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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-17
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】光ファイバフィードスルー
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/46 20060101AFI20220106BHJP
【FI】
G02B6/46 301
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019151887
(22)【出願日】2019-08-22
(65)【公開番号】P2021032999
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2021-04-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】392017004
【氏名又は名称】湖北工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】特許業務法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤谷 弘和
(72)【発明者】
【氏名】寺村 一朗
(72)【発明者】
【氏名】山本 潤
(72)【発明者】
【氏名】林 隆司
【審査官】林 祥恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-069130(JP,A)
【文献】特開2003-090921(JP,A)
【文献】特開平07-199003(JP,A)
【文献】特開2013-190631(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0058411(US,A1)
【文献】特表2002-533780(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0170833(US,A1)
【文献】特開2014-215446(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103308976(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/245-6/25
G02B 6/43-6/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気密封止されているパッケージ(60)の内部に収容されている素子と前記パッケージ(60)の外部に配置された任意のデバイスとの間で光ファイバ(50)を介して光通信を行うために前記パッケージ(60)に取り付け可能である光ファイバフィードスルー(1a,1b)であって、
筒状であり、軸線方向における一方の方向である第一方向側の端部と前記軸線方向における他方の方向である第二方向側の端部とを有し、前記第一方向側の端部が前記パッケージ(60)の内部側に位置し、前記第二方向側の端部が前記パッケージ(60)の外部側に位置するように前記パッケージ(60)に取り付け可能であるとともに、前記軸線方向に延び且つ前記パッケージ(60)の内部と外部とを連通可能な貫通孔(21)を有しているスリーブ(20)と、
前記スリーブ(20)の前記貫通孔(21)の両端部のうち前記第二方向側の端部である外側端部から前記貫通孔(21)の内部に入り込んでいる挿入部(32)と、前記外側端部から前記スリーブ(20)の外部に突出している突出部(33)と、を有している弾性チューブ(30)と、
を有しており、
前記光ファイバ(50)は前記スリーブ(20)の前記貫通孔(21)および前記弾性チューブ(30)に挿通可能であり、
前記弾性チューブ(30)の外周面と前記スリーブ(20)の前記貫通孔(21)の内周面とが接着剤(40)にて固定されている、
光ファイバフィードスルー(1a,1b)。
【請求項2】
請求項1に記載の光ファイバフィードスルー(1a,1b)において、
前記弾性チューブ(30)は、前記光ファイバ(50)が挿通された状態でL字形に曲げられた場合、前記光ファイバ(50)の曲がり変形部の曲率半径が、前記光ファイバ(50)の曲げ損失の規格上限値に対応した曲率半径以上となるように形成されている、
光ファイバフィードスルー(1a,1b)。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光ファイバフィードスルー(1a,1b)において、
