(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-17
(45)【発行日】2022-02-01
(54)【発明の名称】波長変換部材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/20 20060101AFI20220125BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20220125BHJP
G02B 5/02 20060101ALI20220125BHJP
H01L 33/50 20100101ALI20220125BHJP
【FI】
G02B5/20
B32B7/023
G02B5/02 B
G02B5/02 C
H01L33/50
(21)【出願番号】P 2018081529
(22)【出願日】2018-04-20
(62)【分割の表示】P 2016509796の分割
【原出願日】2015-12-21
【審査請求日】2018-12-20
【審判番号】
【審判請求日】2020-08-18
(31)【優先権主張番号】P 2014263785
(32)【優先日】2014-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507106847
【氏名又は名称】NSマテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100121049
【氏名又は名称】三輪 正義
(72)【発明者】
【氏名】宮永 昭治
(72)【発明者】
【氏名】金海 榮一
【合議体】
【審判長】樋口 信宏
【審判官】井口 猶二
【審判官】下村 一石
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/113562(WO,A1)
【文献】特表2013-544018(JP,A)
【文献】特開2007-152847(JP,A)
【文献】特開2004-140185(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
量子ドットを有する量子ドット層と、
前記量子ドット層の外側に配置されたフィルムと、を有するシート状の波長変換部材であり、
前記フィルムの水蒸気透過度(WVTR)は、WVTR<9(g/m
2・day)であり、
前記量子ドット層は、前記量子ドットと、前記量子ドットが分散された樹脂と、前記量子ドットの分散性を向上させるための分散剤と、光散乱剤を含み、前記光散乱剤は、前記量子ドット層中に、1~10wt%含まれており、
前記フィルムは、少なくとも有機層を有し、外面にマット処理が施されており、
前記有機層は、前記有機層を前記量子ドット層側に向けた状態で、接着層を介して、前記量子ドット層と、
固着していることを特徴とする波長変換部材。
【請求項2】
前記フィルムには、前記有機層の外側に無機層が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の波長変換部材。
【請求項3】
前記有機層は、複数層設けられ、前記有機層と前記有機層との間に無機層が介在していることを特徴とする請求項1に記載の波長変換部材。
【請求項4】
前記有機層は、PETフィルムで形成されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の波長変換部材。
【請求項5】
前記無機層は、SiO
2層で形成されることを特徴とする請求項2又は3に記載の波長変換部材。
【請求項6】
前記量子ドット層には増粘剤が含まれていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の波長変換部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バックライト等に使用される波長変換部材に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記の特許文献1には、量子ドットフィルム及びそれを用いた照明装置に関する発明が開示されている。
【0003】
例えば特許文献1の
図6Aには、QD(量子ドット)蛍光体材料604と、その両側に配置されたバリア層620、622とを有する照明装置600が開示されている。バリア層を設けることで、QDの光安定性を確保でき、昇温や湿気、その他の有害な環境条件からQDを保護できるとしている(特許文献1の[0072]等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された発明では、バリア層の構成と発光強度の経時変化との関係について特に言及がなされていない。すなわち、特許文献1では、発光強度の経時変化の観点により、バリア層の構成を規制していない。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、特に、従来に比べて、発光強度の経時変化を抑制することができる波長変換部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明における波長変換部材は、量子ドットを有する量子ドット層と、前記量子ドット層の外側に配置されたフィルムと、を有するシート状の波長変換部材であり、前記フィルムの水蒸気透過度(WVTR)は、WVTR<9(g/m2・day)であり、前記量子ドット層は、前記量子ドットと、前記量子ドットが分散された樹脂と、前記量子ドットの分散性を向上させるための分散剤と、光散乱剤を含み、前記光散乱剤は、前記量子ドット層中に、1~10wt%含まれており、前記フィルムは、少なくとも有機層を有し、外面にマット処理が施されており、前記有機層は、前記有機層を前記量子ドット層側に向けた状態で、接着層を介して、前記量子ドット層と、固着していることを特徴とする。
【0008】
本発明では、前記水蒸気透過度は、0.1(g/m2・day)以下であることが好ましい。
【0009】
また本発明では、前記バリア層は前記量子ドット層の全周に形成されていることが好ましい。
【0010】
また本発明では、前記量子ドット層に対する同じ側の脇にて前記バリア層の巻き始端と巻き終端とが接合されていることが好ましい。
【0011】
また本発明では、前記量子ドット層の両脇で前記量子ドット層の上下両側に配置された前記バリア層同士が接合されていることが好ましい。
【0012】
また本発明では、前記量子ドット層は成形体で形成され、あるいはインクジェット法により形成されることが好ましい。
【0013】
また本発明では、前記バリア層は、少なくとも有機層を有して形成されていることが好ましい。これにより、バリア層の取り扱いを容易にできる(ハンドリング性の向上)。
【0014】
また本発明では、前記バリア層は、積層構造からなり、前記量子ドット層と対向する最内側層に前記有機層が形成されていることが好ましい。これにより、量子ドット層をバリア層上に形成しやすくでき、また、バリア層と量子ドット層との間の密着性を向上させることができる。
【0015】
また本発明では、前記バリア層には、前記最内側層の外側に無機層が設けられていることが好ましい。これによりバリア層のバリア特性を効果的に向上させることができる。
【0016】
また本発明では、前記有機層は、複数層設けられ、前記有機層と前記有機層との間に無機層が介在していることが好ましい。このようにバリア層の内側層及び外側層を有機層とし、各有機層の間に無機層を介在させた3層以上の構成とすることで、ハンドリング性、バリア特性、及び、バリア層と量子ドット層との間の密着性等を効果的に向上させることができる。本発明では、前記無機層は、SiO2層で形成されることが好ましい。
【0017】
また本発明では、前記有機層は、前記量子ドット層と接して形成されていることが好ましい。
【0018】
また本発明では、前記有機層は、PETフィルムで形成されることが好ましい。
【0019】
また本発明では、前記量子ドット層には増粘剤が含まれていることが好ましい。例えば、量子ドットの分散性を向上させるために、分散剤を添加すると粘度が低下しやすくなるため、増粘剤を添加して粘度調整が行われていることが好ましい。これにより、量子ドット層の厚みを所定厚で均一に形成でき、良好な蛍光特性を得ることができる。
【0020】
また本発明では、前記量子ドット層には光散乱剤が含まれていてもよい。また、前記バリア層の表面にはマット処理が施されていてもよい。このように、量子ドット層に光散乱剤を含有したり、あるいはバリア層の表面をマット処理することで、光の散乱を促進することができる。
【0021】
また本発明における波長変換部材の製造方法は、量子ドットを有する量子ドット層の少なくとも両側に前記バリア層に水蒸気透過度が9(g/m2・day)よりも低い材質からなるバリア層を形成することを特徴とする。本発明では、水蒸気透過度が9(g/m2・day)よりも低い材質からなるバリア層を用意し、量子ドット層の少なくとも両側にバリア層を形成する構成とした。これにより、製造工程を容易化できるとともに、発光強度の経時変化を従来に比べて効果的に抑制することが可能な波長変換部材を製造することができる。
【0022】
また本発明における波長変換部材の製造方法は、量子ドットを有する量子ドット層の全周を前記バリア層にて覆うことを特徴とする。これにより、発光強度の経時変化を従来に比べてより効果的に抑制することが可能な波長変換部材を製造することができる。
【0023】
また本発明では、下側のバリア層の表面に間隔を空けて複数の前記量子ドット層を形成する工程、前記下側のバリア層の表面から複数の前記量子ドット層の表面にかけて上側のバリア層を形成する工程、前記量子ドット層の間の前記下側のバリア層と前記上側のバリア層とを切断して各量子ドット層毎に分断する工程、を有することが好ましい。これにより、簡単な工程で複数の波長変換部材を同時に得ることができる。
【0024】
また本発明では、量子ドット層を成形体で形成し、あるいはインクジェット法により形成することが好ましい。
【0025】
