(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-17
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】レーダシステム及びレーダ探索方法
(51)【国際特許分類】
G01S 13/78 20060101AFI20220106BHJP
G01S 13/46 20060101ALI20220106BHJP
G01S 5/12 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
G01S13/78
G01S13/46
G01S5/12
(21)【出願番号】P 2021006191
(22)【出願日】2021-01-19
(62)【分割の表示】P 2016182464の分割
【原出願日】2016-09-19
【審査請求日】2021-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】501204525
【氏名又は名称】国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】595106730
【氏名又は名称】塩見 格一
(73)【特許権者】
【識別番号】000115636
【氏名又は名称】リオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】塩見 格一
(72)【発明者】
【氏名】青山 秀次
【審査官】渡辺 慶人
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-140049(JP,A)
【文献】特開2015-172561(JP,A)
【文献】特開2009-270827(JP,A)
【文献】特表2011-520097(JP,A)
【文献】特表2016-524704(JP,A)
【文献】特表2007-502414(JP,A)
【文献】特開2009-244272(JP,A)
【文献】特開2007-327839(JP,A)
【文献】米国特許第05140328(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0215961(US,A1)
【文献】野田晃彦,受動型2次監視レーダーのしくみと実際,RFワールド,日本,CQ出版株式会社,2016年08月01日,第35号,Pages 116-124
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 5/00 - 5/14
5/18 - 5/30
7/00 - 7/64
13/00 - 17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
探索信号を全方位に同時発信して、その探索信号に対して
探索対象が返す帰還信号を受信するレーダ送受信機と、
前記レーダ送受信機を包囲するように配置されて、前記帰還信号を受信する複数のレーダ受信機と、
前記レーダ送受信機の前記探索信号の発信時刻及び前記帰還信号の受信時刻の情報と、前記複数のレーダ受信機の前記帰還信号の受信時刻の情報とを取得し、それら情報に基づいて特定される前記探索対象の位置を含んだ複数の楕円球の殻及び円球の殻のなかから、前記発信時刻と前記受信時刻との差分が最も小さい2つの楕円球の殻と前記円球の殻とを選定して、それら3つの殻の交差部分を前記探索対象の位置として演算する探索演算装置と、を備えるレーダシステム。
【請求項2】
前記レーダ送受信機は、第1方向とそれと直交する第2方向とに複数行、複数列に並べられ、
前記複数のレーダ受信機は、前記第1方向で隣合う前記レーダ送受信機同士の間と、前記第2方向で隣合う前記レーダ送受信機同士の間とにそれぞれ配置されて、隣合う前記レーダ送受信機に共有されている請求項1に記載のレーダシステム。
【請求項3】
レーダ送受信機を包囲するように複数のレーダ受信機を配置しておき、前記レーダ送受信機が全方位に同時発信する探索信号に対して
探索対象が返す帰還信号を前記レーダ送受信機と前記複数のレーダ受信機とで受信し、
前記レーダ送受信機の前記探索信号の発信時刻及び前記帰還信号の受信時刻の情報と、前記複数のレーダ受信機の前記帰還信号の受信時刻の情報とに基づいて特定される前記探索対象の位置を含んだ複数の楕円球の殻及び円球の殻のなかから、前記発信時刻と前記受信時刻との差分が最も小さい2つの楕円球の殻と前記円球の殻とを選定して、それら3つの殻の交差部分を前記探索対象の位置として演算するレー
