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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-17
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】感染防止用の二重針付き注射器
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/32 20060101AFI20220106BHJP
   A61M 5/31 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
A61M5/32
A61M5/31 540
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019568315
(86)(22)【出願日】2018-06-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-06
(86)【国際出願番号】 KR2018006614
(87)【国際公開番号】W WO2018230913
(87)【国際公開日】2018-12-20
【審査請求日】2021-06-04
(31)【優先権主張番号】10-2017-0075066
(32)【優先日】2017-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519437951
【氏名又は名称】パク、ジョンウン
【氏名又は名称原語表記】PARK, Jong-Eun
【住所又は居所原語表記】204dong 603ho(Bangbae-dong, Bangbae 2cha Hyundai Hometown) 34, Seocho-daero 1-gil, Seocho-gu, Seoul 06566 (KR)
(73)【特許権者】
【識別番号】519437962
【氏名又は名称】ソン、アリ
【氏名又は名称原語表記】SONG, Ah Ri
【住所又は居所原語表記】2F(Hwagok-dong) 237-6, Gomdallae-ro, Gangseo-gu, Seoul 07738 (KR)
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】パク、ジョンウン
(72)【発明者】
【氏名】ソン、アリ
【審査官】伊藤 孝佑
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2015-0000577(KR,A)
【文献】米国特許第05584819(US,A)
【文献】国際公開第2012/128115(WO,A1)
【文献】米国特許第04316462(US,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0109309(KR,A)
【文献】韓国登録特許第10-1648487(KR,B1)
【文献】韓国登録特許第10-1691308(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/32
A61M 5/31
A61M 5/158
A61M 5/165
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
注射液容器(30)内に挿入される一端の尖部(12)から、前記容器(30)内の注射液を他端に吸い込むように延長された注入用針棒(3)と、
体内に挿入される一端の尖部(13)から、他端に連結された注射器(10)の胴体(20)内の注射液を前記体内に送り出すように延長された注射用針棒(5)と、
前記注入用針棒(3)の他端と前記注射用針棒(5)の他端とを連結するように中間に形成され、注射液の注入前、前記注入用針棒(3)を介して前記注射液容器(30)から吸い込んだ注射液を、前記注射用針棒(5)から前記注射器(10)の内部に注入するように前記注射器(10)の筒先端(15)に結合されるが、注射液の注射前、注入用針棒ハブ(21)と注射用針棒ハブ(23)とに分離可能になるハブ筒体(7)と、
前記ハブ筒体(7)が分離される部分から前記注入用針棒(3)側に偏って取り付けられ、前記注射液容器(30)から注射液を吸い込むときに同伴流入する異物をろ過するフィルタ(9)と、
を備え
前記注射用針棒(5)は、
注射に用いられるまでは、前記ハブ筒体(7)により前記注射器胴体(20)内に挿入された状態を維持するが、
注射に用いられるときは、前記筒先端(15)から前記注射用針棒ハブ(23)を抜き取り、前記注射用針棒(5)と前記注射用針棒ハブ(23)の方向を反対側に回し、前記注射用針棒ハブ(23)を前記筒先端(15)に結合させることにより前記注射器胴体(20)の先端から延長されることを特徴とする感染防止用の二重針付き注射器。
【請求項2】
