IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 積水メディカル株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-核酸の検出又は定量方法 図1
  • 特許-核酸の検出又は定量方法 図2
  • 特許-核酸の検出又は定量方法 図3
  • 特許-核酸の検出又は定量方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-16
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】核酸の検出又は定量方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6876 20180101AFI20220128BHJP
   C12Q 1/6813 20180101ALI20220128BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20220128BHJP
   C12N 15/10 20060101ALN20220128BHJP
【FI】
C12Q1/6876 Z ZNA
C12Q1/6813 Z
C12N15/09 Z
C12N15/10 Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021528959
(86)(22)【出願日】2021-01-29
(86)【国際出願番号】 JP2021003144
(87)【国際公開番号】W WO2021153709
(87)【国際公開日】2021-08-05
【審査請求日】2021-05-21
(31)【優先権主張番号】P 2020014497
(32)【優先日】2020-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390037327
【氏名又は名称】積水メディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】特許業務法人 もえぎ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大森 茜
(72)【発明者】
【氏名】大澤 雅子
【審査官】市島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-070635(JP,A)
【文献】国際公開第2013/085026(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12Q 1/00-3/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む試料中の標的核酸の回収方法。
(i)試料中の標的核酸と、捕捉プローブと、アシストプローブとを接触させてハイブリダイゼーションさせる工程、
ここで、前記捕捉プローブは、
(A)核酸プローブと、
(B)前記核酸プローブの3’末端又は5’末端のヌクレオチドに隣接する固相又はアダプター若しくはリンカーとを含み、
前記核酸プローブは、第1の塩基配列と前記標的核酸の全配列若しくは部分配列に相補的な第2の塩基配列を含み、
アシストプローブは、標的核酸に隣接可能であって前記核酸プローブの第1の塩基配列の全配列又は部分配列に相補的な6~9merの配列を含む、
(ii)前記試料に含まれるハイブリダイゼーション生成物を回収する工程
【請求項2】
以下の工程を含む試料中の標的核酸を検出する方法。
(i)試料中の標的核酸と、捕捉プローブと、アシストプローブとを接触させてハイブリダイゼーションさせる工程、
ここで、前記捕捉プローブは、
(A)核酸プローブと、
(B)前記核酸プローブの3’末端又は5’末端のヌクレオチドに隣接する固相又はアダプター若しくはリンカーとを含み、
前記核酸プローブは、第1の塩基配列と前記標的核酸の全配列若しくは部分配列に相補的な第2の塩基配列を含み、
アシストプローブは、標的核酸に隣接可能であって前記核酸プローブの第1の塩基配列の全配列又は部分配列に相補的な6~9merの配列を含む、
(ii)前記試料に含まれるハイブリダイゼーション生成物を回収する工程
(iii)回収されたハイブリダイゼーション生成物を検出する工程
【請求項3】
試料中の標的核酸を第1及び第2のオリゴヌクレオチドからなる自己凝集可能な一対のプローブとの複合体を形成することにより検出する方法であり、以下の工程を含む検出方法。
(i)試料中の標的核酸と、捕捉プローブと、アシストプローブとを接触させてハイブリダイゼーションさせる工程、
ここで、前記捕捉プローブは、
(A)核酸プローブと、
(B)前記核酸プローブの3’末端又は5’末端のヌクレオチドに隣接する固相又はアダプター若しくはリンカーとを含み、
前記核酸プローブは、第1の塩基配列と前記標的核酸の全配列若しくは部分配列に相補的な第2の塩基配列を含み、
アシストプローブは、標的核酸に隣接可能であって前記核酸プローブの第1の塩基配列の全配列又は部分配列に相補的な6~9merの配列と前記第1又は第2のオリゴヌクレオチドのうち少なくとも一方の全配列若しくは部分配列、を含む、
(ii)前記ハイブリダイゼーション生成物に、第1及び第2のオリゴヌクレオチドを接触させて、前記ハイブリダイゼーション生成物と、第1及び第2のオリゴヌクレオチドが自己凝集してなるオリゴヌクレオチドポリマーとのポリマー複合体を形成する工程
(iii)前記ポリマー複合体を検出する工程
【請求項4】
試料中の標的核酸と、捕捉プローブと、アシストプローブとを接触させてハイブリダイゼーションさせる工程は、標的核酸と捕捉プローブとを接触させるファーストハイブリダイゼーション工程と、ファーストハイブリダイゼーション生成物とアシストプローブとを接触させるセカンドハイブリダイゼーション工程の2段階のハイブリダイゼーション工程を含む、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記2段階のハイブリダイゼーション工程は同時に行われる工程である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
アシストプローブが、標的核酸に隣接可能であって前記核酸プローブの第1の塩基配列の全配列に相補的な6~9merの配列と、前記第1又は第2のオリゴヌクレオチドのうち少なくとも一方の全配列若しくは部分配列、を含む、請求項3~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
アシストプローブが標的核酸の末端に隣接可能である請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
試料が血液由来成分である請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記標的核酸が化学修飾された核酸である請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記化学修飾された核酸が、LNA、BNA、ホスホロチオエートオリゴ、モルフォリノオリゴ、ボラノホスフェートオリゴ、2’-O-メチル化RNA(2’-OMe)、2’-O-メトキシエチル化RNA(2’-MOE)又は2’-F-RNAである請求項9に記載の方法。
【請求項11】
以下を含む、試料中の標的核酸を検出するキット。
(1)標的核酸を捕捉するための捕捉プローブ
前記捕捉プローブは、
(A)核酸プローブと、
(B)前記核酸プローブの3’末端又は5’末端のヌクレオチドに隣接する固相又はアダプター若しくはリンカーとを含み、
前記核酸プローブは、第1の塩基配列と前記標的核酸の全配列若しくは部分配列に相補的な第2の塩基配列を含む、
(2)第1及び第2のオリゴヌクレオチドからなる自己凝集可能な一対のプローブ
