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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-17
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】保護具
(51)【国際特許分類】
   A61G 5/12 20060101AFI20220106BHJP
   B60R 22/12 20060101ALI20220106BHJP
   A61G 5/10 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
A61G5/12 707
B60R22/12
A61G5/10
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020215990
(22)【出願日】2020-12-25
【審査請求日】2021-04-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】511029578
【氏名又は名称】橋本エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】橋本 裕司
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 建一
(72)【発明者】
【氏名】大城 徳彦
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3072803(JP,U)
【文献】登録実用新案第3114046(JP,U)
【文献】特開2006-103447(JP,A)
【文献】特開2004-075015(JP,A)
【文献】米国特許第05833267(US,A)
【文献】登録実用新案第3075627(JP,U)
【文献】登録実用新案第3006776(JP,U)
【文献】米国特許第04610463(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 3/00- 5/14
B60R 21/00-22/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のシートベルトと搭乗者の腹部との間に取り付けられて搭乗者を保護するための保護具であって、
搭乗者の腹部に密着可能とされるとともに、衝撃を吸収可能な衝撃吸収部材を有した本体部と、
前記本体部に形成され、前記シートベルトを当該本体部に固定させ得る固定部と、
を具備し、前記衝撃吸収部材は、弾性特性が異なる発泡樹脂を複数層に重ねて形成されるとともに、その表面側に硬質樹脂から成る成形部材が取り付けられ、前記成形部材は、その両縁下部に搭乗者の骨盤の両側近傍を押圧し得る突出部がそれぞれ形成されたことを特徴とする保護具。
【請求項2】
前記固定部は、前記本体部の表面側に形成されるとともに、前記シートベルトを挿通して固定可能とされたことを特徴とする請求項1記載の保護具。
【請求項3】
前記成形部材は、その中央上部に切り欠き部が形成されたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の保護具。
【請求項4】
前記シートベルトは、車椅子に乗る搭乗者を保持して車両に固定し得ることを特徴とする請求項1~の何れか1つに記載の保護具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のシートベルトと搭乗者との間に取り付けられて搭乗者を保護するための保護具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば高齢者等を車椅子に乗せた状態で車両に搭乗させる場合、車椅子を車両の所定位置に固定させつつ搭乗者をシートベルトで保持させる必要がある。このシートベルトは、車椅子に乗る搭乗者の腹部を左右方向に亘って懸架するよう構成されているので、車両が急ブレーキした場合でも搭乗者が車椅子から飛び出してしまうのを回避可能とされているものの、その場合、搭乗者の腹部をシートベルトが強く圧迫してしまう可能性がある。
【0003】