前記ハブ筒体(7)は、注射液の注射前、前記注入用針棒ハブ(21)と前記注射用針棒ハブ(23)とに分断可能に一体となることを特徴とする請求項1に記載の感染防止用の二重針付き注射器。
【請求項3】
前記ハブ筒体(7)は、注射液の注射前に分離可能に、前記注入用針棒ハブ(21)と前記注射用針棒ハブ(23)が着脱可能に結合されることを特徴とする請求項1に記載の感染防止用の二重針付き注射器。
【請求項4】
前記ハブ筒体(7)が分離される線を中心として、前記注射用針棒(5)側に偏って取り付けられ、注射液の注射時に分離される前記ハブ筒体(7)の注射用針棒ハブ(23)の内周面に残留する異物が、前記注射用針棒(5)を通過しないようにろ過する補助フィルタ(11)を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の感染防止用の二重針付き注射器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感染防止用の二重針付き注射器に係り、より詳しくは、二つの針棒を分離可能な一体として提供することにより、注射器針の感染を防止するとともに、注射液容器の注射液を体内に注射するまでの注射過程の全体において注射液に流入可能な異物を効果的に除去することのできる感染防止用の二重針付き注射器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、注射器は、アンプルやバイアルのような注射液容器に入った注射液を抜き取って患者の皮膚などの体内に注射する医療装備であって、このように注射器に入った注射液を体内に注射可能なように、注射器胴体の先端には注射器針が取り付けられる。
【0003】
ところが、このような注射液溶液は、アンプルの場合、ガラスからなる首部を力でカットして開口するので、首部を力でカットするときに生じるガラス片などがアンプルの胴体内に流入し、或いは、バイアルの場合、注射器針がゴム栓を刺通するとき、栓をなすゴムが注射器針内に混入するという問題点があった。
【0004】
このような問題点を解決するために、従来は、図1に示すようなフィルタニードル一体型注射器(特許文献1参照)が提案されている。
【0005】
この種の注射器は、図1に図面符号101として示すように、注射ニードル部110と、フィルタニードル部130と、を備えて構成され、フィルタニードル保護キャップ150をさらに備える。ここで、注射ニードル部110は、注射器シリンダ100に締め付けられる注射針ハブ111と、この注射針ハブ111に締め付けられる注射針112と、を有し、フィルタニードル部130は、注射針ハブ111が締め付けられるフィルタニードルハブ131と、このフィルタニードルハブ131と連通するフィルタ針132と、このフィルタ針132の注入空間に設置されるフィルタ133と、を有する。
【0006】
したがって、注射器101は、アンプルやバイアルのような注射液容器の注射液をシリンダ100内に入れようとするとき、キャップ150を開放し、フィルタ針132をアンプルやバイアルの内部に挿入する。その後、押し棒を引っ張り、シリンダ100の内部に注射液容器内の注射液を吸い込む。
【0007】
ところが、アンプルの場合は、開口時、ガラスからなる首部を外力でカットして開口するので、ガラス片などの異物が注射液に落下し、バイアルの場合は、フィルタ針132がゴム栓を刺通するとき、フィルタ針132内にゴム屑のような異物が混入するので、このように注射液を吸い込むとき、各種の異物が注射液と一緒に吸い上げられるが、フィルタ133により全てろ過されるようになる。したがって、注射時は、フィルタ針132を除去し、注射針112を患部などの体内に挿入すればよい。
【0008】
しかしながら、この種の従来の注射器101は、注射針112とフィルタ針132が同方向に配置されて重なっているので、フィルタ針132の直径が大きくなるほかなく、このため、フィルタ針132がバイアルのゴム栓を刺通するとき、抵抗が大きくなるので、使い勝手が極めて悪いという問題点があった。
【0009】
また、注射針112がシリンダ100の先端から長く延長されているので、フィルタ針132だけでは保護が足りず、このため、保護キャップ150を加えることにより、使用時に保護キャップ150を除去しなければならず、使い勝手が悪く、部品追加によりコストが増加するという問題点もあった。
【0010】
また、注射液の注入のため、フィルタ針132を注射液容器に入れる前に、シリンダ100を調整して、注射針112をフィルタ針132内で定位置に保たなければならないことから、これもまた、使用上の不便さをもたらすという問題点があった。
【0011】
