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特許6995477撥水剤組成物、撥水性繊維製品及び撥水性繊維製品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-17
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】撥水剤組成物、撥水性繊維製品及び撥水性繊維製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D06M 11/79 20060101AFI20220106BHJP
   D06M 15/643 20060101ALI20220106BHJP
   D06M 15/55 20060101ALI20220106BHJP
   D06M 15/564 20060101ALI20220106BHJP
   D06M 15/263 20060101ALI20220106BHJP
   C09K 3/18 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
D06M11/79
D06M15/643
D06M15/55
D06M15/564
D06M15/263
C09K3/18 101
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2016255347
(22)【出願日】2016-12-28
(65)【公開番号】P2018104866
(43)【公開日】2018-07-05
【審査請求日】2019-11-20
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000226161
【氏名又は名称】日華化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100165526
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100189452
【弁理士】
【氏名又は名称】吉住 和之
(72)【発明者】
【氏名】米元 篤史
(72)【発明者】
【氏名】漆崎 弓子
(72)【発明者】
【氏名】織田 拡
【審査官】南 宏樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/110920(WO,A1)
【文献】特開2003-147340(JP,A)
【文献】特開2006-002285(JP,A)
【文献】国際公開第2007/099909(WO,A1)
【文献】特開2013-249330(JP,A)
【文献】特開2011-051874(JP,A)
【文献】特開2007-238931(JP,A)
【文献】特開平07-286095(JP,A)
【文献】特開2010-155727(JP,A)
【文献】特開2007-039323(JP,A)
【文献】特表2003-529673(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M 13/00-15/715
C09K 3/18
D04H 1/00-18/04
D21B 1/00-1/38
D21C 1/00-11/14
D21D 1/00-99/00
D21F 1/00-13/12
D21G 1/00-9/00
D21H 11/00-27/42
D21J 1/00-7/00
C09D 1/00-201/10
C09C 1/00-3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(I)親水化剤と疎水化剤とにより改質されたシリカ、及び(II)樹脂、を含有し、
前記シリカと前記樹脂との質量比(I:II)が、99:1~30:70であり、
前記シリカが、下記一般式(4)で表される親水性基含有シリル基と、下記一般式(5)で表される疎水性基含有シリル基と、を有する、撥水剤組成物。
【化1】

[式(4)中、Aは、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、アミノ基の酸中和基、4級アンモニウム塩基、スルホ基、スルホ基の塩基中和基、カルボキシル基、カルボキシル基の塩基中和基、メルカプト基及びグリシジル基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を含有する1価の炭化水素基を表し、nは1~3の整数を表し、結合手のs及びtは0又は1を表し、n、s及びtの合計は3である。]
【化2】

[式(5)中、Bは、ハロゲンで置換されていてもよい炭素数1~20のアルキル基、ハロゲンで置換されていてもよい炭素数1~20のアルコキシ基、ハロゲンで置換されていてもよい炭素数2~20のアルケニル基、又はハロゲンで置換されていてもよい炭素数1~3のアルキル基若しくはハロゲンで置換されていてもよい炭素数6~12のアリール基を表し、mは1~3の整数を表し、結合手のu及びvは0又は1を表し、m、u及びvの合計は3である。]
【請求項2】
前記シリカが、前記一般式(4)で表される親水性基含有シリル基として、Aが1級アミノ基、2級アミノ基及び3級アミノ基からなる群から選ばれる少なくとも1種のアミノ基を含有する1価の炭化水素基であるアミノ基含有シリル基と、
前記一般式(5)で表される疎水性基含有シリル基として、トリメチルシリル基と、を有する、請求項に記載の撥水剤組成物。
【請求項3】
前記樹脂として、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、及びエポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を含む、請求項1又は2に記載の撥水剤組成物。
【請求項4】
前記樹脂として、シリコーン樹脂を含む、請求項1又は2に記載の撥水剤組成物。
【請求項5】
請求項1~のいずれか一項に記載の撥水剤組成物が含まれる処理液で処理された、撥水性繊維製品。
【請求項6】
繊維を、請求項1~のいずれか一項に記載の撥水剤組成物が含まれる処理液で処理する工程、を備える、撥水性繊維製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撥水剤組成物、撥水性繊維製品及び撥水性繊維製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フッ素基を有するフッ素系撥水剤が知られており、かかるフッ素系撥水剤を繊維製品等に処理することにより、その表面に撥水性が付与された繊維製品が知られている。このようなフッ素系撥水剤は一般にフルオロアルキル基を有する単量体(モノマー)を重合、若しくは共重合させることにより製造される。フッ素系撥水剤で処理された繊維製品は優れた撥水性を発揮するものの、フルオロアルキル基を有する単量体は難分解性であるため、環境面において問題がある。
【0003】
そこで、近年、フッ素を含まない非フッ素系撥水剤について研究が進められている。例えば、下記特許文献1には、エステル部分の炭素数が12以上の(メタ)アクリル酸エステルを単量体単位として含む特定の非フッ素系ポリマーからなる撥水剤が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-328624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の非フッ素系撥水剤においては、実用の面で未だ撥水性が不十分であり、さらなる撥水性の向上が求められている。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、従来の非フッ素系撥水剤に比べ良好な撥水性を繊維製品等に与えることができる撥水剤組成物、良好な撥水性を有する撥水性繊維製品及び該繊維製品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行なった結果、特定のシリカと、樹脂とを組み合わせることにより、従来の非フッ素系撥水剤に比べ良好な撥水性を示すことを見出し、この知見に基づいて本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、(I)親水化剤と疎水化剤とにより改質されたシリカ、及び(II)樹脂を含有する撥水剤組成物を提供する。
【0009】
本発明の撥水剤組成物によれば、従来の非フッ素系撥水剤に比べ良好な撥水性を繊維製品等に与えることができる。
【0010】
撥水性と撥水剤組成物の水性媒体への分散性の観点から、上記(I)シリカは、下記一般式(4)で表される親水性基含有シリル基と、下記一般式(5)で表される疎水性基含有シリル基とを有することが好ましい。
【0011】
【化1】

[式(4)中、Aは、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、アミノ基の酸中和基、4級アンモニウム塩基、スルホ基、スルホ基の塩基中和基、カルボキシル基、カルボキシル基の塩基中和基、メルカプト基及びグリシジル基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を含有する1価の炭化水素基を表し、nは1~3の整数を表し、結合手のs及びtは0又は1を表し、n、s及びtの合計は3である。]
