IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 武蔵エンジニアリング株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-作業装置および作業方法 図1
  • 特許-作業装置および作業方法 図2
  • 特許-作業装置および作業方法 図3
  • 特許-作業装置および作業方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-17
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】作業装置および作業方法
(51)【国際特許分類】
   B05C 11/00 20060101AFI20220106BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20220106BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20220106BHJP
   B05D 1/26 20060101ALI20220106BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
B05C11/00
B05C11/10
B05C5/00 101
B05D1/26 Z
B05D3/00 D
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2018542909
(86)(22)【出願日】2017-09-29
(86)【国際出願番号】 JP2017035393
(87)【国際公開番号】W WO2018062463
(87)【国際公開日】2018-04-05
【審査請求日】2020-08-17
(31)【優先権主張番号】P 2016194424
(32)【優先日】2016-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390026387
【氏名又は名称】武蔵エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123984
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 晃伸
(74)【代理人】
【識別番号】100102314
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 阿佐子
(72)【発明者】
【氏名】生島 和正
【審査官】磯部 洋一郎
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101658833(CN,A)
【文献】特開2004-290885(JP,A)
【文献】特開2008-104916(JP,A)
【文献】特開2009-050828(JP,A)
【文献】特開2012-011385(JP,A)
【文献】特開2009-072648(JP,A)
【文献】国際公開第2016/007596(WO,A1)
【文献】特開2008-114129(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 11/00
B05C 11/10
B05C 5/00
B05D 1/26
B05D 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一の作業をするn台の(nは2以上の自然数)の作業ヘッドと、
作業対象物を保持するステージと、
ステージとn台の作業ヘッドとを第1方向へ相対移動させる第1方向駆動装置と、
ステージとn台の作業ヘッドとを第1方向と直交する第2方向へ相対移動させる第2方向駆動装置と、
ステージとn台の作業ヘッドを第1方向および第2方向と直交する第3方向へ相対移動させる第3方向駆動装置と、
各作業ヘッドの作業量を測定する作業量測定装置と、
n台の作業ヘッドおよび第1ないし第3方向駆動装置の動作を制御する制御装置と、を備えた作業装置において、
前記n台の作業ヘッドが、基準となる作業ヘッドと、基準とならないn-1台の作業ヘッドとからなり、
前記第1方向駆動装置が、前記n台の作業ヘッドを前記第1方向へそれぞれ独立して移動させることができ、
前記第2方向駆動装置が、前記n台の作業ヘッドを前記第2方向へ同時に移動させる第2方向主駆動装置と、前記n台の作業ヘッドのうちn-1台の作業ヘッドを前記第2方向へそれぞれ独立して移動させる第2方向副駆動装置とを備えて構成され、前記基準となる作業ヘッドには前記第2方向副駆動装置が設けられていないこと、
前記n台の作業ヘッドに同一の作業をさせる際に、前記基準とならないn-1台の作業ヘッドは前記第2方向副駆動装置により前記第2方向へそれぞれ独立して移動されることを特徴とする作業装置。
【請求項2】
前記第2方向副駆動装置の可動距離は、前記第2方向主駆動装置の可動距離Lの半分以下であることを特徴とする請求項1に記載の作業装置。
【請求項3】
前記第2方向副駆動装置の可動距離は、前記第2方向主駆動装置の可動距離Lの1/5以下であることを特徴とする請求項1に記載の作業装置。
【請求項4】
前記制御装置が、前記基準とならないn-1台の作業ヘッドにおいて前記第2方向主駆動装置の動作と前記第2方向副駆動装置の動作を合成することにより、前記n台の作業ヘッドを異なる移動速度で移動させることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の作業装置。
【請求項5】
前記第1方向駆動装置が、前記n台の作業ヘッドを前記第1方向へ同時に移動させる第1方向主駆動装置と、前記n台の作業ヘッドのうちn-1台の作業ヘッドを前記第1方向へそれぞれ独立して移動させる第1方向副駆動装置とを備えて構成され
前記n台の作業ヘッドに同一の作業をさせる際に、前記基準とならないn-1台の作業ヘッドは前記第1方向副駆動装置により前記第1方向へそれぞれ独立して移動され、前記基準となる作業ヘッドは前記第1方向副駆動装置により移動されないことを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載の作業装置。
【請求項6】
前記制御装置が、前記n台の作業ヘッドに同一の作業パターンを実施させるにあたり、前記n台の作業ヘッドのそれぞれについて出射回数、作業時間および作業速度を設定する機能を備えることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の作業装置。
【請求項7】
前記制御装置が、前記n台の作業ヘッドに同一の作業パターンを実施させるにあたり、前記n台の作業ヘッドのそれぞれについて測定した前記作業量測定装置の測定値に基づき前記n台の作業ヘッドのそれぞれの出射回数、作業時間および相対移動速度を算出し、設定する機能を備えることを特徴とする請求項6に記載の作業装置。
【請求項8】
前記制御装置が、前記n台の作業ヘッドに同一の作業パターンを実施させるにあたり、出射周波数を変えることなく、前記n台の作業ヘッドのそれぞれの出射回数、作業時間および相対移動速度を算出し、設定する機能を備えることを特徴とする請求項7に記載の作業装置。
【請求項9】
さらに、前記第1方向駆動装置および前記第2方向駆動装置に搭載された撮像装置を備え、
前記制御装置が、前記撮像装置による撮像画像に基づき前記n台の作業ヘッドと前記作業対象物の第1方向および第2方向の位置関係を算出し、当該算出結果に基づき前記n台の作業ヘッドの第1方向および第2方向の作業開始位置を設定する機能を備えることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の作業装置。
【請求項10】
さらに、前記第1方向駆動装置および前記第2方向駆動装置に搭載された距離測定装置を備え、
前記制御装置が、前記距離測定装置からの受信信号に基づき前記作業ヘッドと前記作業対象物の距離を算出し、当該算出結果に基づき前記作業ヘッドの第3方向の作業開始位置を設定する機能を備えることを特徴とする請求項9に記載の作業装置。
【請求項11】
前記作業ヘッドが、液体材料を吐出口から出射する吐出装置を搭載した作業ヘッドであることを特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載の作業装置。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれかに記載の作業装置を用いた作業方法であって、
