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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-17
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】複数の電気解剖学的マップの自動形成
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/367 20210101AFI20220106BHJP
   A61B 5/35 20210101ALI20220106BHJP
【FI】
A61B5/367
A61B5/35
【請求項の数】 18
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017131711
(22)【出願日】2017-07-05
(65)【公開番号】P2018000966
(43)【公開日】2018-01-11
【審査請求日】2020-04-15
(31)【優先権主張番号】15/202,990
(32)【優先日】2016-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】オフラ・イユン
(72)【発明者】
【氏名】ノガ・サロモン
(72)【発明者】
【氏名】ガリア・ギバティ
(72)【発明者】
【氏名】エリラン・グジ
(72)【発明者】
【氏名】ウラジミール・ルビンシュタイン
(72)【発明者】
【氏名】メイル・バル-タル
(72)【発明者】
【氏名】モリス・ジブ-アリ
【審査官】▲高▼原 悠佑
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0057507(US,A1)
【文献】国際公開第95/002995(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0288009(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0108992(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/24-5/398
A61N 1/36-1/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサを備える装置の作動方法であって、
前記プロセッサが、生体被験者の心臓の電位図を複数のチャンネルに記録するステップであって、前記電位図は、形態学的特徴を有する複数の拍動を含む、ステップと、
前記プロセッサが、前記拍動の前記形態学的特徴の、テンプレートセットのメンバーに対する類似性に従って、前記拍動を対応する分類に自動的に配置するステップと、
前記プロセッサが、前記対応する分類における前記拍動から前記心臓の複数の電気解剖学的マップを生成するステップと、を含み、
前記拍動を対応する分類に配置することは、
前記プロセッサが、すべての前記チャンネルにおける選択した拍動の事例と前記テンプレートセットのメンバーとの間の対応する全体相関を計算するステップと、
前記プロセッサが、前記選択した拍動を、前記全体相関のうち最高ランクのものを有する前記テンプレートセットのメンバーと関連付けることを、前記全体相関のうち前記最高ランクのものが予め規定された相関閾値を超えたときに行なうステップと、を含み、
前記全体相関が、前記選択した拍動の最大信号振幅と前記テンプレートセットのメンバーの最大信号振幅の和に基づき算出される重み付き相関である、
方法。
【請求項2】
前記電位図の記録が複数の電極を用いて行なわれて、前記プロセッサが前記複数の電極に対応する電位図を形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記テンプレートセットは予め規定されたテンプレートを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
更に、
前記プロセッサが、前記全体相関のうちどれも前記予め規定された相関閾値を超えないときに、前記テンプレートセットに、前記選択した拍動を新しいメンバーとして形成するステップを含む、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記拍動を対応する分類に配置することは、
前記プロセッサが、前記テンプレートセットに、選択した拍動を新しいメンバーとして形成するステップと、