一方、図2において図面符号201として示されたフィルタ注射器(特許文献2参照)は、筒先端203内にフィルタ211と逆止め弁213が取り付けられるので、図面上側に示すように、注射液容器から注射液を注射器に注入するときは、筒先端203と逆止め弁213の内側端215との間に隙間ができ、異物と一緒に注射液を矢印方向に吸い込み、注射器内に注入するようになる。これに対して、図面下側に示すように、注射器内に注入された注射液を体内に注射するときは、逆止め弁213の内側端215が筒先端203の内周面に密着し、逆止め弁213の外側端217が開放されながら、注射液を矢印方向に送り出す。このとき、注射器内部の異物は、フィルタ211によりろ過される。
【0012】
このように、フィルタ注射器201では、注射液を注射するとき、注射液に含まれた異物がフィルタ211によりろ過されるが、複雑でかつ精巧な形態の逆止め弁213やフィルタ211を部品として用いることから、コストが増加するという問題点があった。
【0013】
また、図2の上側に示すように、注射器の内部に注射液を注入した後、注射液容器から注射針を引き抜いてから注射針が体内に挿入されるまでは、空気中に露出し続けるので、空気感染や接触感染が生じる可能性が高くなり、衛生管理性能が低下するという問題点があった。
【0014】
また、上記した特許文献2において、フィルタを用いる基本的な形態として開示されたフィルタ注射器は、図3に図面符号301として示すように、注射器筒先端303と注射針ハブ305との間に、すなわち、筒先端303の先端に位置するように、ハブ305の内部にフィルタ311が取り付けられるので、保護キャップ320を除去し、注射針310を注射液容器に挿入して、注射液を注射器に注入するとき、注射液と一緒に吸い込まれる異物は、全てフィルタ311によりろ過され、注射器内には注射液だけが注入される。以降、注射液を注射するときは、注入に用いられた注射針310を廃棄し、新たな注射針を用いることにより、安全に注射できるようになる。
【0015】
しかしながら、この場合は、1回の注射のため、2つの注射針が消耗されるので、施術費用が増加し、資源浪費が引き起こされるという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】韓国登録特許第10-1435898号公報
【文献】韓国登録特許第10-1354451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、注射液を注入するときに用いる針と、注射液を注射するときに用いる針とを2つに分けて別途に備えるが、保護のための構造物を加えなくても、注射針をさらに安定的に保護できることを目的とする。
【0018】
また、注射液注入用の針棒と注射液注射用の針棒を互いに重ならないように別途に配置することにより、注射液注入用の針棒を薄く作り、それにより、注射用針棒の挿入力を高め、注射器の使用性能及び便利性を向上させることを他の目的とする。
【0019】
また、注入用針棒と注射用針棒の固定方式や固定部位を単純化・多辺化させることにより、注射器胴体に対する注射器針の固定力を高めることをまた他の目的とする。
【0020】
また、注射用針棒の外部への露出時間を最少化し、注射器針の病院内感染などの外部露出による感染を防止することにより、注射施術の安全性を高めることをさらに他の目的とする。
【0021】
また、注射器針のろ過構造を簡素化・合理化することにより、注射器針のコストを低減し、注射に要するコストを減らし、使用後に廃棄される注射器針の数量を減らし、注射器針、さらには注射器と関連した諸費用を節減することをさらに他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記目的を達成するための本発明は、注射液容器内に挿入される一端の尖部から、前記容器内の注射液を他端に吸い込むように延長された注入用針棒と、体内に挿入される一端の尖部から、他端に連結された注射器内の注射液を前記体内に送り出すように延長された注射用針棒と、前記注入用針棒の他端と前記注射用針棒の他端とを連結するように中間に形成され、注射液の注入前、前記注入用針棒を介して前記注射液容器から吸い込んだ注射液を、前記注射用針棒から前記注射器の内部に注入するように前記注射器の筒先端に結合されるが、注射液の注射前、注入用針棒ハブと注射用針棒ハブとに分離可能になるハブ筒体と、前記ハブ筒体が分離される部分から前記注入用針棒側に偏って取り付けられ、前記注射液容器から注射液を吸い込むときに同伴流入する異物をろ過するフィルタと、を備える感染防止用の二重針付き注射器を提供する。
【0023】
また、前記ハブ筒体は、注射液の注射前、前記注入用針棒ハブと前記注射用針棒ハブとに分断可能に一体となることが好ましい。
【0024】
また、前記ハブ筒体は、注射液の注射前に分離可能に、前記注入用針棒ハブと前記注射用針棒ハブが着脱可能に結合されることが好ましい。
【0025】