(3)標的核酸に隣接可能であって、前記核酸プローブの第1の塩基配列の全配列又は部分配列に相補的な6~9merの配列と前記第1又は第2のオリゴヌクレオチドのうち少なくとも一方の全配列若しくは部分配列、を含むアシストプローブ
【請求項12】
アシストプローブが、標的核酸に隣接可能であって前記核酸プローブの第1の塩基配列の全配列に相補的な6~9merの配列と、前記第1又は第2のオリゴヌクレオチドのうち少なくとも一方の全配列若しくは部分配列、を含む、請求項11に記載の検出キット。
【請求項13】
アシストプローブが、標的核酸の末端に隣接可能である請求項11又は12に記載の検出キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高感度及び定量性に優れた核酸の検出又は定量方法に関する。
【背景技術】
【0002】
DNAやRNAの標的核酸を検出する技術としてPALSAR法が知られている。PALSAR法の原理は、あらかじめ用意した互いに相補的な3つの領域からなる1組のシグナル増幅用プローブ(本明細書中、自己凝集プローブということがある)を使用し、当該プローブに標識を付け、これらがハイブリダイゼーションによる自己凝集反応を繰り返すことにより網目状の大きなDNAの塊(本明細書中、オリゴヌクレオチドポリマーということがある)となることからこれを増幅シグナルとして利用するものである。検出対象のDNAやRNAにこの大きなDNAの塊が結合することによって、その増幅したシグナルを捕捉して検出対象のDNAやRNAを検出、定量するという方法である。
PALSAR法を使った標的核酸の検出方法として特許文献1の方法が知られている。
本方法は、PALSAR法において用いられるシグナル増幅用プローブと、標的核酸に相補的な配列を有する第1の核酸プローブと、該第1の核酸プローブに相補的な配列を有し標的核酸と隣接する状態で第1の核酸プローブと結合可能であり且つシグナル増幅用プローブのうち少なくとも一つと結合可能な第2の核酸プローブを用いて試料中の標的核酸を検出する方法である。本方法は、試料中に標的核酸が存在する場合は、シグナル増幅用プローブの自己凝集反応により形成されたオリゴヌクレオチドポリマーが、標的核酸と第1の核酸プローブと第2の核酸プローブとを含む複合体に結合した状態で検出されるが、試料中に標的核酸が存在しない場合には、第2の核酸プローブが第1の核酸プローブから解離し、複合体に結合したオリゴヌクレオチドポリマーは検出されないという方法である。
しかし、当該方法を本発明者らが再現したところ、標的核酸が存在しない場合にもシグナル値が高く出てしまい、いわゆるS/N比(ノイズに対するシグナルの値)が低くなるという問題を見出した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-70635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
PALSAR法を使った標的核酸の検出方法においてより感度の高い検出方法および定量方法が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、第1の核酸プローブ、第2の核酸プローブ、及び反応条件等について種々の検討を行ったところ、意外にも標的核酸に隣接する第2の核酸プローブ(以下、本発明のアシストプローブのうち、第1の塩基配列に相補的な部分)の長さ及びこれに相補的な第1の核酸プローブ(以下、本発明の捕捉プローブに相当)の第1の塩基配列の長さとの関係を変更することによりバックグランドを抑制することができ、S/N比を改善し、検出感度をより高めることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は以下の構成を有する。
<1>
以下の工程を含む試料中の標的核酸の回収方法。
(i)試料中の標的核酸と、捕捉プローブと、アシストプローブとを接触させてハイブリダイゼーションさせる工程、
ここで、前記捕捉プローブは、
(A)核酸プローブと、
(B)前記核酸プローブの3’末端又は5’末端のヌクレオチドに隣接する固相又はアダプター若しくはリンカーとを含み、
前記核酸プローブは、第1の塩基配列と前記標的核酸の全配列若しくは部分配列に相補的な第2の塩基配列を含み、
アシストプローブは、標的核酸に隣接可能であって前記核酸プローブの第1の塩基配列の全配列又は部分配列に相補的な6~9merの配列を含む、
(ii)前記試料に含まれるハイブリダイゼーション生成物を回収する工程。
<2>
以下の工程を含む試料中の標的核酸を検出する方法。
(i)試料中の標的核酸と、捕捉プローブと、アシストプローブとを接触させてハイブリダイゼーションさせる工程、
ここで、前記捕捉プローブは、
(A)核酸プローブと、
(B)前記核酸プローブの3’末端又は5’末端のヌクレオチドに隣接する固相又はアダプター若しくはリンカーとを含み、
前記核酸プローブは、第1の塩基配列と前記標的核酸の全配列若しくは部分配列に相補的な第2の塩基配列を含み、
アシストプローブは、標的核酸に隣接可能であって前記核酸プローブの第1の塩基配列の全配列又は部分配列に相補的な6~9merの配列を含む、
(ii)前記試料に含まれるハイブリダイゼーション生成物を回収する工程
(iii)回収されたハイブリダイゼーション生成物を検出する工程。
<3>
試料中の標的核酸を第1及び第2のオリゴヌクレオチドからなる自己凝集可能な一対のプローブとの複合体を形成することにより検出する方法であり、以下の工程を含む検出方法。
(i)試料中の標的核酸と、捕捉プローブと、アシストプローブとを接触させてハイブリダイゼーションさせる工程、
ここで、前記捕捉プローブは、
(A)核酸プローブと、
(B)前記核酸プローブの3’末端又は5’末端のヌクレオチドに隣接する固相又はアダプター若しくはリンカーとを含み、
前記核酸プローブは、第1の塩基配列と前記標的核酸の全配列若しくは部分配列に相補的な第2の塩基配列を含み、
アシストプローブは、標的核酸に隣接可能であって前記核酸プローブの第1の塩基配列の全配列又は部分配列に相補的な6~9merの配列と前記第1又は第2のオリゴヌクレオチドのうち少なくとも一方の全配列若しくは部分配列、を含む、
(ii)前記ハイブリダイゼーション生成物に、第1及び第2のオリゴヌクレオチドを接触させて、前記ハイブリダイゼーション生成物と、第1及び第2のオリゴヌクレオチドが自己凝集してなるオリゴヌクレオチドポリマーとのポリマー複合体を形成する工程
(iii)前記ポリマー複合体を検出する工程。
<4>
試料中の標的核酸と、捕捉プローブと、アシストプローブとを接触させてハイブリダイゼーションさせる工程は、標的核酸と捕捉プローブとを接触させるファーストハイブリダイゼーション工程と、ファーストハイブリダイゼーション生成物とアシストプローブとを接触させるセカンドハイブリダイゼーション工程の2段階のハイブリダイゼーション工程を含む、<1>~<3>のいずれかに記載の方法。
<5>
前記2段階のハイブリダイゼーション工程は同時に行われる工程である、<4>に記載の方法。
<6>
アシストプローブが、標的核酸に隣接可能であって前記核酸プローブの第1の塩基配列の全配列に相補的な6~9merの配列と、前記第1又は第2のオリゴヌクレオチドのうち少なくとも一方の全配列若しくは部分配列、を含む、<3>~<5>のいずれかに記載の方法。
<7>
アシストプローブが標的核酸の末端に隣接可能である<1>~<6>のいずれかに記載の方法。
<8>
試料が血液由来成分である<1>~<7>のいずれかに記載の方法。
<9>
前記標的核酸が化学修飾された核酸である<1>~<8>のいずれかに記載の方法。
<10>
前記化学修飾された核酸が、LNA、BNA、ホスホロチオエートオリゴ、モルフォリノオリゴ、ボラノホスフェートオリゴ、2’-O-メチル化RNA(2’-OMe)、2’-O-メトキシエチル化RNA(2’-MOE)又は2’-F-RNAである<9>に記載の方法。