前記プロセッサが、すべての前記チャンネルにおける拍動の事例と前記新しいメンバーとの間の全体相関を計算するステップと、
前記プロセッサが、前記全体相関が予め規定された相関閾値を超えたときに、前記拍の事例を前記新しいメンバーと関連付けるステップと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
全体相関を計算することは、
前記プロセッサが、前記チャンネルにおける前記拍の事例と前記新しいメンバーとの間の対応する相関を計算することと、
前記プロセッサが、前記電位図における前記拍の事例の最大信号振幅に従って前記対応する相関を重み付けすることと、を含む、請求項に記載の方法。
【請求項7】
更に、
前記プロセッサが、前記全体相関が前記予め規定された相関閾値を超えないときに、
前記電位図の位相をシフトさせることと、
前記プロセッサが、その後に前記計算するステップ及び関連付けるステップを繰り返すことと、を含む、請求項に記載の方法。
【請求項8】
装置であって、
複数の電極を遠位部分に有するプローブと、
前記プローブが生体被験者の心臓内のある位置にあるときに、前記電極からの対応する時間的に変化する電位図を記録するための電気回路と、
前記電位図を記憶するためのメモリと、
表示装置と、
前記メモリに接続されたプロセッサであって、
前記電位図を複数のチャンネルに記録するステップであって、前記電位図は、形態学的特徴を有する複数の拍動を含む、ステップと、
前記拍動の前記形態学的特徴の、テンプレートセットのメンバーに対する類似性に従って、前記拍動を対応する分類に自動的に配置するステップと、
前記対応する分類における前記拍動から前記心臓の複数の電気解剖学的マップを生成するステップと、
前記マップを前記表示装置上に示すステップと、を行なうように動作するプロセッサと、を含み、
前記拍動を対応する分類に配置することは、
すべての前記チャンネルにおける選択した拍動の事例と前記テンプレートセットのメンバーとの間の対応する全体相関を計算するステップと、
前記選択した拍動を、前記テンプレートセットにおける前記全体相関のうち最高ランクのものを有するメンバーと関連付けることを、前記全体相関のうち前記最高ランクのものが予め規定された相関閾値を超えたときに行なうステップと、を含み、
前記全体相関が前記選択した拍動の最大信号振幅と、前記テンプレートセットのメンバーの最大信号振幅の和に基づき算出される重み付き相関である、
装置。
【請求項9】
前記テンプレートセットは予め規定されたテンプレートを含む、請求項に記載の装置。
【請求項10】
前記プロセッサは、
前記全体相関のうちどれも前記予め規定された相関閾値を超えないときに、前記テンプレートセットに、前記選択した拍動を新しいメンバーとして形成するステップを行なうように動作する、請求項に記載の装置。
【請求項11】
前記拍動を対応する分類に配置することは、
記テンプレートセットに選択した拍動を新しいメンバーとして形成するステップと、
すべての前記チャンネルにおける拍動の事例と前記新しいメンバーとの間の全体相関を計算するステップと、
前記全体相関が予め規定された相関閾値を超えたときに、前記拍の事例を前記新しいメンバーと関連付けるステップと、を含む、請求項に記載の装置。
【請求項12】
全体相関を計算することは、
前記チャンネルにおける前記拍の事例と前記新しいメンバーとの間の対応する相関を計算することと、
前記電位図における前記拍の事例の最大信号振幅に従って前記対応する相関を重み付けすることと、を含む、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記プロセッサは、
前記全体相関が前記予め規定された相関閾値を超えないときに、
前記電位図の位相をシフトさせるステップと、
その後に前記計算するステップ及び関連付けるステップを繰り返すステップと、を行なうように動作する、請求項11に記載の装置。
【請求項14】
コンピュータソフトウェア製品であって、コンピュータプログラム命令が記憶された非一時的コンピュータ可読記憶媒体を含み、前記命令は、コンピュータによって実行されると、前記コンピュータに、
複数のチャンネルにおいて生体被験者の心臓の電位図を受容するステップであって、前記電位図は、形態学的特徴を有する複数の拍動を含む、ステップと、
前記拍動の前記形態学的特徴の、テンプレートセットのメンバーに対する類似性に従って、前記拍動を対応する分類に自動的に配置するステップと、
前記対応する分類における前記拍動から前記心臓の複数の電気解剖学的マップを生成するステップと、を実行させ、
前記拍動を対応する分類に配置することは、
