IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 城東テクノ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-水切り部材及びその製造方法 図1
  • 特許-水切り部材及びその製造方法 図2
  • 特許-水切り部材及びその製造方法 図3
  • 特許-水切り部材及びその製造方法 図4
  • 特許-水切り部材及びその製造方法 図5
  • 特許-水切り部材及びその製造方法 図6
  • 特許-水切り部材及びその製造方法 図7
  • 特許-水切り部材及びその製造方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-17
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】水切り部材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/64 20060101AFI20220106BHJP
   E04F 13/08 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
E04B1/64 C
E04F13/08 101W
E04F13/08 101P
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2016198851
(22)【出願日】2016-10-07
(65)【公開番号】P2018059363
(43)【公開日】2018-04-12
【審査請求日】2019-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】390004145
【氏名又は名称】城東テクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大原 啓資
(72)【発明者】
【氏名】前林 孝繁
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-044306(JP,U)
【文献】実開昭59-065108(JP,U)
【文献】特開2014-152501(JP,A)
【文献】特開2016-079625(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0174495(US,A1)
【文献】特開2009-180038(JP,A)
【文献】特開2008-174995(JP,A)
【文献】特開2004-156302(JP,A)
【文献】特開2009-057744(JP,A)
【文献】実開平04-137105(JP,U)
【文献】意匠登録第1487343(JP,S)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/62-1/99
E04F 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一枚の金属板を折り曲げて成形されてなり、垂直平面状の取付板部と、前記取付板部の下端から前方に延出する雨水案内板部と、前記雨水案内板部の前端から下方に延出する前垂れ板部と、前記前垂れ板部の下端から後方へ延出する底板部とを備える、建物の土台部やオーバーハング部の外壁の下端部に取り付けられて用いられる水切り部材において、
前記底板部は、前端が前記前垂れ板部の下端から上方側に折り曲げられるとともに後端が前記前垂れ板部の下端よりも上方に位置し、前記底板部の前端と後端との間の中途部に少なくとも3以上の折り曲げ部を有し、
少なくとも3以上の前記折り曲げ部のうち、最も下方に位置する前記折り曲げ部は、前記前垂れ板部の下端よりも下方に位置することを特徴とする水切り部材。
【請求項2】
前記底板部は、前記折り曲げ部によって上下方向に折り返されて折り重ねられた折り返し部を有していることを特徴とする請求項1に記載の水切り部材。
【請求項3】
前記底板部の後端から上方に折り曲げられて延出する折り曲げ板部をさらに備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の水切り部材。
【請求項4】
前記底板部は、前記底板部の前端と前記最も下方に位置する折り曲げ部との間に、前記前垂れ板部の下端よりも上方位置に配置された部分を有しており、
前記部分には、厚み方向に貫通した複数の換気孔によって構成された換気部が設けられていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の水切り部材。
【請求項5】
