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特許6995340丸編機における筒状編地の反転装置、巻取装置および収納方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-17
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】丸編機における筒状編地の反転装置、巻取装置および収納方法
(51)【国際特許分類】
   D04B 15/88 20060101AFI20220106BHJP
   D04B 35/34 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
D04B15/88 102
D04B35/34
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2017176033
(22)【出願日】2017-09-13
(65)【公開番号】P2019052385
(43)【公開日】2019-04-04
【審査請求日】2020-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000154510
【氏名又は名称】株式会社福原精機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167977
【弁理士】
【氏名又は名称】大友 昭男
(72)【発明者】
【氏名】武内 俊次
(72)【発明者】
【氏名】松尾 健一
【審査官】▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-060501(JP,A)
【文献】特開2001-279563(JP,A)
【文献】特開2006-161196(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04B 3/00-19/00
D04B23/00-39/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
針と、前記針を有するシリンダと、前記針をガイドするカムと、前記シリンダの外周に設けられかつ前記カムを有するカムホルダとを含む編成部を備えて、前記編成部により下方へ編み下ろされた筒状編地を収納部において収納する丸編機において、
前記編成部から収納部へ筒状編地を編み下ろし続けながら、前記編成部と前記収納部の間で筒状編地の側端を切開した後、筒状編地の内外側を反転して、裏目を外側に表目を内側にした状態にし、その後前記収納部に二つ折り状態で収納することを特徴とする、丸編機における筒状編地の収納方法。
【請求項2】
筒状編地は前記編成部から二つ折り状態に案内された後、その両側端の折れ曲がりのうち一側端が切開される、請求項1に記載の収納方法。
【請求項3】
前記編成部と前記収納部の間に引張部が設けられ、前記引張部と前記収納部の間で筒状編地の内外側を反転させる、請求項1又は2に記載の収納方法。
【請求項4】
前記編成部と前記収納部の間に引張部が設けられ、前記編成部と前記引張部の間で筒状編地の内外側を反転させる、請求項1又は2に記載の収納方法。
【請求項5】
反転装置を設け、そこに筒状編地を通すことにより筒状編地の内外側を反転させる、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の収納方法。
【請求項6】
前記反転装置に内外反転部材が設けられ、筒状編地の切開された部分が、折り返され、かつ前記内外反転部材の別々の側面を通ることにより筒状編地の内外側を反転させる、請求項5に記載の収納方法。
【請求項7】
筒状編地の側端を切開された後にその内外側を反転させて、裏目を外側に表目を内側にして二つ折り状態にする内外反転部材を有することを特徴とする、丸編機における筒状編地の反転装置。
【請求項8】
前記内外反転部材は、丸編機における筒状編地の側端が切開されて二つ折り状態となった編地を折り返し、編地が編み下ろされ続けながら筒状編地の内外側を反転させる、請求項7に記載の反転装置。
【請求項9】
前記内外反転部材は固定端と自由端とを有する、請求項7又は8に記載の反転装置。
【請求項10】
前記内外反転部材の前記固定端側に、二つ折り状態の編地の折れ曲がりの一側端が切開された切開部が通るよう設定され、前記自由端側は筒状編地の折れ曲がりの側端の非切開部をガイドするよう設定されている、請求項9に記載の反転装置。
【請求項11】
前記内外反転部材と、前記内外反転部材により内外側を反転された編地を再び二つ折り状態とする互いに接した複数のロールを有する送出部材とを有する、請求項7乃至10のいずれか1項に記載の反転装置。
