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特許6995395超音波骨メスビット及びそれを使用するロボット支援超音波骨パワーシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-17
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】超音波骨メスビット及びそれを使用するロボット支援超音波骨パワーシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/32 20060101AFI20220106BHJP
   A61B 17/14 20060101ALI20220106BHJP
   A61B 34/30 20160101ALI20220106BHJP
【FI】
A61B17/32 510
A61B17/14
A61B34/30
【請求項の数】 20
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020128967
(22)【出願日】2020-07-30
(65)【公開番号】P2021023809
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2020-07-30
(31)【優先権主張番号】201910700526.3
(32)【優先日】2019-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519264070
【氏名又は名称】ベイジン エスエムティーピー テクノロジー カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(72)【発明者】
【氏名】ツァオ,チュイン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ソーンタオ
(72)【発明者】
【氏名】ダイ,ジーリーン
【審査官】小河 了一
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-524586(JP,A)
【文献】国際公開第2019/062348(WO,A1)
【文献】特表2004-512855(JP,A)
【文献】特表2017-504400(JP,A)
【文献】中国実用新案第207707972(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/32
A61B 17/14
A61B 34/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波骨メスビットであって、前記メスビットの遠位端部に位置するメスビット端部部分を含み、
前記メスビット端部部分は、扁平形状を有するように形成され、カット部を具備し、
前記カット部は、遠位端部部分、第1の側面部分、及び、第2の側面部分を含み、
前記第1の側面部分及び前記第2の側面部分は、前記メスビット端部部分の幅方向において前記メスビット端部部分の縦軸線に対して対称に配置され、
前記メスビット端部部分の幅方向における前記第1の側面部分と前記第2の側面部分との間の距離は、前記遠位端部部分に向けて減少するか又は同じままであり、
前記カット部は、前記遠位端部部分の近くに形成された複数の突起を更に含み、
前記複数の突起は、前記メスビット端部部分の前記幅方向において前記縦軸線に対して対称に前記第1の側面部分及び前記第2の側面部分から外方に突出し、
前記複数の突起は、第1の突起及び第2の突起を含み、
前記第1の突起は、前記遠位端部部分と前記第1の側面部分との接合部に位置し、
前記第2の突起は、前記遠位端部部分と前記第2の側面部分との接合部に位置し、
前記メスビット端部部分の前記幅方向における前記第1及び第2の突起の最大幅は、前記メスビット端部部分の前記幅方向における前記超音波骨メスビットの組織接触部分のそれよりも大きい、
超音波骨メスビット。
【請求項2】
前記メスビット端部部分の近位端部に向けて窪み付けされる窪みは、前記遠位端部部分に形成される、請求項1に記載の超音波骨メスビット
【請求項3】
前記窪みは、前記メスビット端部部分の縦軸線に対して対称に設けられる、請求項に記載の超音波骨メスビット。
【請求項4】
前記窪みは、一定の又は傾斜した曲率半径を有する、請求項又はに記載の超音波骨メスビット。
【請求項5】
前記第1の突起、前記窪み、及び、前記第2の突起は、滑らかに連続的に形成される、請求項4に記載の超音波骨メスビット。
