヒドロキシエチルセルロースを指す。「HEPES」は、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸を指す。「HPLC」とは、高速液体クロマトグラフィーを指す。「IC50」は、その薬剤で可能な最大阻害応答の50%を生成する薬剤の濃度(相対IC50)、またはプラセボ対照と比較して標的酵素活性の50%阻害を生成する薬剤の濃度(絶対IC50)を指す。「IPA」はイソプロピルアミンを指す。「iPrOH」は、イソプロパノールまたはイソプロピルアルコールを指す。「IV」は静脈内投与を指す。「k」は阻害定数を指す。「MEK」はメチルエチルケトンを指す。「MeOH」は、メチルアルコールまたはメタノールを指す。「MTBE」はメチルt-ブチルエーテルを指す。「PBS」は、リン酸緩衝生理食塩水を指す。「PO」は経口投与を指す。「PRα」はプロゲステロン受容体アルファを指す。「QD」とは、1日1回の投与を指す。「RNA」はリボ核酸を指す。「RNase」はリボヌクレアーゼを指す。「RT-PCR」は逆転写ポリメラーゼ連鎖反応を指す。「RT-qPCR」は、逆転写定量的ポリメラーゼ連鎖反応を指す。「SFC」は超臨界流体クロマトグラフィーを指す。「TED50」は、腫瘍中の標的の50%阻害を達成するのに有効な用量を指す。「THF」はテトラヒドロフランを指す。「t(R)」は保持時間を指す。「XantPhos Pd G2」は、クロロ[(4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9-ジメチルキサンテン)-2-(2’-アミノ-1,1’-ビフェニル)]パラジウム(II)を指す。「XPhos Pd G2」は、クロロ(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピル-1,1’-ビフェニル)[2-(2’-アミノ-1,1’-ビフェニル)]パラジウム(II)を指す。
【0022】
以下の調製物および実施例は、本発明をさらに例示する。
【0023】
調製物および実施例
【化13】
【0024】
ステップAでは、グリニャール反応が達成される。グリニャール反応は、炭素-炭素結合の形成のための反応として当該技術分野で周知である。この反応は、グリニャール試薬であるアリールマグネシウムハライドが化合物2の酸塩化物などのカルボニル基に付加して、工程Aの化合物をもたらす有機金属反応を伴う。例えば、4-クロロ置換キノロン、化合物1は、イソプロピルマグネシウムクロリドなどのグリニャール試薬で処理してグリニャール中間体を形成し、続いて、THFなどの溶媒中で酸塩化物、4-フルオロベンゾイルクロリド、化合物2を添加する。完了したら、反応を水でクエンチして化合物3を得ることができる。
【0025】
ステップBにおいて、化合物3のアリールメチルエーテルは、三臭化ホウ素での処理など、当業者が認識できる様々な条件下で脱メチル化することができる。例えば、化合物3は、DCMなどの溶媒中で約0℃の温度で三臭化ホウ素でゆっくりと処理される。混合物を室温で撹拌し、二塩基性リン酸カリウムでクエンチして、化合物4を得る。
【0026】
ステップCにおいて、アゼチジンエーテル6は、DMFまたはTHFなどの適切な極性非プロトン性溶媒中で、対応するp-フルオロフェニルケトン4およびアゼチジンアルコール塩5、または対応する遊離塩基を適切な塩基、例えば水素化ナトリウム、t-ブトキシドナトリウムまたはカリウムt-ブトキシドで処理してエーテル化合物6を生成することによって形成され得る。
【0027】
次いで、化合物6を、鈴木クロスカップリング反応において適切な置換アリールボロン酸、化合物7でアルキル化して、ステップDで化合物8を得る。当業者は、そのようなクロス-カップリング反応を促進するのに有用であり得る様々な条件があることを認識するであろう。適切なパラジウム試薬には、XantPhos Pd G2、cataCXium(登録商標)APd G3、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリド、トリシクロヘキシルホスフィンを含むトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、(1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン)パラジウム(II)塩化物、パラジウムテトラキストリフェニルホスフィン、またはパラジウム(II)アセテートが含まれ得る。適切な塩基には、フッ化カリウム、炭酸セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リチウムt-ブトキシド、またはリン酸カリウム三塩基性一水和物が含まれ得る。例えば、化合物6は、炭酸カリウムなどの塩基およびXPhos Pd G2などの触媒を含む2-メチル-2-ブタノールなどの溶媒中で、適切なボロン酸、化合物7、例えば、2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸と反応させ、マイクロ波条件下で約80℃に加熱して、化合物8を得ることができる。
【0028】
当業者は、ステップCのアゼチジンエーテル形成の前に、ステップD、スズキクロスカップリング反応が完了し得ることを認識するであろう。
【0029】
ステップEにおいて、当業者は、化合物8がケトンの最初の還元によって環化され得ることを認識するであろう。これは、1,4-ジオキサンおよびTHFなどの溶媒中の水素化トリエチルホウ素リチウムなどの還元剤を使用して、約0℃から室温の温度で達成して、対応する第二級アルコールを得ることができる。この中間アルコールは、粗製で進められ、THF、DMSO、またはDMFなどの溶媒中で炭酸セシウム、水素化ナトリウム、ナトリウムt-ブトキシドまたはカリウムt-ブトキシドなどの適切な塩基で脱プロトン化することができる。得られたアルコキシドは、室温で、加熱して還流するか、または約60℃の温度で、フッ化アリールに環化することができる。次に、フッ化物の置換時に形成される置換環状エーテルを得て、式Iの化合物を得ることができる。
【0030】
あるいは、ケトン8をアルコールに還元し、ステップFでキラル精製してキラルアルコール9を得、次いで、ステップEについて上述したようにステップGで環化して、式Iの化合物を得ることができる。
【0031】
別の代替反応では、(R)-(+)-α.α-ジフェニル-2-ピロリジンメタノールなどのキラル試薬をホウ酸トリメチルおよびボラン-ジメチルスルフィドとともに使用してケトンを還元し、目的のキラルアルコール、化合物9を直接得ることができる。次いで、これをステップEについて上述したようにステップGで環化して、式Iの化合物を得ることができる。
【0032】
任意のステップにおいて、本明細書に記載の式I、式II、および式IIIの化合物の化合物の薬学的に許容される塩は、標準条件下で、適切な溶媒中で、本明細書に記載の式I、式II、および式IIIの化合物の適切な遊離塩基との適切な薬学的に許容される酸との反応によって形成され得る。さらに、そのような塩の形成は、窒素保護基の脱保護時に同時に起こり得る。薬学的に許容される塩の形成の可能性は周知である。例えば、Gould,P.L.,“Salt selection for basic drugs,”International Journal of Pharmaceutics,33:201-217(1986)、Bastin,R.J.,et al.“Salt Selection and Optimization Procedures for Pharmaceutical New Chemical Entities,”Organic Process Research and Development,4:427-435(2000)、およびBerge,S.M.,et al.,“Pharmaceutical Salts,”Journal of Pharmaceutical Sciences,66:1-19,(1977)を参照されたい。本明細書に記載の式I、式II、および式IIIの化合物は、薬学的に許容される塩に容易に変換され、薬学的に許容される塩として分離され得ることを当業者は理解するであろう。有用な塩の例には、ベンゼンスルホン酸塩および4-メチルベンゼンスルホン酸塩が含まれるが、これらに限定されない。4-メチルベンゼンスルホン酸塩はトシレート塩としても知られる。
【0033】
調製物1
2-[3-(フルオロメチル)アゼチジン-1-イル]エタン-1-オール
【化14】
トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(405g、1.91mol)を、N下で15分間かけて少しずつ、DCM(2.4L)中の3-(フルオロメチル)アゼチジン塩酸塩(160g、1.28mol)の撹拌0℃溶液に加え、0℃で10分間攪拌する。1,4-ジオキサン-2,5-ジオール(99g、0.83mol)を0℃で1時間かけて6回に分けて加え、0~5℃で15分間撹拌する。反応物を室温に温め、N下で2時間撹拌する。反応物を20分間かけて10~15℃に冷却し、次いで25~30℃に温め、この温度で2時間維持する。10~15℃で25~30分間かけて水(800mL)を加え、5~10分間室温まで温めてから、層を分離する。水層をDCM(800mL)で洗浄し、層を分離してから、合わせた水層を10~15℃に冷却し、50%水酸化ナトリウム溶液(約540mL)を使用してpHを13~14に調整する。水層を室温まで温め、DCM(4×800mL)で抽出し、硫酸ナトリウム(80g)で乾燥し、濾過し、濃縮乾固して、表題化合物(139g、82%)を濃い黄色の油状物として得る。ES/MS(m/z):134.1(M+H)。
【0034】
調製物2
2-[3-(フルオロメチル)アゼチジン-1-イル]エタン-1-オール塩酸塩
【化15】
2-[3-(フルオロメチル)アゼチジン-1-イル]エタン-1-オール(529g、4mol)をMTBE(2.6L)に溶解し、0℃に冷却する。HCl/EtOH溶液(492mL、30wt%)を30分かけて滴下し、0℃で30分間撹拌する。固体を濾過し、濾過ケークをMTBE(2×200mL)で洗浄する。N下で8時間乾燥して、表題化合物(580g、86%)を白色の固体として得る。ES/MS(m/z):134.0(M+H)。
【0035】
調製物3
(3-クロロ-7-メトキシキノリン-4-イル)-(4-フルオロフェニル)メタノン
【化16】
4-ブロモ-3-クロロ-7-メトキシキノリン(70g、254mmol)とTHF(1L)の混合物をN下で-40℃に冷却し、材料を沈殿させる。イソプロピルマグネシウムクロリド(THF中2M、254mL、509mmol)を20分かけて加え、混合物を1時間撹拌する。THF(140mL)中の4-フルオロベンゾイルクロリド(66mL、559mmol)の溶液を滴下して加え、次いで室温まで温める。飽和NHCl溶液(300mL)および水(200mL)で反応をクエンチし、層を分離する。飽和NHCl溶液(300mL)で有機層を洗浄し、MgSO上で乾燥させ、濾過し、濃縮して油状残渣をもたらす。MTBE/ヘキサン(1:1)の混合物で溶出するシリカゲルで粗褐色油を濾過して、粗生成物を黄色の固体(84g)として得る。固体を10%酢酸メチル/ヘプタン(800mL)で処理し、室温で一晩撹拌する。固体を集めるために濾過し、保存する。濾液を濃縮し、10~40%のEtOAc/ヘキサンで溶出するシリカゲルで精製し、次いで生成物を10%の酢酸メチル/ヘプタン(200mL)で処理し、室温で3時間撹拌する。得られた固体を濾過し、前の濾過からの固体と合わせ、真空下で一晩乾燥させて、表題化合物(31g、38%)を黄色の固体として得る。ES/MS(m/z):316.0(M+H)。