【請求項12】
前記送出部材又は前記送出部材の延長に対し交差又は互いの若しくは一方の延長上で交差して、編地の方向を転換させる進行部材であって、前記送出部材の一端付近にその一端が位置する前記進行部材が設けられ、前記内外反転部材は前記進行部材及び前記送出部材の他端付近同士を結ぶように設けられている、請求項11に記載の反転装置。
【請求項13】
前記内外反転部材は、貫通した長孔が設けられた一本の細長状部材を、又は二本以上の細長状部材を有する、請求項7乃至12のいずれか1項に記載の反転装置。
【請求項14】
前記切開された編地を反転させるように案内する逆側案内部材と、前記逆側案内部材により反転されて案内された編地を誘導する誘導ロールを有する、請求項7乃至10のいずれか1項に記載された反転装置。
【請求項15】
前記逆側案内部材は、端面が垂直、上面は端面の一方から他方への滑らかな斜面を有する台形形状の板材であって、上面において位置が高い方の端面が固定端であり、低い方の端面が自由端であり、前記誘導ロールは固定端側に設けられている、請求項14に記載の反転装置。
【請求項16】
引張部と収納部を有し、請求項7乃至13のいずれか1項に記載の前記反転装置を前記引張部と前記収納部の間に設けていることを特徴とする、丸編機における筒状編地の巻取装置。
【請求項17】
前記引張部にはテイクアップロールが設けられ、前記収納部にはリールロールが設けられている、請求項16に記載の巻取装置。
【請求項18】
請求項16又は17に記載の前記巻取装置を有し、前記反転装置の上方に筒状編地の側端を切開する切断装置が設けられていることを特徴とする、丸編機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、丸編機で生産された筒状編地を収納する、丸編機における筒状編地の巻取装置及び付属装置並びにそれを用いた収納方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、筒状編地を生産する丸編機では、編機上部に設けられた編成部で生産された筒状編地を、編機下部に配置された巻取装置で巻き取り収納することが知られている。一般に、この巻取装置は、筒状編地を巻き取る巻取経路に設けられた複数のテイクアップロールによって筒状編地を挟み込んで、巻取テンションを付加するとともに、筒状編地の外側面をローラ間に挟んで、二重平面状(扁平状)にして送り出し、この送り出された二重平面状の編地を巻取装置下部のリールロールによってロール状に巻き取る。
【0003】
編成部で生産された筒状編地を筒状形状のままで巻取装置へ送り出して巻き取りを行うと、筒状編地に折れ皺が生じやすく、後工程の加工処理により折れ皺を除去する必要が生じる。この折れ皺は、編地が折り曲げられる等の外力によって変形し、この外力がなくなっても変形部分が回復することなく残存して生ずるものである。このような折れ皺の発生を防ぐため、通常、例えば特許文献1のように、筒状編地の巻取経路に該筒状編地を所定の幅に調整する幅出し機構を設け、この装置を用いて筒状編地がスムーズに扁平化するように案内した後、テイクアップロールで筒状編地を挟み込んで巻取装置に収納することが知られている。
【0004】
ところが、特許文献1の方法でも、テイクアップロールにより筒状編地を扁平な二重平面状にして挟み込むので、この二重平面状の編地の両端部に折れ曲がりが生じ、これら端部がセンターマークと呼ばれる折れ皺となる。しかも、二重平面状の編地を巻取装置下部のリールロールでロール状に巻くことによって、この折れ皺が深くなり、後工程の加工処理による除去がより難しくなる。
【0005】
この折れ皺は、使用する糸の種類や編組織等の編成条件によってより深いものとなり、特に綿糸や合繊糸を使用したニット生地に高い伸縮性持たせるためスパンデックス糸などのエラスティック糸を引きそろえて編成するエラスティックヤーン・プレーティング編成により生産される編地においては、加工処理を施しても除去するのが困難となる。丸編機では、前記エラスティックヤーン・プレーティング編成の筒状編地は、外側に表目(前のループを通して、次のループを手前に引き出してできた編目、face stitch(JISより))、内側に裏目(前のループをくぐって手前から向こう側へ引き出された編目、back stitch(JISより))の形状で生産される。従来から、このような巻取装置における折れ皺の発生に対して種々の対策が提案されている。
【0006】
