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特許6995406AXLベースの癌患者スクリーニング方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-17
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】AXLベースの癌患者スクリーニング方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/483 20060101AFI20220106BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20220106BHJP
   G01N 33/15 20060101ALI20220106BHJP
   G01N 33/536 20060101ALI20220106BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20220106BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
G01N33/483 C
G01N33/50 Z
G01N33/15 Z
G01N33/536 D
G01N33/574 D
C12Q1/02
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020512655
(86)(22)【出願日】2018-07-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-12
(86)【国際出願番号】 KR2018008049
(87)【国際公開番号】W WO2019050150
(87)【国際公開日】2019-03-14
【審査請求日】2020-03-02
(31)【優先権主張番号】10-2017-0113301
(32)【優先日】2017-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520029457
【氏名又は名称】サイトジェン インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】CYTOGEN, INC.
【住所又は居所原語表記】(Moonjung-dong,Moonjung SK V1 GL Metrocity) A-8,128,Beobwon-ro Songpa-gu Seoul 05839,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、ビョン ヒ
【審査官】海野 佳子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0369804(US,A1)
【文献】国際公開第2015/127008(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0038724(KR,A)
【文献】米国特許第09739783(US,B1)
【文献】Floriana Morgan et al.,Mechanisms of resistance to EGFR-targeted drugs: lung cancer,ESMO Open cancer Horizons ,2016年,vol.1,No.3 ,e000060(PP.1-9)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
EGFR治療剤を与えた履歴がある癌患者から血液を取得するステップと、
バイオチップを用いて、前記血液から血中循環癌細胞を分離するステップと、
前記分離された血中循環癌細胞を、血中循環癌細胞に特異的に結合する蛍光マーカーおよびAXLに特異的に結合する蛍光マーカーと反応させるステップと、
前記蛍光マーカーと反応させた血中循環癌細胞およびAXLを対象として、複数の波長範囲のそれぞれに対する光学画像を受信するステップと、
前記複数の波長範囲の全体または一部の光学画像において、前記血中循環癌細胞および前記AXLの蛍光強度を測定し、第1フィルタ処理を行うステップと、
前記複数の波長範囲の全体または一部の光学画像において、前記血中循環癌細胞のモルフォロジー(morphology)を測定し、第2フィルタ処理を行うステップと、
前記複数の波長範囲のそれぞれに対する光学画像の全体または一部をマージした統合画像において、前記血中循環癌細胞のモルフォロジーを測定し、第3フィルタ処理を行うステップと、を含み、
AXL発現が増加した血中循環癌細胞が検知されれば、前記癌患者は、EGFR獲得耐性を有する癌患者であると評価する
ことを特徴とする癌患者スクリーニング方法。
【請求項2】
前記血中循環癌細胞に特異的に結合する蛍光マーカーは、ビメンチン(vimentin)に特異的な抗体、上皮細胞接着分子(EpCAM:Epithelial cell adhesion molecule)に特異的な抗体およびサイトケラチン(CK:cytokeratin)に特異的な抗体からなる群から選択される少なくとも1つである
請求項1に記載の癌患者スクリーニング方法。
【請求項3】
前記光学画像を受信するステップにおいて、前記複数の波長範囲の光学画像は、青色の波長範囲の画像、緑色の波長範囲の画像、及び赤色の波長範囲の画像を含む
請求項1に記載の癌患者スクリーニング方法。
【請求項4】
前記青色の波長範囲の画像において、前記第1フィルタ処理を行うステップおよび前記第2フィルタ処理を行うステップを実行して、血中循環癌細胞の細胞核を判別する
請求項3に記載の癌患者スクリーニング方法。
【請求項5】
前記緑色の波長範囲の画像および前記赤色の波長範囲の画像のうちの1つ以上の画像において、前記第1フィルタ処理を行うステップを実行して、血中循環癌細胞の細胞膜を判別する
請求項3に記載の癌患者スクリーニング方法。
【請求項6】
前記血中循環癌細胞のモルフォロジーは、細胞の面積、細胞の大きさ、および真円度(circularity)のうちの1つ以上を含む
請求項1に記載の癌患者スクリーニング方法。
【請求項7】
前記第1フィルタ処理を行うステップは、
前記複数の波長範囲の全体または一部の光学画像から血中循環癌細胞の大きさを測定するステップと、
前記測定された血中循環癌細胞の大きさよりも所定の割合または量だけ大きい多角形または円形からなる領域を設定し、前記領域内で血中循環癌細胞の蛍光強度を測定し、第1フィルタ処理を行うステップと、を含む
請求項1に記載の癌患者スクリーニング方法。
【請求項8】
前記癌は、肺癌、乳癌、骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、大腸癌、食道腺癌、胃癌、卵巣癌、肝臓癌、前立腺癌、膵臓癌、甲状腺癌、神経膠腫、腎臓癌、黒色種、悪性胸膜中皮腫、扁平上皮癌および子宮内膜癌からなる群から選択される少なくとも一つである
請求項1に記載の癌患者スクリーニング方法。
【請求項9】
前記癌は、肺癌である
請求項1に記載の癌患者スクリーニング方法。
【請求項10】
前記癌は、非小細胞肺癌である
請求項1に記載の癌患者スクリーニング方法。
【請求項11】
前記血中循環癌細胞を分離するステップは、大気圧1000~1020hPa下で行われる
請求項1に記載の癌患者スクリーニング方法。
【請求項12】
前記バイオチップは、BSA溶液でコーティングされた高密度マイクロチップである
請求項1に記載の癌患者スクリーニング方法。
【請求項13】
前記高密度マイクロチップは、サイズ特異性を有する