【0012】
【化2】

[式(5)中、Bは、ハロゲンで置換されていてもよい炭素数1~20のアルキル基、ハロゲンで置換されていてもよい炭素数1~20のアルコキシ基、ハロゲンで置換されていてもよい炭素数2~20のアルケニル基、又はハロゲンで置換されていてもよい炭素数1~3のアルキル基若しくはハロゲンで置換されていてもよい炭素数6~12のアリール基を表し、mは1~3の整数を表し、結合手のu及びvは0又は1を表し、m、u及びvの合計は3である。]
【0013】
更に、撥水性と撥水剤組成物の水性媒体への分散性の観点から、上記(I)シリカは、上記一般式(4)で表される親水性基含有シリル基として、Aが1級アミノ基、2級アミノ基及び3級アミノ基からなる群から選ばれる少なくとも1種のアミノ基を含有する1価の炭化水素基であるアミノ基含有シリル基と、上記一般式(5)で表される疎水性基含有シリル基として、トリメチルシリル基と、を有することが好ましい。
【0014】
また、本発明の撥水剤組成物は、撥水性の観点から、上記樹脂として、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、及びエポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を含むことが好ましい。
【0015】
更に、本発明の撥水剤組成物は、撥水性の観点から、上記樹脂として、シリコーン樹脂を含むことが好ましい。
【0016】
本発明はまた、上記本発明に係る撥水剤組成物が含まれる処理液で処理された撥水性繊維製品を提供する。
【0017】
本発明の撥水性繊維製品は良好な撥水性を有することができる。
【0018】
本発明はまた、繊維を、上記本発明に係る撥水剤組成物が含まれる処理液で処理する工程を備える撥水性繊維製品の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、従来の非フッ素系撥水剤に比べ良好な撥水性を繊維製品等に与えることができる撥水剤組成物、良好な撥水性を有する撥水性繊維製品及び該繊維製品の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0021】
本実施形態の撥水剤組成物は、(I)親水化剤と疎水化剤とにより改質されたシリカ(以下、(I)成分という場合もある)と、(II)樹脂(以下、(II)成分という場合もある)とを含有する。
【0022】
<(I)親水化剤と疎水化剤とにより改質されたシリカ>
(I)成分は、シリカを親水化剤と疎水化剤とで改質させたものである。改質させる原料シリカとしては、シリカ粒子表面に水酸基(シラノール基)を有する親水性シリカが挙げられる。
【0023】
原料シリカはとくに制限されず、珪素化合物(特に四塩化珪素などの珪素のハロゲン化物)を酸素・水素炎中で燃焼して製造する乾式法で製造されたシリカであっても、沈殿法、ゲル法、ゾルゲル法などの湿式法で製造されたシリカであってもよい。このようなシリカは、撥水性と撥水剤組成物の水性媒体への分散性の観点から、柴田科学器械工業性比表面積測定装置SA-1000を用い、窒素吸着量によるBET1点法により測定したBET比表面積が10~500m/gであることが好ましく、50~400m/gであることがより好ましい。
【0024】
また、原料シリカは、電子顕微鏡で測定した平均一次粒子径が1~500nmであることが好ましく、5~300nmであることがより好ましい。このようなシリカとしては、例えば、レオロシールQSシリーズ、CPシリーズ(以上、(株)トクヤマ製);AEROSIL50、200(以上、日本アエロジル(株)製)、ニップシールシリーズ、ニップジェルシリーズ(東ソー・シリカ株式会社製)、トクシールシリーズ(丸尾カルシウム株式会社製)などを挙げることができる。
【0025】
原料シリカは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
(I)成分は、上記の原料シリカを、常法に従って親水化剤と疎水化剤とで処理することによって得ることができる。シリカの親水化剤と疎水化剤とによる処理は、親水化剤と疎水化剤とを同時に処理してもよいし、別々に処理してもよい。別々に処理する場合は、その順番はどのような順番でも構わない。
【0027】
(I)成分を得るための原料シリカの親水化剤及び疎水化剤による処理は、湿式での処理であっても、乾式での処理であってもよい。ここで、湿式で処理するとは、水や有機化合物等の溶媒にシリカを分散して親水化剤及び疎水化剤との接触を行う方法である。乾式で処理するとは、粉体としての流動性を維持しながら、シリカを親水化剤及び疎水化剤と接触させる態様が全て含まれる。乾式での処理としては、例えば、窒素等のキャリアガスで搬送された親水化剤及び疎水化剤の蒸気を撹拌状態や流動床のシリカへ流通させて接触させる方法や親水化剤及び疎水化剤の原液或いは溶液を噴霧等によりミスト状にして撹拌下のシリカと接触させる方法等が挙げられる。
【0028】
親水化剤としては、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、アミノ基の酸中和基、4級アンモニウム塩基、スルホ基、カルボキシル基、メルカプト基及びグリシジル基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を含有するシランカップリング剤(以下、親水化シランカップリング剤という場合もある);オルガノポリシロキサンの側鎖及び末端の少なくともいずれかにアミノ基、カルボキシ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、グリシジル基及びポリエーテル基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を含有する変性シリコーンオイル(以下、親水化シリコーンオイルという場合もある)などを挙げることができる。
【0029】
親水化シランカップリング剤としては、下記一般式(1)で表される化合物が挙げられる。
Si[-A](n)[-X](4-n) …(1)
[式(1)中、Aは、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、アミノ基の酸中和基、4級アンモニウム塩基、スルホ基、カルボキシル基、メルカプト基及びグリシジル基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を含有する1価の炭化水素基を表し、Xは1価の加水分解性基を表し、nは1~3の整数を表す。なお、nが2以上の場合、複数あるAは、同一であっても異なっていてもよい。]
【0030】
1価の加水分解性基としては、炭素数1~3のアルコキシ基、及びハロゲン基が挙げられる。
【0031】
親水化シランカップリング剤としては、具体的には、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1、3-ジメチルブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-メチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-エチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ブチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N、N-ジメチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N、N-ジエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N、N-ジブチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、オクタデシルジメチル(3-トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、テトラデシルジメチル(3-トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、N-トリメトキシシリルプロピル-N、N、N-トリ-n-ブチルアンモニウムブロマイド、N-トリメトキシシリルプロピル-N、N、N-トリ-n-ブチルアンモニウムクロライド、N-トリメトキシシリルプロピル-N、N、N-トリメチルアンモニウムクロライド、3-スルホプロピルトリメトキシシラン、3-カルボキシルプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシランなどを挙げることができる。
【0032】
親水化剤としては、撥水性と撥水剤組成物の水性媒体への分散性の観点から、一般式(1)で表される化合物を使用することが好ましく、一般式(1)の中でも、Aがイオン性親水性基を含有する炭化水素基である化合物を使用することがより好ましい。親水性基を含有する炭化水素基としては、炭素数1~5のアルキレン基が好ましく、プロピレン基がより好ましい。