特許文献2のように、扁平状の編地を巻取装置下部のリールロールによってロール状に巻く従来の方式に代えて、移動する編地ガイドによって筒状編地を折り畳んで収納する方式の装置、いわゆる振落し巻取装置が提案されている。これにより折れ皺が深くなるのは軽減されるものの、テイクアップロールによる筒状編地の挟み込みに起因する折れ皺は依然として発生する。
【0007】
また特許文献3のように筒状編地の両端が通過する部分のテイクアップロールの径を小さくすることができるアジャストローラを使用することで折れ皺を軽減させる方法が提案されている。他には、特許文献4のように筒状編地の一端をカッターで切断することで筒状を展開し、扁平な二重平面状の編地でなく一重の平面状編地としてリールロールで巻き取るオープンデバイス方式や、特許文献5のように筒状編地の両端をカッターで切断し、2枚の平面状編地として2つのリールロールで巻き取るダブル巻取方式の巻取装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開昭54-151659号公報
【文献】特開2001-279563号公報
【文献】特開2001-329454号公報
【文献】特開平8-60501号公報
【文献】特開平2-112453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献3では、両端の径が小さいアジャストローラにより扁平な二重平面状の筒状編地の両端における折れ皺はある程度軽減されるものの十分に解消されるわけではなく、糸種、編組織、ゲージ等の編成条件によっては、やはり解消し難い折れ皺が発生する場合があり、前記のエラスティックヤーン・プレーティング編成においては依然として折れ皺の解消が困難である。また、アジャストローラの位置を編地の端と合わせる細かな調整が必要であり、このために余分な作業時間を要する。
【0010】
また、特許文献4のオープンデバイス方式、および特許文献5のダブル巻取方式は、折れ皺が発生し難く、折れ皺対策としては非常に有効である。ところが、オープンデバイス方式は巻き取りにかかる編地の幅が倍になることで、巻取装置が大型となる。また、ツインロール方式は編地を2つに分割することで、必要とする編地幅を得るには倍の径をもつ筒状編地を生産しなければならず、編成部が大型となる。このため、どちらも編機全体が大型となって広い設置スペースが必要となり、製造コスト、消費電力コストが高く、また巻取装置が大きく幅を取るために編成部に作業者の手が届き難く作業性が悪いものとなる。
【0011】
本発明は、筒状編地における折れ皺の発生を防止ながら収納でき、かつ丸編機全体の大型化を回避することができる丸編機における筒状編地の巻取装置および収納方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、筒状編地におけるセンターマークのような折れ皺の発生の原因解明と種々実験の結果、編地の編成条件、例えば編組織における表目および裏目のループ形成状態などによっては、編地が折り曲げられた時の変形からの回復程度が、表目側を内側となるように折り曲げるか、裏目側を内側となるように折り曲げるかによって、異なる性向を有し、この性向に着目して折れ皺の発生の軽減効果が得られることを知見した。例えば、エラスティックヤーン・プレーティング編成では、生産された筒状編地の内外側を反転させて表目側が内側となって重なり合うように二つ折りに折り畳むことによりセンターマークのような折れ皺を軽減又は解消できる。この知見に基づいて本発明は完成された。
【0013】
本発明にかかる丸編機における編地の収納方法は、針と、前記針を有するシリンダと、前記針をガイドするカムと、前記シリンダの外周に設けられかつ前記カムを有するカムホルダとを含む編成部を備えて、前記編成部により下方へ編み下ろされた筒状編地を収納部において収納する丸編機において、前記編成部から収納部へ筒状編地を編み下ろし続けながら、前記編成部と前記収納部の間で筒状編地の側端を切開した後、筒状編地の内外側を反転し、その後前記収納部に二つ折り状態で収納するものである。
【0014】
この構成によれば、例えばエラスティックヤーン・プレーティングによって編成された筒状編地を、編成部から収納部の間で筒状編地を内外反転させることにより、裏目が外側で表目が内側になった状態で編地を収納するので、従来のように表目が外側で裏目が内側の状態で編地を収納した場合に発生するセンターマークのような折れ皺が容易に軽減され又は解消され、折れ皺の発生を有効に防止することができる。また、二つ折り状態で収納するため、オープンデバイスのように編機自体を大きくすることなく通常程度の大きさの丸編機を使用できる。
【0015】
本発明では、筒状編地は前記編成部から二つ折り状態に案内された後、その両側端の折れ曲がりのうち一側端を切開されてもよい。この場合、折れ曲がり部分の位置が定まり確実に切開することができる。