【0036】
調製物4
(3-クロロ-7-ヒドロキシキノリン-4-イル)-(4-フルオロフェニル)メタノン
【化17】
三臭化ホウ素(DCM中1M、295mL、295mmol)をDCM(217ml)中の(3-クロロ-7-メトキシキノリン-4-イル)-(4-フルオロフェニル)メタノン(31g、98mmol)の混合物に加え、混合物を室温で3日間撹拌する。混合物を二塩基性リン酸カリウム(水中2M、700mL)と水(200mL)の0℃溶液にゆっくりと注ぐ。混合物を室温に温め、1時間撹拌する。溶液を真空で濃縮して有機溶媒を除去し、濾過し、濾液を収集し、45℃で一晩真空下で濾液を乾燥させる。固体をDCM/ヘプタン(1:1、450mL)で処理し、一晩撹拌する。固体を収集し、真空下で一晩乾燥させて、表題化合物(32g、定量的収率)を薄茶色の固体として得る。ES/MS(m/z):302.0(M+H)。
【0037】
調製物5
(3-クロロ-7-ヒドロキシキノリン-4-イル)-(4-{2-[3-(フルオロメチル)アゼチジン-1-イル]エトキシ}フェニル)メタノン
【化18】
DMF(75ml)中の(3-クロロ-7-ヒドロキシキノリン-4-イル)-(4-フルオロフェニル)メタノン(5.00g、15.3mmol)の撹拌溶液に2-[3-(フルオロメチル)アゼチジン-1-イル]エタン-1-オール塩酸塩(3.90g、23.0mmol)を加え、続いて水素化ナトリウム(鉱油中60%、3.02g、76.8mmol)を加える。N下で攪拌し、40℃で45分間温める。水で溶液をクエンチし、濃縮する。残渣を20%iPrOH/CHClと飽和重炭酸ナトリウム水溶液に分配し、分離し、2×20%iPrOH/CHClで水層を抽出し、有機抽出物を合わせ、合わせた有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、濾液を濃縮して、粗生成物を暗赤色の油状物として得る。MeOH/DCM中の5~10%の7NのNHの勾配で溶出するシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって粗物質を精製して、表題化合物(5.31g、84%)を黄色の固体として得る。ES/MS(m/z):415.0(M+H)。
【0038】
調製物6
(4-{2-[3-(フルオロメチル)アゼチジン-1-イル]エトキシ}フェニル){3-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]-7-ヒドロキシキノリン-4-イル}メタノン
【化19】
マイクロ波バイアル中の混合物(3-クロロ-7-ヒドロキシキノリン-4-イル)-(4-{2-[3-(フルオロメチル)アゼチジン-1-イル]エトキシ}フェニル)メタノン(200mg、0.48mmol)、2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸(158mg、0.72mmol)、炭酸カリウム(202mg、1.45mmol)、2-メチル-2-ブタノール(3ml)、および水(1ml)をN(5×)で脱気する。XPhos Pd G2(12mg、0.015mmol)を加え、密封し、80℃で2時間マイクロ波をかける。MTBEと飽和NHCl溶液の間で残渣を分配する。層を分離し、水層をMTBE抽出する。有機抽出物を合わせ、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、濾液を濃縮してオレンジ色の残渣を得る。5%MeOH/DCMで溶出するシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより粗物質を精製して、表題化合物(205mg、78%)を黄色の固体として得る。ES/MS(m/z):543.2(M+H)。
【0039】
以下の化合物を、1~2時間の加熱時間、MTBEまたはEtOAcでの抽出、および硫酸マグネシウムまたは硫酸ナトリウム上での有機層の乾燥という手順のバリエーションを有するが、調製物6の方法と本質的に類似する方法で調製する。DCM中の最大10%の(MeOHまたは7Mアンモニア化MeOH)を使用するシリカゲルカラムクロマトグラフィー(調製10:DCM中の勾配3~8%7Mアンモニア化MeOH;調製9および11:DCM中の勾配4~10%7Mアンモニア化MeOH)によって、および/または上記の高pH逆相クロマトグラフィーによって精製する。
【表2-1】
【表2-2】
【0040】
調製物14
ラセミ体4-{2-[3-(フルオロメチル)アゼチジン-1-イル]エトキシ}フェニル)(ヒドロキシ)メチル]-3-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]キノリン-7-オール
【化20】
下で(4-{2-[3-(フルオロメチル)アゼチジン-1-イル]エトキシ}フェニル){3-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]-7-ヒドロキシキノリン-4-イル}メタノン(305g、562.2mmol)およびTHF(1.5L)を一緒に加え、溶液を0~5℃に冷却する。水素化トリエチルホウ素リチウム(THF中1M、1.5L、1.5mol)を滴下する。混合物を0~5℃で1時間撹拌する。水(300mL)を滴下し、飽和NHCl(1L)を加える。混合物を室温に冷却する。EtOAc(2L)を加え、有機層を集める。有機層をブライン(500mL)で洗浄し、MgSO上で乾燥させ、濾過し、濃縮乾固する。残渣をMeOH中のアセトンと2Mアンモニアの95:5混合物に溶解し、シリカゲルで濾過して、表題化合物(264g、86.2%)をオレンジ色の固体として得る。ES/MS(m/z):545.2(M+H)。
【0041】
調製物15
4-{2-[3-(フルオロメチル)アゼチジン-1-イル]エトキシ}フェニル)(ヒドロキシ)メチル]-3-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]キノリン-7-オール、異性体1
【化21】
カラムChiralpak AD-H、150×50mm、流速300g/分、UV350nm、移動相0.5%DMEA/COを含む35%iPrOH、カラム温度40℃の条件下でキラルクロマトグラフィーを使用してラセミ体の4-{2-[3-(フルオロメチル)アゼチジン-1-イル]エトキシ}フェニル)(ヒドロキシ)メチル]-3-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]キノリン-7-オール(354g、0.62mol)を精製し、最初に溶出する異性体の表題化合物(171.4g、48%)を得る。t(R)=0.79分、カラム:4.6×150mm Chiralpak AD-H、CO中0.5%DMEAを含む35%iPrOHの移動相で溶出、0.6mL/分の流速、350nmでのUV検出でのキラル分析SFCによって98%eeを超える異性体1のエナンチオマー濃縮を確認する。
【0042】
代替的な調製物15
THF(20mL)中の(R)-(+)-α.α-ジフェニル-2-ピロリジンメタノール(132mg、0.52mmol)の溶液にホウ酸トリメチル(65mg、0.62mmol)を加える。N下で1時間、室温で混合物を撹拌した。ボラン-ジメチルスルフィド(THF中2.0M、2.6mL、5.2mmol)を加え、続いて(4-{2-[3-(フルオロメチル)アゼチジン-1-イル]エトキシ}フェニル){3-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]-7-ヒドロキシキノリン-4-イル}メタノン(1.0g、1.73mmol)を加える。反応物を45℃で一晩加熱する。追加のボラン-ジメチルスルフィド(THF中2.0M、2.6mL、5.2mmol)を加え、45℃で5時間撹拌する。ゆっくりと飽和NHCl溶液(25mL)を加え、有機相を単離する。20%のiPrOH/CHClで水性抽出物を再抽出する。有機抽出物を合わせ、NaSO上で乾燥させ、濾過し、蒸発させて、ボラン錯体中間体(1.2g)を得る。ボラン錯体中間体(0.4g、0.6mmol)の3分の1を1,4-ジオキサン(4mL)とエタノールアミン(0.3mL、5mmol)に溶解し、反応物を70℃で3時間加熱する。飽和NHCl溶液(25mL)で反応をクエンチし、有機相を単離する。水性抽出物を20%iPrOH/CHCl(4×25mL)で再抽出する。有機抽出物を合わせ、NaSO上で乾燥させ、濾過し、濃縮乾固して、表題化合物をオレンジ色の固体として得る(0.33g、0.57mmol、100%収率)。LC/MS(m/z):[M+H] 545。t(R)=0.79分、カラム:4.6×150mm Chiralpak AD-H、CO中0.5%DMEAを含む35%iPrOHの移動相で溶出、0.6mL/分の流速、350nmでのUV検出でのキラル分析SFCによって96%eeの異性体1のエナンチオマー濃縮を確認する。
【0043】
実施例1
ラセミ体の5-(4-{2-[3-(フルオロメチル)アゼチジン-1-イル]エトキシ}フェニル)-8-(トリフルオロメチル)-5H-[1]ベンゾピラノ[4,3-c]キノリン-2-オール
【化22】
1,4-ジオキサン(100mL)中の(4-{2-[3-(フルオロメチル)アゼチジン-1-イル]エトキシ}フェニル){3-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]-7-ヒドロキシキノリン-4-イル}メタノン(5.27g、9.71mmol)の溶液を5℃まで冷却する。水素化トリエチルホウ素水素化リチウム(THF中1M、30.0mL、30.0mmol)を加える。冷却浴を取り外し、室温で1.5時間撹拌する。混合物を水でクエンチする。飽和NHCl溶液とEtOAcを加える。層を分離し、水層をEtOAcで抽出する。有機抽出物を合わせ、無水MgSO上で乾燥させ、濾過し、濾液を濃縮する。粗残渣をTHF(100mL)に溶解する。水素化ナトリウム(鉱油中60%溶液、1.94g、48.5mmol)を加える。溶液を1.5時間還流する。追加の水素化ナトリウム(鉱油中60%、1.94g、48.5mmol)を加え、次いでさらに30分間還流する。溶液を室温まで冷却し、水でクエンチする。EtOAcと飽和NHCl溶液を加える。層を分離し、水層をEtOAcで抽出する。有機抽出物を合わせ、無水MgSO上で乾燥させ、濾過し、濾液を濃縮する。DCM中の5~7%MeOHの勾配で溶出するシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより残渣を精製して、表題化合物(3.70g、72%)を淡黄色の泡状物質として得る。ES/MS(m/z):525.2(M+H)。
【0044】
以下の手順のバリエーションを有するが、実施例1の方法に本質的に類似する方法で、以下の化合物を調製する。還元について、3~5当量の水素化トリエチルホウ素リチウムを使用し、反応時間は30分~1時間で、有機層を硫酸マグネシウムまたは硫酸ナトリウム上で乾燥させる。粗残渣を直接使用するか、環化の前にDCM中の0-5-7.5-10%MeOHの勾配で溶出するシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製する。THFで最大16時間、またはDMFで、実施例2の場合の室温で2時間から実施例8の場合の85℃で2時間まで還流することによって、環化を完了する。DCMまたはEtOAcで抽出し、硫酸マグネシウムまたは硫酸ナトリウム上で有機層を乾燥させる。DCM中の最大10%の(MeOHもしくは7Mアンモニア化MeOH)(実施例2:DCM中の勾配0~10%MeOH;実施例5:DCM中の勾配4~10%7Mアンモニア化MeOH;実施例8:DCM中の勾配5~7.5%7Mアンモニア化MeOH)を使用するシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって、または前記の高pH逆相HPLCによって、静止する。