請求項12に記載の癌患者スクリーニング方法。
【請求項14】
前記BSA溶液のコーティングは、0.05~0.15%の濃度で行われる
請求項12に記載の癌患者スクリーニング方法。
【請求項15】
前記バイオチップを用いて分離された血中循環癌細胞をインスリン、トランスフェリン、EGF、およびROCK阻害剤を含む培地で培養するステップをさらに含む
請求項1に記載の癌患者スクリーニング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌患者スクリーニング方法に係り、さらに詳しくは、血中循環癌細胞を用いて、AXLおよび血中循環癌細胞の光学画像分析による癌患者スクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
肺癌は、韓国だけでなく全世界的に癌の死亡率の1位を占めており、毎年約120万人の患者が肺癌で死亡している(非特許文献1)。非小細胞肺癌は、全体肺癌の約80%を占めており、一部の患者のみ手術で完治を期待することができ、ほとんどの患者は、診断時に局所進行性または転移性の病期で発見される。悪性胸膜滲出または心嚢液を伴うか転移性病期を持つ患者には、プラチナ(platinum)ベースの抗癌化学療法による1年生存率が約30~40%に向上したが、中央生存率は未だに10ヶ月に過ぎない(非特許文献2)。最近では非小細胞肺癌にも分子標的治療薬が多く使われているが、いくつかのシグナル伝達経路のうち、上皮成長因子受容体(EGFR:Epidermal growth factor receptor)と血管内皮増殖因子(VEGF:Vascular endothelial growth factor)が最も重要な経路であり、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤(EGFR-TKI:EGFR tyrosine kinase inhibitors)であるゲフィチニブ(gefitinib)とエルロチニブ(erlotinib)は、すでに臨床で汎用されており、これらの薬剤は、EGFR変異(EGFR mutation)又は一部の特徴的な臨床症状を有する患者に非常に効果的な結果をもたらすと言われている。
【0003】
しかし、EGFR-TKIが臨床に導入されてから間もない現時点で、残念ながらEGFR-TKIの劇的な反応を見せた患者を含むほとんどの患者で、最終的には再発が発生すると言われている。最近exon 20の2次突然変異(T790M)が発生してゲフィチニブ(gefitinib)やエルロチニブ(erlotinib)に対する耐性が獲得されるという事実が明らかになったが、この突然変異は、薬物がATP結合ポケット(ATP-binding pocket)での水素結合を決定的に妨害するものと推測されている。このような標的治療剤EGFR-TKIに対する獲得耐性に関連して、AXLがEGFR-TKIに対する獲得耐性に非常に重要な役割をするだけでなく、治療後の予後不良にも深く関与するという報告が続いている。様々な固形癌は、特に非小細胞肺癌にAXLが過発現/過活性化されており、獲得耐性におけるAXLの重要性が極めて高くなるにつれて、AXLを効果的に阻害することが重要な課題となっている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Parkin DM、Bray F、Ferlay J、Pisani P. Global cancer statistics,2002 CA Cancer J Clin 55:74-108,2005
【文献】Schiller JH,Harrington D,Belani CP,Langer C,Sandler A,Krook J,Zhu J,Johnson DH.Comparison of four chemotherapy regimens for advanced non-small-cell lung cancer.N Engl J Med 346:92-98、2002
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
患者の治療と予防の面では、癌治療剤に反応する患者または反応するような患者を識別することが、癌、特に肺癌の効果的な治療のための目標になり得る。肺癌は、血清肺癌特異抗原検査、超音波検査、組織生検などの方法を用いて診断でき、前記AXLの発現パターンは、組織生検で確認できる。しかしながら、組織生検の場合、患者からの反復採取が困難であり、患者に肉体的負担を与えるおそれがある。このため、患者の負担を軽減するとともに、AXLを確認できる技術が求められているのが現状である。
【0006】
本発明の目的は、血中循環癌細胞で発現するAXLを光学画像分析により検出し、これにより癌患者をスクリーニングする方法を提供することである。
【0007】
本発明が解決しようとする技術的課題は、上述した技術的課題に何ら制限されるものではなく、未言及の他の技術的課題は、次の記載から本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者にとって明らかに理解できる筈である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記技術的課題を達成するために、本発明の一側面による癌患者スクリーニング方法は、
癌患者から血液を取得するステップと、
バイオチップを用いて、前記血液から血中循環癌細胞を分離するステップと、
前記分離された血中循環癌細胞を、血中循環癌細胞に特異的に結合する蛍光マーカーおよびAXLに特異的に結合する蛍光マーカーと反応させるステップと、
前記蛍光マーカーと反応させた血中循環癌細胞およびAXLを対象として、複数の波長範囲のそれぞれに対する光学画像を受信するステップと、
前記複数の波長範囲の全体または一部の光学画像において、前記血中循環癌細胞および前記AXLの蛍光強度を測定し、第1フィルタ処理を行うステップと、
前記複数の波長範囲の全体または一部の光学画像において、前記血中循環癌細胞のモルフォロジー(morphology)を測定し、第2フィルタ処理を行うステップと、
前記複数の波長範囲のそれぞれに対する光学画像の全体または一部をマージした統合画像において、前記血中循環癌細胞のモルフォロジーを測定し、第3フィルタ処理を行うステップと、
を含んでいてもよい。
【0009】
本発明の実施例において、前記血中循環癌細胞に特異的に結合する蛍光マーカーは、ビメンチン(vimentin)に特異的な抗体、上皮細胞接着分子(EpCAM:Epithelial cell adhesion molecule)に特異的な抗体およびサイトケラチン(CK:cytokeratin)に特異的な抗体からなる群から選択される少なくとも1つであってもよい。
【0010】
本発明の実施例において、前記光学画像を受信するステップにおいて、前記複数の波長範囲の光学画像は、青色の波長範囲の画像、緑色の波長範囲の画像、及び赤色の波長範囲の画像を含んでいてもよい。
【0011】
本発明の実施例において、前記青色の波長範囲の画像において、前記第1フィルタ処理を行うステップおよび前記第2フィルタ処理を行うステップを実行して、血中循環癌細胞の細胞核を判別してもよい。
【0012】
本発明の実施例において、前記緑色の波長範囲の画像および前記赤色の波長範囲の画像のうちの1つ以上の画像において、前記第1フィルタ処理を行うステップを実行して、血中循環癌細胞の細胞膜を判別してもよい。
【0013】
本発明の実施例において、前記血中循環癌細胞のモルフォロジーは、細胞の面積、細胞の大きさ、および真円度(circularity)のうちの1つ以上を含んでいてもよい。