そこで、従来、車椅子に乗った搭乗者と車両のシートベルトとの間に取り付けられて搭乗者を保護する保護具が提案されている(例えば、特許文献1参照)。かかる保護具は、ポリエチレン製の本体に複数本のひもが取り付けられており、搭乗者の腰部から腹部に亘って本体を巻き付けた状態としつつひもを結ぶことにより、搭乗者の胴回りに装着可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実用新案登録第3114046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の保護具は、搭乗者の胴回りに装着して使用されるものであったため、車両に搭乗する毎に装着作業が必要とされて煩わしいという不具合がある。また、従来の保護具を使用する際、例えば車両の急ブレーキ等で衝撃が付与されたとき、当該保護具とシートベルトとがずれてしまう虞があり、シートベルトによる搭乗者の保持が不十分となってしまう不具合もあった。なお、このような不具合は、車椅子に乗った搭乗者に限らず、例えばベビーシートやチャイルドシートに着座した乳幼児等にも同様に生じてしまう。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、搭乗者に対する装着を不要としつつシートベルトによる搭乗者の保持を確実に行わせることができる保護具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、車両のシートベルトと搭乗者の腹部との間に取り付けられて搭乗者を保護するための保護具であって、搭乗者の腹部に密着可能とされるとともに、衝撃を吸収可能な衝撃吸収部材を有した本体部と、前記本体部に形成され、前記シートベルトを当該本体部に固定させ得る固定部とを具備し、前記衝撃吸収部材は、弾性特性が異なる発泡樹脂を複数層に重ねて形成されるとともに、その表面側に硬質樹脂から成る成形部材が取り付けられ、前記成形部材は、その両縁下部に搭乗者の骨盤の両側近傍を押圧し得る突出部がそれぞれ形成されたことを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の保護具において、前記固定部は、前記本体部の表面側に形成されるとともに、前記シートベルトを挿通して固定可能とされたことを特徴とする。
【0010】
請求項記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の保護具において、前記成形部材は、その中央上部に切り欠き部が形成されたことを特徴とする。
【0012】
請求項記載の発明は、請求項1~の何れか1つに記載の保護具において、前記シートベルトは、車椅子に乗る搭乗者を保持して車両に固定し得ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、搭乗者の腹部に密着可能とされるとともに、衝撃を吸収可能な衝撃吸収部材を有した本体部と、本体部に形成され、シートベルトを当該本体部に固定させ得る固定部とを具備したので、搭乗者に対する装着を不要としつつシートベルトによる搭乗者の保持を確実に行わせることができる。
また、衝撃吸収部材は、弾性特性が異なる発泡樹脂を複数層に重ねて形成されるとともに、その表面側に硬質樹脂から成る成形部材が取り付けられたので、所望の強度及び弾性特性の本体部を得ることができる。
さらに、成形部材は、その両縁下部に搭乗者の骨盤の両側近傍を押圧し得る突出部がそれぞれ形成されたので、搭乗者の骨盤の両側近傍を突出部が押圧して座位保持が図られることとなり、左右方向の体の揺れを抑制することができる。
【0014】
請求項2の発明によれば、固定部は、本体部の表面側に形成されるとともに、シートベルトを挿通して固定可能とされたので、保護具に対するシートベルトの固定を容易且つ円滑に行わせることができる。
【0016】
請求項の発明によれば、成形部材は、その中央上部に切り欠き部が形成されたので、衝撃によって搭乗者の上半身が前方に倒れた際、搭乗者の腹部が切り欠き部に収まることとなり、腹部に強い圧迫を受けるのを回避することができる。
【0018】
請求項の発明によれば、シートベルトは、車椅子に乗る搭乗者を保持して車両に固定し得るので、車椅子に乗る搭乗者の保持を確実に行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る保護具を示す平面図及び正面図
図2図1におけるII-II線断面図
図3図1で示す状態からシートベルトを取り付け又は取り外し可能な状態とした断面図
図4】同保護具における本体部の衝撃吸収部材を示す平面図及び正面図
図5】同衝撃吸収部材を示す斜視図
図6】同保護具における本体部の成形部材を示す平面図及び正面図
図7】同成形部材を示す斜視図
図8】同保護具における衝撃吸収部材に成形部材を取り付けた状態を示す正面図