前記部分は、後方に行くに連れて上方に傾斜していることを特徴とする請求項に記載の水切り部材。
【請求項6】
垂直平面状の取付板部と、前記取付板部の下端から前方に延出する雨水案内板部と、前記雨水案内板部の前端から下方に延出する前垂れ板部と、前記前垂れ板部の下端から後方へ延出する底板部とを有する、建物の土台部やオーバーハング部の外壁の下端部に取り付けられて用いられる水切り部材を、一枚の金属板を折り曲げることで製造する水切り部材の製造方法において、
前記前垂れ板部の下端から上方側へ折り曲げ、前記前垂れ板部の下端よりも後方に、少なくとも3以上の折り曲げ部を形成して前記底板部形成する底板部形成工程を備え
前記底板部形成工程において、前記少なくとも3以上の折り曲げ部のうち、最も下方に位置する前記折り曲げ部を、前記前垂れ板部の下端よりも下方位置に形成することを特徴とする水切り部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の土台部、屋根、ベランダ、バルコニー等の建物の外壁から張り出したオーバーハング部の下端部等に取り付けられる水切り部材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の土台部やオーバーハング部の外壁の下端部に取り付けられる水切り部材には、土台等の垂直面に取り付けるための取付板部、該取付板部の下端から前方に延出する雨水案内板部、該雨水案内板部の前端から下方に延出する前垂れ板部及び該前垂れ板部の下端から後方へ延出し後端を基礎等の建物構造体に当接させて取り付けられる底板部を有するものがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-79625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の水切り部材は、一枚の金属平板を折り曲げて形成されており、底板部は、金属平板の前垂れ板部の下端に該当する部分から斜め上方に傾斜するように一回折り曲げられて構成されている。このため、底板部は平板状に形成されており、比較的強度が小さくなる。このため、水切り部材の底板部の後端を基礎等の建物構造体に取り付ける際に、底板部の後端が垂れ下がったりして、後端の高さ位置にバラツキが生じやすくなる。この結果、水切り部材の底板部の後端の取り付け調整などに手間がかかり、作業効率が低下する問題が生じる。
【0005】
加えて、この種の水切り部材は、取付板部と前垂れ板部との間の水平距離、所謂出幅が異なる複数種類のものが製造されている。このような複数種類の水切り部材は、取付板部の高さ、雨水案内部の傾斜角度及び前垂れ部の高さが同じとされていることから、この出幅の長さが異なると、取付板部の上端と底板部の後端との高さ(取付幅)が異なる。つまり、出幅が長いものの方が、取付幅が長くなってしまう。また、このような水切り部材の取り付け作業では、土台等の取付け面に描かれた水平線である罫書き(墨出線)に取付板部の上端を沿わせて取り付けていくのが一般的な方法とされている。罫書きは、水切り部材の底板部の後端を基準に描くために、上述のように水切り部材の種類毎に取付幅が異なると、描かれる罫書きの高さも水切り部材の種類毎に異なることとなる。この結果、種類毎に取付幅が異なる水切り部材では、取付作業の際、用いる水切り部材の出幅に応じて罫書きを描く高さ位置を異ならせる必要があり、作業が煩わしいものとなる。
【0006】
そこで、本発明の目的は、水切り部材の取り付け作業を容易にすることが可能な水切り部材及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の水切り部材は、一枚の金属板を折り曲げて成形されてなり、垂直平面状の取付板部と、前記取付板部の下端から前方に延出する雨水案内板部と、前記雨水案内板部の前端から下方に延出する前垂れ板部と、前記前垂れ板部の下端から後方へ延出する底板部とを備える、建物の土台部やオーバーハング部の外壁の下端部に取り付けられて用いられる水切り部材において、前記底板部は、前端が前記前垂れ板部の下端から上方側に折り曲げられるとともに後端が前記前垂れ板部の下端よりも上方に位置し、前記底板部の前端と後端との間の中途部に少なくとも3以上の折り曲げ部を有し、少なくとも3以上の前記折り曲げ部のうち、最も下方に位置する前記折り曲げ部は、前記前垂れ板部の下端よりも下方に位置する。
【0008】