【0014】
本発明の実施例において、前記第1フィルタ処理を行うステップは、
前記複数の波長範囲の全体または一部の光学画像から血中循環癌細胞の大きさを測定するステップと、
前記測定された血中循環癌細胞の大きさよりも所定の割合または量だけ大きい多角形または円形からなる領域を設定し、前記領域内で血中循環癌細胞の蛍光強度を測定し、第1フィルタ処理を行うステップと、を含んでいてもよい。
【0015】
本発明の実施例において、前記癌は、肺癌、乳癌、骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、大腸癌、食道腺癌、胃癌、卵巣癌、肝臓癌、前立腺癌、膵臓癌、甲状腺癌、神経膠腫、腎臓癌、黒色種、悪性胸膜中皮腫、扁平上皮癌および子宮内膜癌からなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。
【0016】
本発明の実施例において、前記癌は、肺癌であってもよい。
【0017】
本発明の実施例において、前記癌は、非小細胞肺癌であってもよい。
【0018】
本発明の実施例において、前記癌は、EGFR治療剤に対して獲得耐性を有してもよい。
【0019】
本発明の実施例において、前記血中循環癌細胞を分離するステップは、大気圧1000~1020hPa下で行われてもよい。
【0020】
本発明の実施例において、前記バイオチップは、BSA溶液でコーティングされた高密度マイクロチップであってもよい。
【0021】
本発明の実施例において、前記高密度マイクロチップは、サイズ特異性を有してもよい。
【0022】
本発明の実施例において、前記BSA溶液のコーティングは、0.05~0.15%の濃度で行われてもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明の実施例によれば、血中循環癌細胞で発現されるAXLの画像分析により、EGFR-TKIに耐性を有する肺癌患者を判別することができる。
【0024】
本発明の効果は、前述した効果に限定されるものではなく、本発明の詳細な説明の欄または特許請求の範囲に記載の発明の構成から推論可能なあらゆる効果を含むものと理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】血中循環癌細胞を分離する過程を示す説明図
図2】高密度マイクロチップによって分離された血中循環癌細胞を撮影した写真
図3】本発明による培養液で培養された血中循環癌細胞の成長と分裂、および一般的な培養液で培養された血中循環癌細胞の成長と分裂について示すグラフ
図4】本発明による培養液を用いて、本発明で使用されるハイドロゲルコーティングされた培養プレートで培養された血中循環癌細胞の成長と分裂、および一般的な培養プレートで培養された血中循環癌細胞の成長と分裂について示すグラフ
図5】青、緑および赤の波長範囲における血中循環癌細胞の光学画像のサンプル写真
図6図5に示す血中循環癌細胞の光学画像をマージした統合画像写真
図7】種々の蛍光色素またはマーカーが結合した血中循環癌細胞の形状および蛍光強度の測定結果を示す説明図
図8】光学的血中循環癌細胞の識別方法を実現したプログラムの駆動例の説明図
図9】癌細胞株および白血球spike-inスライドを使用した、血中循環癌細胞のDAPI、EpCAM、pan-CK、AXL及びCD45に対する免疫蛍光画像
図10】癌患者のサンプルにおける血中循環癌細胞のDAPI、EpCAM、pan-CK、AXL及びCD45に対する免疫蛍光画像
図11】AXLの蛍光強度の陰性細胞に比べて3倍以上を基準に分析するとき、抗癌剤耐性患者(Relapsed after TKI treatment:TKI治療後に再発)と対照群患者との間のAXL陽性の血中循環癌細胞の検出率を比較した分析例の説明図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように、本発明の実施例について詳細に説明する。しかしながら、本発明は、種々の異なる形態に具現化でき、ここで説明する実施例に限定されるものではない。
【0027】
実施例1:高密度マイクロチップの製造
実験で使用されている高密度マイクロチップは、気孔径(pore-size)が5.5~8.5μmであるため、5.5μmよりも小さい白血球(WBC:white blood cell)および赤血球(RBC:red blood cell)の場合、チップを通過させて除去し、5.5μmよりも大きい標的細胞の場合、チップを通過させないようにすることで、特定のサイズを選択的に回収できるように考案したマイクロチップである。
【0028】
ちなみに、高密度マイクロチップの細胞回収率を確認するために、癌患者の癌細胞を10個、100個、1000個スパイク(spiking)して、それをチップに通過させて、チップ上の癌細胞の回収率を調べる実験を行った。その結果を下記表1に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
チップの細胞回収率を計算した結果、約80%以上の高い細胞回収率を示し、回収された細胞が癌細胞であることを再び確認するために、従来の癌検定で使われているCK抗体を染色して確認した結果、いずれもCK陽性癌細胞であることが確認された。
【0031】
実施例2:血中循環癌細胞(CTC)の分離過程
1.血液5mlに抗体重合体250μlを入れ、3秒程度混合した後、常温で20分間反応させる。
2.1%FBSを含むPBS5mlを加える。
3.Ficoll溶液15mlが入っている50mlチューブ(tube)に反応溶液10mlを注意深く入れる。
4.溶液を1200gで20分間遠心分離し、血球細胞を1次的に除去する。
5.不要な細胞吸着を防止するために、高密度マイクロチップ(HD Microporous chip、濾過網)を0.1%BSA溶液で10分間処理してコーティングした後、PBSでリンスする。
6.Ficollの上層溶液を濾過網上に置き、微量に存在する赤血球を重力濾過して、高純度の血中循環癌細胞を2次的に分離する。これにより、遠心分離や免疫ビーズ(immunobead)などの処理を行わないことにより、血中循環癌細胞の損傷を防ぐ。
7.分離された血中循環癌細胞は染色により同定される。
【0032】
実施例3.分離された血中循環癌細胞の短期培養
本発明による高密度マイクロチップにより分離された血中循環癌細胞を、中性電荷を有する親水性ハイドロゲルでコーティングされた超低付着(Ultra low attachment)培養プレートに播種した。前記培養プレートには、11ng/mlのインスリン、22ng/mlのトランスフェリン、2ng/mlのEGFおよび8μMのROCK阻害剤を含む培養液が含まれており、前記短期培養は、培養した時点から14日間、細胞培養インキュベーターで37℃および5~10%COの条件下で行われた。
【0033】
実施例4.血中循環癌細胞の確認
前記実施例3により短期培養された血中循環癌細胞が染色法により癌細胞であることを確認するために、下記の方法を用いて細胞染色工程を行う。
【0034】
1.細胞遠心分離法であるサイトスピン(cytospin)工程を行い、回収した細胞を染色用スライドに固定する。
2.抗体が細胞内に入ることができるように、透過(permeabilization)工程を行う。
3.PBSで洗浄(washing)工程を行う。
4.PBSを用いて1%BSA(bovine serum albumin:ウシ血清アルブミン)を得、非特異的結合(non-specific binding)および内因性ペルオキシダーゼ活性(endogenous peroxidase activity)を低下させるために、ブロッキング(blocking)工程を行う。
