(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-17
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】トリガー取付治具
(51)【国際特許分類】
E05F 1/16 20060101AFI20220106BHJP
B23P 19/00 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
E05F1/16 A
B23P19/00 304E
(21)【出願番号】P 2018017055
(22)【出願日】2018-02-02
【審査請求日】2021-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】592166126
【氏名又は名称】株式会社中尾製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100112575
【氏名又は名称】田川 孝由
(72)【発明者】
【氏名】後藤 直洋
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-157921(JP,A)
【文献】特開2013-230519(JP,A)
【文献】特開2014-43722(JP,A)
【文献】特開2007-175801(JP,A)
【文献】特開2012-117221(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 1/00-13/04
B23P 19/00-21/00
E04G 21/14-21/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吊下げ式引き戸用クローザのトリガー(20)を、戸枠の上框の下面に取付けられた引き戸レール(10)のレール溝(11)の内部の定位置にねじ止めして固定する際の作業を補助するトリガー取付治具であって、
前記レール溝(11)に上側部分を挿入するレール溝の溝深さよりも背の高い基部(2)と、その基部(2)の上面に設けられたトリガー保持部(3)と、前記基部(2)の左右の側壁(2a、2b)の外面にそれぞれ設けられる第1の凸部(4)及び第2の凸部(5)と、前記基部(2)の左右の側壁(2a、2b)のうちの少なくとも片側の側壁にレール溝(11)の溝幅方向に突出して設けられる引き戸レール長手方向に延びた羽根(6)と、その羽根(6)の長手途中に設けられる照合溝(7)とを有し、
前記基部(2)は、指で掴む把持部(2d)を下端に、トリガー固定用のねじを通す貫通したねじ通し孔(2e)を内部にそれぞれ有し、
前記基部(2)の左右の側壁(2a、2b)間の寸法(W1)は、レール溝(11)の開口部の開口幅(W2)よりも小さく、
前記基部(2)の左右の側壁(2a、2b)に設けられた前記第1の凸部(4)と第2の凸部(5)の頂部間のレール溝溝幅方向の寸法(W3,W4)は共に前記レール溝(11)の開口部の開口幅(W2)よりも大きく、
前記第1の凸部(4)は、前記基部(2)または、前記引き戸レール(10)の弾性変形により前記レール溝の内部に入り込んで前記レール溝(11)の開口縁部の上面に乗り上げる位置にあり、
前記第2の凸部(5)は、前記基部(2)が前記レール溝(11)に最大に挿入された位置で前記レール溝(11)の開口縁間に圧入されて前記開口縁間に挟み込まれる位置にあり、
前記羽根(6)は、前記基部(2)が前記レール溝に最大に挿入された位置で前記引き戸レール(10)の下面に添う位置にあり、
前記照合溝(7)が前記引き戸レール(10)の下面に付した取付基準線(12)と重なる位置で、前記トリガー保持部(3)に保持されたトリガー(20)が前記レール溝(11)内の設置点に位置決めされるように構成されたトリガー取付治具。
【請求項2】
前記基部(2)の上部に、周囲が囲い壁(3a)によって囲われた凹部(3b)を有し、前記トリガー保持部(3)が、前記凹部(3b)によって形成された請求項1に記載のトリガー取付治具。
【請求項3】
前記第1の凸部(4)が、前記基部(2)の左右の側壁(2a、2b)の引き戸レール長手方向の両端付近にそれぞれ設けられた請求項1または2に記載のトリガー取付治具。
【請求項4】
前記第1の凸部(4)が、片側1個ずつにして前記基部(2)の左右の側壁(2a、2b)の対角位置に設けられた請求項1または2に記載のトリガー取付治具。