また、前記ハブ筒体が分離される線を中心として、前記注射用針棒側に偏って取り付けられ、注射液の注射時に分離される前記ハブ筒体の注射用針棒ハブの内周面に残留する異物が、前記注射用針棒を通過しないようにろ過する補助フィルタを備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る感染防止用の二重針付き注射器によれば、注射液を注入するときに用いる針と、注射液を注射するときに用いる針、すなわち、注入用針棒と注射用針棒が対向して配置されるので、注入用針棒の直径を最小化して、注入用針棒を注射液容器の蓋に挿入するとき、挿入動作をさらに容易に行うことができ、よって、注射器の使い勝手を向上させるようになる。
【0027】
また、このように注入用針棒と注射用針棒が対向して配置されるので、使用前の状態において、注射用針棒を注射器の胴体内に位置させ、注射用針棒を病院内の空気感染や接触感染から、より安全でかつ清潔に保護・保管することができる。
【0028】
また、注入用針棒ハブと注射用針棒ハブにそれぞれフィルタを配置することができるので、注射液容器から注入用針棒を介して注射液を吸い込むときと、注射器胴体に収容された注射液を体内に注射するとき、2回にわたって注射液中の異物をろ過することができるので、異物へのろ過性能をさらに向上させるようになる。
【0029】
また、このようなろ過性能を有するにもかかわらず、注射器針の内部構造を簡潔にすることにより、注射器針のコストを低減し、注射器針を追加使用しなくても、少ないコストで注射施術を行うことができるので、注射器と関連した諸費用を大幅に軽減させるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】従来の注射器を示す縦断面図である。
図2】従来のフィルタ注射器を示す部分拡大図である。
図3】基本的な形態を有する従来のフィルタ注射器を示す部分拡大図である。
図4】本発明に係る感染防止用の二重針付き注射器を示す縦断面図である。
図5】注射用針棒をアンプルに挿入する前の状態を示す図である。
図6】注射用針棒をバイアルに挿入する前の状態を示す図である。
図7】ハブ筒体が注射用針棒ハブと注入用針棒ハブとに分離された状態を示す図である。
図8】注射用針棒ハブを筒先端に挟む前の状態を示す図である。
図9】注射用針棒ハブを筒先端に挟んだ後の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付された図面を参照して、本発明の一実施形態に係る感染防止用の二重針付き注射器について詳述する。
【0032】
本発明に係る感染防止用の二重針付き注射器は、図4に示すように、注入用針棒3と、注射用針棒5と、ハブ筒体7と、フィルタ9とに大別されてなる。
【0033】
ここで、先ず、前記注入用針棒3は、注射器10の胴体20内に注射液を吸い込む部分であって、図4に示すように、一般の注射針のように管体をなし、内部に注射液通路が形成され、注射液容器30内に挿入されるように、一端がハブ筒体7に連結されて長く延長され、他端が、図6に示すように、注射液を吸い込むように、注射液容器30内に挿入され易いように、尖部12をなしている。すなわち、注射用針棒5は、図5に示すように、アンプルを注射液容器30として用いるときは、必ずしも尖部12が必要なものではないが、図6に示すように、バイアルを注射液容器30として用いるときは、尖部12が必ず必要となる。
【0034】
前記注射用針棒5は、一般の注射器の注射針に該当する部分であって、体内に挿入されて注射液を注入するので、図4に示すように、管体をなして長く延長され、内部に注射液通路を形成する。また、注射用針棒5は、体内に挿入されるように、一端が尖部13をなしており、他端がハブ筒体7に連結される。但し、注射用針棒5は、注射に用いられるまでは、図4に示すように、ハブ筒体7により注射器胴体20内に挿入された状態を維持するが、注射に用いられるときは、図9に示すように、ハブ筒体7により、注射器胴体20の先端から延長される。
【0035】
前記ハブ筒体7は、注射前状態において、注入用針棒3と注射用針棒5との間を連結する部分であって、図4に示すように、注射器胴体20の筒先端15に着脱可能に挟まれるが、このとき、必ず注射用針棒5側の端面が筒先端15に挟まれるようにしなければ、注射前状態において、注射用針棒5が注射器胴体20内で保護されるようにすることができない。したがって、ハブ筒体7は、注射液注入前の状態において、注射液容器30から注入用針棒3を介して吸い込んだ注射液を注射器胴体20内に入れる。
【0036】
以降、注射液の注入時、ハブ筒体7は、分離線17に沿って注入用針棒ハブ21と注射用針棒ハブ23とに分離されるので、図8及び図9に示すように、注射用針棒ハブ23が筒先端15に結合されることにより、注射用針棒5が体内に挿入されたとき、注射器胴体20に収容された注射液を注射用針棒5から体内に注入する。このとき、ハブ筒体7は、多様な方式で分離可能に形成されてもよいが、分離方式の一例として、図7に示すように、ハブ筒体7を外力により、注入用針棒ハブ21と注射用針棒ハブ23とに分断する方式が挙げられる。この場合、ハブ筒体7は、当然、分離線17に沿って分断されるため、分離線17は破断され易いように加工される。
【0037】
