(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-17
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】投光機用バルーン及び投光機
(51)【国際特許分類】
F21S 2/00 20160101AFI20220128BHJP
F21V 3/02 20060101ALI20220128BHJP
F21L 13/00 20060101ALI20220128BHJP
F21L 14/04 20060101ALI20220128BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20220128BHJP
【FI】
F21S2/00 612
F21V3/02 310
F21L13/00 110
F21L14/04 100
F21Y115:10
(21)【出願番号】P 2020550199
(86)(22)【出願日】2019-05-09
(86)【国際出願番号】 JP2019018628
(87)【国際公開番号】W WO2020225921
(87)【国際公開日】2020-11-12
【審査請求日】2020-09-17
(73)【特許権者】
【識別番号】392018595
【氏名又は名称】株式会社ライトボーイ
(74)【代理人】
【識別番号】100157118
【氏名又は名称】南 義明
(72)【発明者】
【氏名】吉森 徳仁
(72)【発明者】
【氏名】廣澤 祐樹
【審査官】大橋 俊之
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-092876(JP,A)
【文献】特開2004-296196(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0123140(US,A1)
【文献】特開2015-079597(JP,A)
【文献】特開2005-150123(JP,A)
【文献】特開2015-089974(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 2/00
F21V 3/02
F21L 13/00
F21L 14/04
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送風部、照明部を有する投光機に使用され、前記照明部で内部が照明され、前記送風部によって膨張される投光機用バルーンであって、
メインパーツと、前記メインパーツの上方もしくは下方の少なくとも一方に設けられた固定部を備え、
前記メインパーツは、可撓性を有する
1つまたは複数の布状素材で
形成され、筒形状に形成され、
前記メインパーツの上辺もしくは下辺には、前記照明部に固定するための前記固定部が設けられ、
前記メインパーツの筒形状の最大径は、前記固定部が形成する径よりも大きく形成されており、
前記固定部が固定されるメインパーツの上辺もしくは下辺は、直線状であってその長さが前記固定部の長さよりも長く、
前記メインパーツの上辺もしくは下辺部分は、1つの布状素材が重なった状態とすることで、前記
メインパーツの上辺もしくは下辺の長さを前記固定部の長さに合わせ、前記固定部に固定されている
投光機用バルーン。
【請求項2】
前記メインパーツの布状素材を重ね合わせた状態で固定された側に湾曲部が形成されている
請求項1に記載の投光機用バルーン。
【請求項3】
前記メインパーツは、1枚の布状素材の左右を縫製することで筒形状に形成されており、縫製で生じた余剰部分は、投光機用バルーンの内側に位置し、
前記投光機の使用時、前記余剰部分は起立状態となる
請求項1に記載の投光機用バルーン。
【請求項4】
前記メインパーツの布状素材を重ね合わせた状態で固定された前記下辺もしくは前記上辺には、ゴムが固定されている
請求項1に記載の投光機用バルーン。
【請求項5】
送風部と、照明部と、前記照明部で内部が照明され、前記送風部によって膨張される投光機用バルーンを備える投光機であって、
前記投光機用バルーンは、メインパーツと、前記メインパーツの上方もしくは下方の少なくとも一方に設けられた固定部を備え、
前記メインパーツは、可撓性を有する
1つまたは複数の布状素材で
形成され、筒形状に形成され、
前記メインパーツの上辺もしくは下辺には、前記照明部に固定するための前記固定部が固定され、
前記メインパーツの筒形状の最大径は、前記固定部が形成する径よりも大きく形成されており、