これによると、底板部が少なくとも3以上の折り曲げ部を有していることで、底板部の強度が向上し、底板部の後端の上下方向の高さ位置を安定させることが可能となる。このため、水切り部材の取り付け作業が容易になる。また、底板部が少なくとも3以上の折り曲げ部を有しており、この折り曲げ部を形成する際に底板部の後端の高さ位置を所定の位置とすることが可能となる。つまり、水切り部材の出幅サイズの異なるもの同士においても、水切り部材の取付幅(取付板部の上端から底板部の後端までの高さ)を同じになるようにしておくことで、出幅サイズが異なっても罫書きの位置を同じにして水切り部材を取り付けることが可能となる。また、地盤面から基礎外面を蔦って這い上がってきたヤスデが水切り部材を蔦って外壁内や床下内に侵入するのを防止するヤスデ返しの機能を付加することができる。特に、換気孔を当該最も下方に配置された折り曲げ部よりも前方側の底板部に設けた場合には、換気孔からヤスデが侵入することを防止できる。また、当該最も下方に配置された折り曲げ部において底板部が上下方向に折り畳まれた折り返し部を有するようにしておくのがより好ましく、このようにすることで、折り返し部の下端が前垂れ板部の下端よりも下方に突出するようになり、ヤスデ返しとしてより効果的である。底板部後方の建物の壁面、例えば基礎外面や軒天材下面等に沿って雨水が風によって吹き上げられたりした場合であっても、当該折り曲げ部により前垂れ板部の下端よりも下方に突出した底板部の部分で雨水を下方に導くことができ、雨水が前垂れ板部から前方に吹き返されたり、吹き出るのを軽減することができる。また、例えば、前垂れ板部の下端よりも上方位置で、前記最も下方に配置された折り曲げ部よりも前方に換気孔が設けられている場合には、当該折り曲げ部は換気部よりも下方に位置することになるので、水切り部材を基礎上の土台等に取り付けた場合に、雨水が風によって基礎等の建物の外表面に沿って吹き上げられたとしても、雨水が換気部から水切り部材の内部に浸入することを防止できる。
本発明において、前記底板部は、前記折り曲げ部によって上下方向に折り返されて折り重ねられた折り返し部を有していることが好ましい。これにより、底板部の後端の高さ位置がより安定する。
【0009】
また、本発明において、前記底板部の後端から上方に折り曲げられて延出する折り曲げ板部をさらに備えていることが好ましい。これにより、取扱時に底板部の後端に作業者の手が触れて怪我をするのを軽減できる。また、底板部に換気孔を設けた場合に、換気孔から雨水が吹き込んだとしても、吹き込んだ雨水が建物内部への侵入するのを抑制することが可能となる。
【0010】
また、本発明において、前記底板部は、前記底板部の前端と前記最も下方に位置する折り曲げ部との間に、前記前垂れ板部の下端よりも上方位置に配置された部分を有しており、前記部分には、厚み方向に貫通した複数の換気孔によって構成された換気部が設けられていることが好ましい。これにより、換気部が、前垂れ板部の下端よりも上方位置に設けられるので、雨水の浸入を軽減でき、また、換気孔が目立ちにくくなる。
【0011】
また、本発明において、前記部分は、後方に行くに連れて上方に傾斜していることが好ましい。これにより、雨水の浸入をより軽減でき、また、換気孔がより目立ちにくくなる。
【0015】
また、本発明の水切り部材の製造方法は、垂直平面状の取付板部と、前記取付板部の下端から前方に延出する雨水案内板部と、前記雨水案内板部の前端から下方に延出する前垂れ板部と、前記前垂れ板部の下端から後方へ延出する底板部とを有する、建物の土台部やオーバーハング部の外壁の下端部に取り付けられて用いられる水切り部材を、一枚の金属板を折り曲げることで製造する水切り部材の製造方法において、前記前垂れ板部の下端から上方側へ折り曲げ、前記前垂れ板部の下端よりも後方に、少なくとも3以上の折り曲げ部を形成して前記底板部形成する底板部形成工程を備えている。そして、前記底板部形成工程において、前記少なくとも3以上の折り曲げ部のうち、最も下方に位置する前記折り曲げ部を、前記前垂れ板部の下端よりも下方位置に形成する。
【0016】
これによると、少なくとも3以上の折り曲げ部を有する底板部を製造することが可能となる。このため、底板部の強度が向上し、底板部の後端の上下方向の高さ位置を安定させることが可能となる。したがって、水切り部材の取り付け作業が容易になる。また、底板部に少なくとも3以上の折り曲げ部を形成する際に、底板部の後端の高さ位置を所定の位置とすることが可能となる。つまり、水切り部材の出幅サイズの異なるもの同士においても、水切り部材の取付幅(取付板部の上端から底板部の後端までの高さ)を同じになるようにしておくことで、出幅サイズが異なっても罫書きの位置を同じにして水切り部材を取り付けることが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の水切り部材によると、底板部が少なくとも3以上の折り曲げ部を有していることで、底板部の強度が向上し、底板部の後端の上下方向の高さ位置を安定させることが可能となる。このため、水切り部材の取り付け作業が容易になる。また、底板部が少なくとも3以上の折り曲げ部を有しており、この折り曲げ部を形成する際に底板部の後端の高さ位置を所定の位置とすることが可能となる。つまり、水切り部材の出幅サイズの異なるもの同士においても、水切り部材の取付幅(取付板部の上端から底板部の後端までの高さ)を同じになるようにしておくことで、出幅サイズが異なっても罫書きの位置を同じにして水切り部材を取り付けることが可能となる。