前記第1方向駆動装置により前記n台の作業ヘッドを前記第1方向へそれぞれ独立して移動させ、
前記第2方向主駆動装置により前記n台の作業ヘッドを前記第2方向へ同時に移動させ、
前記第2方向副駆動装置により、前記基準とならないn-1台の作業ヘッドを前記第2方向へそれぞれ独立して移動させることにより、前記n台の作業ヘッドと前記作業対象物とを相対移動させながら作業を行うことを特徴とする作業方法。
【請求項13】
請求項7または8に記載の作業装置を用いて、前記作業対象物に、n×m個(mは1以上の自然数)の作業パターンを形成する作業方法であって、
前記作業ヘッドが、液体材料を吐出口から出射する吐出装置を搭載した作業ヘッドであり、
前記n台の作業ヘッドのそれぞれが吐出する液滴1個分の重量に基づいて前記n台の作業ヘッドのそれぞれについて1つの作業パターンを形成するのに必要となる吐出回数を算出する吐出回数算出工程、
算出した前記1つの作業パターンを形成するのに必要となる吐出回数に基づき前記n台の作業ヘッドのそれぞれについて1つの作業パターンを形成するのに必要となる時間を算出する塗布時間算出工程、
算出した前記1つの作業パターンを形成するのに必要となる時間に基づき前記n台の作業ヘッドのそれぞれについて補正後移動速度を算出する補正後移動速度算出工程、
算出した前記補正後移動速度に基づき前記n台の作業ヘッドと前記作業対象物とを相対移動させながら塗布を行う塗布工程を備え
前記塗布工程において、前記第2方向副駆動装置により、前記基準とならないn-1台の作業ヘッドを前記第2方向へそれぞれ独立して移動させることを特徴とする作業方法。
【請求項14】
請求項9または10に記載の作業装置を用いて、前記作業対象物に、前記作業ヘッドの台数のm倍個(mは1以上の自然数)の作業パターンを形成する作業方法であって、
前記作業ヘッドが、液体材料を吐出口から出射する吐出装置を搭載した作業ヘッドであり、
前記n台の作業ヘッドのそれぞれが吐出する液滴1個分の重量に基づいて前記n台の作業ヘッドのそれぞれについて1つの作業パターンを形成するのに必要となる吐出回数を算出する吐出回数算出工程、
算出した前記1つの作業パターンを形成するのに必要となる吐出回数に基づき前記n台の作業ヘッドのそれぞれについて1つの作業パターンを形成するのに必要となる時間を算出する塗布時間算出工程、
算出した前記1つの作業パターンを形成するのに必要となる時間に基づき前記n台の作業ヘッドのそれぞれについて補正後移動速度を算出する補正後移動速度算出工程、
前記作業ヘッドの水平方向塗布開始位置を算出する水平方向開始位置算出工程、
算出した前記補正後移動速度および前記水平方向塗布開始位置に基づき前記n台の作業ヘッドと前記作業対象物とを相対移動させながら塗布を行う塗布工程を備え
前記塗布工程において、前記第2方向副駆動装置により、前記基準とならないn-1台の作業ヘッドを前記第2方向へそれぞれ独立して移動させることを特徴とする作業方法。
【請求項15】
前記塗布工程において、前記基準とならないn-1台の作業ヘッドにおいて前記第2方向主駆動装置の動作と前記第2方向副駆動装置の動作を合成することにより前記n台の作業ヘッドを異なる移動速度で移動させることを特徴とする請求項13または14に記載の作業方法。
【請求項16】
前記作業対象物に、アレイ配置されたn×p個(pは2以上の自然数)の作業パターンを形成することを特徴とする請求項13ないし15のいずれかに記載の作業方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の作業ヘッドを有する作業装置および作業方法に関し、特に、複数の吐出装置を用いる液体材料塗布装置および塗布方法に関する。本発明における「吐出」には、液体材料が吐出口から離間する前に塗布対象物に接触するタイプの吐出方式、および液体材料が吐出口から離間した後に塗布対象物に接触するタイプの吐出方式を含む。
【背景技術】
【0002】
半導体装置などの製造において、比較的大きな基板、例えば、一辺500mm前後の矩形状の基板の中に、複数個の同じ半導体装置をマトリクス状に形成した後、個々の半導体装置に切り離すという「多面取り」が行われることが増えている。多数の半導体装置を製造するため、生産性の向上が常に求められる。なお、本明細書において、生産性は、主に時間当たりの処理数を考える。
生産性を向上するには、同じ製造装置を複数台並べて並列処理するのが最も容易で、一般的である。しかし、これでは製造装置の大型化やコストの増大を招く。
【0003】
そこで、製造装置の大きさはほぼそのままに、複数の作業ヘッドを搭載し、同時に同じ動作をさせることで、生産性の向上を図ることが行われている。例えば、液体材料塗布装置においては、作業ヘッドである吐出装置を複数搭載する以下のような技術が開示されている。
特許文献1は、塗布手段のノズルから塗布物を塗布対象物上に吐出させることにより、塗布対象物上に所要のパターンの描画を行う塗布装置において、複数の塗布手段と、塗布対象物を塗布物の描画態様に応じて移動させる移動機構と、複数の塗布手段の塗布量を個々に制御する制御手段とを有する塗布装置を開示する。
【0004】
また、特許文献2は、塗布対象物に向けてスクリューの回転によりノズルからスクリューの回転速度に応じた量のペーストを吐出する塗布ヘッドと、塗布対象物と塗布ヘッドとを相対移動させる移動機構と、塗布対象物上に塗布したペーストの塗布量を検出する検出部と、検出した塗布量に基づいて目標の塗布量が得られるように塗布対象物と塗布ヘッドとの相対移動速度又はスクリューの回転速度を調整し、調整した相対移動速度又は調整した回転速度に基づいて塗布ヘッド及び移動機構を制御する手段とを備えるペースト塗布装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-290885号公報
【文献】特開2009-50828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、複数吐出装置のそれぞれの状態、特に、吐出装置の構成部品や動作などの状態、吐出する液体材料の温度や粘度などの状態を全く同じにして、複数の吐出装置間の液体材料の吐出量を全く同じにすることは困難を伴う。また、ある程度の誤差を許容するとしても、微細化、高精度化が進む今日においては、許容される誤差は極めて小さく、吐出量を同じにするのはますます困難を伴っている。この状態で同時に同じ動作をさせても、吐出量にバラツキがあるので、塗布対象物に吐出装置が動作を伴って液体材料を吐出した結果である塗布量にもバラツキが発生していた。このような問題は、機差のある複数の作業ヘッドを有する作業装置全般に言えることである。
【0007】
そこで、本発明は、機差のある複数の作業ヘッド間でバラツキのない作業を得ることができる作業装置および作業方法を提供することを目的とする。特に、本発明では、吐出量にバラツキのある複数の吐出装置に同一の塗布パターンを形成させても、複数の吐出装置間でバラツキのない塗布量を得ることができる液体材料塗布装置および塗布方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[第1の技術思想]
本発明の作業装置は、同一の作業をするn台の(nは2以上の自然数)の作業ヘッドと、作業対象物を保持するステージと、ステージとn台の作業ヘッドとを第1方向へ相対移動させる第1方向駆動装置と、ステージとn台の作業ヘッドとを第1方向と直交する第2方向へ相対移動させる第2方向駆動装置と、ステージとn台の作業ヘッドを第1方向および第2方向と直交する第3方向へ相対移動させる第3方向駆動装置と、各作業ヘッドの作業量を測定する作業量測定装置と、n台の作業ヘッドおよび第1ないし第3方向駆動装置の動作を制御する制御装置と、を備えた作業装置において、前記n台の作業ヘッドが、基準となる作業ヘッドと、基準とならないn-1台の作業ヘッドとからなり、前記第1方向駆動装置が、前記n台の作業ヘッドを前記第1方向へそれぞれ独立して移動させることができ、前記第2方向駆動装置が、前記n台の作業ヘッドを前記第2方向へ同時に移動させる第2方向主駆動装置と、前記n台の作業ヘッドのうちn-1台の作業ヘッドを前記第2方向へそれぞれ独立して移動させる第2方向副駆動装置とを備えて構成され、前記基準となる作業ヘッドには前記第2方向副駆動装置が設けられていないこと、前記n台の作業ヘッドに同一の作業をさせる際に、前記基準とならないn-1台の作業ヘッドは前記第2方向副駆動装置により前記第2方向へそれぞれ独立して移動されることを特徴とする。
