(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-17
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】ロッド固定装置、及び、それを用いた伸縮ロッドユニット
(51)【国際特許分類】
F16M 11/28 20060101AFI20220106BHJP
F16B 7/14 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
F16M11/28 B
F16B7/14 C
(21)【出願番号】P 2017248686
(22)【出願日】2017-12-26
【審査請求日】2020-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000110206
【氏名又は名称】株式会社TOK
(74)【代理人】
【識別番号】100169960
【氏名又は名称】清水 貴光
(72)【発明者】
【氏名】秋場 潤一郎
(72)【発明者】
【氏名】木村 晋
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】実開昭52-1330(JP,U)
【文献】実開昭54-72258(JP,U)
【文献】実開昭53-21263(JP,U)
【文献】特開2016-1010(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16M 11/28
F16B 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロッドの意図しない移動を抑制するロッド固定装置であって、
第1ロッドと、
前記第1ロッドが挿入されて前記第1ロッドを軸方向へ往復移動可能に保持している筒状の第2ロッドと、
前記第2ロッド内で前記第1ロッドと一体に前記軸方向へ移動するロック機構とを備え、
前記ロック機構が、
前記第2ロッドの内周面と当接可能な当接面部を有する少なくとも1つのストッパーと、
前記第1ロッドと一体移動可能に前記第2ロッド内に配置され、前記当接面部が前記第2ロッドの内周面と当接できるようにして前記ストッパーを回動可能に保持しているホルダーと、
前記ストッパーの前記当接面部が前記第2ロッドの内周面に当接して、前記第1ロッドと前記第2ロッドとの間に固定用摩擦力を生成するための弾発力を前記ストッパーに付与している弾性部材と、
を有し、
前記ストッパーは、前記第1ロッドが前記軸方向における一方側へ移動する際には、前記当接面部が前記第2ロッドの内周面と離れるように回動され、前記第1ロッドが前記軸方向における他方側へ移動する際には、前記固定用摩擦力に抗して移動されるように構成されている、
ことを特徴とするロッド固定装置。
【請求項2】
前記ストッパーは、前記弾性部材を挟んで略対称な位置に一対配置されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のロッド固定装置。
【請求項3】
前記ホルダーと前記ストッパーの一方に位置決めピンを設けるとともに、前記ホルダーと前記ストッパーの他方に前記位置決めピンが前記第2ロッドの半径方向に摺動可能に係合しているガイド溝を設けた、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のロッド固定装置。
【請求項4】
前記ストッパーは、前記第2ロッドと対向している肩部を凸曲面状に形成している、
ことを特徴とする請求項1、2又は3に記載のロッド固定装置。
【請求項5】
前記ストッパーは、前記当接面部にブレーキ部材を貼り付けている、
ことを特徴とする請求項1、2、3又は4に記載のロッド固定装置。
【請求項6】
前記ホルダーは、前記第1ロッドにブラケットを介して取り付けられていることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5に記載のロッド固定装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のロッド固定装置と、
前記第1ロッドと一体化された可動側部材と、
前記第2ロッドと一体化された固定側部材と、
を備えていることを特徴とする伸縮ロッドユニット。
【請求項8】
前記可動側部材が化粧鏡で、前記固定側部材が設置台である、
