(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-17
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】超音波振動加工装置
(51)【国際特許分類】
B23B 37/00 20060101AFI20220106BHJP
B23B 1/00 20060101ALI20220106BHJP
B23C 3/00 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
B23B37/00
B23B1/00 C
B23C3/00
(21)【出願番号】P 2017150387
(22)【出願日】2017-08-03
【審査請求日】2020-07-31
(73)【特許権者】
【識別番号】390020639
【氏名又は名称】株式会社キラ・コーポレーション
(73)【特許権者】
【識別番号】504224153
【氏名又は名称】国立大学法人 宮崎大学
(73)【特許権者】
【識別番号】506060258
【氏名又は名称】公立大学法人北九州市立大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鬼鞍 宏猷
(72)【発明者】
【氏名】大西 修
(72)【発明者】
【氏名】村上 洋
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特許第5308599(JP,B1)
【文献】特開2006-247808(JP,A)
【文献】特開平04-053609(JP,A)
【文献】国際公開第2008/108463(WO,A1)
【文献】特開2011-131343(JP,A)
【文献】特開2010-207972(JP,A)
【文献】特開2002-219606(JP,A)
【文献】特開2016-087789(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23C 3/00
B23B 37/00
B23B 1/00
B24B 1/04
B06B 1/02
B06B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
先端部に工具ホルダを着脱自在に取り付けるホーン部
を有する本体部、回転軸方向において前記本体部よりも後方に配置された挟持部、及び
前記回転軸方向の中間部に
おいて前記本体部と前記挟持部とによって挟持された圧電素子を有しており、後端が前記圧電素子によって発生する超音波振動の節部に位置して前記回転軸周りを回転自在な状態で前記ハウジング内に支持された超音波振動子と、
この超音波振動子の後端部に前端部が連結され、前記超音波振動子と共に前記回転軸周りを回転自在な状態で前記ハウジング内に収納された連結部と、
この連結部の後端部に連結された回転駆動部と、
前記ハウジングに固定され、外部電源から高周波電力が供給される一次側コイルを具備した一次側トランス、及び前記一次側トランスと隙間を保持して前記超音波振動子の後端に連結され、前記超音波振動子とともに前記回転軸周りを回転し、前記一次側コイルとの間で電磁誘導によって発生する誘導起電力を前記圧電素子に供給する二次側コイルを具備した二次側トランスを有した非接触給電部と、
を備えていることを特徴とする超音波振動加工装置。
【請求項2】
ハウジングと、
先端部に工具ホルダを着脱自在に取り付けるホーン部
を有する本体部、回転軸方向において前記本体部の後方に配置された挟持部、及び
前記回転軸方向の中間部に
おいて前記本体部と前記挟持部とによって挟持された圧電素子を有しており、前記回転軸周りを回転自在な状態で前記ハウジング内に支持された超音波振動子と、
この超音波振動子の後端部に前端部が連結され、前記超音波振動子と共に前記回転軸周りを回転自在な状態で前記ハウジング内に収納され、後端に挿入口が開口したスプライン軸受を設けた連結部と、
この連結部の前記挿入口から前記スプライン軸受内に挿入し、前記回転軸周りを回転するスプライン軸を有し、前記連結部の後端部に連結された回転駆動部と、
前記ハウジングに固定され、外部電源から高周波電力が供給される一次側コイルを具備した一次側トランス、及び前記一次側トランスと隙間を保持して前記超音波振動子の後端に連結され、前記超音波振動子とともに前記回転軸周りを回転し、前記一次側コイルとの間で電磁誘導によって発生する誘導起電力を前記圧電素子に供給する二次側コイルを具備した二次側トランスを有した非接触給電部と、
を備えていることを特徴とする超音波振動加工装置。
【請求項3】
前記スプライン軸受は前記圧電素子によって発生する超音波振動の節部に位置していることを特徴とする請求項2記載の超音波振動加工装置。
【請求項4】
前記スプライン軸受の内周面と前記スプライン軸の外周面とが表面硬化処理されていることを特徴とする請求項2又は3記載の超音波振動加工装置。