【表3-1】
【表3-2】
【0045】
実施例1A
5-(4-{2-[3-(フルオロメチル)アゼチジン-1-イル]エトキシ}フェニル)-8-(トリフルオロメチル)-5H-[1]ベンゾピラノ[4,3-c]キノリン-2-オール、異性体1
および
実施例1B
5-(4-{2-[3-(フルオロメチル)アゼチジン-1-イル]エトキシ}フェニル)-8-(トリフルオロメチル)-5H-[1]ベンゾピラノ[4,3-c]キノリン-2-オール、異性体2
【化23】
5-(4-{2-[3-(フルオロメチル)アゼチジン-1-イル]エトキシ}フェニル)-8-(トリフルオロメチル)-5H-[1]ベンゾピラノ[4,3-c]キノリン-2-オールの2つのエナンチオマーを以下の条件でのキラルSFCによって分離する:カラム:LUX(登録商標)セルロース-1、5×25cm;CO中の30%iPrOH(0.5%DMEAを含む)の移動相で溶出する;カラム温度:40℃;流速:300g/分;UV検出波長:270nm。最初の溶出エナンチオマー(異性体1)として実施例1Aを得る。ES/MS(m/z):525.2(M+H)。t(R)=1.30分、カラム:CHIRALCEL(登録商標)OD-H、4.6×150mm;CO中の30%MeOH(0.2%IPA)の移動相で溶出、カラム温度:40℃;流速:5mL/分;UV検出波長:225nmでのキラル分析SFCによって99%eeを超える異性体1のエナンチオマー濃縮を確認する。実施例1Bの表題化合物を単離して、第2の溶出エナンチオマー(異性体2)を得る。ES/MS(m/z):525.2(M+H)。t(R)=2.03分、カラム:CHIRALCEL(登録商標)OD-H、4.6×150mm;CO中の30%MeOH(0.2%IPA)の移動相で溶出、カラム温度:40℃;流速:5mL/分;UV検出波長:225nmでのキラル分析SFCによって98%eeの異性体2のエナンチオマー濃縮を確認する。
【0046】
代替的な調製物の実施例1B
結晶性の5-(4-{2-[3-(フルオロメチル)アゼチジン-1-イル]エトキシ}フェニル)-8-(トリフルオロメチル)-5H-[1]ベンゾピラノ[4,3-c]キノリン-2-オール、異性体2
水(250mL)中の、5-(4-{2-[3-(フルオロメチル)アゼチジン-1-イル]エトキシ}フェニル)-8-(トリフルオロメチル)-5H-[1]ベンゾピラノ[4,3-c]キノリン-2-オール、4-メチルベンゼンスルホン酸、異性体2(23.8g、0.034mol)を1000rpmで攪拌する。NaOH(76μL)を加え、溶液を2時間攪拌する。DCM(600mL)を加える。混合物を分離し、DCM抽出物を硫酸マグネシウムで乾燥させ、シリンジフィルター(0.45μm)で材料を濾過し、濃縮乾固する。材料を週末の間中、N気流下で静置する。1:1のEtOH/水(80mL)を加え、超音波処理しながら混合物を攪拌する。ナイロン膜で濾過することにより黄褐色の固体を収集し、表題化合物(10.47g、0.02mol、59%)を得る。
【0047】
X線粉末回折(XRD)
結晶性固体のXRPDパターンは、CuKα源およびVantec検出器を備えた、35kVおよび50mAで動作しているBruker D4 Endeavor X線粉末回折計で得られる。試料は、0.008 2θ°のステップサイズおよび0.5秒/ステップの走査速度で、1.0mmの発散スリット、6.6mmの固定散乱防止スリット、および11.3mm検出スリットを用いて、4~40 2θ°で走査される。乾燥粉末を石英試料ホルダーに充填し、ガラススライドを使用して滑らかな表面を得る。結晶形態の回折パターンを周囲温度および相対湿度で収集する。8.853および26.774 2θ°でピークを有する内部NIST675標準に基づいて、パターン全体をシフトした後、MDI-Jadeの結晶ピーク位置を決定する。結晶学の分野において、任意の所与の結晶形態に関して、結晶形態および晶癖などの要因から生じる好ましい配向に起因して、回折ピークの相対強度が変化し得ることが周知されている。好ましい配向の効果が存在する場合、ピーク強度は変化するが、多形体の特徴的なピーク位置は変化しない。例えば、The United States Pharmacopeia #23,National Formulary #18,pages 1843-1844,1995を参照されたい。さらに、所与の任意の結晶形態について、角ピーク位置がわずかに変化し得ることも、結晶学の分野において周知である。例えば、ピーク位置は、試料が分析される温度の変動、試料の変位、または内部標準の有無に起因して変動し得る。本発明の場合、0.2 2θ°のピーク位置の変動は、示された結晶形態の明確な同定を妨げることなくこれらの潜在的な変動を考慮すると推定される。結晶形態の確認は、顕著なピークの任意の固有の組み合わせに基づいて行うことができる。
【0048】
調製された結晶性の5-(4-{2-[3-(フルオロメチル)アゼチジン-1-イル]エトキシ}フェニル)-8-(トリフルオロメチル)-5H-[1]ベンゾピラノ[4,3-c]キノリン-2-オール、異性体2の試料を、以下の表3に記載されるように、回折ピーク(2シータ値)、特に6.8、16.0、および22.1からなる群から選択されるピークのうちの1つ以上と組み合わせて19.8でピークを有し、回折角の許容誤差が0.2度であるような、CuKa方射線を使用したXRDパターンによって特性評価する。
【表4】
【0049】
代替的な調製物の実施例1B
4-{2-[3-(フルオロメチル)アゼチジン-1-イル]エトキシ}フェニル)(ヒドロキシ)メチル]-3-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]キノリン-7-オール、異性体1(63.05g、104.7mmol)を室温でN下で、DMSO(1.3L)中に溶解する。炭酸セシウム(108g、331mmol)を5分かけて少しずつ加える。混合物を60℃に15時間加熱する。混合物を室温まで冷却し、水(2.1L)およびEtOAc(1.3L)で希釈する。混合物を5分間攪拌し、分離する。水性材料をEtOAc(1.3L)で再抽出し、5分間撹拌する。分離して有機抽出物を合わせ、ブライン、水、およびEtOAcで洗浄する。MgSOで有機抽出物を乾燥させ、濃縮し、室温で高真空下で一晩乾燥して表題化合物(52.69グラム、95.9パーセント)を褐色の固体として得る。t(R)=2.03分、カラム:CHIRALCEL(登録商標)OD-H、4.6×150mm;CO中の30%MeOH(0.2%IPA)の移動相で溶出、カラム温度:40℃;流速:5mL/分;UV検出波長:225nmでのキラル分析SFCによって98.1%eeの実施例1Bのエナンチオマー濃縮を確認する。
【0050】
実施例2A
5-(4-{2-[3-(フルオロメチル)アゼチジン-1-イル]エトキシ}フェニル)-7-(トリフルオロメチル)-5H-[1]ベンゾピラノ[4,3-c]キノリン-2-オール、異性体1
および
実施例2B
5-(4-{2-[3-(フルオロメチル)アゼチジン-1-イル]エトキシ}フェニル)-7-(トリフルオロメチル)-5H-[1]ベンゾピラノ[4,3-c]キノリン-2-オール、異性体2
【化24】
5-(4-{2-[3-(フルオロメチル)アゼチジン-1-イル]エトキシ}フェニル)-7-(トリフルオロメチル)-5H-[1]ベンゾピラノ[4,3-c]キノリン-2-オールの2つのエナンチオマーを以下の条件でのキラルSFCによって分離する:カラム:CHIRALPAK(登録商標)IC、21×250cm;CO中の30%iPrOH(0.2%IPAを含む)の移動相で溶出する;カラム温度:40℃;流速:70g/分;UV検出波長:225nm。最初の溶出エナンチオマー(異性体1)として実施例2Aを得る。ES/MS(m/z):525.1(M+H)。t(R)=1.56分、カラム:CHIRALPAK(登録商標)IC、4.6×150mm;CO中の30%iPrOH(0.2%IPA)の移動相で溶出、カラム温度:40℃;流速:5mL/分;UV検出波長:225nmでのキラル分析SFCによって99%eeを超える異性体1のエナンチオマー濃縮を確認する。実施例2Bの表題化合物を単離して、第2の溶出エナンチオマー(異性体2)を得る。ES/MS(m/z):525.2(M+H)。t(R)=2.33分、カラム:CHIRALPAK(登録商標)IC、4.6×150mm;CO中の30%iPrOH(0.2%IPA)の移動相で溶出、カラム温度:40℃;流速:5mL/分;UV検出波長:225nmでのキラル分析SFCによって98%eeの異性体2のエナンチオマー濃縮を確認する。
【0051】
実施例3A
8-クロロ-5-(4-{2-[3-(フルオロメチル)アゼチジン-1-イル]エトキシ}フェニル)-5H-[1]ベンゾピラノ[4,3-c]キノリン-2-オール、異性体1
および
実施例3B
8-クロロ-5-(4-{2-[3-(フルオロメチル)アゼチジン-1-イル]エトキシ}フェニル)-5H-[1]ベンゾピラノ[4,3-c]キノリン-2-オール、異性体2
【化25】
8-クロロ-5-(4-{2-[3-(フルオロメチル)アゼチジン-1-イル]エトキシ}フェニル)-5H-[1]ベンゾピラノ[4,3-c]キノリン-2-オールの2つのエナンチオマーを以下の条件でのキラルSFCによって分離する:CHIRALCEL(登録商標)OD-H、21×250cm;CO中の35%MeOH(0.2%IPAを含む)の移動相で溶出する;カラム温度:40℃;流速:80g/分;UV検出波長:225nm。最初の溶出エナンチオマー(異性体1)として実施例3Aを得る。ES/MS(m/z):491.0(M+H)。t(R)=1.55分、カラム:CHIRALCEL(登録商標)OD-H、4.6×150mm;CO中の35%MeOH(0.2%IPA)の移動相で溶出、カラム温度:40℃;流速:5mL/分;UV検出波長:225nmでのキラル分析SFCによって99%eeを超える異性体1のエナンチオマー濃縮を確認する。実施例3Bの表題化合物を単離して、第2の溶出エナンチオマー(異性体2)を得る。ES/MS(m/z):491.0(M+H)。t(R)=2.26分、カラム:CHIRALCEL(登録商標)OD-H、4.6×150mm;CO中の35%MeOH(0.2%IPA)の移動相で溶出、カラム温度:40℃;流速:5mL/分;UV検出波長:225nmでのキラル分析SFCによって99%eeを超える異性体2のエナンチオマー濃縮を確認する。
【0052】
実施例4A
7-クロロ-5-(4-{2-[3-(フルオロメチル)アゼチジン-1-イル]エトキシ}フェニル)-5H-[1]ベンゾピラノ[4,3-c]キノリン-2-オール、異性体1
および
実施例4B
7-クロロ-5-(4-{2-[3-(フルオロメチル)アゼチジン-1-イル]エトキシ}フェニル)-5H-[1]ベンゾピラノ[4,3-c]キノリン-2-オール、異性体2
【化26】