また他のハブ筒体7の分離方式として、図示していないが、注入用針棒ハブ21と注射用針棒ハブ23をネジ部などを介して着脱可能に結合する方式が挙げられる。すなわち、例えば、注射用針棒ハブ23の内周面には雌ネジ部を、これに対して、注入用針棒ハブ21の外周面には雄ネジ部を形成し、これらの螺合により、注射用針棒ハブ23と注入用針棒ハブ21とを着脱可能に分離させることもできる。
【0038】
前記フィルタ9は、注入用針棒3から注射液を吸い込むとき、注射液容器30から注射液と同伴して流入する異物をろ過する手段であって、図4に示すように、ハブ筒体7が分離される分離線17を中心として注入用針棒3側に偏って、すなわち、注入用針棒ハブ21側に偏って、ハブ筒体7内に取り付けられるので、図5または図6に示すように、注入用針棒3から注射液を注射器10内に注入するとき、注射液容器30内に残留してから、注射液と一緒にハブ筒体7に流入する各種の異物をろ過する役割をする。
【0039】
一方、ハブ筒体7内には、このようにフィルタ9が設置されているだけでなく、図4などに示すように、補助フィルタ11が一緒に取り付けられることが好ましいが、この補助フィルタ11は、注射用針棒5から体内に注射液を注入するとき、注射用針棒ハブ23に残留していた異物が注射用針棒5に流入しないようにろ過する役割をする。すなわち、注射液が注射器胴体20内に所定量だけ収容された後、注射のため、ハブ筒体7を分離させるときに生じる異物が注射用針棒ハブ23に残っても、注射時、注射液が注射用針棒ハブ23から注射用針棒5に移動する過程中、注射液に残留する異物は全て補助フィルタ11によりろ過される。このため、補助フィルタ11は、図4などに示すように、分離線17を中心として注射用針棒5側に偏って、すなわち、注射用針棒ハブ23側に偏ってハブ筒体7内に取り付けられる。
【0040】
以下、本発明の好適な実施形態に係る感染防止用の二重針付き注射器の作用について説明する。
【0041】
本発明に係る感染防止用の二重針付き注射器により、身体などの体内に注射液を注射するためには、先ず、図5または図6に示すように、アンプルやバイアルのような注射液容器30に注入用針棒3を挿入する。このとき、アンプルは、図5に示すように、上端の首部が切断されて開口するので、切断時の破片が注射液に入るようになり、バイアルは、図6に示すように、注射用針棒5の尖部13がゴム栓を刺通して入るまでに、尖部13の内側にゴム屑が挟み込まれるようになる。
【0042】
このように注射用針棒5を注射液容器30に挿入した状態で、注射器胴体20に対して押し棒(図示せず)を引き抜くと、注射液容器30内の注射液が注入用針棒3からハブ筒体7と注射用針棒5を経て胴体20内に吸い込まれる。このとき、アンプルに浮遊し、または注入用針棒3の尖部12に挟み込まれていた異物は、フィルタ9により全てろ過される。
【0043】
このようにして、注射液容器30内の注射液が全て注射器胴体20内に収容されると、図7に示すように、分離線17に沿ってハブ筒体7を二分する。このとき、ハブ筒体7は、図示のように一体となった場合、分離線17に沿って、注入用針棒ハブ21と注射用針棒ハブ23とに分断され、図示していないが、注入用針棒ハブと注射用針棒ハブが螺合された場合、分離線17に沿って螺合が解除される。但し、このようにハブ筒体7を分離する過程で、注射用針棒ハブ23の内部には、ハブ筒体7の分離時に生じたアンプルの破片のような各種の異物が残留することになる。
【0044】
それから、使用者は、図8に示すように、筒先端15から注射用針棒ハブ23を抜き取り、注射用針棒5と注射用針棒ハブ23の方向を反対側に回し、図9に示すように、注射用針棒ハブ23を筒先端15に結合する。このとき初めて空気中に露出する注射用針棒5は、注射液の注入後も、長時間注射器内に保管されるので、長時間露出による空気感染や接触感染の恐れなく安全かつ衛生的に用いるようになる。
【0045】
このようにして注射準備が完了すると、使用者は、注射器胴体20を手に持ち、患者の皮膚などの体内に注射用針棒5を刺す。続いて、押し棒を胴体20の内側に押し込むと、胴体20内に収容された注射液が注射用針棒5から体内に注入されるが、このとき、注射用針棒ハブ23の内部に残留していた各種の異物は、補助フィルタ11により全てろ過され、これにより、感染防止用の二重針付き注射器1による一連の注射液の注入動作、すなわち、注射動作が完了する。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明に係る感染防止用の二重針付き注射器によれば、注射液を注入するときに用いる針と、注射液を注射するときに用いる針、すなわち、注入用針棒と注射用針棒が対向して配置されるので、注入用針棒の直径を最小化して、注入用針棒を注射液容器の蓋に挿入するとき、挿入動作をさらに容易に行うことができ、よって、注射器の使い勝手を向上させるようになる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9