【0033】
イオン性親水性基としては、カチオン性親水性基及びアニオン性親水性基のいずれであってもよい。カチオン性親水性基としては、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、アミノ基の酸中和基及び4級アンモニウム塩基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基が挙げられる。アニオン性親水性基としては、スルホ基及びカルボキシル基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基が挙げられる。
【0034】
撥水性と撥水剤組成物の水性媒体への分散性の観点から、イオン性親水性基の中でも、カチオン性親水性基であることが好ましく、1級アミノ基、2級アミノ基及び3級アミノ基からなる群から選ばれる少なくとも1種のアミノ基であることがより好ましい。
【0035】
親水化剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
疎水化剤としては、上述した親水化剤以外の公知の表面処理剤を挙げることができ、例えば、下記一般式(2)で表される化合物;下記一般式(3)で表される化合物:ジメチルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、クロロアルキル変性シリコーンオイル、クロロフェニル変性シリコーンオイル、脂肪酸変性シリコーンオイル、アルコキシ変性シリコーンオイル等のシリコーンオイル(以下、疎水化シリコーンオイルという場合もある);ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン等のシロキサン類を使用することができる。また、シリコーンオイルとして、フッ素変性シリコーンオイルを使用することもできる。
【0037】
Si[-B](m)[-Y](4-m) …(2)
[式(2)中、Bは、ハロゲンで置換されていてもよい炭素数1~20のアルキル基、ハロゲンで置換されていてもよい炭素数1~20のアルコキシ基、ハロゲンで置換されていてもよい炭素数2~20のアルケニル基又はハロゲンで置換されていてもよい炭素数1~3のアルキル基若しくはハロゲンで置換されていてもよい炭素数6~12のアリール基を表し、Yは1価の加水分解性基を表し、mは1~3の整数を表す。なお、mが2以上の場合、複数あるBは、同一であっても異なっていてもよい。]
【0038】
1価の加水分解性基としては、炭素数1~3のアルコキシ基、及びハロゲン基が挙げられる。
【0039】
【化3】

[式(3)中、R~Rはそれぞれ独立に、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基又はフェニル基を表す。]
【0040】
疎水化剤は、撥水性と撥水剤組成物の水性媒体への分散性と処理のし易さの観点から、一般式(2)で表される化合物及び/又は一般式(3)で表される化合物を用いることが好ましく、一般式(3)で表される化合物を用いることがより好ましく、ヘキサメチルジシラザンを用いることがさらにより好ましい。
【0041】
疎水化剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
(I)成分は、親水化剤及び疎水化剤による処理によって、シリカ表面に親水性基と疎水性基とを有することができる。
【0043】
親水性基としては、撥水性と撥水剤組成物の水性媒体への分散性の観点から、一般式(1)で表される化合物から誘導される下記一般式(4)で表される親水性基含有シリル基であることが好ましい。この中でも親水性基としてはイオン性親水性基であることが好ましく、カチオン性親水性基であることが好ましく、1級アミノ基、2級アミノ基及び3級アミノ基からなる群から選ばれる少なくとも1種のアミノ基であることがより好ましい。
【0044】
【化4】

[式(4)中、Aは、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、アミノ基の酸中和基、4級アンモニウム塩基、スルホ基、スルホ基の塩基中和基、カルボキシル基、カルボキシル基の塩基中和基、メルカプト基及びグリシジル基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を含有する1価の炭化水素基を表し、nは1~3の整数を表し、結合手のs及びtは0又は1を表し、n、s及びtの合計は3である。]
【0045】
疎水性基としては、撥水性と撥水剤組成物の水性媒体への分散性と処理のし易さの観点から、一般式(2)で表される化合物及び/又は一般式(3)で表される化合物から誘導される置換シリル基であることが好ましく、一般式(3)で表される化合物から誘導される置換シリル基であることがより好ましく、トリアルキルシリル基がさらにより好ましく、トリメチルシリル基がさらにより一層好ましい。
【0046】
一般式(2)で表される化合物から誘導される置換シリル基としては、下記一般式(5)で表される疎水性基含有シリル基が挙げられる。
【0047】
【化5】

[式(5)中、Bは、ハロゲンで置換されていてもよい炭素数1~20のアルキル基、ハロゲンで置換されていてもよい炭素数1~20のアルコキシ基、ハロゲンで置換されていてもよい炭素数2~20のアルケニル基、又はハロゲンで置換されていてもよい炭素数1~3のアルキル基若しくはハロゲンで置換されていてもよい炭素数6~12のアリール基を表し、mは1~3の整数を表し、結合手のu及びvは0又は1を表し、m、u及びvの合計は3である。]
【0048】
一般式(3)で表される化合物から誘導される置換シリル基としては、下記一般式(6)で表される疎水性基含有シリル基が挙げられる。
【0049】
【化6】

[式(6)中、R~Rはそれぞれ独立に、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基又はフェニル基を表す。]
【0050】
上記一般式(6)で表される疎水性基含有シリル基は、一般式(2)で表される化合物からも誘導することができる。すなわち、一般式(5)におけるBが炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基又はフェニル基であり、mが3の疎水性基含有シリル基であってもよい。
【0051】
一般式(4)で表される親水性基含有シリル基及び一般式(5)で表される疎水性基含有シリル基における結合手は、シリカと結合していてもよく、他の一般式(4)で表される親水性基含有シリル基及び/又は一般式(5)で表される疎水性基含有シリル基と結合していてもよく、他の親水化剤又は疎水化剤と結合していてもよく、加水分解性基(例えば、上記X、Yで示される基)を有していてもよく、加水分解により生成するOH基を有していてもよい。他の一般式(4)で表される親水性基含有シリル基及び/又は一般式(5)で表される疎水性基含有シリル基や、他の親水化剤又は疎水化剤と結合する場合は、Si-O-Siの結合となっており、加水分解により生成するOH基を有する場合は、Si-OHとなっている。
【0052】
(I)成分は、撥水性と撥水剤組成物の水性媒体への分散性の観点から、BET比表面積が30~500m/gであることが好ましく、50~400m/gであることがより好ましい。また、平均一次粒子径が5~500nmであることが好ましい。
【0053】
また、(I)成分は、撥水性と撥水剤組成物の水性媒体への分散性の観点から、炭素含有量が0.5~5.5質量%であることが好ましく、0.9~4.5質量%であることがより好ましい。炭素含有量は、株式会社住化分析センター製のスミグラフNC-22Fにより測定することができる。
【0054】
また、(I)成分は、撥水性と撥水剤組成物の水性媒体への分散性の観点から、疎水度(M値)が10~50であることが好ましい。M値は、試料0.2gを50mlの水に加え、ここに攪拌しながらメタノールを加え、試料粉末の全量が溶媒に湿潤した時点を終点とした場合の、終点におけるメタノール-水混合溶媒中のメタノールの容量%を疎水度(M値)として測定することができる。
【0055】
また、(I)成分が親水性基としてアミノ基を有する場合は、窒素含有量が0.1~0.5質量%であることが好ましい。窒素含有量は、株式会社住化分析センター製のスミグラフNC-22Fにより測定することができる。
【0056】
(I)成分は、市販品として入手することが可能であり、例えば、レオロシールHG-09((株)トクヤマ製、商品名)、AEROSIL NA50H、RA200H、RA200HS(以上、日本アエロジル(株)製、商品名)等が挙げられる。
【0057】
(I)成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
<(II)樹脂>