【請求項6】
前記カット部の前記遠位端部部分、前記第1の側面部分、前記第2の側面部分、及び、前記突起のうちの少なくとも1つの少なくとも一部の厚さは、前記メスビット端部部分の、前記カット部に隣接する非カット部のそれよりも大きい、請求項1から5のいずれか一項に記載の超音波骨メスビット。
【請求項7】
前記カット部の前記遠位端部部分、前記第1の側面部分、前記第2の側面部分、及び、前記突起の厚さは、前記メスビット端部部分の、前記カット部に隣接する前記非カット部のそれよりも大きい、請求項6に記載の超音波骨メスビット。
【請求項8】
前記カット部の前記遠位端部部分、前記第1の側面部分、前記第2の側面部分、及び、前記突起のうちの少なくとも1つは、交互に配置されて厚さの異なる第1の厚さ部分及び第2の厚さ部分を有し、前記第1の厚さ部分の厚さは、前記第2の厚さ部分のそれよりも大きい、請求項1から7のいずれか一項に記載の超音波骨メスビット。
【請求項9】
前記第2の厚さ部分の厚さは、前記メスビット端部部分の、前記カット部に隣接する前記非カット部のそれよりも大きい、請求項8に記載の超音波骨メスビット。
【請求項10】
前記カット部は、歯付き構造及び/又はローレット付き構造を少なくとも部分的に具備する、請求項1から9のいずれか一項に記載の超音波骨メスビット。
【請求項11】
前記カット部の前記歯付き構造及び/又は前記ローレット付き構造は、前記カット部の全体に亘って設けられる、請求項10に記載の超音波骨メスビット。
【請求項12】
前記突起は、フック形、台形、正方形、三角形、円弧形状、又は、それらの任意の組合せを有する、請求項1から11のいずれか一項に記載の超音波骨メスビット。
【請求項13】
前記超音波骨メスビットの前記メスビット端部部分は、扁平なシート形状の構造を有する、請求項1から12のいずれか一項に記載の超音波骨メスビット。
【請求項14】
前記超音波骨メスビットは、液体を前記カット部に案内するために少なくとも1つの案内溝を具備する、請求項1から13のいずれか一項に記載の超音波骨メスビット。
【請求項15】
前記少なくとも1つの案内溝は、前記カット部の前記遠位端部部分、前記第1の側面部分、前記第2の側面部分、及び、前記突起のうちの少なくとも1つに前記液体を案内する、請求項14に記載の超音波骨メスビット。
【請求項16】
前記超音波骨メスビットは、前記メスビット端部部分の厚さ方向に貫通する少なくとも1つの貫通穴が形成される、請求項1から15のいずれか一項に記載の超音波骨メスビット。
【請求項17】
前記超音波骨メスビットは、前記メスビット端部部分に、前記メスビット端部部分の長さ方向に前記遠位端部部分まで延びる貫通穴が形成される、請求項1から16のいずれか一項に記載の超音波骨メスビット。
【請求項18】
前記超音波骨メスビットは、前記メスビット端部部分に連結されたメスロッドを含み、前記メスビット端部部分及び前記メスロッドは、一体的に形成される、請求項1から17のいずれか一項に記載の超音波骨メスビット。
【請求項19】
前記カット部の厚さは、前記超音波骨メスビットの前記組織接触部分の最大厚さよりも大きいか又はそれに等しい、請求項1から18のいずれか一項に記載の超音波骨メスビット。
【請求項20】
ロボット支援超音波骨パワーシステムであって、超音波骨パワーシステム及びロボット支援手術システムを含み
前記超音波骨パワーシステムは、
電気エネルギを機械エネルギに変換するための超音波変換器と、
前記機械エネルギをカットされるべき骨に伝達するための超音波骨メスと、
外科手術を支援するための前記ロボット支援手術システムと、を含み、
前記超音波骨メスは、請求項1から19のいずれか一項に記載の前記超音波骨メスビットを有する、ロボット支援超音波骨パワーシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、超音波骨メスビット、特に、手術ロボットによる使用に適した超音波骨メスビット、及び、超音波骨メスビットを使用するロボット支援超音波骨パワーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波整形外科手術の技術では、変換器は、メスビットを駆動して骨組織をカットするべく電気エネルギを機械エネルギに変換するために、超音波周波数で活動化又は励起される。超音波骨メスは、「硬組織をカットするが軟組織をカットしない」という独特の利点を有して、整形外科手術の安全性を非常に強化しており、現在幅広く外科手術に適用されている。
【0003】