【0016】
好ましくは、前記編成部と前記収納部の間に引張部が設けられ、前記引張部と前記収納部の間で筒状編地の内外側を反転させる。したがって、引張部で筒状編地を二つ折り状態に安定させた後に反転させることができるため、反転動作を安定して行うことができる。
【0017】
好ましくは、前記編成部と前記収納部の間に引張部が設けられ、前記編成部と前記引張部の間で筒状編地の内外側を反転させる。したがって、引張部で筒状編地を挟み込んで二つ折り状態にする際に発生するセンターマークのような折れ皺を軽減又は解消できる。
【0018】
好ましくは、反転装置を設け、そこに筒状編地を通すことにより筒状編地の内外側を反転させてもよい。この場合、反転装置により筒状編地の内外側を反転させることができる。
【0019】
また好ましくは、前記反転装置に内外反転部材が設けられ、筒状編地の切開された部分が、折り返され、かつ前記内外反転部材の別々の側面を通ることにより筒状編地の内外側を反転させてもよい。この場合、切開された部分を折り返すことで筒状編地の内外側を反転させることができる。
【0020】
本発明にかかる丸編機における筒状編地の反転装置は、内外反転部材を有することを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、内外反転部材が筒状編地の内側を外側へ、外側を内側へ裏返すように案内するため、筒状編地の内外側を反転させることができる。
【0022】
本発明では、内外反転部材は、丸編機における筒状編地の側端が切開されて二つ折り状態となった編地を折り返し、編地を編み下ろし続けながら筒状編地の内外側を反転させる。この場合、内外反転部材により正確に筒状編地を内外側反転させることができる。
【0023】
また、前記内外反転部材は固定端と自由端とを有してもよい。この場合、内外反転部材は固定されているため安定して筒状編地を内外側反転させることができる。
【0024】
また、前記内外反転部材の前記固定端側に、二つ折り状態の編地の折れ曲がりの一側端が切開された切開部をガイドするよう設定され、前記自由端側は筒状編地の折れ曲がりの側端の非切開部をガイドするよう設定されていてもよい。この場合、固定端側で筒状編地を開き内外側反転させて再度二つ折りにすることができる。
【0025】
好ましくは、前記内外反転部材と、互いに接した複数のロールを有する送出部材とを有する。前記送出部材は、前記内外反転部材により内外側を反転された編地を再び二つ折り状態とするものである。これにより、ロールで挟み込み二つ折りにするため、反転した編地が収納しやすい。
【0026】
好ましくは、前記送出部材又は前記送出部材の延長に対し交差又は互いの若しくは一方の延長上で交差する進行部材であって、前記送出部材の一端付近にその一端が位置する進行部材が設けられ、内外反転部材は進行部材及び送出部材の他端付近同士を結ぶように設けられている。したがって、進行部材によって送られた筒状編地が内外反転部材によって内外側を反転し送出部材に送られ、送出部材によって収納部へ送られる。
【0027】
好ましくは、前記内外反転部材は、貫通した長孔が設けられた一本の細長状部材を、又は二本以上の細長状部材を有する。したがって、編地が長孔又は細長状部材の間を通過し、内外反転部材の外側から折り返してくることで内外側反転させることができる。
【0028】
また好ましくは、逆側案内部材と、誘導ロールを有する反転装置もできる。これにより、逆側案内部材と誘導ロールで筒状編地の内外側を反転させることができる。
【0029】
さらに好ましくは、前記逆側案内部材は、端面が垂直、上面は端面の一方から他方への滑らかな斜面を有する台形形状の板材であって、上面において位置が高い方の端面が固定端であり、低い方の端麺が自由端であり、前記誘導ロールは固定端側に設けられている。したがって、編地の切開部が固定端側へ、非切開部が自由端側へ誘導され編地を内外反転させることができる。
【0030】
本発明にかかる丸編機における筒状編地の巻取装置は、引張部と収納部を有し、前記反転装置を前記引張部と前記収納部の間に設けていることを特徴とする。
【0031】
この構成によれば、引張部で筒状編地を二つ折り状態に安定させた後に反転させることができるため、反転動作を安定して行うことができる。
【0032】
好ましくは、前記引張部にはテイクアップロールが設けられ、前記収納部にはリールロールが設けられている。したがって、筒状編地はテイクアップロールによって引っ張られ、リールロールで収納される。
【0033】
本発明にかかる丸編機は、前記巻取装置を有し、前記反転装置の上方に筒状編地の側端を切開する切断装置が設けられていることを特徴とする。