ダ探索方法。
【請求項4】
前記レーダ送受信機を、第1方向とそれと直交する第2方向とに複数行、複数列に並べて、前記第1方向で隣合う前記レーダ送受信機同士の間と前記第2方向で隣合う前記レーダ送受信機同士の間とに前記レーダ受信機をそれぞれ配置し、隣合う前記レーダ送受信機に前記レーダ受信機を共有させる請求項3に記載のレー
ダ探索方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーダ送信機が発信した探索信号に対して探索対象が返信した帰還信号をレーダ受信機で受信し、探索信号の発信時刻と帰還信号の受信時刻とに基づいて探索対象の位置を演算するレーダシステム及びレーダ探索方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のレーダシステムでは、探索信号の発信時刻と帰還信号の受信時刻とに基づいて、探索対象の位置を含む球体の殻を特定し、探索対象の方位から探索対象の位置を絞っていた。その探索対象の方位を求めるために、従来の探索システムは、回転型の信号発信部(アンテナ)を備えていた(例えば、先行文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-171037号公報(
図1,段落[0011],[0012])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来のレーダシステムが必要とする回転型の信号発信部は、探索信号及び帰還信号を伝達しながら回転する部品が高価であると共に消耗品であるため、毎年、高額な維持費を要することが問題になっていた。そこで、本開示では、従来より維持費を抑えることが可能な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためになされた請求項1の発明は、探索信号を全方位に同時発信して、その探索信号に対して探索対象が返す帰還信号を受信するレーダ送受信機と、前記レーダ送受信機を包囲するように配置されて、前記帰還信号を受信する複数のレーダ受信機と、前記レーダ送受信機の前記探索信号の発信時刻及び前記帰還信号の受信時刻の情報と、前記複数のレーダ受信機の前記帰還信号の受信時刻の情報とを取得し、それら情報に基づいて特定される前記探索対象の位置を含んだ複数の楕円球の殻及び円球の殻のなかから、前記発信時刻と前記受信時刻との差分が最も小さい2つの楕円球の殻と前記円球の殻とを選定して、それら3つの殻の交差部分を前記探索対象の位置として演算する探索演算装置と、を備えるレーダシステムである。
【0006】
請求項2の発明は、前記レーダ送受信機は、第1方向とそれと直交する第2方向とに複数行、複数列に並べられ、前記複数のレーダ受信機は、前記第1方向で隣合う前記レーダ送受信機同士の間と、前記第2方向で隣合う前記レーダ送受信機同士の間とにそれぞれ配置されて、隣合う前記レーダ送受信機に共有されている請求項1に記載のレーダシステムである。
【0007】
請求項3の発明は、レーダ送受信機を包囲するように複数のレーダ受信機を配置しておき、前記レーダ送受信機が全方位に同時発信する探索信号に対して探索対象が返す帰還信号を前記レーダ送受信機と前記複数のレーダ受信機とで受信し、前記レーダ送受信機の前記探索信号の発信時刻及び前記帰還信号の受信時刻の情報と、前記複数のレーダ受信機の前記帰還信号の受信時刻の情報とに基づいて特定される前記探索対象の位置を含んだ複数の楕円球の殻及び円球の殻のなかから、前記発信時刻と前記受信時刻との差分が最も小さい2つの楕円球の殻と前記円球の殻とを選定して、それら3つの殻の交差部分を前記探索対象の位置として演算するレーダ探索方法である。
【0008】
請求項4の発明は、前記レーダ送受信機を、第1方向とそれと直交する第2方向とに複数行、複数列に並べて、前記第1方向で隣合う前記レーダ送受信機同士の間と前記第2方向で隣合う前記レーダ送受信機同士の間とに前記レーダ受信機をそれぞれ配置し、隣合う前記レーダ送受信機に前記レーダ受信機を共有させる請求項3に記載のレーダ探索方法である。
【0009】
なお、「探索演算装置」は、発信機又は受信機と一体に設けられていてもよい。また、「探索演算装置」の一部がレーダ送信機と一体に設けられ、「探索演算装置」の他の一部がレーダ受信機と一体に設けられていてもよい。つまり、「探索演算装置」は、分散した複数の装置からなるものであてもよい。
【0010】