前記弾性チューブ(30)に曲げ荷重が作用して前記弾性チューブ(30)が曲がり変形した場合のその曲がり変形部の曲率半径は、前記光ファイバ(50)に同じ曲げ荷重が作用して前記光ファイバ(50)が曲がり変形した場合のその曲がり変形部の曲率半径よりも大きい、
光ファイバフィードスルー(1a,1b)。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の光ファイバフィードスルー(1a,1b)において、
前記弾性チューブ(30)の前記挿入部の長さは1mm以上であり、前記弾性チューブ(30)の前記突出部の長さは2mm以上である、
光ファイバフィードスルー(1a,1b)。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の光ファイバフィードスルー(1a,1b)において、
前記弾性チューブ(30)の軸線方向に直交する方向の厚さは0.2mm以上である、
光ファイバフィードスルー(1a,1b)。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の光ファイバフィードスルー(1b)において、
前記光ファイバ(50)は、前記パッケージ(60)の外部から内部へ光信号を伝送する第一の光ファイバ(50a)と、前記パッケージ(60)の内部から外部へ光信号を伝送する第二の光ファイバ(50b)とを含む、
光ファイバフィードスルー(1b)。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の光ファイバフィードスルー(1a,1b)において、
前記光ファイバ(50)は前記スリーブ(20)の前記貫通孔(21)および前記弾性チューブ(30)に挿通された状態で前記スリーブ(20)および前記弾性チューブ(30)に固定されており、
前記光ファイバ(50)が前記弾性チューブ(30)の前記突出部(33)の前記第二方向側の端部から延出している、
光ファイバフィードスルー(1a,1b)。
【請求項8】
請求項7に記載の光ファイバフィードスルー(1a,1b)において、
前記突出部(33)の前記第二方向側の前記端部から延出している前記光ファイバ(50)の軸線方向における長さは、前記突出部(33)の前記軸線方向における長さよりも長い、
光ファイバフィードスルー(1a,1b)。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の光ファイバフィードスルー(1a,1b)において、
前記弾性チューブ(30)の前記挿入部(32)の外周面と前記スリーブ(20)の前記貫通孔(21)の内周面との間には、前記挿入部(32)の前記第一方向側の端部から前記第二方向側の端部まで全周に亘って共通の接着剤(40)が充填されている、
光ファイバフィードスルー(1a,1b)。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の光ファイバフィードスルー(1a,1b)において、
前記弾性チューブ(30)の貫通孔(31)の内部に充填されている接着剤(40)は、前記弾性チューブ(30)の前記挿入部(32)の外周面と前記スリーブ(20)の前記貫通孔(21)の内周面との間に充填されている前記接着剤(40)と共通である、
光ファイバフィードスルー(1a,1b)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバフィードスルーに関する。
【背景技術】
【0002】
光モジュールのパッケージ内部に配された光素子は、パッケージの外部との間で光通信を行うために、パッケージ内で光ファイバに光学的に結合される。パッケージ内にて光素子に光学的に結合された光ファイバは、光ファイバフィードスルーを介して外部に導出される。このときパッケージ内での結露による光素子の劣化、或いは電気的なショート等を防止するために、パッケージが気密封止される。パッケージの気密性を確保するために、光ファイバフィードスルーの構成部品であるスリーブとスリーブに挿通されている光ファイバとの間に封止材が充填されるという構成や、スリーブと光ファイバが接着剤により接着されるという構成が用いられている。
【0003】
特許文献1には、パッケージの外壁に管部材(スリーブ)が固定されている光ファイバ導入部のパッケージ構造において、管部材の内壁と光ファイバ裸線部分とがはんだで固定され、管部材の内壁と光ファイバ芯線部分とが接着剤で固定され、管部材とパッケージがフラックス入りはんだで固定されているという構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-17743号公報