5.1次抗体としてのEpCAM(上皮細胞接着分子;EpCAM-488(マウス)(カタログ番号5198S、セル・シグナリング・テクノロジー))、CK(サイトケラチン;Pan CK-488(マウス)(カタログ番号4523S、セル・シグナリング・テクノロジー))、ビメンチン(ビメンチン-488(ウサギ)(カタログ番号9854S、セル・シグナリング・テクノロジー))及びCD(cluster of differentiation:分化抗原群)45(マウス、カタログ番号M0701、ダコ)を、常温で60分間反応させる。
6.前記1次抗体に結合する蛍光標識された二次抗体を、室温で60分間反応させる。
7.PBSで洗浄工程を行う。
8.最後に、細胞核を染色するために、4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI:4’,6-diamidino-2-phenylindole)溶液を入れた後、ガラスカバーを覆い、常温で10分間反応させる。
9.染色された細胞を観察しながら、染色率および回収率をマニュアルで計算する。
【0035】
実施例5.血中循環癌細胞およびAXL蛍光画像分析
1.前記実施例4で蛍光標識された血中循環癌細胞を準備する。
2.AXLに特異的な1次抗体(ウサギ、カタログ番号8661S、セル・シグナリング・テクノロジー)を、前記実施例4で蛍光標識された血中循環癌細胞と反応させた後、2次抗体(Alexa546(ウサギ、カタログ番号A11010、インビトロジェン))を反応させてAXLを蛍光標識する。
3.前記反応後の血中循環癌細胞をスライドにロードした後、前記スライドをSmartBiopsy Cell Image Analyzer(CIA 020)のプラットフォーム上に置く。
4.複数の波長範囲を設定して画像を撮影した後、蛍光強度の測定を行う。
5.複数の波長範囲で前記蛍光強度を測定する場合、血中循環癌細胞およびAXLの蛍光波長を測定して第1フィルタ処理を行う。
6.前記第1フィルタ処理により血中循環癌細胞の細胞核および細胞膜に対して、蛍光マーカー(DAPI、EpCAM、CK、CD45)の蛍光波長(青、緑、赤)を測定する。
7.前記測定された蛍光の波長において、再び血中循環癌細胞を標識した蛍光物質の波長に対して、血中循環癌細胞の面積、細胞の大きさ及び円形度(circularity)を測定する第2フィルタ処理を行う。
8.前記第2フィルタ処理は、前記第1フィルタ処理された画像から血中循環癌細胞の細胞核をさらに測定および分析し、CD45(赤色)で染色された細胞を除く工程を行うことを含む。
9.前記第1フィルタ処理画像及び第2フィルタ処理画像を全体として統合した後、再び血中循環癌細胞の面積、細胞の大きさおよび円形度(circularity)を測定および分析する第3フィルタ処理を行う。
10.各蛍光波長の強度を測定し、これを数値化する。
【0036】
比較例1.培養液による血中循環癌細胞の培養された細胞数の変化
一般に、細胞培養に使用される細胞培養液および本発明による培養液における血中循環癌細胞の分裂および成長の度合いを比較実験した。一般に、細胞培養に使用される培養液は、25nM亜セレン酸ナトリウム、50nMヒドロコルチゾン、0.01mMエタノールアミン、0.01mMホスホリルエタノールアミン、100pMトリヨードサイロニン、0.5%(w/v)ウシ血清アルブミン、10mMHEPES、0.5mMピルビン酸ナトリウム、4.5mM L-グルタミンおよび1X抗生物質(antibiotic)-抗真菌剤(antimycotic)を含み、本発明による培養液は、前記実施例3と同様である。また、培養条件は、一般的なプレートを用いたことを除いては、実施例3と同様である。
【0037】
図3に示すように、CD45-は、培養される血中循環癌細胞のバイオマーカーであり、Normal growth media(通常の成長培地)は一般的な細胞培養液を意味し、CG growth media(CG成長培地)は本発明による培養液を意味する。図3は、本発明による培養液で培養された血中循環癌細胞がより多いことを示し、これは、一般的な培養液よりも本発明による培養液の方が、血中循環癌細胞の分裂および培養においてより効果的であることを示す。
【0038】
上述した本発明の説明は、単なる例示のためのものであり、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的な思想や必須的な特徴を変更することなく、他の具体的な形態へと容易に変形できることが理解できる筈である。よって、上述した実施例は、あらゆる面において例示的なものに過ぎず、限定的ではないものと理解すべきである。例えば、単一型であると説明されている各構成要素は、分散されて実施されてもよく、同様に、分散されていると説明されている構成要素もまた、組み合わせられた形態に実施されてもよい。
【0039】
本発明の範囲は、後述する特許請求の範囲によって表わされ、特許請求の範囲の意味及び範囲、並びにその均等概念から導き出されるあらゆる変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれるものと解釈されるべきである。
【0040】
以下では、添付図面に基づいて、本発明を詳しく説明する。しかしながら、本発明は、種々の異なる形態に具現化可能であり、したがって、ここで説明する実施例に限定されるものではない。また、図中、本発明を明確に説明するために、説明とは無関係な部分は省略し、明細書の全般に亘って、類似の部分には類似の図面符号を付している。
【0041】
明細書の全般に亘って、ある部分が他の部分と「連結(接続、接触、結合)」されているとしたとき、これは、「直接的に連結(接続、接触、結合)」されている場合のみならず、これらの間に他の部材を挟んで「間接的に連結(接続、接触、結合)」されている場合も含む。なお、ある部分がある構成要素を「含む」としたとき、これは、特に断りのない限り、他の構成要素を除外するわけではなく、他の構成要素をさらに備えていてもよいことを意味する。
【0042】
本明細書において用いた用語は、単に特定の実施例を説明するために用いられたものであり、本発明を限定しようとする意図はない。単数の表現は、文脈からみて明らかに他の意味を有さない限り、複数の言い回しを含む。本明細書において、「含む」または「有する」などの用語は、明細書に記載の特徴、数字、ステップ、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定するものに過ぎず、1つまたはそれ以上の他の特徴や数字、ステップ、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものの存在または付加の可能性を予め排除しないものと理解すべきである。
【0043】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施例を詳しく説明する。
【0044】
本発明の一側面による癌患者スクリーニング方法は、(a)癌患者から血液を取得するステップと、(b)バイオチップを用いて、前記血液から血中循環癌細胞を分離するステップと、(c)血中循環癌細胞に特異的に結合する蛍光マーカーおよびAXLに特異的に結合する蛍光マーカーと反応させるステップと、(d)前記蛍光マーカーと反応させた血中循環癌細胞およびAXLを対象として、複数の波長範囲のそれぞれに対する光学画像を受信するステップと、(e)前記複数の波長範囲の全体または一部の光学画像から、前記血中循環癌細胞および前記AXLの蛍光強度を測定し、第1フィルタ処理を行うステップと、(f)前記複数の波長範囲の全体または一部の光学画像から、前記血中循環癌細胞のモルフォロジー(morphology)を測定し、第2フィルタ処理を行うステップと、(g)前記複数の波長範囲のそれぞれの光学画像の全体または一部をマージした統合画像から、前記血中循環癌細胞のモルフォロジーを測定し、第3フィルタ処理を行うステップと、を含んでいてもよい。