【0034】
この構成によれば、切開された筒状編地を内外側反転させるので、反転がスムーズに行える。
【発明の効果】
【0035】
本発明は、例えばエラスティックヤーン・プレーティングにより編成された筒状編地の表目と裏目を反転させて二つ折りにして収納するので、従来のような筒状編地をそのままテイクアップロールで挟んで二重平面状(扁平状)に送り出すことにより発生する筒状編地の両側端における折れ皺(センターマーク)を軽減又は解消させることができる。これにより、通常又はそれと同程度の大きさの編機で折れ皺を軽減又は解消させることが可能となることで、従来折れ皺対策のために必要であった大型の編機の設備費用、設置するための広いスペースが不要となり、製造コスト、消費電力コストが削減でき、作業性を向上させることも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明の第1実施形態に係る反転装置を設置した丸編機全体の正面図である。
図2】第1実施形態に係る反転装置の平面図である。
図3図2のA-A断面を矢印の方向に見た断面図である。
図4図2のB-B断面を矢印の方向に見た断面図である。
図5図2のC-C断面を矢印の方向に見た断面図である。
図6】編地を通したときの反転装置の(a)平面図、(b)底面図である。
図7】第1実施形態の動作を示す反転装置の上方向から見た部分斜視図である。
図8】第2実施形態に係る反転装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る反転装置を設置した丸編機全体の正面図である。第1実施形態では、丸編機1は、巻取装置の筒状編地を引っ張るテイクアップロール2を含む引張部と、引っ張った編地をロール状に巻きつけて収納するリールロール5を含む収納部の間に反転装置4を設けている。反転装置は、筒状編地を通すことによりその内外側を反転させる。第1実施形態は一般的なシングル丸編機の編成部により筒状編地の編成が行われる。すなわち、編成部には複数の針が収納されたシリンダ3が設けられ、動力の駆動を受けてシリンダ3が回転すると、シリンダ3の外周にシリンダ3に対向するように固定されているカムホルダ31に取り付けられたカムの溝に針のバットが案内され、針が上下する。このとき針の下降時に針のフックに糸が捉えられ、そのまま針が下降することでループが形成され、それを繰り返すことで筒状編地が生産される。
【0038】
このようにして編成部により編み出される筒状編地は巻取装置のテイクアップロール2に入る前に一般的な幅出し装置等により扁平な二重平面状に案内され、その両端の折れ曲がりのうち片方は図示しないカッター等の切断装置で切開されている。巻取装置のテイクアップロール2とリールロール5は長手方向に平行かつ水平に設けられており、テイクアップロール2を通って二つ折り状態となった編地は、もし反転装置4が無ければそのまま下方へ進行しリールロール5に巻いて収納可能である。
【0039】
図2は第1実施形態に係る反転装置4の平面図であって、図3図2のA-A断面を、図4図2のB-B断面を、図5図2のC-C断面をそれぞれ矢印の方向に見た断面図である。図2のように、反転装置4は取付部材Sを介して丸編機1内に取り付けられている。図3の水平ガイドバー(水平部材)41および図5の転回ガイドバー(転回部材)43は例えば鉄製のような金属製の細い棒状部材である。図3の送出ロール(送出部材)42は中心が鉄製のやや太い棒状部材であってその周りを合成ゴムでコーティングしてあり、ギア等により動力の伝達を受けて回転するものであって、それが上下二つ接触して設けられている。図5の反転ガイドバー(内外反転部材)44は細長状であって水平方向に貫通した長孔443が設けられている構造であり、鉄製の細めの棒状部材を180度折り返してU字型としてその中央に長孔443を形成したものである。なお、送出ロールは二本でなくても、複数であればその間を通して送出できる。
【0040】
図3の水平ガイドバー41は送出ロール42の上方に取り付けられ、図5の転回ガイドバー43は反転ガイドバー44の上方に取り付けられており、水平ガイドバー41と送出ロール42、転回ガイドバー43と反転ガイドバー44はそれぞれ長手方向に平行であって、かつ水平に設けられている。図3の水平ガイドバー41と送出ロール42は図1のテイクアップロール2と長手方向に平行である。
【0041】
図2の送出ロール42の一端には送出ロールギア421が取り付けられ、シャフト46に取り付けられた送出駆動ギア422の回転を受けて送出ロール42は回転する。進行ロール(進行部材)45は水平ガイドバー41および送出ロール42に対し垂直方向かつ水平方向に回転可能に設けられている。図4の進行ロール45は図3の送出ロール42のギア側の端に設けられ、進行ロール45の一端に取り付けられた進行ロールギア451がシャフト36に取り付けられた進行駆動ギア452の回転を受けて回転する。