【発明の概要】
【0005】
(発明が解決しようとする課題)
ところで、光ファイバフィードスルーのスリーブから突出している光ファイバが曲がり変形すると、光ファイバをスリーブに接着している接着剤や、スリーブの内部に充填されている封止材にも荷重が掛かる。このため、光ファイバが曲がり変形した場合に、接着剤や封止材が損傷したり、接着剤や封止材と光ファイバとの間に隙間が生じたりして、気密性を保持できなくなるおそれがある
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、光ファイバが曲がり変形した場合であってもパッケージの気密性を確保できる光ファイバフィードスルーを提供することを目的とする。
【0007】
(課題を解決するための手段)
本発明に係る光ファイバフィードスルー(1a,1b)は、
気密封止されているパッケージ(60)の内部に収容されている素子と前記パッケージ(60)の外部に配置された任意のデバイスとの間で光ファイバ(50)を介して光通信を行うために前記パッケージ(60)に取り付け可能である光ファイバフィードスルー(1a)であって、
筒状であり、軸線方向における一方の方向である第一方向側の端部と前記軸線方向における他方の方向である第二方向側の端部とを有し、前記第一方向側の端部が前記パッケージ(60)の内部側に位置し、前記第二方向側の端部が前記パッケージ(60)の外部側に位置するように前記パッケージ(60)に取り付け可能であるとともに、前記軸線方向に延び且つ前記パッケージ(60)の内部と外部とを連通可能な貫通孔(21)を有しているスリーブ(20)と、
前記スリーブ(20)の前記貫通孔(21)の両端部のうち前記第二方向側の端部である外側端部から前記スリーブ(20)の前記貫通孔(21)の内部に入り込んでいる挿入部(32)と、前記外側端部から前記スリーブ(20)の外部に突出している突出部(33)と、を有している弾性チューブ(30)と、
を有しており、
前記光ファイバ(50)は前記スリーブ(20)の前記貫通孔(21)および前記弾性チューブ(30)に挿通可能であり、
前記弾性チューブ(30)の外周面と前記スリーブ(20)の前記貫通孔(21)の内周面とが接着剤(40)にて固定されている。
【0008】
発明がこのように構成されると、光ファイバ(50)が曲がり変形した場合であってもパッケージ(60)の気密性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の実施形態に係る光ファイバフィードスルーの外観斜視図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る光ファイバフィードスルーの正面図(前面図)である。
図3図3は、本発明の実施形態に係る光ファイバフィードスルーの右側面図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係る光ファイバフィードスルーの左側面図である。
図5図5は、本発明の実施形態に係る光ファイバフィードスルーの断面図である。
図6図6は、図5のVI-VI断面矢視図である。
図7図7は、本発明の実施形態に係る光ファイバフィードスルーの光ファイバが曲がり変形した状態を模式的に示す断面図である。
図8図8は、弾性チューブを有さない光ファイバフィードスルーの光ファイバが曲がり変形した状態を模式的に示す断面図である。
図9図9は、本発明の実施形態の変形例に係る光ファイバフィードスルーの外観斜視図である。
図10図10は、本発明の実施形態の変形例に係る光ファイバフィードスルーの正面図(前面図)である。
図11図11は、本発明の実施形態の変形例に係る光ファイバフィードスルーの平面図(上面図)である。
図12図12は、本発明の実施形態の変形例に係る光ファイバフィードスルーの右側面図である。
図13図13は、本発明の実施形態の変形例に係る光ファイバフィードスルーの左側面図である。
図14図14は、本発明の実施形態の変形例に係る光ファイバフィードスルーの断面図である。
図15図15は、図14のXV-XV断面矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施形態に係る光ファイバフィードスルー1aについて、図面を参照して説明する。図1図6は、本発明の実施形態に係る光ファイバフィードスルー1aを示す図であり、図1は外観斜視図、図2は正面図(前面図)、図3は右側面図、図4は左側面図、図5は軸線に平行な面で切断した断面図、図6図5のVI-VI断面矢視図である。なお、これらの図に示すように、本発明の実施形態に係る光ファイバフィードスルー1aは回転対称の形状を有しており、このため、背面図、平面図(上面図)および底面図は、正面図(前面図)と同じになる。また、各図においては、パッケージの内部側を矢印Iで、パッケージの外部側を矢印Oで示す。
