IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ピラミッドの特許一覧

<>
  • 特許-ライナー及びライナーを生産する方法 図1
  • 特許-ライナー及びライナーを生産する方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-17
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】ライナー及びライナーを生産する方法
(51)【国際特許分類】
   D03D 1/00 20060101AFI20220106BHJP
   D03D 15/533 20210101ALI20220106BHJP
   D03D 15/587 20210101ALI20220106BHJP
【FI】
D03D1/00 Z
D03D15/533
D03D15/587
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017147771
(22)【出願日】2017-07-31
(65)【公開番号】P2019026964
(43)【公開日】2019-02-21
【審査請求日】2020-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】390007054
【氏名又は名称】株式会社ピラミッド
(74)【代理人】
【識別番号】100116573
【弁理士】
【氏名又は名称】羽立 幸司
(74)【代理人】
【識別番号】100136180
【弁理士】
【氏名又は名称】羽立 章二
(72)【発明者】
【氏名】石川 善朗
(72)【発明者】
【氏名】倉富 敏史
【審査官】春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-350650(JP,A)
【文献】特開昭60-246844(JP,A)
【文献】特開平09-234737(JP,A)
【文献】特開昭50-083561(JP,A)
【文献】特開2005-146454(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D1/00-27/18
B29D30/00-30/72
C09J7/00-7/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ライナーであって、
溶融性のある高溶融部と、前記高溶融部よりも溶融性の低い低溶融部を備え、
導電部が、前記低溶融部にあって前記高溶融部になく、
前記導電部と前記高溶融部との間に前記低溶融部の一部があり、
前記導電部は、導電糸であり、
前記高溶融部は、溶融性のある溶融糸を含み、
前記低溶融部は、前記溶融糸を含まず、前記溶融糸よりも溶融性が低い通常糸を含む、ライナー。
【請求項2】
ライナーであって、
溶融性のある高溶融部と、前記高溶融部よりも溶融性の低い低溶融部を備え、
導電部が、前記低溶融部にあって前記高溶融部になく、
前記導電部と前記高溶融部との間に前記低溶融部の一部があり、
前記低溶融部は、複数の並行する低溶融帯状部であり、
前記導電部は、前記低溶融帯状部に並行であり、
前記高溶融部は、隣接する前記低溶融帯状部の間にあり、
前記導電部は、導電糸であり、
前記高溶融部は、溶融性のある溶融糸を含み、
前記低溶融部は、前記溶融糸を含まず、前記溶融糸よりも溶融性が低い通常糸を含む、ライナー。
【請求項3】
前記導電糸が、前記溶融糸と交差しない、請求項1又は2に記載のライナー。
【請求項4】
ライナーを生産する方法であって、
前記ライナーにおいて、溶融性のある溶融糸を含ませて構成する高溶融部に導電糸の一部又は全部を挿入せず、前記高溶融部よりも溶融性の低い低溶融部は前記溶融糸を含まず且つ前記溶融糸よりも溶融性が低い通常糸を含んで構成し、前記低溶融部には前記導電糸の一部又は全部を挿入するステップを含むライナーを生産する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、ライナー及びライナーを生産する方法に関し、特に、高い離型性と除電性能を実現可能なライナー等に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に記載されているように、ゴムシートは、粘着性がある。ライナーは、シート間に介在させて、シートとシートの接着を防止するために使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特公平1-60569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ライナーに溶融糸を含めることにより、離型性を高める(すなわち、ライナーとゴムシートとを離れやすくする)ことが期待される。また、ライナーに導電糸を含めることにより、静電気を除去すること(除電性能)も期待される。
【0005】
しかしながら、発明者らは、ライナーに溶融糸と導電糸を同時に含めて実験すると、後に説明するように、導電糸による除電性能を阻害することを見出した。そのため、単純にライナーに溶融糸及び導電糸を含めても、離型性向上と除電性能を両立させることは困難である。
【0006】
そこで、本願発明は、ライナーに溶融糸と導電糸を同時に含めて、離型性向上と除電性能を両立させることに適したライナー等を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明の第1の観点は、ライナーであって、溶融性のある高溶融部と、前記高溶融部よりも溶融性の低い低溶融部を備え、導電糸が、前記低溶融部にあって前記高溶融部になく、前記導電糸と前記高溶融部との間には前記低溶融部の一部がある。
【0008】
本願発明の第2の観点は、第1の観点のライナーであって、前記低溶融部は、複数の並行する低溶融帯状部であり、前記導電部は、前記低溶融帯状部に並行であり、前記高溶融部は、隣接する前記低溶融帯状部の間にある。
【0009】
本願発明の第3の観点は、第1又は第2の観点のライナーであって、前記高溶融部は、溶融性のある溶融糸を含み、前記低溶融部は、前記溶融糸を含まず、前記溶融糸よりも溶融性が低い通常糸を含み、導電糸が、前記通常糸と交差し、前記溶融糸と交差しない。
【0010】