また本発明では、前記バリア層は有機層を有し、前記有機層を前記量子ドット層と対向する最内側に向けることが好ましい。これにより、バリア層と量子ドット層との間の密着性を向上させることができるとともに、有機層の表面の濡れ性は高く、量子ドット層の形成を容易化できる。
【0026】
また本発明では、複数の有機層と、前記有機層と前記有機層との間に介在する無機層とを有する前記バリア層を用いて、前記量子ドット層と対向する最内側及び前記バリア層の最表面を前記有機層とすることが好ましい。バリア層の両面に有機層が存在することでハンドリング性を良好にでき、また、量子ドット層の形成を容易化できる。さらに無機層を含むことで、バリア層のバリア特性を効果的に向上させることができる。
【0027】
また本発明では、前記量子ドット層に、増粘剤を含めることが好ましい。これにより、量子ドット層を程度な粘度に調整でき、量子ドット層をバリア層の表面に所定厚にて簡単に形成できる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の波長変換部材によれば、発光強度の経時変化を従来に比べて効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明における第1の実施の形態を示す波長変換部材の縦断面図である。
【
図2】本発明における第2の実施の形態を示す波長変換部材の縦断面図である。
【
図3】本発明における第3の実施の形態を示す波長変換部材の縦断面図である。
【
図4】本発明における第4の実施の形態を示す波長変換部材の縦断面図である。
【
図5】本発明における第5の実施の形態を示す波長変換部材の縦断面図である。
【
図6】本発明における第6の実施の形態を示す波長変換部材の縦断面図である。
【
図7】本発明における第7の実施の形態を示す波長変換部材の縦断面図である。
【
図8】本発明における第8の実施の形態を示す波長変換部材の縦断面図である。
【
図9】本発明における第9の実施の形態を示す波長変換部材の縦断面図である。
【
図10】本発明における第10の実施の形態を示す波長変換部材の縦断面図である。
【
図11】本発明における第11の実施の形態を示す波長変換部材の縦断面図である。
【
図12】本発明における第12の実施の形態を示す波長変換部材の縦断面図である。
【
図13】本発明における第13の実施の形態を示す波長変換部材の縦断面図である。
【
図14】本実施の形態の波長変換部材の斜視図である。
【
図15】本実施の形態の波長変換部材を用いた表示装置の縦断面図である。
【
図16】本実施の形態の波長変換部材を用いた、
図15とは異なる表示装置の縦断面図である。
【
図17】本実施の形態の波長変換部材を用いた導光部材の縦断面図である。
【
図18】本実施の形態の波長変換部材を製造するための製造装置を示す概念図である。
【
図19】本発明における第8の実施の形態を示す波長変換部材の製造方法を説明するための概念図である。
【
図20】本発明における第9の実施の形態を示す波長変換部材の製造方法を説明するための概念図である。
【
図21】本発明における第10の実施の形態を示す波長変換部材の製造方法を説明するための概念図である。
【
図23】各試料に対する、経過時間と青色光強度(450nm面積)との関係を測定したグラフである。
【
図24】各サンプルに対する、経過時間と緑色光強度(緑面積)との関係を測定したグラフである。
【
図25】各サンプルに対する、経過時間とCIE系表色図のx座標との関係を示すグラフである。
【
図26】各サンプルに対する、経過時間とCIE表色系のy座標との関係を示すグラフである。
【
図27】各サンプルに対する、経過時間と規格化照度との関係を示すグラフである。
【
図28】各サンプルに対する、経過時間とCIE表色系のx座標との関係を示すグラフである。
【
図29】各サンプルに対する、経過時間とCIE表色系のy座標との関係を示すグラフである。
【
図30】各サンプルに対する、経過時間と規格化照度との関係を示すグラフである。
【
図31】サンプル9からサンプル11に対する、経過時間と青色光強度(450nm面積)との関係を測定したグラフである。
【
図32】サンプル9からサンプル11に対する、経過時間と緑色光強度(緑面積)との関係を測定したグラフである。
【
図33】サンプル9からサンプル11に対する、経過時間と赤色光強度(赤面積)との関係を測定したグラフである。
【
図34】サンプル9からサンプル11に対する、経過時間とCIE表色系のx座標との関係を示すグラフである。
【
図35】サンプル9からサンプル11に対する、経過時間とCIE表色系図のy座標との関係を示すグラフである。
【
図36】サンプル12からサンプル14に対する、経過時間と青色光強度(450nm面積)との関係を測定したグラフである。
【
図37】サンプル12からサンプル14に対する、経過時間と緑色光強度(緑面積)との関係を測定したグラフである。
【
図38】サンプル12からサンプル14に対する、経過時間と赤色光強度(赤面積)との関係を測定したグラフである。
【
図39】サンプル12からサンプル14に対する、経過時間とCIE表色系のx座標との関係を示すグラフである。
【
図40】サンプル12からサンプル14に対する、経過時間とCIE表色系のy座標との関係を示すグラフである。
【
図41】サンプル9に対する、発光スペクトルである。
【
図42】サンプル10に対する、発光スペクトルである。
【
図43】サンプル11に対する、発光スペクトルである。
【
図44】サンプル12に対する、発光スペクトルである。
【
図45】サンプル13に対する、発光スペクトルである。
【
図46】サンプル14に対する、発光スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の一実施の形態(以下、「実施の形態」と略記する。)について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0031】
図1は、本発明における第1の実施の形態を示す波長変換部材の縦断面図である。
図1Aに示すように、波長変換部材1は、量子ドットを有する量子ドット層2と、量子ドット層2の両側に形成されたバリア層3、4と、を有して構成される。
図14に示すように波長変換部材1は、例えば、薄い板状にて形成されたシート部材である。一般的に「シート」とは、その厚さが長さ及び幅の割に小さい構成とされる。波長変換部材1は可撓性の有無を問わないが可撓性であることが好適である。波長変換部材1は、単にシートと呼ばれることがあり、あるいはフィルムやフィルムシートなどと呼ばれることもある。ただし本明細書において、「フィルム」とは、可撓性のあるシート物であると定義される。また、波長変換部材1は一定厚で形成されていても、厚みが場所によって変化していたり、長さ方向や幅方向に向かって徐々に変化する、あるいは段階的に変化する構成であってもよい。波長変換部材1の長さ寸法L、幅寸法W、及び厚さ寸法Tは、限定されるものでなく、製品によって種々寸法は変更される。例えば、テレビのように大型の製品のバックライト用として用いる場合もあれば、スマートフォンのように小型の携帯機器のバックライト用として用いる場合もあり、したがって製品に合わせて大きさが決定されることになる。
【0032】
量子ドット層2は多数の量子ドットを含むが、量子ドット以外に蛍光顔料、蛍光染料等が含まれていてもよい。
【0033】
量子ドット層2は、量子ドットを分散した樹脂組成物により形成されることが好ましい。樹脂(バインダー)としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレンテレフタレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミドイミド、ポリメチルペンテン、液晶ポリマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ジアリルフタレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド、ポリウレタン、シリコーン樹脂、スチレン系熱可塑性エラストマー又は、これらのいくつかの混合物等を使用することができる。例えばウレタン-アクリル系樹脂、ウレタンアクリレート、スチレン系熱可塑性エラストマー等を好ましく適用できる。スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、株式会社クラレ ハイブラー(登録商標)を例示できる。
【0034】
量子ドットの構成及び材質を限定するものではないが、例えば、本実施の形態における量子ドットは、直径が2~数十nmの半導体粒子のコアを有することができる。また、量子ドットは、半導体粒子のコアに加えて、コアの周囲を被覆するシェル部を有することができる。半導体粒子のコアの直径は、2~20nmであってもよいし、好ましくは2~15nmであってもよい。コアの材質を特に限定するものではない。例えば、コアには、少なくともZnとCdとを含有するコア材、Zn、Cd、Se及びSを含有するコア材、ZnCuInS、CdS、ZnSe、ZnS、CdSe、InP、CdTe、これらのいくつかの複合物等の使用が可能である。
【0035】
量子ドットには、例えば、蛍光波長が約520nm(緑色)及び約660nm(赤色)の量子ドットが含まれている。このため、
図1に示すように光入射面1aから青色の光が入射されると、量子ドットによって、青色の一部が、緑色又は赤色に変換される。これによって、光出射面1bから白色の光を得ることができる。
【0036】
量子ドット層2は、例えば、フィルム状のバリア層の表面に量子ドットを分散した樹脂組成物を塗布して形成したり、あるいは、予め所定形状に成形したものとして構成される。
【0037】
図1Aに示すように、バリア層3、4は夫々、量子ドット層2の両側に配置されている。