【0011】
本発明の実施形態に係る光ファイバフィードスルー1aは、パッケージ60の内部に気密封止されている光素子62(図7参照)とパッケージ60の外部との間で光ファイバ50を介して光通信を行うために、パッケージ60に取り付けられる。なお、本発明の実施形態に係る光ファイバフィードスルー1aは、内部に気密封止された光素子62を有するパッケージ60に適用可能であり、パッケージ60の種類や構造は特に限定されるものではない。また、以下の説明では、“本発明の実施形態に係る光ファイバフィードスルー”を単に“フィードスルー”と略して記すことがある。
【0012】
フィードスルー1aはスリーブ20と弾性チューブ30とを有しており、スリーブ20および弾性チューブ30に光ファイバ50が挿通されている。このように、光ファイバ50には弾性チューブ30が装着されている。そして、フィードスルー1aは、この光ファイバ50を介して、パッケージ60の内部に収容されている光素子62がパッケージ60の外部との間で光通信できるように構成されている。
【0013】
スリーブ20は、パッケージ60の外壁61に取り付けられる部材である。スリーブ20は、パッケージ60の外壁61にロウ付けできるように、金属材料により形成されている。スリーブ20には、光ファイバ50を挿通可能で軸線方向に貫通する貫通孔21が設けられている。スリーブ20がパッケージ60の外壁61に取り付けられたとき、貫通孔21の軸線方向の一方の端部がパッケージ60の外部側に位置し他方の端部がパッケージ60の内部側に位置する。従って、貫通孔21は、パッケージ60の内部と外部とを連通する。なお、以後の説明において、貫通孔21の軸線方向の一方の端部(外部側に位置する端部)を外側端部と称する。
【0014】
スリーブ20の貫通孔21は、第一の部分22と第二の部分23とを有している。第一の部分22は、貫通孔21の外側端部側に設けられる。第一の部分22は、弾性チューブ30が挿入される部分であり、弾性チューブ30の外径よりも大きい内径を有している。第二の部分23は、貫通孔21の軸線方向の他方の端部側(パッケージ60の内部側に位置する側)に設けられる。第二の部分23は、ガラス41が充填される部分である。本実施形態では、第二の部分23は、パッケージ60の内部側に位置する端部に設けられている大径部24と、大径部24と第一の部分22との間に設けられている小径部25とを有している。小径部25は、大径部24および第一の部分22よりも内径が小さい部分である。ただし、第二の部分23は、光ファイバ50を挿通可能で、かつ、ガラス41を充填可能であればよく、前記のような構成に限定されるものではない。
【0015】
なお、本実施形態ではスリーブ20が円筒形状を有する構成を示すが、スリーブ20の外形は円筒形状に限定されるものではない。スリーブ20は、光素子62が気密封止されているパッケージ60に取り付け可能であり、取り付けられた状態でパッケージ60の内部と外部とを連通する貫通孔21を有するとともに、貫通孔21に第一の部分22が設けられる構成であればよい。また、本実施形態では、スリーブ20がパッケージ60の外壁61にロウ付けできるように金属材料からなる構成を示すが、スリーブ20は金属材料からなる構成に限定されるものではない。例えば、スリーブ20は、各種セラミック材料などといった無機材料により形成される構成であってもよい。
【0016】
上記構成のスリーブ20に弾性チューブ30が取り付けられている。弾性チューブ30は、弾性曲がり変形可能なチューブ状の部材である。このような弾性チューブ30には、樹脂材料からなるチューブが適用できる。樹脂材料としては、例えば4フッ化エチレンもしくは3フッ化エチレンやハイトレル(“ハイトレル”は“イー アイ デュポン ドゥ ヌムール アンド カンパニー”の登録商標)が適用できる。そして、弾性チューブ30には、軸線方向に貫通し、光ファイバ50を被覆材51とともに挿通可能な貫通孔31が設けられている。
【0017】
弾性チューブ30の軸線方向の一方の端部は、スリーブ20の貫通孔21の軸線方向の一方の端部側、すなわち貫通孔21の端部(開口部)のうちパッケージの外部側に位置している外側端部側から、貫通孔21の第一の部分22に入り込んでいる(図5参照)。また、図1図5に示すように、弾性チューブ30の軸線方向の他方の端部は、貫通孔21の外側端部からスリーブ20の外部に突出している。このように、弾性チューブ30は、スリーブ20の貫通孔21の外側端部側からスリーブ20の貫通孔21の内部に入り込んでいる部分(挿入部32)と、上記外側端部からスリーブ20の外部に突出している部分(突出部33)とを有している。なお、図5に示すように、弾性チューブ30は、スリーブ20の貫通孔21の第一の部分22の一部(スリーブ20の外側端部側から所定の範囲)に入り込んでいればよく、貫通孔21の第一の部分22の全域に入り込んでいなくてもよい。