前記固定部が固定されるメインパーツの上辺もしくは下辺は、その長さが前記固定部の長さよりも長く、
前記固定部が固定されるメインパーツの上辺もしくは下辺は、直線状であってその長さが前記固定部の長さよりも長く、
前記メインパーツの上辺もしくは下辺部分は、1つの布状素材が重なった状態とすることで、前記
メインパーツの上辺もしくは下辺の長さを前記固定部の長さに合わせ、前記固定部に固定されている
投光機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路工事、建設工事、各種イベント等において周囲の照明を行う投光機であって、特に照明部によって内部が照明され、送風部によって膨張される投光機用バルーンを使用する投光機、並びに、投光機用バルーンに関する。
【背景技術】
【0002】
道路工事、建設工事、各種イベントにおいて周囲を照明する投光機は、照明範囲を広範囲とする場合、広範囲を適切な明るさと色調で照明することが好ましい。現在、投光機には各種事情を考慮した様々なタイプがある。特許文献1には、バルーンと、バルーンを膨らませる送風機と光源とを備え、光源からバルーンを介して外部に出射される光で周囲を照明するバルーン型照明装置が記載されている。このような、バルーン型照明装置は、スポットライト型の投光機とは異なり、周囲を均一に照明する点において有利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1で使用されるバルーンは、例えば、
図3に示されるように複数の短冊状基板を繋ぎ合わせることで、周囲方向に膨張する形状を形成している。したがって、短冊状基板の繋ぎ目は、短冊状基板が重なった部分が生じ、周囲よりも暗くなる部分が形成されてしまう。特に、短冊状基板を使用して形成する場合、少なくとも6枚以上の短冊状基板が必要となり、多数の繋ぎ目が生じることが考えられる。このような繋ぎ目は、見た目上、好ましいものとはいえず、照明効率の低下にも繋がる。
【0005】
バルーンの形態としては、特許文献1に記載されるような複数の短冊状基板を使用する形態以外に、バルーンを横方向で分割した形態も知られている。このような形態においても繋ぎ目には、周囲よりも暗くなる部分が生じることになる。また、後述するように、その形状から、バルーンに使用する素材の利用効率も必ずしもよいものとはいえなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る投光機用バルーンは、このような課題を解決することを一つの目的としている。そのため、以下の構成を採用するものである。
送風部、照明部を有する投光機に使用され、前記照明部で内部が照明され、前記送風部によって膨張される投光機用バルーンであって、
メインパーツと、前記メインパーツの上方もしくは下方の少なくとも一方に設けられた固定部を備え、
前記メインパーツは、可撓性を有する1つまたは複数の布状素材で形成され、筒形状に形成され、
前記メインパーツの上辺もしくは下辺には、前記照明部に固定するための前記固定部が設けられ、
前記メインパーツの筒形状の最大径は、前記固定部が形成する径よりも大きく形成されており、
前記固定部が固定されるメインパーツの上辺もしくは下辺は、その長さが前記固定部の長さよりも長く、
前記固定部が固定されるメインパーツの上辺もしくは下辺は、直線状であってその長さが前記固定部の長さよりも長く、
前記メインパーツの上辺もしくは下辺部分は、1つの布状素材が重なった状態とすることで、前記メインパーツの上辺もしくは下辺の長さを前記固定部の長さに合わせ、前記固定部に固定されている。
【0007】
さらに、本発明に係る投光機用バルーンは、前記メインパーツの布状素材を重ね合わせた状態で固定された側に湾曲部が形成されている。
【0008】
さらに、本発明に係る投光機用バルーンにおいて、
前記メインパーツは、1枚の布状素材の左右を縫製することで筒形状に形成されており、縫製で生じた余剰部分は、投光機用バルーンの内側に位置し、
前記投光機の使用時、前記余剰部分は起立状態となる。
【0009】
さらに、本発明に係る投光機用バルーンにおいて、
前記メインパーツの布状素材を重ね合わせた状態で固定された前記下辺もしくは前記上辺には、ゴムが固定されている。
【0010】
また、本発明に係る投光機は、
送風部と、照明部と、前記照明部で内部が照明され、前記送風部によって膨張される投光機用バルーンを備える投光機であって、