ことを特徴とする請求項7に記載の伸縮ロッドユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はロッド固定装置、及び、それを用いた伸縮ロッドユニットに関するものであり、特に意図しないロッドの移動を抑制する場合に好適なロッド固定装置、及び、それを用いた伸縮ロッドユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
鏡等の日用品の支柱、家具及びインテリア等の支柱、点滴スタンド等の医療器具の支柱、マイクスタンド等の音響機器の支柱には、その長さや高さを変えるために、2本のロッドを伸縮自在に結合している伸縮ロッドユニットを用いたものがある。このような2本のロッドが伸縮自在とされた伸縮ロッドユニットは、一般にパイプ状の大径の固定ロッドの貫通孔内に小径の移動ロッドが挿入され、移動ロッドが固定ロッドに対し長手方向に沿って移動可能な構造とされる。また、このような伸縮ロッドユニットには、固定ロッドと移動ロッドとが相対的に移動可能状態と、固定ロッドと移動ロッドとが互いに固定された状態(ロック状態)とに切り替えるロッド固定装置が設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、移動ロッドが挿入される軸受と、移動ロッドの周方向に並んで配置され、移動ロッドの外周面を押圧するよう付勢される二つのブレーキと、二つのブレーキのそれぞれに対応して設けられ、対応するブレーキを移動ロッドから離間する方向に動かす二つの解除スイッチを備えている。そしてロッド固定装置のロックを解除する場合は、二つの解除スイッチを同時に内側へ押すとロックが解除され、移動ロッドを固定ロッドに対して移動できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の発明は、ロッド固定装置のロックを解除する場合に、二つの解除スイッチを同時に押す必要があり、操作性が悪いという問題点があった。
【0006】
また、伸縮方向が上下方向であって、移動ロッド側に設置物が取り付けられているとき、移動ロッドを降下させると、移動ロッド及び設置物の重量が移動ロッドを下方に移動させる力として働き、軽い力で簡単に降下させることができる。反対に、移動ロッドを上方に移動させる(持ち上げる)ときは、設置物の重量と移動ロッドの重量が合算され、この合算された重量が移動ロッドを持ち上げる力となる。このため、移動ロッドを比較的大きな力で持ち上げる必要がある。したがって、移動ロッドを上方に移動させるときの操作力と、移動ロッドを下方に移動させるときの操作力との間に大きな力の差ができ、移動ロッドの上げ下げの操作に抵抗感が生じるという問題点があった。
【0007】
そこで、ロッドの移動方向がいずれであっても、略同じ力の大きさで操作させることができるロッド固定装置、及び、それを用いた伸縮ロッドユニットを提供するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1に記載の発明は、ロッドの意図しない移動を抑制するロッド固定装置であって、第1ロッドと、前記第1ロッドが挿入されて前記第1ロッドを軸方向へ往復移動可能に保持している筒状の第2ロッドと、前記第2ロッド内で前記第1ロッドと一体に前記軸方向へ移動するロック機構とを備え、前記ロック機構が、前記第2ロッドの内周面と当接可能な当接面部を有する少なくとも1つのストッパーと、前記第1ロッドと一体移動可能に前記第2ロッド内に配置され、前記当接面部が前記第2ロッドの内周面と当接できるようにして前記ストッパーを回動可能に保持しているホルダーと、前記ストッパーの前記当接面部が前記第2ロッドの内周面に当接して、前記第1ロッドと前記第2ロッドとの間に固定用摩擦力を生成するための弾発力を前記ストッパーに付与している弾性部材と、を有し、前記ストッパーは、前記第1ロッドが前記軸方向における一方側へ移動する際には、連動して前記当接面部が前記第2ロッドの内周面と離れるように回動され、前記第1ロッドが前記軸方向における他方側へ移動する際には、前記固定用摩擦力に抗して移動されるように構成されている、ロッド固定装置を提供する。
【0009】
この構成によれば、ロッド固定装置を垂直配置した場合として説明すると、(1)平時は、弾性部材の弾発力により、ストッパーの当接面部が第2ロッドの内周面に圧着する。これにより、ストッパーの当接面部と第2ロッドとの間に固定用摩擦力が生成され、その固定用摩擦力により、第1ロッドの第2ロッドに対する移動を抑止(ロック)できる。(2)また、この移動が抑止されている状態から、第1ロッドに下方への力を加えると、第1ロッドは固定用摩擦力に抗して下方へ移動される。(3)反対に、第1ロッド側に上方への力を加えると、ストッパーの当接面部が第2ロッドの内周面と離れる側に、ストッパーが回動されて、固定用摩擦力が減衰する。そして、固定用摩擦力を減衰した状態下で、第1ロッド側が持ち上げられ、第1ロッド側の重量(第1ロッド側に設置物がある時には、第1ロッドと設置物の重量)に略近い力で第1ロッドを上方へ移動させることができる。