【0045】
前記血中循環癌細胞(Circulating Tumor Cells、CTC)とは、悪性腫瘍の患者の末梢血に見られる腫瘍細胞を意味する。血中循環癌細胞は非常にまれであり、入手できる標本の量が非常に制限される。血中循環癌細胞の検出および特性解析における技術は、複数の逆転写定量ポリメラーゼ連鎖反応の方法、イメージングベースのアプローチ、および精密ろ過法、ならびにマイクロチップデバイスを含み、これらに限定されない。血中循環癌細胞は、液体生検検体によりパーソナライズされた治療と治療後の経過観察を必然的に提供できる腫瘍の生物学的マーカーとして機能することができる。また、血中循環癌細胞は、腫瘍の生物学的特性および腫瘍細胞の播種を理解するための標的として使用できるが、これらに限定されない。本発明の一実施例によれば、前記癌は、肺癌、乳癌、骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、大腸癌、食道腺癌、胃癌、卵巣癌、肝臓癌、前立腺癌、膵臓癌、甲状腺癌、神経膠腫、腎臓癌、黒色種、悪性胸膜中皮腫、扁平上皮癌および子宮内膜癌からなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。本発明の他の実施例によれば、前記血中循環癌細胞は肺癌由来の細胞であってもよい。本発明の好適な一実施例によれば、前記血中循環癌細胞は非小細胞肺癌由来の細胞であってもよい。
【0046】
前記バイオチップとは、半導体などの無機物からなる固体基質に、生物に由来するDNA、タンパク質、酵素、抗体、微生物、動植物細胞および器官、神経細胞などの物質を、高密度に集積化して組み合わせて、従来の半導体チップ形状にした混成素子であり、生体分子の固有の機能を用いて、遺伝子発現パターン、遺伝子結合、タンパク質の分布などの生物学的情報を得るか、または生化学的プロセスおよび反応速度または情報処理速度を高めるツールや装置をいう。
【0047】
前記高密度マイクロチップとは、バイオチップの作用原理に基づいて特定のサイズの物質を分離できるバイオチップをいう。
【0048】
前記高密度マイクロチップは、血液細胞の大きさの違いに基づいて、血中循環癌細胞を10分以内に約90%の回収率で捕捉することができる。
【0049】
本発明の実施例において、前記高密度マイクロチップの気孔径(pore size)は、好ましくは5.5~8.5μm、より好ましくは6.5~7.5μmであってもよい。気孔径が5.5μmよりも小さい場合には、赤血球および白血球がチップを通過できず、チップ上にかかるようになって除去されない。気孔径が8.5μmよりも大きい場合には、気孔径が血中循環癌細胞の大きさよりも大きいため、血中循環癌細胞がチップを通過して、血中循環癌細胞を選択的に回収することができない。本発明の一実施例において、前記高密度マイクロチップの気孔形状は、円形、四角形または楕円形であってもよく、好ましくは四角形であってもよい。
【0050】
本発明の一実施例において、前記高密度マイクロチップの気孔は、規則的なパターンで配置されてもよい。本発明の他の一実施例において、前記高密度マイクロチップは、具体的にはステンレス鋼、ニッケル、アルミニウムまたは銅で作られていてもよい。前記気孔は、メムス(MEMS、Micro-electro Mechanical Systems:微小電気機械システム)技術を利用したエッチング(etching)によって形成されてもよい。
【0051】
気孔の中で2つの隣接する気孔間の間隔は、血中循環癌細胞の直径よりも狭く形成されている。本発明の一実施例によれば、2つの気孔間の間隔は、血中循環癌細胞の直径に対して45~65%で形成されてもよい。前記高密度マイクロチップは、通路を流れる血液または溶液の圧力によって変形しない。
【0052】
血液は、気孔を通過した後に外に排出され、血液中の血中循環癌細胞は、気孔を通過せずに表面に残留される。本発明の一実施例によれば、前記癌は、肺癌、乳癌、骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、大腸癌、食道腺癌、胃癌、卵巣癌、肝臓癌、前立腺癌、膵臓癌、甲状腺癌、神経膠腫、腎臓癌、黒色種、悪性胸膜中皮腫、扁平上皮癌および子宮内膜癌からなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。本発明の他の実施例によれば、前記血中循環癌細胞は肺癌由来の細胞であってもよい。本発明の好適な一実施例によれば、前記血中循環癌細胞は非小細胞肺癌由来の細胞であってもよい。
【0053】
非標的細胞、すなわち血中循環癌細胞よりも高い変形率を有する赤血球は、気孔を容易に通過する。
【0054】
血中循環癌細胞のろ過後、血中循環癌細胞は、溶液を逆方向または順方向に供給して外に排出することができる。本発明の一実施例によれば、血中循環癌細胞の損傷を最小限に抑えるために、溶液を逆方向に供給してもよい。前記溶液を、注射器、シリンジポンプ、プランジャーポンプ等を使用して供給することができる。本発明の一実施例によれば、前記溶液は、血液を希釈する希釈剤、水(Water)および希釈用酸から構成されていてもよい。前記溶液の供給によって外に排出される血中循環癌細胞を、コンテナ(Container)、例えば試験管、ペトリ皿などに収集して簡単に採取することができる。
【0055】
一方、直径7.5~15μmの血中循環癌細胞は、約100mmHgの圧力が加えられるとき、直径8μmの管を通過する。直径8μmの管を通過する直径15μmの血中循環癌細胞は、約53%の変形率を有する。逆洗浄(Back washing)、すなわち溶液を血液の流れとは反対方向に流して、直径7.5μmの血中循環癌細胞を外に排出させるとき、血中循環癌細胞の変形率を考慮すると、2つの気孔間の間隔は、好ましくは4μm以下である。例えば、非小細胞肺癌と乳癌の癌細胞は、直径が40μm程度に達することが知られている。逆洗浄の際、直径40μmの血中循環癌細胞の変形率を考慮すると、好ましくは、2つの気孔間の間隔を21μm以下に設定する。直径7.5μmの血中循環癌細胞が間隔4μmを超える2つの気孔の間に存在するとき、血中循環癌細胞が溶液の流れによって変形して表面から脱落しない場合がある。また、直径40μmの癌細胞も間隔21μmを超える2つの気孔間の表面から脱落しない場合がある。本発明による高密度マイクロチップにおいて、溶液の圧力を考慮して、2つの気孔間の間隔は、血中循環癌細胞の直径に対して45~65%で設けられる。直径7.5μmの血中循環癌細胞は、間隔が65%を超え、すなわち約4.9μmを超える場合、逆洗浄によって2つの気孔間の表面から脱落しない場合がある。直径40μmの血中循環癌細胞は、間隔が65%を超え、すなわち26μmを超える場合、逆洗浄によって2つの気孔間の表面から脱落しない場合がある。2つの気孔間の表面にくっついた血中循環癌細胞を強制的に脱落させるために溶液の圧力を上げると、血中循環癌細胞が損傷して、生きている血中循環癌細胞の採集率が低下する。直径7.5μmの血中循環癌細胞に対する間隔が45%未満、すなわち約3.375μm未満の場合、血液と溶液の流れによって前記高密度マイクロチップが破損する恐れが高い。
【0056】