すべての前記チャンネルにおける選択した拍動の事例と前記テンプレートセットのメンバーとの間の対応する全体相関を計算するステップと、
前記選択した拍動を、前記テンプレートセットにおける前記全体相関のうち最高ランクのものを有するメンバーと関連付けることを、前記全体相関のうち前記最高ランクのものが予め規定された相関閾値を超えたときに行なうステップと、を含み、
前記全体相関が前記選択した拍動の最大信号振幅と、前記テンプレートセットのメンバーの最大信号振幅の和に基づき算出される重み付き相関である、
コンピュータソフトウェア製品。
【請求項15】
前記コンピュータは更に、
前記全体相関のうちどれも前記予め規定された相関閾値を超えないときに、前記テンプレートセットに選択した拍動を新しいメンバーとして形成するステップを実行するように命令される、請求項14に記載のコンピュータソフトウェア製品。
【請求項16】
前記拍動を対応する分類に配置することは、
記テンプレートセットに選択した拍動を新しいメンバーとして形成するステップと、
すべての前記チャンネルにおける拍動の事例と前記新しいメンバーとの間の全体相関を計算するステップと、
前記全体相関が予め規定された相関閾値を超えたときに、前記拍の事例を前記新しいメンバーと関連付けるステップと、を含む、請求項14に記載のコンピュータソフトウェア製品。
【請求項17】
全体相関を計算することは、
前記チャンネルにおける前記拍の事例と前記新しいメンバーとの間の対応する相関を計算することと、
前記電位図における前記拍の事例の最大信号振幅に従って前記対応する相関を重み付けすることと、を含む、請求項16に記載のコンピュータソフトウェア製品。
【請求項18】
更に、
前記全体相関が前記予め規定された相関閾値を超えないときに、
前記電位図の位相をシフトさせることと、
その後に前記計算するステップ及び関連付けるステップを繰り返すことと、を含む、請求項16に記載のコンピュータソフトウェア製品。
【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
(著作権情報)
本特許文献の開示の一部には、著作権保護の対象となる資料が含まれる。著作権者は、特許文献又は特許情報開示のうちの任意のものによる複製に対して、それが特許商標庁特許出願又は記録において明らかであるとき、異議を唱えないが、そうでなければ、たとえ何であってもすべての著作権を保有する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、身体の生体電気信号の検出、測定、又は記録に関する。より詳細には、本発明は心臓の電気解剖学的マップの生成に関する。
【背景技術】
【0003】
本明細書で使用される特定の頭字語及び略語の意味を表1に示す。
【0004】
【表1】
【0005】
心房細動などの心不整脈は、罹患及び死亡の重要な原因である。本出願の譲受人に共通に譲渡された米国特許第5,546,951号及び米国特許第6,690,963号(両方ともBen Haimに付与)並びにPCT出願WO 96/05768(これらはすべて本明細書において参照により取り入れられている)には、心臓組織の電気特性(例えば、局所興奮時間)を心臓内の正確な位置の関数として検知する方法が開示されている。データは、遠位先端部に電気及び場所センサを有する、心臓内に進められる、1つ又は2つ以上のカテーテルを用いて取得される。これらのデータに基づいて心臓の電気活動のマップを作成する方法は、参照により本明細書に援用される、共にReisfeldに付与された、本願と同一譲受人に譲渡された米国特許第6,226,542号及び米国特許第6,301,496号に開示されている。これらの特許に示唆されているように、場所及び電気活動は、通常、心臓の内側表面上の約10~約20箇所の点で最初に測定される。これらのデータ点は、その後、心臓表面の予備的な再構成又はマップを生成するのに概ね充分である。かかる予備的なマップは、心臓の電気活動のより包括的なマップを生成するために、更なる点で採取されたデータと組合せられる場合が多い。実際、臨床現場では、100箇所以上の部位におけるデータを蓄積して、心腔の電気活動の詳細な包括的マップを生成することも珍しいことではない。その後、生成された詳細なマップは、心臓の電気活動の伝播を変化させ、正常な心調律を回復させるために、治療上の行動指針、例えば、組織のアブレーションを決定するための基準となり得る。
【0006】