【請求項5】
前記超音波振動子の後端と前記二次側トランスとの間に挟持され、前記超音波振動子と異なる固有音響インピーダンスを有する反射部材を備えていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の超音波振動加工装置。
【請求項6】
前記連結部と前記超音波振動子とは固有音響インピーダンスが異なることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の超音波振動加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は超音波振動加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の超音波振動加工装置は、ハウジング、スピンドル、工具ホルダ、超音波振動子、及び非接触給電部を備えている。スピンドルはハウジング内に回転軸周りに回転自在に支持されている。工具ホルダは、スピンドルの先端に連結され、切削・研削工具が取り付けられる。超音波振動子は工具ホルダを介して切削・研削工具を振動させる。非接触給電部は超音波振動子に高周波電力を供給する。また、非接触給電部は、一次側トランス、二次側トランス、及び一次側トランスと二次側トランスとの隙間を設定間隔に保持する隙間保持機構を具備している。一次側トランスは外部電源から高周波電力が供給される一次側コイルを有している。二次側トランスは一次側コイルとの間で電磁誘導によって誘導起電力を発生する二次側コイルを有している。
【0003】
この超音波振動加工装置は、超音波振動子の発熱等によってスピンドルの長さが変化しても、隙間保持機構が一次側トランスと二次側トランスとの隙間を設定間隔に保持する。このため、この超音波振動加工装置は、非接触給電部の二次側コイルにおいて、誘導起電力が安定して発生する。よって、この超音波振動加工装置は、超音波振動子へ高周波電力を安定して供給することができるため、超音波振動を利用した加工を良好に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の超音波振動加工装置は、スピンドルを回転駆動する駆動モータが、ハウジングの内周面に設けられたステータと、スピンドルの外周面に設けられたロータとから構成されているため、スピンドルが長尺になり、超音波振動エネルギーが工具側に効率よく伝わらないおそれがある。
【0006】
また、特許文献1の超音波振動加工装置は、超音波振動子の振動によって、二次側トランスが振動することを考慮していない。このため、この超音波振動加工装置は、二次側トランスが超音波振動子によって振動することによって、二次側コイルで発生する誘導起電力が安定しないおそれがある。
【0007】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、構成部品が超音波振動子によって振動することを抑制し、超音波振動を利用した加工を良好に行うことができる超音波振動加工装置を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明の超音波振動加工装置は、ハウジングと、
先端部に工具ホルダを着脱自在に取り付けるホーン部を有する本体部、回転軸方向において前記本体部よりも後方に配置された挟持部、及び前記回転軸方向の中間部において前記本体部と前記挟持部とによって挟持された圧電素子を有しており、後端が前記圧電素子によって発生する超音波振動の節部に位置して前記回転軸周りを回転自在な状態で前記ハウジング内に支持された超音波振動子と、
この超音波振動子の後端部に前端部が連結され、前記超音波振動子と共に前記回転軸周りを回転自在な状態で前記ハウジング内に収納された連結部と、
この連結部の後端部に連結された回転駆動部と、
前記ハウジングに固定され、外部電源から高周波電力が供給される一次側コイルを具備した一次側トランス、及び前記一次側トランスと隙間を保持して前記超音波振動子の後端に連結され、前記超音波振動子とともに前記回転軸周りを回転し、前記一次側コイルとの間で電磁誘導によって発生する誘導起電力を前記圧電素子に供給する二次側コイルを具備した二次側トランスを有した非接触給電部と、
を備えていることを特徴とする。
【0009】
この超音波振動加工装置は、圧電素子によって発生する超音波振動の節部に超音波振動子の後端を位置させ、その後端に二次側トランスが連結されている。超音波振動の節部において回転軸方向の振幅がなくなるため、この超音波振動加工装置は二次側トランスが回転軸方向の振動を受け難い。このため、この超音波振動加工装置は一次側トランスと二次側トランスとの隙間が変動し難い。よって、この超音波振動加工装置は非接触給電部が安定して圧電素子に高周波電力を供給することができる。