(II)成分としては、特に制限されず、例えば、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、グリオキザール樹脂、アルキルフェノール樹脂、ロジンエステル樹脂、ポリオレフィンなどが挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、撥水性の観点から、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂が好ましい。
【0059】
シリコーン樹脂としては、シリコーンレジン、シリコーンオイルを挙げることができる。シリコーンレジンとは、構成成分としてMQ、MDQ、MT、MTQ、MDT又はMDTQを含み、25℃にて固形状であり、三次元構造を有するオルガノポリシロキサンである。ここで、M、D、T及びQは、それぞれ(R’’)SiO0.5単位、(R’’)SiO単位、R’’SiO1.5単位及びSiO単位を表す。R’’は、炭素数1~10の1価の脂肪族炭化水素基、又は、炭素数6~15の1価の芳香族炭化水素基を表す。
【0060】
シリコーンレジンは、一般に、MQレジン、MTレジン又はMDTレジンとして知られており、MDQ、MTQ又はMDTQと示される部分を有することもある。
【0061】
シリコーンレジンは、これを適当な溶媒に溶解させた溶液としても入手することができる。溶媒としては、例えば、比較的低分子量のメチルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、n-ヘキサン、イソプロピルアルコール、塩化メチレン、1,1,1-トリクロロエタン及びこれらの溶媒の混合物等が挙げられる。
【0062】
シリコーンレジンの溶液としては、例えば、信越化学工業(株)より市販されているKF7312J(トリメチルシリル基含有ポリシロキサン:デカメチルシクロペンタシロキサン=50:50混合物)、KF7312F(トリメチルシリル基含有ポリシロキサン:オクタメチルシクロテトラシロキサン)、KF9021L(トリメチルシリル基含有ポリシロキサン:低粘度メチルポリシロキサン=50:50混合物)、KF7312L(トリメチルシリル基含有ポリシロキサン:低粘度メチルポリシロキサン=50:50混合物)等が挙げられる。
【0063】
シリコーンレジン単独としては、例えば、東レダウコーニング(株)より市販されているMQ-1600 solid Resin(トリメチルシリル基含有ポリシロキサン)、MQ-1640 Flake Resin(トリメチルシリル基含有ポリシロキサン、ポリプロピルシルセスキオキサン)などが挙げられる。上記市販品は、トリメチルシリル基含有ポリシロキサンを含み、MQ、MDQ、MT、MTQ、MDT又はMDTQを含むものである。
【0064】
シリコーンオイルとは、直鎖状のオルガノポリシロキサンであり、オルガノポリシロキサンの側鎖及び末端の少なくともいずれかに有機基を有するものであってもよい。このようなシリコーンオイルとしては、前記の疎水化シリコーンオイル、官能基化シリコーンオイルと同じものを使用することができ、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイルなどのストレートシリコーンオイル;アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、アラルキル変性シリコーンオイル、アルキルアラルキル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸エステル変性シリコーンオイル、高級脂肪族アミド変性シリコーンオイルなどの変性シリコーンオイルなどを挙げることができる。
【0065】
このようなシリコーン樹脂の中でも、撥水性と撥水剤組成物の水性媒体への分散性の観点から、シリコーンオイルが好ましく、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイルがより好ましい。
【0066】
アミノ変性シリコーンオイルとしては、オルガノポリシロキサンの側鎖及び末端の少なくともいずれかにアミノ基及び/又はイミノ基を含む有機基を有する化合物が挙げられる。このような有機基としては、-R-NHで表される有機基、-R-NH-R’-NH2で表される有機基が挙げられる。R及びR’としては、エチレン基、プロピレン基等の2価の基が挙げられる。アミノ基及び/又はイミノ基の一部又は全部が、封鎖されたアミノ基及び/又はイミノ基であってもよい。封鎖されたアミノ基及び/又はイミノ基は、例えば、アミノ基及び/又はイミノ基を封鎖剤で処理することにより得られる。封鎖剤としては、例えば、炭素数2~22の脂肪酸、炭素数2~22の脂肪酸の酸無水物、炭素数2~22の脂肪酸の酸ハライド、炭素数1~22の脂肪族モノイソシアネートなどが挙げられる。
【0067】
アミノ変性シリコーンオイルの官能基当量は、撥水性の観点から、100~20000g/molが好ましく、150~12000g/molがより好ましく、200~4000g/molがより好ましい。
【0068】
アミノ変性シリコーンオイルは25℃で液状であることが好ましい。アミノ変性シリコーンオイルの25℃における動粘度は、10~100,000mm/sであることが好ましく、10~30,000mm/sであることがより好ましく、10~5,000mm/sであることがさらに好ましい。25℃における動粘度が100,000mm/sより大きい場合、粘度が高すぎて作業性が悪くなる傾向にある。25℃における動粘度とは、JIS K 2283:2000(ウベローデ粘度計)に記載の方法で測定した値を意味する。
【0069】
アミノ変性シリコーンオイルとしては、市販品としても容易に入手することが可能である。市販品としては、例えば、KF8005、KF-868、KF-864、KF-393、KF-8021(いずれも、信越化学工業(株)製、商品名)、TSF-4709、XF42-B1989(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン(合)製、商品名)、BY16-872、SF-8417、BY16-853U、BY16-892(いずれも、東レ・ダウコーニング(株)製、商品名)などが挙げられる。
【0070】
また、アミノ変性シリコーンオイル以外のシリコーンオイルも同様に市販品として容易に入手することが可能である。市販品としては、例えば、KF-101(信越化学工業(株)製、商品名、エポキシ変性シリコーンオイル)、X-22-3701E(信越化学工業(株)製、商品名、カルボキシル変性シリコーンオイル)、SF8428(東レ・ダウコーニング(株)製、商品名、カルビノール変性シリコーンオイル)、KF-9901(信越化学工業(株)製、商品名、メチルハイドロジェンシリコーンオイル)、X-22-715(信越化学工業(株)製、商品名、高級脂肪酸エステル変性シリコーンオイル)、KF-96-3000cp(信越化学工業(株)製、商品名、ジメチルシリコーンオイル)、SF8416(東レ・ダウコーニング(株)製、商品名、アルキル変性シリコーンオイル)、SH203(東レ・ダウコーニング(株)製、商品名、アルキルアラルキル変性シリコーンオイル)、SF8410(東レ・ダウコーニング(株)製、商品名、ポリエーテル変性シリコーンオイル)などが挙げられる。
【0071】
シリコーン樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0072】
アクリル樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構成単位を含有する非フッ素アクリル系ポリマーを挙げることができる。
【0073】
このような非フッ素アクリル系ポリマーを構成する(メタ)アクリル酸エステルは、撥水性の観点から、エステル結合を介して存在する炭化水素基の炭素数が12~24であることが好ましい。この炭化水素基は、直鎖状であっても分岐状であってもよく、飽和炭化水素であっても不飽和炭化水素であってもよく、脂環式又は芳香族の環状を有していてもよい。これらの中でも、直鎖状であるものが好ましく、直鎖状の飽和炭化水素基であるものがより好ましい。これらの炭化水素基は-OH、-NCO、-NHなどの官能基を有していてもよい。
【0074】
かかる重合体中の(メタ)アクリル酸エステル単量体の構成割合は、重合体を構成する単量体単位の全量に対して、80~100質量%であることが好ましい。また、かかる重合体の重量平均分子量は、50万以上であることが好ましい。
【0075】
(メタ)アクリル酸エステル以外の単量体としては、(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な単量体であれば特に限定はなく、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アンゲリカ酸、チグリン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、α-ヒドロキシアクリル酸、エチレン、スチレン、メチルスチレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、アクリルアミドなどが挙げられる。これらの共重合可能なモノマーは、1種を単独で使用してもよく、又は2種以上を併用してもよい。
【0076】