図1Bに示すように、バリア層3、4は、量子ドット層2の両面に接着層7を介して接合することができる。このようにバリア層3、4を設けることで、量子ドット層2の両面は保護され、耐環境性(耐久性)の向上を図ることができる。従来においても量子ドット層の両側にバリア層を配置する構成は考えられていた(特許文献1)。しかしながら、バリア層の構成を、波長変換部材の発光強度の経時変化を抑制する観点にて規制したものでなかった。
【0038】
そこで本実施の形態では、バリア層3、4の水蒸気透過度を、9(g/m2・day)よりも低く設定した。ここで「水蒸気透過度」は、JIS-K7129(2008年)に基づいて測定できる。具体的には、水蒸気透過度を、感湿センサ法、赤外線センサ法又はガスクロマトグラフ法を用いて測定できるが、これらに限定されるものではない。本実施の形態では、バリア層3、4の水蒸気透過度は、5(g/m2・day)以下であることが好ましく、3(g/m2・day)以下であることがより好ましく、1(g/m2・day)以下であることが更に好ましく、0.1(g/m2・day)以下であることが更に好ましく、0.01(g/m2・day)以下であることが更に好ましい。水蒸気透過度は、6×10-3(g/m2・day)以下であることが最も好ましい。
【0039】
このように、バリア層3、4の水蒸気透過度を規制したことで、従来に比べて、発光強度の経時変化を効果的に抑制することができる。例えば、後述する実験結果に示すように、緑色の蛍光波長を有する量子ドットを用いたとき、水蒸気透過度が9(g/m2・day)のバリア層を用いた試料では、時間経過に伴って徐々に青色(入射光)の蛍光波長の発光強度が強くなっていき、一方、緑色の蛍光波長の発光強度が急激に弱くなった。なお耐久試験条件として、温度を60℃、湿度を90%とした。
【0040】
バリア層3、4の水蒸気透過度が高いことで、量子ドット層2に到達する水蒸気量が増え、量子ドット層2に含まれる量子ドットが劣化しやすくなる。このため、本実施の形態では、劣悪な環境や急激な環境変化から量子ドットを保護すべく、バリア層3、4の水蒸気透過度を9(g/m2・day)よりも小さくした。これにより、量子ドットの劣化を抑制でき、発光強度の経時変化を効果的に抑制することができる。なお、後述する実験では、バリア層3、4の水蒸気透過度を、0.1(g/m2・day)以下とすれば、より効果的に、発光強度の経時変化を抑制できることが証明されている。
【0041】
図1Bでは、量子ドット層2とバリア層3、4との間が接着層7を介して接合されるが、
図1Cに示すように、接着層7を無くし、量子ドット層2´の両側に直接、バリア層3、4を接合することも可能である。
【0042】
図1Cの構成では、例えば、量子ドット層2´に接着剤成分を含ませることで、量子ドット層2´の両面にバリア層3、4を接合させることが可能になる。これにより、波長変換部材1のシート厚を薄くでき、例えば、100μm以下に調整することが可能である。
【0043】
また
図1Bに示すように、接着層7を設ける構成においても、例えば、量子ドット層2をカレンダー成形にて形成することで、量子ドット層2を支持する基材が必要ないうえ、量子ドット層2のシート厚を薄く形成でき、具体的には約70μm以下で形成でき、波長変換部材1のシート厚を薄く形成することが可能である。
【0044】
次に、バリア層3、4の水蒸気透過度が9(g/m
2・day)よりも小さいことに加えて、本実施の形態における好ましいバリア層3、4の材質及び構成について説明する。なお、以下の実施の形態では、
図1B、
図1Cのように、接着層の有無や量子ドット層の状態を限定するものではない。
【0045】
図2では、バリア層3、4が有機層5の単層で形成されている。有機層5は樹脂フィルムを構成し、このようにバリア層3、4が樹脂フィルムとして存在するため、バリア層3、4の取り扱いを容易にできる。また、
図2では有機層5と量子ドット層2とが当接した状態とされている。このとき、有機層5の表面は濡れ性に優れており、量子ドット層2を塗布形成する際に、量子ドット層2をバリア層3、4の表面に所定厚にて簡単に形成することができる。また熱圧着等により、量子ドット層2と有機層5との間の密着性を向上させることができる。本実施の形態では、有機層5は、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムであることが好ましい。これにより、高い光透過性を有しつつ、上記した取扱い性(ハンドリング性)や量子ドット層2との密着性等をより効果的に向上させることができる。
【0046】
また
図3では、バリア層3、4は有機層5と無機層6との積層構造で形成されている。このとき、バリア層3、4の量子ドット層2と接する側の最内側層に有機層5が形成され、最内側層の外側(最表面層)に無機層6が形成されている。有機層5は、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムであることが好ましい。無機層6は、SiO
2層であることが好ましい。また、無機層6は、窒化珪素(SiN
x)、酸化アルミ(Al
2O
3)、酸化チタン(TiO
2)若しくは酸化珪素(SiO
2)の層、または、これらの積層であってもよい。このように、有機層5を備えることで、バリア層3、4の取り扱いを容易化できる。また、有機層5をバリア層3、4の内側に配置したことで、有機層5と量子ドット層2とを当接させることができる。よって
図2と同様に、塗布形成の際、量子ドット層2の形成を容易化でき、また量子ドット層2と有機層5との間の密着性を向上させることができる。更に
図3では、バリア層3、4に無機層6を設けたことで、バリア層3、4が薄くても、優れたバリア特性を得ることができる。ここでいうバリア特性とは、水蒸気透過度やガスバリアを指し、本実施の形態では、バリア層3、4の膜厚を数十μm程度に薄くしても、バリア層3、4の水蒸気透過度を9(g/m
2・day)よりも低くすることが可能になる。ガスバリア性は、酸素透過率で評価してもよい。
図3では、バリア層3、4は、1層の有機層5と1層の無機層6との2層構造であるが、複数の有機層5と複数の無機層6とを交互に積層した構成(ただしバリア層3、4の最内側層は有機層5であることが好ましい)とすることができる。
【0047】
また
図4Aでは、バリア層3、4は、複数の有機層5と、各有機層5の間に介在する無機層6との積層構造で形成されている。有機層5は、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムであることが好ましい。また有機層5には拡散剤を含むことが好ましい。なお、量子ドット層2と有機層5との間に拡散促進層を形成することもできる。また、無機層6は、SiO
2層であることが好ましい。また、無機層6は、窒化珪素(SiN
x)、酸化アルミ(Al
2O
3)、酸化チタン(TiO
2)若しくは酸化珪素(SiO
2)の層、または、これらの積層であってもよい。
図4Aでは、バリア層3、4は夫々、2層の有機層5と1層の無機層6との3層構造であるが、5層以上とすることができる。
【0048】
図4Aでは、
図2に示すバリア構造における利点と、
図3に示すバリア構造における利点の双方を得ることができる。すなわち、
図4Aに示すようにバリア層3、4の最内側層と最表面層とが有機層5で形成される。したがって、バリア層3、4の取り扱いをより効果的に容易化させることができ、更に、バリア層3、4と量子ドット層2との間の密着性や量子ドット層2の形成容易性、バリア層3、4のバリア特性を効果的に向上させることができる。
【0049】
なお
図4Aに代えて、例えば各バリア層3、4を、無機層6/有機層5/無機層6の積層構造とすることもできる。この形態では、各バリア層3、4に複数の無機層6を配置するため、各バリア層3、4のバリア特性をより優れたものにできる。
【0050】
上記では、量子ドット層2の両側の夫々に一つずつバリア層3、4が配置された構成である。すなわち、夫々一つのバリア層3、4の層構造が
図2に示すように単層構造や、
図3や
図4Aに示すように積層構造であるとの違いがあるだけであり、各バリア層3、4の水蒸気透過度に代表されるバリア特性は例えば公証値とされる。
【0051】
一方、
図4Bでは、量子ドット層2の両側に夫々、複数のバリア層3、4、7、8が積層された構成である。各バリア層3、4、7、8は、例えば、
図2、
図3、
図4Aに示す単層構造や積層構造で形成されており、バリア層3とバリア層7との間、及び、バリア層4とバリア層8との間は接着剤等で接合された状態とされている。例えば、各バリア層3、4、7、8は、有機層(例えば、PETフィルム)/無機層(例えば、SiO
2)の積層構造であり、無機層を量子ドット層2側の内側に向けて、有機層を外側に向けて積層する。したがって、
図4Bは、例えば図示下側から上方に向かって、バリア層8(有機層/無機層)/バリア層4(有機層/無機層)/量子ドット層2/バリア層7(無機層/有機層)/バリア層3(無機層/有機層)の順に積層されている。
【0052】
このように複数のバリア層3、4、7、8を積層することにより、各バリア層3、4、7、8に低いバリア特性のものを使用しても、ばらつきを小さくでき、バリア特性を安定して向上させることができる。
【0053】
また、上記では量子ドット層2の両側に配置されたバリア層の積層構造が対称構造であったが、非対称であってもよい。
【0054】
また波長変換部材1の光の散乱性を向上させるべく、次に示す処理が施されていてもよい。すなわち
図5に示す実施の形態では、バリア層3、4の表面がマット処理されている。例えば、バリア層3、4を、無機層/有機層/マット層として形成することができる。これにより、バリア層3、4の表面3a、4aは凹凸形状となっている。マット処理は、バリア層3又はバリア層4の表面のいずれかに行われていてもよい。あるいは、
図6に示すように、量子ドット層2中に光散乱剤8を含有させてもよい。光散乱剤8は特に材質を限定するものでないが、SiO
2、BN、AlN等の微粒子などを提示できる。一例として、光散乱剤8は、量子ドット層2に対して、1~10wt%含まれる。また、光散乱剤8はバリア層3、4に含まれていてもよい。このとき、量子ドット層2に含まれる光散乱剤8の濃度と、バリア層3、4に含まれる光散乱剤の濃度は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