前記投光機用バルーンは、メインパーツと、前記メインパーツの上方もしくは下方の少なくとも一方に設けられた固定部を備え、
前記メインパーツは、可撓性を有する1つまたは複数の布状素材で形成され、筒形状に形成され、
前記メインパーツの上辺もしくは下辺には、前記照明部に固定するための前記固定部が固定され、
前記メインパーツの筒形状の最大径は、前記固定部が形成する径よりも大きく形成されており、
前記固定部が固定されるメインパーツの上辺もしくは下辺は、その長さが前記固定部の長さよりも長く、
前記固定部が固定されるメインパーツの上辺もしくは下辺は、直線状であってその長さが前記固定部の長さよりも長く、
前記メインパーツの上辺もしくは下辺部分は、1つの布状素材が重なった状態とすることで、前記メインパーツの上辺もしくは下辺の長さを前記固定部の長さに合わせ、前記固定部に固定されている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図3】従来の投光機のバルーン部分に使用する材料を示す図
【
図4】本発明の実施形態に係る投光機のバルーン部分を示す斜視図
【
図5】本発明の実施形態に係る投光機のバルーン部分を示す透視図
【
図6】本発明の実施形態に係る投光機のバルーン部分に使用する材料を示す図
【
図7】本発明の実施形態に係る投光機のバルーン部分を示す側面図
【
図8】本発明の実施形態に係る投光機のバルーン部分を示す断面図
【
図9】本発明の実施形態に係るバルーン部分の製造工程を説明するための図
【
図10】本発明の実施形態に係るバルーン部分の製造工程を説明するための図
【
図11】他の実施形態に係る投光機のバルーン部分を示す斜視図
【
図12】他の実施形態に係る投光機のバルーン部分を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る投光機は、工事現場や各種催し物が開かれる会場等で使用されるものであり、夜間等における暗闇を照明することを目的としている。まず始めに、従来の投光機1について説明を行う。
【0013】
図1は、従来の投光機1のバルーン部分を示す斜視図である。投光機1は、バルーン4の内部に照明部2を備えている。照明部2は、バルーン4の内部からLED等により周囲の照明を行う手段であって、支柱51によってその下部が支持されている。また、照明部2は、バルーン4の外部から内部に空気を取り入れて、バルーン4を膨張させる送風部の機能も有している。外部から取り入れた空気は、バルーン4を膨らませると共に、LED等を冷却し、バルーン4の隙間等から外部へと流出する。
【0014】
このように、バルーン4は、その内部に設けられた照明部2により、膨張された状態で周囲を照明する。従来、使用されるバルーン4は、上部パーツ412、中央パーツ411、下部パーツ413を縫製する等、複数のパーツを繋ぎ合わせることで立体的な形状が形成されていた。また、バルーン4の上部には、上部パーツ412に上方固定部42が設けられており、照明部2側に設けられた上方被固定部231と固定されている。この上方固定部42、上方被固定部231には、ファスナーが使用されている。そして、バルーン4の下部には、下部パーツ413に下方固定部43が設けられており、照明部2側に設けられた下方被固定部271と固定されている。この上方固定部42、上方被固定部231(下方固定部43、下方被固定部271)には、ファスナーが使用されている。収納袋22には、投光機1を使用しない場合、バルーン3が取り付けられた照明部2を収納する袋状部材が収められている。袋状部材は、投光機1の使用時には、収納袋22内に収納された状態となっている。そして、投光機1を使用しない際には、収納袋22から袋状部材を取り出し、照明部2、及び、照明部2に固定されたしぼんだ状態のバルーン3を上方から覆う形態で袋状部材の内部に収納する。なお、袋状部材は、収納袋22の内部に固定されているため、紛失する恐れもない。
【0015】
投光機1を使用する場合、バルーン3の上方固定部42、下方固定部43をそれぞれ、照明部2側の上方被固定部231、下方被固定部271に取り付けることで投光機1として使用可能な状態となる。
【0016】
図2には、従来の実施形態に係る照明部2の構成を示す斜視図が示されている。なお、本発明は、バルーン部分に特徴を有するものであって、本発明の実施形態に係る投光機1についても、この従来の照明部2を使用することが可能である。照明部2は、上部パーツ24、6枚のLEDパネル25、上部パーツ24を主要なパーツとして有している。板状のLEDパネル25の表面には、複数のLEDが配置されている。6枚のLEDパネル25は、その断面が六角形となるように上部パーツ24、下部パーツ26の間に配置されている。下部パーツ26の内部には、電源が設けられている。電源部は、電源ケーブルを使用して外部から電源を取り入れ、適切な電圧で各LEDパネル25に供給する。