本発明の一実施例において、前記高密度マイクロチップで前記試料を繰り返し通過させることができる。具体的には、血中循環癌細胞が前記高密度マイクロチップで一回分離された後、前記分離された血中循環癌細胞を再び前記高密度マイクロチップにロードして分離することができ、前記分離工程を繰り返すことができる。
【0057】
本発明の一実施例において、前記高密度マイクロチップを用いた血中循環癌細胞の分離は、血中循環癌細胞を含む溶液を高密度マイクロチップにロードした後に特定の人為的圧力を加えることで行われるのではなく、重力を用いて行われてもよい。本発明による高密度マイクロチップを用いた血中循環癌細胞の分離は、血中循環癌細胞への人為的な圧力により引き起こされるダメージを最小限に抑えることにより、患者の体内に存在していた状態をそのまま維持することができる。
【0058】
本発明の一実施例において、前記高密度マイクロチップは、血中循環癌細胞が分離されるとき、前記高密度マイクロチップによる血中循環癌細胞へのダメージを最小限に抑えるか、前記高密度マイクロチップの繰り返し使用をより効率的にするために、または血中循環癌細胞の回収率をより効率的に高めるために、特定の物質でコーティングされてもよい。前記特定の物質は、具体的に血中循環癌細胞に特異的に結合できる抗体であってもよく、細胞に物理的または化学的にダメージを与えない生体材料であってもよい。本発明の一実施例によれば、前記の特定の物質は、BSA(Bovine Serum Albumin)または抗体であってもよい。前記抗体は、例えば、抗上皮細胞接着分子抗体(Anti-Epithelial Cell Adhesion Molecule antibody、Anti-EpCAM antibody)、抗サイトケラチン抗体(Anti-Cytokeratin antibody、Anti-CK antibody)などから構成されていてもよい。本発明の好適な一実施例によれば、前記特定の物質は、BSA(Bovine Serum Albumin)であってもよい。
【0059】
前記BSA(Bovine Serum Albumin)溶液とは、ウシ血清アルブミンをいう。これは、分子量約66.4kDa程度のタンパク質であって、ほとんどの動物に大量に含まれている蛋白質である。BSAは、生化学/生物学において、細胞培養時に細胞の栄養分として加えてもよく、タンパク質の定量で検量線を得るための標準物としても多く使われており、制限酵素を使用する場合、少量の酵素(タンパク質)を使用する必要があるので、溶液内のタンパク質濃度を補うために加えられてもよい。また、種々の生化学的実験(Western blot、Immunocytochemistry、ELISAなど)において、特定の抗体を検出しようとするタンパク質を接着する前に、非特異的結合(nonspecific binding)、すなわち所望しないタンパク質、あるいは所望しない位置に抗体がくっつく非特異的結合を防ぐために使用されてもよい。
【0060】
本発明の一実施例によれば、遠心分離法を用いて末梢血を、前記BSA溶液でコーティングされた高密度マイクロチップに反応させて、血中循環癌細胞を除いた他の生体高分子を除去することができる。本発明の一実施例によれば、前記高密度マイクロチップを用いた分離は、重力により行われてもよく、具体的には大気圧1000~1020hPaで、好ましくは大気圧1000~1015hPaで、より好ましくは大気圧1000~1013hPaで行われてもよい。
【0061】
本発明の一実施例によれば、前記BSA溶液は、前記高密度マイクロチップの上面、下面または前記気孔の内面にコーティングされてもよい。好ましくは、前記高密度マイクロチップの上面、下面及び前記気孔の内面のすべてにコーティングされてもよい。
【0062】
本発明の一実施例によれば、前記BSA溶液のコーティングは、0.05~0.15%の濃度で行われてもよい。本発明の好ましい実施例によれば、前記BSA溶液のコーティングは、0.08~0.012%の濃度で行われてもよい。
【0063】
本発明の一実施例によれば、前記BSA溶液のコーティングは、5~15分間処理されてもよい。本発明の好適な一実施例によれば、前記BSA溶液のコーティングは、8~12分間処理されてもよい。
【0064】
図1に示すように、患者の血液からまず血球細胞を除去するために、採血された患者の血液に抗体重合体を入れた後、よく混合し、常温で反応させる。次に、1%FBSを含むPBS溶液を加え、反応溶液にFicoll溶液を加えた後、遠心分離により血球細胞を1次的に除去する。このように、本発明では、不要な血球細胞を1次的に除去した後、BSA溶液で特別にコーティングされた高密度マイクロチップを用いて、赤血球をろ過して高純度の血中循環癌細胞を分離する。分離された血中循環癌細胞は染色により同定される。前記BSAでコーティングされた高密度マイクロチップを用いると、本発明において分離しようとする血中循環癌細胞を、損傷を最小限に抑えた状態で分離させることができる。
【0065】
本発明の一実施例によれば、バイオチップを用いて前記血液から血中循環癌細胞を分離するステップの後に、分離された血中循環癌細胞を短期培養するステップをさらに行ってもよい。
【0066】
本発明の一実施例において、前記の短期培養で使用される培養液は、インスリン、トランスフェリン、EGF(Epidermal Growth Factor:上皮成長因子)およびROCK(Rho-kinase:Rhoキナーゼ)阻害剤からなる群から選ばれた少なくとも3つから構成されてもよい。
【0067】
前記インスリンは、ヒトの代謝系のホルモンの1つであり、膵臓(器官)のランゲルハンス島のベータ細胞から分泌され、血液中のブドウ糖の数値である血糖値を一定に保つ働きをする。血糖値が一定以上に上がるとインスリンが分泌され、血液中のブドウ糖(グルコース)が細胞内に取り込まれて再び多糖(グリコーゲン)の形で蓄える作用を促進する。本発明による短期培養ステップで使用される培養液は、前記インスリンを含むことにより、血中循環癌細胞を培養するにあたり、従来の血中循環腫瘍細胞培養液よりも細胞の成長および分裂をさらに促進させることができる。本発明の一実施例によれば、前記インスリンは、3~50ng/mlの、3~45ng/ml、3~40ng/ml、3~30ng/ml、4~50ng/ml、4~45ng/ml、4~30ng/ml、5~50ng/ml、5~45ng/mlまたは5~30ng/mlであってもよい。
【0068】
前記トランスフェリンはβグロブリンの一種であり、血清中に吸収された2分子の3価鉄イオンと結合して、細胞増殖やヘモグロビン産生に必要な鉄を、トランスフェリン受容体を介して細胞内に供給する鉄輸送タンパク質である。血清中の鉄99%以上がトランスフェリンと結合し、通常はトランスフェリンの約3分の1が鉄と結合できる。本発明による短期培養ステップで使用される培養液は、前記トランスフェリンを含むことにより、血中循環癌細胞を培養するにあたり、従来の血中循環腫瘍細胞培養液よりも細胞の成長および分裂をさらに促進させることができる。本発明の一実施例によれば、前記トランスフェリンは、3~50ng/ml、3~45ng/ml、3~40ng/ml、3~30ng/ml、4~50ng/ml、4~45ng/ml、4~30ng/ml、5~50ng/ml、5~45ng/mlまたは5~30ng/mlであってもよい。
【0069】