従来、特定のタイプの不整脈(不整脈の信号形態を特徴とする)が、電気解剖学的記録から生成される単一の電気解剖学的マップ上に観察される場合がある。電気的な記録に存在する他の不整脈は手作業で削除されることが多い。医師がいくつかの形態を検出した場合、医師はポリモーフィック拍動との混合マップを形成して、しばらくした後に、新しい開かれたマップへポイントを移動することによって拍動を分離する場合がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態では、電気解剖学的記録を用いて、データセットに存在する場合がある種々の不整脈の複数のマップを生成する。ユーザはすべての利用可能なデータを同時に用いてもよい。特定の不整脈をマッピングするときであっても、異なる不整脈を表す心臓周期(本明細書では「拍動」ともいう)を更なるマップ上に記録して取得するか、又は記憶装置バンクに保存する。
【0008】
セッション中に、患者は種々の不整脈状態を示す場合がある。例えば患者は、洞リズム、心室性期外収縮、心房粗動、及び心室性頻脈症の間の種々の組合せ及び副組合せにおいて移行を示す場合がある。種々の不整脈は電気解剖学的マップに影響する。本発明の実施形態では、心内電位図を形態学的に分析して種々の不整脈を伴う拍動を特定し、同時に、対応する電気解剖学的マップを生成する。個々の不整脈に対応する別個のマップを形成するために種々の形態を分離する別個の操作が必要であることが回避される。
【0009】
本発明の実施形態により、異なる不整脈の信号形態の個々のテンプレートに基づいて複数のマップが自動的に形成される。マップを調製するために用いられる信号は心臓内信号又は体表面信号であってもよい。
【0010】
一実施形態では、ある特定の不整脈を表す予め規定されたテンプレートを設ける。ユーザが心腔内のデータを収集する間に、各拍動の形態をリアルタイムでテンプレートと比較することができる。拍動を形態に基づいてマップに対して受容又は拒否する。
【0011】
別の実施形態では、異なる不整脈のテンプレートを、記録された拍動形態に基づいて、適応して調製する。
【0012】
本発明の実施形態によって、方法であって、生体被験者の心臓の電位図を複数のチャンネルに記録することと、拍動の形態学的特徴の、テンプレートセットのメンバーに対する類似性に従って、電位図の拍動を対応する分類に自動的に配置することと、対応する分類における拍動から心臓の複数の電気解剖学的マップを生成することと、によって行なう方法が提供される。
【0013】
本方法の一態様によれば、記録が複数の電極を用いて行なわれて、複数の対応する電位図を形成する。
【0014】
本方法の更なる態様によれば、テンプレートセットを予め規定する。
【0015】
本方法の別の態様では、拍動を対応する分類に配置することは、すべてのチャンネルにおける選択した拍動の事例とテンプレートセットのメンバーとの間の対応する全体相関を計算することと、選択した拍動を、最高ランクの相関を有するテンプレートセットのメンバーと関連付けることを、相関が予め規定された相関閾値を超えたときに行なうことと、を含む。
【0016】
全体相関のうちどれも予め規定された相関閾値を超えないときに、本方法は更に、選択した拍動を伴う新しいテンプレートセットのメンバーを形成することによって行なわれる。
【0017】
本方法の更なる態様では、拍動を対応する分類に配置することを、選択した拍動を伴う新しいテンプレートセットのメンバーを形成することと、すべてのチャンネルにおける選択した拍動の事例と新しいメンバーとの間の全体相関を計算することと、全体相関が予め規定された相関閾値を超えたときに、選択した拍動を新しいメンバーと関連付けることと、によって行なう。
【0018】
本方法の更に別の態様によれば、全体相関を計算することは、チャンネルにおける選択した拍動の事例と新しいメンバーとの間の対応する相関を計算することと、電位図における選択した拍動の事例の最大信号振幅に従って対応する相関を重み付けすることと、を含む。
【0019】
本方法の更に別の態様が、全体相関が予め規定された相関閾値を超えないときに、電位図の位相をシフトさせ、その後に計算するステップ及び関連付けるステップを繰り返すことによって行なわれる。
【0020】
更に、本発明の実施形態により、装置であって、複数の電極を遠位部分に有するプローブと、プローブが生体被験者の心臓内のある位置にあるときに、電極からの対応する時間的に変化する電位図を記録するための電気回路と、電位図を記憶するためのメモリと、表示装置と、メモリに接続されたプロセッサであって、生体被験者の心臓の電位図を複数のチャンネルに記録することと、拍動の形態学的特徴の、テンプレートセットのメンバーに対する類似性に従って、電位図の拍動を対応する分類に自動的に配置することと、対応する分類における拍動から心臓の複数の電気解剖学的マップを生成することと、マップを表示装置上に示すことと、を行なうためのプロセッサと、を含む装置が提供される。