また、本発明の水切り部材の製造方法によると、少なくとも3以上の折り曲げ部を有する底板部を製造することが可能となる。このため、底板部の強度が向上し、底板部の後端の上下方向の高さ位置を安定させることが可能となる。したがって、水切り部材の取り付け作業が容易になる。また、底板部に少なくとも3以上の折り曲げ部を形成する際に、底板部の後端の高さ位置を所定の位置とすることが可能となる。つまり、水切り部材の出幅サイズの異なるもの同士においても、水切り部材の取付幅(取付板部の上端から底板部の後端までの高さ)を同じになるようにしておくことで、出幅サイズが異なっても罫書きの位置を同じにして水切り部材を取り付けることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る水切り部材を建物の土台に取り付けた状態を示す概略断面図である。
図2図1に示す水切り部材の側面図である。
図3図2に示す水切り部材の部分底面図である。
図4】本発明の他の実施形態に係る水切り部材であって、図2に示す水切り部材よりも出幅の小さい水切り部材の側面図である。
図5図4に示す水切り部材の部分底面図である。
図6図2及び図4に示す水切り部材の取付幅の状態を示す説明図である。
図7】変形例に係る水切り部材の要部側面図である。
図8】本発明の他の実施形態に係るオーバーハング部用の水切り部材の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態に係る水切り部材1を図1図3を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る水切り部材を建物の土台に取り付けた状態を示している。本実施形態における建物100は、図示しない建築物を支持する基礎101、基礎パッキン102及び土台103などを有する。
【0020】
基礎101は、地面から上方に立ち上がって形成されており、図1中紙面垂直方向Aに長尺に延在している。基礎101の屋外側の側面101aには、化粧モルタル104が形成されている。基礎パッキン102は、方向Aに沿って長尺に形成されており、基礎101上に設置されている。また、基礎パッキン102には、屋外側と屋内側とを連通させるための複数の換気孔102aが形成されている。複数の換気孔102aは、方向Aに沿って互いに離隔して形成されている。土台103も、方向Aに沿って長尺に形成されており、基礎パッキン102上に設置されている。土台103の屋外側の側面103aには、雨水などの浸入を防ぐための複数の水切り部材1が、方向Aに沿って並べて取り付けられている。各水切り部材1は、後述の底板部14の後端を化粧モルタル104上に当接させた状態で土台103に取り付けられている。
【0021】
本実施形態における水切り部材1は、図2に示すように、取付板部11と、雨水案内板部12と、前垂れ板部13と、底板部14と、折り曲げ板部15eとを有しており、方向Aに長尺に形成されている。水切り部材1は、例えば、0.35mmの鋼板を折り曲げて構成されている。なお、鋼板の厚みは特に限定するものではない。また、鋼板以外の金属板を折り曲げて構成されていてもよい。また、水切り部材1については、その屋外側を前方とし、屋内側を後方として以下に説明する。また、方向Aは、水平方向であって前後方向Bと直交する直交方向である。
【0022】
取付板部11は、上下方向Cに沿って垂直平面状に形成されている。取付板部11は、その上端を土台103の側面103aに描かれた罫書きに沿わせた状態で土台103に釘などで取り付けられる。雨水案内板部12は、取付板部11の下端から前面11a側斜め下方へ傾斜して延出されている。これにより、土台103の側面103a側に形成される外壁材(不図示)から雨水案内板部12上に落下してきた雨水を前垂れ板部13側へと案内することができる。前垂れ板部13は、雨水案内部12の前端から鉛直方向下方へ延出されている。底板部14は、前垂れ板部13の下端から後方に延出されている。折り曲げ板部15eは、底板部14の後端から前方斜め上方に延出されている。
【0023】