前記上皮成長因子(Epidermal Growth Factor、EGF)は、上皮成長因子受容体に結合して細胞の成長および分裂を促進させるポリペプチド成長因子である。また、前記上皮成長因子は、タンパク質合成やRNA合成を促進するほか、オルニチン脱炭酸酵素を誘導することができる。本発明による短期培養ステップで使用される培養液は、前記上皮成長因子を含むことにより、血中循環癌細胞を培養するにあたり、従来の血中循環腫瘍細胞培養液よりも細胞の成長および分裂をさらに促進させることができる。本発明の実施例によれば、前記上皮成長因子は、0.5~10ng/ml、0.5~9ng/ml、0.5~8ng/ml、0.5~7ng/ml、0.5~6ng/ml、0.5~5ng/ml、0.7~10ng/ml、0.7~9ng/ml、0.7~8ng/ml、0.7~7ng/ml、0.7~6ng/ml、0.7~5ng/ml、1~10ng/ml、1~9ng/ml、1~8ng/ml、1~7ng/ml、1~6ng/mlまたは1~5ng/mlであってもよい。
【0070】
前記ROCK(Rho-associated protein kinase)阻害剤は、Rhoキナーゼ(ROCK)をターゲットにしてその機能を阻害または低下させることができる化合物を意味する。ここで、Rhoキナーゼは、セリン-トレオニンキナーゼのAGCファミリー(PKA/PKG/PKC)に属するキナーゼである。前記Rhoキナーゼは、細胞骨格(cytoskeleton)に作用することにより、細胞の運動および形態を制御する過程に関連している。具体的には、前記Rhoキナーゼは、細胞の移動およびアクチン組織化の調節因子として作用することができる。前記Rhoキナーゼは、糖尿病、出血性脳血管疾患、パーキンソン氏病などの神経変性疾患に関連しており、前記Rhoキナーゼ阻害剤は、前記Rhoキナーゼ関連疾患の治療および阻害に使用できる。本発明の一実施例によれば、前記ROCK阻害剤は、ファスジル(Fasudil)、リパスジル(Ripasudil)、RKI-1447及びY27632からなる群から選択された少なくとも1つであってもよい。前記ファスジルは、ROCK阻害剤の1つであって、脳血管痙攣の治療に使用でき、肺高血圧症の治療にも効果的である。前記リパスジルは、前記ファスジルの誘導体であって、ROCK阻害剤として作用でき、緑内障または高眼圧症の治療にも使用できる。前記RKI-1447は、ROCK1及びROCK2を阻害することができる。前記Y27632は、細胞を通過して、酵素の触媒部位に結合するためにATPと競合することにより、ROCK1およびROCK2を阻害することができる。本発明の一実施例によれば、前記ROCK阻害剤は、3~30μM、3~27μM、3~24μM、3~21μM、4~20μM、4~30μM、4~27μM、4~24μM、4~21μM、4~20μM、5~30μM、5~27μM、5~24μM、5~21μMまたは5~20μMであってもよい。
【0071】
本発明による短期培養で使用される前記培養プレートは、細胞接着を防ぐ表面を有してもよい。本発明の一実施例によれば、血中循環癌細胞を浮遊状態で培養することができるため、細胞接着を防ぐために前記培養プレートの表面をコーティングしてもよい。前記培養プレートの表面コーティングは、ハイドロゲルで行われてもよい。前記ハイドロゲルは、水を分散媒とするゲルを意味し、ヒドロゾルが冷却により流動性を喪失したり、3次元網目構造および微結晶構造を有する親水性高分子が水を含有して膨張したりして形成される。具体的には、前記ハイドロゲルは、共有結合、水素結合、ファンデルワールス結合または物理的結合などの凝集力によって架橋された親水性高分子であって、水溶液上で多量の水を内部に含有して膨潤できる3次元高分子ネットワーク構造を有する物質である。このように、水を吸収した状態では、生体の組織と同様の挙動を示す。前記ハイドロゲルは、温度、pHなどにより相転移するため、膨張率を不連続的に変化させることができ、コンタクトレンズ、医療用電極、細胞培養に使用できる。本発明の一実施例によれば、前記ハイドロゲルは、血中循環癌細胞が培養プレートの表面に接着されるのを防ぐために、培養プレート上に共有結合的にコーティングされてもよい。本発明の他の一実施例によれば、前記ハイドロゲルは、中性電荷を持ちながら親水性を有してもよい。前記中性電荷を持つということは、電荷が正でも負でもないことを意味し、前記親水性とは、水に対する強い親和性を意味し、水によく溶けることを意味する。
【0072】
本発明の一実施例において、前記短期培養するステップは、培養の開始から1~15日間行われてもよい。本発明の他の実施例においては、5~15日、好ましくは10~15日、より好ましくは12~15日であってもよい。
【0073】
前記血中循環癌細胞に特異的に結合する蛍光マーカーとは、血中循環癌細胞自体または内外部に存在する物質に特異的に結合できる蛍光物質を意味する。本発明の一実施例によれば、血中循環癌細胞を識別できる蛍光マーカーは、細胞核に特異的に結合することができ、または細胞の内外部に存在するタンパク質やDNA、RNAなど特異的に結合することができる。具体的には、細胞核にはDAPIが蛍光マーカーとして使用でき、中間径フィラメントタンパク質であるビメンチン(vimentin)に特異的に結合する蛍光マーカーが使用でき、上皮細胞接着分子(EpCAM:epithelial cell adhesion molecule)とサイトケラチン(CK:cytokeratin)に特異的に結合する蛍光マーカーが使用でき、非標的細胞除去手段として使われるCD45に特異的に結合する蛍光マーカーが使用できる。前記血中循環癌細胞に特異的に結合する蛍光マーカーは、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、核酸またはタンパク質からなってもよく、タンパク質からなる抗体であってもよい。前記血中循環癌細胞に特異的に結合する蛍光マーカーは、血中循環癌細胞に特異的に結合して識別可能にする物質であれば何でも構わない。
【0074】
前記AXLは、AXL受容体チロシンキナーゼ(RTK:receptor tyrosine kinase)を意味するものであり、受容体チロシンキナーゼ(RTK)のTAM(TYRO3-AXL-MER)ファミリーのメンバーである。前記RTKは、癌の発生に関連していると言われており、抗癌治療の目標となる場合もある。前記AXLは、一般的な組織よりも癌で非常に高く発現し、癌転移にも関連があると言われている。また、前記AXLは、EGFR-TKI治療剤に対する獲得耐性に相当に関連があり得る。ほとんどのAXLによる信号伝達は、GAS6によって仲介されるリガンド依存型の方法により行われる。
【0075】
本発明の一実施例によれば、前記癌は、EGFR治療剤であるEGFR-TKIに対する獲得耐性を有する可能性がある。前記EGFR-TKIは、例えば、ゲフィチニブ(gefitinib)またはエルロチニブ(erlotinib)であってもよい。また、前記EGFR治療剤は、EGFRモノクローナル抗体であってもよく、具体的には、セツキシマブ(cetuximab)、パニツムマブ(panitumumab)またはマツズマブ(matuzumab)であってもよい。
【0076】
前記AXLに特異的に結合する蛍光マーカーは、AXLに特異的に結合できる蛍光物質であってもよく、具体的には、AXLに特異的に結合できる抗体であってもよい。
【0077】
本発明の一実施例によれば、前記AXL及び血中循環癌細胞の画像分析を介してEGFR-TKIという抗癌剤に耐性を持つ癌患者、例えば肺癌患者をスクリーニングすることができる。本発明の他の一実施例によれば、前記AXL及び血中循環癌細胞の画像分析を介して癌患者、例えば肺癌患者の予後を予測し、例えば、肺癌の診断及び経過分析を行うことができる。
【0078】