【0010】
したがって、第1発明の超音波振動加工装置は、構成部品である非接触給電部が超音波振動子の振動によって振動することを抑制し、超音波振動を利用した加工を良好に行うことができる。
【0011】
第2発明の超音波振動加工装置は、ハウジングと、
先端部に工具ホルダを着脱自在に取り付けるホーン部を有する本体部、回転軸方向において前記本体部よりも後方に配置された挟持部、及び前記回転軸方向の中間部において前記本体部と前記挟持部とによって挟持された圧電素子を有しており、前記回転軸周りを回転自在な状態で前記ハウジング内に支持された超音波振動子と、
この超音波振動子の後端部に前端部が連結され、前記超音波振動子と共に前記回転軸周りを回転自在な状態で前記ハウジング内に収納され、後端に挿入口が開口したスプライン軸受を有した連結部と、
この連結部の前記挿入口から前記スプライン軸受内に挿入し、前記回転軸周りを回転するスプライン軸を有し、前記連結部の後端部に連結された回転駆動部と、
前記ハウジングに固定され、外部電源から高周波電力が供給される一次側コイルを具備した一次側トランス、及び前記一次側トランスと隙間を保持して前記超音波振動子の後端に連結され、前記超音波振動子とともに前記回転軸周りを回転し、前記一次側コイルとの間で電磁誘導によって発生する誘導起電力を前記圧電素子に供給する二次側コイルを具備した二次側トランスを有した非接触給電部と、
を備えていることを特徴とする。
【0012】
この超音波振動加工装置は連結部と回転駆動部とをスプライン軸受とスプライン軸とによって連結している。このため、この超音波振動加工装置は、超音波振動子によって連結部が回転軸方向に振動するが、その振動が回転駆動部に伝搬し難い。よって、この超音波振動加工装置は、回転駆動部が超音波振動子の振動によって破損し難く、回転駆動部が長時間、良好に回転することができる。また、連結部の摩擦を減らすとともに摩耗を抑制することができ、これらの対策に係る超音波振動加工装置の休止時間を短縮することができる。また、この超音波振動加工装置は、回転駆動部に超音波振動が伝搬せず、圧電素子で生じる超音波振動エネルギーを工具に有効に伝達することができる。
【0013】
したがって、第2発明の超音波振動加工装置は、構成部品である回転駆動部が超音波振動子によって振動することを抑制し、超音波振動を利用した加工を良好に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施例1の超音波振動加工装置を示す断面図と、超音波振動子の振動の波を示す概念図を併記したものである。
【
図2】実施例1の超音波振動子を示す一部断面図である。
【
図3】実施例1の超音波振動加工装置の連結部のスプライン軸受とモータの駆動軸に形成されたスプライン軸であって、(A)は断面図であり、(B)は分解斜視図である。
【
図4】実施例1の超音波振動加工装置の非接触給電部の周りを示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明における好ましい実施の形態を説明する。
【0016】
第2発明の超音波振動加工装置において、前記スプライン軸受は前記圧電素子によって発生する超音波振動の節部に位置し得る。この場合、超音波振動の節部で回転軸方向に振幅がなくなるため、スプライン軸受における回転軸方向の振動が小さくなる。このため、このスプライン軸受にスプライン軸によって連結している回転駆動部に振動が伝搬し難い。よって、この超音波振動加工装置は、回転駆動部の超音波振動子の振動による破損を防止し、回転駆動部が長時間、良好に回転することができる。
【0017】
第2発明の超音波振動加工装置において、前記スプライン軸受の内周面と前記スプライン軸の外周面とが表面硬化処理され得る。この場合、この超音波振動加工装置は、スプライン軸受とスプライン軸との間の摩擦が減少するとともに、スプライン軸受とスプライン軸との耐摩耗性が向上する。このため、この超音波振動加工装置は、超音波振動子等が長時間、良好に回転することができる。
【0018】
第1発明及び第2発明の超音波振動加工装置において、前記超音波振動子の後端と前記二次側トランスとの間に挟持され、前記超音波振動子と異なる固有音響インピーダンスを有する反射部材を備え得る。この場合、この超音波振動加工装置は、超音波振動子と二次側トランスとの間に挟持された反射部材によって、振動が超音波振動子側に反射され、二次側トランスに伝搬し難くなる。このため、この超音波振動加工装置は、二次側トランスが回転軸方向の振動を受け難く、非接触給電部が安定して圧電素子に高周波電力を供給することができる。
【0019】