図9】同保護具を車椅子に乗った搭乗者に取り付けた状態を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係る保護具1は、車両のシートベルトSと搭乗者M(図9参照)との間に取り付けられて搭乗者Mを保護するためのもので、図1に示すように、本体部2及び固定部3を有して構成されている。
【0021】
本実施形態に適用されるシートベルトSは、図9に示すように、車両の床面Fから延設されるとともに、車椅子Aに乗る搭乗者Mを保持して車両に固定し得るもので、搭乗者Mの腹部を左右に懸架して保持する所謂2点式シートベルトから成る。なお、車両の床面Fには、車椅子Aを車両に固定するための固定具(不図示)が取り付けられており、当該固定具にて車椅子Aが固定されるとともに、その車椅子Aに乗る搭乗者MをシートベルトSが保持し得るようになっている。
【0022】
本体部2は、図9に示すように、車椅子Aに乗る搭乗者Mの腹部に密着可能とされるとともに、図4、5に示すように、衝撃を吸収可能な衝撃吸収部材4を有したものである。かかる衝撃吸収部材4は、図4に示すように、搭乗者Mの腹部に倣った弧状の全体形状とされており、図2に示すように、弾性特性が異なる発泡樹脂を複数層(本実施形態においては、第1層4a及び第2層4b)に重ねて形成されている。
【0023】
これら第1層4a及び第2層4bは、それぞれ弧状に形成された部材を接着剤等にて一体化されたもので、例えば第2層4bの方が第1層4aより弾性率が高い発泡樹脂にて形成されている。なお、衝撃吸収部材4は、衝撃を吸収し得る他の材料から成るものであってもよく、さらには第1層4a及び第2層4bから成るものに限らず、3層以上から成るもの、或いは単一層から成るものであってもよい。
【0024】
また、本実施形態に係る本体部2は、図2、8に示すように、衝撃吸収部材4の表面側に硬質樹脂(少なくとも衝撃吸収部材4より強度及び剛性が高い樹脂)から成る成形部材5が取り付けられている。かかる成形部材5は、図6、7に示すように、衝撃吸収部材4の表面形状に倣って弧状に曲がった板状部材から成り、その中央上部に切り欠き部5aが形成されるとともに、その両縁下部に突出部(5b、5b)がそれぞれ形成されている。
【0025】
切り欠き部5aは、搭乗者Mの腹部に対応する部位に形成された凹形状から成り、図8に示すように、成形部材5が衝撃吸収部材4の表面に取り付けられた状態において、本体部2の中央に位置するようになっている。また、突出部(5b、5b)は、搭乗者Mの骨盤の両側近傍に対応する部位に形成された凸形状から成り、図8に示すように、成形部材5が衝撃吸収部材4の表面に取り付けられた状態において、本体部2の両側に位置するようになっている。
【0026】
さらに、本実施形態に係る本体部2は、図1、2に示すように、衝撃吸収部材4及び成形部材5を内在させる被覆生地2aを有するとともに、その被覆生地2aの正面側には、固定部3が一体形成されている。かかる固定部3は、本体部2(具体的には、本体部2を構成する被覆生地2a)に形成された左右一対の部位から成り、シートベルトSを当該本体部2に固定させ得るよう構成されている。
【0027】
また、被覆生地2aの所定部位には、非使用時の保護具1を車椅子Aに取り付けるための取付部g(図1、9参照)が形成されている。かかる取付部gは、裏面に面ファスナーeが形成されており、車椅子Aの所定部位(フレームや肘掛け等)に巻いた状態で面ファスナーeの所定部位を同面ファスナーeの他の部位に接着させることにより保護具1を車椅子Aに取付可能とされている。なお、面ファスナーeは、A面B面混合面ファスナー又はオスメス混合面ファスナーと称されるものであるが、他の形態の面ファスナーや他の接着部材等であってもよい。
【0028】
本実施形態に係る固定部3は、図2に示すように、面ファスナーdを有するとともに、シートベルトSを挿通して固定可能とされている。この面ファスナーdは、図3に示すように、一方の面ファスナーd1と他方の面ファスナーd2とを有して構成されており、例えばフック状に起毛された一方の面ファスナーd1をループ状に起毛された他方の面ファスナーd2に押し付けることで貼り付くようになっている。
【0029】
そして、シートベルトSを固定させる際、図3に示すように、一方の面ファスナーd1を他方の面ファスナーd2から離間させた状態としてシートベルトSを挿通させ、その後、図2に示すように、一方の面ファスナーd1を他方の面ファスナーd2に押し付けることでシートベルトSを固定部3にて固定させることができる。また、図3に示すように、一方の面ファスナーd1を他方の面ファスナーd2から離間させることにより、シートベルトSを固定部3から取り外すことができる。
【0030】
次に、本実施形態に係る保護具1の使用方法について説明する。