7-クロロ-5-(4-{2-[3-(フルオロメチル)アゼチジン-1-イル]エトキシ}フェニル)-5H-[1]ベンゾピラノ[4,3-c]キノリン-2-オールの2つのエナンチオマーを以下の条件でのキラルSFCによって分離する:CHIRALCEL(登録商標)OD-H、21×250cm;CO中の35%MeOH(0.2%IPAを含む)の移動相で溶出する;カラム温度:40℃;流速:80g/分;UV検出波長:225nm。最初の溶出エナンチオマー(異性体1)として実施例4Aを得る。ES/MS(m/z):491.0(M+H)。t(R)=1.71分、カラム:CHIRALCEL(登録商標)OD-H、4.6×150mm;CO中の35%MeOH(0.2%IPA)の移動相で溶出、カラム温度:40℃;流速:5mL/分;UV検出波長:225nmでのキラル分析SFCによって99%eeを超える異性体1のエナンチオマー濃縮を確認する。実施例4Bの表題化合物を単離して、第2の溶出エナンチオマー(異性体2)を得る。ES/MS(m/z):491.0(M+H)。t(R)=2.38分、カラム:CHIRALCEL(登録商標)OD-H、4.6×150mm;CO中の35%MeOH(0.2%IPA)の移動相で溶出、カラム温度:40℃;流速:5mL/分;UV検出波長:225nmでのキラル分析SFCによって99%eeを超える異性体2のエナンチオマー濃縮を確認する。
【0053】
実施例5A
8-フルオロ-5-(4-{2-[3-(フルオロメチル)アゼチジン-1-イル]エトキシ}フェニル)-5H-[1]ベンゾピラノ[4,3-c]キノリン-2-オール、異性体1
および
実施例5B
8-フルオロ-5-(4-{2-[3-(フルオロメチル)アゼチジン-1-イル]エトキシ}フェニル)-5H-[1]ベンゾピラノ[4,3-c]キノリン-2-オール、異性体2
【化27】
8-フルオロ-5-(4-{2-[3-(フルオロメチル)アゼチジン-1-イル]エトキシ}フェニル)-5H-[1]ベンゾピラノ[4,3-c]キノリン-2-オールの2つのエナンチオマーを以下の条件でのキラルSFCによって分離する:CHIRALCEL(登録商標)OD-H、21×250cm;CO中の30%MeOH(0.2%IPAを含む)の移動相で溶出する;カラム温度:40℃;流速:80g/分;UV検出波長:225nm。最初の溶出エナンチオマー(異性体1)として実施例5Aを得る。ES/MS(m/z):475.0(M+H)。t(R)=1.56分、カラム:CHIRALCEL(登録商標)OD-H、4.6×150mm;CO中の30%MeOH(0.2%IPA)の移動相で溶出、カラム温度:40℃;流速:5mL/分;UV検出波長:225nmでのキラル分析SFCによって99%eeを超える異性体1のエナンチオマー濃縮を確認する。実施例5Bの表題化合物を単離して、第2の溶出エナンチオマー(異性体2)を得る。ES/MS(m/z):475.0(M+H)。t(R)=2.29分、カラム:CHIRALCEL(登録商標)OD-H、4.6×150mm;CO中の30%MeOH(0.2%IPA)の移動相で溶出、カラム温度:40℃;流速:5mL/分;UV検出波長:225nmでのキラル分析SFCによって99%eeを超える異性体2のエナンチオマー濃縮を確認する。
【0054】
実施例6A
7-フルオロ-5-(4-{2-[3-(フルオロメチル)アゼチジン-1-イル]エトキシ}フェニル)-5H-[1]ベンゾピラノ[4,3-c]キノリン-2-オール、異性体1
および
実施例6B
7-フルオロ-5-(4-{2-[3-(フルオロメチル)アゼチジン-1-イル]エトキシ}フェニル)-5H-[1]ベンゾピラノ[4,3-c]キノリン-2-オール、異性体2
【化28】
7-フルオロ-5-(4-{2-[3-(フルオロメチル)アゼチジン-1-イル]エトキシ}フェニル)-5H-[1]ベンゾピラノ[4,3-c]キノリン-2-オールの2つのエナンチオマーを以下の条件でのキラルSFCによって分離する:CHIRALCEL(登録商標)OD-H、21×250cm;CO中の35%MeOH(0.2%IPAを含む)の移動相で溶出する;カラム温度:40℃;流速:80g/分;UV検出波長:225nm。最初の溶出エナンチオマー(異性体1)として実施例6Aを得る。ES/MS(m/z):475.0(M+H)。t(R)=1.32分、カラム:CHIRALCEL(登録商標)OD-H、4.6×150mm;CO中の35%MeOH(0.2%IPA)の移動相で溶出、カラム温度:40℃;流速:5mL/分;UV検出波長:225nmでのキラル分析SFCによって99%eeを超える異性体1のエナンチオマー濃縮を確認する。実施例6Bの表題化合物を単離して、第2の溶出エナンチオマー(異性体2)を得る。ES/MS(m/z):475.0(M+H)。t(R)=1.95分、カラム:CHIRALCEL(登録商標)OD-H、4.6×150mm;CO中の35%MeOH(0.2%IPA)の移動相で溶出、カラム温度:40℃;流速:5mL/分;UV検出波長:225nmでのキラル分析SFCによって99%eeを超える異性体2のエナンチオマー濃縮を確認する。
【0055】
実施例8A
5-(4-{2-[3-(フルオロメチル)アゼチジン-1-イル]エトキシ}フェニル)-7-メチル-5H-[1]ベンゾピラノ[4,3-c]キノリン-2-オール、異性体1
および
実施例8B
5-(4-{2-[3-(フルオロメチル)アゼチジン-1-イル]エトキシ}フェニル)-7-メチル-5H-[1]ベンゾピラノ[4,3-c]キノリン-2-オール、異性体2
【化29】
5-(4-{2-[3-(フルオロメチル)アゼチジン-1-イル]エトキシ}フェニル)-7-メチル-5H-[1]ベンゾピラノ[4,3-c]キノリン-2-オールの2つのエナンチオマーを以下の条件でのキラルSFCによって分離する:カラム:CHIRALCEL(登録商標)OD-H、21×250cm;CO中の30%iPrOH(0.2%IPAを含む)の移動相で溶出する;カラム温度:40℃;流速:80g/分;UV検出波長:265nm。最初の溶出エナンチオマー(異性体1)として実施例8Aを得る。ES/MS(m/z):471.2(M+H)。t(R)=1.47分、カラム:CHIRALCEL(登録商標)OD-H、4.6×150mm;CO中の30%iPrOH(0.2%IPA)の移動相で溶出、カラム温度:40℃;流速:5mL/分;UV検出波長:225nmでのキラル分析SFCによって99%eeを超える異性体1のエナンチオマー濃縮を確認する。実施例8Bの表題化合物を単離して、第2の溶出エナンチオマー(異性体2)を得る。ES/MS(m/z):471.2(M+H)。t(R)=2.05分、カラム:CHIRALCEL(登録商標)OD-H、4.6×150mm;CO中の30%iPrOH(0.2%IPA)の移動相で溶出、カラム温度:40℃;流速:5mL/分;UV検出波長:225nmでのキラル分析SFCによって99%eeを超える異性体2のエナンチオマー濃縮を確認する。
【0056】
実施例9
5-(4-{2-[3-(フルオロメチル)アゼチジン-1-イル]エトキシ}フェニル)-8-(トリフルオロメチル)-5H-[1]ベンゾピラノ[4,3-c]キノリン-2-オール、異性体2、ベンゼンスルホン酸
【化30】
ACN(3mL)中の5-(4-{2-[3-(フルオロメチル)アゼチジン-1-イル]エトキシ}フェニル)-8-(トリフルオロメチル)-5H-[1]ベンゾピラノ[4,3-c]キノリン-2-オール、異性体2(実施例1B)(100mg、0.19mmol)のスラリーを50℃で加熱する。ACN(1mL)中のベンゼンスルホン酸一水和物(40mg、0.23mmol)の溶液を加える。透明な黄色の溶液を50℃で10分間加熱する。加熱を中止し、反応混合物を室温まで冷却し、混合物を一晩撹拌する。トルエン(2mL)を加え、反応混合物を2時間撹拌する。溶液を濾過し、得られた固体を収集し、固体をACN(1mL)で洗浄する。固体を真空下で乾燥させて、表題化合物を得る(74mg、55%)。
【0057】
代替的な調製物の実施例9
MEK(4mL)中の5-(4-{2-[3-(フルオロメチル)アゼチジン-1-イル]エトキシ}フェニル)-8-(トリフルオロメチル)-5H-[1]ベンゾピラノ[4,3-c]キノリン-2-オール、異性体2(実施例1B)(124.1mg、0.24mmol)のスラリーを50℃で加熱する。MEK(1mL)中に溶解したベンゼンスルホン酸一水和物(50mg、0.28mmol)の溶液を加える。加熱を中止し、反応混合物を室温まで冷却し、混合物を週末の間中撹拌する。N気流下で濃縮する。MEK(1mL)とスラリーを加えて、黄色の結晶性の固体を得る。固体を収集し、MEKで洗浄し、室温の真空下で乾燥させて、表題化合物(78.8mg、48%)を得る。
【0058】
XRD、実施例9
実施例1Bの説明に従ってXRDを完成させる。調製された-(4-{2-[3-(フルオロメチル)アゼチジン-1-イル]エトキシ}フェニル)-8-(トリフルオロメチル)-5H-[1]ベンゾピラノ[4,3-c]キノリン-2-オール、異性体2、ベンゼンスルホン酸の試料を、以下の表4に記載されるように、回折ピーク(2シータ値)、特に12.3、22.2、および23.1からなる群から選択されるピークのうちの1つ以上と組み合わせて20.5でピークを有し、回折角の許容誤差が0.2度であるような、CuKa方射線を使用したXRDパターンによって特性評価する。
【表5】
【0059】
実施例10
結晶性の5-(4-{2-[3-(フルオロメチル)アゼチジン-1-イル]エトキシ}フェニル)-8-(トリフルオロメチル)-5H-[1]ベンゾピラノ[4,3-c]キノリン-2-オール、4-メチルベンゼンスルホン酸、異性体2
【化31】
5-(4-{2-[3-(フルオロメチル)アゼチジン-1-イル]エトキシ}フェニル)-8-(トリフルオロメチル)-5H-[1]ベンゾピラノ[4,3-c]キノリン-2-オール、異性体2(実施例1B)(204.2g、389mmol)とEtOAc(5L)を一緒に加え、60℃で撹拌した後、60℃でMeOH(200mL)を加えて、透明な褐色の溶液を得る。表題の成物(11.48g)を加えて溶液をシードとし、続いてEtOAc(800mL)中の4-メチルベンゼンスルホン酸、水和物(81.4g、428mmol)の予め混合した溶液を加え、黄色の懸濁液を得る。懸濁液を50℃で30分間撹拌する。懸濁液を1/2容量に濃縮する。溶液を室温で1時間冷却し、濾過し、固体を収集し、そして固体をEtOAcで洗浄する。固体を真空下、30℃で週末の間中乾燥させて、表題化合物(239g、343mmol)を得た。材料をさらに精製するために、表題化合物(229g、328.7mmol)と2-プロパノール(4.6L)を一緒に加え、60℃で2時間加熱する。室温まで30分間冷却する。固体を濾過し、iPrOH(100mL)で洗浄する。N気流下で固体を一晩乾燥させて、表題化合物(174.4g、76.2%)を得た。本質的に同じ方法で調製した表題化合物の様々なロットを合わせ、ヘプタン(2L)を加える。懸濁液を30分間撹拌し、固体を濾過し、ヘプタン(300mL)で洗浄する。N気流下で固体を一晩乾燥させて回収し、表題化合物(199.7g、99.5%)を得た。
【0060】
XRD、実施例10
実施例1Bの説明に従ってXRDを完成させる。調製された結晶性の5-(4-{2-[3-(フルオロメチル)アゼチジン-1-イル]エトキシ}フェニル)-8-(トリフルオロメチル)-5H-[1]ベンゾピラノ[4,3-c]キノリン-2-オール、4-メチルベンゼンスルホン酸、異性体2(実施例10)の試料を、以下の表5に記載されるように、回折ピーク(2シータ値)、特に12.8、19.5、および22.8からなる群から選択されるピークのうちの1つ以上と組み合わせて20.1でピークを有し、回折角の許容誤差が0.2度であるような、CuKa方射線を使用したXRDパターンによって特性評価する。