【0010】
したがって、固定用摩擦力を、第1ロッド側の重量と略等しいか、それよりも若干大きい力に設定しておくと、平時は固定用摩擦力で第1ロック側への移動を抑止しておくことができ、この抑止状態から第1ロッドに下方への力を加えると、固定用摩擦力と略同じ大きさの力で第1ロッドを降下させることができる。反対に、抑止状態から第1ロッドに上方への力を加えると、第1ロッド側の重量と略等しい力で第1ロッド側を上昇させることができる。これにより、第1ロッドの移動方向が上下いずれの方向であっても、略同じ大きさ力で操作させることができ、第1ロッドの上げ下げの操作時における抵抗感がなくなる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成において、前記ストッパーは、前記弾性部材を挟んで略対称な位置に一対配置されている、ロッド固定装置を提供する。
【0012】
この構成によれば、一対のストッパーを使用し、また弾性部材を一対のストッパーとの間に共通に配置することにより、弾性部材からストッパーに付与される固定用摩擦力は第2ロッドに対して左右均等に掛けられ、第2ロッドに対する第1ロッドの移動抑止が安定的に行える。また、第1ロッドを上げ下げする操作の時も、一対のストッパーが第2ロッドの内周面に当接して、第1ロッドを軸中心に保持した状態で、上げ下げの移動を案内することができる。さらに、弾性部材を一対のストッパーとの間に共通に配置させているので、弾性部材の部品点数を増やすことなく実現できる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の構成において、前記ホルダーと前記ストッパーの一方に位置決めピンを設けるとともに、前記ホルダーと前記ストッパーの他方に前記位置決めピンが前記第2ロッドの半径方向に摺動可能に係合しているガイド溝を設けた、ロッド固定装置を提供する。
【0014】
この構成によれば、ガイド溝の形状によって、ストッパーの枢軸の位置を変えることができ、ストッパーの枢軸の位置を変えることにより、平時におけるストッパーの第2ロッドに対するロック状態、及び、第1ロッドを上方向又は下方向へ移動させる時に固定用摩擦力を減衰させる量の調整を簡単に行うことができる。また、ストッパーの枢軸は、ガイド溝を動くことができるため、第2ロッドの内径寸法に多少バラツキがあっても正常な動作が可能になる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1、2又は3に記載の構成において、前記ストッパーは、前記第2ロッドと対向している肩部を凸曲面状に形成している、ロッド固定装置を提供する。
【0016】
この構成によれば、第2ロッドと対向しているストッパーの肩部の形状を凸曲面状にすることにより、ストッパーがホルダーや第2ロッドの内面に当接するのを無くし、ストッパーが第2ロッドの半径方向側に回転する操作をスムーズにする。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項1、2、3又は4に記載の構成において、前記ストッパーは、前記当接面部にブレーキ部材を貼り付けている、ロッド固定装置を提供する。
【0018】
この構成によれば、当接面部に貼り付けるブレーキ部材により、固定用摩擦力を自由に調整することができる。
【0019】
請求項6に記載の発明は、請求項1、2、3、4又は5に記載の構成において、前記ホルダーは、前記第1ロッドにブラケットを介して取り付けられているロッド固定装置を提供する。
【0020】
この構成によれば、ホルダーがブラケットを介して第1ロッドに取り付けられることにより、ホルダーを第1ロッドに強固に固定することができる。
【0021】
請求項7に記載の発明は、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のロッド固定装置と、前記第1ロッドと一体化された可動側部材と、前記第2ロッドと一体化された固定側部材と、を備えている伸縮ロッドユニットを提供する。
【0022】