第1発明及び第2発明の超音波振動加工装置において、前記連結部と前記超音波振動子とは固有音響インピーダンスが異なり得る。この場合、この超音波振動加工装置は、超音波振動子で発生した振動の一部が、連結部と超音波振動子との境界部で反射し、連結部側に伝搬し難くなる。このため、この超音波振動加工装置は、回転駆動部に振動が伝搬し難く、振動による破損を防止して、回転駆動部が長時間、良好に回転することができる。
【0020】
次に、本発明の超音波振動加工装置を具体化した実施例1について、図面を参照しつつ説明する。
【0021】
<実施例1>
実施例1の超音波振動加工装置は、
図1に示すように、ハウジング10、超音波振動子20、連結部30、回転駆動部であるモータ40、非接触給電部50、反射部材60、及び工具ホルダ70を備えている。
【0022】
ハウジング10は、筒状のハウジング本体11と、ハウジング本体11の両端の夫々に取り付けられた蓋部材13,15と、ハウジング本体11内に取り付けられ、後述する一次側トランス51をハウジング本体11内に固定する固定部材17とを有している。ハウジング本体11は、後述する超音波振動子20や非接触給電部50等を収納する第1収納部C1と、後述する連結部30であるスプライン軸受31やジョイント部33の一部を収納する第2収納部C2とが形成されている。第2収納部C2は第1収納部C1の後方に外方向に広がる段差を介して連続している(前・後は、
図1において下・上を示す。以下同じ)。第1収納部C1の内側空間の形状は円柱状である。第1収納部C1は側面に空気が流入する第1空気孔12が形成されている。第2収納部C2の内側空間の形状は第1収納部C1の内側空間の形状よりも径が大きい円柱状である。第2収納部C2は側面に空気が流出する第2空気孔14が形成されている。第1空気孔12から空気を流入させ、第2空気孔14から空気を流出させることによって、後述するように、ハウジング10内に回転軸X周りを回転自在な状態に支持した超音波振動子20からの発熱によって、ハウジング10内の温度上昇を抑制することができる。
【0023】
ハウジング本体11の前端に取り付けられた蓋部材13は、中央部に円形状の開口13Aが設けられている。この開口13Aは、内径が後述する超音波振動子20の前端部の外径よりも僅かに大きく、超音波振動子20の前端部との間に隙間が形成されている。この隙間からハウジング10内の空気が流出する。これによっても、ハウジング10内の温度上昇を抑制することができる。ハウジング本体11の後端に取り付けられた蓋部材15は、中央部に円形状の開口15Aが設けられている。この開口15Aは内径が後述するモータ40の駆動軸43の外径よりも僅かに大きい。固定部材17は、円盤形状であり、中央部に円形状の開口17Aが設けられている。固定部材17の外径は第2収納部C2の内径に略等しい。固定部材17の開口17Aは内径が後述する連結部30のジョイント部33の軸部33Bの外径よりも僅かに大きい。固定部材17は、第2収納部C2と第1収納部C1の境界部に設けられた段部に係止してハウジング本体11内に取り付けられている。
【0024】
超音波振動子20は、
図1及び
図2に示すように、本体部21、4枚の圧電素子23、挟持部25、及び締付部27から構成されている。本体部21は、先端部に工具ホルダ70を着脱自在に取り付けるホーン部21Aを有している。各圧電素子23は重ね合わされて本体部21の後端から後方に配置されている。挟持部25は圧電素子23の後端から後方に配置されている。締付部27は、挟持部25の後端から後方に配置され、本体部21との間で圧電素子23と挟持部25とを挟み込んで締め付けている。本体部21、挟持部25、及び締付部27はステンレス鋼で形成されている。
【0025】
本体部21は略円柱形状である。本体部21は、先端部をスパナ等の工具で挟み込むために、先端部において反対側の2面21Dが平面にカットされている。また、本体部21は、先端部に形成されたホーン部21Aにおいて、中心軸上を後方に伸び、前方に開口した挿入孔21Bが形成されている。挿入孔21Bは奥方向に向けて僅かに縮径するように内側面が傾斜面で形成されている。また、挿入孔21Bは、底面の中央部に連続して中心軸上を後方に伸びた雌ねじ部21Cが形成されている。また、本体部21は、後端の中央部に後方に開口し、後端から中心軸上を前方に伸びた雌ねじ部(図示せず)が形成されている。
【0026】
圧電素子23は、外径が本体部21よりも僅かに小さい円環状であり、4枚重ね合わされている。圧電素子23の内径は後述する締付部27の軸部(図示せず)の外径よりも大きい。挟持部25は外径が本体部21と同じ円環状である。挟持部25の内径は後述する締付部27の軸部(図示せず)の外径よりも大きい。締付部27は締付部本体27Aと軸部(図示せず)とから構成されている。締付部本体27Aは、外径が本体部21や挟持部25よりも僅かに大きい円柱体に対して、反対側の2面を平面にカットした形状である。このため、締付部27は締付部本体27Aをスパナ等の工具で挟み込んで回転させることができる。締付部本体27Aは、後端の中央部に後方に開口し、締付部本体の中心軸上を前方に伸びた雌ねじ部27Bが形成されている。軸部(図示せず)は締付部本体27Aの前面の中央部から中心軸上を前方に伸びている。軸部(図示せず)は先端に雄ねじ部が形成されている。