【表6】
【0061】
生物学的アッセイ
ER発現と特定のがんとの間の関係の証拠は、当該技術分野で周知である。
【0062】
以下のアッセイの結果は、実施例の式I、式II、および式IIIの化合物が活性SERDであり、がんの治療に有用であると考えられていることを示している。
【0063】
ERα(野生型)、ERα(Y537S変異体)、およびERβの競合結合アッセイ
以下のER競合結合アッセイの目的は、ERα(野生型)、ERα(Y537S変異体)、およびERβに対する試験化合物の親和性を決定することである。
【0064】
50mMのHEPES、pH7.5、1.5mMのEDTA、150mMのNaCl、10%グリセロール、1mg/mLオボアルブミン、および5mMのDTTを含む緩衝液中で、ウェルあたり0.025μCiのH-エストラジオール(118Ci/mmol、1mCi/mL)、7.2ng/ウェルのERα(野生型)、または7.2ng/ウェルのERα(Y537S変異体)または7.7ng/ウェルのERβ受容体を使用して競合結合アッセイを実行する。10,000nM~0.5nMの範囲の10種類の濃度で試験化合物を加え、1μMの17-βエストラジオールの存在下で非特異的結合を決定する。結合反応液(140μL)を室温で4時間インキュベートした後、冷デキストラン-チャコール緩衝液(70μL)(50mLのアッセイ緩衝液あたり0.75gのチャコールと0.25gのデキストランを含む)を各反応液に加える。プレートを4℃の軌道式振盪機で8分間混合し、3000rpm、4℃で10分間遠心分離する。混合物のアリコート(120μL)を別の96ウェルの白い平底プレート(Costar)に移し、Perkin Elmer Optiphase Supermixシンチレーション液(175μL)を各ウェルに加える。プレートを密封し、軌道式振盪機で激しく振とうする。2.5時間のインキュベーション後、WallacMicrobetaカウンターでプレートを読み取る。4パラメーターロジスティックカーブフィットを使用してIC50を計算し、10μMでの阻害%を計算する。化合物のIC50値は、Cheng-Prusoff式を用いて、Kに変換する。このアッセイの結果は、以下の表7に示すように、実施例1、1A、および1B(およびその他)が組換えERα野生型およびERα変異体(Y537S)に結合することを示し、実施例1Bも0.11±0.07のK(nM)のERβ競合でERβに結合する、n=3。
【表7】
【0065】
試験した例示的な化合物のうち、ERα野生型のKiは約0.300nMから約65nMの範囲であった。ERαY537S変異体のKiは、約2nMから300nMの範囲であった。このアッセイの結果は、ERα野生型、変異体(ESR1 Y537S)、およびERβタンパク質に対する例示された化合物の結合親和性および効力を示している。
【0066】
MCF7細胞におけるERα分解アッセイ
以下のERα分解アッセイの目的は、MCF7などのERα陽性乳癌細胞株における試験化合物によるERαの分解を測定することである。
【0067】
10%FBS、0.01mg/mLヒトインスリン1、および1%ペニシリン/ストレプトマイシン抗生物質を補充したDMEM培地でMCF7(ATCC HTB-22から購入)細胞を培養し、10%チャコール処理FBSを含むフェノールレッドフリーDMEM培地(20μL)中でウェルあたり4,000細胞の密度で384ウェル平底プレートに播種する。細胞培養インキュベーター(5%CO、95%相対湿度、37℃)で一晩細胞をインキュベートし、細胞をプレートに付着させる。翌日、細胞に試験化合物を投与する。Echo555音響ディスペンサーを使用して、6μMから0.0003μMの範囲の試験化合物段階希釈液(1:3)を調製する。連続希釈プレートから細胞プレートに5μLを加えることによって細胞に投与し、最終DMSO濃度が0.2%になり、最終試験化合物濃度が2~0.0001μMの用量範囲になる。最大点には、0.2%のDMSOを含む培地を使用し、最小点には、0.2%DMSOを含む増殖培地で2μMの最終濃度に希釈したフルベストラントを使用する。試験化合物を投与後、24時間37℃、5%COで細胞プレートをインキュベートする。14%パラホルムアルデヒド(10μL)を室温で30分間加えることによって、細胞を固定する。細胞をPBS(20μL)で1回洗浄し、0.5%(v/v)TWEEN(登録商標)20を含むPBS(20μL)で1時間インキュベートする。0.05%TWEEN(登録商標)20(2×)を含むPBSで細胞を洗浄し、0.05%TWEEN(登録商標)20および0.1%TRITON(商標)X-100を含むPBS中の3%BSA(20μL/ウェル)で室温で1時間ブロッキングする。ウェルあたり0.05%TWEEN(登録商標)20を含むPBS中の1%BSAで希釈した1:500一次抗体(20μL)(ERα(クローンSP1)モノクローナルウサギ抗体#RM-9101-S、Thermo Scientific)を加え、プレートを密封して4℃で一晩インキュベートする。翌日、0.05%TWEEN(登録商標)20(2×)を含むPBSで細胞を洗浄し、PBS1%BSA中の二次抗体(20μL/ウェル)(1:1000希釈、ヤギ抗ウサギIgM ALEXAFLUOR(商標)488)と室温で105分間インキュベートする。プレートをPBS(2×20μL)で洗浄した後、RNase(Sigma)(50μg/mLを20μL)およびウェルあたり(20μL)のPBS中の1:1000のヨウ化プロピジウム希釈液を加える。プレートを密封し、ベンチで室温で1時間インキュベートする(光から保護する)。ACUMEN EXPLORER(商標)[TTPLABTECH LTD製のレーザースキャン蛍光マイクロプレートサイトメーター]でプレートをスキャンして、ERαを測定する。画像解析は、陽性細胞を識別するための細胞蛍光シグナルに基づく。平均強度によってER陽性細胞を識別する。ヨウ化プロピジウム/DNAからの575~640nmでの総強度を使用して、個々の細胞を識別する。アッセイのアウトプットはER陽性細胞%である。GENE DATA(商標)を使用して、各アウトプットの4つのパラメーターロジスティックにカーブフィッティングすることにより、IC50を決定する。このアッセイの結果は、MCF7乳癌細胞において本明細書に記載の式I、式II、および式IIIの化合物によって誘導されるERαの強力な分解を示している。実施例1、1A、および1Bの相対IC50値を表8に示す。
【表8】
【0068】
具体的には、表7の結果は、MCF7乳癌細胞における実施例1の化合物によるERαの強力な分解を示している。試験した例示的な化合物のうち、相対的IC50は0.003から>2μMの範囲であり、実施例2Bを除く全てが試験した濃度で活性を示したことを示している。このアッセイの結果は、式(I)の化合物が、細胞において強力なERα分解活性を有するSERDであることを示している。
【0069】
MCF7細胞におけるPRα誘導アッセイ
以下のPRα誘導アッセイの目的は、試験化合物がERα受容体に対してアゴニスト活性を有するかどうかを判定することである(アゴニストは受容体を活性化すると予想される)。
【0070】
10%FBS、0.01mg/mLヒトインスリン1、および1%ペニシリン/ストレプトマイシン抗生物質を補充したDMEM培地でMCF7(ATCC HTB-22から購入)を培養し、細胞(70%コンフルエントになる前)を、10%FBS(チャコール処理)を含むDMEMフェノールレッドフリー培地中20μL体積でウェルあたり4,000細胞の密度で384ウェル平底プレートに播種する。細胞培養インキュベーター(5%CO、95%相対湿度、37℃)で一晩細胞をインキュベートし、細胞をプレートに付着させる。翌日、細胞に試験化合物を投与する。Echo555音響ディスペンサーを使用して、6μMから0.0003μMの範囲の化合物段階希釈液(1:3)を調製する。連続希釈プレートから細胞プレートに試験化合物(5μL)を加えることによって細胞に投与し、0.2%の最終DMSO濃度を生成し、試験化合物の最終濃度は2~0.0001μMの用量範囲である。最大点には、0.2%のDMSOを含む培地を使用し、最小点には、0.2%DMSOを含む増殖培地で2μMの最終濃度に希釈したフルベストラントを使用する。試験化合物を投与後、24時間37℃、5%COで細胞プレートをインキュベートする。14%パラホルムアルデヒド(10μL)を室温で30分間加えることによって、細胞を固定する。細胞をPBS(20μL)で1回洗浄し、0.5%(v/v)TWEEN(登録商標)20を含むPBS(20μL)で1時間インキュベートする。0.05%TWEEN(登録商標)20を含むPBS(20μL)で細胞を2回洗浄し、0.05%TWEEN(登録商標)20および0.1%TRITON(商標)X-100を含むPBS中の3%BSA(20μL/ウェル)で室温で1時間ブロッキングする。ウェルあたり0.05TWEEN(登録商標)20を含む1%BSA/PBSで希釈した1:500一次抗体(20μL)(PRモノクローナルマウス抗ヒト抗体、クローンPgR 636 Dako、M3569)を加え、プレートを密封し、4℃で一晩インキュベートする。
【0071】
翌日、PBS 0.05%TWEEN(登録商標)20(2×20μL)で細胞を洗浄し、PBS1%BSA中の二次抗体(20μL/ウェル)(1:1000希釈、ヤギ抗ウサギIgM ALEXAFLUOR(商標)488)と室温で105分間インキュベートする。PBS(2×20μL)で洗浄した後、RNase(50μg/mLを20μL)(Sigma)およびウェルあたりでPBSで1:1000のヨウ化プロピジウム希釈液を加える。プレートを密封し、ベンチで室温で1時間インキュベートする(光から保護する)。ACUMEN EXPLORER(商標)[TTPLABTECH LTD製のレーザースキャン蛍光マイクロプレートサイトメーター]でプレートをスキャンして、PRαを測定する。画像解析は、陽性細胞を識別するための細胞蛍光シグナルに基づく。平均強度によってPR陽性細胞を識別する。ヨウ化プロピジウム/DNAからの575~640nmでの総強度を使用して、個々の細胞を識別する。アッセイのアウトプットはPR陽性細胞%である。GENE DATA(商標)を使用して、各アウトプットの4つのパラメーターロジスティックにカーブフィッティングすることにより、IC50を決定する。このアッセイの結果は、MCF7乳癌細胞における実施例1、1A、および1Bの有意なアゴニスト活性を示さない。試験した化合物について、このアッセイにおける相対IC50は>2μMである。このアッセイの結果は、MCF7乳癌細胞で試験された例示された化合物の有意なアゴニスト活性を示さない。これらの結果はまた、試験された例示された化合物が、MCF7乳癌細胞におけるERαのアンタゴニストであることを示している(すなわち、それらはSERD活性を有する)。
【0072】
MCF7-ESR1 Y537N 682 CRISPR細胞におけるPRα阻害(ERα機能的拮抗作用)細胞アッセイ
以下のPRα阻害(ERα機能的拮抗作用)細胞アッセイの目的は、Y537N変異体ERα受容体に対する試験化合物のアンタゴニスト活性を決定することである。このアッセイのアンタゴニストは、ERα受容体の機能をブロックすると予想される。PRαはERαの下流の転写標的であるため、ERαのアンタゴニストはPRαの発現を阻害すると予想される。
【0073】