現在の研究のホットスポットは、整形外科手術の発展と同様に、医師の計画の下で手術ロボットを用いた外科手術を自動的に完了することである。人間の手は、比較的柔軟な操作、カット方向及び角度の正確な制御、及び、実際の状況に応じた迅速な調整において有利であるが、同時に、カット深さ及び速度等々についての低い制御精度、特に、縦方向の貧弱な制御能力という不都合も有する。超音波骨パワーシステムが、骨を切り開くために人間の手で操作されるとき、過度の縦の力に起因する骨の下の他の組織に対する損傷を引き起こすといった或る種のリスクが存在する。従って、ロボットによって支援された整形外科手術を実行するために必要なことは、手術精度を高めること、及び、手術の安全性を更に改善することである。
【0004】
既存の超音波骨メスビットは、全てが人間の手の構造的特徴や操作習慣に基づいて作られており、大部分のメスビットは、手で保持して力を加えて制御するのが容易な、通常のメスに似たシート状構造などの形状となっている。そういったビットは、手術ロボットの構造及び動作特性に基づいて開発されておらず、手術ロボットによる使用に適していない。特に、手術ロボットが動作中の比較的柔軟でない動きと比較的貧弱な順応性といった欠点を有するという理由で、人間の手による使用に適した既存の超音波骨メスビットを使用することは、力制御、繰り返し精度等々の観点から、手術ロボットの利点を活かすことにつながらない。その上、手術ロボットは、再現性のある動作性能、急速冷却、骨破片の迅速な排出等々の観点から、メスビットに対する高い要求を有する。従って、非常に重要なことは、手術ロボットの動作特性に適合する超音波骨メスビットを設計することである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の目的は、手術ロボットの構造及び動作特性に基づいて設計されており、斯くして、手術ロボットによる使用に適している超音波骨メスビットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様によれば、提供されるのは、超音波骨メスビットであって、メスビットの遠位端部に位置するメスビット端部部分を含み、メスビット端部部分は、扁平形状を有するように形成され、カット部を具備し、カット部は、遠位端部部分、第1の側面部分、及び、第2の側面部分を含み、第1の側面部分及び第2の側面部分は、メスビット端部部分の幅方向においてメスビット端部部分の縦軸線に対して対称に配置され、カット部は、遠位端部部分の近くに形成された複数の突起を更に含み、複数の突起は、メスビット端部部分の幅方向において縦軸線に対して対称に第1の側面部分及び第2の側面部分から外方に突出し、メスビット端部部分の近位端部に向けて窪み付けされる窪みは、遠位端部部分に形成される。
【0007】
本開示の第2の態様によれば、提供されるのは、ロボット支援超音波骨パワーシステムであって、超音波骨パワーシステム及びロボット支援手術システムを含む。超音波骨パワーシステムは、電気エネルギを機械エネルギに変換するための超音波変換器と、機械エネルギをカットされるべき骨に伝達するための超音波骨メスと、外科手術を支援するためのロボット支援手術システムと、を含み、超音波骨メスは、上で記載された超音波骨メスビットを有する。
【0008】
以下では、本開示の技術的な解決策は、添付の図面及び特定の実施形態を参照して詳細に更に説明される。図面は、実施形態を例示的に示し、本明細書の一部を構成しており、本明細書の本文説明と共に実施形態の例示的な実装を例証するために使用される。示された実施形態は、例証目的だけのためであり、特許請求の範囲の保護範囲を制限しない。図面の全体に亘って、同じ参照番号は、同じか又は同様の要素を指す。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の第1の実施形態に係る超音波骨メスビットの斜視図である。
図2】本開示の第1の実施形態に係る超音波骨メスビットの正面図である。
図3図3Aは、本開示の第1の実施形態に係る超音波骨メスビットのメスビット端部部分の部分拡大正面図である。図3Bは、図3AのA-Aに沿った断面図である。図3Cは、図3AのB-Bに沿った断面図である。
図4】本開示の第2の実施形態に係る超音波骨メスビットの斜視図である。
図5】本開示の第2の実施形態に係る超音波骨メスビットの正面図である。
図6】本開示の第3の実施形態に係る超音波骨メスビットのメスビット端部部分の斜視図である。
図7】本開示の第3の実施形態に係る超音波骨メスビットのメスビット端部部分の正面図である。
図8】本開示の第4の実施形態に係る超音波骨メスビットのメスビット端部部分の斜視図である。