また、探索信号及び帰還信号として「電波」を使用するレーダシステムに変えて、「超音波」を使用するシステムとしてもよい。超音波を使用する場合には、「発信機」として「超音波発信機」を備えると共に「受信機」として「超音波受信機」を備えた構成になる。
【0011】
さらに、上記した帰還信号は、一般に知られる二次監視レーダシステムにおける「回答信号」のように、発信機からの探索信号(この場合、「質問信号」と呼ばれる)に対して探索対象に搭載のトランスポンダが予め定められたルールに則って返信するものであってもよいし、一次監視レーダシステムにおける反射信号のように、発信機からの探索信号が探索対象で反射して生成される反射信号であってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のレーダシステム及びレーダ探索方法では、探索対象の位置を含んだ2つの楕円球の殻と円球の殻の交差部分から探索対象の位置を演算するので、非回転型の信号発信部を使用して探索対象を探索することができる。つまり、本発明によれば、従来は必要とされた高価な消耗部品を廃止して、探索システムの維持費を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本開示の第1実施形態のレーダシステムの概念図
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第1実施形態]
以下、本開示のレーダシステムの一実施形態を、
図1~
図4に基づいて説明する。このレーダシステム10Aは、トランスポンダを搭載した航空機を探索対象Pとする、所謂、二次監視レーダシステムであって、
図1に示すように、1つのレーダ発信機TX1と、第1~第3のレーダ受信機RX1(以下、区別しない場合は、単に「レーダ受信機RX1」という)を備え、それらは相互に例えば、1~100[km]の間隔をあけて分散配置されている。
【0015】
図2に示すように、レーダ発信機TX1は、GPSクロック受信機11を有し、GPS衛星からGPS信号を受信して時刻データを得る。また、レーダ発信機TX1は、一般的な二次監視レーダシステムのレーダ発信機と同様に質問変調器12を有する。質問変調器12は、PLD(プログラマブルロジックディバイス)13からの指令に基づいて、質問信号を1030[MHz]の搬送波で変調して出力する。より具体的には、質問信号には、A質問信号とC質問信号とがあり、一般的なものと同様に、例えば、「A質問信号・A質問信号・C質問信号」や「A質問信号・C質問信号・A質問信号」等のように所定の組み合わせパターンで、質問信号を所定間隔(例えば、5[msec])を空けて出力する。そして、質問変調器12から出力された質問信号が、無線出力回路14のアンテナ15から無線出力される。
【0016】
そのアンテナ15は、従来のレーダ発信機のアンテナのようには回転せず、固定型になっていて、全方位に向けて質問信号を同時発信する。具体的には、例えば、Sモードの回答信号を送信するために航空機に搭載されている発信用アンテナと同様の構造(例えば、マグネトロンを主体とした構造)になっている。
【0017】
また、レーダ発信機TX1は、PLD13に接続された送信側演算装置16を備えている。送信側演算装置16は、レーダシステム用プログラムを実行しているパソコンによって構成され、通信ネットワークに接続されている。ここで、通信ネットワークに、複数の送信側演算装置16が接続されることを想定し、通信ネットワーク上でそれら送信側演算装置16同士を区別するために、各送信側演算装置16に「発信機番号」が設定されている。そして、PLD13が、質問変調器12に質問信号を出力させたときの発信時刻(GPSの時刻データに基づくもの)と、質問信号がA質問かC質問かのモード種別とを送信側演算装置16に付与する。すると、送信側演算装置16は、質問信号の発信時刻とモードの種別と発信機番号とをセットにした発信データを生成し、その発信データを複数纏めたものを発信プロファイルにして、第1~第3の各レーダ受信機RX1に通信ネットワークを介して送信する。
【0018】