上記作業装置において、前記第2方向副駆動装置の可動距離は、前記第2方向主駆動装置の可動距離Lの半分以下であることを特徴としてもよい。
上記作業装置において、前記第2方向副駆動装置の可動距離は、前記第2方向主駆動装置の可動距離Lの1/5以下であることを特徴としてもよい。
上記作業装置において、前記制御装置が、前記基準とならないn-1台の作業ヘッドにおいて前記第2方向主駆動装置の動作と前記第2方向副駆動装置の動作を合成することにより、前記n台の作業ヘッドを異なる移動速度で移動させることを特徴としてもよい。
上記作業装置において、前記第1方向駆動装置が、前記n台の作業ヘッドを前記第1方向へ同時に移動させる第1方向主駆動装置と、前記n台の作業ヘッドのうちn-1台の作業ヘッドを前記第1方向へそれぞれ独立して移動させる第1方向副駆動装置とを備えて構成され、前記n台の作業ヘッドに同一の作業をさせる際に、前記基準とならないn-1台の作業ヘッドは前記第1方向副駆動装置により前記第1方向へそれぞれ独立して移動され、前記基準となる作業ヘッドは前記第1方向副駆動装置により移動されないことを特徴としてもよい
【0009】
上記作業装置において、前記制御装置が、前記n台の作業ヘッドに同一の作業パターンを実施させるにあたり、前記n台の作業ヘッドのそれぞれについて出射回数、作業時間および作業速度を設定する機能を備えることを特徴としてもよい。
上記作業装置において、前記制御装置が、前記n台の作業ヘッドに同一の作業パターンを実施させるにあたり、前記n台の作業ヘッドのそれぞれについて測定した前記作業量測定装置の測定値に基づき前記n台の作業ヘッドのそれぞれの出射回数、作業時間および相対移動速度を算出し、設定する機能を備えることを特徴としてもよい。
上記作業装置において、前記制御装置が、前記n台の作業ヘッドに同一の作業パターンを実施させるにあたり、出射周波数を変えることなく、前記n台の作業ヘッドのそれぞれの出射回数、作業時間および相対移動速度を算出し、設定する機能を備えることを特徴としてもよい。
上記作業装置において、さらに、前記第1方向駆動装置および前記第2方向駆動装置に搭載された撮像装置を備え、前記制御装置が、前記撮像装置による撮像画像に基づき前記n台の作業ヘッドと前記作業対象物の第1方向および第2方向の位置関係を算出し、当該算出結果に基づき前記n台の作業ヘッドの第1方向および第2方向の作業開始位置を設定する機能を備えることを特徴としてもよい。
上記作業装置において、さらに、前記第1方向駆動装置および前記第2方向駆動装置に搭載された距離測定装置を備え、前記制御装置が、前記距離測定装置からの受信信号に基づき前記作業ヘッドと前記作業対象物の距離を算出し、当該算出結果に基づき前記作業ヘッドの第3方向の作業開始位置を設定する機能を備えることを特徴としてもよい。
上記作業装置において、前記作業ヘッドが、液体材料を吐出口から出射する吐出装置を搭載した作業ヘッドであることを特徴としてもよい。
【0010】
本発明の第1の観点の作業方法は、上記に記載の作業装置を用いた作業方法であって、前記第1方向駆動装置により前記n台の作業ヘッドを前記第1方向へそれぞれ独立して移動させ、前記第2方向主駆動装置により前記n台の作業ヘッドを前記第2方向へ同時に移動させ、前記第2方向副駆動装置により、前記基準とならないn-1台の作業ヘッドを前記第2方向へそれぞれ独立して移動させることにより、前記n台の作業ヘッドと前記作業対象物とを相対移動させながら作業を行うことを特徴とする。
本発明の第2の観点の作業方法は、上記に記載の作業装置を用いて、前記作業対象物に、n×m個(mは1以上の自然数)の作業パターンを形成する作業方法であって、前記作業ヘッドが、液体材料を吐出口から出射する吐出装置を搭載した作業ヘッドであり、前記n台の作業ヘッドのそれぞれが吐出する液滴1個分の重量に基づいて前記n台の作業ヘッドのそれぞれについて1つの作業パターンを形成するのに必要となる吐出回数を算出する吐出回数算出工程、算出した前記1つの作業パターンを形成するのに必要となる吐出回数に基づき前記n台の作業ヘッドのそれぞれについて1つの作業パターンを形成するのに必要となる時間を算出する塗布時間算出工程、算出した前記1つの作業パターンを形成するのに必要となる時間に基づき前記n台の作業ヘッドのそれぞれについて補正後移動速度を算出する補正後移動速度算出工程、算出した前記補正後移動速度に基づき前記n台の作業ヘッドと前記作業対象物とを相対移動させながら塗布を行う塗布工程を備え、前記塗布工程において、前記第2方向副駆動装置により、前記基準とならないn-1台の作業ヘッドを前記第2方向へそれぞれ独立して移動させることを特徴とする。
本発明の第3の観点の作業方法は、上記に記載の作業装置を用いて、前記作業対象物に、前記作業ヘッドの台数のm倍個(mは1以上の自然数)の作業パターンを形成する作業方法であって、前記作業ヘッドが、液体材料を吐出口から出射する吐出装置を搭載した作業ヘッドであり、前記n台の作業ヘッドのそれぞれが吐出する液滴1個分の重量に基づいて前記n台の作業ヘッドのそれぞれについて1つの作業パターンを形成するのに必要となる吐出回数を算出する吐出回数算出工程、算出した前記1つの作業パターンを形成するのに必要となる吐出回数に基づき前記n台の作業ヘッドのそれぞれについて1つの作業パターンを形成するのに必要となる時間を算出する塗布時間算出工程、算出した前記1つの作業パターンを形成するのに必要となる時間に基づき前記n台の作業ヘッドのそれぞれについて補正後移動速度を算出する補正後移動速度算出工程、前記作業ヘッドの水平方向塗布開始位置を算出する水平方向開始位置算出工程、算出した前記補正後移動速度および前記水平方向開始位置に基づき前記n台の作業ヘッドと前記作業対象物とを相対移動させながら塗布を行う塗布工程を備え、前記塗布工程において、前記第2方向副駆動装置により、前記基準とならないn-1台の作業ヘッドを前記第2方向へそれぞれ独立して移動させることを特徴とする。
上記塗布工程を備える作業方法において、前記塗布工程において、前記基準とならないn-1台の作業ヘッドにおいて前記第2方向主駆動装置の動作と前記第2方向副駆動装置の動作を合成することにより前記n台の作業ヘッドを異なる移動速度で移動させることを特徴としてもよい。
上記第2または第3の観点にかかる作業方法において、前記作業対象物に、アレイ配置されたn×p個(pは2以上の自然数)の作業パターンを形成することを特徴としてもよい。
【0011】
[第2の技術思想]
本発明の液体材料塗布装置は、液体材料を吐出口から吐出する同一仕様のn台の(nは2以上の自然数)の吐出装置と、塗布対象物を保持するステージと、ステージとn台の吐出装置とを第1方向へ相対移動させる第1方向駆動装置と、ステージとn台の吐出装置とを第1方向と直交する第2方向へ相対移動させる第2方向駆動装置と、ステージとn台の吐出装置を第1方向および第2方向と直交する第3方向へ相対移動させる第3方向駆動装置と、吐出装置から所定の条件で吐出された液体材料の重量を測定する重量測定装置と、n台の吐出装置および第1ないし第3方向駆動装置の動作を制御する制御装置と、を備えた液体材料塗布装置において、前記第1方向駆動装置が、前記n台の吐出装置を前記第1方向へそれぞれ独立して移動させることができ、前記第2方向駆動装置が、前記n台の吐出装置を前記第2方向へ同時に移動させる第2方向主駆動装置と、前記n台の吐出装置のうちn-1台の吐出装置を前記第2方向へそれぞれ独立して移動させる第2方向副駆動装置とを備えて構成されることを特徴とする。
上記液体材料塗布装置において、前記第2方向副駆動装置の可動距離は、前記第2方向主駆動装置の可動距離Lの半分以下であることを特徴としてもよい。
上記液体材料塗布装置において、前記第2方向副駆動装置の可動距離は、前記第2方向主駆動装置の可動距離Lの1/5以下であることを特徴としてもよい。
上記液体材料塗布装置において、前記第1方向駆動装置が、前記n台の吐出装置を前記第1方向へ同時に移動させる第1方向主駆動装置と、前記n台の吐出装置のうちn-1台の吐出装置を前記第1方向へそれぞれ独立して移動させる第1方向副駆動装置とを備えて構成されること、或いは、前記第1方向駆動装置が、前記n台の吐出装置を前記第1方向へそれぞれ独立して移動させるn台の第1方向主駆動装置により構成されることを特徴としてもよい。
【0012】
上記液体材料塗布装置において、前記制御装置が、前記n台の吐出装置に同一の塗布パターンを形成させるにあたり、前記n台の吐出装置のそれぞれについて吐出回数、塗布時間および塗布速度を設定する機能を備えることを特徴としてもよい。