【0018】
そして、弾性チューブ30の貫通孔31とスリーブ20の貫通孔21には、光ファイバ50が挿通されている。なお、光ファイバ50のうちの弾性チューブ30の貫通孔31の内部に位置している部分については、被覆材51が除去されずに残されている。また、光ファイバ50のうち、スリーブ20の貫通孔21の第二の部分23の内部に位置している部分については、被覆材51が除去されている。光ファイバ50のうちのスリーブ20の貫通孔21の第一の部分22の内部に位置し、かつ、弾性チューブ30から突出している部分については、弾性チューブ30に近い側の一部の被覆材51が除去されずに残されており、第二の部分23に近い側の残りの部分の被覆材51が除去されている。つまり、光ファイバ50のうち、スリーブ20の第二の部分23の内部に位置する部分及び、その部分から連続してスリーブ20の第一の部分22の内部の途中まで延びる部分について、被覆材51が除去され、それ以外の部分については被覆材51が除去されずに残されている。
【0019】
図5図6に示すように、弾性チューブ30の挿入部32の外周面とスリーブ20の貫通孔21の第一の部分22の内周面との間には接着剤40が充填されている。これにより、弾性チューブ30の挿入部32の外周面とスリーブ20の貫通孔21の第一の部分22の内周面とが接着剤40によって固定される。また、弾性チューブ30の貫通孔31の内部にも接着剤40が充填されている。これにより、光ファイバ50の被覆材51の外周面と弾性チューブ30の貫通孔31の内周面とが固定される。
【0020】
スリーブ20の貫通孔21の第一の部分22の内部には、弾性チューブ30の挿入部32が存在していない部分にも接着剤40が充填されている。これにより、スリーブ20の貫通孔21の第一の部分22において、弾性チューブ30の挿入部32から突出している光ファイバ50およびその被覆材51と、スリーブ20の貫通孔21の第一の部分22の内周面とが、接着剤40により固定される。
【0021】
第二の部分23にはガラス41が充填されている。これにより、光ファイバ50がスリーブ20に固定されるとともに、光ファイバ50とスリーブ20の貫通孔21の第二の部分23の内周面との間の隙間が封止される。また、スリーブ20の貫通孔21の他方の端部、すなわちパッケージ60の内部側に位置する端部には接着剤40が盛られており、この接着剤40によって光ファイバ50の被覆材51がスリーブ20に接着されている。
【0022】
このように、スリーブ20の貫通孔21の内部に充填される接着剤40とガラス41によって、スリーブ20とその内部に挿通された光ファイバ50との間が気密封止される。また、スリーブ20のうちパッケージ60の外壁61から突出している部分の外周とパッケージ60の外壁61の外側部分との間がはんだにより気密封止される。このようにして、パッケージ60の気密が保持される。なお、接着剤40およびガラス41は特に限定されるものではなく、従来公知の各種接着剤および各種ガラスが適用でき、ガラスに代えてはんだを使用することもできる。
【0023】
次に、弾性チューブ30を有するフィードスルー1aの効果について、弾性チューブ30を有さないフィードスルー90と対比して説明する。図7は、本実施形態のフィードスルー1aにおいて、光ファイバ50が曲がり変形した状態を模式的に示す断面図である。図8は、弾性チューブ30を有さないフィードスルー90において、光ファイバ50が曲がり変形した状態を模式的に示す断面図である。
【0024】
図8に示すように、弾性チューブ30を有さないフィードスルー90では、スリーブ20からパッケージ60の外部に突出している光ファイバ50に曲げ荷重が掛かって曲がり変形すると、スリーブ20の端部(貫通孔21の外側端部)の近傍の接着剤40には、光ファイバ50からスリーブ20の軸線に直角な方向の力が掛かる。この力は、光ファイバ50の曲がり変形部の曲率半径Rが小さくなるほど大きくなる。そして、フィードスルー90が弾性チューブ30を有さないと、光ファイバ50の曲がり変形部の曲率半径Rが小さくなってこの力が大きくなる。このため、接着剤40が損傷してスリーブ20内に湿気等が浸入しやすくなって気密性が損なわれるおそれがある。また、曲がり変形部の曲率半径Rが小さくなると、光ファイバ50の曲げ損失が大きくなって所望の光学特性が得られなくなるおそれがある。