図3には、レーダ受信機RX1の構成が示されている。レーダ受信機RX1は、レーダ発信機TX1と同様に、GPSクロック受信機20を有し、GPS衛星からGPS信号を受信して時刻データを得る。また、レーダ受信機RX1は、1090[MHz]の第1受信回路22とPLD24と受信側演算部25も備えている。第1受信回路22は、一般的な二次監視レーダシステムのレーダ受信機と同様に、質問信号に対して探索対象P(詳細には、探索対象Pに搭載のトランスポンダ)から返信される1090[MHz]の回答信号を受信する。また、受信側演算部25は、レーダ発信機TX1の送信側演算装置16と同様に、レーダシステム用プログラムを実行しているパソコンによって構成され、通信ネットワークに接続されている。さらに、受信側演算部25には、各レーダ発信機TX1に設定された前述の「発信機番号」と、各レーダ発信機TX1の位置データと、レーダ受信機RX1自身の位置データとが記憶されている。
【0019】
そして、各レーダ受信機RX1は、受信用アンテナ21にて受信した質問信号を第1受信回路22で復調して(復調回路は図示せず)、A/Dコンバータ27(14bitsADC)を通してPLD24に取り込む。PLD24は、回答信号に含まれるモードの種別や探索対象Pの高度や機体識別番号等の情報と、回答信号の受信時刻(GPSの時刻データに基づくもの)とをセットして受信側演算部25に付与する。受信側演算部25は、PLD24から付与されたモードの種別、高度等の情報と受信時刻とをセットにして受信データを生成し、その受信データを複数纏めたものを受信プロファイルにして一時的に記憶する。そして、受信側演算部25は、レーダ発信機TX1から送信されてくる送信プロファイルの送信データと受信プロファイルの受信データとを照合し、例えば、質問信号と回答信号のモードの種別が同じでかつ、質問信号の発信時刻と回答信号の受信時刻との差分が基準時間内の受信データと送信データとをペアリングし、それにレーダ発信機の位置データとレーダ受信機RX1の位置データとを付加して楕円球特定データを生成する。
【0020】
このようにして、第1~第3の各レーダ受信機RX1の受信側演算部25が、それぞれ楕円球特定データを生成することで、3つの楕円球が特定される。即ち、
図1に示すように、第1のレーダ受信機RX1で生成される楕円球特定データによって、第1のレーダ受信機RX1の位置とレーダ発信機TX1の位置とを焦点としかつ探索対象Pの位置を含む第1の楕円球の殻E1が特定され、第2のレーダ受信機RX1で生成される楕円球特定データによって、第2のレーダ受信機RX1の位置とレーダ発信機TX1の位置とを焦点としかつ探索対象Pの位置を含む第2の楕円球の殻E2が特定され、さらには、第3のレーダ受信機RX1で生成される楕円球特定データによって、第3のレーダ受信機RX1の位置とレーダ発信機TX1の位置とを焦点としかつ探索対象Pの位置を含む第3の楕円球の殻E3が特定される。
【0021】
第1~第3のレーダ受信機RX1の各受信側演算部25は、楕円球特定データを通信ネットワークを介して監視装置30に送信する。監視装置30は、探索対象Pの位置を監視する監視センターに配置されたパソコンがレーダシステム用プログラムを実行することによって構成されている。そして、この監視装置30は、第1~第3のレーダ受信機RX1から受け取った楕円球特定データ群を、モードの種別が同じでかつ質問信号の発信時刻が同じ3つの楕円球特定データを1つのグループにするグループ化処理を行う。そして、同じグループの3つの楕円球特定データから特定される第1~第3の楕円球の殻E1,E2,E3の交点を探索対象Pの位置として演算する。そのようにして演算された探索対象Pの位置及び軌跡は、監視装置30に備えられたモニタに表示される。
【0022】
このように本実施形態のレーダシステム10Aでは、全方位に質問信号を同時発信するレーダ発信機TX1に対してレーダ受信機RX1を3つ設けたことで、
図1に示すように、レーダ発信機TX1の位置とレーダ受信機RX1の位置とを2つの焦点としかつ探索対象Pの位置を含む3つの楕円球の殻E1,E2,E3を特定することができる。そして、それら3つの楕円球の殻E1,E2,E3の交差部分から探索対象Pの位置を演算することができる。つまり、本実施形態のレーダシステム10Aによれば、非回転型のアンテナ15を使用して、従来の回転型のアンテナを使用したものと同様に探索対象Pの位置を求めることができる。これにより、従来は必要とされた高価な消耗部品を廃止して、レーダシステム10Aの維持費を抑えることが可能になる。また、従来の回転型のアンテナでは、狭指向アンテナであってサイドローブが存在するためエコーやゴースト像が発生する問題が生じ得たが、本実施形態のレーダシステム10Aのアンテナ15は、全方位に質問信号を同時発信するのでサイドローブに起因したエコーやゴーストの問題も解消される。
【0023】