10%FBSおよび1%ペニシリン/ストレプトマイシン抗生物質を補充したDMEM培地でMCF7-ESR1 Y537N-682(MCF7細胞のESR1遺伝子のCRISPR/Cas9遺伝子編集により生成、クローン#682)を培養し、細胞(70%コンフルエントになる前)を、DMEMフェノールレッドフリー培地、10%FBS(20μL体積)(チャコール処理)中でウェルあたり4,000細胞の密度で384ウェル平底プレートに播種する。細胞培養インキュベーター(5%CO、95%相対湿度、37℃)で一晩細胞をインキュベートし、細胞をプレートに付着させる。翌日、細胞に試験化合物を投与する。Echo555音響ディスペンサーを使用して、6μMから0.0003μMの範囲の化合物段階希釈液(1:3)を調製する。連続希釈プレートから細胞プレートに5μLを加えることによって細胞に投与し、最終DMSO濃度が0.2%になり、最終試験化合物濃度が2~0.0001μMの用量範囲になる。最大点には、0.2%のDMSOを含む培地を使用し、最小点には、0.2%DMSOを含む増殖培地で2μMの最終濃度に希釈したフルベストラントを使用する。試験化合物を投与後、72時間37℃、5%COで細胞プレートをインキュベートする。14%パラホルムアルデヒド(10μL)を室温で30分間加えることによって、細胞を固定する。細胞をPBS(1×20μL)で1回洗浄し、0.5%(v/v)TWEEN(登録商標)20を含むPBS(20μL)で1時間インキュベートする。0.05%TWEEN(登録商標)20を含むPBS(2×20μL)で細胞を洗浄し、3%BSA/PBS 0.05%TWEEN(登録商標)20、0.1%TRITON(商標)X-100(20μL/ウェル)で室温で1時間ブロッキングする。ウェルあたり1%BSA/PBS 0.05TWEEN(登録商標)20で希釈した1:500一次抗体(20μL)(PRモノクローナルマウス抗ヒト抗体、クローンPgR 636 Dako、M3569)を加え、プレートを密封し、4℃で一晩インキュベートする。
【0074】
翌日、PBS 0.05%(登録商標)(2×20μL)で細胞を洗浄し、PBS1%BSA中の二次抗体(20μL/ウェル)(1:1000希釈、ヤギ抗ウサギIgM ALEXAFLUOR(商標)488)と室温で105分間インキュベートする。PBS(2×20μL)で洗浄した後、RNase(50μg/mLを20μL)(Sigma)およびウェルあたりPBS中1:1000のヨウ化プロピジウム希釈液を加える。プレートを密封し、ベンチで室温で1時間インキュベートする(光から保護する)。ACUMEN EXPLORER(商標)[TTPLABTECH LTD製のレーザースキャン蛍光マイクロプレートサイトメーター]でプレートをスキャンして、PRαを測定する。画像解析は、陽性細胞を識別するための細胞蛍光シグナルに基づく。平均強度によってPR陽性細胞を識別する。ヨウ化プロピジウム/DNAからの575~640nmでの総強度を使用して、個々の細胞を識別する。アッセイのアウトプットはPR陽性細胞%である。GENE DATA(商標)を使用して、各アウトプットの4つのパラメーターロジスティックにカーブフィッティングすることにより、IC50を決定する。
【0075】
このアッセイの結果は、MCF7(ESR1 Y537N、ヘテロ接合変異体)乳癌細胞における実施例1、1A、および1BによるPRαの強力な阻害および機能的拮抗作用を示している。このアッセイにおける実施例1、1A、および1B(およびその他)の相対IC50を以下の表9に示す。試験した例示的な化合物の相対IC50は、約0.0118から>1.6μMの範囲であり、例示した化合物が、例2B 1.6μMを除いて、ERα変異体(Y537N)の強力なアンタゴニストおよびERα媒介転写の強力な阻害剤であることを示す。PRα(PGR)もERαの転写標的であり、このアッセイの結果は、PRαのERα媒介転写の強力な阻害を示す。
【表9】
【0076】
MCF7細胞におけるPRα阻害(ERα機能的拮抗作用)細胞アッセイ
以下のPRα阻害(ERα機能的拮抗作用)細胞アッセイの目的は、ERα受容体に対する試験化合物のアンタゴニスト活性を決定することである。このアッセイのアンタゴニストは、ERα受容体の機能をブロックすると予想される。PRαはERαの下流の転写標的であるため、ERαのアンタゴニストはPRαの発現を阻害すると予想される。
【0077】
MCF7細胞株を使用して、上述のERα分解細胞ベースAcumenアッセイで詳述されているアッセイ条件を実行するが、ただし、試験化合物を分注する前に、細胞プレートから培地を除去し、陰性対照ウェル(プレートの列24)を除く全てのウェルを0.47nMエストラジオールを含むアッセイ培地で30分間前処理する。このアッセイでは、PRαを検出するための免疫染色を行い、プレートをACUMEN EXPLORER(商標)[TTP LABTECH LTD製のレーザースキャン蛍光マイクロプレートサイトメーター]でスキャンしてPRαを測定する。画像解析は、陽性細胞を識別するための細胞蛍光シグナルに基づく。平均強度によってPRα陽性細胞を識別する。ヨウ化プロピジウム/DNAからの575~640での総強度を使用して、個々の細胞を識別する。アッセイのアウトプットはPRα陽性細胞%である。GENE DATA(商標)を使用して、各アウトプットの4つのパラメーターロジスティックにカーブフィッティングすることにより、IC50を決定する。このアッセイの結果は、MCF7乳癌細胞における実施例1、1A、および1BによるPRαの強力な阻害および機能的拮抗作用を示している。このアッセイにおける実施例1、1A、および1Bの相対IC50を以下の表10に示す。例示的な化合物の相対IC50は、約0.029から>2μMの範囲であり、1Aおよび2Bを除く試験された全ての例示的な化合物が、ERα野生型タンパク質の強力なアンタゴニストであり、ERα媒介転写の強力な阻害剤であることを示す。PRα(PGR)もERαの転写標的であり、このアッセイの結果は、試験した濃度でのPRαのERα媒介転写の強力な阻害を示す。
【表10】
【0078】
MCF7およびMCF7-ESR1 Y537N-682の細胞増殖アッセイ
以下の細胞増殖アッセイの目的は、概して、試験化合物が細胞増殖に影響を与えるかどうかを検出することである。
【0079】
MCF7(ATCC HTB-22から購入)細胞を、DMEMフェノールレッドフリー培地10%FBS(20μL体積)(チャコール処理)でウェルあたり2,000細胞の密度で、透明な底の384ウェル細胞培養プレートに播種する。10%FBSおよび1%ペニシリン/ストレプトマイシン抗生物質を補充したDMEM培地中のMCF7-ESRY537N-682(MCF7細胞のESr1遺伝子のCRISPR/Cas9遺伝子編集によって生成、クローン#682)を、ウェルあたり1000細胞の密度で播種する。37℃および5%COでプレートをインキュベートする。翌日、細胞に試験化合物を投与する。Echo555音響ディスペンサーを使用して、60μMから0.003μMの範囲の試験化合物段階希釈液(1:3)を調製する。連続希釈プレートから細胞プレートに5μLを加えることによって細胞に投与し、最終DMSO濃度が0.2%になり、最終試験化合物濃度が20~0.001μMの用量範囲になる。最大点には、0.2%のDMSOを含む培地を使用し、最小点には、0.2%DMSOを含む増殖培地で2μMの最終濃度に希釈したフルベストラントを使用する。試験化合物を投与後、37℃、5%COで細胞プレートをインキュベートする。試験化合物の添加から7日後、インキュベーターからプレートを取り出し、各ウェルに冷EtOH96%(65μL)を加える。30分後、培地を除去し、RNase(50μg/mLを20μL)(Sigma)およびウェルあたりPBS中1:1000ヨウ化プロピジウム希釈液を添加する。プレートを密封し、ベンチで室温で1時間インキュベートする(光から保護する)。ACUMEN EXPLORER(商標)[TTPLABTECH LTD製のレーザースキャン蛍光マイクロプレートサイトメーター]でプレートをスキャンする。MCF-7細胞株は増殖して凝集体を形成し、対象の数としての細胞数は読み出しとして使用できない可能性があり、したがって、細胞数は、推定細胞数(面積パラメーター(総細胞集団の総面積の比率(FL-1(PI)のピーク強度の指定範囲および単一細胞集団の平均面積(周囲長で定義))によって計算される)によって評価できる。GENE DATA(商標)を使用して、各アウトプットの4つのパラメーターロジスティックにカーブフィッティングすることにより、IC50を決定する。MCF7 ESR1野生型およびMCF7-ESR1 Y537N変異細胞における実施例1、1A、および1B(およびその他)の相対IC50を以下の表10に示す。このアッセイの結果は、MCF7(ESR1野生型)およびMCF7(ESR1 Y537N変異体)乳癌細胞における実施例1、1A、および1B(およびその他)による強力な抗増殖活性および細胞増殖阻害を示す。例示的な化合物の相対IC50は、MCF7 ESR1野生型において約0.0035から1.176μM、MCF7(ESR1 Y537N変異体)乳癌細胞で0.014から1.86μMの範囲であり、試験された全ての例示的な化合物は、MCF7(ESR1野生型)およびMCF7(ESR1 Y537N変異体)乳癌細胞において、強力な抗増殖活性および細胞増殖阻害を実証することを示す。
【表11-1】
【表11-2】
【0080】
MCF7腫瘍におけるin vivo標的阻害(IVTI)アッセイ(PGR RT-qPCRアッセイ)
このIVTIアッセイの目的は、マウスに移植された異種移植腫瘍において、ERαの下流でPRα遺伝子発現(転写)を阻害する試験化合物(SERD)の能力を測定することである。
【0081】
Envigo RMS,Inc.,Madison,WisconsinのメスのNOD SCIDマウス(22~25g)に、5×10eのMCF7 ER陽性乳癌細胞(ATCC、#HTB-22)を右脇腹領域に1:1 HBSS+MATRIGEL(商標)溶液(200μL)で皮下移植する。腫瘍細胞移植の1日前に、17-βエストラジオールペレット(Innovative researchからの0.18mg/ペレット、90日放出)を皮下に移植する。移植の7日後に開始して1週間に2回、腫瘍成長および体重を測定する。腫瘍の大きさが150~300mmに達する時、動物を無作為化し、5匹の動物の群に分ける。試験化合物特異的ビヒクル(精製水中の1%ヒドロキシエチルセルロース/0.25%TWEEN(登録商標)80/0.05%消泡剤)中の複数回投与の試験化合物またはビヒクル単独のいずれかを3日間、動物に経口投与し、最後の投与後に所望の時間間隔で腫瘍および血液を採取する。イソフルラン麻酔と頸椎脱臼を使用して動物を屠殺する。腫瘍を瞬間冷凍し、RNA分離およびRT-qPCRアッセイのために処理するまで-80℃で保存する。EDTAチューブに血液を採取し、血漿のためにスピンダウンし、96ウェルプレートで-80℃で凍結する。質量分析を使用して、試験化合物の曝露を決定する。
【0082】