このようなアクリル樹脂は市販品としても入手可能であり、例えば、ネオシード NR-90(日華化学(株)製、商品名、アクリル樹脂エマルジョン)などが挙げられる。
【0077】
ポリウレタン樹脂としては、(a)有機ポリイソシアネートと、(b)ポリオールと、を反応させて得られる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを、水に乳化分散させ、(c)アミノ基及び/又はイミノ基を2個以上有するポリアミン化合物を用いて鎖伸長反応させて得られる水性ポリウレタン樹脂であることが好ましい。
【0078】
このようなポリウレタン樹脂は市販品としても入手可能であり、例えば、エバファノールAE-12(日華化学(株)製、商品名、ポリウレタン樹脂エマルジョン)などが挙げられる。
【0079】
エポキシ樹脂としては、高分子内に残存させたエポキシ基で架橋させることで硬化する重合体であることが好ましい。このようなエポキシ樹脂は市販品としても入手可能であり、例えば、Terrific GC-100B((株)グローケミカル製、商品名、エポキシ樹脂エマルジョン)などが挙げられる。
【0080】
本実施形態においては、(II)成分として、フロロアルキル変性シリコーンオイルなどのフッ素系シリコーンオイルやフッ素樹脂を配合することができる。
【0081】
フッ素樹脂としては、フッ化(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構成単位を含有するフッ素アクリル系ポリマーを挙げることができる。フッ素アクリル系ポリマーを構成するフッ化(メタ)アクリル酸エステルは、撥水性とフッ素樹脂の分解性の観点から、エステル結合を介して存在するフッ化炭化水素基の炭素数が2~6であることが好ましい。またフッ化炭化水素基は、撥水性の観点から、パーフルオロアルキル基であることが好ましい。
【0082】
このようなフッ素樹脂は、市販品としても入手可能であり、例えば、NKガードS-33(日華化学(株)製、商品名、フッ素樹脂エマルジョン)等が挙げられる。
【0083】
(II)成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0084】
本実施形態の撥水剤組成物には、上述した(I)成分及び(II)成分以外に、(III)成分として、界面活性剤、消泡剤、pH調整剤、抗菌剤、防黴剤、着色剤、酸化防止剤、消臭剤、各種有機溶剤、キレート剤、帯電防止剤、架橋剤、触媒などの添加剤をさらに含有していてもよい。
【0085】
界面活性剤としては、公知の非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤を使用することができる。界面活性剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0086】
消泡剤としては、例えば、ヒマシ油、ゴマ油、アマニ油、動植物油などの油脂系消泡剤;ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸などの脂肪酸系消泡剤;ステアリン酸イソアミル、こはく酸ジステアリル、エチレングリコールジステアレート、ステアリン酸ブチルなどの脂肪酸エステル系消泡剤;ポリオキシアルキレンモノハイドリックアルコールジ-t-アミルフェノキシエタノール、3-ヘプタノール、2-エチルヘキサノールなどのアルコール系消泡剤;ジ-t-アミルフェノキシエタノール3-ヘプチルセロソルブノニルセロソルブ3-ヘプチルカルビトールなどのエーテル系消泡剤;トリブチルオスフェート、トリス(ブトキシエチル)フオスフェートなどのリン酸エステル系消泡剤;ジアミルアミンなどのアミン系消泡剤;ポリアルキレンアミド、アシレートポリアミンなどのアミド系消泡剤;ラウリル硫酸エステルナトリウムなどの硫酸エステル系消泡剤;鉱物油等が挙げられる。消泡剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0087】
pH調整剤としては、乳酸、酢酸、プロピオン酸、マレイン酸、シュウ酸、ギ酸、クエン酸、リンゴ酸、スルホン酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸等の有機酸;塩酸、硫酸、硝酸、燐酸、ホウ酸等の無機酸;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、アンモニア、アルカノールアミン、ピリジン、モルホリン等の塩基が挙げられる。pH調整剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0088】
有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、ヘキシルアルコール、2-エチルヘキシルアルコール等の炭素数1~8の脂肪族アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール等のケトン類;酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル等のエステル類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジオキサン、メチルターシャリーブチルエーテル、ブチルカルビトール等のエーテル類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等のグリコール類;エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル,3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール等のグリコールエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のグリコールエステル類;ホルムアミド、アセトアミド、ベンズアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトアニリド等のアミドが挙げられる。有機溶剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0089】
帯電防止剤としては、撥水性の性能を阻害しにくいものを使用するのがよい。帯電防止剤としては、例えば、高級アルコール硫酸エステル塩、硫酸化油、スルホン酸塩、第4級アンモニウム塩、イミダゾリン型4級塩などのカチオン系界面活性剤、ポリエチレングリコール型、多価アルコールエステル型などの非イオン系界面活性剤、イミダゾリン型4級塩、アラニン型、ベタイン型などの両性界面活性剤、高分子化合物タイプの制電性重合体、ポリアルキルアミンなどが挙げられる。帯電防止剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0090】
架橋剤としては、例えば、メラミン樹脂、グリオキザール樹脂及び、イソシアネート基又はブロックドイソシアネート基を1個以上有する化合物などを挙げることができる。(II)成分としてメラミン樹脂及び/又はグリオキザール樹脂を使用する場合は、(III)成分としてメラミン樹脂及び/又はグリオキザール樹脂以外の(III)成分を使用することができる。
【0091】
メラミン樹脂としては、メラミン骨格を有する化合物を用いることができ、例えば、トリメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミンなどのポリメチロールメラミン;ポリメチロールメラミンのメチロール基の一部又は全部が、炭素数1~6のアルキル基を有するアルコキシメチル基となったアルコキシメチルメラミン;ポリメチロールメラミンのメチロール基の一部又は全部が、炭素数2~6のアシル基を有するアシロキシメチル基となったアシロキシメチルメラミンなどが挙げられる。これらのメラミン樹脂は、単量体、あるいは2量体以上の多量体のいずれであってもよく、あるいはこれらの混合物を用いてもよい。さらに、メラミンの一部に尿素等を共縮合したものも使用できる。このようなメラミン樹脂としては、例えば、DIC株式会社製のベッカミンAPM、ベッカミンM-3、ベッカミンM-3(60)、ベッカミンMA-S、ベッカミンJ-101、及びベッカミンJ-101LF、ユニオン化学工業株式会社製のユニカレジン380K、三木理研工業株式会社製のリケンレジンMMシリーズなどが挙げられる。
【0092】
グリオキザール樹脂としては、従来公知のものを使用することができる。グリオキザール樹脂としては、例えば、1,3-ジメチルグリオキザール尿素系樹脂、ジメチロールジヒドロキシエチレン尿素系樹脂、ジメチロールジヒドロキシプロピレン尿素系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂の官能基は、他の官能基で置換されていてもよい。このようなグリオキザール樹脂としては、例えば、DIC株式会社製のベッカミンN-80、ベッカミンNS-11、ベッカミンLF-K、ベッカミンNS-19、ベッカミンLF-55Pコンク、ベッカミンNS-210L、ベッカミンNS-200、及びベッカミンNF-3、ユニオン化学工業株式会社製のユニレジンGS-20E、三木理研工業株式会社製のリケンレジンRGシリーズ、及びリケンレジンMSシリーズなどが挙げられる。