【0025】
これに対して、図7に示すように、弾性チューブ30を有するフィードスルー1aでは、光ファイバ50に曲げ荷重が掛かると、弾性チューブ30の突出部33が光ファイバ50とともに曲がる。このため、弾性チューブ30が存在しない場合に比較して、光ファイバ50の曲がり変形部の曲率半径Rが大きくなり、スリーブ20の外側端部の近傍の接着剤40が光ファイバ50および弾性チューブ30から受ける力(曲がり変形により受ける力)が小さくなる。したがって、接着剤40の損傷が防止または抑制され、気密性が保持される。また、光ファイバ50の曲がり変形部の曲率半径Rが大きくなるから、光ファイバ50の曲げ損失が抑制され、所望の光学特性を担保することができる。
【0026】
なお、弾性チューブは、L字形に曲げた状態で、光ファイバの曲げ損失が規格上限値以下となるように光ファイバの曲がり変形部が形成されるようになっている。本実施形態では、弾性チューブ30は、パッケージ60の外部側に位置する部分(スリーブ20の外部に突出している部分)をスリーブ20の軸線に対して90°曲げた状態で、光ファイバ50の曲がり変形部の曲率半径Rが7.5mm以上になるように形成されている。これにより、光ファイバ50の曲げ損失が規格上限値以下になるため、伝送損失を抑制でき、所望の光学特性を得ることができる。なお、弾性チューブ30の曲率半径Rは、7.5mm以上に限定されるものではなく、光ファイバ50の曲げ損失の規格上限値に応じて設定される。すなわち、弾性チューブ30は、L字形に曲げた状態で、光ファイバ50の曲げ損失が規格上限値以下となるように、光ファイバ50の曲がり変形部が形成されるようになっている。例えば、光ファイバ50が波長1,550nmの光を伝送する際において、光ファイバ50を半径5mmのマンドレルに巻き付けた場合の曲げ損失の規格上限値が0.1dB以下になるように光ファイバ50が形成されている場合には、弾性チューブ30は、L字形に曲げた状態で、光ファイバ50の曲がり変形部の曲率半径Rが5mm以上になるように形成するとよい。なお、弾性チューブ30をL字形に曲げた状態で、光ファイバ50の曲げ損失が規格上限値以下となるように弾性チューブ30を形成することで、光ファイバ50に要求される曲げ強度(90°曲げた状態で0.23kgの引張に耐えることができる)も確保することができる。
【0027】
弾性チューブ30は、スリーブ20よりも剛性が低く(曲がり変形容易であり)、光ファイバ50よりも剛性が高い(曲がり変形困難である)ことが好ましい。すなわち、曲げ荷重が掛かって弾性チューブ30が曲がり変形した場合の曲がり変形部の曲率半径Rは、同じ曲げ荷重が光ファイバ50に掛かって曲がり変形した場合の曲がり変形部の曲率半径よりも大きくなる構成であることが好ましい。なお、具体的な剛性は、弾性チューブ30の材質や断面寸法(外径と内径)、断面形状の影響を受けることから、上記のように曲率半径Rが7.5mm以上となるように弾性チューブ30の材質や断面寸法、断面形状を決定すればよい。
【0028】
また、弾性チューブ30の突出部33の軸線方向寸法が小さすぎると、弾性チューブ30から突出している光ファイバ50の曲がり変形部の曲率半径Rが小さくなり、その結果所望の光学特性が得られなくなるおそれがある。そこで、光ファイバ50の突出部33の軸線方向寸法は2mm以上であることが好ましく、3mm以上であることがより好ましい。
【0029】
また、挿入部32の軸線方向寸法が小さすぎると、光ファイバ50および弾性チューブ30に曲げ荷重がかかって曲がり変形した場合に、弾性チューブ30がスリーブ20から抜け出るおそれがある。そこで、弾性チューブ30がスリーブ20から抜け出ないようにするため、弾性チューブ30の挿入部32の軸線方向寸法は1mm以上であることが好ましく、2mm以上であることがより好ましい。挿入部32の軸線方向寸法が1mm以上であれば、弾性チューブ30が曲がり変形した場合にスリーブ20から抜け出ることを防止または抑制できる。挿入部32の軸線方向寸法が2mm以上であれば、この効果をより高めることができる。
【0030】
なお、弾性チューブ30の半径方向の厚さは特に限定されるものではないが、光ファイバ50の曲げ損失抑制の観点からは、0.2mm以上であることが好ましく、0.25mm以上であることがより好ましい。弾性チューブ30の半径方向の厚さが0.2mm以上であると、光ファイバ50の曲げ損失を抑制する効果を高めることができ、0.25mm以上であると、この効果をより高めることができる。
【0031】
(変形例)