先ず、固定具(不図示)により車椅子Aを車両の床面Fに固定させるとともに、その車椅子Aに乗る搭乗者Mの腹部に本体部2を密着させる。このとき、図9に示すように、本体部2の弧状を搭乗者Mの腹部に倣わせて密着させるとともに、シートベルトSを固定部3に挿通して固定させる。
【0031】
このように、本実施形態によれば、搭乗者Mの腹部に密着可能とされるとともに、衝撃を吸収可能な衝撃吸収部材4を有した本体部2と、本体部2に形成され、シートベルトSを当該本体部2に固定させ得る固定部3とを具備したので、搭乗者Mに対する装着を不要としつつシートベルトSによる搭乗者Mの保持を確実に行わせることができる。すなわち、本体部2を搭乗者Mの腹部に密着させて取り付けるので、搭乗者Mに対するひも等による装着を不要とすることができるとともに、固定部3によりシートベルトSを本体部2に固定させるので、保護具1に対してシートベルトSがずれてしまうのを防止することができ、搭乗者Mの保持を確実に行わせることができるのである。
【0032】
また、本実施形態に係る固定部3は、本体部2の表面側に一体形成されるとともに、シートベルトSを挿通して固定可能とされたので、保護具1に対するシートベルトSの固定を容易且つ円滑に行わせることができる。さらに、本実施形態に係る衝撃吸収部材4は、弾性特性が異なる発泡樹脂を複数層(第1層4a及び第2層4b)に重ねて形成されるとともに、その表面側に硬質樹脂から成る成形部材5が取り付けられたので、所望の強度及び弾性特性の本体部2を得ることができる。
【0033】
またさらに、本実施形態に係る成形部材5は、その中央上部に切り欠き部5aが形成されたので、衝撃によって搭乗者Mの上半身が前方に倒れた際、搭乗者Mの腹部が切り欠き部5aに収まることとなり、腹部に強い圧迫を受けるのを回避することができる。また、本実施形態に係る成形部材5は、その両縁下部に突出部(5b、5b)がそれぞれ形成されたので、搭乗者Mの骨盤の両側近傍を突出部(5b、5b)が押圧して座位保持が図られることとなり、左右方向の体の揺れを抑制することができる。
【0034】
加えて、本実施形態に適用されるシートベルトSは、車椅子Aに乗る搭乗者Mを保持して車両に固定し得るので、車椅子Aに乗る搭乗者Mの保持を確実に行わせることができる。車椅子Aは、図9に示すようなものに限らず、種々形態のものに適用することができ、例えば電動の車椅子であってもよい。
【0035】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば固定部3を単なるループ状の部位としたものであってもよく、或いは他のファスナーを用いてシートベルトSを固定するものとしてもよい。また、本実施形態においては、車椅子Aに乗る人の腹部とシートベルトSとの間に取り付けられた保護具1とされているが、車両のシートに取り付けられたベビーシート(横臥した乳児を保持するシート)やチャイルドシート(幼児が着座する着座面から成るシート)に適用するものであってもよい。さらに、車両のシートに直接着座した搭乗者Mの腹部に取り付けられて、搭乗者Mを保護する保護具に適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
搭乗者の腹部に密着可能とされるとともに、衝撃を吸収可能な衝撃吸収部材を有した本体部と、本体部に形成され、シートベルトを当該本体部に固定させ得る固定部とを具備し、衝撃吸収部材は、弾性特性が異なる発泡樹脂を複数層に重ねて形成されるとともに、その表面側に硬質樹脂から成る成形部材が取り付けられ、成形部材は、その両縁下部に搭乗者の骨盤の両側近傍を押圧し得る突出部がそれぞれ形成された保護具であれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 保護具
2 本体部
2a 被覆生地
3 固定部
4 衝撃吸収部材
4a 第1層
4b 第2層
5 成形部材
5a 切り欠き部
5b 突出部
S シートベルト
A 車椅子
M 搭乗者
d 面ファスナー
d1 一方の面ファスナー
d2 他方の面ファスナー
F 床面
【要約】      (修正有)
【課題】搭乗者に対する装着を不要としつつシートベルトによる搭乗者の保持を確実に行わせることができる保護具を提供する。
【解決手段】車両のシートベルトSと搭乗者の腹部との間に取り付けられて搭乗者を保護するための保護具であって、搭乗者の腹部に密着可能とされるとともに、衝撃を吸収可能な衝撃吸収部材を有した本体部2と、本体部2に形成され、シートベルトSを当該本体部2に固定させ得る固定部3とを具備した保護具1である。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9