上記制御装置が吐出回数、塗布時間および塗布速度を設定する機能を備える液体材料塗布装置において、前記制御装置が、前記n台の吐出装置に同一の塗布パターンを形成させるにあたり、前記n台の吐出装置のそれぞれについて測定した前記重量測定装置の測定値に基づき前記n台の吐出装置のそれぞれの吐出回数、塗布時間および塗布速度を算出し、設定する機能を備えることを特徴としてもよく、さらに、前記制御装置が、前記n台の吐出装置に同一の塗布パターンを形成させるにあたり、周波数を変えることなく、前記n台の吐出装置のそれぞれの吐出回数、塗布時間および塗布速度を算出し、設定する機能を備えることを特徴としてもよい。
上記液体材料塗布装置において、さらに、前記第1方向駆動装置および前記第2方向駆動装置に搭載された撮像装置を備え、前記制御装置が、前記撮像装置による撮像画像に基づき前記n台の吐出装置と前記塗布対象物の第1方向および第2方向の位置関係を算出し、当該算出結果に基づき前記n台の吐出装置の第1方向および第2方向の塗布開始位置を設定する機能を備えることを特徴としてもよく、さらに、前記第1方向駆動装置および前記第2方向駆動装置に搭載された距離測定装置を備え、前記制御装置が、前記距離測定装置からの受信信号に基づき前記吐出装置と前記塗布対象物の距離を算出し、当該算出結果に基づき前記吐出装置の第3方向の塗布開始位置を設定する機能を備えることを特徴としてもよい。
【0013】
本発明の第1の観点の塗布方法は、上記に記載の液体材料塗布装置を用いた塗布方法であって、前記第1方向駆動装置により前記n台の吐出装置を前記第1方向へそれぞれ独立して移動させ、前記第2方向主駆動装置により前記n台の吐出装置を前記第2方向へ同時に移動させ、前記第2方向副駆動装置により前記n台の吐出装置のうちn-1台の吐出装置を前記第2方向へそれぞれ独立して移動させることにより、前記n台の吐出装置と前記塗布対象物とを相対移動させながら塗布を行うことを特徴とする。
本発明の第2の観点の塗布方法は、上記制御装置が吐出回数、塗布時間および塗布速度を設定する機能を備える液体材料塗布装置を用いて、前記塗布対象物に、n×m個(mは1以上の自然数)の塗布パターンを形成する塗布方法であって、前記n台の吐出装置のそれぞれが吐出する液滴1個分の重量に基づいて前記n台の吐出装置のそれぞれについて1つの塗布パターンを形成するのに必要となる吐出回数を算出する吐出回数算出工程、算出した前記1つの塗布パターンを形成するのに必要となる吐出回数に基づき前記n台の吐出装置のそれぞれについて1つの塗布パターンを形成するのに必要となる時間を算出する塗布時間算出工程、算出した前記1つの塗布パターンを形成するのに必要となる時間に基づき前記n台の吐出装置のそれぞれについて補正後移動速度を算出する補正後移動速度算出工程、算出した前記補正後移動速度に基づき前記n台の吐出装置と前記塗布対象物とを相対移動させながら塗布を行う塗布工程を備えることを特徴とする。
【0014】
本発明の第3の観点の塗布方法は、上記撮像装置を備える液体材料塗布装置を用いて、前記塗布対象物に、前記吐出装置の台数のm倍個(mは1以上の自然数)の塗布パターンを形成する塗布方法であって、前記n台の吐出装置のそれぞれが吐出する液滴1個分の重量に基づいて前記n台の吐出装置のそれぞれについて1つの塗布パターンを形成するのに必要となる吐出回数を算出する吐出回数算出工程、算出した前記1つの塗布パターンを形成するのに必要となる吐出回数に基づき前記n台の吐出装置のそれぞれについて1つの塗布パターンを形成するのに必要となる時間を算出する塗布時間算出工程、算出した前記1つの塗布パターンを形成するのに必要となる時間に基づき前記n台の吐出装置のそれぞれについて補正後移動速度を算出する補正後移動速度算出工程、前記吐出装置の水平方向塗布開始位置を算出する水平方向開始位置算出工程、算出した前記補正後移動速度および前記水平方向開始位置に基づき前記n台の吐出装置と前記塗布対象物とを相対移動させながら塗布を行う塗布工程を備えることを特徴とする。
上記塗布工程を備える塗布方法において、前記塗布工程において、前記第2方向主駆動装置の動作と前記第2方向副駆動装置の動作を合成することにより前記n台の吐出装置を異なる移動速度で移動させることを特徴としてもよい。
上記第1ないし第3のいずれかの観点にかかる塗布方法において、前記塗布対象物に、アレイ配置されたn×p個(pは2以上の自然数)の塗布パターンを形成することを特徴としてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、機差のある複数の作業ヘッド間でバラツキのない作業を得ることができる作業装置および作業方法を提供することが可能となる。特に、吐出量にバラツキのある複数の吐出装置に同一の塗布パターンを形成させても、複数の吐出装置間でバラツキのない塗布量を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態に係る液体材料塗布装置の全体斜視図である。
図2】第2実施形態に係る液体材料塗布装置の全体斜視図である。
図3】第3実施形態に係る液体材料塗布装置の全体斜視図である。
図4】第4実施形態に係る液体材料塗布装置の全体斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の作業装置は、同一の作業をするn台の(nは2以上の自然数)の作業ヘッドと、作業対象物を保持するステージと、ステージとn台の作業ヘッドとを第1方向へ相対移動させる第1方向駆動装置と、ステージとn台の作業ヘッドとを第1方向と直交する第2方向へ相対移動させる第2方向駆動装置と、ステージとn台の作業ヘッドを第1方向および第2方向と直交する第3方向へ相対移動させる第3方向駆動装置と、各作業ヘッドの作業量を測定する作業量測定装置と、n台の作業ヘッドおよび第1ないし第3方向駆動装置の動作を制御する制御装置と、を備えている。
第1方向駆動装置は、n台の作業ヘッドを第1方向へそれぞれ独立して移動させることができる。第2方向駆動装置は、n台の作業ヘッドを第2方向へ同時に移動させる第2方向主駆動装置と、n台の作業ヘッドのうちn-1台の作業ヘッドを第2方向へそれぞれ独立して移動させる第2方向副駆動装置とを備えて構成される。第2方向副駆動装置の可動距離は、第2方向主駆動装置の可動距離Lの半分以下とすることが好ましく、より好ましくは1/5以下とする。
第1方向駆動装置は、n台の吐出装置を第1方向へ同時に移動させる第1方向主駆動装置と、n台の吐出装置のうちn-1台の吐出装置を第1方向へそれぞれ独立して移動させる第1方向副駆動装置とを備えて構成するようにしてもよい。或いは、第1方向駆動装置を、n台の吐出装置を第1方向へそれぞれ独立して移動させるn台の第1方向主駆動装置により構成されるようにしてもよい。
【0018】
上記特徴を有する本発明の作業装置によれば、単位時間当たりの「出力」が異なる複数の装置を用いて、同時に同一の作業を作業ヘッドと作業対象物とを相対移動しながら行う場合において、各作業ヘッドの移動速度を個別に制御することで、最終的な「出力結果」を揃えることが可能となる。作業ヘッドに搭載される装置は、例えば、液体材料を吐出口から出射する吐出装置、レーザー光をパルス状に出射するレーザー発振装置である。
【0019】
以下に、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態例を説明する。
[第1実施形態]
<構成>
第1実施形態に係る液体材料塗布装置1は、図1に示すように、液体材料を吐出する吐出装置(2a、2b、2c)と、塗布対象物5を載置して固定するステージ4と、吐出装置(2a、2b、2c)とステージ4とを相対移動させるXYZ駆動装置(6、7、8、13)と、吐出装置(2a、2b、2c)からの吐出量(すなわち、作業量)を測定する重量測定装置16と、吐出装置(2a、2b、2c)、XYZ駆動装置(6、7、8、13)および重量測定装置16と接続してそれぞれの動作を制御する制御装置17とから主に構成される。以下では、吐出装置(2a、2b、2c)を、「吐出装置2」と省略表記する場合がある。
【0020】
第一実施形態の吐出装置2は、液室内を往復動する液室より幅狭の弁体(ロッド)の作用により吐出口3より液体材料を滴状に吐出する、いわゆる「ジェット式」を用いている。ジェット式には、弁座に弁体を衝突させて液体材料を吐出口より飛翔吐出させる着座タイプのジェット式、または(b)弁体を移動させ、次いで急激に停止して、弁座に弁体(吐出用部材)を衝突させずに吐出口より飛翔吐出させる非着座タイプのジェット式があるが、いずれのタイプのジェット式であってもよい。弁体(ロッド)の駆動装置としては、例えば、ピストンを備えて圧縮気体やスプリングによりロッドを駆動するもの、圧電素子によりロッドを駆動するものがある。