図5、
図6に示すバリア層3、4は、
図2~
図4のどの構成であってもよい。また、バリア層3又はバリア層4の表面はマット処理され、かつ量子ドット層2は光散乱剤8を含有していてもよく、さらにバリア層3又はバリア層4は光散乱剤8を含んでいてもよい。
【0055】
また
図7に示す別の実施の形態では、量子ドット層2に増粘剤9が含まれている。増粘剤9の材質は特に限定されるものでないが、カルボキシビニルポリマー、カルボキシルメチルセルロース、アクリル酸メチルエステル共重合体、ベントナイト(アルミニウムシリケート)若しくはヘクトライト(マグネシウムシリケート)系添加物等を例示できる。増粘剤9を含めることで、量子ドット層2を構成する樹脂組成物を適度な粘度に調整でき、量子ドット層2を所定厚及び所定形状に形成することが容易にできる。
【0056】
図6、及び
図7において、バリア層3、4が
図5と同様にマット処理されていてもよい。
【0057】
また本実施の形態では量子ドット層2に含まれる量子ドットの分散性を向上させるために分散剤が含まれていることが好ましい。分散剤の材質を特に限定するものでないが、エポキシ樹脂系、ポリウレタン系、ポリカルボン酸塩系、ナフタレンスルホン酸塩のホルマリン縮合系ポリマー系、ポリエチレングリコール系、ポリカルボン酸の部分アルキルエステル系化合物系、ポリエーテル系、ポリアルキレンポリアミン、アルキルスルホン酸塩系、四級アンモニウム塩系、高級アルコールアルキレンオキサイド系、多価アルコールエステル系、アルキルポリアミン系、又は、ポリリン酸塩系の分散剤等を用いることができ、具体的にはビックケミー・ジャパン社製のDISPERBYK(登録商標)を例示できる。
【0058】
以下の表1に示すように、液状の樹脂に量子ドットを混入して分散すると、粘度が低下することがわかった。なお粘度測定の際のせん断速度を15/s~500/sとした。また表に示す粘度の単位は(mPa・sec)である。
【0059】
【0060】
したがって量子ドット層2の形成が容易なように樹脂の粘度を所定の範囲に保つために、上記した増粘剤を添加するなどして、粘度調整を行うことが好ましい。なお表1に示す粘度の値はあくまで一例であり、必要とされる粘度に適宜調整可能である。
【0061】
図1から
図7に示す実施の形態では、少なくとも量子ドット層2の上下両側にバリア層が配置された構成であり、量子ドット層2の両脇(量子ドット層2に対する図示左右側)については特に規定しない。一方、次に説明する構成では、バリア層は、量子ドット層2の全周に形成されている。
図8は、本発明における第8の実施の形態を示す波長変換部材の縦断面図である。量子ドット層2の全周をバリア層81で覆うことにより、量子ドット層2の全周は保護され、
図1に示すように量子ドット層2の上下両側のみを保護するよりも、より耐久性の向上を図ることができる。これにより、量子ドット層2の劣化を適切に抑制できる。
図8に示すように、量子ドット層2の上面80において、バリア層81の巻き始端82と巻き終端83が重ねられている。当然のことながら、巻き始端82と巻き終端83が重ねられる位置は、量子ドット層2の上面80、下面、右側面、及び、左側面のどの位置であってもよい。巻き始端82と巻き終端83が重ねられた領域では、例えば、熱圧着及び接着により、巻き始端82と巻き終端83との間が接合される。
図8に示す構成では、量子ドット層2の一面と対向する位置に巻き始端82と巻き終端83とを重ねているため、バリア層81を無駄なく使用することができる。
【0062】
図8に示す波長変換部材60の全体的な形状を特に限定するものでなく、スティック状やブロック状、チップ状等であり、あるいは、
図8に示す量子ドット層2の図示横方向の長さ寸法をシート状に長く延ばしたものであてもよい。
【0063】
図9は、本発明における第9の実施の形態を示す波長変換部材の縦断面図である。
図9では、バリア層81が量子ドット層2の全周を覆っており、量子ドット層2に対する同じ側の脇(量子ドット層2に対する図示右側)にて、バリア層81の巻き始端82と巻き終端83とが熱圧着等により接合されている。このように、バリア層81の巻き始端82と巻き終端83とが、量子ドット層2に対する同じ側の脇にて接合する構成とすることで、巻き始端82と巻き終端83との接合を、量子ドット層2に影響を与えない領域で行うことができる。例えば、巻き始端82と巻き終端83とを熱圧着して接合する際、量子ドット層2が加熱されることを防止でき、量子ドット層2に対する熱的影響を抑制することができる。なお、巻き始端82と巻き終端83は接着により接合されてもよい。
【0064】
図10は、本発明における第10の実施の形態を示す波長変換部材の縦断面図である。
図10では、下側のバリア層85上に量子ドット層2が設けられ、下側のバリア層85と量子ドット層2と、を覆うように上側のバリア層86が設けられている。そして、量子ドット層2の上下両側に配置されたバリア層85、86同士が、量子ドット層2の両脇(量子ドット層2に対する図示右側及び左側)で接着や熱圧着等により接合される。このように、量子ドット層2の両脇にて各バリア層85、86間の接合を行うため、量子ドット層2に対する接合工程の影響を抑制することができる。また
図10の構成では、
図8及び
図9と異なって、バリア層85、86を二つに分け、各バリア層85、86の間に量子ドット層2をサンドイッチする構成であり、
図8、
図9に示す構成のように量子ドット層2の全周をバリア層81で巻く必要がない。従って、量子ドット層2の全周にバリア層が形成された波長変換部材60を容易に作製することができ、
図10に示す構成は、波長変換部材60の大量生産に適している。
【0065】
図1から
図10において、例えば量子ドット層2は成型体で形成される。すなわち量子ドット層2を例えば射出成形により形成し、成形体としての量子ドット層2に対してバリア層を配置する。量子ドット層2を成形体で形成することで、様々な形状の波長変換部材を簡単且つ適切に形成することができる。本実施の形態では、量子ドット層2は成形体で形成される構成に限定されるものでなく、塗布形成されたものであってもよい。塗布の場合には、予めバリア層を用意しておき、バリア層の表面に量子ドット層2を塗布により形成する。塗布には、インクジェット法やディスペンサ法を例示できるが、特にインクジェット法であることが好ましい。
【0066】
図11から
図13は、量子ドット層62がインクジェット法により形成されている。
図11に示す波長変換部材61では、量子ドット層62が、インクジェット法で形成されるとともに、量子ドット層62に対するバリア層81の構成は
図8と同様である。また
図12に示す波長変換部材61では、量子ドット層62が、インクジェット法で形成されるとともに、量子ドット層62に対するバリア層81の構成は
図9と同様である。また
図13に示す波長変換部材61では、量子ドット層62が、インクジェット法で形成されるとともに、量子ドット層62に対するバリア層81の構成は
図10と同様である。
【0067】
量子ドット層62をインクジェット法により作製することにより、量子ドット層62の膜厚を非常に薄く形成できる。この結果、
図11から
図13に示すように、波長変換部材61の表面61aを平坦化することができる。
【0068】
本実施の形態の波長変換部材1、60、61は、例えば、
図15に示すバックライト装置55に組み込むことができる。
図15から
図17では、波長変換部材1の場合を例示する。
図15では、複数の複数の発光素子20(LED)と、発光素子20に対向する本実施の形態の波長変換部材1とを有してバックライト装置55が構成されている。
図15に示すように、各発光素子20は、支持体52の表面に支持されている。
図15では、バックライト装置55が、液晶ディスプレイ等の表示部54の裏面側に配置されて、表示装置50を構成している。
【0069】
なお
図15には図示しないが、発光素子20と表示部54との間には波長変換部材1の他に、光を拡散する拡散板、及び、その他のシート等が介在していてもよい。
【0070】
波長変換部材1が、
図14に示すようにシート状で形成される場合、1枚のシート状の波長変換部材1を、
図15に示すように発光素子20と表示部54との間に配置してもよいが、例えば、所定の大きさとなるように、複数枚の波長変換部材1を繋ぎ合わせてもよい。以下、複数の波長変換部材1を、タイリングによって繋ぎ合わせた構成を、複合波長変換部材という。
【0071】
ここで複合波長変換部材を
図15の表示装置50の波長変換部材1に代えて配置するとともに、拡散板を発光素子20と複合波長変換部材との間に配置した構成、すなわち発光素子20/拡散板/複合波長変換部材/表示部54の構成について考察する。係る構成では、発光素子20から放射されて拡散板にて拡散された光が複合波長変換部材に入射される。拡散板で拡散された光が複合波長変換部材に入射するので、発光素子20からの距離による光の強度分布が抑えられる。また、拡散板が無い場合に比べて、発光素子20と複合波長変換部材との距離が遠くなるので、発光素子20が発する熱の、複合シートに含まれる量子ドットに対する影響が小さくなる。
【0072】
これに対して、
図16に示すように、発光素子20/複合波長変換部材21/拡散板22/表示部54の順に配置することもできる。これによれば、各波長変換部材1の繋ぎ目において、乱反射、又は、繋ぎ目から進入した水蒸気による量子ドットの劣化などに起因する発光色のムラが生じた場合でも、表示部54の表示に色ムラが生じるのを適切に抑制することができる。すなわち、複合波長変換部材21から放出された光は拡散板22で拡散された後に、表示部54に入射されるので、表示部54の表示における色ムラが抑制ができる。
【0073】
なお複合波長変換部材21を用いる場合は、
図16に示す表示装置への適用に係らず、例えば、照明などに複合波長変換部材21を用いるときにも複合波長変換部材21の光出射面側に拡散板を配置して用いることが好ましい。