FASTPREP-24(商標)Cell Disrupterマシン(MP Biomedical)でMatrix Dビーズ(MP Biomedical、#6913-500)を使用して、液体窒素で腫瘍を粉砕し、1×RNA溶解緩衝液(RNA単離キットから)で溶解する。14000rpmで20分間、4℃で回転させた後、腫瘍溶解物を新しいチューブに移す。PURELINK(登録商標)RNA Mini Kit(Invitrogen#12183018A)またはRNeasy Mini Kit(Qiagen#74104および#74106)を使用して、腫瘍溶解物からRNAを単離する。PURELINK(登録商標)DNaseセット(Invitrogen#12185010)またはRNaseフリーDNaseセット(Qiagen#79254)を使用してDNA混入物を除去する。RNaseフリー水で試料を希釈し、プレートリーダー(SpectraMax190)で260nmの吸光度を測定することにより、単離されたRNA濃度を測定する。他の全てのRNA試料の260nm測定値から、ブランク(RNaseフリー水のみ)の平均260nm吸光度測定値を差し引く。RNA試料をRNaseフリー水で等濃度に希釈する。RT-PCR用のFirst-Strand Synthesis System(Invitrogen、#18080-051)を使用して、希釈したRNAからcDNAを合成する。RT-qPCRを実行するために、最初にRNaseフリー水でcDNAを希釈する。2×Absolute Blue qPCR ROX Mix(Thermo、#AB-4139/A)、PGRプライマー(Thermo、Hs01556702_m1)、および各反応の希釈cDNAをPCRプレート(Applied Biosystems、#4309849)で合わせる。サーモサイクラー(ABI Prism 7900HT配列検出システム)で試料を50℃で2分間、続いて95℃で15分間インキュベートすることにより、cDNAを増幅する。95℃で15秒間、続いて50℃で60秒間を、合計40サイクルインキュベートし続ける。サイクルはハウスキーピング遺伝子に対して正規化され、ビヒクル単独と比較したPGR阻害%を計算するために使用される。各試料を重複して分析し、計算に平均数を使用する。ExcelとXL Fitを使用して、標的(PGR)阻害パーセントを計算する。
【0083】
このアッセイの結果は、実施例1Bが腫瘍異種移植モデルにおいてPRα(PGR)発現を阻害することを実証している。実施例1Bは、経口投与された場合、30mg/kgの用量で24時間、腫瘍異種移植モデルにおいてPRα(PGR)発現を約78%阻害する。これらの結果は、腫瘍異種移植モデルにおいて、in vivoでのERα拮抗活性およびERα媒介転写活性の有意かつ持続的な阻害を示している。
【0084】
マウスに移植されたER陽性(ESR1野生型)乳癌異種移植腫瘍モデルにおけるin vivo腫瘍増殖阻害研究
以下の異種移植腫瘍阻害アッセイの目的は、試験化合物投与に応答する移植腫瘍体積の減少を測定することである。
【0085】
培養中のヒト乳癌細胞MCF7(ATCC#HTB-22)およびHCC1428(ATCC#CRL-2327)を増殖させ、採取して5×10e細胞を1:1 HBSS+MATRIGEL(商標)溶液(200μL)でメスのNOD SCIDマウス(22~25g、Envigo RMS,Inc)の右後部側面に皮下に注入する。細胞移植の24時間前に、エストロゲンペレット(0.18mg/ペレット、17βエストラジオール、90日放出、Innovative Research)を皮下に移植する。培養中のヒト乳癌細胞T47D(ATCC#HTB-22)を増殖させ、採取して5×10e細胞を1:1 HBSS+MATRIGEL(商標)溶液(200μL)でメスのNOD SCIDマウス(22~25g、Envigo RMS,Inc)の右後部側面に皮下に注入する。細胞移植の24時間前に、エストロゲンペレット(0.38mg/ペレット、17βエストラジオール、90日放出、Innovative Research)を皮下に移植する。培養中のヒト乳癌細胞ZR-75-1(ATCC#CRL-1500)を増殖させ、採取して5×10e細胞を1:1 HBSS+MATRIGEL(商標)溶液(200μL)でメスのNOD SCIDマウス(22~25g、Envigo RMS,Inc)の右後部側面に皮下に注入する。細胞移植の24時間前に、動物に50μlの吉草酸エストラジオール(Delestrogen(登録商標))の筋肉内注射(10mg/mL)を投与し、その後、研究期間中14日に1回投与する。移植の7日後に開始して1週間に2回、腫瘍成長および体重を測定する。腫瘍の大きさが250~350mmに達する時、動物を無作為化し、5匹の動物の群に分ける。適切なビヒクル(精製水中の1%ヒドロキシエチルセルロース/0.25%TWEEN(登録商標)80/0.05%消泡剤)で試験化合物、実施例1Bを調製し、28日間、1日1回(QD)強制経口投与する。腫瘍応答は、処理過程中に週に2回行われる腫瘍体積測定によって決定される。腫瘍体積が測定されるときはいつでも、毒性の一般的な尺度として体重を取得する。
【0086】
実施例1Bの化合物は、以下の表12に提供されるように、デルタT/C%値を有することが見出されている。これらの結果は、実施例1Bの化合物が、マウスにおいて良好な経口バイオアベイラビリティを示し、ER陽性(ESR1野生型)ヒト乳癌異種移植モデルにおいて有意な抗腫瘍活性または腫瘍退縮を実証することを示している。
【表12】
【0087】
退縮%は、エンドポイント体積がベースラインを下回る場合に算出する。式は、100*(T-T)/Tであり、式中、Tは、処理群の平均ベースライン腫瘍体積である。
【0088】
32日目のベースライン(無作為化)からの全ての群の総平均を使用して、T/Cの変化%をコンピュータにより計算する。
【0089】
マウスに移植されたESR1変異体(Y537S)乳癌PDX腫瘍モデル(ST941/HI)におけるin vivo腫瘍増殖阻害研究
以下の異種移植腫瘍阻害アッセイの目的は、ESR1変異体およびホルモン非依存性(HI)乳癌患者由来異種移植(PDX)モデルにおいて、試験化合物投与に応答する移植腫瘍体積の減少を測定することである。
【0090】
ST941/HI PDXモデルは、South Texas Accelerated Research Therapeutics(San Antonio,TX)で導出され、実行された。腫瘍断片は、宿主動物から採取し、免疫不全マウス(The Jackson Laboratory)に移植し、研究は約125~250mmの平均腫瘍体積で開始された。適切なビヒクル(精製水中の1%ヒドロキシエチルセルロース/0.25%TWEEN(登録商標)80/0.05%消泡剤)で試験化合物、実施例1Bを調製し、28日間強制経口投与する。腫瘍応答は、処理過程中に週に2回行われる腫瘍体積測定によって決定される。腫瘍体積が測定されるときはいつでも、毒性の一般的な尺度として体重を取得する。
【0091】
実施例1Bの化合物は、以下の表13に提供されるように、デルタT/C%値を有することが見出されている。これらの結果は、実施例1Bの化合物が、マウスにおいて良好な経口バイオアベイラビリティを示し、ESR1変異体(Y537S)ヒト乳癌PDXモデルにおいて有意な抗腫瘍活性または腫瘍退縮を実証することを示している。
【表13】
【0092】
退縮%は、エンドポイント体積がベースラインを下回る場合に算出する。式は、100*(T-T)/Tであり、式中、Tは、処理群の平均ベースライン腫瘍体積である。
【0093】
32日目のベースライン(無作為化)からの全ての群の総平均を使用して、T/Cの変化%をコンピュータにより計算する。
【0094】
組み合わせ研究
腫瘍の不均一性と内分泌療法に対する後天的な耐性のために、組み合わせ療法は、効果的な治療のため、または後天的な耐性を克服するために、ER陽性および進行/転移性乳癌治療に不可欠になっている。実施例1BとCDK4/6阻害剤アベマシクリブ、mTOR阻害剤エベロリムス、PIK3CA阻害剤アルペリシブ、およびPI3K/mTOR阻害剤8-[5-(1-ヒドロキシ-1-メチルエチル)ピリジン-3-イル]-1-[(2S)-2-メトキシプロピル]-3-メチル-1,3-ジヒドロ-2H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-2-オン(「化合物A」)との組み合わせ効果をin vitroで5つのER陽性乳癌細胞株において試験した。
【0095】
組み合わせ研究のための細胞生存率アッセイ
透明な底の384ウェル細胞培養プレートに、表に記載されている培地の20μL体積で、以下の表14に示されている密度の細胞を播種する。
【表14】
【0096】
37℃および5%COでプレートをインキュベートする。翌日、細胞に試験化合物、実施例1Bを投与する。
【0097】
化合物を10mM DMSOストック溶液として調製し、最高濃度を10または1μMから開始して用量反応研究に使用する。2つの化合物を一定の比率で一緒に試験し、1:3段階希釈段階希釈を調製する。IC50決定のための化合物単独は、20μMの濃度から開始する。連続希釈プレートから細胞プレートに5μLを加えることによって細胞に投与し、最終DMSO濃度が0.2%になり、最終試験化合物濃度は、単一処理の場合は20~0.001μMの用量範囲になり、組み合わせの場合はそれより低い範囲になる。最大点には、0.2%のDMSOを含む培地を使用し、最小点には、0.2%DMSOを含む増殖培地で2μMの最終濃度に希釈したスタウロスポリンを使用する。試験化合物を投与後、37℃、5%COで細胞プレートをインキュベートする。化合物との2倍加時間のインキュベーション後、インキュベーターからプレートを取り出し、各ウェルに冷エタノール96%(65μL)を加える。30分後、培地を除去し、RNase(50μg/mLを20μL)(Sigma)およびウェルあたりPBS中1:1000ヨウ化プロピジウム希釈液を添加する。プレートを密封し、室温で1時間インキュベートする(光から保護する)。ACUMEN EXPLORER(商標)[TTPLABTECH LTD製のレーザースキャン蛍光マイクロプレートサイトメーター]でプレートをスキャンする。一部の細胞株が増殖して凝集体を形成し、対象の数としての細胞数は読み出しとして使用できない可能性がある。したがって、総面積集団(FL-1(PI)のピーク強度の指定範囲)またはPIの総強度を使用して、細胞数を評価する。
【0098】
In vitroの組み合わせデータは、表15に示すように、5つのER陽性乳癌細胞株のうち5つにおいて、実施例1Bとアベマシクリブまたはエベロリムスとの組み合わせによる相乗的(以下に定義)を示唆している。実施例1Bと化合物Aの組み合わせは、試験した4つのER陽性乳癌細胞株のうち4つで相乗的である。実施例1Bとアルペリシブとの組み合わせ効果は、4つのER陽性乳癌細胞株のうちの2つにおいて相加的であり、4つのER陽性乳癌細胞株のうち2つにおいて相乗的である。
【表15】
【0099】
組み合わせ効果のデータ分析と解釈
文献に公開されている方法を使用して、in vitroの組み合わせ効果を計算する(L.Zhao,et al,Front Biosci,2010,2:241-249 and L.Zhao,et al,Clin Cancer Res,2004,10(23):7994-8004)。2つの薬物間の相乗的または拮抗的な相互作用を識別するために、XLFit5アドインを備えたカスタマイズされたXLテンプレートを使用して曲線シフト分析が実行された。単一薬剤の曲線は、4つのパラメーターのロジスティック回帰を使用して調整される。フィッティングに使用される基準と制限は、(i)ボトム<(-20)が0に固定され、(ii)トップ>120が100に固定されることである。全ての観測値がユーザーが設定したしきい値よりも低い場合、hill=0で一定のフィットが実行され、IC50は含まれる最大濃度よりも高いとみなされる。各単剤の絶対IC50が得られたら、活性の50%での当量濃度を単剤および組み合わせについて計算する。これらの当量濃度を測定された活性と一緒に使用して、絶対IC50を再計算する。単剤の曲線は、1に等しい当量濃度の値で50%の活性に達するが、相乗的な組み合わせは、より低い値で50%に達し、左向きにシフトし、拮抗的な組み合わせは右方向のシフトを示す。当量濃度はまた、CI50が組み合わせ曲線の絶対IC50に等しい、CI50(活性の50%での組み合わせ指数)を計算するために使用される。CI50と一緒に、活性の様々なパーセンテージでの他のCI(組み合わせインデックス)を計算できる(CI10、CI20、CI30、CI40、CI60、CI70、CI80、CI90)。CInnを計算するために、様々な活性パーセンテージでの当量濃度が計算される。各活性パーセンテージについて、95%の信頼区間である許容誤差を計算し、この信頼区間を使用して、CIへの許容誤差の加算として上限を計算し、CIへの許容誤差の減算として下限を計算する。上限=CI+信頼区間95%および下限=CI-信頼区間95%。これらの限度は、結果を解釈するために使用される。