【0021】
第1実施形態では、多面取り基板を塗布対象物5としているので、同時に複数の塗布パターン(作業パターン)を形成できるよう同じ仕様の吐出装置2を複数個設けている。図1では、吐出装置2が3個の場合を例示している。ただし、吐出装置2の数はこれに限定されず、2台でもよいし、4台以上(例えば、2~8台)でもよい。吐出装置2の数は、塗布対象に形成する塗布パターンの数や大きさなどを勘案して決める。例えば、塗布パターンの数がk個であり、k=n×pの関係が成り立つ場合(nおよびpは、いずれも2以上の自然数)、吐出装置2の台数をn台またはp台とすることが開示される。この際、基板上に形成されるk個の塗布パターンの配置は、n列×p行またはp列×n行のアレイ配置に限定されず、例えば2n列×1/2p行の場合もある。吐出装置2の幅よりも狭いピッチ(間隔)で行方向(第1実施形態では第1方向)に複数の塗布パターンが配置されている場合には、一行を複数台の吐出装置の複数回の塗布動作により塗布すること(例えば、一行に並んだ6個の塗布パターンを3台の吐出装置の2回の塗布動作により塗布すること)が行われる。なお、列方向(第1実施形態では第2方向)については、吐出装置2の幅よりも狭いピッチで吐出装置2を移動することが可能であるので、列方向の塗布パターンのピッチの大小は影響しない。
【0022】
ステージ4は、上面に塗布対象物5を載置する平面と、塗布対象物5をステージ4に固定する固定機構とを有する。固定機構としては、例えば、ステージ4内部から上面へ通じる複数の孔を開け、その孔から空気を吸い込むことで塗布対象物5を吸着固定する機構、塗布対象物5を固定用部材で挟み込み、その部材をネジ等の固定手段でステージ4に固定することで塗布対象物5を固定する機構を用いることができる。
【0023】
XYZ駆動装置は、第1方向主駆動装置(6a、6b、6c)と、第2方向主駆動装置7と、第3方向駆動装置(8a、8b、8c)と、第2方向副駆動装置(13a、13b、13c)と、から構成される。以下では、第1方向主駆動装置(6a、6b、6c)を「第1方向主駆動装置6」と、第3方向駆動装置(8a、8b、8c)を「第3方向駆動装置8」と、第2方向副駆動装置(13a、13b、13c)を「第2方向副駆動装置13」と省略表記する場合がある。
【0024】
第1方向主駆動装置6は、吐出装置2と同数設けられており、第1方向であるX方向(符号9)へ各吐出装置2をそれぞれ独立して移動可能とする。第1方向主駆動装置6a、6b、6cは、同一直線軌道上を移動するよう、直方体状の梁22のステージ側の側面に配置されている。第1方向主駆動装置6a、6b、6cのステージ側の側面には、第2方向副駆動装置13a、13b、13cがそれぞれ配置されている。第1方向主駆動装置6a、6b、6cを、一定の間隔を保ちながら、同じ速度で同時に移動するよう制御を行うことにより、あたかも一つのX方向駆動装置であるかのような動作をさせることも可能である。
【0025】
第2方向主駆動装置7は、X方向(符号9)と直交する第2方向であるY方向(符号10)へ第1方向主駆動装置6a、6b、6cを同時に移動するよう構成される。第2方向主駆動装置7は、長尺の支持台23の上面に配置されており、第1方向主駆動装置6a、6b、6cが設けられた梁22の一方の端部が、第2方向主駆動装置7の上に配置されている。第2方向主駆動装置7が第1方向主駆動装置6a、6b、6cを同時にY方向(符号10)に移動することにより、吐出装置2a、2b、2cのY座標が同時に位置決めされる。なお、本実施形態では、第1方向をX方向とし、第2方向をY方向としているが、これとは異なり、第1方向をY方向とし、第2方向をX方向としてもよい。
【0026】
第3方向駆動装置8は、吐出装置2と同数設けられており、X方向(符号9)およびY方向(符号10)と直交する第3方向であるZ方向(符号11)へ各吐出装置2をそれぞれ独立して移動可能とする。第3方向駆動装置8a、8b、8cのステージ側の側面には吐出装置2a、2b、2cがそれぞれ連結されており、ステージ反対側の側面は各第2方向副駆動装置13a、13b、13cとそれぞれ連結されている。
第2方向副駆動装置13a、13b、13cは、符号15で示すY方向へ吐出装置2a、2b、2cの移動速度を個別に制御することを可能としている。ここで、符号15で示すY方向への移動は、第2方向主駆動装置7によるY方向(符号10)への移動と独立して行うことができる。第1実施形態において、第1方向(X方向)に副駆動装置を設けないのは、初めから第1方向主駆動装置6a、6b、6cをそれぞれ独立して移動できるように構成しているからである。後述する第3実施形態のように、第1方向(X方向)において、吐出装置2a、2b、2cを同時に移動させるような構成としたときは、第1方向副駆動装置をそれぞれに設ける。
【0027】
第2方向副駆動装置13の可動距離は、第2方向主駆動装置7の可動距離Lと比べて充分に短く構成されている。例えば、可動距離Lの半分以下、好ましくは1/5以下、より好ましくは1/10以下であるとよい。第2方向副駆動装置13a、13b、13cは、吐出装置2a、2b、2cと共にそれぞれ塗布ヘッドを構成するので、小型である方がよい。小型化することにより駆動装置の負荷を低くすることができ、位置決め精度も向上するからである。後述するように、移動速度を制御する際の基準となる吐出装置2が一つあり、基準となる吐出装置2と連結された第2方向副駆動装置13は駆動させない。或いは、図1とは異なり、基準となる吐出装置2には、第2方向副駆動装置13を設けなくともよい。
【0028】
XYZ駆動装置(6、7、8、13)は、リニアモータや、ボールネジと電動モータ(サーボモータ、ステッピングモータなど)などにより構成することができる。なお、図1では、ステージ4を固定して吐出装置2をX方向(符号9)およびY方向(符号10)に移動させるようにしているが、例えば、吐出装置2をX方向(符号9)、ステージ4をY方向(符号10)にそれぞれを移動するようにしてもよいし、ステージ4を跨ぐような逆U字形のフレームに吐出装置2を固定してステージ4をX方向(符号9)およびY方向(符号10)に移動するようにしてもよい。
【0029】
作業量測定装置である重量測定装置16は、本実施形態においては、吐出装置2から吐出される液体材料の重さを量る機器を採用している。測定結果を制御に用いるため、測定結果をケーブル等を介して外部の機器に出力する機能を有することが好ましい。例えば、電子天秤などが好適である。
制御装置17は、処理装置と、記憶装置と、入力装置と、出力装置とを備えて構成されている。制御装置17は、吐出装置2、XYZ駆動装置(6、7、8、13)および重量測定装置16が接続されており、これら各装置の動作を制御する。処理装置、記憶装置として、例えば、パーソナルコンピュータ(PC)、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)などを用いることができる。また、入力装置、出力装置として、キーボード、マウス、ディスプレイのほか入出力を兼ねるタッチパネルを用いることができる。
【0030】
上述の各装置は、架台18上および内部に配置される。吐出装置2、ステージ4、各駆動装置(6、7、8、13)、および重量測定装置16が設けられる架台18の上部は、点線で示すカバー19で覆うことが好ましい。これにより、装置の故障や製品の不良の原因となる塗布装置1内への塵埃の進入を防止し、作業者とXYZ駆動装置(6、7、8、13)などの可動部との不用意な接触を防止することができる。なお、作業の利便性のため、カバー19の側面に開閉可能な扉を設けてもよい。
【0031】
<動作>
以下では、吐出装置2としてジェット式吐出装置を用い、連続して滴状の液体材料を飛翔吐出させながら移動することで線引き塗布を行う場合の動作を例示する。
(初期設定)