【0027】
このような構成を有する超音波振動子20は、本体部21の後端に4枚重ねられた圧電素子23を配置し、その後端に挟持部25を配置した状態で、締付部27の軸部(図示せず)を挟持部25及び4枚の圧電素子23に挿通して本体部21の後端に開口した雌ねじ部(図示せず)に締付部27の軸部(図示せず)に形成された雄ねじ部をねじ込む。これによって、本体部21、4枚の圧電素子23、挟持部25、及び締付部27の各中心軸が一直線上に配置された状態で、超音波振動子20が形成される。この超音波振動子20は、
図1に示すように、後端(締付部27の後端)が圧電素子23によって発生する超音波振動の節部F1に位置するように形成されている。これによって、後述するように、超音波振動子20の後端に連結した二次側トランス52に圧電素子23によって発生する振動を伝搬し難くすることができる。
【0028】
この超音波振動子20は、以下に示すように、回転軸X周りを回転自在な状態でハウジング10内に支持されている。
この超音波振動子20はハウジング10の第1収納部C1に収納されている。この際、超音波振動子20は、前端部がハウジング本体11の前端に取り付けられた蓋部材13の開口13Aから突出している。このように超音波振動子20を配置した状態で、前後方向に離れた位置であって、第1収納部C1の内壁面と超音波振動子20の本体部21の外周面との間に配置された2個のボールベアリング81,82によって、超音波振動子20は回転軸X周りを回転自在な状態でハウジング10内に支持している。
【0029】
これら2個のボールベアリング81,82は、圧電素子23によって発生する超音波振動の節部F2,F3に相当する位置に配置されている。つまり、2個のボールベアリング81,82は超音波振動の半波長分の距離を離して配置されている。このため、2個のボールベアリング81,82は、圧電素子23によって発生する回転軸X方向の振動を受けずに超音波振動子20を回転自在な状態で支持することができるため、超音波振動子20が良好に回転することができる。
【0030】
前側に配置されたボールベアリング81は、その外輪とハウジング本体11の前端に取り付けられた蓋部材13との間に第1収納部C1の内壁面に当接した円筒状の第1スペーサ83を挟み込んでいる。また、各ボールベアリング81,82は、夫々の外輪の間に第1収納部C1の内壁面に当接した円筒状の第2スペーサ84を挟み込んでいる。また、後側に配置されたボールベアリング82は、その外輪とハウジング本体11内に取り付けられた固定部材17との間に第1収納部C1の内壁面に当接した円筒状の第3スペーサ85を挟み込んでいる。このようにして、2個のボールベアリング81,82は位置決めされている。
【0031】
連結部30は、
図1及び
図3(A),(B)に示すように、ジョイント部33とスプライン軸受31とから構成されている。ジョイント部33はチタン合金で形成されている。チタン合金は超音波振動子20の締付部27等を形成するステンレス鋼の固有音響インピーダンスと異なる固有音響インピーダンスを有している。このため、後述するように連結部30を超音波振動子20に連結しても、超音波振動子20で発生した振動の一部が、連結部30のジョイント部33と超音波振動子20の締付部27との境界部で反射し、連結部30側に伝搬し難くなっている。スプライン軸受31は炭素鋼で形成されている。ジョイント部33は頭部33Aと軸部33Bとから構成されている。頭部33Aは、平板状であり、軸部33Bが伸びている側から見た外形が、四角形の各角部を切り落とした八角形状である。軸部33Bは頭部33Aの前面の中央部から伸びている。軸部33Bは、略円柱状であり、先端部が縮径されて雄ねじ部33Cが形成されている。
【0032】
スプライン軸受31は軸受部31Aとフランジ部31Bとから構成されている。軸受部31Aは、略円筒状であり、中央を貫通する貫通孔の前端部の内径がその後方の内径よりも大きく形成されている。軸受部31Aは内径が小さい部分の内周面に内歯31Cを形成している。軸受部31Aの内歯31Cが形成された内周面はDLC(ダイアモンド ライク カーボン)コーティングされている。フランジ部31Bは軸受け部の前端外周縁から外方向に伸びた円環状である。フランジ部31Bは、同一円周上に等間隔で4個の貫通孔31Dが形成されている。これら貫通孔31Dを挿通するボルト(図示せず)によってスプライン軸受31とジョイント部33とが連結されている。
【0033】
この連結部30は、以下に示すように、超音波振動子20と共に回転軸X周りを回転自在な状態でハウジング10内に収納されている。