【請求項5】
前記照合溝(7)は、前記レール溝(11)の溝幅方向に入り込んでおり、その溝の入口部が外側に向かってV字状に開いている請求項1~4のいずれかに記載のトリガー取付治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、引き戸用クローザのトリガーを引き戸レールに固定するときに仮保持用の補助具として利用するトリガー取付治具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の引き戸は、安全性向上や静音性確保等の観点からクローザを設け、開閉の終点近くから終点までの間での開閉速度を緩やかに変化させるようにしたものが増えてきている。吊下げ式引き戸も同様である。
【0003】
吊下げ式引き戸用のクローザは、外ケース、戸車ホルダ、戸車、カムホルダ、トリガー用カム、引きばね、ダンパ、トリガー(固定突起)の各要素を組み合わせて構成されている。
【0004】
前記外ケースは引き戸に設けられ、その外ケースの前部と後部に戸車ホルダが取り付けられている。
【0005】
前記戸車は、左右の2個が対になっており、その対の戸車が、前記戸車ホルダに保持され、引き戸レールに設けられた軌道面上を滑走して引き戸レールに吊るされた扉が開閉する。
【0006】
前記カムホルダは、戸車ホルダに引き戸開閉方向スライド可能に支持され、そのカムホルダに前記トリガー用カムが支持されている。
【0007】
また、前記引きばねは、前記トリガー用カムと外ケースとの間に介在されており、前記トリガー用カムを前記戸車ホルダに係合させたときに、前記引きばねが引き伸ばされた状態になる。
【0008】
前記トリガーは、突起であり、引き戸レールのレール溝の内部に挿入されて引き戸レールの上部壁の内面に垂下状態に固定される。また、前記ダンパは、前記カムホルダと外ケースとの間に配置されて前記トリガー用カムと外ケースの相対移動に抵抗を加えるようになっている。
【0009】
前記トリガー用カムは、引き戸が閉側または開側の移動終点近くに移動したときに前記トリガーに当接してその位置に引き止められる。そして、その後の戸車ホルダを伴った外ケースの更なる移動によって戸車ホルダに対するトリガー用カムの係合が解ける。
【0010】
これにより、トリガー用カムと前記外ケースが前記引きばねの力で引き戸閉方向に相対移動し、外ケースを取り付けた引き戸が前記ダンパによる緩衝作用で移動終点に向かってゆっくりと移動する。
【0011】
この様に構成される引き戸用クローザは、下記特許文献3~5などに示されているので、ここでの詳細説明は省く。
【0012】
ところで、引き戸用クローザの前記トリガーは、引き戸レールのレール溝の中に配置されてレール溝内の定位置において引き戸レールの上部壁に設けられたねじ挿通孔に通されるねじで、戸枠の上框に固定される。
【0013】
その固定作業は、トリガーをレール溝の中の定位置に保持して行う必要がある。ところが、引き戸レールのレール溝は狭くて手指が入らない。
【0014】
そのために、作業を補助する道具として、下記特許文献1、2に示されるようなねじ止め用治具が開発されている。
【0015】
特許文献1に記載されたねじ止め用治具は、基端側(下側)に作業者による把持部を、上端にトリガーを保持する凹部をそれぞれ有する。
【0016】
また、前記凹部に保持されたトリガーの取付孔に対応した位置に下端から上端に抜けるねじ通し孔を有している。この治具は、前記凹部にトリガーをセットしてレール溝に挿入する。
【0017】
そして、レール溝に入り込んでいない把持部を手で掴んで治具を保持し、前記ねじ通し孔に通したねじを戸枠の上框にねじ込む。こうすることで、治具で仮保持したトリガーをレール溝内の設定位置に固定することができる。
【0018】
特許文献2の治具は、トリガーを部品保持部に保持した状態でレール溝に挿入(圧入)する。このとき、治具に設けた挟着部が弾性変形し、これによって生じる弾性復元力で挟着部が弾性復元して治具がレール溝の縁によって挟持された状態が作り出される。
【0019】
そのため、特許文献2の治具は、手で掴まずにトリガーを定位置に仮保持することができ、特許文献1の治具に比べてトリガーのねじ止め作業がし易くなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【文献】特開2007-175801号公報