始めに、第1の工程として、各種パラメータの入力を入力装置を通じて行い、記憶装置に記憶する。各種パラメータには、塗布対象物5に関するもの、吐出装置2に関するもの、塗布に関するものがある。塗布対象物5に関するものとしては、塗布対象物5自体の寸法や、面取り数(すなわち、縦横に配置される数)、塗布を実行する際の基準の位置となるアライメントマーク座標やアライメントマーク画像、などがある。吐出装置2に関するものとしては、ロッドが上昇している時間(ON時間)および下降している時間(OFF時間)、圧縮気体により液体材料を圧送する補助がある場合にはその圧力の大きさ、などがある。吐出装置2に関するパラメータについては、複数個ある吐出装置2のすべてについて入力を行う。塗布に関するものとしては、塗布する線の長さや形状(すなわち、塗布パターン)、1つの塗布パターンを形成するのに必要となる液体材料の重量(塗布量)、などがある。
【0032】
(吐出重量測定)
次いで、第2の工程として、吐出装置2a、2b、2cからの各吐出量の測定を行う。本実施形態で測定する吐出量は、吐出装置2が設定された所定の回数(例えば、100回や500回といった予め決めた設定吐出回数)、吐出を行ったときの重量測定装置16の測定値(すなわち、設定回数吐出時の重量)である。この測定は、吐出装置2が重量測定装置16上で、液体材料を所定の回数吐出することで行う。測定値は、制御装置17に送られ、制御装置17の備える専用ソフトウェアにより記憶装置に記憶される。
【0033】
(補正後移動速度の算出)
次いで、第3の工程として、第2の工程で測定した吐出量の測定結果に基づき、吐出装置2a、2b、2c毎の補正後移動速度の算出を行う。本実施形態では以下の手順で行う。以下の手順は、制御装置17の備える専用ソフトウェアにより実現することが可能である。
(1)第2の工程で測定した設定吐出回数吐出時の重量を第2の工程で用いた設定吐出回数で割り、1回の吐出量(すなわち、液滴1個分の重量)を求める。
(2)第1の工程で設定した1つの塗布パターンを形成するのに必要となる液体材料の重量(塗布重量)を、(1)で求めた1回の吐出量で割り、1つの塗布パターンを形成するのに必要となる吐出回数Sを求める。
(3)(2)で求めた1つの塗布パターンを形成するのに必要となる吐出回数Sを、第1の工程で設定した1回の吐出時間Tから求まる吐出装置2の周波数(=Tの逆数)で割り、1つの塗布パターンを形成するのに必要となる時間(塗布時間T)を求める。
(4)第1の工程で設定した塗布する線の長さ(すなわち、塗布パターン長)を、(3)で求めた塗布時間Tで割り、補正後塗布速度(すなわち、吐出装置が液体材料を吐出しながら移動する際の補正後移動速度)を求める。
【0034】
第2の工程および第3の工程は、吐出装置2a、2b、2cのすべてについて実行する。すなわち、吐出装置2の数と同じ回数分、第2の工程および第3の工程を実行することで、吐出装置2a、2b、2c毎の補正後塗布速度を算出する。第2の工程および第3の工程は、塗布作業の開始前に行うだけでなく、予め設定した補正周期で実行することが好ましい。補正周期としては、例えば、ユーザーが入力した時間情報や基板の枚数を設定することが開示される。
【0035】
(塗布パターンの形成)
最後に、第4の工程として、第3の工程で算出した補正後塗布速度に基づき、塗布パターンに従って吐出装置2a、2b、2cを塗布対象物5に対して相対移動させて、塗布を行う。
基準となる吐出装置2(すなわち、吐出装置2a、2b、2cのうちいずれか1台)は、第3の工程で求めた補正後塗布速度に基づき、第1方向主駆動装置6および第2方向主駆動装置7を用いて動作させる。すなわち、基準となる吐出装置2では、第2方向副駆動装置13を動作させない(若しくは第2方向副駆動装置13を設けない)。基準以外の吐出装置2は、第1方向主駆動装置6、第2方向主駆動装置7および第2方向副駆動装置13を用いて動作させる。
【0036】
第3の工程で求めた第1方向(すなわち、X方向(符号9))の補正後移動速度が吐出装置間で異なる場合、第1方向主駆動装置6a、6b、6cを独立して動作することで吐出装置2a、2b、2cを異なる移動速度で移動させる。第3の工程で求めた第2方向(すなわち、Y方向(符号10))の補正後移動速度が吐出装置間で異なる場合、第2方向主駆動装置7の動作に第2方向副駆動装置13の動作を合成した動作をさせることで、異なる移動速度を実現する。別の言い方をすると、第2方向主駆動装置7は基準となる吐出装置2の補正後移動速度で動作させ、第2方向副駆動装置13に基準となる吐出装置2の補正後移動速度との差分の動作をさせる。例えば、第3の工程で求めた吐出装置2bまたは2cの補正後移動速度が基準となる吐出装置2aよりも速い場合、第2方向主駆動装置7の動作方向と同じ方向(符号15)に、第2方向副駆動装置13bまたは13cを動作させることで、第2方向主駆動装置7の移動速度と第2方向副駆動装置13bまたは13cの移動速度が足し合わさり、基準となる吐出装置2aの移動速度よりも速く動作できる。
【0037】
逆に、第3の工程で求めた吐出装置2bまたは2cの補正後移動速度が基準となる吐出装置2aよりも遅い場合、第2方向主駆動装置7の動作方向と逆方向(符号15)に、第2方向副駆動装置13bまたは13cを動作させることで、第2方向主駆動装置7の補正後移動速度から第2方向副駆動装置13bまたは13cの補正後移動速度が引かれて、基準となる吐出装置2aの補正後移動速度よりも遅く動作できる。
【0038】
吐出装置2a、2b、2cの補正後移動速度の算出例を表1に示す。表1に示すON時間とOFF時間を足し併せたものが1回の吐出時間Tとなる。1回の吐出時間Tの逆数が周波数(出射周波数)となる。なお、出射周波数を変化させた場合の吐出量の変化特性は線形ではないことが多いため、同一塗布パターン内では一度設定した出射周波数は変えないことが好ましい。
【0039】
【表1】
【0040】
本実施形態では、第2の工程で設定回数吐出時の重量を測定したが、これとは異なり、予め決めた設定時間の間、吐出を行った際の重量(設定時間吐出時の重量)を測定してもよい。この場合、第3の工程では、次の手順で吐出装置2a、2b、2c毎の補正後移動速度の算出を行う。
(a)第2の工程で測定した設定時間吐出時の重量から求まる単位時間当たりの吐出量Wを求める。
(b)(a)で求めた単位時間当たりの吐出量Wを吐出装置2の周波数で割り、1回の吐出量W(すなわち、液滴1個分の重量)を求める。
(c)第1の工程で設定した1つの塗布パターンを形成するのに必要となる液体材料の重量(塗布重量W)を、(b)で求めた1回の吐出量Wで割り、1つの塗布パターンを形成するのに必要となる吐出回数Sを求める。
(d)(c)で求めた1つの塗布パターンを形成するのに必要となる吐出回数Sを、第1の工程で設定した1回の吐出時間Tから求まる吐出装置2の周波数で割り、1つの塗布パターンを形成するのに必要となる時間(塗布時間T)を求める。
(e)第1の工程で設定した塗布する線の長さ(すなわち、塗布パターン長)を、(d)で求めた塗布時間Tで割り、補正後塗布速度(すなわち、吐出装置が液体材料を吐出しながら移動する際の補正後移動速度)を求める。
【0041】
以上に説明したように、第1実施形態に係る液体材料塗布装置1においては、吐出装置2を塗布対象物5に対して移動させるために、主駆動装置とは別に副駆動装置を設けて異なる塗布条件で塗布することで、吐出量にバラツキのある複数の吐出装置2に同時に同じ動作をさせても、複数の吐出装置間でバラツキのない塗布量(塗布重量)を得ることができる。
【0042】
本実施形態とは異なり、吐出装置2として他の吐出方式のものを用いることもできる。例えば、液体材料が貯留された容器に圧縮気体を供給することで吐出口より液体材料を吐出する「エア式」、棒状体表面の軸方向に螺旋状のつばが形成されたスクリューを回転させることにより液体材料を搬送して吐出口より吐出する「スクリュー式」、計量孔内壁に摺接するプランジャを後退させることで計量孔内に液体材料を充填し、プランジャを進出させることで吐出口より液体材料を吐出する「プランジャ式」などもの吐出装置を用いることができる。
【0043】
[第2実施形態]
<構成>
図2に示す第2実施形態の液体材料塗布装置1は、撮像装置20と、距離測定装置21と、撮像装置20および距離測定装置21を駆動するための第1方向主駆動装置6dとを備える点で、第1実施形態の液体材料塗布装置1と主に相違する。以下では相違点を中心に説明し、共通点についての説明は割愛する。
【0044】
撮像装置20は、吐出装置2に対する塗布対象物5のX方向(符号9)およびY方向(符号10)の位置を測定する。撮像装置20は、例えば、塗布対象物5の画像を撮像することができるCCDカメラにより構成することが好ましい。撮像装置20は、距離測定装置21のステージ側の側面に連結されており、制御装置17と信号ケーブル(図示せず)により接続されている。制御装置17は、撮像装置20が撮像したアライメントマークの画像に基づき、吐出装置2と塗布対象物5の水平方向の位置関係を算出する機能を専用ソフトウェアより実現している。