この連結部30は主にハウジング10の第2収納部C2に収納されている。連結部30はジョイント部33の軸部33Bがハウジング本体11に取り付けられた固定部材17の開口17A、及び後述する非接触給電部50の一次側トランス51の一次側コア51Aと二次側トランス52の二次側コア52Aの夫々の中央を貫通した貫通孔を挿通し、超音波振動子20の締付部本体27Aの後端に形成された雌ねじ部27Bにジョイント部33の軸部33Bの先端部に形成された雄ねじ部33Cがねじ込まれている。このようにして、連結部30は超音波振動子20と連結され、回転軸X周りを回転自在な状態でハウジング10内に収納されている。
【0034】
また、連結部30のスプライン軸受31は、
図1に示すように、連結部30が超音波振動子20と連結され、第2収納部C2に収納された状態で、その回転軸X方向の中央部が圧電素子23によって発生する超音波振動の節部F0に位置している。このため、スプライン軸受31における回転軸X方向の振動が小さくなるため、後述するように、スプライン軸受31にスプライン軸45によって連結しているモータ40に振動を伝搬し難くすることができる。
【0035】
モータ40は、
図1に示すように、モータ本体41とモータ本体41から突出した駆動軸43とを有している。モータ40はブレーキ機能を有している。つまり、モータ40は保持トルクを一定にすることができる。駆動軸43は、
図3(A),(B)先端部の外周面に外歯43Aが形成されており、スプライン軸45を形成している。スプライン軸45の外周面はDLCコーティングされている。このスプライン軸45は、
図1及び
図3(A),(B)に示すように、連結部30の後端に開口した挿入口からスプライン軸受31内に挿入される。このようにして、モータ40は連結部30に連結されている。
【0036】
このように、連結部30とモータ40とをスプライン軸受31とスプライン軸45とによって連結しているため、超音波振動子20によって連結部30が回転軸X方向に振動するが、その振動がモータ40に伝搬し難い。また、スプライン軸受31の内周面とスプライン軸45の外周面とがDLCコーティングされているため、スプライン軸受31とスプライン軸45との間の摩擦が減少するとともに、スプライン軸受31とスプライン軸45との耐摩耗性が向上する。このため、この超音波振動加工装置は、超音波振動子20等が長時間、良好に回転することができる。
【0037】
非接触給電部50は、
図1及び
図4に示すように、一次側トランス51と二次側トランス52とを有している。一次側トランス51は、一次側コア51Aと、一次側コイル51Bとを具備している。一次側コア51Aは、円環状であり、前面に同一円周上を一周する溝部51Cが形成されている。一次側コイル51Bは一次側コア51Aの溝部51Cに沿って何重にも巻かれている。一次側コイル51Bは、外部電源に電線W1を介して連結され、外部電源から高周波電力が供給される。一次側トランス51はハウジング10内に固定された固定部材17の前面に固定されている。この際、一次側トランス51は、一次側コア51Aの中央を貫通した貫通孔が固定部材17の開口17Aに重なるように、固定部材17に固定されている。つまり、一次側コア51Aの中心軸と固定部材17の開口の中心とが回転軸X上に位置している。
【0038】
二次側トランス52は、二次側コア52Aと、二次側コイル52Bとを具備している。二次側コア52Aは、円環状であり、後面に同一円周上を一周する溝部52Cが形成されている。二次側コイル52Bは二次側コア52Aの溝部52Cに沿って何重にも巻かれている。二次側トランス52は回転軸X周りを回転自在な状態でハウジング10内に支持された超音波振動子20の後端に後述する反射部材60を介して連結されている。この状態で、一次側トランス51と二次側トランス52との間に隙間Sが形成されている。二次側コイル52Bは電線W2を介して圧電素子23に連結されている。二次側コイル52Bは、一次側コイル51Bとの間で電磁誘導によって発生した誘導起電力を圧電素子23に供給する。
【0039】
反射部材60はアクリル製である。アクリルは超音波振動子20の締付部27等を形成するステンレス鋼の固有音響インピーダンスと異なる固有音響インピーダンスを有している。反射部材60は円盤状であり中央部に貫通孔が形成されている。反射部材60は、外径が超音波振動子20の締付部27の締付部本体27Aの外径と同じであり、貫通孔の内径が連結部30のジョイント部33の軸部33Bの外径よりも僅かに大きい。反射部材60は超音波振動子20の後端と二次側トランス52との間に接着されて挟持されている。このため、反射部材60が超音波振動子20の振動を超音波振動子20側に反射し、二次側トランス52に伝搬し難くすることができる。
【0040】
工具ホルダ70は、