【文献】特開2012-117221号公報
【文献】特開2009-127293号公報
【文献】特開2013-170415号公報
【文献】特開2016-8382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
上述したように、特許文献2のねじ止め用治具は、手で持たずに保持したトリガーをレール溝内の設定位置に仮保持し得るものになっているが、自身を、トリガー設置点に位置決めする際の作業性に問題が残されている。
【0022】
治具に保持されたトリガーが設置点に正確に位置決めされたことの確認は、トリガーの取付孔が引き戸レールの上部壁に設けられたねじ挿通孔と合致する位置にあることを目視して行う必要がある。
【0023】
引き戸レールのレール溝は開口が狭く、その狭い溝に挿入された治具のねじ通し孔が引き戸レールのねじ挿通孔と合致した位置にあることをレールの下方から目視確認することは、決して簡単ではない。
【0024】
また、目視確認した治具のねじ通し孔と引き戸レールのねじ挿通孔の位置にずれが生じているときには、両方の孔位置が合致するところまで治具を移動させ微調整が必要であるが、治具はレール溝に既に圧入されているので、その作業もし辛い。
【0025】
さらに、引き戸レールの上部壁にねじ挿通孔が予め設けられていなければ、治具の位置決めは位置合わせの対象が無いため困難を極める。
【0026】
そのため、前記ねじ挿通孔が存在しない状態でタッピングねじを用いて引き戸レールの上部壁にねじ挿通孔をあけながらトリガーを設置点に固定する効率的な方法での作業が行えない。
【0027】
そこで、この発明は、上述したトリガー取付治具の引き戸レールに対する正確な位置決め(これは、即ち、レール溝内でのトリガーの正確な位置決め)を、簡単に作業性良く行えるようにすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0028】
上記の課題を解決するため、この発明においては、吊下げ式引き戸用クローザのトリガーを、戸枠の上框の下面に取付けられた引き戸レールのレール溝の内部の定位置にねじ止めして固定する際の作業を補助するトリガー取付治具であって、
前記レール溝に上側部分を挿入するレール溝の溝深さよりも背の高い基部と、その基部の上面に設けられたトリガー保持部と、前記基部の左右の側壁の外面にそれぞれ設けられる第1の凸部及び第2の凸部と、前記基部の左右の側壁のうちの少なくとも片側の側壁にレール溝の溝幅方向に突出して設けられる引き戸レール長手方向に延びた羽根と、その羽根の長手途中に設けられる照合溝とを有し、
前記基部は、指で掴む把持部を下端に、トリガー固定用のねじを通す貫通したねじ通し孔を内部にそれぞれ有し、
前記基部の左右の壁間の寸法は、レール溝の開口部の開口幅よりも小さく、
前記基部の左右の側壁に設けられた前記第1の凸部と第2の凸部の頂部間のレール溝溝幅方向の寸法は共に前記レール溝の開口幅よりも大きく、
前記第1の凸部は、前記基部、または、前記引き戸レールの弾性変形により前記レール溝の内部に入り込んで前記レール溝の開口縁部の上面に乗り上げる位置にあり、
前記第2の凸部は、前記基部が前記レール溝に最大に挿入された位置で前記レール溝の開口縁間に圧入されて前記開口縁間に挟み込まれる位置にあり、
前記羽根は、前記基部が前記レール溝に最大に挿入された位置で前記引き戸レールの下面に添う位置にあり、
前記照合溝が前記引き戸レールの下面に付した取付基準線と重なる位置で、前記トリガー保持部に保持されたトリガーが前記レール溝内の設置点に位置決めされるものである。
【0029】
このトリガー取付治具は、前記第1の凸部が前記基部の左右の側壁の引き戸レール長手方向の両端付近にそれぞれ設けられたものが好ましいが、第1の凸部は、片側1個ずつにして基部の両側壁の対角位置に設置されていてもよい。
【0030】
また、前記トリガー保持部は、前記基部の上部に周囲が囲い壁によって囲われた凹部を備えさせてその凹部で形成するのも好ましい。
【0031】
このほか、前記照合溝が、前記レール溝の溝幅方向に入り込んだスリット状の溝であり、その溝の入口部が外側に向かってV字状に開いているのも好ましい。
【0032】
前記取付基準線は、前記基部のねじ通し孔がトリガー保持部に保持されたトリガーの取付孔と一致する位置に前記基部を位置決めするときの目印となす線である。