図9】本開示の第4の実施形態に係る超音波骨メスビットのメスビット端部部分の正面図である。
図10】本開示の第5の実施形態に係る超音波骨メスビットのメスビット端部部分の斜視図である。
図11】本開示の第6の実施形態に係る超音波骨メスビットの斜視図である。
図12】本開示に係るロボット支援超音波骨パワーシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
まず最初に、留意されるべきことは、超音波骨メスビットの基本構造、機能、及び、利点が、例として下で具体的に解説されるであろうが、説明全体が例証のためだけであり、本開示を限定するものと解釈されるべきではないということである。加えて、本開示の説明では、用語「上側」、「下側」、「前」、「後ろ」、「左」、「右」、「上部」、「内側」、「外側」、「縦の」、「横の」、「水平の」、「鉛直の」、「幅方向」、「長さ方向」、「厚さ方向」、等々によって示された配向又は位置関係は、添付の図面及び明細書に示された配向及び位置関係に基づいており、本開示の説明及び説明の簡略化の便宜のためだけであり、関連するデバイス又は構成要素が或る種の配向を有するか又は或る種の配向で構築及び動作されなければならないということを指定又は示唆するのではなく、従って、本開示を限定するものと解釈されるべきではない。更にまた、用語「第1の」及び「第2の」は、説明目的だけで使用されており、相対的重要性を指定又は示唆するものと解釈されるべきではない。更にまた、「扁平形状」は、「四角形状」や「シリンダ形状」などの比較的大きな厚さを有する形状とは異なったものを意味し、或る種の厚さを有することがある。「扁平」であることとは、「弧」などの一部の非平面的な構造とは異なることを意味し、完全に扁平であることを必要とされないことである。「遠位端部」及び「近位端部」は、超音波骨メスの操作機構に関連して定義され、「遠位端部」は、メスビットに近くで、操作機構から離れた端部を指し、「近位端部」は、操作機構に近くで、メスビットから離れた端部を指す。
【0011】
本開示は、添付の図面を参照して、特定の実施形態として、下で詳細に更に説明されるであろう。
図1図3Cは、本開示の第1の実施形態に係る超音波骨メスビットを示す。図1は、本開示の第1の実施形態に係る超音波骨メスビットの斜視図である。図2は、本開示の第1の実施形態に係る超音波骨メスビットの正面図である。図3Aは、本開示の第1の実施形態に係る超音波骨メスビットのメスビット端部部分の部分拡大正面図である。図1及び図2に示されたように、本開示の第1の実施形態に係る超音波骨メスビットは、メスビット端部部分1を含む。メスビット端部部分1は、扁平形状、具体的には、扁平シートや扁平ブロックの形状、或いは、扁平な六角形断面を備えた形状、好ましくは、刃部16で形成された扁平シートの形状であり、刃部16は、1対の平面を含み、それらは互いに略平行であるか又はメスビット端部部分1の幅方向に10度よりも大きくない夾角を形成する。或る夾角を備えた楔の形状を形成することは、冷却剤がメスビット端部部分1の遠位端部部分113に向けて刃部16に沿って流れるのを容易にし、更には十分な冷却を達成するのを容易にする。メスビット端部部分1は、カット中に骨などの組織に接触してカットするカット部11を備えて形成され、カット部11は、メスビット端部部分1の幅方向における刃部16の左側及び右側に、縦軸線A1に対して対称に配置される。カット部11は、幅方向の一方側に位置する第1の側面部分111と、幅方向の他方側に位置する第2の側面部分112と、メスビットの最端部に位置する遠位端部部分113と、を有する。好ましくは、メスビット端部部分1の幅方向における、第1の側面部分111と第2の側面部分112との間の距離は、遠位端部部分113に向けて減少する。
【0012】
メスビット端部部分1の幅方向両側がカット部11を具備するが故に、超音波骨メスは、メスビット端部部分1の幅方向の往復カット動作を実行できる。更に、幅方向におけるカット部11の第1の側面部分111と第2の側面部分112との間の距離が、遠位端部部分113に向けて減少するが故に、カット中、特に、縦カット中(即ち、カット方向は、刃部に略平行であり、縦軸線A1に垂直である)のメスビットに対する抵抗は小さい。更にまた、カット部11の第1の側面部分111及び第2の側面部分112が幅方向において対称であるが故に、手術ロボットの得意とする往復カット動作を実行する間、特に、メスビットがカットを実行するための計画経路に追従するのを求められるとき、高い繰り返し精度は、対称に配置された第1の側面部分111及び第2の側面部分112によって達成することができる。