図1に示すように、チャック部71、連結部72、及び挿入部73とから構成されている。チャック部71は、先端に向けて縮径する円錐台形状であり、中心軸上にエンドミル等の工具80を挿入する挿入孔71Aが形成されている。この工具ホルダ70はチャック部71に工具を焼嵌めして取り付ける焼嵌めホルダである。連結部72は、連結部72はチャック部71の後端に連続した六角柱形状である。挿入部73は、第1挿入部73A、第2挿入部73B、及び雄ねじ部73Cから構成されている。第1挿入部73Aは連結部72の後端に連続した円柱形状である。第1挿入部73Aは超音波振動子20のホーン部21Aに形成された挿入孔21Bの開口部の内径よりも小さい外径を有している。第2挿入部73Bは、第1挿入部73Aの後端に連続し、後方に向けて僅かに縮径する円錐台形状である。雄ねじ部73Cは第2挿入部73Bの後端の中央部に連続している。
【0041】
工具ホルダ70は、連結部72が、図示しない回転駆動装置に形成された六角穴に下方から挿入された状態で、回転駆動装置が回転することによって、挿入部73の雄ねじ部73Cが超音波振動子20のホーン部21Aに形成された挿入孔21Bの雌ねじ部21Cに締め付けたり、緩めたりして、自動的に工具交換をすることができる。工具を自動交換する際、モータの保持トルクを一定にすることにより、回転装置が工具ホルダを締め付けるトルクが一定になる。このため、超音波振動子20の本体部21に形成された奥方向に向けて僅かに縮径した傾斜面で形成された挿入孔21Bと、工具ホルダ70の挿入部73の第2挿入部73Bの外側面との間に作用する力(圧力)が一定になり、密着力が一定になる。このため、超音波振動子20から工具ホルダ70への超音波振動の伝達を常に安定させることができる。また、工具ホルダ70の挿入部73の雄ねじ部73Cと、超音波振動子20のホーン部21Aに形成された挿入孔21Bの雌ねじ部21Cが常に一定のトルクで締められるため、この部分の寿命を長くすることができる。さらに、手動で工具交換をすることに比べて、短時間で工具交換をすることができる。
【0042】
上述したように、実施例1の超音波振動加工装置は、ハウジング10、超音波振動子20、連結部30、モータ40、及び非接触給電部50を備えている。超音波振動子20はホーン部21Aと圧電素子23とを有している。ホーン部21Aは先端部に工具ホルダ70を着脱自在に取り付けている。圧電素子23は超音波振動子20の回転軸X方向の中間部に挟持されている。また、超音波振動子20は後端が圧電素子23によって発生する超音波振動の節部F1に位置している。さらに、超音波振動子20は回転軸X周りを回転自在な状態でハウジング10内に支持されている。連結部30は超音波振動子20の後端部に前端部が連結されている。また、連結部30は超音波振動子20と共に回転軸X周りを回転自在な状態でハウジング10内に収納されている。さらに、連結部30は後端に挿入口が開口したスプライン軸受31を有している。モータ40は、連結部30の挿入口からスプライン軸受31内に挿入し、回転軸X周りを回転するスプライン軸45を有し、連結部30の後端部に連結されている。非接触給電部50は、一次側トランス51、及び二次側トランス52を有している。一次側トランス51はハウジング10に固定されている。また、一次側トランス51は外部電源から高周波電力が供給される一次側コイル51Bを具備している。二次側トランス52は、一次側トランス51と隙間Sを保持して超音波振動子20の後端に連結されている。また、二次側トランス52は超音波振動子20と共に回転軸X周りを回転する。さらに、二次側トランス52は一次側コイル51Bとの間で電磁誘導によって発生する誘導起電力を圧電素子23に供給する二次側コイル52Bを具備している。
【0043】
この超音波振動加工装置は、圧電素子23によって発生する超音波振動の節部F1に超音波振動子20の後端を位置させ、その後端に二次側トランス52が連結されている。超音波振動の節部F0~F4等において回転軸X方向の振幅がなくなるため、この超音波振動加工装置は二次側トランス52が回転軸X方向の振動を受け難い。このため、この超音波振動加工装置は一次側トランス51と二次側トランス52との隙間Sが変動し難い。よって、この超音波振動加工装置は非接触給電部50が安定して圧電素子23に高周波電力を供給することができる。
【0044】
また、この超音波振動加工装置は連結部30とモータ40とをスプライン軸受31とスプライン軸45とによって連結している。このため、この超音波振動加工装置は、超音波振動子20によって連結部30が回転軸X方向に振動するが、その振動がモータ40に伝搬し難い。よって、この超音波振動加工装置は、モータ40が超音波振動子20の振動によって破損し難く、モータ40が長時間、良好に回転することができる。また、連結部30の摩擦を減らすとともに摩耗を抑制することができ、これらの対策に係る超音波振動加工装置の休止時間を短縮することができる。また、この超音波振動加工装置は、モータ40に超音波振動が伝搬せず、圧電素子23で生じる超音波振動エネルギーを工具に有効に伝達することができる。
