(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-17
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】NGNを介してIPv6によるピア・ツー・ピア通信を行う方法
(51)【国際特許分類】
H04L 65/1066 20220101AFI20220106BHJP
H04L 61/00 20220101ALI20220106BHJP
H04M 3/00 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
H04L65/1066
H04L61/00
H04M3/00 B
(21)【出願番号】P 2018106082
(22)【出願日】2018-06-01
【審査請求日】2019-01-04
【審判番号】
【審判請求日】2020-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】591277153
【氏名又は名称】甲賀電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水野 潤
(72)【発明者】
【氏名】中沼 忠司
【合議体】
【審判長】角田 慎治
【審判官】富澤 哲生
【審判官】▲高▼瀬 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-129934(JP,A)
【文献】特開2002-84319(JP,A)
【文献】特開2009-260847(JP,A)
【文献】特許第6082156(JP,B1)
【文献】特開2010-250672(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/00-12/955
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
NGN(Next Generation Network)と、それぞれ前記NGNに通信回線を介して接続された複数の端末機器とからなり、前記通信回線に対し、識別番号として電話番号が固定的に割り当てられる一方、当該通信回線に接続された前記端末機器と前記NGNとの接続が確立される毎にIPv6アドレスが動的に割り当てられ、前記電話番号およびIPv6アドレスに基づいてIP通信がなされる通信システムにおいて前記端末機器間でIPv6によるピア・ツー・ピア通信を行う方法であって、
前記端末機器間において、前記端末機器のそれぞれと前記NGNとの接続の確立により割り当てられた自己の前記IPv6アドレスを含み、相手方の前記通信回線の前記電話番号を宛先とするSIP(Session Initiation Protocol)のメッセージ信号を、互いに相手方の前記通信回線に対して送信し、前記端末機器のそれぞれにおいて相手方の通信回線から着信した前記メッセージ信号から前記相手方の前記IPv6アドレスを取得し、前記端末機器のそれぞれにおいて、取得した相手方の前記IPv6アドレスを当該相手方の電話番号と関係付けて記憶するとともに、前記IPv6アドレスに基づいて前記端末機器間で前記ピア・ツー・ピア通信を行うことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NGN(Next Generation Network; 次世代通信網)を介してIPv6によるピア・ツー・ピア通信を行う方法に関するものである。
ここで、IPはインターネット上のデータ通信の方法を定めた規約であるインターネットプロトコル(Internet Protocol)の省略形であり、IPv6はインターネットプロトコル・バージョン6(Internet Protocol version 6)の省略形である(以下同様)。
【背景技術】
【0002】
近年、我が国において、基幹通信網は、公衆交換電話網(Public Switched Telephone Network; PSTN)からIP通信技術を用いた次世代通信網(Next Generation Network; NGN)に移行しつつある。
【0003】
NGNは、PSTNで用いられる回線交換方式と同様の安全性と、電話番号を発信者ID(識別番号)とする通信回線の指定方法の利便性と、IP方式の経済性とを併せ持つネットワークである。
NGNにおいては、これに接続された各通信回線に割り当てた電話番号をネットワーク側で管理し、不正なアクセスはネットワークの入口でブロックする等のセキュリティ対策を行うことによって、安全で高品質なサービスを提供する。
また、NGNによれば、音声通信をデータ通信と組み合わせたサービスや、電話・データ通信・ストリーミング放送を融合したサービスを、IP方式による高速通信網を有効利用して、低コストで提供することができる。