<11>
以下を含む、試料中の標的核酸を検出するキット。
(1)標的核酸を捕捉するための捕捉プローブ
前記捕捉プローブは、
(A)核酸プローブと、
(B)前記核酸プローブの3’末端又は5’末端のヌクレオチドに隣接する固相又はアダプター若しくはリンカーとを含み、
前記核酸プローブは、第1の塩基配列と前記標的核酸の全配列若しくは部分配列に相補的な第2の塩基配列を含む、
(2)第1及び第2のオリゴヌクレオチドからなる自己凝集可能な一対のプローブ
(3)標的核酸に隣接可能であって、前記核酸プローブの第1の塩基配列の全配列又は部分配列に相補的な6~9merの配列と前記第1又は第2のオリゴヌクレオチドのうち少なくとも一方の全配列若しくは部分配列、を含むアシストプローブ
<12>
アシストプローブが、標的核酸に隣接可能であって前記核酸プローブの第1の塩基配列の全配列に相補的な6~9merの配列と、前記第1又は第2のオリゴヌクレオチドのうち少なくとも一方の全配列若しくは部分配列、を含む、<11>に記載の検出キット。
<13>
アシストプローブが、標的核酸の末端に隣接可能である<11>又は<12>に記載の検出キット。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、標的核酸が存在しない場合には、アシストプローブが捕捉プローブとハイブリダイズしないかあるいは一時的にハイブリダイズしてもすぐに解離し、標的核酸が存在する場合には、本発明のアシストプローブが標的核酸に隣接し、捕捉プローブとハイブリダイズすることで標的核酸を確実に回収又は検出することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の基本工程の一態様を示す工程模式図である。
図2】アシストプローブのうち核酸プローブの第1の塩基配列に相補的な配列の長さを8mer、9mer、10merとし、標的核酸が存在する場合と存在しない場合のシグナル値及びS/N比を示すグラフである(実施例1)。
図3】核酸プローブの第1の塩基配列の長さを7mer~10merとし、アシストプローブのうち核酸プローブの第1の塩基配列に相補的な配列の長さは核酸プローブの第1の塩基配列の長さと一致し、標的核酸が存在する場合と存在しない場合のシグナル値及びS/N比を示すグラフである(実施例2)。
図4】アシストプローブのうち核酸プローブの第1の塩基配列に相補的な配列の長さを5mer、6mer、7merとし、標的核酸が存在する場合と存在しない場合のシグナル値及びS/N比を示すグラフである(実施例3)。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(回収方法)
本発明の第1の態様は、標的とする核酸(以下、単に標的核酸ということがある)の回収方法である。本発明は、以下の(i)~(ii)の工程を含む。
(i)試料中の標的核酸と、捕捉プローブと、アシストプローブとを接触させてハイブリダイゼーションさせる工程、
ここで、前記捕捉プローブは、
(A)核酸プローブと、
(B)前記核酸プローブの3’末端又は5’末端のヌクレオチドに隣接する固相又はアダプター若しくはリンカーとを含み、
前記核酸プローブは、第1の塩基配列と前記標的核酸の全配列若しくは部分配列に相補的な第2の塩基配列を含み、
アシストプローブは、標的核酸に隣接可能であって前記核酸プローブの第1の塩基配列の全配列又は部分配列に相補的な6~9merの配列を含む、
(ii)前記試料に含まれるハイブリダイゼーション生成物を回収する工程
(i)のハイブリダイゼーション工程は、標的核酸と捕捉プローブの第2の塩基配列領域とをハイブリダイズさせるファーストハイブリダイゼーション工程と、当該ハイブリダイゼーション生成物にアシストプローブをハイブリダイズさせて、標的核酸にアシストプローブが隣接して、捕捉プローブの第1の塩基配列領域とアシストプローブがハイブリダイズするセカンドハイブリダイゼーション工程がある。これらの2つのハイブリダイゼーション工程は、同時に行われる場合と別々に行われる場合とがある。
(ii)のハイブリダイゼーション生成物を回収する工程は、後述する自己凝集プローブの分離方法と同じである。すなわち、遠心分離、吸引ろ過の他、固相がプレートである場合は、目的生成物はプレートに結合しているため、上清を吸引又はデカントで除去することにより目的産物のみを回収することが可能である。
【0009】
(検出方法)
本発明の第2の態様は、標的核酸を検出する方法であり、(i)~(iii)の工程を含む。(i)~(ii)は前記第1の態様と同じ工程であり、(iii)は回収されたハイブリダイゼーション生成物を検出する工程である。この場合の検出対象はアシストプローブの標識物質であり、アシストプローブへの標識は、後述する。
【0010】
(PALSAR法による検出)
本発明の第3の態様は、標的核酸をPALSAR法により検出する方法であり、(i)~(iii)の工程を含む。(i)のハイブリダイゼーション工程は前記第1の態様と同じ工程である。
(ii)は、(i)の工程により得られた捕捉プローブ、標的核酸及びアシストプローブとのハイブリダイゼーション生成物に、第1及び第2のオリゴヌクレオチドからなる自己凝集可能な一対のプローブを接触させて、前記ハイブリダイゼーション生成物と、第1及び第2のオリゴヌクレオチドが自己凝集してなるオリゴヌクレオチドポリマーとの複合体を形成する工程である。
(iii)は前記複合体を検出する工程である。
【0011】
(ii)及び(iii)の工程は、いわゆるPALSAR法(パルサー法)と言われる自己凝集プローブによるシグナル増幅工程と増幅したシグナルを検出する工程である。
ハイブリダイゼーション、PALSAR法の具体的なステップ、捕捉プローブ、アシストプローブ及び自己凝集プローブについては後述する。
【0012】
(標的核酸)
本発明の標的核酸は、DNA、RNAなどいずれの核酸も対象とすることができる。また、本発明は、新たな分子標的薬として近年、特に注目され開発が活発に行われている核酸医薬品の検出に適している。核酸医薬品は、体内での分解を制御するために、ほぼすべての製品において、何らかの修飾が施された核酸が使用されていることから、本発明の検出技術が好適に応用される。例えば、「人工核酸-DNA-人工核酸」構造で知られるGapmer構造型のアンチセンス核酸医薬などが挙げられる。化学修飾は核酸の塩基部分、糖部分、リン酸部分のいずれの部位も対象となりうる。
具体的には、本発明の検出対象である標的核酸は、天然のDNA若しくはRNA、又は化学修飾されたDNA若しくはRNAであり、上記化学修飾としては、例えばホスホロチオエート修飾(S化)、2’-F修飾、2’-O-Methyl(2’-OMe)修飾、2’-O-Methoxyethyl(2’-MOE)修飾、モルフォリノ修飾、LNA修飾、BNACOC修飾、BNANC修飾、ENA修飾、cEtBNA修飾などが挙げられる。
このうちでも、3’末端の核酸が化学修飾されたDNA若しくはRNAが好ましく、LNA、BNA、ホスホロチオエートオリゴ、モルフォリノオリゴ、ボラノホスフェートオリゴ、2’-O-メチル化RNA(2’-OMe)、2’-O-メトキシエチル化RNA(2’-MOE)、2’-F-RNAがさらに好ましく、さらにより好ましくはLNA又はBNAである。
上記標的核酸は一本鎖又は二本鎖の何れでも良く、二本鎖の場合は、通常は、一本鎖にして本発明に使用される。
【0013】
(捕捉プローブ)
本発明において「捕捉プローブ」とは、標的核酸を捕捉するためのプローブであり、(A)核酸プローブと、(B)前記核酸プローブの3’末端又は5’末端のヌクレオチドに隣接する固相又はアダプター若しくはリンカーとを含む。
【0014】
(核酸プローブ)