この構成によれば、第1ロッドの移動が伸長方向、縮小方向のいずれであっても、略同じ大きさの力でロッドの移動操作が行える、伸縮ロッドユニットが得られる。
【0023】
請求項8に記載の発明は、前記可動側部材が化粧鏡で、前記固定側部材が設置台である、伸縮ロッドユニットを提供する。
【0024】
この構成によれば、設置台上に配置された化粧鏡の高さ位置を上げ下げできるとともに、操作時における抵抗感をなくした、化粧鏡付の伸縮ロッドユニットが得られる。
【発明の効果】
【0025】
この発明は、固定用摩擦力を、第1ロッド側の重量と略等しいか、それよりも若干大きい力に設定しておくと、平時は固定用摩擦力で第1ロック側の移動を抑止(ロック)し、また、移動が抑止されている状態から、第1ロッドに下方への力を加えると、固定用摩擦力の略同じ大きさで第1ロッドを降下させることができ、反対に第1ロッドに上方への力を加えると、第1ロッド側の重量と略等しい力で第1ロッド側を上昇させることができるので、第1ロッドの移動方向が上下いずれの方向であっても、略同じ大きさの力で操作させることが可能になり、第1ロッドの上げ下げの操作時における抵抗感をなくすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明のロッド固定装置、及び、伸縮ロッドユニットを用いた化粧鏡スタンドの正面図であり、(a)は伸長状態で示す図、(b)は縮小状態で示す図である。
【
図2】本発明のロッド固定装置、及び、伸縮ロッドユニットを用いた化粧鏡スタンドの側面図であり、(a)は伸長状態で示す図、(b)は縮小状態で示す図である。
【
図3】
図1(a)のA部内の構造と同じ視点で示すロッド固定装置の正面図である。
【
図4】
図3のB-B線断面矢視方向から見た概略図である。
【
図5】
図4のC-C線断面矢視方向から見た概略図である。
【
図6】同上ロッド固定装置におけるホルダーの斜視図である。
【
図7】
図6の矢印D方向から見たホルダーの平面図である。
【
図8】
図6の矢印E方向から見たホルダーの側面図である。
【
図9】
図6の矢印F方向から見たホルダーの側面図である。
【
図11】同上ロッド固定装置におけるストッパーをロッド固定装置の外側方向から見た斜視図である。
【
図12】同上ロッド固定装置におけるストッパーをロッド固定装置の内側方向から見た斜視図である。
【
図13】同上ロッド固定装置におけるストッパーの側面図である。
【
図14】同上ロッド固定装置におけるストッパーの底面図である。
【
図15】同上ロック固定装置の動作説明図であり、(a)はロック時の状態、(b)は第1ロッドが上方に移動されている時の状態、(c)は第1ロッドが下方に移動されている時の状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明はロッドの移動方向が上下いずれであっても、略同じ力の大きさで操作させることができるロッド固定装置、及び、それを用いた伸縮ロッドユニットを提供するという目的を達成するために、ロッドの意図しない移動を抑制するロッド固定装置であって、第1ロッドと、前記第1ロッドが挿入されて前記第1ロッドを軸方向へ往復移動可能に保持している筒状の第2ロッドと、前記第2ロッド内で前記第1ロッドと一体に前記軸方向へ移動するロック機構とを備え、前記ロック機構が、前記第2ロッドの内周面と当接可能な当接面部を有する少なくとも1つのストッパーと、前記第1ロッドと一体移動可能に前記第2ロッド内に配置され、前記当接面部が前記第2ロッドの内周面と当接できるようにして前記ストッパーを回動可能に保持しているホルダーと、前記ストッパーの前記当接面部が前記第2ロッドの内周面に当接して、前記第1ロッドと前記第2ロッドとの間に固定用摩擦力を生成するための弾発力を前記ストッパーに付与している弾性部材と、を有し、前記ストッパーは、前記第1ロッドが前記軸方向における一方側へ移動する際には、前記当接面部が前記第2ロッドの内周面と離れるように回動され、前記第1ロッドが前記軸方向における他方側へ移動する際には、前記固定用摩擦力に抗して移動されるように構成して実現した。
【0028】
以下、本発明を実施するための形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の説明では、実施形態の説明の全体を通じて同じ要素には同じ符号を付している。また、以下の説明では、上下や左右等の方向を示す表現は、絶対的なものではなく、本発明のロッド固定装置の各部が描かれている姿勢である場合に適切であるが、その姿勢が変化した場合には姿勢の変化に応じて変更して解釈されるべきものである。