【発明の効果】
【0033】
この発明のトリガー取付治具は、前記第1の凸部が前記開口縁部の上面に乗り上げる位置まで前記基部の上側部分を前記レール溝に挿入する。
【0034】
その後、第1の凸部によって引き戸レールに吊り下げられた基部を引き戸レールの長手方向に滑らせることでレール溝に対する基部の挿入位置を微調整し、微調整後の位置においてレール溝に基部を圧入する。
【0035】
基部の挿入位置の微調整は、前記照合溝を引き戸レールの下面に付した取付基準線に合わせて行う。前記照合溝と取付基準線が重なる位置が最終的な位置決め点となる位置に前記取付基準線を付しておくことで、基部のねじ通し孔と引き戸レールの上部壁のねじ挿通孔を目視しなくてもトリガーの基部を楽に滑らせながらトリガー取付治具を楽に、正確に位置決めすることができる。
【0036】
また、前記ねじ通し孔とねじ挿通孔の位置合わせを行わずに治具の位置決めを行えるので、引き戸レールの上部壁にねじ挿通孔を加工しながらトリガーを固定する場合にも、トリガー取付治具の正確な位置決めを行ってトリガーを目的の設置点に固定することができる。
【0037】
上記微調整は、レール溝に対して前記第1の凸部を挿入したときの基部の位置が最終的な位置決め点からずれたときに行う。基部が最初から正しい位置決め点に挿入されて位置ずれが生じていなければ、その微調整は勿論不要である。
【0038】
前記第1の凸部を基部の両側壁の引き戸レールの長手方向の両端付近にそれぞれ設けたトリガー取付治具は、第1の凸部がレール溝の開口縁部の上面に乗り上げたときの引き戸レールによる吊り下げが特に安定してなされる。
【0039】
第1の凸部を片側1個ずつにして基部の両側壁の対角位置に設置するものも、対角位置の第1の凸部を治具の重量がバランスする位置に設けることで、トリガー取付治具の引き戸レールによる吊り下げの安定化が図れる。
【0040】
前記トリガー保持部を、周囲が囲い壁に囲われた凹部で形成するものは、トリガー固定ねじを引き戸レールの上部壁に設けられたねじ挿通孔に通して戸枠にねじ込むとき、または、引き戸レールの上部壁にタッピングねじで孔をあけながら戸枠にねじ込むときに発生する切り粉の飛散が防止されて引き戸レールの滑走面に対する切り粉の落下が無くなる。そのため、トリガー固定後の滑走面の清掃作業も不要になる。
【0041】
このほか、前記照合溝をレール溝の溝幅方向に入り込んだ溝にしてその溝の入口を外側に向かってV字状に開かせたものは、V字の頂点(照合溝の入口の最も溝幅が狭くなった箇所)が取付基準線と重なったか否かを見ればよく、照合溝と取付基準線の合致状態の確認がし易い。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】この発明のトリガー取付治具の一例を示す斜視図である。
【
図2】
図1のトリガー取付治具にトリガーがセットされた状態を示す斜視図である。
【
図3】
図1のトリガー取付治具を側壁の表面と平行な線に沿って切断した断面図である。
【
図4】
図1のトリガー取付治具と、引き戸レールの一例を示す斜視図である。
【
図5】引き戸レールに対して取付基準線を付す作業を示す斜視図である。
【
図6】
図4の引き戸レールのレール溝にトリガー取付治具の上側部分が途中まで挿入された状態を示す斜視図である。
【
図7】引き戸レールのレール溝にトリガー取付治具の上側部分が途中まで挿入された状態を示す拡大端面図である。
【
図8】挿入位置の微調整を行ったトリガー取付治具が引き戸レールのレール溝に圧入されて最大に挿入された状態を示す斜視図である。
【
図9】トリガー取付治具が引き戸レールのレール溝に圧入されて最大に挿入された状態を示す拡大端面図である。
【
図10】トリガー取付治具の位置決め後にその治具に保持されたトリガーをねじ止めする作業を示す斜視図である。
【
図11】第1の凸部を片側1個ずつにしたトリガー取付治具の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
この発明のトリガー取付治具の実施の形態を添付図面の
図1~
図3に、また、そのトリガー取付治具を用いたトリガー設置の一例を添付図面の
図4~
図10に示す。
【0044】
図1~
図3に例示したトリガー取付治具1(以下では略して単に治具と言う)は、樹脂の成形品であって、基部2と、その基部2の上面に設けられたトリガー保持部3と、基部2の両側壁2a、2b(