【0074】
あるいは
図17に示すように、導光板40の表面、及び、導光板40と発光素子20との間の少なくとも一方に、本実施の形態の波長変換部材1が設けられて導光部材を構成していてもよい。
図17に示すように、導光板40の側面には、発光素子20(LED)が配置されている。なお本実施の形態の波長変換部材1の用途は、
図15、
図16及び
図17に限定されるものではない。
【0075】
本実施の形態では、波長変換部材1の発光強度の経時変化を従来に比べて効果的に抑制することができる。したがって、本実施の形態の波長変換部材1をバックライト装置55や導光部材等して用いたときの波長変換特性を安定させることができ、バックライト装置55や導光部材の長寿命化を図ることができる。
【0076】
また本実施の形態の波長変換部材1は可撓性とすることができる。したがって波長変換部材1を湾曲した表面等に適切に設置することができる。
【0077】
なお本実施の形態の波長変換部材1を、上記したバックライト装置や導光部材以外に、照明装置や光源装置、光拡散装置、光反射装置等にも適用することができる。
【0078】
また
図15、
図16、
図17では、
図11から
図13に示す量子ドット層62がインクジェット法で形成された波長変換部材61を用いることも可能である。
図1から
図13に示す波長変換部材1、60、61はガラスキャピラリーの内部に配置されていてもよい。
【0079】
図18は、本実施の形態の波長変換部材を製造するための製造装置を示す概念図である。
図18に示すように、バリア層3となる樹脂フィルム10を送り出す第1の原反ロール30と、バリア層4となる樹脂フィルム11を送り出す第2の原反ロール31と、巻き取りロール32と、一対のニップロール33、34により構成される圧接部35と、塗布手段36と、加熱部38と、を有して構成される。
【0080】
図18に示すように、第1の原反ロール30から水蒸気透過度が9(g/m
2・day)よりも小さい樹脂フィルム10を送り出し、樹脂フィルム10の表面に、塗布手段36を用いて、量子ドットを含む樹脂組成物37を塗布する。樹脂組成物37の塗布方法としては、公知の塗布コーターや含浸塗布コーターを用いた塗布方法が挙げられる。例えば、グラビアコーター、ディップコーター、コンマナイフコーター等を例示できる。また樹脂組成物37をインクジェット法で塗布することもできる。
【0081】
図18に示すように、樹脂組成物37が表面に塗布された樹脂フィルム10は、ヒータ等が設置された加熱部38により加熱される。これにより樹脂組成物37内に含まれる溶媒が蒸発し、この時点で量子ドット層2がある程度固形化される。
【0082】
続いて、
図18に示すように、第2の原反ロール31から送り出された水蒸気透過度が9(g/m
2・day)よりも小さい樹脂フィルム11が、量子ドット層2の露出表面に当接され、圧接部35を構成するニップロール33、34内にて、樹脂フィルム11/量子ドット層2/樹脂フィルム10の積層構造が圧接される。このとき圧接部35では熱圧着により、量子ドット層2と各樹脂フィルム10、11との界面が固着される。
【0083】
そして、樹脂フィルム11/量子ドット層2/樹脂フィルム10からなるシート部材39が巻き取りロール32により巻き取られる。巻き取られたシート部材39を所定の大きさに切断することで、シート状の波長変換部材1を得ることができる。
【0084】
上記した製造方法では、量子ドット層2を樹脂フィルム10上に塗布形成しており、量子ドット層2の厚みを、概ね10~500μm程度で形成することができる。また、樹脂フィルム10、11の厚みは概ね数十~1000μmであり、したがって波長変換部材1の厚みとしては、50~2500μm程度である。ただし、量子ドット層2の厚み、及び波長変換部材1の厚みを限定するものでない。
【0085】
図18で説明した樹脂フィルム10、11は、
図2に示す有機層5の単層や
図3、
図4に示す有機層5と無機層6との積層構造である。好ましくは、
図4Aに示すように複数の有機層5の間に無機層6が介在する構成である。具体的には、樹脂フィルム10、11は、PETフィルム/SiO
2層/PETフィルムの積層構造であることが好ましい。
【0086】
あるいは、複数の樹脂フィルムを重ねたものを送り出して量子ドット層の両面に配置し、
図4Bに示すように、量子ドット層の両側に複数のバリア層が積層された構成とすることも可能である。
【0087】
また
図5に示すマット処理は、
図18に示す巻き取りロール32に巻き取られたシート部材39の片方の表面又は両方の表面に対して行うか、あるいはシート部材39を所定の大きさに切断して形成された
図14の波長変換部材1の両表面に対して行う。
【0088】
マット処理は、シート表面をサンドブラスト処理する方法や、シート表面にマット層をコーティングする方法等で実現できるが、特に方法を限定するものでない。また
図6に示すように、光散乱剤8を量子ドット層2に含有させるべく、
図18に示す塗布手段36により塗布される樹脂組成物37中に光散乱剤8を含めることができる。また
図18に示す塗布手段36により塗布される樹脂組成物37中に増粘剤9を含有させることで、樹脂組成物37の粘度を適度に調整できる。粘度を限定するものでないが、例えば数百~数千(mPa・sec)程度に調整することができる。樹脂組成物37の粘度を適度に調整し、樹脂組成物37の流動性を適正化することで、樹脂フィルム10の表面に全体的に均一な厚みの量子ドット層2を形成することが可能になる。
【0089】
図18に示す製造工程では、量子ドット層2を樹脂フィルム10の表面に塗布して形成したが、量子ドット層2を予め成形し、量子ドット層2の成形体の両面に樹脂フィルム10、11を貼り合せることもできる。量子ドット層2を、射出成形、押出成形、中空成形、熱成形、圧縮成形、カレンダー成形、インフレーション法、キャスティング法等の方法を用いて作製してもよい。量子ドット層2の成形体の厚みは、10~500μm程度にすることができる。例えば量子ドット層2の成形体の厚みを、300μm程度で形成できる。そして、量子ドット層2の成形体の両側に樹脂フィルム10、11を熱圧着等により貼り合せることができる。なお、量子ドット層2と樹脂フィルム10、11との間に接着層を設けてもよい。
【0090】
波長変換部材1をフィルム化する方法としては塗工機で行う方法と成形機で行う方法とがあり、塗工機での硬化方法には紫外線硬化や熱硬化がある。
【0091】
本実施の形態では、量子ドット層2の両側に、水蒸気透過度が9(g/m2・day)よりも小さい樹脂フィルム10、11を適切かつ容易に配置することができる。これにより、発光強度の経時変化を従来に比べて効果的に抑制することが可能な波長変換部材1を容易に製造することができる。
【0092】
次に
図8の波長変換部材の製造方法について
図19に基づいて説明する。
図19は、本発明における第8の実施の形態を示す波長変換部材の製造方法を説明するための概念図である。
図19の左図に示すように、例えば量子ドット層2を成形体で形成する。次に
図19の中央図では、量子ドット層2の全周にわたってバリア層81を配置し、
図19の右図に示すように、巻き始端82と巻き終端83とを量子ドット層2の一面(
図19では上面80)に重ねるとともに、巻き始端82と巻き終端83とを熱圧着部材90を用いて熱圧着する。熱圧着は、例えば、巻き始端82及び巻き終端83を、加熱しながらプレス、ローラにより圧着することにより行うことができる。あるいは熱圧着に代えて接着剤を用いて、巻き始端82と巻き終端83とを接合することもできる。
図19に示す製造方法により、量子ドット層2の全周を簡単且つ適切にバリア層81で覆うことができる。
【0093】
また、
図9の波長変換部材の製造方法について
図20に基づいて説明する。
図20は、本発明における第9の実施の形態を示す波長変換部材の製造方法を説明するための概念図である。
図20の左図に示すように、例えば量子ドット層2を成形体で形成する。次に
図20の中央図では、バリア層81の巻き始端82を量子ドット層2の脇に位置させた状態で、バリア層81を量子ドット2の周囲に巻き、
図20の右図に示すように、巻き終端83を巻き始端82と量子ドット層2に対して同じ側の脇で重ねる。そして、巻き始端82と巻き終端83を熱圧着部材90を用いて熱圧着する。
図20に示すように、バリア層81の巻き始端82と巻き終端83とを量子ドット層2に対して同じ側の脇にて重ね合わせることで、巻き始端82と巻き終端83との熱圧着等による接合時の量子ドット層2に対する影響(熱的影響等)を低減できる。したがってバリア層81の形成工程における、量子ドット層2の劣化を抑制することができる。なお、巻き始端82と巻き終端83は接着により接合されてもよい。
【0094】
また、
図10の波長変換部材の製造方法について
図21に基づいて説明する。
図21は、本発明における第10の実施の形態を示す波長変換部材の製造方法を説明するための概念図である。まず
図21Aに示す工程では、バリア層85の表面に間隔を空けて、複数の量子ドット層2を配置する。例えば、量子ドット層2は成形体であり、予め成形された複数本の量子ドット層2をバリア層85の表面に並べる。このとき、量子ドット層2とバリア層85との間を接着固定することが好ましい。
【0095】
続いて
図21Bの工程では、バリア層85の表面から各量子ドット層2の表面にかけてバリア層86を配置する。このとき、バリア層86の内面側(バリア層85及び量子ドット層2との対向面側)に接着層を塗布しておき、量子ドット2を介してバリア層85とバリア層86とを貼り合せることが好ましい。あるいは、バリア層85とバリア層86とを熱圧着により貼り合せることもできる。そして、
図21B中に一点鎖線で示すように、互いに隣接する量子ドット層2の間で、接合されているバリア層85、86を切断し、各量子ドット層2毎に分断する。これにより、複数の波長変換部材60を同時に得ることができる。
【0096】