本発明に使用する(A)核酸プローブは、第1の塩基配列と、該第1の塩基配列に隣接する位置に、前記標的核酸の全配列若しくは部分配列に相補的な第2の塩基配列と、を含む。核酸プローブにおいて、前記第1の塩基配列は、前記第2の塩基配列と間隔なく配置される。
(B)の固相としては、例えば、不溶性の微粒子、マイクロビーズ、蛍光微粒子、磁気粒子、マイクロプレート、マイクロアレイ、スライドガラス、電気伝導性基板等の基板を用いることが好ましい。
第2の塩基配列は、好ましくは、前記標的核酸の全長に対して又は前記標的核酸の3’末端又は5’末端を含む部分に対して相補的な配列を含み、以下の(a-1)と(a-2)の場合が挙げられる。
(a-1)固相又はアダプター若しくはリンカーが3’末端のヌクレオチドに隣接する場合には、核酸プローブは、当該3’末端のヌクレオチドを含む部分において、前記標的核酸に対して相補的な配列を含む。
(a-2)前記固相又はアダプター若しくはリンカーが5’末端のヌクレオチドに隣接する場合には、核酸プローブは、当該5’末端のヌクレオチドを含む部分において、前記標的核酸に対して相補的な配列を含む。
また、前記標的核酸の全長若しくは部分配列に対して相補的な配列は、前記標的核酸の当該配列に対してハイブリダイズできる程度の同一性があれば良い。
【0015】
上記核酸プローブの第2の塩基配列の長さ(塩基数、mer)は、標的核酸と結合できる長さであればよく、例えば、下限としては、4mer以上の塩基が好ましく、10mer以上の塩基が更に好ましく、15mer以上の塩基が更により好ましい。上限としては、1000mer以下の塩基が好ましい。
【0016】
上記核酸プローブの第1の塩基配列は後述するアシストプローブとハイブリダイズ可能な配列を含み、配列の長さ(塩基数、mer)は、アシストプローブと結合できる長さであればよく、6mer以上であればよく、6mer~20merが好ましく、より好ましくは6~10merであり、よりいっそう好ましくは6~9merである。
【0017】
(アシストプローブ)
本発明のアシストプローブは、標的核酸に隣接可能であって前記核酸プローブの第1の塩基配列の全配列又は部分配列に相補的な6~9mer配列を含むプローブである。
アシストプローブの第1の態様は、標的核酸、捕捉プローブ、アシストプローブのハイブリダイゼーション生成物を形成させて回収あるいは検出する方法に用いられるプローブであり、標的核酸に隣接可能であって、前記核酸プローブの第1の塩基配列の全配列又は部分配列に相補的な6~9merの配列を含む。5mer以下では、標的核酸への隣接する効果が薄れ、核酸プローブの第1の塩基配列領域とハイブリダイズしてもすぐに脱離してしまうから好ましくなく、10mer以上では標的核酸が存在しない場合でも核酸プローブの第1の塩基配列領域に結合してしまうからである。アシストプローブは、標的核酸の末端に隣接可能であることが好ましい。隣接可能とは、核酸同士が間隔なく配置可能なことを意味する。また、隣接する効果(隣接効果)とは、核酸同士が間隔なく配置することで、短い塩基数であっても脱落することなく、相補的な核酸とハイブリダイズして相補鎖を形成・維持することが可能なことをいう。本第1の態様において標的核酸、捕捉プローブ、アシストプローブのハイブリダイゼーション生成物(標的核酸-捕捉プローブ-アシストプローブ複合体)を検出する場合は、アシストプローブは標識されており、標識物質は後述する。
アシストプローブの第2の態様は、前記ハイブリダイゼーション生成物をPALSAR法により検出する方法に用いられるプローブであり、標的核酸に隣接可能であって、核酸プローブの第1の塩基配列の全配列又は部分配列に相補的な6~9mer配列を含み、かつ、自己凝集プローブを構成する第1又は第2のオリゴヌクレオチドのうち少なくとも一方の全配列若しくは部分配列、を含むプローブである。好ましくは、アシストプローブは、標的核酸に隣接可能であって、前記核酸プローブの第1の塩基配列の全配列に相補的な6~9merの配列を含む。第1の塩基配列の全配列に相補的配列の長さは、より好ましくは7~9merである。本第2の態様におけるアシストプローブは、標識物質で標識されていても、標識されていなくてもよい。また、アシストプローブは、標的核酸の末端に隣接可能であることが好ましい。
【0018】
(固相)
本発明における固相は、不溶性の微粒子、マイクロビーズ、蛍光微粒子、磁気粒子、マイクロプレート、マイクロアレイ、スライドガラス、電気伝導性基板等の基板等が挙げられ、好ましくは蛍光微粒子であり、更に好ましくは蛍光ビーズであり、特に好ましくは、表面に蛍光物質を有するビーズである。本発明に使用する、「表面に蛍光物質を有するビーズ」としては、蛍光物質を有するビーズであれば、特に限定されず、例えば、Luminex社のMicroPlexTM Microspheresが好適に使用することができる。1種類のビーズを用いることも、多種類のビーズを用いることもできる。カラーコード化された複数種類のビーズを使用すれば、本発明の核酸の検出又は定量方法も容易にマルチプレックス化できる。
【0019】
上記固相と上記核酸プローブは、直接結合していてもよく、アダプター又はリンカーを介して結合してもよく、好ましくは、アダプター又はリンカーを介して結合していることが好ましい。
【0020】
(アダプター又はリンカー)
本発明に使用する「アダプター又はリンカー」としては、例えば、ビオチン、Spacer 9、Spacer 12、Spacer18、Spacer C3等のスペーサー等のアミノ基若しくはカルボキシル基を有する化合物等が挙げられ、好ましくは5'-Amino-Modifier C12 (12-(4-Monomethoxytritylamino)dodecyl-1-[(2-cyanoethyl)-(N,N-diisopropyl)]-phosphoramidite)、ビオチン等である。
例えば、ビーズ表面にカルボキシル基を有し、アミノ基の化合物を付加した核酸プローブが、アミノ基を介してビーズ表面のカルボキシル基と結合する態様は、アミノ基を有する化合物がリンカーの例となる。
本発明において「核酸プローブの3’末端又は5’末端のヌクレオチドに隣接する固相又はアダプター若しくはリンカー」の「隣接」とは、前記ヌクレオチドに固相、アダプター若しくはリンカーが結合していることを意味し、結合の意味については後述する。
【0021】
(標識物質)
本発明における標識物質は、放射性同位元素、ビオチン、ジゴキシゲニン、蛍光物質、発光物質又は色素等が好適な例として挙げられる。
具体的には、125Iや32P等のラジオアイソトープ、ジゴキシゲニン、Cyanin 5等の蛍光色素、アクリジニウム・エステル等の発光・発色物質、ジオキセタン等の発光・発色物質や4-メチルウンベリフェリルリン酸等の蛍光物質を抗フルオレセイン抗体に結合させたアルカリフォスファターゼ等を介して利用するためのフルオレセイン、アビジンに結合した蛍光・発光・発色物質等を利用するためのビオチン等、又は蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)を利用するためのドナー蛍光色素とアクセプター蛍光色素、を付加させておき、標的核酸を検出することも可能である。
【0022】
(核酸プローブの固相への結合)
核酸プローブの固相への結合は、化学結合による方法、生物学的相互作用による方法、物理吸着による方法などが挙げられる。化学結合による方法では、例えば、カルボキシル基でコートされた固相を用いる場合、オリゴヌクレオチドに標識したアミノ基との間でカップリング反応をさせることができる。生物学的相互作用による方法では、例えば、固相にコートしたストレプトアビジンと、核酸プローブに修飾したビオチンとの間の結合力を利用することができる。また、物理吸着による方法では、例えば、負の電荷を有する固相を用いた場合、オリゴヌクレオチドにアミノ基など正の電荷を有する物質を標識することで、静電気的に固相に吸着させることができる。