【0021】
更に、本発明の実施形態により、コンピュータソフトウェア製品であって、コンピュータプログラム命令が記憶された非一時的コンピュータ可読記憶媒体を含み、この命令は、コンピュータによって実行されると、コンピュータに、複数のチャンネルにおいて生体被験者の心臓の電位図を受容するステップと、拍動の形態学的特徴の、テンプレートセットのメンバーに対する類似性に従って、電位図の拍動を対応する分類に自動的に配置するステップと、対応する分類における拍動から心臓の複数の電気解剖学的マップを生成するステップと、を含む方法を実行させる、コンピュータソフトウェア製品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本発明をより良く理解するために、例を用いて本発明の詳細な説明について言及するが、その説明は以下の図面と併せて読まれるべきであり、図面における同様の要素には、同様の参照数字が与えられている。
図1】本発明の一実施形態による、生体被験者の心臓における電気的活動を評価するためのシステムの描図である。
図2】本発明の実施形態により心臓の電気解剖学的マップを調製するための方法のフロー図である。
図3】本発明の実施形態による信号分析アルゴリズムの操作を例示する概略的なブロック図である。
図4】本発明の実施形態による形態適合フィルタのブロック図である。
図5】本発明の実施形態による図4に示すフィルタの詳細なブロック図である;
図6】本発明の実施形態による相関計算のグラフ表示である。
図7】本発明の実施形態による全体重み付き相関のグラフ表示である。
図8】本発明の実施形態による循環の心臓の電位図に位相シフトを導入するための方法のグラフ表示である。
図9】本発明の実施形態による複数の電気解剖学的マップ形成の方法のフローチャートである。
図10】心内電位図から得られた拍動のグループを、本発明の実施形態により分析した図表である。
図11図10に示す電位図と本発明の実施形態により選択された基準テンプレートとの間の相関を例示するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下の説明では、本発明の様々な原理が十分に理解されるように、多くの具体的な詳細について記載する。しかしながら、これら詳細のすべてが本発明を実施するうえで必ずしも必要であるとは限らないことは当業者には明らかであろう。この場合、一般的な概念を無用に分かりにくくすることのないよう、周知の回路、制御論理、並びに従来のアルゴリズム及びプロセスに対するコンピュータプログラム命令の詳細については、詳しく示していない。
【0024】
参照により本明細書に援用される文書は本出願の一体部分と見なされるべきであり、いずれかの用語が、それらの援用された文書内で、本明細書で明示的又は暗示的に行なわれる定義と相反するように定義される場合を除き、本明細書における定義のみが考慮されるべきである。
【0025】
定義
「注釈」又は「注釈ポイント」は、関心のある事象を示すと考えられる電位図上の時間のポイントを指す。本開示において、イベントは、典型的には、電極により感知される電気波の伝播の局所興奮到達時間である。
【0026】
本明細書で使用される、電位図における「活動」は、電位図信号の突発的又は起伏的変化を明確に示す領域を指す。そのような領域は、ベースライン信号の領域間の顕著なものとして認識され得る。本開示において、「活動」とは、心臓を通る1つ又は2つ以上の電気的伝播波の電位図上に現れる徴候を指すことの方が多い。
【0027】
「波」とは、心臓のマッピングされたエリア内での、連続的電気的伝播を指す。
【0028】
概論。
これから図面に目を向けると、開示される本発明の一実施形態に基づいて構築され動作可能である、生体被験者の心臓12に対してアブレーション処置を行なうためのシステム10の描図である図1を最初に参照する。このシステムは、患者の脈管系を通って心臓12の腔又は脈管構造内に操作者16によって経皮挿入されるカテーテル14を備えている。通常は医師である操作者16が、カテーテルの遠位先端18を、心臓壁、例えば、アブレーション標的部位と接触させる。電気起動マップを、以下に開示された方法に従って調製してもよい。米国特許第6,226,542号及び第6,301,496号、並びに本出願の譲受人に共通に譲渡された米国特許第6,892,091号、及び米国特許出願公開第20070197929号、発明の名称「Mapping of Complex Fractionated Atrial Electrogram」(これらのすべての開示内容は本明細書において参照により取り入れられている)。