底板部14は、4つの延出板部15a~15dと、中途に3つの折り曲げ部16a~16cとを有している。3つの折り曲げ部16a~16cは、4つの延出板部15a~15dが所望方向に延出するように、底板部14を構成する鋼板を折り曲げるための折り曲げ部である。延出板部15aは、前垂れ板部13の下端から後方斜め上方に傾斜して延出している。より詳細には、延出板部15aと前垂れ板部13とがなす角度θ1が所定角度(例えば、50°)となるように、延出板部15aが前垂れ板部13の下端から延出している。延出板部15bは、折り曲げ部16aによって延出板部15aの後端から鉛直方向下方に延出している。より詳細には、延出板部15bは、上下方向Cにおいて、その下端が前垂れ板部13の下端よりも下方に配置される位置まで、延出板部15aの後端から延出している。
【0024】
延出板部15cは、折り曲げ部16bによって延出板部15bの下端から鉛直方向上方に延出している。より詳細には、延出板部15cは、上下方向Cにおいて、その上端が前垂れ板部13の下端と延出板部15aの上端との間に配置される位置まで、延出板部15bの下端から延出している。なお、延出板部15b,15cは、折り曲げ部16a,16bによって折り返された折り返し部(以下、折り返し部15b,15cと称することがある。)でもある。また、折り曲げ部16bは、他の2つの折り曲げ部16a,16cよりも下方であって前垂れ板部13の下端よりも下方位置に配置されている。
【0025】
延出板部15dは、折り曲げ部16cによって延出板部15cの上端から水平方向後方に延出している。より詳細には、延出板部15dは、前後方向Bにおいて、その後端が雨水案内板部12の後端よりもやや前方に配置される位置まで、延出板部15cの上端から延出している。
【0026】
折り曲げ板部15eは、折り曲げ部16dによって延出板部15dの後端から前方斜め上方に傾斜して延出している。これにより、延出板部15dの後端であって折り曲げ部16dが配置された位置が、底板部14の後端となる。つまり、折り曲げ板部15eは、底板部14の後端から折り曲げ部16dによって上方に折り曲げられて延出している。また、折り曲げ板部15eは、上下方向Cにおいて、その上端が延出板部15aの上端と前垂れ板部13の上端との間に配置される位置まで、延出板部15dの後端から延出している。これによって、折り曲げ部16bは、他の3つの折り曲げ部16a,16c,16dよりも下方であって、前垂れ板部13の下端よりも下方位置に配置されている。
【0027】
上述の延出板部15aは、後方に行くに連れて上方に傾斜する、底板部14の一部分である。この延出板部15aには、図3に示すように、厚み方向に貫通した複数の換気孔17aによって構成された換気部17が設けられている。複数の換気孔17aは、方向Aに沿って等間隔に配置されている。また、換気孔17aは、図2に示すように、延出板部15aから折り曲げ部16aを経由して延出板部15bの上端部まで延在して形成されている。また、延出板部15aは、前後方向Bにおいて、折り返し部15b,15cよりも前方に配置されている。
【0028】
続いて、上述の水切り部材1よりも出幅(取付板部と前垂れ板部との間の水平距離)の小さい水切り部材51について、図4及び図5を参照しつつ以下に説明する。なお、上述の水切り部材1と同様なものについては、同符号で示し、説明を省略する。
【0029】
水切り部材50は、図4に示すように、取付板部11、雨水案内板部52、前垂れ板部13、底板部54を有している。この水切り部材50も、例えば、0.35mmの鋼板を折り曲げて構成されている。水切り部材50の取付板部11及び前垂れ板部13は、上述の水切り部材1の取付板部11及び前垂れ板部13と同様なものである。雨水案内板部52は、前後方向Bの長さが水切り部材1の雨水案内板部12よりも短いだけで、取付板部11に対する傾斜角度は同じである。
【0030】
底板部54は、図4に示すように、4つの延出板部55a,55b,15c,55dと、3つの折り曲げ部16a~16cとを有している。延出板部55aは、上述の延出板部15aと同様に前垂れ板部13の下端から後方斜め上方に傾斜して延出している。このときの延出板部55aと前垂れ板部13とがなす角度θ2は、上述の角度θ1よりも若干小さくなるように(例えば、48°となるように)、延出板部55aが延出している。延出板部55bは、上述の延出板部15bと同様に、折り曲げ部16aによって延出板部55aの後端から鉛直方向下方に延出している。より詳細には、延出板部55bは、上下方向Cにおいて、延出板部15bよりも若干長く形成されている。
【0031】