【0013】
加えて、複数の突起12は、カット部11の遠位端部部分113の近くに形成されており、縦軸線A1に対してメスビット端部部分1の幅方向に、第1の側面部分111及び第2の側面部分112から外方に対称に突出する。好ましくは、突起12は、遠位端部部分113及び第1の側面部分111の接合部に位置する第1の突起121と、遠位端部部分113及び第2の側面部分112の接合部に位置する第2の突起122と、を含む。更に好ましくは、メスビット端部部分1の幅方向における突起12の最大幅は、メスビット端部部分の幅方向における超音波骨メスビットの組織接触部分のそれよりも大きいか又はそれに等しい。例えば、メスビット端部部分1全体が外科手術中にヒト組織に進入する可能性のある場合、メスビット端部部分1全体は、組織接触部分とみなされるであろう。このように、手術ロボットの得意とする鉛直カットの実行中に、突起12が、遠位端部部分113の近くに配置されて、幅方向に第1の側面部分111及び第2の側面部分112から外に突出するが故に、メスビットを冷却するための冷却剤は、メスビットの冷却効果を保証するように、メスビット端部部分1の刃部16に沿って突起12に最終到達するであろうし、メスビットとカットされるべき組織との接触面積は、より小さく、従って、組織内を移動するメスビットへの抵抗は、同じく減少するであろう。
【0014】
好ましくは、突起12は、フック形、台形、正方形、三角形、又は、円弧形状、或いは、それらの任意の組合せを有するように形成されることがある。加えて、メスビット端部部分1の近位端部に向けて窪み付けされる窪み13は、カット部11の遠位端部部分113に形成される。好ましくは、窪み13は、メスビット端部部分1の縦軸線A1に対して対称に設けられ、窪み13は、一定の又は傾斜した曲率半径を有する。手術ロボットの得意とする鉛直カット(即ち、そのカット方向がカットされるべき組織に略垂直である、即ち、そのカット方向が縦軸線A1に略平行であるカット)の実行中に、カット部11の遠位端部部分113の窪み付き構造に起因して、メスビットと、カットされるべき組織、特に、外側の皮質骨などの組織と、の間の接触面積は、減少され、適用される力は、より均一であり、それによって、より高いカット精度を保証し、同時に、カット効率を改善する。その上、窪み付き構造に起因して、或る種の空間は、遠位端部部分113とカットされるべき組織との間に形成され、冷却剤の流入と、組織破片の除去と、を更に容易にする。
【0015】
好ましくは、遠位端部部分113の一方側に位置する第1の突起121と、遠位端部部分113の中央に位置する窪み13と、遠位端部部分113の他方側に位置する第2の突起122とは、遠位端部部分113に滑らかに連続的に形成される。即ち、第1の突起121及び窪み13によって構成された第1の角部と、第2の突起122及び窪み13によって構成された第2の角部とは、それぞれメスビット端部部分1の遠位端部の左側と右側に形成され、第1の角部、第2の角部及び窪み13は、滑らかに一体的に形成される。これは、冷却剤の高速の流入を更に容易にする。そういうことで、可能であることは、メスビット端部部分1の製造上の困難性を低減し、コストを節約し、同時に、カット精度を保証して冷却効果を改善することである。
【0016】
加えて、好ましくは、カット部11は、歯付き構造14を具備する。更に好ましくは、歯付き構造14は、鋭利な歯付き構造に形成されることがあり、又は、矩形の歯付き構造に形成されることがあり、或いは、フック形状の歯に形成されることなどもある。歯付き構造14が形成される場合に、可能であることは、カット中にメスビットの滑りを防止し、カット部とカットされるべき組織との間の接触面積を更に低減することである。歯付き構造14は、カット部11の第1の側面部分111及び第2の側面部分112だけに配置されることがあり、又は、カット部11の遠位端部部分113だけに配置されることがあり、更に好ましくは、歯付き構造14は、カット部11の全体に亘って配置されることがある。
【0017】