【実施例】
【0029】
図1及び
図2は本発明に係るロッド固定装置10、及び、伸縮ロッドユニット101を用いた製品の一例としての化粧鏡スタンド100を示すもので、
図1はその化粧鏡スタンド100の正面図、
図2はその化粧鏡スタンド100の側面図である。
【0030】
図1及び
図2において、化粧鏡スタンド100は、可動側部材である円柱棒状の第1ロッド11と固定側部材であるパイプ状をした第2ロッド12を有し、第2ロッド12の筒内に第1ロッド11を軸方向に摺動自在に配置させてなる伸縮ロッドユニット101を備えている。また、伸縮ロッドユニット101には、第1ロッド11の上端側に化粧鏡102が取り付けられるとともに、第2ロッド12の下端側に設置台103が取り付けられて、設置台103をテーブル上等の、必要とする箇所に据え置きできるようになっている。
【0031】
また、伸縮ロッドユニット101は、第1ロッド11と第2ロッド12を互いに軸方向へ移動可能に連結しており、第1ロッド11と第2ロッド12との間に、第1ロッド11と第2ロッド12の移動を抑制して停止状態(ロック状態)にしておくロッド固定装置10が、
図1及び
図2のA部に組み込まれている。そして、化粧鏡スタンド100は、設置台103を図示しないテーブル上等に固定(据置)して、化粧鏡102を手で掴んで上方に持ち上げると、伸縮ロッドユニット101において、第1ロッド11が第2ロッド12に対して上方に持ち上げられて移動し、この移動で化粧鏡102の位置を上に移動させることができる。反対に、化粧鏡102を下方に押すと、第1ロッド11が第2ロッド12内に摺動して押し込まれ、化粧鏡102の位置を下方に移動させることができる。また、化粧鏡102の位置調整が済んだら、化粧鏡102から手を離すと、伸縮ロッドユニット101に組み込まれているロッド固定装置10により、第1ロッド11と第2ロッド12の間の移動が抑制されてロック状態となり、化粧鏡102をその位置に保持しておくことができる。
【0032】
図3~
図5はロッド固定装置10の構造を説明する図であり、
図3は
図1(a)のA部内の構造と同じ視点で示すロッド固定装置10の正面図、
図4は
図3のB-B線断面矢視方向から見た概略図、
図5は
図4のC-C線断面矢視方向から見た概略図である。また、
図6~
図10はロッド固定装置10のホルダー14を示す図で、
図11~
図14はロッド固定装置10のストッパー15を示す図、
図15はロッド固定装置10の動作説明図である。
【0033】
図3~
図15を用いてロッド固定装置10の構造を説明すると、ロッド固定装置10は、前記第1ロッド11と、筒状をした前記第2ロッド12と、第1ロッド11の下端側に取り付けられて第1ロッド11の下端側と一緒に第2ロッド12内に自在に挿入されているロック機構13と、で構成されている。なお、本実施例では、第1ロッド11は、第2ロッド12と同じ筒状をした部材である。また、第1ロッド11の外径は第2ロッド12の内径よりも小さく形成されており、したがって第1ロッド11は第2ロッド12内を、第2ロッド12の軸中心に沿って自由に往復移動できるようになっている。
【0034】
ロック機構13は、ホルダー14と、ストッパー15と、弾性部材としてのコイルスプリング16と、ホルダー14を第1ロッド11の下端に取り付けるためのブラケット17と、を有している。
【0035】
ブラケット17は、樹脂材で成形された概略円板状の部材であり、
図5に示すように、第1ロッド11の外径よりも大きく、かつ、第2ロッド12の内径よりも小さい外径をした円板部17aと、円板部17aの上面から上方に向かって突出している上側管状部17bと、円板部17aの下面から下方に向かって突出している下側管状部17cと、円板部17aの略中心に形成された軸部17dと、を一体に有している。また、軸部17dには、タッピングスクリュー18が螺合して固定される取付孔19が形成されている。
【0036】
なお、ブラケット17の上側管状部17bは、外径が第1ロッド11の内径と略等しく形成されている。そして、ブラケット17は、第1ロッド11の下端側から上側管状部17bを第1ロッド11内に圧入させて、第1ロッド11の下端側に固定して取り付けられる。また、第1ロッド11と上側管状部17bとの間の固定は、必要に応じて接着剤や加締め加工等を用いる。
【0037】
ホルダー14は、樹脂材で成形された比較的背丈の低い概略短円柱状をした部材である。また、ホルダー14は、
図6~
図10にも単品としての構造を示している。
図3~
図5に
図6~