図21に示す波長変換部材60の製造方法によれば、バリア層85、86を重ね合わせることで、量子ドット層2の全周にバリア層を配置できるため、量子ドット層2の全周にバリア層が形成された波長変換部材60を簡単且つ適切に製造でき、しかも、波長変換部材60の大量生産に適している。
【0097】
図19から
図21に示す製造方法を用いることで、量子ドット層2の全周をバリア層で覆うことができ、量子ドット層2の全周を適切にバリア層にて保護でき、より効果的に耐久性の向上を図ることができる。これにより、量子ドット層2の劣化をより適切に抑制できる。
【0098】
図19から
図21に示す量子ドット層2は、例えば、成形体であるが、
図11から
図13に示すように、量子ドット層2を、インクジェット法により形成してもよい。インクジェット法の場合は、量子ドットを分散した樹脂組成物をバリア層上にインクジェット法によって吐出する。吐出された樹脂組成物は、安定化のため加温することが好ましい。加温の際の温度としては、30~80℃が好ましく、30~50℃がより好ましい。
【0099】
本実施の形態では、樹脂フィルム10、11(バリア層)は有機層を有し、製造工程にて、量子ドット層2と有機層とを当接させることが好適である。これにより、量子ドット層2を濡れ性の高い有機層の表面に形成でき、量子ドット層2の形成を容易化でき、またバリア層と量子ドット層2との間の親和性により密着性を向上させることができる。
【0100】
また樹脂フィルム10、11を、複数の有機層と、各有機層の間に介在する無機層との積層構造とすることで、樹脂フィルム10、11の両表面に有機層を配置することができる。これによりハンドリング性を向上させることができ、量子ドット層2を樹脂フィルム10、11の表面に容易に形成でき、更には無機層を含むことで、樹脂フィルム10、11(バリア層)のバリア特性を効果的に向上させることができる。
【0101】
あるいは、樹脂フィルム10、11を、複数の無機層と、各無機層の間に介在する有機層との積層構造とすることもできる。また、複数の樹脂フィルムを重ねて配置することもできる。このとき各樹脂フィルム10、11間を接着剤で貼り合せたり熱圧着させることで接合することができる。
【実施例】
【0102】
以下、本発明の効果を明確にするために実施した実施例及び比較例により本発明を詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0103】
実施例におけるサンプル1からサンプル8では、オルガノシランにエラストマーを溶かし、蛍光波長が約520nm(緑色)の量子ドット(「緑色量子ドット」ということがある。)を分散させたQDインク(樹脂組成物)を得た。エラストマーには、株式会社クラレ ハイブラー(登録商標)7311を用いた。
【0104】
そして、ガラス/QDインク/バリア層の積層体を得た。なお熱処理を施してQDインクの溶媒を蒸発させ量子ドット層とした。このときバリア層には以下の構成を使用した。
【0105】
[サンプル1]
PETフィルム/SiO2層/PETフィルムの3層構造フィルムで、水蒸気透過度が6×10-3(g/m2・day)のバリア層。バリア層の厚みは49μm。
【0106】
[サンプル2]
PETフィルム/SiO2層/PETフィルムの3層構造で、水蒸気透過度が9(g/m2・day)のバリア層。バリア層の厚みは50μm。
【0107】
[サンプル3]
シクロオレフィン系のフィルム。
【0108】
上記のサンプル1~サンプル3のバリア層を用いた積層体に対し、温度60℃、湿度90%の条件で耐久試験を行った。発光強度は、各サンプルを青色(波長:450nm)のLED励起光で発光させたときの全光束を、大塚電子株式会社製の全光束測定システムで測定した。
【0109】
図23は、各サンプルに対する、経過時間と青色光強度(450nm面積)との関係を測定したグラフである。ここで青色光強度は、波長450nmに測定された発光ピークの面積である。
【0110】
図23に示すように、サンプル2、及びサンプル3では、時間の経過に伴い、青色光強度(450nm面積)が徐々に高くなることがわかった。すなわち、サンプル2、及びサンプル3は時間の経過とともに青色の光強度が高まっていくことがわかった。一方、サンプル1では、時間が経過しても、青色光強度(450nm面積)は一定で青色の光強度が変化しないことがわかった。またサンプル1では、初期状態(時間=0h)の青色光強度に対する150時間後の青色光強度は、0.0075(時間=0h)に対して0.0070(150h)であり、青色光強度はほとんど変わらず、青色光強度変化は10%以内であることがわかった。ここで青色光強度変化は、[(初期状態での青色光強度-150時間後の青色光強度)/初期状態での青色光強度]×100(%)(絶対値)で示される。
【0111】
図24は、各サンプルに対する、経過時間と緑色光強度(緑面積)との関係を測定したグラフである。ここで緑色光強度は、波長520nmに測定された発光ピークの面積である。
図24に示すように、サンプル2及びサンプル3では、時間の経過に伴って、急激に緑色光強度(緑面積)が徐々に低下することがわかった。サンプル2及びサンプル3のように、青色光強度が高くなり、緑色光強が低下することは、時間の経過とともに、緑色量子ドットが劣化したことを意味する。一方、サンプル1では、サンプル2及びサンプル3に比べて、時間が経過しても、青色光強度(450nm面積)が変化せず、緑色光強度(緑面積)の低下を小さくできることがわかった。またサンプル1では、初期状態(時間=0h)の緑色光強度に対する150時間後の緑色光強度の変化が、0.0078(時間=0h)に対して0.0039(150h)であり、サンプル2、サンプル3に比べて小さく、緑色光強度変化は50%以内であることがわかった。ここで緑色光強度変化は、[(初期状態での緑色光強度-150時間後の緑色光強度)/初期状態での緑色光強度]×100(%)(絶対値)で示される。
【0112】
図23及び
図24に示す測定結果により、サンプル1のバリア層を用いることで、量子ドットの劣化を適切に抑制でき、その結果、発光強度の経時変化を効果的に抑制できることがわかった。
図23及び
図24に示す測定結果に基づいて、バリア層の水蒸気透過度を9(g/m
2・day)よりも低い値に設定した。また、サンプル1のバリア層の水蒸気透過度である6×10
-3(g/m
2・day)以下であることが最も好ましい範囲であるとした。
【0113】
続いてバリアフィルムの評価を行った。この評価では、バリア層として上記のサンプル1と、水蒸気透過度が1.6×10-2(g/m2・day)のサンプル5、及び水蒸気透過度が8.4×10-3(g/m2・day)のサンプル6を用いた。光の透過率(%)は、サンプル1が86.8(全光線)、サンプル5が92.5(波長450nm)、サンプル6が90.6(波長450nm)であった。
【0114】
図25は、各サンプルに対する、経過時間とCIE表色系のx座標との関係を示すグラフである。サンプル4はバリア層なしのサンプル(量子ドット層の成形体)を示す。
【0115】
評価では、量子ドット層の両側を上記各サンプルのバリアフィルムで挟んだ状態にし、一方のバリアフィルム側に拡散板を介して発光素子(LED)を設置した。そして他方のバリアフィルム側から分光器で測定した。
【0116】
図22は、実験で用いた発光試験機の模式図である。発光試験機の一部を縦断面で示した。
図22に示すように、発光試験機56では、発光素子20(LED)と、発光素子20に対向する位置にサンプルSを配置した。実験での各サンプルは、量子ドット層を上記のバリアフィルムで挟み、端面を、例えば、エポキシボンド処理及びアルミテープで貼り付けしたシートとした。発光素子20は支持体52の表面に支持されており、発光素子20とサンプルSとの間には、拡散板22を介在させた。発光素子20の四方を筒状の反射シート23で囲み、反射シート23の上面に拡散板22を配置した。発光素子20から放射された光は、拡散板22で拡散され、サンプルSに入射される。反射シート23を、例えば3cm角の開口を有するボックス形状とし、反射シート23の高さ(支持体52から拡散板22までの距離)を例えば4cmとした。そして、発光素子20から発光された光を、拡散板22を介してサンプルSに入射させ、サンプルSの上面から放出された光を全光束測定システムで測定した。なお実験は、温度60℃、湿度90%の条件下で行った。
図22に示す発光試験機56を用いることにより、発光素子20のサンプルSを介した発光強度を正確に測定することができる。
【0117】
図25に示すように、バリアなしのサンプル4を除き、サンプル1、5及び6では、時間の経過に伴うx座標に変動が見られなかった。サンプル1、及びサンプル5では、初期状態(時間=0h)のx座標に対する200時間後のx座標に変動が、0.208(時間=0h)に対して0.210(200h)であり、x座標変化は1%以内であることがわかった。サンプル6では、初期状態(時間=0h)のx座標に対する200時間後のx座標に変動が、0.210(時間=0h)に対して0.213(200h)であり、x座標変化は2%以内であることがわかった。ここでx座標変化は、[(初期状態でのx座標強度-200時間後のx座標強度)/初期状態でのx座標強度]×100(%)(絶対値)で示される。
【0118】
図26は、各サンプルに対する、経過時間とCIE表色系のy座標との関係を示すグラフである。
図26に示すように、バリアなしのサンプル4を除き、サンプル1、5及び6では、時間の経過に伴うy座標に変動が見られなかった。サンプル1、及びサンプル5では、初期状態(時間=0h)のy座標に対する200時間後のy座標に変動が、0.170(時間=0h)に対して0.190(200h)であり、y座標変化は15%以内であることがわかった。サンプル6では、初期状態(時間=0h)のy座標に対する200時間後のy座標に変動が、0.170(時間=0h)に対して0.195(200h)であり、y座標変化は15%以内であることがわかった。ここでy座標変化は、[(初期状態でのy座標強度-200時間後のy座標強度)/初期状態でのy座標強度]×100(%)(絶対値)で示される。