【0023】
(接触)
本明細書において、「接触させる」、あるいは、「接触工程」という用語は、ある物質と他の物質との間で、共有結合、イオン結合、金属結合、非共有結合などの化学結合を形成できるように、これらの物質を互いに近傍に置くことを意味する。本発明の一態様においては、ある物質と他の物質を「接触させる」とは、ある物質を含む溶液と他の物質を含む溶液を混合することを意味する。
試料中の標的核酸と捕捉プローブの接触工程は、30~70℃で0.2~30時間保温すること、好ましくは、35~65℃で0.5~24時間保温することで行われる。また、前記試料中の標的核酸-捕捉プローブ複合体とアシストプローブとの接触工程は、30~70℃で0.2~30時間保温すること、好ましくは、35~65℃で0.5~24時間保温することで行われる。また、前記試料中の標的核酸-捕捉プローブ-アシストプローブ複合体と第1及び第2のオリゴヌクレオチドとの接触工程は、28~70℃で0.2~3時間保温すること、好ましくは、30~54℃で0.5~2時間保温することで行われる。
また、試料中の標的核酸と捕捉プローブとの接触は、標的核酸と核酸プローブの相補的な配列の対応する塩基がハイブリダイゼーションできる条件下で行われることを意味する。同様に、当該捕捉プローブとアシストプローブとの接触、自己凝集可能な一対のプローブと当該アシストプローブとの接触、自己凝集可能な一対のプローブ同士の接触も対応する塩基がハイブリダイゼーションできる条件下で行われることを意味する。
【0024】
(自己凝集)
本明細書において、「自己凝集」という用語は、複数の第1のオリゴヌクレオチドが、第2のオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションにより複合体を形成した状態、及び、複数の第2のオリゴヌクレオチドが、第1のオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションにより複合体を形成した状態を意味する。
【0025】
(自己凝集可能な一対のプローブ)
本発明の方法に使用する「自己凝集可能」な一対のプローブは、第1のオリゴヌクレオチドと第2のオリゴヌクレオチドが互いにハイブリダイズ可能な相補的塩基配列領域を有し、自己凝集反応によるオリゴヌクレオチドポリマーの形成が可能なオリゴヌクレオチドをいう。好ましくは、前記第1又は第2のオリゴヌクレオチドのうち少なくとも一方は、標識物質により標識されている。ここで、「ハイブリダイズ可能」とは、一態様においては、当該相補的塩基配列領域において完全に相補的であることを意味する。また別の一態様においては、1つ又は2つのミスマッチを除いて、当該相補的塩基配列領域において相補的であることを意味する。
【0026】
自己凝集可能な一対のプローブにはあらかじめ検出のための標識物質で標識しておくことも可能である。そのような標識物質として、放射性同位元素、ビオチン、ジゴキシゲニン、蛍光物質、発光物質又は色素等が好適な例として挙げられる。具体的には、125Iや32P等のラジオアイソトープ、ジゴキシゲニン、Cyanin 5等の蛍光色素、アクリジニウム・エステル等の発光・発色物質、ジオキセタン等の発光・発色物質や4-メチルウンベリフェリルリン酸等の蛍光物質を抗フルオレセイン抗体に結合させたアルカリフォスファターゼ等を介して利用するためのフルオレセイン、アビジンに結合した蛍光・発光・発色物質等を利用するためのビオチン等、又は蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)を利用するためのドナー蛍光色素とアクセプター蛍光色素、を付加させておき、標的核酸を検出することも可能である。
好ましくは、当該標識物質はビオチンであり、当該オリゴヌクレオチドの標識は、好ましくは5’末端又は3’末端をビオチン化することにより行われる。当該標識物質はビオチンの場合、標識物質に特異的に結合する物質はストレプトアビジン又はアビジンである。
【0027】
「自己凝集可能」な一対のプローブをより具体的に説明すると、第1のオリゴヌクレオチドが、5’末端側から順に少なくとも核酸領域X、核酸領域Y、及び核酸領域Zを含むオリゴヌクレオチドであり、第2のオリゴヌクレオチドが、5’末端側から順に少なくとも前記核酸領域Xに相補的な核酸領域X’、前記核酸領域Yに相補的な核酸領域Y’、及び前記核酸領域Zに相補的な核酸領域Z’を含むオリゴヌクレオチドということになる。
【0028】
本発明の標的核酸の検出方法の第1の態様として、標的核酸にアシストプローブを隣接させてPALSAR法により検出する方法について図1にもとづいて以下具体的に説明する。
まず、標的核酸が含まれうる試料、捕捉プローブ、アシストプローブを準備する(図1の1))。
本発明の捕捉プローブは、
(A)核酸プローブと、
(B)前記核酸プローブの3’末端のヌクレオチド部分に固定化されたビーズを含む。
前記核酸プローブは、第1の塩基配列及び、前記標的核酸の全配列に相補的な第2の塩基配列を含む。
アシストプローブは、標的核酸の3’末端に隣接可能であって前記核酸プローブの第1の塩基配列の全配列に相補的な6~9merの配列と1対の自己凝集プローブの一方の配列を含む。
最初に、標的核酸と捕捉プローブを接触させ(1stハイブリダイゼーション)、次にアシストプローブを接触させる(2ndハイブリダイゼーション)(図1の2)、3))。
核酸プローブの第2の塩基配列は標的オリゴヌクレオチドの全配列と相補的な配列であるため、これらはハイブリダイズして結合し、アシストプローブは、核酸プローブの第1の塩基配列の全配列に相補的な配列であるため、これらはハイブリダイズして結合する。
本工程により、捕捉プローブと標的核酸、アシストプローブのハイブリダイゼーション生成物が得られる(図1の3))。これらの接触工程は図1では別々に行った例を示したが、同時に行ってもよい。すなわち、1stハイブリダイゼーションと2ndハイブリダイゼーションを別工程とせずに、標的核酸、捕捉プローブ、アシストプローブをほぼ同時に接触させて3者のハイブリダイゼーション生成物を得ることもできる。
ここで、標的核酸が存在しない場合は、本発明のアシストプローブの5’末端は隣接する標的核酸が存在せず、かつ、第1の塩基配列と相補的な配列が6~9塩基しか有さないため、第1の塩基配列の領域にハイブリダイズできず、また仮にハイブリダイズできたとしてもすぐに脱離してしまう。したがって、標的核酸が存在する場合の捕捉プローブによる捕捉が確実化される。
【0029】
前記ハイブリダイゼーション生成物を含む試料に、第1及び第2のオリゴヌクレオチドからなる自己凝集可能な一対のプローブを接触させて、ハイブリダイゼーション生成物と、第1及び第2のオリゴヌクレオチドが自己凝集してなるオリゴヌクレオチドポリマーとの複合体を形成する(いわゆるパルサー反応、図1の4))。
ここで、第1及び第2のオリゴヌクレオチドからなる自己凝集可能な一対のプローブは、第1のオリゴヌクレオチドが、5’末端側から順に核酸領域X、核酸領域Y、及び核酸領域Zを含むオリゴヌクレオチドであり、第2のオリゴヌクレオチドが、5’末端側から順に核酸領域X’、核酸領域Y’、及び核酸領域Z’を含み、XとX’、YとY’、ZとZ’は相互に相補的である(以下、当該核酸領域を単に、X,Y,Z,X’、Y’、Z’ということがある)。また、第1と第2のオリゴヌクレオチドの5’末端には標識物質(図1の4)中、星印)が付与されている。
ハイブリダイゼーション生成物のアシストプローブのY、Zに第2のオリゴヌクレオチドのY’、Z’がハイブリダイズし、第1のオリゴヌクレオチドのX、Y,Zに第2のオリゴヌクレオチドのX’、Y’、Z’がそれぞれハイブリダイズする。そして次々とXとX’、YとY’、ZとZ’がハイブリダイズを繰り返すことで、自己凝集プローブのオリゴヌクレオチドポリマーが形成される(図1の4))。