【0004】
我が国におけるNGNの通信サービスとしては、日本電信電話株式会社(NTT)グループが提供する「フレッツ光ネクスト」がある。
フレッツ光ネクストにおいては、光回線終端装置(Optical network Unit; ONU)、光回線、回線収容設備、IP通信網から構成されたNGNを通じてIP通信が行われ、電話・テレビ電話サービス、インターネット接続事業者(Internet Service Provider; ISP)アクセスサービス、IP放送、VoD(Video on Demand; ビデオ・オン・デマンド)サービス、および企業内網サービス等の利用が可能になっている(例えば、非特許文献1参照)。
【0005】
ところで、フレッツ光ネクストによれば、NGNに接続された通信回線に対し、識別番号としての電話番号が固定的に割り当てられる一方、当該通信回線に接続された端末機器がNGNとの接続を確立する毎に、IPv6アドレスが動的に割り当てられる。
【0006】
すなわち、フレッツ光ネクストでは、IPv6アドレスは、通信回線に固有のものではなく、通信回線に接続された端末機器とNGNとの接続の確立のたびに通信回線に割り当てられ、そのため、端末機器間においては、互いに相手方の通信回線に割り当てられたIPv6アドレスは不明である。
【0007】
ところで、端末機器間でIPv6によるピア・ツー・ピア通信を行うためには、互いに相手方のIPv6アドレスが知られている必要がある。
しかしながら、上述のように、フレッツ光ネクストにおいては、ピア・ツー・ピア通信を行うべき一対の端末機器は互いに相手方の通信回線に割り当てられたIPv6アドレスを知り得ないから、ピア・ツー・ピア通信を行うことができないという問題があった。
【0008】
また、フレッツ光ネクストにおいては、PSTNのサービス総合デジタル網(Integrated Services Digital Network; ISDN)で提供されていたサービスの一部(例えば、D-CHパケット通信、B-CHパケット通信、非制限デジタル通信等)がサポートされていないが、現在もISDNサービスを利用する多数のユーザーが存在するので、NGNへの移行後もISDNサービスを継続利用可能とするために、NGNの通信回線に接続してISDN信号をNGNに伝送するための変換手段を提供する必要がある。
【0009】
しかしながら、ISDN信号をIPv6のパケット信号に変換してNGNに伝送する場合、相手方の通信回線のIPv6アドレスが不明のために、上記ピア・ツー・ピア通信の場合と同様に、ISDN端末間の接続ができないという問題があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【文献】「技術参考資料 IP通信網サービスのインターフェース -フレッツシリーズ- <光ネクスト、光ライト、光WiFiアクセス編> 第22版」、西日本電信電話株式会社、2018年2月1日発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の課題は、NGNを介して端末機器間でIPv6によるピア・ツー・ピア通信が行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、NGN(Next Generation Network)と、それぞれ前記NGNに通信回線を介して接続された複数の端末機器とからなり、前記通信回線に対し、識別番号として電話番号が固定的に割り当てられる一方、当該通信回線に接続された前記端末機器と前記NGNとの接続が確立される毎にIPv6アドレスが動的に割り当てられ、前記電話番号およびIPv6アドレスに基づいてIP通信がなされる通信システムにおいて前記端末機器間でIPv6によるピア・ツー・ピア通信を行う方法であって、
前記端末機器間において、前記端末機器のそれぞれと前記NGNとの接続の確立により割り当てられた自己の前記IPv6アドレスを含み、相手方の前記通信回線の前記電話番号を宛先とするSIP(Session Initiation Protocol)のメッセージ信号を、互いに相手方の前記通信回線に対して送信し、前記端末機器のそれぞれにおいて相手方の通信回線から着信した前記メッセージ信号から前記相手方の前記IPv6アドレスを取得し、前記端末機器のそれぞれにおいて、取得した相手方の前記IPv6アドレスを当該相手方の電話番号と関係付けて記憶するとともに、前記IPv6アドレスに基づいて前記端末機器間で前記ピア・ツー・ピア通信を行うことを特徴とする方法が提供される。
【0013】