なお、本実施形態では、第1~第3のレーダ受信機RX1の3つの受信側演算部25と監視装置30とから「探索演算装置」が構成されている。
【0024】
[第2実施形態]
本実施形態は
図5及び
図6に示されている。このレーダシステム10Bに備えられたレーダ発信機TX2(
図5参照)は、第1実施形態のレーダ発信機TX1に備えられていたGPSクロック受信機11及び送信側演算装置16を有していない。また、
図6に示すように、このレーダシステム10Bの第1~第3のレーダ受信機RX2は、第1実施形態のレーダ受信機RXに、1030[MHz]の質問信号を受信する第2受信回路23を追加した構成になっている。そして、第2受信回路23がレーダ発信機TX2から受信した質問信号を、PLD24が、A/Dコンバータ27を通して取り込み、その質問信号の受信時刻とモードの種別をセットにした補助受信データを生成して受信側演算部25に付与する。受信側演算部25は、レーダ発信機TX2からレーダ受信機RX2への質問信号の到達時間を予め記憶していて、その到達時間と補助受信データの受信時刻とから質問信号の発信時刻を演算する。そして、その発信時刻を使用して第1実施形態で説明した楕円球特定データを生成する。その他の構成に関しては、第1実施形態と同じである。
【0025】
[第3実施形態]
本実施形態のレーダシステム10Cは、
図7及び
図8に示されている。このレーダシステム10Cは、第1~第3のレーダ発信機TX3(以下、区別しない場合は、単に「レーダ発信機TX3」という)と1つのレーダ受信機RX3とを備えている。これらレーダ発信機TX3及びレーダ受信機RX3は、ハード的には第1実施形態のレーダ発信機TX1及びレーダ受信機RX1と略同一の構造になっている。
【0026】
また、第1~第3のレーダ発信機TX3のPLD13(
図2参照)は、相互にタイミングをずらして質問信号を出力するようにPLD13がプログラムされている。具体的には、例えば、第1のレーダ発信機TX3は、GPS信号に基づく毎秒の小数点以下1位の単位で、x.1[sec]~2[sec]の間に質問信号を発信し、第2のレーダ発信機TX3は、x.3[sec]~4[sec]の間に質問信号を発信し、第3のレーダ発信機TX3は、x.5[sec]~6[sec]の間に質問信号を発信するようにPLD13がプログラムされている。そして、第1~第3のレーダ発信機TX3の送信側演算装置16が、第1実施形態とレーダ発信機TX1の送信側演算装置16と同様に、発信データを生成し、その発信データを複数纏めたものを発信プロファイルにして、レーダ受信機RX3に通信ネットワークを介して送信する。
【0027】
レーダ受信機RX3は、第1~第3のレーダ発信機TX3からの各質問信号に対して探索対象Pが返信する回答信号を受信して、レーダ受信機RX3の受信側演算部25(
図3参照)が、第1実施形態と同様に受信データを生成し、その受信データを複数纏めたものを受信プロファイルにして一時的に記憶する。そして、第1~第3の各レーダ発信機TX1から送信されてくる送信プロファイルの送信データと受信プロファイルの受信データとを照合して楕円球特定データを生成する。また、レーダ受信機RX3の受信側演算部25は、第1実施形態の監視装置30と同様に、楕円球特定データ群のグループ化処理も行い、同じグループの3つの楕円球特定データから特定される第1~第3の楕円球の殻E1,E2,E3の交点を探索対象Pの位置として演算する。
【0028】
なお、本実施形態では、第1~第3のレーダ発信機TX3の3つの送信側演算装置16とレーダ受信機RX3の受信側演算部25とから「探索演算装置」が構成されている。
【0029】
[第4実施形態]
本実施形態のレーダシステムは、図示さておらず、第2実施形態のレーダシステム10Bのレーダ受信機RX2と同じ第2受信回路23を第3実施形態のレーダ受信機RX3に備えて、レーダ受信機RX3の受信側演算部25で補助受信データを作成するようになっている。その他の構成に関しては、第3の実施形態と同じである。
【0030】
[第5実施形態]
本実施形態のレーダシステム10Dは、
図9に示されている。このレーダシステム10Dは、レーダ発信機とレーダ受信機とを兼ねた3つのレーダ送受信機TX/RXを分散配置して備える。そして、第3実施形態のレーダシステム10Cと同様に、複数のレーダ送受信機TX/RXが相互にタイミングをずらして質問信号を発信し、各レーダ送受信機TX/RXが発信した質問信号に対する回答信号を別のレーダ送受信機TX/RXで受信する。そして、各レーダ送受信機TX/RXが、前述した発信プロファイルと受信プロファイルとを作成して、例えば、通信ネットワークを通して監視装置30に送信する。そして、監視装置30が、発信プロファイルと受信プロファイルとから楕円球特定データを生成して、3つの殻E1,E2,E3を特定する。その他の構成に関しては、第1~第3の実施形態と同じである。