【0017】
上部パーツ24の内部には、送風部としてのファンが設けられている。ファンは、下部パーツ26の下方位置から外気を吸引し、バルーン4の内部に排気する。
図5には、本発明の実施形態に係る投光機1の透視図が記載されている。従来の投光機1における空気の流れも、この投光機1と同様であり、下部パーツ26から取り入れた外気は、LEDパネル25内部を通過し、上部パーツ24に設けられた多数の孔から、バルーン3の内部へと排出される。したがって、LEDパネル25は、外部から取り入れられた空気によって冷却される。また、バルーン3内部に取り入れられた空気は、バルーン3の隙間等から外部へと排出される。したがって、バルーン3の内部は、外部よりも空気圧が高くなり、バルーン3は膨張した状態となる。
【0018】
図3は、従来の投光機のバルーン4部分に使用する材料を示す図である。
図1で説明したように、バルーン4は、上部パーツ412、中央パーツ411、下部パーツ413を主な材料として有する。上部パーツ412、中央パーツ411、下部パーツ413は、白色の可撓性を有する布状素材で形成されている。上部パーツ412と下部パーツ413は同形状であって、上部パーツ412の場合、外周412aと内周412bを有する同心円状の形状となっている。また、中央パーツ411は、上辺411a、左辺411b、右辺411c、下辺411dを有する矩形型の形状を有している。
【0019】
バルーン4は、上部パーツ412、中央パーツ411、下部パーツ413を縫製することで形成される。具体的には、中央パーツ411の左辺411bと右辺411cを縫い合わせ、中央パーツ411の上辺411aと上部パーツ412の外周412aを縫い合わせ、中央パーツ411の下辺411dと下部パーツ413の外周413aを縫い合わせることで形成される。なお、中央パーツ411の上辺411aと上部パーツ412の外周412aは略同じ長さである。中央パーツ411の下辺411dと下部パーツ413の外周413aも略同じ長さである。
【0020】
さらに、上部パーツ412の内周412bには、上方固定部42が縫い合わせられる。上方固定部42の長さは、内周412bと略同じ長さとなっている。下部パーツ413の内周413bについても、それと略同じ長さの下方固定部43が縫い合わせられる。
【0021】
このような、従来のバルーン4では、以下に説明する2つの問題がある。
図3で説明したように、バルーン4を形成する中央パーツ411は、矩形形状であるため、大判の素材から切り出す際には、複数の中央パーツ411を隣接させた状態で切り出すことが可能であり、隣接させた中央パーツ411の間に無駄な部分は生じることは少ない。一方、上部パーツ412、下部パーツ413は同心円状であるため、素材から切り出す際に、上部パーツ412、下部パーツ413の内側、外側にそれぞれ、無駄な部分が生じてしまい、素材の利用効率が悪くってしまい、その結果、材料の歩留まりは悪くなる。
【0022】
また、従来のバルーン4は、3つのパーツを縫製して構成しているため、パーツの間に縫製状必要となる接続部が生じることになる。
図1には、各パーツ間の接続部が示されている。まず、中央パーツ411は、左辺411bと411cを縫い合わせるため、縦方向に走る接続部4Cが生じる。また、中央パーツ411と上部パーツ412間には、中央パーツ411の上辺411aと、上部パーツ412の外周412aを縫い合わせるため、横方向に走る接続部4Aが生じる。そして、中央パーツ411と下部パーツ413間には、中央パーツ411の下辺411dと、下部パーツ413の外周413aを縫い合わせるため、横方向に走る接続部4Bが生じる。このようにバルーン4形成に使用するパーツの点数が多くなると、接続部の数も多くなり、外観上好ましいものとはいえない。
【0023】
また、各接続部4A~4Cは、縫製上必要となる剰余部分が互いに重なった状態になる。この剰余部分は、接続強度を上げるため、大きく取ることが好ましい。また、剰余部分は、外観上の点からバルーン4の内部に位置させることになるが、バルーン4の膨張時、バルーン4の内部に押し付けられた状態となる。そのため、各接続部4A~4Cは、素材が何枚も重なった状態となり、