【0042】
図2のように、転回ガイドバー43(および図5の反転ガイドバー44)は、送出ロール42に対して、また進行ロール45に対しても45度の角度がつけられ、送出ロール42と進行ロール45を辺とした直角三角形を形成するように設けられている。図5の反転ガイドバー44は、折り返した方の端は固定せず反転ガイドバー自由端441とし、その逆側の端を、進行ロール45の進行ロールギア451(図2)とは逆の端付近で固定し反転ガイドバー固定端442としている。図2の水平ガイドバー41と転回ガイドバー43はほぼ同じ高さに設けられ、二本の送出ロール42の間と、反転ガイドバー44の中央の長孔443(図5)はほぼ同じ高さに設けられ、進行ロール45は転回ガイドバー43と反転ガイドバー44の間の高さに設けられている。なお、直角三角形でなくても、送出ロールまたは送出ロールの延長と、進行ロールまたは送出ロールの延長とが交差するように設置すればよい。
【0043】
図6(A)は、編み下ろし続けられている筒状編地の一側端が切開されて二つ折り状態の編地6を通したときの反転装置の平面図、図6(B)は底面図を示す。図1のテイクアップロール2を通過し二つ折り状態となった編地6は、図6(A)の水平ガイドバー41を通ることで水平方向に方向転換し、転回ガイドバー43方向へ進む。そして転回ガイドバー43を通ることで編地6の進行方向は水平方向に90度方向転換し、進行ロール45方向へ進む。図6(A)において、水平ガイドバー41を通る二つ折り状態の編地6は、第1面61、第2面62および両側端のうち一側端(この例では右側端)に切開部CE、他の側端(この例では左側端)に非切開部NEを有する。編地6は、第1面61と第2面62ともに表目側61aと表目側62aが外側になっており、裏目側61bと裏目側62bが内側になっている。そして、図6(B)のように、進行ロール45に沿って180度方向転換し、かつ編地6の高さを1ロール分下げ、来た方向へ水平に逆戻りするように進行し、反転ガイドバー44方向へ進む。
【0044】
図7は、第1実施形態の動作を示す反転装置の上方向から見た部分斜視図である。進行ロール45から反転ガイドバー44で反転し送出ロール42へ入っていく編地の様子を示すため、図6(A)に示すような水平ガイドバー41から転回ガイドバー43を通り進行ロール45へ進む編地の図示は省略している。図7の進行ロール45の上側を通る編地6は、上側が第2面62、下側が第1面61でともに表目側62aと表目側61aが外側になっている。編地6は反転ガイドバー44の長孔443を通り、ここから第1面61および第2面62は、反転ガイドバー自由端441側の非切開部NEのガイドに伴って反転ガイドバー固定端442側の切開部CEが開き、反転ガイドバー44に沿って水平方向に90度方向転換してそれぞれ裏返しとなるようにガイドされる。すなわち、第1面61は長孔443から反転ガイドバー44の上バーの外側(上側)を通って内外側を表目側61aから裏目側61bへ反転させ、第2面62は長孔443から反転ガイドバー44の下バーの外側(下側)を通って内外側を表目側62aから裏目側62bへ反転させて、編地6の進行方向を水平方向に90度方向転換して送出ロール42方向へ進む。そうして内外側反転した編地6を送出ロール42によって挟み込み、二つ折り状態で収納部へ送り出す。このとき、送出ロール42を通る編地6は、上側の第1面61および下側の第1面62で、ともに裏目側61bと裏目側62bが外側になっており、表目側61aと表目側62aが内側になっている。
【0045】
収納部ではリールロール5の回転により、送出ロール42から送り出された上記反転させて裏返し状態の編地6を巻くことで収納する。
【0046】
こうして本第1実施形態では、筒状編地の切開された側端が、折り返され、かつ内外反転部材の別々の側面を通ることにより筒状編地の内外側を反転させることができ、筒状サイズの状態で収納部へ収納されるので、丸編機自体のサイズを大きくすることなく、通常程度の大きさの丸編機で容易にセンターマークのような折れ皺を軽減又は解消させることができる。なおテイクアップロールや、リールロールと反転装置の角度を水平に90度回転させて設計すれば、編地をテイクアップロールから直接進行ロール45に入れることができるなど、他にも様々な態様が考えられる。
【0047】