【0030】
前記捕捉プローブ、標的核酸及びアシストプローブとのハイブリダイゼーション生成物及び自己凝集した第1及び第2のオリゴヌクレオチドとの複合体を遠心分離法により沈殿させるなどして分離し、第1及び第2のオリゴヌクレオチドの標識物質等を検出することにより標的核酸の濃度等を測定することができる。
なお、パルサー反応を行う前のハイブリダイゼーション生成物を検出することにより標的核酸を検出することも可能である。
【0031】
パルサー法の具体例は、国際公開2013/172305号の図4図14などに示されており、ダイマー形成用プローブ等を用いて当業者常識にもとづき適宜変形して本発明の自己凝集反応に応用することが可能である。
【0032】
本発明の捕捉プローブ、標的核酸及びアシストプローブとのハイブリダイゼーション生成物及び自己凝集した第1及び第2のオリゴヌクレオチドとの複合体は、好ましくは分離した方がよく、複合体の分離方法は、特に限定されず、好ましくは、遠心分離法、吸引ろ過法が挙げられる。
捕捉プローブ及びその複合体を「遠心分離法」により沈殿させる工程は、通常、20~30℃で0.2~5分間、500~3000×gの遠心、23~28℃で0.5~2分間、800~1500×gの遠心、好ましくは、25℃で1分間、1000×gの遠心にて行う。より具体的には、ビーズの製造会社の取扱説明書に従えばよい。
【0033】
捕捉プローブ及びその複合体を「吸引ろ過法」により分離させる工程は、Biochem Biophys Res Commun. 2015 Nov 27;467(4):1012-8.に記載の方法にて実施できる。具体的には、捕捉プローブ及びその複合体を含む溶液をフィルタープレートへ移し変え、通常、20~30℃で陰圧範囲1~10in.Hgの吸引、23~28℃で1~10in.Hgの吸引、好ましくは、25℃で1~5in.Hgの吸引にて行う。吸引時間は、フィルター上から目視で液体が除去されていればよく、例えば1秒~5分間、好ましくは5秒間~1分間が挙げられる。フィルタープレートのポアサイズは、捕捉プローブの直径より小さいものが好適に用いられ、例えば1.2μm又は1.0μmが好ましい。具体的な部材の例として、フィルタープレート:MultiScreen(登録商標) HTS-BV plate (Merck Millipore、製品番号:MSBVN1250)、マニフォールド:MultiScreen(登録商標) HTS Vacuum Manifold (Merck Millipore)、吸引ポンプ:Chemical duty pump (Merck Millipore、カタログ番号:WP6110060) が挙げられる。
【0034】
(試料)
本発明の方法に使用する「試料」は、ヒト、サル、イヌ、ブタ、ラット、モルモット、又はマウスの全血、血清、血漿、リンパ液、尿、唾液、涙液、汗、胃液、膵液、胆汁、胸水、関節腔液、脳脊髄液、髄液、骨髄液などの体液もしくは肝臓、腎臓、肺、心臓などの組織等である。好ましくは、試料は、ヒトの全血、血清、血漿、又は尿である。更に好ましくは、試料は、標的核酸を含む医薬を投与されたヒトの全血、血清、血漿、又は尿である。これらは水又は緩衝液で希釈されて用いられることもある。また、本発明の試料は、既知の濃度の標的核酸を水又は緩衝液で希釈したものも含む。
【0035】
上記緩衝液としては、一般的に使用されるものであればよく、例えばトリス塩酸、ホウ酸、リン酸、酢酸、クエン酸、コハク酸、フタル酸、グルタル酸、マレイン酸、グリシン及びそれらの塩などや、MES、Bis-Tris、ADA、PIPES、ACES、MOPSO、BES、MOPS、TES、HEPES等のグッド緩衝液などが挙げられ、水としては、RNase, DNase free waterなどが挙げられる。
【0036】
本発明の第1及び第2のオリゴヌクレオチドが自己凝集してなるオリゴヌクレオチドポリマーを検出する方法は、例えば、濁度法、アガロース電気泳動法、吸光度法、蛍光測定法、電気化学発光法、フローサイトメトリー法が挙げられ、好ましくは、フローサイトメトリー法が挙げられる。
フローサイトメトリー法としては、例えば、自己凝集反応(PALSAR反応)後の反応液をフローサイトメーターの流路内に流して、複合体(捕捉プローブ-標的核酸-アシストプローブ-オリゴヌクレオチドポリマー)が1つずつ順次光源を通過するように調整し、個々の複合体が通過した際に、第1の蛍光物質が発する第1の蛍光と第2の蛍光物質が発する第2の蛍光を検出することにより行う。「第1の蛍光物質が発する第1の蛍光と第2の蛍光物質が発する第2の蛍光を検出する」とは、第1の蛍光物質が発する第1の蛍光と第2の蛍光物質が発する第2の蛍光を、同時に又は同一機会に検出することが好ましい。ここで、「同時又は同一機会に検出する」とは、1つの複合体(複数成分の複合体)に含まれる第1の蛍光物質と第2の蛍光物質が、フローサイトメーターの流路内で同時に又は順次に励起され、発せられた第1の蛍光と第2の蛍光が、当該1つの複合体から発せられた蛍光として検出されることを意味する。
より具体的には、第1の蛍光物質としては、捕捉プローブの固相が含む蛍光物質等が挙げられ、第2の蛍光物質としては、第1及び第2のオリゴヌクレオチドに付与された標識物質に特異的に結合する物質に予め結合された蛍光物質が挙げられる。このように、フローサイトメトリー法を用いて、第1の蛍光物質が発する第1の蛍光と第2の蛍光物質が発する第2の蛍光を検出することによりオリゴヌクレオチドポリマーを検出することができる。
【0037】
(検出キット)
本発明において、試料中の標的核酸を検出するキットには、少なくとも以下の構成が含まれる。
(1)標的核酸を捕捉するための捕捉プローブ
前記捕捉プローブは、
(A)核酸プローブと、
(B)前記核酸プローブの3’末端又は5’末端のヌクレオチドに隣接する固相又はアダプター若しくはリンカーとを含み、
前記核酸プローブは、第1の塩基配列と前記標的核酸の全配列若しくは部分配列に相補的な第2の塩基配列を含む、
(2)第1及び第2のオリゴヌクレオチドからなる自己凝集可能な一対のプローブ
(3)標的核酸に隣接可能であって前記核酸プローブの第1の塩基配列の全配列又は部分配列に相補的な6~9merの配列と前記第1又は第2のオリゴヌクレオチドのうち少なくとも一方の全配列若しくは部分配列、を含むアシストプローブ
各構成については、上述のとおりである。
以下、本発明をより理解しやすいように具体的な態様を実施例をもって説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例
【0038】
〔実施例1〕
1. 材料及び方法
(1) 標的核酸
測定対象の標的核酸としては、Weiらが使用したオリゴヌクレオチドGTI-2040を用いた(参考文献1参照)。GTI-2040の配列は、5'-GGCTAAATCGCTCCACCAAG-3'(配列番号1)である。オリゴヌクレオチドは日本遺伝子研究所社に合成を依頼した(HPLC精製グレード)。上記の標的核酸は、Weiらと同様に、完全S化(ホスホロチオエート化、Phosphorothioate)されている。GTI-2040についてはTE(10mM Tris-HCl(pH8.0), 1mM EDTA (pH8.0))を用いて1,000 pMに調製して用いた。標的核酸を含まないブランクサンプルも用意した。
(参考文献1)
Wei X, Dai G, Marcucci G, Liu Z, Hoyt D, Blum W, Chan KK. A specific picomolar hybridization-based ELISA assay for the determination of phosphorothioate oligonucleotides in plasma and cellular matrices. Pharm Res. 2006 Jun;23(6):1251-64.