図1に示すようにその他の部分と比較して暗い部分を形成することになる。このような接続部4A~4Cは、見た目上、好ましいものではなく、照明効率が低下することも考えられる。
【0024】
本発明の実施形態に係る投光機で使用されるバルーンは、このような課題を鑑みたものであって、使用する素材の歩留まりの向上を図るとともに、接続部による暗部の形成を抑制することで外観を良くし、並びに、照明効率の向上を図ることを可能としている。
【0025】
図4は、本発明の実施形態に係る投光機1のバルーン3部分を示す斜視図である。本実施形態のバルーン3は、1枚の素材(メインパーツ31)を使用して形成されている。投光機1において、使用される照明部2は、
図2で説明した従来のものを使用することが可能である。
図4に示されるように、バルーン3は、上方と下方に湾曲部を有し、湾曲部の間に直線部を有する形状を有している。バルーン3の上方には上方固定部32が設けられ、照明部2に設けられた上方被固定部231に固定されている。バルーンの下方には下方固定部33が設けられ、照明部2に設けられた下方被固定部271に固定されている。従来と同様、上方固定部32、上方被固定部231、下方固定部33、下方被固定部271には、ファスナー(ジッパーとも呼ばれる)を使用している。なお、上方固定部32、上方被固定部231、下方固定部33、下方被固定部271には、ファスナーのみならず、ボタンと当該ボタンに対する孔、あるいは、面ファスナー(マジックテープ、あるいは、ベルクロとも呼ばれる)を使用する、あるいは、紐あるいはボルト等の固定具を使用して固定する等、各種の固定部、被固定部を使用することが可能である。
【0026】
ここで、メインパーツ31と上方固定部32は、縫製、すなわち、お互いに縫い合わせることで固定されている。その際、メインパーツ31の上辺の長さに対し、上方固定部32の長さは短く設定されており、メインパーツ31の上辺に位置する素材が重なり合った状態で固定されている。メインパーツ31の上辺に素材が重なり合った状態を形成することで、上方に位置する湾曲部が形成されている。バルーン3の下方も同様であって、下方固定部33をメインパーツ31に固定する際、メインパーツ31の下辺に素材が重なり合った状態を形成することで、下方に位置する湾曲部が形成される。このように上方と下方に湾曲部を形成することで、
図4に示すような形状のバルーン3が形成される。
【0027】
なお、布状素材のメインパーツ31が互いに重なり合った状態で固定されていればよく、素材の重なり合う形態を問うものでは無い。例えば、重なり合った状態は、本実施形態のようにランダムであってもよく、あるいは、規則的であってもよい。
【0028】
図5は、本発明の実施形態に係る投光機1のバルーン3部分を示す透視図である。
図1で説明した従来の投光機1と同様、本実施形態に係るバルーン3は、照明部2が形成する空気の流れによって膨張するとともに、照明部2の発光によって周囲を照明する。上部パーツ24の内部には、ファンが設けられており、下部パーツ26の下方位置から外気を取り入れ、バルーン3の内部に空気を排気する。このような構成により、下部パーツ26内に設けられている電源部、及び、LEDパネル25の内側を外気で冷却することが可能となっている。上部パーツ24から排気された外気は、バルーン3を膨らませ、破線で示す位置(例えば、上方固定部32と上方被固定部231の繋ぎ目)等から外部に排気される。このように、本実施形態の投光機1は、上部パーツ24の内部に設けられたファンにより、外気による冷却、及び、バルーン3を膨張させることを可能としている。
【0029】
図6は、本発明の実施形態に係る投光機1のバルーン3部分に使用する材料を示す図である。本実施形態のバルーン3に使用されるメインパーツ31は、上辺31a、左辺31b、右辺31c、下辺31dを有する矩形形状で形成されている。したがって、大判の素材から、複数のメインパーツ31を切り出す際、
図3で説明した同心円状の上部パーツ412等と異なり、無駄な部分が生じることを抑制することが可能となっており、素材の使用効率の向上が図られている。
【0030】
ここでメインパーツ31の上辺31a(あるいは下辺31d)の長さL1は、それに固定される上方固定部32(あるいは下方固定部33)の長さL3よりも長く設定されている。前述したように、上辺31a(あるいは下辺31d)を上方固定部32(あるいは下方固定部33)に固定する際には、上辺31a(あるいは下辺31d)に素材が重なり合った状態を形成することで、上方固定部32(あるいは下方固定部33)の長さL3となるように固定される。