【0093】
メラミン樹脂及びグリオキザール樹脂には、反応を促進させる観点から触媒を使用することが好ましい。このような触媒としては、通常用いられる触媒であれば特に制限されず、例えば、ホウ弗化アンモニウム、ホウ弗化亜塩等のホウ弗化化合物;塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム等の中性金属塩触媒;燐酸、塩酸、ホウ酸等の無機酸などが挙げられる。これら触媒には、必要に応じて、助触媒として、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、マレイン酸、乳酸等の有機酸などを併用することもできる。このような触媒としては、例えば、DIC株式会社製のキャタリストACX、キャタリスト376、キャタリストO、キャタリストM、キャタリストG(GT)、キャタリストX-110、キャタリストGT-3、及びキャタリストNFC-1、ユニオン化学工業株式会社製のユニカキャタリスト3-P、及びユニカキャタリストMC-109、三木理研工業株式会社製のリケンフィクサーRCシリーズ、リケンフィクサーMXシリーズ、及びリケンフィクサーRZ-5などが挙げられる。
【0094】
イソシアネート基又はブロックドイソシアネート基を1個以上有する化合物としては、ブチルイソシアネート、フェニルイソシアネート、トリルイソシアネート、ナフタレンイソシアネートなどの単官能(モノ)イソシアネート化合物や、多官能イソシアネート化合物を使用することができる。
【0095】
多官能イソシアネート化合物としては、分子内に2つ以上のイソシアネート基を有する化合物であれば特に限定されず、公知のポリイソシアネート化合物を用いることができる。多官能イソシアネート化合物としては、例えば、アルキレンジイソシアネート、アリールジイソシアネート及びシクロアルキルジイソシアネートなどのジイソシアネート化合物、これらのジイソシアネート化合物の二量体又は三量体などの変性ポリイソシアネート化合物等が挙げられる。アルキレンジイソシアネートの炭素数は、1~12であることが好ましい。
【0096】
ジイソシアネート化合物としては、例えば、2,4又は2,6-トリレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリレン又はナフチレンジイソシアネート、4,4’-メチレン-ビス(フェニルイソシアネート)、2,4’-メチレン-ビス(フェニルイソシアネート)、3,4’-メチレン-ビス(フェニルイソシアネート)、4,4’-エチレン-ビス(フェニルイソシアネート)、ω,ω’-ジイソシアネート-1,3-ジメチルベンゼン、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジメチルシクロヘキサン、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジメチルベンゼン、ω,ω’-ジイソシアネート-1,3-ジメチルシクロヘキサン、1-メチル-2,4-ジイソシアネートシクロヘキサン、4,4’-メチレン-ビス(シクロヘキシルイソシアネート)、3-イソシアネート-メチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、酸-ジイソシアネート二量体、ω,ω’-ジイソシアネートジエチルベンゼン、ω,ω’-ジイソシアネートジメチルトルエン、ω,ω’-ジイソシアネートジエチルトルエン、フマル酸ビス(2-イソシアネートエチル)エステル、1,4-ビス(2-イソシアネート-プロプ-2-イル)ベンゼン、及び、1,3-ビス(2-イソシアネート-プロプ-2-イル)ベンゼンが挙げられる。
【0097】
トリイソシアネート化合物としては、例えば、トリフェニルメタントリイソシアネート、ジメチルトリフェニルメタンテトライソシアネート、トリス(イソシアナートフェニル)-チオフォスファートなどが挙げられる。
【0098】
ジイソシアネート化合物から誘導される変性ポリイソシアネート化合物としては、2つ以上のイソシアネート基を有するものであれば特に制限はなく、例えば、ビウレット構造、イソシアヌレート構造、ウレタン構造、ウレトジオン構造、アロファネート構造、三量体構造などを有するポリイソシアネート、トリメチロールプロパンの脂肪族イソシアネートのアダクト体などを挙げることができる。また、ポリメリックMDI(MDI=ジフェニルメタンジイソシアネート)も多官能イソシアネート化合物として使用することができる。
【0099】
多官能イソシアネート化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0100】
多官能イソシアネート化合物が有するイソシアネート基は、そのままでもよく、ブロック剤によりブロックされたブロックイソシアネート基であってもよい。ブロック剤としては、3,5-ジメチルピラゾール、3-メチルピラゾール、3,5-ジメチル-4-ニトロピラゾール、3,5-ジメチル-4-ブロモピラゾール、ピラゾールなどのピラゾール類;フェノール、メチルフェノール、クロルフェノール、iso-ブチルフェノール、tert-ブチルフェノール、iso-アミルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール等のフェノール類;ε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム、γ-ブチロラクタム等のラクタム類;マロン酸ジメチルエステル、マロン酸ジエチルエステル、アセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等の活性メチレン化合物類;ホルムアルドキシム、アセトアルドキシム、アセトンオキシム、メチルエチルケトンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、アセトフェノンオキシム、ベンゾフェノンオキシム等のオキシム類;イミダゾール、2-メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物類;重亜硫酸ソーダなどが挙げられる。これらの中でも、撥水性の観点から、ピラゾール類及びオキシム類が好ましい。
【0101】
多官能イソシアネート化合物としては、ポリイソシアネート構造に親水基を導入して界面活性効果を持たせることにより、ポリイソシアネートに水分散性を付与した水分散性イソシアネートを用いることもできる。また、反応を促進するため、有機錫、有機亜鉛等の公知の触媒を併用することもできる。
【0102】
架橋剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0103】
(III)成分としては、撥水性を向上する観点からは、架橋剤であることが好ましい。
【0104】
本実施形態の撥水剤組成物は、撥水性の観点から、(I)成分と(II)成分との質量比(I:II)が、99:1~30:70であることが好ましく、95:5~50:50であることがより好ましく、90:10~60:40であることがさらに好ましい。
【0105】
本実施形態の撥水剤組成物には、撥水性の観点から、(I)成分と(II)成分とに加えて(III)成分として架橋剤が含まれていることが好ましい。この場合、本実施形態の撥水剤組成物における架橋剤の含有量は、撥水性及び風合いの観点から、(I)成分と(II)成分との合計100質量部に対して、1~200質量部であることが好ましく、1~100質量部であることがより好ましく、5~70質量部であることがさらにより好ましい。
【0106】
上述した本実施形態に係る撥水剤組成物は、繊維製品加工剤、紙製品加工剤、皮製品加工剤などの用途に好適に用いることができる。
【0107】
本実施形態の撥水剤組成物の製造方法について説明する。
【0108】
本実施形態の撥水剤組成物は、(I)成分と(II)成分と、必要に応じて(III)成分とを混合することにより得ることができる。
【0109】
本実施形態の撥水剤組成物は、(I)成分と(II)成分とを予め混合した1剤型であってもよいし、上記2成分がそれぞれ別々になっている2剤型であってもよい。本実施形態の撥水剤組成物は、取り扱いの簡便性の観点から、上記2成分は水性媒体に分散(乳化、溶解を含む)していることが好ましい。
【0110】
(III)成分は、(I)成分と(II)成分との少なくともいずれか一方と1剤型になっていてもよいし、別々になっていてもよい。
【0111】
(I)成分と(II)成分とを予め混合した1剤型となっている場合、本実施形態の撥水剤組成物は、(I)成分と(II)成分とを水性媒体に同時に分散させることにより、又は、(I)成分、(II)成分のそれぞれの分散液を混合することにより得ることができる。
【0112】