【0119】
図27は、各サンプルに対する、経過時間と規格化照度との関係を示すグラフである。
図27に示すように、バリアなしのサンプル4を除き、サンプル1、5及び6では、時間の経過に伴う規格化照度の低下が見られなかった。本結果では、200時間で±30%以内の変動であった。
【0120】
次に、サンプル7として、水蒸気透過度が10
-2(g/m
2・day)のバリア層を用い、サンプル8として、水蒸気透過度が10
-1(g/m
2・day)のバリア層を用いた。これらバリア層の水蒸気透過度は公証値である。そして上記の
図22に対する説明箇所にて説明したシートを形成し、
図22の発光試験機にて、スペクトルの経時変化を測定した。
【0121】
図28は、各サンプルに対する、経過時間とCIE表色系のx座標との関係を示すグラフである。実験では、サンプル7及びサンプル8に加えて、上記で説明したサンプル1及びサンプル2も用いた。
【0122】
図28に示すように、水蒸気透過度が9(g/m
2・day)のバリア層を有するサンプル2は実験開始後、すぐにx座標に変動が生じた。水蒸気透過度が10
-1(g/m
2・day)以下のバリア層を有するサンプル1、サンプル7、サンプル8は、時間の経過に伴うx座標に変動が見られず、あるいは変動が非常に小さかった。サンプル1、及びサンプル8では、初期状態(時間=0h)のx座標に対する1100時間後のx座標に変動が、0.220(時間=0h)に対して0.225(1100h)であり、x座標変化は5%以内であることがわかった。サンプル7では、初期状態(時間=0h)のx座標に対する1100時間後のx座標に変動が、0.219(時間=0h)に対して0.219(1100h)であり、x座標変化は0%であることがわかった。ここでx座標変化は、[(初期状態でのx座標強度-1100時間後のx座標強度)/初期状態でのx座標強度]×100(%)(絶対値)で示される。
【0123】
図29は、各サンプルに対する、経過時間とCIE表色系のy座標との関係を示すグラフである。
図29に示すように、水蒸気透過度が9(g/m
2・day)のバリア層を有するサンプル2を除き、サンプル1、7及び8では、時間の経過に伴うy座標に変動が見られず、あるいは変動が非常に小さかった。サンプル1、及びサンプル8では、初期状態(時間=0h)のy座標に対する1100時間後のy座標に変動が、0.190(時間=0h)に対して0.210(1100h)であり、y座標変化は15%以内であることがわかった。サンプル7では、初期状態(時間=0h)のy座標に対する1100時間後のy座標に変動が、0.160(時間=0h)に対して0.195(1100h)であり、y座標変化は25%以内であることがわかった。ここでy座標変化は、[(初期状態でのy座標強度-1100時間後のy座標強度)/初期状態でのy座標強度]×100(%)(絶対値)で示される。
【0124】
図30は、各サンプルに対する、経過時間と規格化照度との関係を示すグラフである。
図30に示すように、水蒸気透過度が9(g/m
2・day)のバリア層を有するサンプル2を除き、サンプル1、7及び8では、時間の経過に伴う規格化照度の低下が見られず、あるいは変動が非常に小さかった。本結果では、200時間で±30%以内の変動であった。
【0125】
上記の実験から、水蒸気透過度が0.1(g/m2・day)程度よりも大きいバリア層は十分に耐久性を向上させることができるとわかった。以上により、バリア層の水蒸気透過度は、0.1(g/m2・day)以下に設定することが好ましいとした。
【0126】
次に、バリア層を量子ドット層の全周に形成して実験を行った。サンプル9からサンプル14は、オルガノシランにエラストマーを溶かし、蛍光波長が約520nm(緑色)の量子ドット、及び蛍光波長が約650nm(赤色)の量子ドット(「赤色量子ドット」ということがある。)を分散させたQDインク(樹脂組成物)を用いた。エラストマーには、株式会社クラレ ハイブラー(登録商標)7311を用いた。熱処理を施してQDインクの溶媒を蒸発させ量子ドット層とした。実験で使用した量子ドット層は、高濃度のものと低濃度のものとを用意した。また、バリア層には、PETフィルムにSiO2層が形成されたシート部材を用い、水蒸気透過度が10-3(g/m2・day)程度のものを用いた。実験で使用したサンプル(波長変換部材)の構成を以下の通りとした。
【0127】
[サンプル9]
バリア層がない量子ドット層のみで構成された波長変換部材。
【0128】
[サンプル10]
図8に示す波長変換部材。なお、量子ドット層の上面で、バリア層の巻き始端と巻き終端とを重ねて熱圧着した。
【0129】
[サンプル11]
図9に示す波長変換部材。なお、バリア層の巻き始端と巻き終端とを量子ドット層の両脇にて重ねて熱圧着した。
【0130】
上記の各サンプルに対し、温度60℃、湿度90%の条件で耐久試験を行った。発光強度は、各サンプルを青色(波長:450nm)のLED励起光で発光させたときの全光束を、大塚電子株式会社製の全光束測定システムで測定した。まず、低濃度の量子ドット層を用いたサンプル9からサンプル11に対する実験結果を説明する。
【0131】
図31は、サンプル9からサンプル11に対する、経過時間と青色光強度(450nm面積)との関係を測定したグラフである。ここで青色光強度は、波長450nmに測定された発光ピークの面積である。
【0132】
図31に示すように、サンプル9では、時間の経過に伴い、青色光強度(450nm面積)が徐々に高くなることがわかった。すなわち、サンプル9は時間の経過とともに青色の光強度が高まっていくことがわかった。一方、サンプル10、及びサンプル11では、時間が経過しても、青色光強度(450nm面積)は一定のままで青色の光強度が変わらない状態を維持していることがわかった。またサンプル10、及びサンプル11では、初期状態(時間=0h)の青色光強度に対する450時間後の青色光強度は、それぞれ、0.0049(時間=0h)に対して0.0056(450h)、0.0053(時間=0h)に対して0.0053(450h)であった。サンプル10、及びサンプル11では、初期状態(時間=0h)の青色光強度に対する450時間後の青色光強度はほとんど変わらず、青色光強度変化は15%以内であることがわかった。ここで青色光強度変化は、[(初期状態での青色光強度-450時間後の青色光強度)/初期状態での青色光強度]×100(%)(絶対値)で示される。
【0133】
図32は、サンプル9からサンプル11に対する、経過時間と緑色光強度(緑面積)との関係を測定したグラフである。ここで緑色光強度は、波長520nmに測定された発光ピークの面積である。
図32に示すように、サンプル9では、実験開始から100時間の間に、緑色光強度(緑面積)が急激に低下することがわかった。サンプル9のように、青色光強度が高くなり、緑色光強が低下することは、時間の経過とともに、緑色量子ドットが劣化したことを意味する。一方、サンプル10、及びサンプル11では、サンプル9に比べて、時間が経過しても、青色光強度(450nm面積)が変化せず、また緑色光強度(緑面積)の低下を小さくできることがわかった。またサンプル10、及びサンプル11では、初期状態(時間=0h)の緑色光強度に対する450時間後の緑色光強度の変化が、それぞれ、0.0017(時間=0h)に対して0.0016(450h)、0.0022(時間=0h)に対して0.0023(450h)であった。サンプル10、及びサンプル11では、初期状態(時間=0h)の緑色光強度に対する450時間後の緑色光強度の変化はサンプル9に比べて小さく、緑色光強度変化は10%以内であることがわかった。ここで緑色光強度変化は、[(初期状態での緑色光強度-450時間後の緑色光強度)/初期状態での緑色光強度]×100(%)(絶対値)で示される。
【0134】
図33は、サンプル9からサンプル11に対する、経過時間と赤色光強度(赤面積)との関係を測定したグラフである。ここで赤色光強度は、波長650nmに測定された発光ピークの面積である。
図33に示すように、サンプル9では、実験開始から50時間の間に、赤色光強度(赤面積)が急激に低下することがわかった。サンプル9のように、青色光強度が高くなり、赤色光強が低下することは、時間の経過とともに、赤色量子ドットが劣化したことを意味する。一方、サンプル10、及びサンプル11では、サンプル9に比べて、時間が経過しても、青色光強度(450nm面積)が変化せず、また赤色光強度(赤面積)の低下を小さくできることがわかった。またサンプル10、及びサンプル11では、初期状態(時間=0h)の赤色光強度に対する450時間後の赤色光強度の変化が、それぞれ、0.0017(時間=0h)に対して0.0014(450h)、0.0022(時間=0h)に対して0.0018(450h)であった。サンプル10、及びサンプル11では、初期状態(時間=0h)の赤色光強度に対する450時間後の赤色光強度の変化はサンプル9に比べて小さく、赤色光強度変化は25%以内であることがわかった。ここで赤色光強度変化は、[(初期状態での赤色光強度-450時間後の赤色光強度)/初期状態での緑色光強度]×100(%)(絶対値)で示される。
【0135】
図31から
図33に示す実験結果により、量子ドット層の全周をバリア層で覆うことで、量子ドットの劣化を適切に抑制でき、その結果、発光強度の経時変化を効果的に抑制できることがわかった。
【0136】
続いて、バリアフィルム評価を行った。
図34は、サンプル9からサンプル11に対する、経過時間とCIE表色系のx座標との関係を示すグラフである。
【0137】
図34に示すように、どのサンプルにおいても経過時間に伴うx座標に大きな変動が見られなかった。サンプル10では、初期状態(時間=0h)のx座標に対する450時間後のx座標に変動が、0.2013(時間=0h)に対して0.1892(450h)であり、x座標変化は10%以内であることがわかった。サンプル11では、初期状態(時間=0h)のx座標に対する450時間後のx座標に変動が、0.2080(時間=0h)に対して0.1998(450h)であり、x座標変化は5%以内であることがわかった。ここでx座標変化は、[(初期状態でのx座標強度-450時間後のx座標強度)/初期状態でのx座標強度]×100(%)(絶対値)で示される。