本願発明の第4の観点は、ライナーを生産する方法であって、前記ライナーにおいて、溶融性を有する高溶融部に導電糸の一部又は全部を挿入せず、前記高溶融部よりも溶融性の低い低溶融部に前記導電糸の一部又は全部を挿入するステップを含む。
【発明の効果】
【0011】
本願発明の各観点によれば、導電部の周囲に、高溶融部がなく、低溶融部とすることにより、高溶融部が、導電糸による除電性能を阻害せずに離型性を向上させることができ、導電糸による除電性能と高溶融部による離型性の向上を同時に実現することが可能になる。
【0012】
発明者らは、実験により、溶融糸と導電糸を単純に使用してライナーを使用した場合、溶融糸が溶けて固まることで導電糸を覆ってしまい、除電性能を阻害することを見出した。本願発明では、導電部の周囲を低溶融部とすることで、タッキネスが高くて帯電しやすいゴム部材に対し、効果的に使用することができる。
【0013】
さらに、本願発明は、本願発明の第2及び第3の観点にあるように、タテ糸及び/又はヨコ糸を工夫することにより実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本願発明の実施の形態に係るライナーの一例を示す図である。
図2図1のライナーと3つの比較例の帯電圧の実験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、図面を参照して、本願発明の実施例について説明する。なお、本願発明は、この実施例に限定されるものではない。
【実施例
【0016】
図1は、本願発明の実施の形態に係るライナーの一例を示す。ライナー1は、複数の帯状の溶融部3(添え字は省略する。)(本願請求項の「高溶融部」の一例)と、溶融部3の間にファブリック部5(本願請求項の「低溶融部」の一例)を備える。図1では、溶融部3とファブリック部5が、縞模様となっている。ファブリック部5は、ほぼ中央に導電部7(本願請求項の「導電部」、「導電糸」の一例)を備える。
【0017】
使用原糸は、タテ糸が、通常糸(PET 280dtex/2)と、導電糸(東レ株式会社製 SCIMA(登録商標) 200detx/1)と、溶融糸(ユニチカ株式会社製 メルセット(登録商標) 560dtex/1)である。ヨコ糸が、通常糸(PET280dtex/2)である。撚数は、タテ・ヨコ共に、20(Z)(回/10cm)である。密度は、タテが102(本/5cm)、ヨコが77(本/5cm)である。厚みは、0.36mmである。
【0018】
溶融部3のタテ糸は、溶融糸である。ファブリック部5のタテ糸は、導電部7が通常糸と導電糸で、その両側(導電部7と、当該導電部7に隣接する溶融部3との間)が通常糸である。導電部7は、3cm間に1本挿入されている。
【0019】
溶融部3は、溶融糸が溶融して固まってフィルム状(糸通しが一体)になり、ファブリックにはない離型性がある。そのため、溶融部3により離型性を向上させることができる。また、導電部7に導電糸を挿入することにより、除電性能を実現することができる。
【0020】
後に説明するように、発明者らは、実験により、単純に溶融糸と導電糸を使用しても、溶融糸が溶けて固まることで導電糸を覆ってしまい、導電性を阻害することを見出した。そこで、本願発明のライナーでは、導電糸の周囲の糸を通常糸とすることで、溶融糸による離型性の向上と、導電糸による除電性能を両立させることを実現した。これにより、本実施例のライナーは、タッキネスが高くて帯電しやすいゴム部材に対し、効果的に使用することができる。
【0021】
以下、図1の本発明の実施例(本実施例)を、3つの比較例と比較しつつ評価する。比較例1は、タテ糸もヨコ糸も通常糸のものである。比較例2は、タテ糸が通常糸と導電糸で、ヨコ糸が通常糸である。比較例2は、比較例1のタテ方向に、導電糸を挿入したものである。比較例3は、タテ糸が通常糸と導電糸で、ヨコ糸が溶融糸である。比較例3は、比較例2のヨコ糸を溶融糸としたものである。
【0022】
比較例1について、具体的に説明する。撚数は、タテ・ヨコ共に、30(Z)(回/10cm)である。密度は、タテが95(本/5cm)、ヨコが63(本/5cm)である。厚みは、0.33mmである。
【0023】
まず、本実施例が、比較例1と比較して、離型性が向上していることを説明する。試験条件は、加硫条件が60℃×30分かけるゲージ圧5.0MPaである。引張条件が、打ち抜き1インチ(25.4mm×150mm)、つかみ間隔2cm、引張速度100mm/minである。試験方法は、試験用ゴムを使用し、60℃×30分で圧着し、オートグラフ引張試験にて剥離性を評価した。表1に示すように、2.2分の1ほど、ゴムとの密着力が低下した。よって、本実施例が、比較例1と比較して、離型性が向上している。
【0024】
【表1】
【0025】
続いて、本実施例が、比較例1、3と比較して、比較例2と同等の除電性能を有することを説明する。表2は、本実施例と比較例1~3の初期帯電圧(kV)を示す。図2は、(a)比較例1、(b)比較例2、(c)比較例3、及び、(d)本実施例の帯電圧テストを示す。横軸は回数、縦軸は帯電圧(kV)である。
【0026】
比較例1は、導電糸を含まない。本実施例及び比較例2・3は、導電糸を含むことにより、比較例1に比べて初期帯電圧が低い値とすることができている。
【0027】
しかしながら、比較例3では、比較例1に比べて約3.5分の1ほど低い値にはなっているものの、比較例と比べて約20倍ほど高い値になっている。これは、ヨコ糸に溶融糸を含むために、溶融糸が溶けて導電糸を覆うために、除電性能を阻害したものと考えられる。
【0028】
本実施例では、比較例2と比較して、初期帯電圧がほぼ同等の値になった。そのため、溶融糸による除電性能の阻害が生じていない。さらに、比較例3と比較しても、22分の1ほど初期帯電圧が低下している。
【0029】
そのため、本実施例では導電糸の周囲の糸を、溶融糸でなく、通常糸にすることで、溶融糸による離型性の向上と、導電糸による除電性能とを両立させることができた。低溶融部は、溶けた溶融糸による導電糸への影響の、少なくとも一部を妨げるものであればよい。低溶融部は、高溶融部と同じ広さでもよく、高溶融部よりも広くてもよく、高溶融部よりも狭くてもよい。
【0030】
【表2】
【符号の説明】
【0031】
1 ライナー、3 溶融部、5 ファブリック部、7 導電部
図1
図2