【0039】
(2)捕捉プローブの調製
Luminex社のMicroPlexTM Microspheres(Region No.: 56、製品番号: LC10056-01)に、GTI-2040に相補的な塩基配列(20塩基,第2の塩基配列)及び任意の塩基配列(10塩基、第1の塩基配列)からなるオリゴヌクレオチドプローブ(核酸プローブ)を、3’末端のNH2修飾を介して結合させることにより調製した(捕捉プローブという)。結合方法はLuminex社のマニュアル集(xMAP(登録商標) Cookbook, 4th Edition)に従った。GTI-2040に相補的な塩基配列(20塩基)及び任意の塩基配列(10塩基)からなるオリゴヌクレオチドプローブ(核酸プローブ)として以下のGTI-2040-1A CPを用いた。
<GTI-2040-1A CP の塩基配列>
5' - ATAACTAGTGCTTGGTGGAGCGATTTAGCC -(NH2)-3'(塩基部分は配列番号2)
【0040】
(3)捕捉プローブへの標的核酸の捕捉(1stHybridization)
標的核酸10μLに、1st Hybridization反応液を10μL加え、計20μLとし、45℃で1時間反応させた。
【0041】
(3-1)1stHybridization反応液の組成
上記(2)で調製した捕捉プローブ0.25μL(500個)、5M TMAC (テトラメチルアンモニウムクロリド) 6μL、10x supplement [500mM Tris-HCl(pH8.0)、40mM EDTA(pH8.0)、8% N-ラウロイルサルコシンナトリウム] 3.2μL、1pmol/μL アシストプローブ0.04μL、Nuclease-Free Water 0.51 μL
(3-2) 1st Hybridization反応
本実施例1に使用するアシストプローブとして、核酸プローブのうち第1の塩基配列の一部又は全部に相補的な塩基配列(8、 9、又は10塩基)及びシグナル増幅用プローブ(HCP-1)と同じ塩基配列(39塩基)からなるアシストプローブ(AP1-n1、 AP1、又はAP1+n1)を用いた。
<AP1-n1 の塩基配列>
5’ - CACTAGTTCAACAATCAGGACGATACCGATGAAGGATATAAGGAGTG -(Biotin)-3’(塩基部分は配列番号3)
<AP1 の塩基配列>
5’ - CACTAGTTACAACAATCAGGACGATACCGATGAAGGATATAAGGAGTG -(Biotin)-3’(塩基部分は配列番号4)
<AP1+n1 の塩基配列>
5’ - CACTAGTTATCAACAATCAGGACGATACCGATGAAGGATATAAGGAGTG -(Biotin)-3’(塩基部分は配列番号5)
【0042】
(4)自己凝集反応(PALSAR反応)
1st Hybridization 反応後の反応液20μLに、PALSAR反応液を10μL加え、計30μLとし、30℃で1時間反応させた。
本実施例に使用する自己凝集可能な一対のプローブ(シグナル増幅用プローブともいう)の配列は、5’末端がビオチンで標識された以下のHCP-1及びHCP-2である。
<HCP-1の塩基配列>
5’-(Biotin)- CAACAATCAGGACGATACCGATGAAGGATATAAGGAGTG -3’(塩基部分は配列番号6)
<HCP-2の塩基配列>
5’-(Biotin)- GTCCTGATTGTTGCTTCATCGGTATCCACTCCTTATATC -3’(塩基部分は配列番号7)
【0043】
(4-1)PALSAR反応液の組成
5M TMAC 3μL、10x supplement [500 mM Tris-HCl(pH8.0)、40 mM EDTA(pH8.0)、8% N-ラウロイルサルコシンナトリウム] 1.6μL、20pmol/μL HCP-1 0.35μL、20pmol/μL HCP-2 0.35μL 、Nuclease-Free Water 4.7μL
【0044】
(5)蛍光検出
自己凝集反応後の反応液を1xPBS-TP [1xPBS [137mM Sodium Chloride、8.1 mM Disodium Phosphate、2.68mM Potassium Chloride、1.47mM Potassium Dihydrogenphosphate]、0.02% Tween20、1.5 ppm ProClin300]で2回洗浄した後、検出試薬[SAPE (Streptavidin-R-Phycoerythrin、Prozyme社製) 5μg/mL] を50μL加え、25℃の遮光下で10分間静置した後、1xPBS-TPで2 回洗浄した。その後1xPBS-TPを75μL加え、Luminex System (Luminex社製)でビーズ及びSAPE抱合体からの蛍光を測定し、標的核酸のシグナルを検出した。
【0045】
(6)結果
測定結果を図2に示す。核酸プローブの第1の塩基配列の8塩基又は9塩基に相補的な塩基配列及びシグナル増幅用プローブと同一の塩基配列からなるアシストプローブ(AP1-n1、AP1)を用いた場合は、標的核酸の検出感度に優れ、S/N比も高かった。一方、核酸プローブの第1の塩基配列の10塩基に相補的な塩基配列及びシグナル増幅用プローブと同一の塩基配列からなるアシストプローブ(AP1+n1)を用いた場合は、バックグラウンドの値が高くS/N比が低かった。
【0046】
〔実施例2〕
1. 材料及び方法
(1)標的核酸
測定対象の標的核酸としては、実施例1で使用したGTI-2040を用いた。GTI-2040についてはTE(10mM Tris-HCl(pH8.0), 1mM EDTA (pH8.0))を用いて1,000pMに調製して用いた。標的核酸を含まないブランクサンプルも用意した。
【0047】
(2)捕捉プローブの調製
Luminex社のMicroPlexTM Microspheres(Region No.: 43、製品番号: LC10043-01、又は Region No.: 56、製品番号: LC10056-01)に、GTI-2040に相補的な塩基配列(20塩基、第2の塩基配列)及び任意の塩基配列(7、8、9、又は10塩基、第1の塩基配列)からなるオリゴヌクレオチドプローブ(核酸プローブ)を、3’末端のNH2修飾を介して結合させることにより調製した(捕捉プローブという)。結合方法はLuminex社のマニュアル集(xMAP(登録商標) Cookbook, 4th Edition)に従った。
核酸プローブとして、GTI-2040-1-n2 CP、GTI-2040-1-n1 CP、GTI-2040-1 CP、及び GTI-2040-1A CP を用いた。
<GTI-2040-1-n2 CP の塩基配列>
5’ - ACTAGTGCTTGGTGGAGCGATTTAGCC -(NH2)-3’(塩基部分は配列番号8)
<GTI-2040-1-n1 CP の塩基配列>
5’ - AACTAGTGCTTGGTGGAGCGATTTAGCC -(NH2)-3’(塩基部分は配列番号9)
<GTI-2040-1 CP の塩基配列>
5’ - TAACTAGTGCTTGGTGGAGCGATTTAGCC -(NH2)-3’(塩基部分は配列番号10)
<GTI-2040-1A CP の塩基配列>
5' - ATAACTAGTGCTTGGTGGAGCGATTTAGCC -(NH2) -3'(塩基部分は配列番号2)
【0048】
(3)捕捉プローブへの標的核酸の捕捉(1stHybridization)
標的核酸10μLに、1st Hybridization反応液を10μL加え、計20μLとし、45℃で1時間反応させた。
【0049】
(3-1)1stHybridization反応液の組成
上記(2)で調製した捕捉プローブ0.25μL(500個)、5M TMAC 6μL、10x supplement [500mM Tris-HCl(pH8.0)、40mM EDTA(pH8.0)、8% N-ラウロイルサルコシンナトリウム] 3.2μL、1pmol/μL アシストプローブ0.04μL、Nuclease-Free Water 0.51 μL
(3-2)1stHybridization反応
本実施例2に使用するアシストプローブとして、核酸プローブの第1の塩基配列の全配列に相補的な塩基配列(7、8、9、又は10塩基)及びシグナル増幅用プローブ(HCP-1)と同じ塩基配列(39塩基)からなるアシストプローブ(AP1-n2、AP1-n1、AP1、又はAP1+n1)を用いた。
<AP1-n2 の塩基配列>
5’ - CACTAGTCAACAATCAGGACGATACCGATGAAGGATATAAGGAGTG -(Biotin)-3’(塩基部分は配列番号11)
<AP1-n1 の塩基配列>
5’ - CACTAGTTCAACAATCAGGACGATACCGATGAAGGATATAAGGAGTG -(Biotin)-3’(塩基部分は配列番号3)
<AP1 の塩基配列>