図7を同時参照)の外面にそれぞれ設けられる第1の凸部4及び第2の凸部5と、基部の両側壁2a、2bにそれぞれ設けられる羽根6(これも
図7を同時参照)と、各羽根6の長手途中に設けられる照合溝7を有する。
【0045】
羽根6は、レール溝11の溝幅方向に突出した羽根であり、
図4に示した引き戸レール10の長手方向に延びている。
【0046】
この羽根6は、基部の側壁2a、2bの両方にあると、トリガー取付治具1を引き戸レール10のレール溝11に挿入するときの方向性を無くして、一端と他端の向きが逆になる誤挿入を防止できるが、羽根6は、側壁2a、2bの少なくともどちらか一方にあればよい。
【0047】
基部2は、側壁2a、2bが互いに接近・離反する方向に弾性変形可能となっている。この基部2の
図3に示した背丈Hは、レール溝11の溝深さD(
図4参照)よりも大きい。
【0048】
この基部2は、指で掴む把持部2dを引き戸レール10の長手方向前後の端壁2cの下端に有する。また、トリガー固定用のねじ(
図10の14)を通す貫通したねじ通し孔2e(
図3参照)を内部に有する。
【0049】
基部2の側壁2a、2b間の寸法W1(
図7参照)は、レール溝11の開口部の開口幅W2よりも小さい。
【0050】
引き戸レール10は、
図4、
図7に示すように、対向配置の側壁10a、10aと、その2つの側壁10a、10aを連結する上部壁10bと、側壁10a、10a下端から互いに接近する方向に延びた突端側が非支持の下部壁10c、10cを有し、各下部壁10cの上面に、クローザの左右の戸車(図示せず)が滑走する軌道面10dを備えた下部開口のレールであり、対向した下部壁10c、10cの突端間が、レール溝11の開口部となっている。
【0051】
例示の引き戸レール10は、軌道面10dが凹円弧状で溝無し戸車を案内するものになっているが、溝付き戸車を案内する凸条レールを備えた軌道面を有するものもある。
【0052】
トリガー保持部3は、
図3に示すように、基部2の上部に、周囲が囲い壁3aによって囲われた凹部3bを設け、その凹部3bをトリガー20が適合して納まるものにし、囲い壁3aと、ねじ通し孔2eの上端が開口している凹部3bの2者でトリガー20の保持を行うものにしている。
【0053】
図示のトリガー保持部3は、囲い壁3aの働きによりトリガー20をねじで固定するときに発生する切り粉の飛散が防止される。このため、引き戸レール10の軌道面10dに切り粉が落下することが無くなり、トリガー固定後の軌道面10dの清掃作業を必要としない。
【0054】
基部2の左右の側壁2a、2bにそれぞれ設けられた第1の凸部4の頂部間のレール溝溝幅方向の寸法W3(
図7参照)は、レール溝11の開口部の開口幅W2(
図4を同時参照)よりも大きく、基部2の片側の側壁2aと他側の側壁2bにそれぞれ設けられた第2の凸部5の頂部間のレール溝溝幅方向の寸法W4も、レール溝11の開口部の開口幅W2よりも大きい。
【0055】
第1の凸部4は、レール溝11への押し込みとレール溝11からの抜き出しを容易化するために球面状に成形された突起が採用されている。
【0056】
また、第2の凸部5は、レール溝11に対する押し込みを容易化するために、上側が球面状に成形された突起が採用されている。
【0057】
第1の凸部4は、基部2の側壁2a、2bの弾性変形によりレール溝11の内部に入り込んでレール溝11の開口縁部の上面に乗り上げる位置にある。
【0058】
また、第2の凸部5は、治具1がレール溝11に最大に挿入された位置(この位置では基部2が引き戸レールの上部壁10bに当接する)でレール溝11の開口縁間に圧入されて挟み込まれる位置にある。
【0059】
例示の治具1は、第1の凸部4と第2の凸部5の突出量を等しくしており、W3=W4となっているが、第1の凸部4と第2の凸部5の突出量が同一であることは必須ではない。
【0060】
なお、第1の凸部4は、
図11、
図12に示すように、片側1個ずつにして基部2の左右の側壁2a、2bの対角位置に設けられていてもよい。この構造でも、第1の凸部4をレール溝の開口縁部に乗り上げさせ、この状態で引き戸レールに吊り下げられた治具1をレール長手方向にスライドさせて保持位置の微調整を行うことができる。
【0061】