図10を加えて、ホルダー14の構造を説明すると、ホルダー14は
図5に示すように、ブラケット17の円板部17aの外径と略等しく、かつ、第2ロッド12の内径よりも小さい外径をした、円板部14aを有している。円板部14aの上面側には、ブラケット17の軸部17dが嵌合して配置される凹部14bと、ブラケット17の下側管状部17cが嵌合して配置される環状凹溝14cが形成されている。反対に、円板部14aの下面側には、
図3及び
図4、
図6、
図7に示すように、一対の垂直部14dがスペースS1を間に設けて、かつ、左右対称の形で、円板部14aの下面から下側へ垂直に設けられている。
【0038】
また、ホルダー14における一対の垂直部14dは、スペースS2を間に設けて前後2つの垂直脚14da、14dbに各々分割されている。前後の垂直脚14da、14dbには、高さ方向における中間部分の位置に、ガイド溝としてのスリット20が各々互いに対応して設けられている。各スリット20は
図3、
図9に示すように、スペースS1内から外側(第2ロッド12の内周面12a側)に向かい、かつ、側面視において円板部14a側から垂直脚14da、14dbの先端側に向かって緩やかに下るようにして形成されている。
【0039】
さらに、ホルダー14における円板部14aの中央部には、ブラケット17の取付孔19に対応して、円板部14aの下面側から取り付けられるタッピングスクリュー18のネジ部を貫通させるための取付孔21が上下面に貫通して設けられている。
【0040】
そして、ホルダー14はブラケット17を介して第1ロッド11の下端側に固定して取り付けられる。その第1ロッド11の下端に対するホルダー14の取り付けは、まず、第1ロッド11の下端側に固定して既に取り付けられているブラケット17の下側管状部17cを環状凹溝14cに嵌合挿入させるとともに、ブラケット17の軸部17dを凹部14bに嵌合挿入させるようにして、ブラケット17に添設させる。次いで、ホルダー14の円板部14aの下側からタッピングスクリュー18を、ホルダー14の取付孔21を通ってブラケット17の取付孔19にネジ止めし、タッピングスクリュー18でホルダー14とブラケット17との間を固定する。すると、ホルダー14を、第1ロッド11の下端側にブラケット17を介して固定することができる。
図5は、この固定された状態を示している。なお、ホルダー14及び第1ロッド11は、ブラケット17を用いて間接的に接続されるものに限定されず、例えば、ネジ締結、加締め加工、接着剤等によって直接的に接続されるものであっても構わない。
【0041】
ストッパー15は、樹脂材で成形された駒状の部材であり、ホルダー14のスペースS2内に収納配置される大きさで各々形成されている。また、ストッパー15は、
図11~
図14にも単品としての構造を示している。
図3~
図5に
図11~
図14を加えてストッパー15の構造を説明すると、ストッパー15は、
図4に示すように、ホルダー14における垂直脚14da、14db間のスペースS2と略同じ幅を有する本体部15Aを有している。
【0042】
本体部15Aは、上面部15aと、前後の側面部15b、15bと、第2ロッド12の内面と対向して配置される当接面部15cを有し、下面と内側面とが開口されて水平断面が概略コ字状に形成されている。また、
図5に示しているように、第2ロッド12の軸方向の一方側(上方側)で、スペースS2の天面及び第2ロッド12の内周面と各々対向する肩部15d、すなわち上面部15aと当接面部15cが連なる肩部15dは凸曲面状に形成されて、スペースS2内でストッパー15が回動するとき、肩部15dがホルダー14及び第2ロッドと当接しないでスムーズに回動できるように構成されている。
【0043】
また、本体部15Aにおける当接面部15cの表面には、ブレーキ部材22が貼り付けられている。ブレーキ部材22は、例えばシリコンゴムなどである。ブレーキ部材22は、第2ロッド12の内周面12aと接触した状態で、第1ロッド11が第2ロッド12の軸方向に移動しようとしたとき、第2ロッド12の内周面12aとブレーキ部材22との間に固定用摩擦力を働かせるための部材である。なお、ブレーキ部材22は、当接面部15cが第2ロッド12の内周面12aに当接したときに発生する固定用摩擦力によっては、省略する場合もある。また、ブレーキ部材22には、ストッパー15の下端側が内側に回動したとき、第2ロッド12の内面との接触を逃がすために、上端側に上側から下側に向かって傾斜するテーパー部22aを設けている。
【0044】