5’ - CACTAGTTACAACAATCAGGACGATACCGATGAAGGATATAAGGAGTG -(Biotin)-3’(塩基部分は配列番号4)
<AP1+n1 の塩基配列>
5’ - CACTAGTTATCAACAATCAGGACGATACCGATGAAGGATATAAGGAGTG -(Biotin)-3’(塩基部分は配列番号5)
【0050】
(4)自己凝集反応(PALSAR)
1st Hybridization 反応後の反応液20μLに、PALSAR反応液を10μL加え、計30μLとし、30℃で1時間反応させた。シグナル増幅用プローブは、実施例1と同じものを用いた。
【0051】
(4-1)PALSAR反応液の組成
5M TMAC 3μL、10x supplement [500mM Tris-HCl(pH8.0)、40mM EDTA(pH8.0)、8% N-ラウロイルサルコシンナトリウム] 1.6μL、20pmol/μL HCP-1 0.35μL、20pmol/μL HCP-2 0.35μL 、Nuclease-Free Water 4.7μL
【0052】
(5)蛍光検出
自己凝集反応後の反応液を1xPBS-TP [1xPBS [137mM Sodium Chloride、8.1 mM Disodium Phosphate、2.68mM Potassium Chloride、1.47mM Potassium Dihydrogenphosphate]、0.02% Tween20、1.5 ppm ProClin300]で2回洗浄した後、検出試薬[SAPE 5μg/mL] を50μL加え、25℃の遮光下で10分間静置した後、1xPBS-TPで2 回洗浄した。その後1xPBS-TPを75μL加え、Luminex System (Luminex社製)でビーズ及びSAPE抱合体からの蛍光を測定し、標的核酸のシグナルを検出した。
【0053】
(6)結果
測定結果を図3に示す。核酸プローブの第1の塩基配列(7~9塩基)に相補的な塩基配列(7~9塩基)及びシグナル増幅用プローブと同じ塩基配列からなるアシストプローブ(AP1-n2、AP1-n1、AP1)を用いた場合は、標的核酸の検出感度に優れ、S/N比も高かった。一方、核酸プローブの第1の塩基配列(10塩基)に相補的な塩基配列(10塩基)及びシグナル増幅用プローブと同じ塩基配列からなるアシストプローブ(AP1+n1)を用いた場合は、バックグラウンドの値が高くS/N比が低かった。
【0054】
〔実施例3〕
1. 材料及び方法
(1) 標的核酸
測定対象の標的核酸としては、実施例1で使用したGTI-2040を用いた。GTI-2040についてはTE(10mM Tris-HCl(pH8.0), 1mM EDTA (pH8.0))を用いて1,000pMに調製して用いた。標的核酸を含まないブランクサンプルも用意した。
【0055】
(2)捕捉プローブの調製
Luminex社のMicroPlexTM Microspheres(Region No.: 37、製品番号: LC10037-01)に、GTI-2040に相補的な塩基配列(20塩基、第2の塩基配列)及び任意の塩基配列(10塩基、第1の塩基配列)からなるオリゴヌクレオチドプローブ(核酸プローブ)を、3’末端のNH2修飾を介して結合させることにより調製した(捕捉プローブという)。結合方法はLuminex社のマニュアル集(xMAP(登録商標) Cookbook, 4th Edition)に従った。
核酸プローブとして、GTI-2040-tag5 CP を用いた。
<GTI-2040-tag5 CP の塩基配列>
5’ - TGGAGGAACGCTTGGTGGAGCGATTTAGCC -(NH2)-3’(塩基部分は配列番号12)
【0056】
(3)捕捉プローブへの標的核酸の捕捉(1stHybridization)
標的核酸10μLに、1st Hybridization反応液を10μL加え、計20μLとし、45℃で1時間反応させた。
【0057】
(3-1)1stHybridization反応液の組成
上記(2)で調製した捕捉プローブ0.25μL(500個)、5M TMAC 6μL、10x supplement [500 mM Tris-HCl(pH8.0)、40mM EDTA(pH8.0)、8% N-ラウロイルサルコシンナトリウム] 3.2μL、0.1pmol/μL アシストプローブ 0.4μL、Nuclease-Free Water 0.15 μL
(3-2)1stHybridization反応
本実施例3に使用するアシストプローブとして、核酸プローブの第1の塩基配列の一部に相補的な塩基配列(5、6、又は7塩基)及びシグナル増幅用プローブ(HCP-4)の一部と同じ塩基配列(40塩基)からなるアシストプローブ(AP-tag5-5-pA40、AP-tag5-6-pA40、又はAP-tag5-7-pA40)を用いた。
<AP-tag5-5-pA40 の塩基配列>
5’ - CGTTCAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA -3’(配列番号13)
<AP-tag5-6-pA40 の塩基配列>
5’ - CGTTCCAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA -3’(配列番号14)
<AP-tag5-7-pA40 の塩基配列>
5’ - CGTTCCTAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA -3’(配列番号15)
【0058】
(4)自己凝集反応(PALSAR反応)
1st Hybridization 反応後の反応液20μLに、PALSAR反応液を10μL加え、計30μLとし、30℃で1時間反応させた。
本実施例に使用するシグナル増幅用プローブの配列は、5’末端がビオチンで標識された以下のHCP-3及びHCP-4である。
<HCP-3の塩基配列>
5’-(Biotin)- CAACAATCAGGACGATACCGATGAAGTTTTTTTTTTTTTTTTTTTT -3’(塩基部分は配列番号16)
<HCP-4の塩基配列>
5’-(Biotin)- GTCCTGATTGTTGCTTCATCGGTATCAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA -3’(塩基部分は配列番号17)
【0059】
(4-1)PALSAR反応液の組成
5M TMAC 3μL、10x supplement [500mM Tris-HCl(pH8.0)、40mM EDTA(pH8.0)、8% N-ラウロイルサルコシンナトリウム] 1.6μL、20pmol/μL HCP-3 0.35μL、20pmol/μL HCP-4 0.35μL 、Nuclease-Free Water 4.7μL
【0060】
(5)蛍光検出
自己凝集反応後の反応液を1xPBS-TP [1xPBS [137mM Sodium Chloride、8.1 mM Disodium Phosphate、2.68mM Potassium Chloride、1.47mM Potassium Dihydrogenphosphate]、0.02% Tween20、1.5 ppm ProClin300]で2回洗浄した後、検出試薬[SAPE 5μg/mL] を50μL加え、25℃の遮光下で10分間静置した後、1xPBS-TPで2 回洗浄した。その後1xPBS-TPを75μL加え、Luminex System (Luminex社製)でビーズ及びSAPE抱合体からの蛍光を測定し、標的核酸のシグナルを検出した。
【0061】
(6)結果
測定結果を図4に示す。核酸プローブの第1の塩基配列の7塩基又は6塩基に相補的な塩基配列及びシグナル増幅用プローブの一部と同じ塩基配列からなるアシストプローブ(AP-tag5-7-pA40、AP-tag5-6-pA40)を用いた場合は、標的核酸の検出感度に優れ、S/N比も高かった。一方、核酸プローブの第1の塩基配列の5塩基に相補的な塩基配列及びシグナル増幅用プローブの一部と同じ塩基配列からなるアシストプローブ(AP-tag5-5-pA40)を用いた場合は、検出感度がほぼゼロであり測定できなかった。
上記実施例1~3より、アシストプローブは、標的核酸の末端に隣接可能であって核酸プローブの第1の塩基配列の全配列又は部分配列に相補的な6~9merの配列を含むことにより検出感度が高く、S/N比も高いことが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明によれば、PALSAR法を使った標的核酸の検出方法においてより感度の高い検出方法および定量方法を提供することができる。本発明の標的核酸の検出又は定量方法は、医薬品開発の探索段階における薬物動態・薬力学(PK/PD)スクリーニング試験、非臨床段階における安全性試験、薬理試験及び薬物動態試験、臨床段階において、薬物が投与された動物あるいはヒト生体試料中の薬物濃度の測定に応用することができる。
図1
図2
図3
図4
【配列表】
0006995250000001.app