【0031】
[第6実施形態]
本実施形態のレーダシステム10Eは、
図10に示されている。このレーダシステム10Eは、第5実施形態と同じハード構成をなし、3つのレーダ送受信機TX/RXを分散配置して備える。そして、各レーダ送受信機TX/RXが、相互にタイミングをずらして質問信号を発信し、その質問信号に対する回答信号を自身で受信する。そして、各レーダ送受信機TX/RXが、前述した発信プロファイルと受信プロファイルとを作成して監視装置30に送信する。監視装置30は、発信プロファイルと受信プロファイルとから楕円球特定データに準じた円球特定データを生成して、各レーダ送受信機TX/RXの位置を中心として探索対象Pの位置を含む円球の殻F1,F2,F3を特定する。そして、3つの円球の殻F1,F2,F3の交点を探索対象Pの位置として演算する。
【0032】
[第7実施形態]
本実施形態のレーダシステム10Fは、
図11に示されている。このレーダシステム10Fは、レーダ送受信機TX/RXを中心にして、例えば半径略50[km]の架空の円C1上に4つのレーダ受信機RXを略等間隔に並べて備える。そして、レーダ送受信機TX/RXが、質問信号を発信して、その質問信号に対する回答信号を自身で受信する。また、その回答信号は、レーダ送受信機TX/RXを囲む複数のレーダ受信機RXによっても受信される。そして、レーダ送受信機TX/RXに設けられた監視装置30に、レーダ受信機RXとレーダ送受信機TX/RXによって生成される発信データと受信データの全てが集められ、レーダ送受信機TX/RXの位置を中心として探索対象Pの位置を含む円球の殻F1と、レーダ送受信機TX/RXと各レーダ受信機RXとを焦点とした4つの楕円球の殻E1,E2,E3,E4とが特定される。そして、質問信号の発信時刻と回答信号の受信時刻との差分(即ち、返信時間)が最も小さい2つの楕円球の殻E1,E2が選定され、それら2つの楕円球の殻E1,E2と円球の殻F1との交点が探索対象Pの位置として求められる。
【0033】
[第8実施形態]
本実施形態のレーダシステム10Gは、
図12に示されている。このレーダシステム10Gは、複数のレーダ送受信機TX/RXと複数のレーダ受信機RXとを東西、南北に並べて備えている。具体的には、例えば、国土のうち質問信号又は回答信号が届かない広大な領域が広大監視領域Xとして設定されている。ここで、質問信号及び回答信号が確実に届き得る距離を「レーダ到達距離」とすると、レーダ到達距離は、例えば、略100[km]であって、広大監視領域Xの縦横の少なくとも何れか一方は、レーダ到達距離の数倍以上の大きさになっている。そして、その広大監視領域X全体を網羅するように、東西にレーダ到達距離の間隔をあけて複数の縦基準線L1が並ぶように設定されると共に、南北にレーダ到達距離の間隔をあけて複数の横基準線L2が並ぶように設定されている。そして、四方を縦横の基準線L1,L2に囲まれた各升目の図心にそれぞれレーダ送受信機TX/RXが配置されていると共に、各升目の4辺の各中央にレーダ受信機RXが配置されている。これにより、各升目毎に第7実施形態のレーダシステム10Fが構成され、各升目内で探索対象Pの位置を探索することができ、広大監視領域Xの全体でも探索対象Pの探索が可能になる。
[他の実施形態]
【0034】
(1)上記した第1~第8の実施形態のレーダシステム10A~10Gは、3つの殻の交点として探索対象Pの位置を演算していたが、回答信号から取得できる探索対象Pの高度の情報を利用して、その高度と2つの殻から探索対象Pの位置を演算する構成としてもよい。
【0035】
(2)第1~第8の実施形態のレーダシステム10A~10Gは、探索信号として「質問信号」を発信して、帰還信号として探索対象Pから「回答信号」を受信していたが、探索信号が探索対象Pで反射したものを帰還信号として受信する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0036】
10A~10G レーダシステム
16 送信側演算装置
25 受信側演算部
30 監視装置
RX レーダ送受信機
TX/RX レーダ送受信機
TX レーダ発信機
X 広大監視領域