【0100】
各活性パーセンテージでの統計的解釈は次のとおりである。
【表16】

各活性パーセンテージでの生物学的解釈は次のとおりである。
【表17】
【0101】
In vivo組み合わせ研究
腫瘍の不均一性と内分泌療法に対する後天的な耐性のために、組み合わせ療法は、効果的な治療のため、または後天的な耐性を克服するために、ER陽性および進行/転移性乳癌治療に不可欠になっている。標的療法の組み合わせは、ER陽性乳癌を緩徐化する、あるいは停止させるのにより効果的である可能性があるとの仮説が立てられている。CDK4/6阻害剤とフルベストラントの組み合わせは、ER陽性転移性乳癌の治療に承認されているが、ESR1またはPIK3CAの獲得変異により、高いパーセンテージの患者が耐性を発達させる。ERαの強力な分解剤およびアンタゴニストとして、実施例1Bなどの経口SERDは、ESR1変異体またはPIK3CA変異体の乳癌を単剤として、またはアベマシクリブなどのCDK4/6阻害剤、または化合物AなどのPI3K/mTOR阻害剤と組み合わせて緩徐化または停止させるのにより効果的である可能性がある。その文脈において、実施例1Bの化合物は、アベマシクリブ(特許参照)または化合物A(特許参照)と組み合わせて腫瘍増殖阻害について試験される。より具体的には、実施例1Bの化合物は、ESR1野生型およびPIK3Ca変異体MCF7乳癌異種移植モデルにおいて、アベマシクリブまたは化合物Aと組み合わせて試験される。
【0102】
培養中のヒト乳癌細胞MCF7(ATCC#HTB-22)を増殖させ、採取して5×10e細胞を1:1 HBSS+MATRIGEL(商標)溶液(200μL)でメスのNOD SCIDマウス(22~25g、Envigo RMS,Inc)の右後部側面に皮下に注入する。細胞移植の24時間前に、エストロゲンペレット(0.18mg/ペレット、17βエストラジオール、90日放出、Innovative Research)を皮下に移植する。移植の7日後に開始して1週間に2回、腫瘍成長および体重を測定する。腫瘍の大きさが250~350mmに達する時、動物を無作為化し、5匹の動物の群に分ける。適切なビヒクル(精製水中の1%ヒドロキシエチルセルロース/0.25%TWEEN(登録商標)80/0.05%消泡剤)で試験化合物、実施例1Bを調製し、42日間強制経口投与する。CDK4/6阻害剤(アベマシクリブ)は、25mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH2.0中の1%HECで製剤化される。PI3K/mTOR阻害剤(化合物A)は、精製水中の1%ヒドロキシエチルセルロース/0.25%TWEEN(登録商標)80/0.05%消泡剤で製剤化された。腫瘍応答は、処理過程中に週に2回行われる腫瘍体積測定によって決定される。腫瘍体積が測定されるときはいつでも、毒性の一般的な尺度として体重を取得する。腫瘍体積は、式:v=lxw2x0.535(式中、l=より大きい測定直径、w=より小さい垂直直径)を使用することで推定される。
【0103】
統計分析
時間および処置群にわたる分散を等しくするために対数スケールにデータを変換して、腫瘍体積データの統計分析を始める。SASソフトウェア(バージョン9.3)のMIXED手順を用い、時間および処置による反復のある二元配置分散分析を用いて、対数体積データを分析する。反復測定の相関モデルはSpatial Powerである。各時点で処置群を対照群と比較する。各処置群について別々にMIXED手順を使用して、各時点での調整された平均および標準誤差を計算する。両方の分析は、各動物内の自己相関、および大きな腫瘍を有する動物が早期に研究から除外されたときに生じたデータの消失を説明する。調整された平均および標準誤差(s.e.)は、各処置群について時間に対してプロットされる。腫瘍体積についての分析は、log10およびspatial power共分散構造に基づく。P値は、2つの特定の群間の比較に基づく。
【0104】
併用分析方法(Bliss Independence for IVEF Studies)
第1に、通常の反復測定モデルは、群対時間に対する対数体積に適合する。次いで、コントラストステートメントを使用して、組み合わせられた2つの特定の処置を使用して、各時点での相互作用効果を試験する。これは、Bliss Independence法と同等であり、理論的には腫瘍体積がゼロに達する、すなわち完全に退縮することができると仮定する。併用について予想される付加応答(EAR)は、EAR体積=V1*V2/V0(式中、V0、V1、およびV2は、それぞれビヒクル対照、処置1単独、および処置2単独についての推定平均腫瘍体積である)として腫瘍体積スケールに基づいて計算される。相互作用試験が有意である場合、併用効果は、観察された併用の平均体積がEAR体積よりも小さいことに依存して統計的に付加を上回るか、または大きいことに依存して付加を下回ると宣言される。それ以外の場合、統計的結論は付加である。さらに、生物学的に関連性のある付加の範囲は、EAR体積の上下X%として定義することができる。通常、Xは、25~40%であろう。次いで、生物学的結論を、観察された併用の平均体積が、付加間隔の下、中、または上である場合に、付加を上回る、付加、または付加を下回る併用として行うことができる。
【0105】
停滞が最も期待される応答である状況があってもよい。これらの状況では、Bliss法を%デルタT/C値に直接適用してEAR%応答を得ることができ:EAR%デルタT/C=Y1*Y2/100、式中、Y1およびY2は、単一薬剤処置についての%デルタT/C値である。現在、併用群における観察された%デルタT/CとEARとを比較するための統計的試験はないが、上記の生物学的基準を適用することができる。
【0106】
表15および16に示されるように、実施例1Bまたはアベマシクリブ単独での単剤としての処理は、それぞれ32%(%dT/C=-32)および52%(%dT/C=-52)の腫瘍退縮をもたらし、両方ともビヒクル対照と比較して統計的に有意(p<0.001)である。実施例1Bとアベマシクリブとの組み合わせ効果は「相加的未満」であるが、実施例1Bとアベマシクリブとの組み合わせ効果は、実施例1B単独よりも有意に優れていた(p<0.001)。しかしながら、単剤アベマシクリブの有効性は、組み合わせから統計的に有意ではなかった(P=0.055)。併用は、有意な体重損失のない動物において、許容される。
【表18】
【表19】
【0107】
表17および18に示されるように、実施例1Bまたは化合物A単独での単剤としての処理は、それぞれ32%(%dT/C=-32)および36%(%dT/C=-36)の腫瘍退縮をもたらし、両方ともビヒクル対照と比較して統計的に有意(p<0.001)である。実施例1Bと化合物Aとの組み合わせ効果は「相加的未満」であるが、実施例1Bと化合物Aとの組み合わせ効果は、実施例1B単独(p<0.001)または化合物A単独(p=0.002*)よりも有意に優れていた。併用は、有意な体重損失のない動物において、許容される。
【表20】
【表21】
【0108】
表19および20に示されるように、実施例10またはアベマシクリブ単独での単剤としての処理は、それぞれ51%(%dT/C=-51)および70%(%dT/C=-70)の腫瘍退縮をもたらし、両方ともビヒクル対照と比較して統計的に有意(p<0.001)である。実施例10とアベマシクリブとの組み合わせ効果は「相加的未満」であるが、実施例10とアベマシクリブとの組み合わせ効果は、実施例10単独よりも有意に優れていた(p=0.039)。しかしながら、実施例10とアベマシクリブとの組み合わせ効果は、アベマシクリブ単独と有意に異ならなかった(p=0.905)。併用は、有意な体重損失のない動物において、許容される。
【表22】
【表23】
【0109】
表21および22に示されるように、実施例10またはアルペリシブ単独での単剤としての処理は、それぞれ51%(%dT/C=-51)および21%(%dT/C=-21)の腫瘍退縮をもたらし、両方ともビヒクル対照と比較して統計的に有意(p<0.001およびp=0.013)である。実施例10とアルペリシブとの組み合わせ効果は「相加的」であり、実施例10とアルペリシブとの組み合わせ効果は、実施例10単独よりも有意に優れていた(p=0.009)。実施例10とアルペリシブとの組み合わせ効果もまた、アルペリシブ単独よりも有意に優れていた(p=<0.001)。併用は、有意な体重損失のない動物において、許容される。
【表24】
【表25】
【0110】
表23および24に示されるように、実施例10またはエベロリムス単独での単剤としての処理は、それぞれ51%(%dT/C=-51)および50%(%dT/C=-50)の腫瘍退縮をもたらし、両方ともビヒクル対照と比較して統計的に有意(p<0.001およびp<0.001)である。実施例10とエベロリムスとの組み合わせ効果は「相加的」であり、実施例10とエベロリムスとの組み合わせ効果は、実施例10単独よりも有意に優れていた(p=0.004)。実施例10とアルペリシブとの組み合わせ効果もまた、エベロリムス単独よりも有意に優れていた(p=0.04)。併用は、有意な体重損失のない動物において、許容される。
【表26】
【表27】
【0111】
ラット経口バイオアベイラビリティ
以下のアッセイの目的は、試験化合物が経口で生物学的に利用可能かどうかを実証することである。
【0112】
試験化合物をSprague-Dawleyラットに、1mg/kg(25mMのリン酸ナトリウム緩衝液中の20%CAPTISOL(登録商標)、pH2適量、または25%のDMA、15%のEtOH、10%のプロピレングリコール、25%の2-ピロリドン、および25%の精製水のいずれかのビヒクルを使用)でIVで、3mg/kg(1%のヒドロキシエチルセルロース、0.25%のポリソルベート80、0.05%の消泡剤1510-US、および適量の精製水のビヒクルを使用)をPOで投与する。一連の血液試料を、IVボーラス投与後0.08、0.25、0.5、1、2、4、8、および12時間、ならびに経口投与後0.25、0.5、1、2、4、8、および12時間で採取する。EDTA凝固剤で処理した後、血漿を遠心分離により取得し、LC-MS/MSで分析するまで-70℃で保存する。試験物質の濃度は、血漿中で決定し、非コンパートメント分析を使用して、IV群とPO群の両方の曲線下面積(AUC)を計算するWatson LIMS(商標)システムにアップロードする。次の式を使用して経口バイオアベイラビリティ(F%)を計算する。
【数1】
【0113】
実施例1Bの化合物は、上述のアッセイにおいて約50%のF%値を示す。このアッセイは、実施例1Bが良好な経口バイオアベイラビリティを有することを実証している。