【0045】
したがって、実施例1の超音波振動加工装置は、構成部品である非接触給電部50やモータ40が超音波振動子20によって振動することを抑制し、超音波振動を利用した加工を良好に行うことができる。
【0046】
また、この超音波振動加工装置において、スプライン軸受31は圧電素子23によって発生する超音波振動の節部F0に位置している。このため、超音波振動の節部F0~F4等で回転軸X方向に振幅がなくなるため、スプライン軸受31における回転軸X方向の振動が小さくなる。よって、このスプライン軸受31にスプライン軸45によって連結しているモータ40に振動が伝搬し難い。このため、この超音波振動加工装置は、モータ40の超音波振動子20の振動による破損(例えば、駆動軸43の軸受部の破損)を防止し、モータ40が長時間、良好に回転することができる。
【0047】
また、この超音波振動加工装置において、スプライン軸受31の内周面とスプライン軸45の外周面とがDLCコーティングされている。このため、この超音波振動加工装置は、スプライン軸受31とスプライン軸45との間の摩擦が減少するとともに、スプライン軸受31とスプライン軸45との耐摩耗性が向上する。よって、この超音波振動加工装置は、超音波振動子20等が長時間、良好に回転することができる。
【0048】
また、この超音波振動加工装置において、超音波振動子20の後端と二次側トランス52との間に挟持され、超音波振動子20の締付部27等と異なる固有音響インピーダンスを有する反射部材60を備えている。このため、この超音波振動加工装置は、超音波振動子20と二次側トランス52との間に挟持された反射部材60によって、振動が超音波振動子20側に反射され、二次側トランス52に伝搬し難くなる。よって、この超音波振動加工装置は、二次側トランス52が回転軸X方向の振動を受け難く、非接触給電部50が安定して圧電素子23に高周波電力を供給することができる。
【0049】
また、この超音波振動加工装置において、連結部30のジョイント部33と超音波振動子20の締付部27等とは固有音響インピーダンスが異なる。このため、この超音波振動加工装置は、超音波振動子20で発生した振動の一部が、連結部30のジョイント部33と超音波振動子20の締付部27との境界部で反射し、連結部30側に伝搬し難くなる。よって、この超音波振動加工装置は、モータ40に振動が伝搬し難く、振動による破損を防止して、モータ40が長時間、良好に回転することができる。
【0050】
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例1に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)実施例1では、スプライン軸受が圧電素子によって発生する超音波振動の節部に位置していたが、節部に位置していなくてもよい。
(2)実施例1では、スプライン軸受の内周面とスプライン軸の外周面とがDLCコーティングされていたが、他の表面硬化処理をしてもよい。また、スプライン軸受の内周面とスプライン軸の外周面とを表面硬化処理をしなくてもよい。
(3)実施例1では、連結部のスプライン軸受に駆動軸の先端部に形成されたスプライン軸を挿入することによって連結部とモータの駆動軸とを連結したが、連結部にプラス螺子の頭部のような十字状の凹部を形成し、この凹部にプラスドライバの先端部のような形状に形成したモータの駆動軸の先端部を挿入することによって連結部とモータの駆動軸とを連結してもよい。
(4)実施例1では、超音波振動子の後端と二次側トランスとの間に反射部材を挟持したが、反射部材を挟持しなくてもよい。
(5)実施例1では、連結部のジョイント部をチタン合金にしたが、アルミ合金であってもよい。アルミ合金は、超音波振動子の締付部等を形成するステンレス鋼の固有音響インピーダンスと異なるため、超音波振動子で発生した振動の一部が、連結部のジョイント部と超音波振動子の締付部との境界部で反射し、連結部側に伝搬し難くなる。
(6)実施例1では、工具ホルダがチャック部に工具を焼嵌めする焼嵌めホルダであったが、コレットチャックであってもよい。
(7)実施例1では、工具ホルダにエンドミルを取り付けたが他の切削・研削工具を取り付けてもよい。
【符号の説明】
【0051】
10…ハウジング
20…超音波振動子
21A…ホーン部
23…圧電素子
30…連結部
31…スプライン軸受
40…回転駆動部(モータ)
45…スプライン軸
50…非接触給電部
51…一次側トランス
51B…一次側コイル
52…二次側トランス
52B…二次側コイル
60…反射部材
70…工具ホルダ
F0,F1,F2,F3,F4…節部
X…回転軸