延出板部55dは、前後方向Bの長さが底板部14の延出板部15dよりも短いだけであり、折り曲げ部16cによって延出板部15cの上端から水平方向後方に延出している。また、図4及び図5に示すように、延出板部55aには、厚み方向に貫通した複数の換気孔17aによって構成された換気部17が設けられている。また、換気孔17aは、図4に示すように、延出板部55aから折り曲げ部16aを経由して延出板部55bの上端部まで延在して形成されている。
【0032】
水切り部材50は、図6に示すように、上下方向Cにおいて、取付板部11の上端から底板部54の後端までの高さ(すなわち、水切り部材50の取付幅)が、水切り部材1の取付板部11の上端から底板部14の後端までの高さ(水切り部材1の取付幅)と同じになるように、構成されている。より詳細には、3つの折り曲げ部16a~16cの上下方向Cの位置を調整し、延出板部55bの長さが延出板部15bよりも若干長くなるように底板部54を上下方向Cに折り曲げることで、水切り部材50の出幅と水切り部材1の出幅とが異なっていても、水切り部材50の取付幅と、水切り部材1の取付幅とを同じに設定することが可能となる。
【0033】
このように底板部14,54が3つの折り曲げ部16a~16cを有していると、これら折り曲げ部16a~16cを形成する際に底板部14,54の後端の高さ位置を所定の位置とすることが可能となる。つまり、水切り部材1,50の出幅サイズの異なるもの同士においても、水切り部材1,50の取付幅を同じになるようにしておくことで、出幅サイズが異なっても罫書きの位置を同じにして水切り部材1,50を取り付けることが可能となる。
【0034】
上述の水切り部材1,50の製造方法について、以下に説明する。水切り部材1,50は同様な製造方法であるため、水切り部材1の製造方法について説明する。
【0035】
本実施形態における水切り部材1を製造するには、まず、ロール状に巻かれた長尺の0.35mmの鋼板を、所定の長さに切断する(切断工程)。次に、切断された鋼板に、旋盤を用いて複数の換気孔17aを形成する(換気孔形成工程)。次に、成形機を用いて鋼板を折り曲げて、水切り部材1の取付板部11、案内板部12、前垂れ板部13、底板部14、折り曲げ板部15eを形成する(折り曲げ工程)。
【0036】
底板部14を形成する際の折り曲げ工程においては、鋼板を折り曲げることで、3つの折り曲げ部16a~16cを底板部14に形成する(折り曲げ部形成工程)。このとき、上下方向Cにおいて、取付板部11の上端から底板部14の後端までの高さ(すなわち、取付幅)が所定幅となるように、鋼板を折り曲げて3つの折り曲げ部16a~16cを形成する。これにより、底板部14,54に3つの折り曲げ部16a~16cを形成する際に、底板部14,54の後端の高さ位置を所定の位置とすることが可能となる。つまり、水切り部材1の出幅サイズの異なるもの同士においても、水切り部材1,50の取付幅を同じになるようにしておくことで、出幅サイズが異なっても罫書きの位置を同じにして水切り部材1,50を取り付けることが可能となる。
【0037】
以上に述べたように、本実施形態の水切り部材1,50によると、底板部14,54が3つの折り曲げ部16a~16cを有していることで、底板部14,54の強度が向上し、底板部14,54の後端の上下方向Cの高さ位置を安定させることが可能となる。このため、水切り部材1,50の取り付け作業時に、底板部14,54の後端が上下に振れにくくなる。したがって、底板部14,54の後端を化粧モルタル104上に容易に当接させることが可能となり、当該取り付け作業が容易になる。
【0038】
また、底板部14,54の延出板部15a,55aに換気部17が設けられている。換気部17が、前垂れ板部13の下端よりも上方位置に設けられるので、雨水の浸入を軽減でき、また、換気孔17aが目立ちにくくなる。
【0039】
また、延出板部15a,55aは、後方に行くに連れて上方に傾斜している。これにより、雨水の浸入をより軽減でき、また、換気孔17aがより目立ちにくくなる。
【0040】
また、底板部14,54は、折り曲げ部16a,16bによって上下方向Cに折り返された折り返し部15b,15cを有している。これにより、底板部14,54が上下方向Cにより一層振れにくくなる。このため、底板部14,54の後端の高さ位置がより安定する。
【0041】
また、延出板部15a,55aは、折り返し部15b,15cよりも前方に配置されている。これにより、雨水の浸入をより軽減できる。
【0042】
また、底板部14,54の後端に折り曲げ板部15eが形成されている。これにより、換気孔17aから雨水が吹き込んだとしても、吹き込んだ雨水が折り返し板部15eを越えにくくなる。このため、雨水が建物内部への侵入するのを抑制することが可能となる。
【0043】