【0045】
距離測定装置21は、吐出装置2に対する塗布対象物5のZ方向(符号11)の位置を測定する。距離測定装置21は、例えば、塗布対象物5との距離を計測することができるレーザー変位計により構成することが好ましい。距離測定装置21は、第1方向主駆動装置6dのステージ側の側面に連結されており、制御装置17と信号ケーブル(図示せず)により接続されている。制御装置17は、距離測定装置21から受信した信号に基づき吐出装置2と塗布対象物5との距離を算出する機能を専用ソフトウェアより実現している。
第2実施形態では、撮像装置20と距離測定装置21をそれぞれ1台ずつ設ける構成としているが、1台ずつでは塗布対象物5上の塗布範囲をすべて撮像したり、距離計測したりできない場合、撮像装置20および/または距離測定装置21を2台以上設ける構成とし、全ての塗布範囲をカバーできるようにする。
【0046】
距離測定装置21は、第1方向主駆動装置6dによりX方向(符号9)へ独立して移動することができる。第2実施形態では、第1方向主駆動装置6dを梁22の右端に設けているが、第1方向主駆動装置6a~6cの間または梁22の左端に設けるようにしてもよい。第2実施形態では、撮像装置20と距離測定装置21をY方向(符号10)に並設しているが、X方向(符号9)に並設してもよい。撮像装置20および距離測定装置21は、補正の基準となる位置を測定するので、第2方向副駆動装置は設けない。
また、第2実施形態では、撮像装置20と距離測定装置21を独立して第1方向主駆動装置6dに設けているが、第1方向主駆動装置6dを設けずに、第1方向主駆動装置6a~6cのいずれかに吐出装置2と共に撮像装置20と距離測定装置21併設してもよい。この際、第2方向副駆動装置を設けない吐出装置2と併設することが好ましいが、第2方向副駆動装置を設けた吐出装置2と併設する場合は、後述する測定動作時に第2方向副駆動装置を動作させないようにするとよい。
その他の構成については、第1実施形態に係る液体材料塗布装置の構成と同じであるので説明を割愛する。
【0047】
第2実施形態に係る液体材料塗布装置1は、塗布対象物5がずれた状態で載置された場合の位置補正機能を備えている。
例えば、塗布対象物5が矩形状の板状体である場合、塗布対象物5の各辺と駆動装置の各移動方向とが正確に一致するよう、別の言い方をすれば、塗布対象物5の各辺と駆動装置の各移動方向とが正確に平行、あるいは直交するよう、ステージ4上に載置する必要がある。しかし、実際は、平行移動や回転した状態、いわゆる「ずれ」のある状態で載置されることが殆どである。正確に載置されていないと、液体材料が塗布対象物5上の正確な位置に塗布されないことになる。そこで、「ずれ」量を測定し、これを補正するよう塗布を行うことで、正確な位置に塗布を行うことを可能としている。
また、液体材料を塗布対象物5上に塗布するためには、吐出装置2と塗布対象物5との間隔または距離(すなわち、塗布対象物5に対する吐出装置2の高さ)が適正に保たれている必要がある。しかし、実際は、搬送や部品の実装などで力や熱が加わり、塗布対象物5の表面が波打つように高さ方向に変動することがある。このような表面に塗布を行うと、正確な量の液体材料が吐出されなかったり、所望とする形状に液体材料が塗布されなかったりすることがある。そこで、表面の状態を測定し、高さ方向の変動を補正するように塗布を行うことで、所望とする形状に塗布を行うことを可能としている。
【0048】
<動作>
第2実施形態に係る液体材料塗布装置1は、第1の実施形態における第4の工程に代えて、以下のA工程およびB工程を実行する。なお、第1の工程から第3の工程までは、第1実施形態と同じであるので説明は割愛する。ただし、第1の工程において、2つのアライメントマークの座標および画像を設定しておく。
【0049】
A工程として、吐出装置2の塗布対象物5に対する位置を測定し、その測定結果に基づき、吐出装置2が吐出を開始する位置を算出する。本実施形態では、次のように実行する。
(1)撮像装置20を第1の工程で予め設定しておいたアライメントマーク座標まで移動させ、塗布対象物5上にあるアライメントマークを撮像する。
(2)制御装置17の専用ソフトウェアにより画像処理を行い、第1の工程で予め設定しておいたアライメントマーク画像と(1)で撮像したアライメントマーク画像とのずれ量を算出し、算出結果を記憶装置に記憶する。ここでは、塗布対象物5上の離れた2箇所のアライメントマークを映してから、ずれ量を算出する。2箇所のアライメントマークを用いることで、回転に対して位置の補正をすることができる。
(3)距離測定装置21を測定位置へ移動して測定を行い、測定結果(第3方向測定値)を記憶装置に記憶する。測定位置は、多面取りの各塗布パターンのそれぞれの塗布開始位置であることが好ましい。しかし、多面取りでは、測定箇所が多くなってしまうので、塗布対象物5上の塗布面を複数の塗布パターンをまとめたいくつかの領域に分け、その領域の中の1箇所を測定して、代表値として用いることで時間短縮を図ってもよい。塗布対象物5上の塗布面の精度がよいと判断できるのであれば、測定箇所を1箇所のみとすることも可能である。
【0050】
次いで、B工程として、第3の工程で算出した補正後塗布速度並びにA工程で算出したずれ量および第3方向測定値に基づき塗布を行う。補正後塗布速度に基づき塗布を行う方法は、第1実施形態と同様である。一方、算出したずれ量に基づき行う塗布は、第1の工程で設定した塗布パターンに、A工程で算出したずれ量および第3方向測定値を加味することで行う。
上記した第1ないし第3工程およびA工程は、塗布対象物5を入れ替える毎に実行することが好ましい。
【0051】
以上に説明した第2実施形態に係る液体材料塗布装置1においても、吐出量にバラツキのある複数の吐出装置2に同時に同じ動作をさせても、複数の吐出装置間でバラツキのない塗布量(塗布重量)を得ることができる。それに加えて、吐出装置2に対する塗布対象物5の位置を測定することで、塗布位置の精度を向上することができる。
【0052】
[第3実施形態]
<構成>
図3に示す第3実施形態に係る液体材料塗布装置1は、第1実施形態と、第1方向主駆動装置6および第1方向副駆動装置12a、12b、12cの構成が異なる。
第3実施形態に係る第1方向主駆動装置6は、所定間隔で吐出装置2a、2b、2cが配置された長方形の板状部材を備え、梁22のステージ側の側面に配置されている。第1方向主駆動装置6は、符号9で示すX方向へ吐出装置2a、2b、2cを同時に移動させるよう構成されている。
【0053】
第1方向副駆動装置12a、12b、12cは、第1方向主駆動装置6のステージ側の側面に配置されており、符号14a~14cで示すX方向へ吐出装置2a、2b、2cをそれぞれ独立して移動することができる。ここで、符号14a~14cで示すX方向への移動は、第1方向主駆動装置6によるX方向(符号9)への移動と独立して行うことができる。
第2方向副駆動装置13a、13b、13cは、第1方向副駆動装置12a、12b、12cのステージ側の側面にそれぞれ配置されており、符号15a~15cで示すY方向へ吐出装置2a、2b、2cをそれぞれ独立して移動することができる。
このように、本実施形態では、X方向(符号9,14)およびY方向(符号10,15)に対して、吐出装置2a、2b、2cの移動速度を個別に制御することができる。
その他の構成については、第1実施形態に係る液体材料塗布装置1の構成と同じであるので説明を割愛する。
【0054】
<動作>
第3実施形態に係る液体材料塗布装置1の動作は、第1の工程から第3の工程までは第1実施形態に係る液体材料塗布装置1の動作と同様であるが、第4の工程の動作が異なる。
第3実施形態の第4の工程においては、第2方向主駆動装置7の動作に第2方向副駆動装置13a、13b、13cの動作を合成した動作をさせることで、第2方向(Y方向)の異なる移動速度を実現している。また、第3実施形態では、第1方向主駆動装置6の動作に第1方向副駆動装置12a、12b、12cの動作を合成した動作をさせることで、第1方向(X方向)の異なる移動速度を実現している。第3実施形態でも同様に、副駆動装置(12、13)の可動距離は主駆動装置(6、7)の可動距離と比べて短くすることが好ましい。副駆動装置(12、13)は、吐出装置2a、2b、2cと共にそれぞれ塗布ヘッドを構成するので、小型である方がよいのも第1実施形態と同様である。また、移動速度を制御する際の基準となる吐出装置2には、対応する第1方向副駆動装置12を動作させない(もしくは第1方向副駆動装置12を設けない)ことが好ましいのも第1実施形態と同様である。