上記の各成分を水性媒体に分散する方法としては、例えば、各成分と、水性媒体と、必要により分散剤とを混合攪拌することが挙げられる。混合攪拌する場合、マイルダー、高速攪拌機、ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、ホモミキサー、ビーズミル、パールミル、ダイノーミル、アスペックミル、バスケットミル、ボールミル、ナノマイザー、アルチマイザー、スターバーストなどの従来公知の乳化分散機を用いてよい。これらの乳化分散機は、1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0113】
水性媒体としては、水、又は、水と水に混和する親水性溶剤との混合溶媒であることが好ましい。親水性溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、へキシレングリコール、グリセリン(1、ブチルグリコール、ブチルジグリコール、ソルフィット、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホオキサイドなどが挙げられる。
【0114】
上記分散液は、分散安定性の観点からは、界面活性剤をさらに含むことが好ましい。撥水性観点からは、界面活性剤を含まないことが好ましい。
【0115】
このような界面活性剤としては、分散安定性を向上することができるものであれば特に限定されず、前記(III)成分で挙げたものと同様のものを使用することができる。
【0116】
上記分散液は、そのまま処理液として使用してもよいし、さらに水性媒体又は疎水性有機溶媒で希釈することによって処理液とすることもできる。
【0117】
本実施形態の撥水性繊維製品と撥水性繊維製品の製造方法について説明する。
【0118】
本実施形態の撥水性繊維製品は、上述した本実施形態の撥水剤組成物が含まれる処理液で処理された繊維製品である。
【0119】
本実施形態の方法は、繊維を上述した本実施形態の撥水剤組成物が含まれる処理液で処理する工程を備える。この工程を経て、撥水性繊維製品が得られる。
【0120】
繊維の素材としては特に制限はなく、綿、麻、絹、羊毛などの天然繊維、レーヨン、アセテートなどの半合成繊維、ナイロン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリプロピレンなどの合成繊維及びこれらの複合繊維、混紡繊維などが挙げられる。繊維の形態は、糸、布、不織布、紙などのいずれの形態であってもよい。繊維は、繊維製品であってもよい。
【0121】
本実施形態の撥水剤組成物が含まれる処理液で繊維を処理する方法としては、例えば、(I)成分と(II)成分とを含む処理液を用いて1工程で処理する方法、上記2成分を別々に含む2種の分散液を用いて2工程で処理する方法を挙げることができる。2工程で処理する場合、それぞれの成分を処理する順番はどのような順番であってもかまわない。
【0122】
(III)成分を使用する場合は、(I)成分と(II)成分と(III)成分とを含む処理液を用いて1工程で処理する方法、上記3成分を別々にして2工程あるいは3工程で処理する方法を挙げることができる。
【0123】
繊維を上記処理液で処理する方法としては、例えば、浸漬、噴霧、塗布等の加工方法が挙げられる。また、撥水剤組成物が水を含有する場合は、繊維に付着させた後に水を除去するために乾燥させることが好ましい。
【0124】
本実施形態の撥水剤組成物の繊維への付着量は、要求される撥水性の度合いに応じて適宜調整可能であるが、撥水性と経済性の観点から、繊維100gに対して、撥水剤組成物の付着量が0.1~5gとなるように調整することが好ましく、0.1~3gとなるように調整することがより好ましい。
【0125】
また、本実施形態の撥水剤組成物を繊維に付着させた後は、適宜熱処理することが好ましい。温度条件は特に制限はないが、撥水性の観点から、110~180℃で1~5分間行うことが好ましい。
【0126】
本実施形態の撥水性繊維製品は、優れた初期撥水性を示すことから、ダウン用側地、コート、ブルゾン、ウインドブレーカー、ブラウス、ドレスシャツ、スカート、スラックス、手袋、帽子、布団側地、布団干しカバー、カーテン、テントまたは傘類など、衣類用途品、非衣類用途品などの繊維用途に好適に使用される。
【実施例
【0127】
以下に、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
【0128】
<(I)成分を含む分散液の調製>
(調製例A1)
(I)成分としてレオロシールHG-09(アミノ基とトリメチルシリル基を有するシリカ、(株)トクヤマ製)10質量部、酸成分として90%酢酸1質量部、有機溶剤としてブチルジグリコール44.5質量部、水44.5質量部とを混合した。次いで、超音波乳化機US-600E(株式会社日本精機製作所)を使用して60℃を維持しながら10分間分散した。その後冷却し、(I)成分を10質量%含む分散液を得た。
【0129】
(調製例A2~A10)
(I)成分の種類、酸成分の有無、有機溶剤の種類と使用量、水の使用量を表1に記載のように変えたこと以外は調製例A1と同様にして、(I)成分を10質量%含む分散液を得た。
【0130】
<その他のシリカを含む分散液の調製>
(調製例A11~A12)
(I)成分をその他のシリカに変え、有機溶剤の種類と使用量、水の使用量を表1に記載のように変えたこと以外は調製例A1と同様にして、その他のシリカを10質量%含む分散液を得た。
【0131】
(調製例A13)
その他のシリカとしてレオロシールZD-30ST(ヘキサメチルジシラザンで改質させたシリカ、(株)トクヤマ製)4.2質量部、有機溶剤としてMEK25.8質量部、界面活性剤としてステアリルトリメチルアンモニウムクロライド0.14質量部、水69.86質量部とを混合した。次いで、超音波乳化機US-600E(株式会社日本精機製作所)を使用して60℃を維持しながら10分間分散した。その後冷却し、その他のシリカを4.2質量%含む分散液を得た。
【0132】
【表1】
【0133】
表1中に示される化合物の詳細は以下のとおりである。
レオロシール HG-09:アミノ基及びトリメチルシリル基を有するシリカ、(株)トクヤマ製、商品名、BET比表面積65m/g、窒素含有量0.25質量%、炭素含有量1.5質量%
AEROSIL NA50H:アミノ基及びトリメチルシリル基を有するシリカ、日本アエロジル(株)製、商品名、BET比表面積50m/g
AEROSIL RA200H:アミノ基及びトリメチルシリル基を有するシリカ、日本アエロジル(株)製、商品名、BET比表面積150m/g、炭素含有量2.0~4.5質量%
AEROSIL RA200HS:アミノ基及びトリメチルシリル基を有するシリカ、日本アエロジル(株)製、商品名、BET比表面積140m/g、炭素含有量3.5質量%
レオロシール QS-40:シリカ、(株)トクヤマ製、商品名、BET比表面積65m/g、平均一次粒子径7nm
レオロシール ZD-30ST:ヘキサメチルジシラザンで改質させたシリカ、(株)トクヤマ製、商品名、炭素含有量2.8質量%、平均一次粒子径7nm
BDG:ブチルジグリコール
IPA:イソプロピルアルコール
MEK:メチルエチルケトン
DMF:ジメチルホルムアミド
【0134】
<(II)成分を含む分散液の調製>
(調製例B1)
(II)成分としてTSF-4709(アミノ変性シリコーンオイル、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、商品名)20質量部と、グリコール酸0.3質量部と、炭素数12~14の分岐アルコールのエチレンオキサイド5モル付加物4質量部と、ブチルジグリコール5質量部を混合した。次いで、得られた混合物に、水70.7質量部を少量ずつ混合しながら添加し、(II)成分を20質量%含む分散液を得た。
【0135】
(調製例B2~B12)
(II)成分として下記の樹脂を用いたこと以外は調製例B1と同様にして、(II)成分を20質量%含む分散液を得た。
(調製例B2)BY 16-872(アミノシリコーン、東レ・ダウコーニング(株)製、商品名)
(調製例B3)KF-8021(アミノシリコーン、信越化学工業(株)製、商品名)
(調製例B4)KF-101(エポキシシリコーン、信越化学工業(株)製、商品名)
(調製例B5)X-22-3701E(カルボキシリルシリコーン、信越化学工業(株)製、商品名)
(調製例B6)SF 8428(カルビノールシリコーン、東レ・ダウコーニング(株)製、商品名)
(調製例B7)KF-9901(メチルハイドロジェンシリコーン、信越化学工業(株)製、商品名)
(調製例B8)X-22-715(高級脂肪酸エステルシリコーン、信越化学工業(株)製、商品名)
(調製例B9)KF-96-3000cs(ジメチルシリコーン、信越化学工業(株)製、商品名)
(調製例B10)SF 8416(アルキルシリコーン、東レ・ダウコーニング(株)製、商品名)
(調製例B11)SH 203(アルキルアラルキルシリコーン、東レ・ダウコーニング(株)製、商品名)
(調製例B12)SF 8410(ポリエーテルシリコーン、東レ・ダウコーニング(株)製、商品名)
【0136】
(調製例B13)
KF8005(アミノ変性シリコーン、信越化学工業(株)製、商品名)18.5質量部と、蟻酸0.15質量部と、炭素数12~14の分岐アルコールのエチレンオキサイド5モル付加物0.5質量部とを混合した。次いで、得られた混合物に、水80.85質量部を少量ずつ混合しながら添加し、アミノ変性シリコーンを18.5質量%含む分散液を得た。