【0029】
システム10は、以下に説明する機能を実行するための好適なソフトウェアでプログラムされた汎用又は組込み型コンピュータプロセッサを備えることができる。したがって、システム10の、本明細書の他の図に示されている部分は、いくつかの別個の機能ブロックを含むものとして示されているが、これらのブロックは必ずしも別個の物体ではなく、むしろ例えば、プロセッサが利用できるメモリに格納されている異なる計算タスク又はデータオブジェクトを表わし得る。これらのタスクは、単一のプロセッサ又は複数のプロセッサで動作するソフトウェアで実行することができる。ソフトウェアは、1つ又は複数のプロセッサに、CD-ROM又は不揮発性メモリのような有形の非一時的媒体で提供され得る。あるいは、又は加えて、システム10は、デジタル信号プロセッサ又は実配線ロジックを備えてもよい。システム10の要素を具現化する1つの市販の製品は、Biosense Webster,Inc.(3333 Diamond Canyon Road,Diamond Bar,CA 91765)より入手可能な、CARTO(登録商標)3システムとして入手可能である。このシステムは、本明細書に説明される本発明の原理を具現化するように、当業者によって変更されてもよい。
【0030】
例えば電気的活動マップの評価によって異常と判定された区域は、熱エネルギーの印加によって、例えば、心筋に高周波エネルギーを印加する、遠位先端18での1つ又は2つ以上の電極に、高周波電流をカテーテル内のワイヤを介して流すことによって、アブレーションすることができる。エネルギーは組織に吸収され、組織を電気的興奮性が永久に失われる点(一般的には約50℃)まで加熱する。成功裏に行なわれた場合、この処置によって心臓組織に非伝導性の損傷部が形成され、この損傷部が、不整脈を引き起こす異常な電気経路を遮断する。本発明の原理は、異なる心室に適用されて、多数の異なる心不整脈を診断及び治療することができる。
【0031】
カテーテル14は、通常、アブレーションを行なうために、操作者16がカテーテルの遠位端の操舵、位置決め、及び配向を所望のとおりに行なうことを可能にする、好適な制御部を有するハンドル20を備えている。操作者16を補助するため、カテーテル14の遠位部分には、コンソール24内に配置されたプロセッサ22に信号を供給する位置センサ(図示せず)が収容されている。プロセッサ22は、後述のようないくつかの処理機能を果たすことができる。
【0032】
カテーテル14は典型的に多電極カテーテルである。多電極カテーテルは、バルーン37の上部に示すようなバスケットカテーテル、又は下部に示すようなスプラインカテーテルとすることができる。いずれの場合にも、複数の電極32が存在し、これらは、感知電極として使用され、バスケット又はスプライン上の既知の配置、及びそれらの既知の相互関係を有する。このため、カテーテルが心臓内に配置されると、例えば、電流位置マップを構築することにより、心臓内の電極32の各々の位置が分かる。電流位置マップを生成するための1つの方法は、参照により本明細書に援用される、本願と同一譲受人に譲渡された、Bar-Talらに対する米国特許第8,478,383号に記載されている。
【0033】
電気信号は、カテーテル14の遠位先端18に又は遠位先端18近くに配置された電極32からケーブル34を介して心臓12へと、かつ心臓12からコンソール24へと伝達され得る。ペーシング信号及び他の制御信号は、コンソール24から、ケーブル34及び電極32を介して、心臓12へと伝達され得る。
【0034】
ワイヤ接続部35は、コンソール24を、体表面電極30、並びにカテーテル14の位置座標及び配向座標を測定するための位置決めサブシステムの他の構成要素と連結する。プロセッサ22又は別のプロセッサ(図示せず)は、位置決定サブシステムの要素であってよい。参照により本明細書に援用される、Govariらに付与された米国特許第7,536,218号において教示されているように、電極32及び体表面電極30を使用して、アブレーション部位における組織インピーダンスを測定してもよい。温度センサ(図示せず)、通常、熱電対又はサーミスタが、カテーテル14の遠位先端18近くに搭載されてもよい。
【0035】