図8は第2実施形態に係る反転装置4Aの斜視図である。第2実施形態では編成部とテイクアップロール2を含む引張部との間に反転装置4Aが設けられている。編成部により編み出される筒状編地6は一般的な幅出し装置等により二重平面状に案内され、反転装置4Aへ進行する。このとき、筒状編地6は、第1実施形態の切開前と同様に、第1面61と第2面62ともに表目側61aと表目側62aが外側になっており、裏目側61bと裏目側62bが内側になっている。テイクアップロール2は二本、平行で水平かつ同じ高さに設けられており、互いに接触している。もし反転装置4Aが無ければ、筒状編地6はそのままテイクアップロール2の間に入り、通常の巻取を行うことができるものである。第2実施形態におけるその他の構成は第1実施形態と同様である。
【0048】
反転装置4Aの逆側案内部材12は、下面は水平、端面は垂直、上面は滑らかな斜面の台形形状の例えば鉄製のような金属製の板材である。二本のテイクアップロール2間の上方であってテイクアップロール2の長手方向に平行かつ垂直に設けられ、垂直の端面のうち広い方で固定されている。スパイラルロール13(誘導ロール)は鉄製の棒状部材の周りに螺旋状のゴム材を取り付けたロール状部材であり、巻取から駆動力の伝達を受け回転する。ゴム材は垂直の端面の短い方側から広い方側へ右巻きの螺旋が設けられている。スパイラルロール13は、逆側案内部材12の下方かつ垂直の端面の広い方付近に、テイクアップロール2と長手方向に平行かつ水平に、逆側案内部材12の広い面に表裏1本ずつ設けられ、その上方に垂直方向に約30度角度をつけて逆側案内部材12の広い面に表裏1本ずつ設けられ、計4本のスパイラルロール13が設けられている。
【0049】
編成部で編み出された筒状編地6は一般的な幅出し装置等により二重平面状に案内される。筒状編地6はその両側端のうち一側端(この例では左側端)がカッター(切断装置)Cで切開されて切開部CEとなり、逆側案内部材12の広い面の表裏に編地6の第1面61と第2面62が分かれて開き、他の側端(この例では右側端)の非切開部NE側へスパイラルロール13により案内され、そのまま下方へもう1つのスパイラルロール13により案内される。非切開部NEは逆側案内部材12の斜面に沿って切開部CE側へ案内される。なお、スパイラルロールでなくてもよく、逆側案内部材の、スパイラルロールに対応する部分を除去し、スパイラルロールでなくストレートのロール二本を接して設置しその間に編地6を通したりなど、編地6を誘導できればよい。
【0050】
このとき、非切開部NEは右端から左端に移動し、切開部CEは左端から右端に移動するとともに、非切開部NEの移動に伴って編地6の開いた第1面61および第2面62はそれぞれ裏返しとなるように案内される。すなわち、第1面61は内外側を表目側61aから裏目側61bへ反転され、第2面62は内外側を表目側62aから裏目側62bへ反転される。そして、筒状編地の内外側が反転した二つ折り状態でテイクアップロール2へ入っていくものとなる。その後、テイクアップロール2により引っ張られた編地6は図示しないリールロールによって巻かれ、収納される。
【0051】
こうして本第2実施形態では、筒状編地は内外側反転した状態で収納部へ収納されるので、丸編機自体のサイズを大きくすることなく、通常程度の大きさの丸編機で容易にセンターマークのような折れ皺を軽減又は解消させることができる。
【0052】
なお、本発明は上記各実施形態に限定されるものでなく、例えば反転装置を編成部と引張部の間に設けたり引張部と収納部の間に設けたり、編地の進行経路や角度を変えたり、編地上の切断する位置を変えたり、編地を切断する装置の場所や反転させる場所を変えたり、編地の進行や反転を補助するローラ等の部材を取り付けたり、各バーやロールの角度を変えたり、各バーをロールに変えたりその逆などの様々な態様も本発明に含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0053】
1:丸編機
2:テイクアップロール(引張部)
3:シリンダ(編成部)
31:カムホルダ
4:反転装置
41:水平ガイドバー(水平部材)
42:送出ロール(送出部材)
421:送出ロールギア
422:送出駆動ギア
43:転回ガイドバー(転回部材)
44:反転ガイドバー(内外反転部材)
441:反転ガイドバー自由端
442:反転ガイドバー固定端
443:長孔
45:進行ロール(進行部材)
451:進行ロールギア
452:進行駆動ギア
46:シャフト
5:リールロール(収納部)
6:編地(筒状編地)
61:編地(筒状編地)の第1面
62:編地(筒状編地)の第2面
12:逆側案内部材(内外反転部材)
13:スパイラルロール(誘導ロール)
C:カッター(切断装置)
CE:切開部
NE:非切開部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8