次いで、2本の光ファイバ50がスリーブ20と弾性チューブ30に挿通されている例について説明する。図9図15は、2本の光ファイバ50(第一の光ファイバ50aと第二の光ファイバ50b)がスリーブ20と弾性チューブ30に挿通されているフィードスルー1bを示す図であり、図9は外観斜視図、図10は正面図(前面図)、図11は平面図(上面図)、図12は右側面図、図13は左側面図、図14は軸線に平行な面で切断した断面図、図15図14のXV-XV断面矢視図である。なお、この変形例に係るフィードスルー1bは対称の形状を有しており、背面図は正面図(前面図)と同じとなり、底面図は平面図(上面図)と同じになる。なお、2本の光ファイバ50のうちの一方(第一の光ファイバ50a)は、パッケージ60の外部から内部へ光信号を伝送するための光ファイバであり、もう一方(第二の光ファイバ50b)は、パッケージ60の内部から外部へ光信号を伝送するための光ファイバである。
【0032】
本例におけるスリーブ20および弾性チューブ30として、前記実施形態と同じ構成が適用できる(図1~6参照)。弾性チューブ30の貫通孔31およびスリーブ20の貫通孔21には、第一の光ファイバ50aと第二の光ファイバ50bが挿通されている。このように、この変形例では、第1の光ファイバ50aと第2の光ファイバ50bのそれぞれに、弾性チューブ30が装着されている。なお、第一の光ファイバ50aと第二の光ファイバ50bの被覆材51の除去の態様は、前記実施形態と同じ態様でよい。弾性チューブ30は挿入部32と突出部33とを有しており、挿入部32の外周面とスリーブ20の貫通孔21の第一の部分22の内周面との間には接着剤40が充填されている。これにより、弾性チューブ30の挿入部32の外周面とスリーブ20の貫通孔21の第一の部分22の内周面が接着剤40によって固定される。なお、弾性チューブ30の突出部33と挿入部32の軸線方向寸法は、前記実施形態と同じ寸法でよい。弾性チューブ30の貫通孔31の内部にも接着剤40が充填されている。これにより、第一の光ファイバ50aと第二の光ファイバ50bの被覆材51の外周面と弾性チューブ30の貫通孔31の内周面とが固定される。
【0033】
このほか、前記実施形態と同様に、スリーブ20の貫通孔21の第一の部分22のうち、弾性チューブ30の挿入部32が存在しない部分にも接着剤40が充填されている。この接着剤40により、第一の光ファイバ50aと第二の光ファイバ50bおよびそれらの被覆材51と、スリーブ20の貫通孔21の第一の部分22の内周面とが固定される。さらに、スリーブ20の貫通孔21の第二の部分23にはガラス41が充填されている。これにより、第一の光ファイバ50aおよび第二の光ファイバ50bがスリーブ20に固定されるとともに、第一の光ファイバ50aおよび第二の光ファイバ50bとスリーブ20の貫通孔21の第二の部分23の内周面との間の隙間が封止される。
【0034】
このように、パッケージ60の内部と外部とで光通信を行う光ファイバ50が2本である場合であっても、本発明を適用できる。そして、このような構成であっても、光ファイバ50が1本である構成と同様の効果を奏することができる。すなわち、光ファイバフィードスルー1bが、パッケージ60の外部から内部へ光信号を伝送する第一の光ファイバ50aと、パッケージ60の内部から外部へ光信号を伝送する第二の光ファイバ50bとを有する場合において、パッケージ60の気密性を保持できるとともに、第一の光ファイバ50aと第二の光ファイバ50bの曲げ損失を抑制できて、所望の光学特性を得ることができる。また、前記変形例では、光ファイバ50が2本である構成を示したが、3本以上の光ファイバ50であっても本発明を適用可能である。そして、光ファイバ50が複数である場合であっても、前記効果を奏することができる。
【0035】
以上、本発明の実施形態および変形例について説明したが、本発明は前記実施形態や変形例に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0036】
1a,1b…光ファイバフィードスルー、20…スリーブ、21…スリーブの貫通孔、22…スリーブの貫通孔の第一の部分、23…スリーブの貫通孔の第二の部分、24…スリーブの貫通孔の第二の部分の大径部、25…スリーブの貫通孔の第二の部分の小径部、30…弾性チューブ、31…弾性チューブの貫通孔、32…弾性チューブの挿入部、33…弾性チューブの突出部、40…接着剤、41…ガラス、50…光ファイバ、50a…第一の光ファイバ、50b…第二の光ファイバ、51…被覆材、60…パッケージ、61…パッケージの外壁、62…光素子

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15