また、3つの折り曲げ部16a~16cのうち、最も下方に配置された折り曲げ部16bは、前垂れ板部13の下端よりも下方に配置されている。これにより、折り返し部(折り畳み部)15b,15cの下端(折り曲げ部16b)が前垂れ板部13の下端よりも下方に突出するようになるので、地盤面から基礎外面を蔦って這い上がってきたヤスデが水切り部材1,50を蔦って外壁内や床下内に侵入するのを防止することができる。また、折り曲げ部16bは前垂れ板部13の下端よりも上方位置に設けられた換気部17よりも下方に位置することになるので、底板部14の後方の化粧モルタル104(基礎外面)から雨水が風によって巻き上がったとしても、折り返し部15cによって雨水を前方に吹き出ることを軽減でき、その結果、雨水が換気部17から水切り部材1,50の内部に浸入することを防止できる。
【0044】
上述の実施形態における水切り部材1,50の延出板部15a,55aに代えて、図7に示すように、水切り部材60の底板部64が前垂れ板部13の下端から鉛直方向上方に延出する延出板部65a1と、当該延出板部65a1の上端から後方斜め上方に傾斜して延出する延出板部65a2とを有していてもよい。この変形例における水切り部材60の延出板部65a2も、前垂れ板部13の下端よりも上方位置に配置され、当該延出板部65a2に換気部17が形成されている。また、換気部17を構成する複数の換気孔17aは、図7に示すように、延出板部65a2から折り曲げ部16aを経由して延出板部15bの上端部まで延在して形成されている。このような水切り部材60においても、上述の水切り部材1,50と同様な構成においては、同じ効果を得ることができる。また、水切り部材60は、4つ(3以上)の折り曲げ部16a~16c,66eを有していることで、上述の水切り部材1,50と同様の効果を得ることができる。
【0045】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、上述の実施形態における水切り部材1,50,60は、3つ又は4つの折り曲げ部16a~16c,66eを有しているが、5以上の折り曲げ部を有していてもよい。また、上述の実施形態における延出板部15b,55bは、延出板部15a,55aの後端から鉛直方向下方に延出しているが、延出板部15a,55aの後端から鉛直方向上方に延出していてもよい。この場合、延出板部15cは延出板部15b,55bの上端から鉛直方向下方に延出しておればよい。これにおいても、上述の水切り部材1,50と同様の効果を得ることができる。
【0046】
また、水切り部材1,50,60は、換気部17を有していなくてもよい。また、換気部17は、延出板部15d,55dに設けられていてもよい。また、延出板部15a,55a,65a2は、後方に行くに連れて上方に傾斜していなくてもよく、水平であっても、後方に行くに連れて下方に傾斜していてもよい。また、底板部14,54,64は、上下方向Cに交差する方向に延出する複数の延出板部だけから構成されていてもよい。また、水切り部材1,50,60は、折り曲げ板部15eを有していなくてもよいし、折り曲げ板部15eに代えて折り畳んだような折り返し部としてもよい。
【0047】
上述の水切り部材1,50,60は、土台103に取り付けられて用いられるものの例を示しているが、当然、屋根、ベランダ、バルコニー等の建物の外壁から張り出したオーバーハング部などに取り付けて用いることも可能である。
【0048】
図8にオーバーハング部に用いられる水切り部材の例を示す。この水切り部材70は、上述の水切り部材1,50の延出板部15d,55dに代えて、これらに相当する部分の延出板部75dが取付板部11よりも後方に延出するように形成されている。また、上述の水切り部材1,50の折り曲げ板部15eに代えて、これに相当する折り曲げ板部75eが、底板部74の後端(延出板部75dの後端)の折り曲げ部16dによって延出板部75dの後端から上方に延出し、さらに前方に折り曲げられた略L字状に形成されている。このような水切り部材70においても、上述の水切り部材1,50と同様な構成においては、同じ効果を得ることができる。また、水切り部材70は、3つの折り曲げ部16a~16cを有していることで、上述の水切り部材1,50と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0049】
1,50,60 水切り部材
11 取付板部
12 雨水案内板部
13 前垂れ板部
14,54,64,74 底板部
15a,55a,65a2 延出板部(部分)
15b,15c 延出板部(折り返し部)
15e,75e 折り曲げ板部
16a~16d,66e 折り曲げ部
17 換気部
17a 換気孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8