ここで、SIPとは、IP網上において音声や映像等の通信をリアルタイムで行うためのシグナリング・プロトコル(信号制御プロトコル)をいう(以下同様)。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ピア・ツー・ピア通信に先立って各端末機器とNGNとの接続の確立によって割り当てられたIPv6アドレスを、SIPのメッセージ信号を用いて端末機器間において互いに通知し、各端末機器において、取得した相手方のIPv6アドレスを当該相手方の電話番号に関係付けて記憶する。
それによって、端末機器間においてアドレスの問題(互いに相手方のIPv6アドレスが不明であるという問題)が解決され、端末機器間においてIPv6によるピア・ツー・ピア通信を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明によるNGNを介してIPv6によるピア・ツー・ピア通信を行う方法が適用される通信システムを例示した図である。
【
図2】本発明による方法を説明するシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の構成を好ましい実施例に基づいて説明する。
図1A~Cは、本発明によるNGNを介してIPv6によるピア・ツー・ピア通信を行う方法が適用される通信システムを例示した図である。
図1Aを参照して、この実施例では、通信システムは、日本電信電話株式会社(NTT)グループが提供する通信サービス「フレッツ光ネクスト」が運営される通信システムを前提とし、NGN(Next Generation Network;次世代通信網)3と、それぞれNGN3に通信回線(Ethernet)4、5を介して接続された複数の端末機器1、2とから構成されている。
なお、
図1Aでは、説明の簡略化のため、NGN3を介して対向する2つの端末機器1、2のみを例示した。
【0018】
図1Bは、
図1AのNGN3の構成をより詳細に示した図である。
図1Bに示すように、NGN3は、IP通信網30と、第1の通信回線4側の回線収容設備33と、回線収容設備33に光回線41を介して接続された第1の通信回線4側のONU31と、第2の通信回線5側の回線収容設備34と、回線収容設備34に光回線42を介して接続された第2の通信回線5側のONU32を有している。
【0019】
そして、ONU31には第1の通信回線4を介して第1の端末機器1が接続され、ONU32には第2の通信回線5を介して第2の端末機器2が接続されている。
【0020】
本発明によれば、ピア・ツー・ピア通信に先立って、まず、端末機器1、2のそれぞれが自己のIPv6アドレスを取得する。これは次のように実行される。
すなわち、端末機器1、2は、関係する通信回線4、5に接続されて立ち上がった(リンクアップした)時点で、関係するONU31、32(ONUのルータとして機能する部分)に対してRSメッセージ(ルータ要請)を送信する。
【0021】
RSメッセージを受信したONU31、32(ONUのルータとして機能する部分)は、当該RSメッセージの送信元の端末機器1、2に対してIPv6アドレスのプレフィックス(アドレスの一部)を含むRAメッセージ(ルータ広告)を送信する。
【0022】
そして、RAメッセージを受信した端末機器1、2は、プレフィックスと自己のMACアドレスから自己のIPv6アドレス(グローバルユニキャストアドレス)を生成(取得)する。
【0023】
なお、端末機器がピア・ツー・ピア通信に先立って自己アドレスを生成(取得)する方法は、これに限定されず、公知の適当な方法(例えば、ステートレス自動設定等)が使用可能である。
【0024】
本発明によれば、次に、NGNの電話機能を実現する通信方式SIP(Session Initiation Protocol)のメッセージ信号(MESSAGEパケット)を用いて、端末機器1、2間において互いに自己のIPv6アドレスを通知する。これは、
図2に示したシーケンスで実行する。
【0025】
図2を参照して、今、第1の通信回線4の電話番号をTel.A、IPアドレスをAddr.Aとし、第2の通信回線5の電話番号をTel.B、IPアドレスをAddr.Bとして、例えば、第1の端末機器1から第2の端末機器2に対し、第2の通信回線5の電話番号Tel.Bを宛先とするSIPのメッセージ信号を、このメッセージに自己の通信回線(第1の通信回線)4の電話番号Tel.AおよびIPアドレスAddr.Aを添付して送信する(
図2のS1)。
【0026】
そして、NGN3は、当該メッセージ信号を電話番号Tel.Bに基づいて第2の端末機器2に送信する(
図2のS2)。
第2の端末機器2は、メッセージ信号を受信し、このメッセージ信号から第1の通信回線4のIPアドレスAddr.Aおよび電話番号Tel.Aを取得するとともに、IPアドレスAddr.Aを電話番号Tel.Aに関係付けて記憶する(