【0031】
メインパーツ31の左辺31bと右辺31cは、メインパーツ31が筒を形成するように互いに縫い合わされる。したがって、左辺31bと右辺31c間には、接続部が形成されることになる。
図7は、本発明の実施形態に係る投光機1のバルーン3部分を示す側面図である。
図7に示されるように、バルーン3は、最大径R1、上方固定部32(あるいは下方固定部33)付近で径R2を形成している。
【0032】
図7では、メインパーツ31の接続部3Aが見える状態の側面図となっている。メインパーツ31の左辺31bと右辺31cの固定位置では、縦方向に走る接続部3Aが形成される。本実施形態のメインパーツ31は、1枚のメインパーツ31で形成しているため、バルーン3の表面に生じる接続部3Aは1筋のみで済んでいる。ところで、
図1において、従来のバルーン4では、接続部4A~4Cで生じる剰余部分は、バルーン4の内部に押し付けられた状態となり、暗部を形成することを説明した。一方、本実施形態の接続部3Aは、剰余部分による暗部形成が抑制された構成においても優れている。
【0033】
なお、本実施形態では、メインパーツ31を1枚のメインパーツ31で形成しているが、このような形態に代えて、メインパーツ31を縦方向に複数枚に分割した形態とする等、メインパーツ31を複数枚で形成する形態であってもよい。例えば、大きいバルーン3を製造するにあたって、メインパーツ31に使用する布状素材が1枚では足りない場合がある。このような場合、バルーン3を適宜分割して形成してもよい。あるいは、布状素材を筒状に製造できる場合には、メインパーツ31を筒状に形成し、縦方向の接続部を有さないバルーン3を形成することも可能である。
【0034】
図8は、本発明の実施形態に係る投光機1のバルーン3部分を示す断面図であって、
図7のA-A’間の断面図となっている。この断面図に示されるように、メインパーツ31の内面は、6枚のLEDパネル25によって照明される。また、メインパーツ31の左辺31bと右辺31cを縫い合わせて形成される接続部3Aには、縫製上必要となる剰余部分311が形成される。外観上、この剰余部分311は、バルーン3の内部に位置させている。本実施形態の剰余部分311は、従来のバルーン4の場合のように内面に押し付けられた状態とならず、バルーン3の内側に向かって起立した状態となる。したがって、LEDパネル25からの照明光を遮ることが抑制され、暗部が形成されにくくなっている。
【0035】
剰余部分311の起立は、
図7に示す上方と下方に位置する湾曲部31Cを設けたことによって生じたものである。本実施形態のメインパーツ31は、使用時(膨張時)において、上方に位置する湾曲部31C、直線部31B、下方に位置する湾曲部31Cを形成する。接続部3Aによって形成される剰余部分311は、上方固定部32(あるいは下方固定部33)の位置では、起立した状態ではなく、バルーン4の内面に押し付けられた状態となっている。しかしながら、湾曲部31Cによって、剰余部分311を内面に押し付ける力は、直線部31Bに向かうに従って徐々に緩和され、直線部31Bにおいては、起立した状態となる。したがって、
図7に示されるように接続部3Aの上方、下方では剰余部分311による暗部が生じることになるが、直線部31B付近では暗部が略生じない状態となる。
【0036】
このように本実施形態では、上方固定部32(あるいは下方固定部33)を固定する際、メインパーツ31の上辺31a(あるいは下辺31d)に、メインパーツ31の素材が重なり合った状態を形成することで、バルーン4が膨張した際に湾曲部31Cを形成し、特に、直線部31Bにおいて、接続部3Aによって生じる剰余部分311を起立状態とさせている。したがって、剰余部分311が内面に押し付けられることで生じる暗部の発生を抑制し、バルーン3の見た目を良好な状態とするとともに、照明効率の向上を図ることが可能となっている。
【0037】
次に、バルーン3の製造工程、特に、メインパーツ31の上辺31aと上方固定部32の固定(あるいは、メインパーツ31の下辺31dと下方固定部33の固定)について説明する。ここでは、メインパーツ31の下辺31dと下方固定部33の固定を例に取って説明する。
【0038】
図9は、本発明の実施形態に係るバルーン3部分の製造工程を説明するための図である。