【0137】
MQ-1600(シリコーンレジン=トリメチルシリル基含有ポリシロキサン、東レ・ダウコーニング(株)製、商品名)15質量部に、ジメチルシリコーン(6cs、東レ・ダウコーニング(株)製、商品名)15質量部を添加し、シリコーンレジンが溶解するまで混合して、混合物を得た。得られた混合物18.5質量部と、炭素数12~14の分岐アルコールのエチレンオキサイド5モル付加物0.5質量部とを混合した。次いで、水81質量部を少量ずつ混合しながら添加し、シリコーンレジンとジメチルシリコーンとを合計で18.5質量%含む分散液を得た。
【0138】
上記アミノ変性シリコーン分散液と、シリコーンレジンとジメチルシリコーンとを含む分散液とを、100:117の割合で混合させ、(II)成分としてアミノ変性シリコーンとシリコーンレジンとジメチルシリコーンとを質量比で9.2:5.4:5.4で含む、20質量%分散液を得た。
【0139】
(調製例B14)
アミノ変性シリコーンとして両末端がシラノール変性しているアミノ変性シリコーンBY16-892(東レ・ダウコーニング(株)製、商品名)11.5質量部と無水酢酸0.5質量部とを窒素雰囲気下で100℃にて1時間反応させ、その後、炭素数12~14の分岐アルコールのエチレンオキサイド9モル付加物3.0質量部、イソプロパノール5.0質量部、蟻酸0.1質量部とを添加し混合した。次いで得られた混合物に、水79.9質量部を少量ずつ混合しながら添加し、(II)成分としてアミノ基の85%をアセチル基で封鎖したアミノ変性シリコーンを11.7質量%含む分散液を得た。
【0140】
(調製例B15)
500mL耐圧フラスコに、アクリル酸ステアリル30g、アクリル酸ラウリル10g、クロロエチレン20g、3スチレン化フェノール30モルエチレンオキサイド付加物5g、アーカードT-28(ライオン株式会社製、商品名、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム)3g、トリプロピレングリコール25g及び水206.7gを入れ、45℃にて混合攪拌し混合液とした。この混合液に超音波を照射して全単量体を乳化分散させた。次いで、アゾビス(イソブチルアミジン)二塩酸塩0.3gを混合液に添加し、窒素雰囲気下で60℃にて6時間ラジカル重合させて、(II)成分として非フッ素アクリル系ポリマーを20質量%含む分散液を得た。
【0141】
(調製例B16)
ウレタン樹脂エマルジョンのエバファノールAE-12(日華化学(株)製、商品名)に水を添加し、(II)成分としてウレタン樹脂を20質量%含む分散液を得た。
【0142】
(調製例B17)
エポキシ樹脂エマルジョンのTerrific GC-100B((株)グローケミカル製、商品名)に水を添加し、(II)成分としてエポキシ樹脂を20質量%含む分散液を得た。
【0143】
(調製例B18)
メラミン樹脂溶液のユニカレジン 380-K(ユニオン化学工業(株)製、商品名)に水を添加し、(II)成分としてメラミン樹脂を20質量%含む分散液を得た。
【0144】
(調製例B19)
フッ化炭化水素基の炭素数が6であるパーフルオロアルキル基を有するフッ素樹脂エマルジョンのNKガード S-33(日華化学(株)製、商品名)に水を添加し、(II)成分としてフッ素樹脂を20質量%含む分散液を得た。
【0145】
(調製例B20)
アクリル樹脂エマルジョンのネオシードNR-90(日華化学(株)製、商品名)に水を添加し、(II)成分としてアクリル樹脂を20質量%含む分散液を得た。
【0146】
<(I)成分及び(II)成分を含む分散液の調製>
(調製例C1)
(I)成分として調製例A1のシリカ微粒子分散液と、(II)成分として調製例B1のアミノ変性シリコーン樹脂分散液とを質量比8:1の割合で混合し、(I)成分及び(II)成分を、質量比80:20で含む11.1質量%分散液を得た。
【0147】
<(III)成分の準備>
(調製例D1)
トリメチロールプロパンとトルエンジイソシアネートとの反応生成物として、Polurene AD(トリメチロールプロパンとトルエンジイソシアネート(2,4異性体と2,6異性体との質量比は80:20)との反応生成物の含有量75質量%、溶剤:酢酸エチル、SAPICI社製、商品名)を用意した。
【0148】
上記で用意したトリメチロールプロパンとトルエンジイソシアネートとの反応生成物1モルを60~70℃まで加熱した。次いで、メチルエチルケトオキシム3モルをゆっくりと仕込み、60~70℃で赤外分光光度計にて確認されるイソシアネート含量がゼロになるまで反応させ、酢酸エチルを添加して、メチルエチルケトオキシムブロックポリイソシアネート化合物を98.7質量%含む無色透明の粘稠液状組成物を得た。
【0149】
上記で得られた組成物180質量部と、非イオン界面活性剤として3スチレン化フェノールのエチレンオキサイド30モル付加物20質量部とを混合し、均一化した。撹拌しながら徐々に水を仕込んだ後、30MPaにてホモジナイザー処理を行い、(III)成分としてトリメチロールプロパンとトルエンジイソシアネートとの反応生成物のメチルエチルケトオキシムブロック化物を40質量%含む分散液を得た。
【0150】
(調製例D2)
(III)成分としてベッカミンM-3(メラミン/ホルムアルデヒド系、DIC株式会社製、商品名)を準備した。
【0151】
(調製例D3)
(III)成分としてベッカミンACX(有機アミン系触媒、DIC株式会社製、商品名)を準備した。
【0152】
<撥水性繊維製品の作製>
(実施例1)
(I)成分として調製例A1で得られたシリカ微粒子分散液を9.6質量%、(II)成分として調製例B1で得られたアミノ変性シリコーン樹脂分散液を1.2質量%、(III)成分として調製例D1で得られた分散液を0.5質量%、ナイスポールFE-26(帯電防止剤、日華化学(株)製、商品名)を0.5質量%及びテキスポートBG-290(浸透剤、日華化学(株)製、商品名)を0.5質量%となるように水で希釈した処理液に、染色を行ったポリエステル100%布又はナイロン100%布を浸漬処理(ピックアップ率60質量%)した後、130℃で1分間乾燥した。更にポリエステル100%布においては180℃で30秒間熱処理をし、ナイロン100%布においては170℃で30秒間熱処理を行い、撥水性繊維製品を得た。なお、表3中に、(I)成分の配合量と(II)成分の配合量との質量比、並びに、(I)成分及び(II)成分の合計配合量と(III)成分の配合量との質量比を示す。
【0153】
(実施例2~32、34~37、比較例1~5、参考例1)
(I)成分の種類と使用量、その他のシリカの種類と使用量、(II)成分の種類と使用量、(III)成分の種類と使用量を表3~7に示すように変えたこと以外は実施例1と同様に操作を行って、実施例2~32、34~36、比較例1~5、参考例1の撥水性繊維製品をそれぞれ得た。比較例4はその他のシリカの浮遊が発生し均一な処理浴が作成できなかったため、撥水性繊維製品を得ることができなかった。
【0154】
(実施例33)
調製例A1で得られた分散液と調製例B1で得られた分散液に代えて、調製例C1で得られた(I)成分及び(II)成分を含む分散液を10.9質量%用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例33の撥水性繊維製品を得た。
【0155】
上記で得られた撥水性繊維製品について、下記の方法にて、撥水性、水滴の転落角を測定した。結果を表3~7に示す。
【0156】
(繊維製品の撥水性評価)
JIS L 1092(2009)のスプレー法に準じてシャワー水温を20℃として試験をした。結果は目視にて下記の等級で評価した。なお、特性がわずかに良好な場合は等級に「+」をつけ、特性がわずかに劣る場合は等級に「-」をつけた。
撥水性:状態
5:表面に付着湿潤のないもの
4:表面にわずかに付着湿潤を示すもの
3:表面に部分的湿潤を示すもの
2:表面に湿潤を示すもの
1:表面全体に湿潤を示すもの
0:表裏両面が完全に湿潤を示すもの
【0157】
(水滴転落角)
繊維製品が水平となるように設置し、その表面に100μLの水滴を置いた。次いで、繊維製品を傾けていき、水滴が転がる角度(°)を計測し、これを水滴転落角(°)とした。なお、水滴転落角が小さいほど撥水性が優れることを示す。
【0158】
【表2】
【0159】
【表3】
【0160】
【表4】
【0161】
【表5】
【0162】
【表6】
【0163】
【表7】
【0164】
実施例1~37の撥水剤組成物によれば、従来の非フッ素系撥水剤に比べて良好な撥水性が得られることが確認された。また、本発明によれば、フッ素系撥水剤の撥水性を更に向上させることができ、実施例32と参考例1との対比で示されるように、フッ素樹脂の使用量を低減しつつ良好な撥水性を得ることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0165】
本発明によれば、従来の非フッ素系撥水剤に比べ良好な撥水性を繊維製品等に与えることができる撥水剤組成物、該組成物で処理された撥水性繊維製品及び該繊維製品の製造方法を提供することができる。