図2のS3)。
【0027】
次いで、第2の端末機器2は、第1の通信回線4の電話番号Tel.Aを宛先とするSIPのメッセージ信号を、このメッセージ信号に自己の通信回線(第2の通信回線)5の電話番号Tel.BおよびIPアドレスAddr.Bを添付して送信する(
図2のS4)。
【0028】
そして、NGN3は、当該メッセージ信号を電話番号Tel.Aに基づいて第1の端末機器1に送信する(
図2のS5)。
第1の端末機器1は、メッセージ信号を受信し、このメッセージ信号から第2の通信回線5のIPアドレスAddr.Bおよび電話番号Tel.Bを取得するとともに、IPアドレスAdd.Bを電話番号Tel.Bに関係付けて記憶する(
図2のS6)。
【0029】
こうして、第1および第2の端末機器1、2間におけるアドレスの問題(互いに相手方のIPv6アドレスが不明であること)が解決され、それによって、第1および第2の端末機器1、2間においてIPv6によるピア・ツー・ピア通信が可能となる(
図2のS7)。
【0030】
本発明によれば、NGNの特徴であり、目指すところの安全を維持、保障しつつ、電話番号によって識別される通信回線に提供される通信サービス(フレッツ光ネクスト等)においても、IPv6によるピア・ツー・ピア通信が可能となる。
【0031】
さらに、本発明によれば、NGNを介して、ISDN端末間においてIPv6によるピア・ツー・ピア通信を行うこともできる。
この場合には、
図1Cに示すように、
図1Aの通信システムにおいて、第1および第2の端末機器1、2にそれぞれ変換装置10、20(ISDN端末を接続するためのインターフェースと、ISDN信号をIPv6信号に変換する機能を備えた装置)を付加し、各端末機器1、2の変換装置10、20にISDN端末11、21を接続する。
【0032】
そして、例えば、ISDN端末11からISDN端末21にデータ送信する場合、ISDN端末11から第1の端末機器1に接続先電話番号Tel.Bを含む通信要求を送信すると、
図2の実施例と同様に、第1の端末機器1は第2の端末機器2に対し自己の通信回線(第1の通信回線)4の電話番号Tel.AおよびIPアドレスAddr.Aを含むSIPのメッセージ信号を送信する。
【0033】
第2の端末機器2は、受信したメッセージ信号から第1の通信回線4のIPアドレスAddr.Aおよび電話番号Tel.Aを取得し、IPアドレスAddr.Aを電話番号Tel.Aを関係付けて記憶した後、第1の端末機器1に対し自己の通信回線(第2の通信回線)5の電話番号Tel.BおよびIPアドレスAddr.Bを含むSIPのメッセージ信号を送信する。
【0034】
次いで、第1の端末機器1は、受信したメッセージ信号から第2の通信回線5のIPアドレスAddr.Bおよび電話番号Tel.Bを取得し、IPアドレスAddr.Bを電話番号Tel.Bに関係付けて記憶する。
【0035】
それによって、第1および第2の端末機器1、2は、互いに相手方のIPアドレスを取得してアドレスの問題(互いに相手方のIPアドレスが不明であること)を解決し、直接通信可能となり、以後、ISDN端末11、21間において交換装置10、20を介してIPv6通信が可能となる。
【0036】
こうして、本発明の方法によれば、端末機器1、2(変換装置10、20)の下位に接続されたISDN端末11、12の通信、すなわち、D-CHパケット通信およびB-CHパケット通信をNGNのIPv6通信を介して実行することができる。
【0037】
以上、本発明の好ましい実施例について述べたが、本発明の構成は上記実施例に限定されるものではなく、当業者が本願の特許請求の範囲に記載した構成の範囲内で種々の変形例を案出し得ることは言うまでもない。
【0038】
例えば、本発明の別の実施例によれば、センサーネットワークや工場遠隔制御システム、インフラ監視システム等において、センター側と端末側との間の情報伝達を担うIoT通信をNGNのフレッツ光ネクストを介して行うことができる。
【0039】
また、上記実施例では、NTTグループが提供するNGNの通信サービス、フレッツ光ネクストを前提としているが、本発明の方法を、通信回線が電話番号で識別され、動的に割り当てられたIPv6アドレスが相互に交換可能な他の通信サービスにも適用することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 第1の端末機器
2 第2の端末機器
3 NGN
4 第1の通信回線
5 第2の通信回線
10 変換装置
11 ISDN端末
20 変換装置
21 ISDN端末
30 IP通信網
31、32 ONU
33、34 回線収容設備
41、42 光回線