図6で説明したように、上辺31aを上方固定部32に固定(本実施形態では縫い合わせ)する際、上辺31aの長さL1を、上方固定部32の長さL3に合わせて固定することになる。したがって、上辺31aには、素材が重なり合った状態が形成されることになる。この素材が重なり合った状態は、上辺31aにおいて均等となることが好ましい。偏りが生じると、バルーン3の膨張時にきれいな形状が形成されないことになる。
【0039】
本実施形態の製造工程では、まず、
図9(A)に示されるように下辺31dに沿った位置に糸34を粗縫い34aする。糸34の一端(この場合、左端)は、メインパーツ31に固定された状態となっており、他端(この場合、右端)は、固定されておらず、はみ出した状態となっている。この状態で、糸34を引っ張ることで、粗縫い34aされた部分にしわが生じ、長さが短くなる。
図9(B)は、糸34が引っ張られ、下辺31dの長さが、見かけ上、下方固定部33と同じ長さにした状態である。その際、下辺31dに生じたしわが、まんべんなく均等になるようしわを手作業で分散し調整される。なお、粗縫い34aは、糸34は本実施形態のように1本で行ってもよいし、上糸と下糸の2本の糸でおこなってもよい。そして、粗縫い34aは、ミシン等による機械縫いでもよいし、手縫いのどちらで行うこととしてもよい。
【0040】
この見かけ上、長さがL3となった下辺31dに、それと同じ長さL3の下方固定部33が縫い合わせられる。
図9(C)は、下方固定部33を縫い合わせた状態である。このような製造工程によって、メインパーツ31の下辺34aの全域にわたって略均等に素材が重なった状態が形成される。なお、下方固定部33を縫い合わせた後に、粗縫い34aに使用した糸34は、取り除くこととしてもよいし、糸34を残した状態で使用することとしてもよい。上辺31aに対しても同じような工程で、上方固定部32が縫い合わせられる。その後、メインパーツの左辺31bと右辺31cを互いに縫製することで、バルーン3が形成される。
【0041】
ここで、長さL1と長さL3の関係は、その比率(長さL3/長さL1)の下限は、0.1以上とすることが好ましい。0.1より小さく設定した場合には、素材の重なり合い状態が密となり、重なり合い状態を形成することが困難となる。一方、比率(長さL3/長さL1)の上限は、0.9以下とすることが好ましい。上限を超えた場合、湾曲部31Cが小さくなり、湾曲部31Cによる上方あるいは下方に対する照明効率が低下することになる。また、この比率(長さL3/長さL1)の上限は、0.8以下とすることが適切な大きさの湾曲部31Cを形成する上では好ましい。さらに、この比率(長さL3/長さL1)の上限は、0.7以下とすることが更に好ましい。
【0042】
図9の製造工程では、粗縫い34aされた状態のしわを、作業者が均等に分散させることで素材が重なった状態を均等にすることとしていた。このような製造工程では、作業者によって仕上がりが異なること、また、製造時間がかかってしまうことが考えられる。次に紹介する製造工程は、このような課題を解消する一つの試みである。
【0043】
図10は、本発明の実施形態に係るバルーン3部分の製造工程を説明するための図である。
図9の製造工程では、糸34を粗縫い34aすることで素材が重なった状態を形成することとしていた。
図10に示す製造工程では、作業の簡易化を図るとともに、良好な状態を形成することを可能としている。
【0044】
まず、
図10(A)に示されるように、下辺31dに沿ってゴム35が固定される。本実施形態ではゴム35を縫い合わせることとしているが、接着する等、各種固定方法を採用することが可能である。なお、ゴム35は外部から力を加えて伸ばされた状態で固定されている。縮んだ状態のゴム35の長さは、下方固定部33と同じ長さL3となっている。ゴム35を固定後、ゴム35に加えていた力を取り除くことで、ゴム35は元の長さL3に縮むことになる。したがって、メインパーツ31の下辺31dの見かけ上の長さは、下方固定部33と同じ長さL3になる。また、ゴム35は、均等に伸び縮みするため、下辺31dに形成されるしわも均等に配分されることになる。
【0045】
その後、見かけ上の長さがL3となった下辺31dに、それと同じ長さL3の下方固定部33が縫い合わせられる。
図10(C)は、下方固定部33を縫い合わせた状態である。このような製造工程によって、メインパーツ31の下辺34aの全域にわたって略均等に素材が重なった状態が形成される。また、この製造工程では、
図9の場合と異なり手作業で、しわを分散させる作業を必要とせず、作業者による品質の差異、並びに、作業工程の簡易化が図られている。