また、ストッパー15における前後の側面部15b、15bには、前後対称な位置に外側に向かって突出しているピン状をした枢軸15eが各々形成されている。枢軸15eは、ホルダー14の垂直脚14da、14dbに設けられたスリット20内にスライド及び回転自在に配置可能になっている。さらに、本体部15Aにおける当接面部15cの裏面(第2ロッド12の軸中心側の面)には、コイルスプリング16の端部が係止されるピン状の係止突起15fが形成されている。
【0045】
ストッパー15は、スペースS2内に配置されて、スペースS1内側に配置された前後両側の枢軸15eを、スペースS1側からそれぞれ対応するスリット20内に挿入係合させることによってホルダー14に取り付けられる。また、ホルダー14に取り付けられた枢軸15eを支点にして放射方向に往復回転できるとともに、枢軸15eがスリット20内を摺動することによって、スリット20の案内で移動して配置される位置を調整できるようになっている。なお、この調整は、スリット20の傾斜形状によって定まる。また、ストッパー15の枢軸15eは、スリット20(ガイド溝)を動くことができるため、第2ロッド12の内径寸法に多少バラツキがあっても正常な動作が可能になる。
【0046】
また、ホルダー14のスペースS2に各々別れて配置された一対のストッパー15は、第2ロッド12内にホルダー14と共に配置されるとき、一対のストッパー15の向かい合う係止突起15fにコイルスプリング16を圧縮した状態で両端を各々係止させて、第1ロッド11の下端部とホルダー14と一緒に第2ロッド12内の所定の位置に挿入されて配置される。
図5はこのようにして、ロッド固定装置10が第2ロッド12内に配置されている状態を示している。ここでのコイルスプリング16は、第1ロッド11の中心軸線と略直交する状態にして配置されている。
【0047】
次に、ロッド固定装置10が第1ロッド11を上下の位置に移動させ、移動後の位置で第1ロッド11を抑止し、維持する動作を、
図15を使用して説明する。
【0048】
図15の(a)は、第1ロッド11が移動されて、その移動後の位置を維持している状態、すなわちロック状態を示している。この状態では、一対のストッパー15は、向かい合う係止突起15f、15fにそれぞれ両端部が係止されて圧縮状態にある、コイルスプリング16のバネ力で枢軸(位置決めピン)15eを支点として回転し、当接面部15cに貼り付けられているブレーキ部材22の一部が第2ロッド12の内周面12aに押し付けられている。これにより、ストッパー15の当接面部15cに貼り付けられているブレーキ部材22が第2ロッド12との間に固定用摩擦力を生成し、その固定用摩擦力で、第2ロッド12に対する第1ロッド11の移動を抑止している。したがって、ここでのブレーキ部材22が生成する固定用摩擦力は、第1ロッド11側の重量と略等しいか、それよりも若干大きい力に設定しておくことが好ましい。また、このロック状態では、ストッパー15の枢軸15eはスリット20の長さ方向略中間の位置に配置されている。
【0049】
図15の(b)は、第1ロッド11側に上方への力を加えたときの状態である。
図15の(a)の状態から、第1ロッド11側に上方への力を加えると、ブレーキ部材22の固定用摩擦力における抵抗でストッパー15の当接面部15cが第2ロッド12の内周面12aと離れる側に、ストッパー15が枢軸15eを支点として回動し、ブレーキ部材22が第2ロッド12の内周面12aから離れることによって固定用摩擦力が減衰する。また、枢軸15eは、ストッパー15が回動するとき、ホルダー14に対するストッパー15の回動を助ける。また、枢軸15eが移動するとき、コイルスプリング16は、
図5に示すように、中間部分が上方に撓んで枢軸15eの移動を助ける。そして、固定用摩擦力を減衰した状態で第1ロッド11側が持ち上げられ、第1ロッド11側の重量(第1ロッド11側に設置物がある時には、第1ロッド11と設置物の重量)に略近い力で第1ロッド11を上方へ移動させることができる。なお、コイルスプリング16には、コイルスプリング16の空洞内部に、上下方向に撓み変形して湾曲可能な直線棒状の芯材を配置しておくと、コイルスプリング16が撓むとき、その撓み変形を予め想定される湾曲形状となるように誘導変形させることができる。
【0050】
図15の(c)は、第1ロッド11側に下方への力を加えたときの状態である。