加えて、好ましくは、カット部11は、第1の側面部分111、第2の側面部分112、遠位端部部分113、及び、突起12のうちの少なくとも1つの少なくとも一部の厚さが、メスビット端部部分1の、それに隣接する非カット部、例えば、刃部16の厚さよりも大きくなるように、形成されることがある。好ましくは、図3B及び図3Cに示されたように、第1の側面部分111、第2の側面部分112、遠位端部部分113、及び、突起12の厚さは、それに隣接する非カット部の厚さよりも全て大きい。更に好ましくは、カット部11の厚さは、超音波骨メスビットの組織接触部分の最大厚さよりも大きいか又はそれに等しい。代替的に、カット部11の第1の側面部分111、第2の側面部分112、遠位端部部分113、及び、突起12のうちの少なくとも1つは、交互に配置されて厚さの異なる第1の厚さ部分及び第2の厚さ部分を有し、第1の厚さ部分の厚さは、第2の厚さ部分の厚さよりも大きく、第2の厚さ部分の厚さは、メスビット端部部分の、カット部に隣接する非カット部の厚さよりも大きい。一方では、第1の厚さ部分及び第2の厚さ部分は、交互に配置されて厚さが異なっているが、冷却液の通過用のチャネルを形成し、従って、冷却液は、冷却効果を改善するように、カットされる組織に直接案内される場合がある。他方では、交互に配置されて厚さの異なる第1の厚さ部分及び第2の厚さ部分は、カット中に発生する骨破片の通過用のチャネルも形成し、従って、骨破片は、より円滑に排出することができ、それによって、カット効率とカット精度が向上する。
【0018】
カット部11が比較的大きい厚さを有するが故に、カット部11の第1の側面部分111、第2の側面部分112、窪み13及び突起12のうちの少なくとも1つは、厚さにおいて、刃部16とは異なる。斯くして、刃部16及びカット部11は、厚さ方向において、高度差を有する構造を形成する。従って、カット中に、特に、鉛直カット中に、冷却剤は、刃部16に沿ってカット部11に最終案内され、次いで、カットされるべき組織に向けて流れて、冷却効果を保証するのに有益である。その上、カット部の厚さが、超音波骨メスビットの組織接触部分の最大厚さよりも大きいか又はそれに等しいが故に、このケースでは、メスビットとカットされるべき組織との接触面積は、より小さく、組織内を移動するメスビットに対する抵抗は、減少する。
【0019】
加えて、第1の実施形態に係る超音波骨メスビットは、更にメスロッド2を含むことがある。メスロッド2は、メスビット端部部分1に前で連結され、超音波骨メスの他の部分(メスボディ3や超音波デバイス等々など)に連結された連結機構を後ろに具備する。超音波骨メスビットは、一体構造を有することがあり、或いは、分割タイプの組立て構造を有することがある。代替的に、超音波骨メスビットは、メスロッド2を有しないこともあり、従って、メスビット端部部分1は、ねじ式連結、スナップ嵌合、クランプ等々を含むことがある連結様式で、超音波骨メスの他の部分に直接連結される。
【0020】
図4及び図5は、本開示の第2の実施形態に係る超音波骨メスビットを示す。図面に示されたように、本開示の第2の実施形態に係る超音波骨メスビットは、本開示の第1の実施形態に係る超音波骨メスビットと実質上同じであり、除外されるのは、メスビット端部部分1のカット部11が、ローレット付き構造14’を具備することである。好ましくは、ローレット付き構造14’は、メスビット端部部分1の遠位端部やカット部11の全体に亘って配置されることがある。その上、ローレット付き構造14’は、歯付き構造14と共に、カット部11の異なった部位に配置されることがある。歯付き構造14と同様に、ローレット付き構造14’は、カット中の滑りを防止でき、また、カットされるべき組織に対するメスビット端部部分1の接触面積を低減でき、それによって、カット効率を改善する。更にまた、ローレット付き構造14’は、加工が容易でもある。
【0021】
図6及び図7は、本開示の第3の実施形態に係る超音波骨メスビットを示し、図8及び図9は、本開示の第4の実施形態に係る超音波骨メスビットを示す。本発明の第1の実施形態に係る超音波骨メスビットと比較して、本開示の第3の実施形態に係る超音波骨メスビットは、冷却剤を更に円滑に案内するように、液体をカット部11に案内するためにメスビットに形成された少なくとも1つの案内溝を具備する。図6図9は、案内溝151を示す。案内溝151は、少なくとも一方側で、カット部11から刃部16まで延びる。このように、超音波骨メスビットがカット、特に、鉛直カットを実行するとき、超音波骨メスの他の機構からの冷却剤は、刃部16に重力作用の下で流れ、次いで、案内溝151に案内され、最後に、案内溝151に沿ってカット部11に向けて流れる。従って、冷却剤の流れ経路は、最適化され、メスビットのための冷却効果を更に保証する。第4の実施形態は、第3の実施形態と実質上同じであり、除外されるのは、メスビット端部部分1のカット部11が、ローレット付き構造14’を具備することである。
【0022】