【0046】
以上、
図9、
図10を用いて説明したように、矩形状のメインパーツ31を使用することで、素材の利用効率の向上を図ることが可能となっている。また、このような矩形状の素材であっても、素材が重なり合った状態を形成することで、
図7に示されるような湾曲部31C、直線部31Bを有する立体的な形状のバルーン3を形成することが可能となっている。また、素材が重なった状態を設けることで形成された湾曲部31Cにより、接続部3Aの剰余部分311を、バルーン3の内面に押し付けられた状態から起立させ、特に、直線部31B付近では、剰余部分311を起立させることで、剰余部分311による暗部形成を抑制することを可能としている。
【0047】
次に、他の実施形態に係る投光機1について説明する。
図11は、他の実施形態に係る投光機1のバルーン3部分を示す斜視図である。
図4等で説明した実施形態では、バルーン3の上方、及び、下方に湾曲部31Cを形成することとしていた。一方、
図11の実施形態では、バルーン3の下方にのみ湾曲部31Cを形成している。すなわち、バルーン3の下方は、
図4と同形態であるが、バルーン3の上方は、メインパーツ31の上辺31aと上方固定部32の長さが略同じ状態となっている。したがって、バルーン3は、直線部31Bと下方に位置する湾曲部31Cを有する形状となる。投光機1は、上方位置から照明することが多いため、下方に湾曲部31Cを有する形状が好ましい。また、上方に湾曲部31Cが設けられていないため、上方向の照明を減らし、周囲方向の照明効率の向上を図ることも可能となっている。
【0048】
このような形状においても、メインパーツ31と下方固定部33を固定時に、メインパーツ31の下辺31dに素材が重なった状態が形成されている。したがって、メインパーツ31を矩形状とすること、そして、特に、直線部31Bでは、剰余部分311を内側に起立させた状態とし、接続部3Aで生じる暗部を抑制することが可能となっている。
も構わない。
【0049】
図12は、他の実施形態に係る投光機1のバルーン3部分を示す斜視図である。
図12中、破線で示す箇所は、バルーン3の内部に配置された照明部2等を示している。前述した各種実施形態では、バルーン3の上方、及び、下方を照明部2側に固定することとしていた。本実施形態は、バルーン3の下方のみを固定する形態となっている。先に説明したように、バルーン3は、照明部2の送風による内圧の増加により膨張するため、このように上方を固定しない形態でも自立することが可能である。
【0050】
この実施形態のバルーン3の下方は、前述の実施形態と同様、バルーン3側の下方固定部33と、照明部2側の下方被固定部271によって固定されている。その際、下方固定部33には、メインパーツ31の布状素材を重ね合わせた状態で固定されているため、湾曲部31Cが形成されている。そして、湾曲部31Cの上方には、直線部31Bが形成された形状となっている。
【0051】
一方、バルーン3の上部は、メインパーツ31とは異なる上部パーツ36で形成されている。メインパーツ3と上部パーツ36は、互いに縫製される、あるいは、接着される等の固定方法で固定されている。その際、上部パーツ36側は、照明部2と固定されていない。照明部2の送風による内圧増加により、
図12に示すような形状を維持することが可能となっている。このように、
図12に示すバルーン3は、下方のみを固定することとしている。なお、バルーン3の固定は、このような下方のみを固定することに代え、上方のみを固定することも可能である。どちらの形態においても、メインパーツ31の布状素材を重ね合わせた状態で固定することで、湾曲部31Cを形成することが可能となる。
【符号の説明】
【0052】
1:投光機
2:照明部
3:バルーン
3A:接続部
4:従来のバルーン
4A:接続部
4B:接続部
4C:接続部
22:収納袋
24:上部パーツ
25:LEDパネル
26:下部パーツ
31:メインパーツ
31B:直線部
31C:湾曲部
31a:上辺
31b:左辺
31c:右辺
31d:下辺
32:上方固定部
33:下方固定部
34:糸
34a:下辺
35:ゴム
42:上方固定部
43:下方固定部
51:支柱
231:上方被固定部
271:下方被固定部
311:剰余部分
334:糸
411:中央パーツ
411a:上辺
411b:左辺
411c:右辺
411d:下辺
412:上部パーツ
412a:外周
412b:内周
413:下部パーツ
413a:外周
413b:内周