図15の(a)の状態から、第1ロッド11側に下方への力を加えると、ブレーキ部材22の固定用摩擦力における抵抗でストッパー15の当接面部15cが第2ロッド12の内周面12aに近づく側に、ストッパー15が枢軸15eを支点として回動する。ブレーキ部材22が第2ロッド12の内周面12aに当接することによって固定用摩擦力が増大する。そして、固定用摩擦力を増大した状態で第1ロッド11側が押し下げられるが、押し下げの場合は第1ロッド11側の重量(第1ロッド11側に設置物がある時には、第1ロッド11と設置物の重力)が加わり、軽い力で第1ロッド11を下方へ移動させることができる。また、枢軸15eは、ストッパー15が回動するとき、
図15(c)に示すように、スリット20内を第2ロッド12の中心軸方向に移動して、ホルダー14に対するストッパー15の回動も助ける。
【0051】
したがって、実施例のロッド固定装置10では、固定用摩擦力を、第1ロッド11側の重量と略等しいか、それよりも若干大きい力に設定しておくと、平時は固定用摩擦力で第1ロッド11側の移動を抑止し、ロック状態に維持しておくことができる。
【0052】
そして、ロック状態から第1ロッド11に上方への力を加えると、固定用摩擦力を減衰して、第1ロッド11側の重量と略同じ力で第1ロッド11側を上昇させることができる。また、反対に第1ロッド11に下方への力を加えると、固定用摩擦力と略同じ大きさの力で第1ロッド11を降下させることができる。これにより、第1ロッド11の移動方向が上下いずれの方向であっても、略同じ力の大きさで第1ロッド11を操作させることができ、第1ロッド11の上げ下げの操作時における抵抗感をなくすことができる。
【0053】
また、ストッパー15を、第2ロッド12の軸線を挟んで略対称な位置に一対配置しているとともに、弾性部材であるコイルスプリング16を一対のストッパー15の係止突起15fにそれぞれ係止させ、コイルスプリング16をストッパー15共通に配置している。したがって、ストッパー15の固定用摩擦力は、第2ロッド12に対して左右均等に掛けられ、第2ロッド12に対する第1ロッド11の移動抑止が安定的に行える。さらに、第1ロッド11を上げ下げする操作の時も、一対のストッパー15が第2ロッド12の内周面12aにそれぞれ当接して、第1ロッド11を軸中心上に保持した状態で、上げ下げの移動を案内することができるので、移動が安定する。また、一対のストッパー15に一つのコイルスプリング16を弾性部材として使用するので、部品点数を増やすことなく実現できる。
【0054】
また、ホルダー14にガイド溝としてのスリット20を設けるとともに、ストッパー15にスライド及び回転可能に嵌合される位置決めピンとしての枢軸15eを設けている。そして、ストッパー15の回動中心の位置を、スリット20と枢軸15eとの嵌合により第2ロッド12の半径方向に移動調整可能にしているので、スリット20の形状を設定することによって、平時(ロック時)におけるストッパー15の第2ロッド12に対するロック状態、及び、第1ロッド11を上方向又は下方向へ移動させる際に、固定用摩擦力を減衰させる量の調整を簡単に行うことができる。なお、枢軸15eとスリット20は、実施例の場合と反対に、枢軸15eをホルダー14側に設け、スリット20をストッパー15側に形成するようにして設けても良い。
【0055】
また、ストッパー15の、第2ロッド12及びホルダー14のスペース天面と対向している肩部15dを凸曲面状に形成しているので、第2ロッド12及びホルダー14に対するストッパー15の、第2ロッド12の半径方向への回転をスムーズに行うことができる。
【0056】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を成すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【符号の説明】
【0057】
10 ロッド固定装置
11 第1ロッド(可動側部材)
12 第2ロッド(固定側部材)
12a 内周面
13 ロック機構
14 ホルダー
14a 円板部
14b 凹部
14c 環状凹溝
14d 垂直部
14da、14db 垂直脚
15 ストッパー
15A 本体部
15a 上面部
15b 側面部
15c 当接面部
15d 肩部
15e 枢軸(位置決めピン)
15f 係止突起
16 コイルスプリング
17 ブラケット
17a 円板部
17b 上側管状部
17c 下側管状部
17d 軸部
18 タッピングスクリュー
19 取付孔
20 スリット(ガイド溝)
21 取付孔
22 ブレーキ部材
22a テーパー部
100 化粧鏡スタンド
101 伸縮ロッドユニット
102 化粧鏡
103 設置台
S1 スペース
S2 スペース