代替的に、案内溝151は、溝の構造を有することがあり、カット部11だけに形成されて、刃部16に連結される。換言すると、溝を刃部16に形成することは、必要でないが、刃部16まで延びる案内溝151だけは、カット部11に形成され、従って、液体案内機能は、カット部11と、カット部11の案内溝151の底部と、案内溝151に連結された刃部16の部分と、の間の厚さ方向の高度差を用いて達成される。このように、案内溝151は、液体案内効果を達成しながら、加工の単純化及びコスト低減のために、溝付き構造を刃部16に別に形成することなく、形成される場合がある。理解されるべきことは、冷却液を案内する機能に加えて、上で説明された案内溝151が、カット中に生成された骨破片を、カットされている部分から刃部16まで、案内することもできることであり、従って、骨破片は、冷却液によって洗い流すことや追加で準備した吸引デバイスを用いて引き出すことができ、それによって、カット効率とカット精度を改善する。
【0023】
加えて、超音波骨メスビットは、メスビット端部部分を厚さ方向に貫通する貫通穴154が形成される場合もあり、貫通穴154は、案内溝151の溝部分やその側面に位置することがある。図6図9に示されたように、冷却剤が案内溝151に沿って流れるとき、冷却剤は、案内溝151からカット部11まで延びる貫通穴154を介して流れ出て、カットされるべき組織に直接到達する場合があり、それによって、冷却剤の流れを更に強化し、冷却効果を強化し、組織破片の排出も容易にする。
【0024】
図10は、本開示の第5の実施形態に係る超音波骨メスビットのメスビット端部部分の斜視図である。本開示の第5の実施形態に係る超音波骨メスビットは、本開示の第1の実施形態から第4の実施形態に係る超音波骨メスビットと実質上同じであり、除外されるのは、メスビット端部部分1に配置された案内溝152の特定の構造である。具体的には、ガイド溝152は、刃部16に配置され、カット部11の第1の側面部分111、第2の側面部分112、窪み13及び突起12まで延びている。刃部16に溝部分を設けることは、冷却剤が、より迅速に特定の経路に沿ってカット部11の対応する部分まで案内されるのを可能にし、案内溝152を介して冷却剤をカット部11の複数の異なった位置に案内するためであり、それによって、冷却効果を更に保証する。刃部16の溝部分は、溝付けやローレット加工によって形成される場合がある。
【0025】
図11は、本開示の第6の実施形態に係る超音波骨メスビットを示し、図11は、本開示の第6の実施形態に係る超音波骨メスビットの構造を示す斜視図である。第6の実施形態に係る超音波骨メスビットは、メスビット端部部分1が或る種の厚さを有する構造体を有するように形成され、メスビット端部部分1は、メスビット端部部分1の長さ方向に遠位端部部分113まで延びる液流穴153を内部に備えて形成される。液流穴153は、カットされるべき組織を冷却するために冷却剤を案内するだけでない場合があり、カットされるべき組織の組織破片は、液流穴を通して引き出される場合もある。
【0026】
上で説明された実施形態に係る超音波骨メスビットを使用することによって、手術ロボットの不撓性に起因する課題は、回避することができ、手術ロボットの利点は、速度、力制御、及び、繰り返し精度制御の観点から、十分に活用され、これは、手術の効率を改善し、冷却効果を更に改善できる。
【0027】
本開示は、更にロボット支援超音波骨パワーシステムを提供する。図12に示されたように、ロボット支援超音波骨パワーシステムは、電気エネルギを機械エネルギに変換するための超音波変換器と、機械エネルギをカットされるべき骨に伝達するための超音波骨メス100と、外科手術を支援するためのロボット支援手術システム200と、を含み、ロボット支援超音波骨パワーシステムの超音波骨メスは、本開示の上の実施形態のいずれか1つに係る超音波骨メスビットを使用する。
【0028】
本開示の実施形態や例は、図面を参照して説明されてきたが、理解されるべきことは、上で説明された方法、システム及びデバイスが、例示的な実施形態や例に過ぎないこと、そして、本開示の範囲が、実施形態や例によって制限されず、許可された特許請求の範囲やその等価物の範囲だけによって定義されること、である。実施形態や例における様々な要素は、省略されるか又はそれの等価な要素によって置き換えられることがある。更に、上の実施形態、例及びその中の様々な重要な要素は、特定の構造によって様々なやり方で適切に組合せすることができる。重要なことは、技術が進化するので、本明細書で説明された多くの要素が、本開示の後に登場する等価な要素で置き換えできる、ということである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12