羽根6は、治具1がレール溝11に最大に挿入された位置で引き戸レール10の下部壁10cの下面に添う位置にある。この羽根6のレール溝溝幅方向への突出量は、引き戸レールの片方の下部壁10cのレール溝溝幅方向寸法よりも小さい。
【0062】
照合溝7は、レール溝11の溝幅方向に入り込んだ溝であり、羽根6の長手方向中央部(これは基部2の引き戸レール長手方向の中間点)にある。図示の照合溝7の入口は、外側に向かってV字状に開いており、その入口の溝幅が最も狭くなっているところと取付基準線12を照らし合わせる。
【0063】
取付基準線12は、トリガー設置点の中心を表す目盛り線として予め引き戸レール10の下面(下部壁10cの下面)に付しておく。
図5に示すように、引き戸レール10の長手方向の端部からトリガー設置点までをメジャー13で測り、設置点の中心を求めてそこに鉛筆などで印(取付基準線12)をつける。
【0064】
以上の通りに構成された例示の治具1は、トリガー保持部3にトリガー20をセットしてその治具の上側部分を、戸枠の上框に固定された引き戸レール10のレール溝11に上向きに押し込んで挿入する。
【0065】
引き戸レール10には、トリガー設置点の中心を示す位置をメジャー13で測ってそこに取付基準線12を予め付しておく。
【0066】
その引き戸レール10のレール溝11に対する治具1の上側部分の挿入は、まず、取付基準線12の近くにおいて、治具1を、レール溝11に下から押し込む。圧力を加えた基部2の押し込みにより、基部2の側壁2a、2bが弾性変形して第1の凸部4が引き戸レール10の下部壁10cを通り抜ける。
【0067】
これにより、
図7に示すように、第1の凸部4がレール溝11の開口縁部の上面に乗り上げ、治具1が引き戸レール10に吊り下げられた状態になる。
【0068】
このとき、引き戸レール10に吊り下がった治具の位置が
図6に示すように最終的な位置決め点からずれていたら、第1の凸部4をレール溝11の開口縁部上で滑らせて治具位置の微調整を行う。
【0069】
その微調整は、照合溝7が引き戸レール10の下面の取付基準線12と合致するところまで治具1をスライドさせて行う。
【0070】
そして、その微調整を終えたら、
図8に示すように、最終的な位置決め点において治具1の基部2をレール溝11にさらに押し込む。このときの、押し込みは、側壁2a、2bに設けられた第2の凸部5の頂部間のレール溝溝幅方向寸法W4が、レール溝11の開口部の開口幅W2よりも大きいため圧入になり、レール溝11の開口縁間に基部2が挟み込まれて治具1がトリガー20の設置点に位置決めされて保持される。
【0071】
その保持位置では、
図9に示すように、基部2が引き戸レール10の上部壁10bに当接する。そこで、
図3に示したねじ通し孔2eに固定用のねじ14(
図10参照)を通し、そのねじ14をドライバーなどのねじ締め具で戸枠の上框にねじ込んでトリガー20を設定位置にしっかり固定する。その後、治具1をレール溝11から抜き取ってトリガー設置の作業を終了する。
【0072】
ねじ14は、タッピングねじを用いると、引き戸レール10が、上部壁10bにねじ挿通孔の加工されていないものであってもトリガー20の位置決め固定が行える。
【0073】
なお、軽量扉を吊るす目的で使用される引き戸レール10は、壁厚が薄くてレール自身が弾性変形できるものが考えられる。
【0074】
そのような、引き戸レール10にトリガーを固定するときの補助具として利用するトリガー取付治具は、引き戸レール10を弾性変形させて第1の凸部4のレール溝11への押し込みと第2の凸部5のレール溝開口部への圧入を行うことができる。そのトリガー取付治具は、剛性の高い金属などで形成されて基部の側壁が弾性変形不能となっているものを採用することができる。
【符号の説明】
【0075】
1 トリガー取付治具
2 基部
2a、2b 側壁
2c 端壁
2d 把持部
2e ねじ通し孔
3 トリガー保持部
3a 囲い壁
3b 凹部
4 第1の凸部
5 第2の凸部
6 羽根
7 照合溝
H 基部の背丈
W1 基部の両側壁間の寸法
W2 レール溝の開口部の開口幅
W3 基部の左右の側壁に設けられた第1の凸部の頂部間のレール溝溝幅方向の寸法
W4 基部の左右の側壁に設けられた第2の凸部の頂部間のレール溝溝幅方向の寸法
10 引き戸レール
10a 側壁
10b 上部壁
10c 下部壁
10d 軌道面
11 レール溝
12 取付基準線
13 メジャー
14 ねじ
20 トリガー