前記光学画像は、イメージングシステムによって生成されてもよい。本発明の一実施例によれば、前記イメージングシステムは細胞イメージングシステムであってもよい。前記細胞イメージングシステムは、例えば、スライドガラスなどのプラットフォーム上に染色された細胞を置き、種々の波長別に細胞を観察し、撮影するシステムである。細胞イメージングシステムは、自動細胞計数(cell counting)モジュールは、蛍光強度(intensity)分析モジュールは、細胞診(cytology)ベースの細胞分類/認識(cell classification/cognition)モジュールを含んでいてもよい。また、ユーザフレンドリな機能として、ユーザインタフェースには、測定(Measurement)機能、レポート(Report)自動生成機能、およびDB管理機能を含んでいてもよい。このような細胞イメージングシステムは、細胞、培養液、デブリ(debris)などを区別し、ユーザが所望の細胞を判別して計数するためのデジタル映像分析装備を含む。本発明の一実施例による細胞イメージングシステムは、光学的画像から蛍光標識されたまたはマーカーが結合された標的細胞を正確に識別し計数することができる。
【0079】
前記光学的画像は、物体から反射された反射光によって撮像された光学画像であってもよい。細胞の光学画像は、細胞イメージング装置によって出力され、背景上に細胞とデブリなどが撮像されたものであってもよい。この光学画像は、特定の波長範囲のそれぞれについて複数の分割画像をステッチ(stitching)して形成された一つの画像ファイルとして提供されてもよい。ここで、複数の波長範囲の光学画像は、青色の波長範囲の画像、緑色の波長範囲の画像、及び赤色の波長範囲の画像を含んでいてもよい。青色の波長範囲の光学画像は、血中循環癌細胞の細胞核の判別に特に有用であり、緑色の波長範囲及び赤色の波長範囲の光学画像は、血中循環癌細胞の細胞膜の判別に特に有用である。そのほかにも様々な色(カラー)の波長範囲を用いて、特定の蛍光マーカーを識別することが可能である。
【0080】
前記第1フィルタ処理または第2フィルタ処理において、血中循環癌細胞またはAXLの識別が所望のレベルで行われなければ、光学画像データのデータフィルタ処理を実行し、再び第1フィルタ処理または第2フィルタ処理を行ってもよく、データフィルタ処理を複数回実行してもよい。また、第1フィルタ処理または第2フィルタ処理が行われた後には、画像データを保存し、それを出力することができる。
【0081】
また、第1波長範囲の光学画像において第1フィルタ処理ステップおよび第2フィルタ処理ステップを行い、次いで第1波長範囲とは異なる第2波長範囲の光学画像において第1フィルタ処理ステップおよび第2フィルタ処理ステップのうち1つ以上のステップをさらに行ってもよい。
【0082】
例えば、第1波長範囲は青色の波長範囲、第2波長範囲は緑色または赤色の波長範囲であってもよい。この場合、青色の波長範囲の画像において第1フィルタ処理及び第2フィルタ処理を行うことで、血中循環癌細胞の細胞核を判別することができる。また、緑色の波長範囲の画像と赤色の波長範囲の画像のうちの1つ以上の画像において第1フィルタ処理を行うことで、血中循環癌細胞の細胞膜を判別することができる。このような第1および第2のフィルタ処理により光学画像から細胞を正確に識別することが可能になる。例えば、緑色及び赤色の波長範囲の画像では、例えば白血球と癌細胞などの標的細胞に対する識別性が高くなる。図5には、実際の血中循環癌細胞の青色の波長範囲の画像(a)、緑色の波長範囲の画像(b)、および赤色の波長範囲の画像(c)のサンプル写真が示されている。
【0083】
一方、第2フィルタ処理工程では、血中循環癌細胞のモルフォロジーを測定するが、ここで血中循環癌細胞のモルフォロジーは、細胞の面積(area)、細胞の大きさ(diameter)、及び真円度(circularity)のうちの1つ以上を含んでいてもよい。
【0084】
本発明の一実施例において、AXLの蛍光強度は、AXLに特異的に結合する蛍光マーカーからの複数の波長範囲の全体または一部の光学画像を測定することで得られ、この場合、第1フィルタ処理を行ってもよい。
【0085】
AXLに加えて、血中循環癌細胞の蛍光強度を測定し、第1フィルタ処理を行う過程についてより具体的に説明すると、次の通りである。複数の波長範囲の全体または一部の光学画像から細胞の大きさを測定し、その後、測定された細胞の大きさよりも所定の割合または量だけ大きい多角形または円形からなる領域を設定し、この領域内で細胞の蛍光強度を測定し、第1フィルタ処理を行ってもよい。
【0086】
図7には、種々の蛍光色素またはマーカーが結合された血中循環癌細胞の形状と蛍光強度の測定結果が示されている。すなわち、細胞核をDAPIで染色した場合(a)、ビメンチン(vimentin)をマーカーとして使用した場合(b)、上皮細胞接着分子(EpCAM:epithelial cell adhesion molecule)とサイトケラチン(CK:cytokeratins)をマーカーとして使用した場合(c)、およびCD45をマーカーまたは非標的細胞除去手段として使用した場合(d)が、それぞれ示されている。それぞれの場合について、例えば、青色の波長範囲の光学画像から細胞の大きさを測定した後、測定されたサイズよりも10%以上の大きさを有する四角形を設定し、この四角形内で細胞の蛍光強度を測定し、第1フィルタ処理を行ってもよい。その次、他の色、例えば緑、赤、黄色の波長範囲の光学画像からも、同じ座標とサイズ領域で蛍光強度を測定することができる。図7の(a)から図7の(d)は、それぞれ青、緑、黄および赤色の波長範囲の画像であり、図7の(e)は、各波長範囲の画像から測定した蛍光強度の結果を示す。
【0087】
前記第3フィルタ処理ステップでは、複数の波長範囲の各光学画像の全体または一部をマージした統合画像から、血中循環癌細胞のモルフォロジーを測定し、第3フィルタ処理を行う。ここで、血中循環癌細胞のモルフォロジーは、細胞の面積、細胞の大きさ、および真円度のうちの1つ以上を含んでいてもよい。
【0088】
例えば、図6に示すように、青色の波長範囲の光学画像、緑色の波長範囲の画像、及び赤色の波長範囲の画像をすべてマージした統合画像を生成し、この統合イメージから血中循環癌細胞のモルフォロジーを測定し、第3フィルタ処理を行ってもよい。
【0089】
前記第3フィルタ処理は、血中循環癌細胞全体に対して行ってもよく、第1及び第2のフィルタ処理工程で血中循環癌細胞の識別が困難な場合に補足的に行ってもよい。さらなる識別が必要な場合は、別途のデータフィルタ処理を行うか、または第3フィルタ処理を多数回行ってもよい。
【0090】
前記画像分析は、コンピュータプログラムによって実行されてよい。このようなコンピュータプログラムは、プロセッサ、コントローラ、ALU(arithmetic logic unit:演算装置)、デジタル信号プロセッサ(digital signal processor)、マイクロコンピュータ、FPGA(field programmable gate array)、PLU(programmable logic unit)、マイクロプロセッサ、または命令(instruction)の実行と応答ができる他の装置のように、1つ以上の汎用コンピュータまたは特殊目的のコンピュータを用いて実現されてもよい。
【0091】
図8は、画像分析を実現したプログラムの駆動例であり、本発明の実施例による光学画像分析をアルゴリズムにより実現した分析ソフトウェアのユーザインタフェースの一例である。このソフトウェアを用いて細胞の識別と計数を短時間で自動的に行うことができる。

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