【0138】
図35は、サンプル9からサンプル11に対する、経過時間とCIE表色系のy座標との関係を示すグラフである。
図35に示すように、バリア層を設けなかったサンプル9は、バリア層にて量子ドット層の全周を囲ったサンプル9及びサンプル10に比べて、時間の経過に伴うy座標に大きな変動が見られた。サンプル10では、初期状態(時間=0h)のy座標に対する450時間後のy座標に変動が、0.1428(時間=0h)に対して0.1210(450h)であり、y座標変化は20%以内であることがわかった。サンプル11では、初期状態(時間=0h)のy座標に対する450時間後のy座標に変動が、0.1626(時間=0h)に対して0.1635(450h)であり、y座標変化は1%以内であることがわかった。ここでy座標変化は、[(初期状態でのy座標強度-450時間後のy座標強度)/初期状態でのy座標強度]×100(%)(絶対値)で示される。
【0139】
また、サンプル10とサンプル11とを対比すると、総じて、サンプル11のほうがサンプル10よりもよい結果が得られた。これは、サンプル11では、サンプル10と異なって、量子ドット層の両脇でバリア層の巻き始端と巻き終端とを熱圧着したため、熱圧着時の量子ドット層に対する熱的影響をサンプル10の構成に比べて低減できたからであると考えられる。
【0140】
次に、低濃度の量子ドット層を用いたサンプル12からサンプル14に対する実験結果を説明する。
[サンプル12]
バリア層がない量子ドット層のみで構成された波長変換部材。
【0141】
[サンプル13]
図8に示す波長変換部材。なお、量子ドット層の上面で、バリア層の巻き始端と巻き終端とを重ねて熱圧着した。
【0142】
[サンプル14]
図9に示す波長変換部材。なお、バリア層の巻き始端と巻き終端とを量子ドット層の両脇にて重ねて熱圧着した。
【0143】
上記の各サンプルに対し、温度60℃、湿度90%の条件で耐久試験を行った。発光強度は、各サンプルを青色(波長:450nm)のLED励起光で発光させたときの全光束を、大塚電子株式会社製の全光束測定システムで測定した。
【0144】
図36は、サンプル12からサンプル14に対する、経過時間と青色光強度(450nm面積)との関係を測定したグラフである。
【0145】
図36に示すように、サンプル12は、時間の経過とともに青色の光強度が高まっていくことがわかった。一方、サンプル13、及びサンプル14では、時間が経過しても、青色光強度(450nm面積)は一定のままで青色の光強度が変わらない状態を維持していることがわかった。またサンプル13、及びサンプル14では、初期状態(時間=0h)の青色光強度に対する189時間後の青色光強度は、それぞれ、0.0010(時間=0h)に対して0.0013(189h)、0.0010(時間=0h)に対して0.0009(189h)であった。サンプル10、及びサンプル11では、初期状態(時間=0h)の青色光強度に対する189時間後の青色光強度はほとんど変わらず、あるいは、青色光強度の変化はサンプル12に比べて小さく、青色光強度変化は30%以内であることがわかった。ここで青色光強度変化は、[(初期状態での青色光強度-189時間後の青色光強度)/初期状態での青色光強度]×100(%)(絶対値)で示される。
【0146】
図37は、サンプル12からサンプル14に対する、経過時間と緑色光強度(緑面積)との関係を測定したグラフである。ここで緑色光強度は、波長520nmに測定された発光ピークの面積である。
図36、
図37に示すように、サンプル13、及びサンプル14では、時間が経過に伴う、青色光強度(450nm面積)及び緑色光強度(緑面積)の変化を、サンプル12よりも小さくできることがわかった。またサンプル13、及びサンプル14では、初期状態(時間=0h)の緑色光強度に対する189時間後の緑色光強度の変化が、それぞれ、0.0017(時間=0h)に対して0.0019(189h)、0.0015(時間=0h)に対して0.0018(189h)であった。サンプル13、及びサンプル14では、初期状態(時間=0h)の緑色光強度に対する189時間後の緑色光強度の変化は20%以内であることがわかった。ここで緑色光強度変化は、[(初期状態での緑色光強度-189時間後の緑色光強度)/初期状態での緑色光強度]×100(%)(絶対値)で示される。
【0147】
図38は、サンプル12からサンプル14に対する、経過時間と赤色光強度(赤面積)との関係を測定したグラフである。ここで赤色光強度は、波長650nmに測定された発光ピークの面積である。
図36、
図38に示すように、サンプル13、及びサンプル14では、サンプル12に比べて、時間の経過に伴う、青色光強度(450nm面積)及び赤色光強度(赤面積)の変化を小さくできることがわかった。またサンプル13、及びサンプル14では、初期状態(時間=0h)の赤色光強度に対する189時間後の赤色光強度の変化が、それぞれ、0.0038(時間=0h)に対して0.0039(189h)、0.0037(時間=0h)に対して0.0040(189h)であった。サンプル13、及びサンプル14では、初期状態(時間=0h)の赤色光強度に対する189時間後の赤色光強度の変化は10%以内であることがわかった。ここで赤色光強度変化は、[(初期状態での赤色光強度-189時間後の赤色光強度)/初期状態での緑色光強度]×100(%)(絶対値)で示される。
【0148】
図36から
図38に示す実験結果により、量子ドット層の全周をバリア層で覆うことで、量子ドットの劣化を適切に抑制でき、その結果、発光強度の経時変化を効果的に抑制できることがわかった。
【0149】
続いてバリアフィルムの評価を行った。
図39は、サンプル12からサンプル14に対する、経過時間とCIE表色系のx座標との関係を示すグラフである。サンプル13では、初期状態(時間=0h)のx座標に対する189時間後のx座標に変動が、0.3729(時間=0h)に対して0.3524(189h)であり、x座標変化は10%以内であることがわかった。サンプル14では、初期状態(時間=0h)のx座標に対する189時間後のx座標に変動が、0.3748(時間=0h)に対して0.3811(189h)であり、x座標変化は5%以内であることがわかった。ここでx座標変化は、[(初期状態でのx座標強度-189時間後のx座標強度)/初期状態でのx座標強度]×100(%)(絶対値)で示される。また、
図40は、サンプル12からサンプル14に対する、経過時間とCIE表色系のy座標との関係を示すグラフである。サンプル13では、初期状態(時間=0h)のy座標に対する189時間後のy座標に変動が、0.3441(時間=0h)に対して0.3301(189h)であり、y座標変化は5%以内であることがわかった。サンプル14では、初期状態(時間=0h)のy座標に対する189時間後のy座標に変動が、0.3347(時間=0h)に対して0.3580(189h)であり、y座標変化は5%以内であることがわかった。ここでy座標変化は、[(初期状態でのy座標強度-189時間後のy座標強度)/初期状態でのy座標強度]×100(%)(絶対値)で示される。
図39及び
図40に示すように、量子ドット層をバリア層で囲んだサンプル13、及びサンプル14は、バリア層を設けなかったサンプル12に比べて経過時間に伴うx座標及びy座標に変動が小さかった。
【0150】
また、サンプル13とサンプル14とを対比すると、総じて、サンプル14のほうがサンプル13よりもよい結果が得られた。これは、サンプル14では、サンプル13と異なって、量子ドット層の両脇でバリア層の巻き始端と巻き終端とを熱圧着したため、熱圧着時の量子ドット層に対する熱的影響をサンプル13の構成に比べて低減できたからであると考えられる。
【0151】
図41から
図43は、サンプル9からサンプル11に対して450nmの青色光を照射したときに放出される光のスペクトルである。横軸が波長(Wavelength)、縦軸が光の強度である。各図には、夫々、0時間後(実験開始直後)と450時間後のスペクトルが示されている。
図41に示すように、サンプル9では、0時間後と450時間後でスペクトルに顕著な変化が見られた。これに対し、
図42及び
図43に示すように、サンプル10、及びサンプル11は、サンプル9に比べて、0時間後と450時間後でのスペクトルの変化が小さいことがわかった。サンプル10、及びサンプル11においては、量子ドット層の周囲をバリア層で覆われており、これにより量子ドットの劣化を適切に抑制でき、その結果、発光強度の経時変化を効果的に抑制できることがわかった。
【0152】
図44から
図46は、サンプル12からサンプル14に対して450nmの青色光を照射したときに放出される光のスペクトルである。横軸が波長(Wavelength)、縦軸が光の強度である。各図には、夫々、0時間後(実験開始直後)と189時間後のスペクトルが示されている。
図44に示すように、サンプル12では、0時間後と189時間後でスペクトルに顕著な変化が見られた。これに対し、
図45及び
図46に示すように、サンプル13、及びサンプル14は、サンプル12に比べて、0時間後と189時間後でのスペクトルの変化が小さいことがわかった。サンプル13、及びサンプル14においては、量子ドット層の周囲をバリア層で覆われており、これにより量子ドットの劣化を適切に抑制でき、その結果、発光強度の経時変化を効果的に抑制できることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0153】
本発明では、発光強度の経時変化を効果的に抑制できる波長変換部材を得ることができ、本発明の波長変換部材を用いて、安定した波長変換特性を備えるバックライト装置、導光部材、及び表示装置等を実現できる。
【0154】
本出願は、2014年12月26日出願の特願2014-263785に基づく。この内容は全てここに含めておく。