【0055】
以上に説明したように、第3実施形態に係る液体材料塗布装置1においても、第1実施形態と同様の作用効果が奏される なお、第3実施形態の液体材料塗布装置1に、第2実施形態の撮像装置20および/または距離測定装置21を付加することももちろん可能である。
【0056】
[第4実施形態]
<構成>
図4に示す第4実施形態に係るレーザー加工作業装置30は、加工作業対象物に溝や孔を設けたり、文字や模様などを刻印したり、或いは加工作業対象物を複数個の個片に切断するレーザー加工作業装置である。第4実施形態は、第1実施形態の吐出装置(2a、2b、2c)の代わりにレーザー発振装置(31a、31b、31c)を作業ヘッドに搭載し、作業量測定装置としてレーザー出力測定装置32を備える点で主に異なる。加工作業対象物33を載置するステージ4、レーザー発振装置(31a、31b、31c)とステージ4とを相対移動させるXYZ駆動装置(6、7、8、13)、レーザー発振装置(31a、31b、31c)、前記各装置を配設する架台18および架台18の上部を覆うカバー19は異ならない。以下では相違点を中心に説明し、共通点についての説明は割愛する。また、以下では、レーザー発振装置(31a、31b、31c)を「レーザー発振装置31」と省略表記することがある。
【0057】
第4実施形態のレーザー発振装置31は、所定の周波数でレーザー光をパルス状に出射するCOレーザーやYAGレーザーなどのレーザー光源を備えている。また、第4実施形態においても、第1実施形態と同様に、同時に複数の加工パターン(作業パターン)を形成できるよう、同じ仕様のレーザー発振装置31を複数個設けている。図4では、レーザー発振装置31が3個の場合を示しているが、これに限定されず、2個でもよいし、4台以上(例えば2~8個)でもよい。加工作業対象に形成する加工パターンの数や大きさなどを勘案して決める。
第4実施形態においては、第1実施形態の液体材料塗布装置1における重量測定装置16の代わりにレーザー出力測定装置32を搭載する。レーザー出力測定装置32は、その測定結果を制御に用いるため、ケーブル等を介して外部の機器(例えば、本実施形態における制御装置17)に測定結果を出力する機能を有することが好ましい。なお、レーザー出力測定装置32としては、市販機器を用いることができる。制御装置17は、第1実施形態と同様であり、処理装置と、記憶装置と、入力装置と、出力装置とを備えて構成され、レーザー発振装置(31a、31b、31c)、レーザー出力測定装置32およびXYZ駆動装置(6、7、8、13)の動作を制御する。制御装置17の記憶装置には、後述の補正後移動速度を算出するための専用ソフトウェアが格納されており、レーザー出力測定装置32から受信した測定結果に基づき補正後移動速度を算出する。
【0058】
<動作>
(初期設定)
始めに、第1の工程として、各種パラメータの入力を入力装置を通じて行い、記憶装置に記憶する。各種パラメータには、加工作業対象物33に関するもの、レーザー発振装置31に関するもの、加工作業に関するものがある。加工作業対象物33に関するものとしては、加工作業対象物33自体の寸法や、面取り数(すなわち、縦横に配置される数)、加工作業を実行する際の基準の位置となるアライメントマーク座標やアライメントマーク画像などがある。レーザー発振装置31に関するものとしては、レーザー光の発振周波数などがある。レーザー発振装置31に関するパラメータについては、複数個あるレーザー発振装置(31a、31b、31c)の全てについて入力を行う。加工作業に関するものとしては、加工する溝などの長さや形状(すなわち、加工パターン)、1つの加工パターンを形成するのに必要となるレーザー出力などがある。
【0059】
(レーザー出力測定)
次いで、第2の工程として、レーザー発振装置(31a、31b、31c)からの各レーザー出力の測定を行う。第4実施形態で測定するレーザー出力は、レーザー発振装置31が設定された所定の時間(例えば、5秒や10秒といった予め決めた設定時間)、レーザーを発振したときのレーザー出力測定装置32の測定値(すなわち、設定時間発振時のレーザー出力)である。この測定は、レーザー発振装置31がレーザー出力測定装置32上でレーザー光を所定の時間発振することで行う。測定値は、制御装置17に送られ、制御装置17の備える専用ソフトウェアにより記憶装置に記憶される。
【0060】
(補正後移動速度の算出)
次いで、第3の工程として、第2の工程で測定したレーザー出力の測定結果に基づき、レーザー発振装置(31a、31b、31c)ごとの補正後移動速度の算出を行う。第4実施形態では以下の手順で行う。以下の手順は、制御装置17の備える専用ソフトウェアにより実現することが可能である。
(1)第2の工程で測定した設定時間発振時のレーザー出力を第2の工程で用いた設定時間で割り、単位時間当たりのレーザー出力を求める。
(2)第1の工程で設定した1つの加工パターンを形成するのに必要となる出力を、(1)で求めた単位時間当たりのレーザー出力で割り、1つの加工パターンを形成するのに必要となる時間を求める。
(3)第1の工程で設定した加工する溝等の長さ(すなわち、加工パターン長)を、(2)で求めた時間で割り、補正後移動速度(すなわち、レーザー発振装置がレーザー光を発振しながら移動する際の補正後移動速度)を求める。
【0061】
第2の工程および第3の工程は、レーザー発振装置(31a、31b、31c)の全てについて実行する。すなわち、レーザー発振装置31の数と同じ回数分、第2の工程および第3の工程を実行することで、レーザー発振装置(31a、31b、31c)ごとの補正後移動速度を算出する。第2の工程および第3の工程は、加工作業の開始前に行うだけでなく、予め設定した補正周期で実行することが好ましい。補正周期としては、例えば、ユーザーが入力した時間情報や加工作業対象物33の数を設定することが開示される。
【0062】
(加工パターンの形成)
最後に、第4の工程として、第3の工程で算出した補正後移動速度に基づき、加工パターンに従ってレーザー発振装置(31a、31b、31c)を加工作業対象物33に対して移動させて、加工を行う。
基準となるレーザー発振装置31(すなわち、レーザー発振装置(31a、31b、31c)のうちいずれか1台)は、第3の工程で算出した補正後移動速度に基づき、第1方向主駆動装置6および第2方向主駆動装置7を用いて動作させる。すなわち、基準となるレーザー発振装置31では、第2方向副駆動装置13を動作させない(若しくは第2方向副駆動装置13を設けない)。基準以外のレーザー発振装置31は、第1方向主駆動装置6、第2方向主駆動装置7および第2方向副駆動装置13を用いて動作させる。(基準以外のレーザー発振装置31の動作については、第1実施形態と同様なので説明を割愛する。第1実施形態の説明を参照。)
【0063】
以上に説明したように、第4実施形態に係るレーザー加工作業装置30においては、レーザー発振装置31を加工作業対象物33に対して移動させるために、主駆動装置とは別に副駆動装置を設けて異なる加工条件で加工することで、「出力」にバラツキのある複数のレーザー発振装置31に同時に同じ動作をさせても、複数のレーザー発振装置間でバラツキのない「出力結果」を得ることができる。
【0064】
以上、幾つかの実施形態を例示として詳細に説明したが、本発明の新規な教示及び有利な効果から実質的に逸脱せずに、その実施の形態には多くの改変例が可能である。
例えば、上記各実施形態とは異なり、円板状の刃をモータなどで回転させて加工対象物を切断する切断装置を作業ヘッドに搭載することも可能である。この場合、制御の対象となる出力としては、モータのトルクや回転数などであり、各作業ヘッドの出力を測定して、補正量を算出する。
【符号の説明】
【0065】
1:液体材料塗布装置、2:吐出装置、3:吐出口、4:ステージ、5:塗布対象物、6:第1方向主駆動装置、7:第2方向主駆動装置、8:第3方向駆動装置、9:X方向主移動方向、10:Y方向主移動方向、11:Z方向主移動方向、12:第1方向副駆動装置、13:第2方向副駆動装置、14:X方向副移動方向、15:Y方向副移動方向、16:重量測定装置、17:制御装置、18:架台、19:カバー、20:撮像装置、21:距離測定装置、22:梁、23:支持台、30:レーザー加工作業装置、31:レーザー発振装置、32:レーザー出力測定装置、33:加工作業対象物
図1
図2
図3
図4