コンソール24には通常、1つ又は2つ以上のアブレーション電力発生装置25が収容されている。カテーテル14は、例えば、高周波エネルギー、超音波エネルギー、及びレーザー生成光エネルギー等の任意の既知のアブレーション技術を使用して、心臓にアブレーションエネルギーを伝導するように適合され得る。そのような方法は、参照により本明細書に援用される、本願と同一譲受人に譲渡された米国特許第6,814,733号、同第6,997,924号、及び同第7,156,816号に開示されている。
【0036】
一実施形態では、位置決めサブシステムは、磁場生成コイル28を使用して、所定の作業体積内に磁場を生成し、カテーテルにおけるこれらの磁場を検知することによって、カテーテル14の位置及び配向を判定する磁気位置追跡配置を備える。位置決めサブシステムは、参照により本明細書に援用されている米国特許第7,756,576号、及び上記の米国特許第7,536,218号に記載されている。
【0037】
上述のように、カテーテル14は、コンソール24に連結されており、これにより操作者16は、カテーテル14を観察し、その機能を調節することができる。コンソール24は、プロセッサ、好ましくは、適切な信号処理回路を有するコンピュータを含む。プロセッサは、モニタ29を駆動するように連結される。信号処理回路は、通常、カテーテル14内の遠位に位置する上述の(図示しない)センサ及び複数の位置検知電極によって生成される信号を含むカテーテル14からの信号を、受信、増幅、フィルタリング、及びデジタル化する。デジタル化された信号は、コンソール24及び位置決めシステムによって受信され、カテーテル14の位置及び配向を計算し、かつ以下に更に詳細に記載される電極からの電気信号を分析するために使用される。
【0038】
簡略化のために図示されないが、通常、システム10は、他の要素を含む。例えば、システム10は、心臓の電位図(ECG)モニタを含み得るが、このECGモニタは、ECG同期信号をコンソール24に供給するために、1つ又は2つ以上の体表面電極から信号を受信するように連結される。上述のように、システム10は、通常、被験者の身体の外側に取り付けられた外側取付参照パッチ上、又は、心臓12内に挿入され、心臓12に対して固定位置に維持された内側に位置するカテーテル上のいずれかに、参照位置センサも含む。システム10は、画像データを外部MRIユニット等のような外部の画像診断モダリティから受信することができ、以下に説明される画像を生成及び表示するために、プロセッサ22に組み込まれ得るか、又はプロセッサ22によって起動され得る画像プロセッサを含む。
【0039】
次に図2を参照して、本発明の実施形態により心臓の電気解剖学的マップを調製するための方法の高レベルフロー図である。プロセスステップは、表示の明瞭化のために、図2における特定の直線的シーケンス及び本明細書における他のフロー図に示される。しかしながら、かかる工程の多くは、並行して、非同期的に、又は異なる順序で行なわれてもよい点は明らかであろう。当業者であれば、プロセスを、例えば、状態図において、多数の相互に関連する状態又は事象としても代替的に表わされ得ることを理解するであろう。更に、例示されているプロセスステップのすべてが、かかる方法の実施に必要とされるわけではない。
【0040】
最初のステップ39において、心臓に従来のとおりカテーテルを挿入する。これを、通常は、必ずしもそうではないが、多電極マッピングカテーテルを用いて行なう。Biosense Websterから入手できるPentaRay(登録商標)NAV又はNavistar(登録商標)Thermocool(登録商標)カテーテルのようなカテーテルが、最初のステップ39に好適である。カテーテルの電極を、心腔の1つにおける対応する位置とガルバニック接触で配置する。付加的に又は代替的に、ECG読み取り値を記録してもよい。
【0041】
次にステップ41において、カテーテルの複数の電極を用いて心内電位図を記録して注釈を付ける。各電極は対応する位置を有し、位置はシステム10の位置追跡機能を用いて決定することができる(図1)。記録を得て処理することを同時に行なってもよい。カテーテルセッションの全体に渡って、カテーテルを心臓内で操縦するときに電位図を記録してデータ収集してもよい。付加的に又は代替的に、データを「ハンチングモード」で収集してもよい。「ハンチングモード」では、カテーテルは位置が安定しており、オペレータは全般的にリズム変化を、又は特定の不整脈の様相を待ち受ける。データ収集を単極又は双極電極構成を用いて行なってもよい。
【0042】
心内電位図の注釈を、以下の教示を用いて行なってもよい。本出願の譲受人に共通に譲渡された米国特許出願公開第20150073246号、発明の名称「Method for Mapping Ventricular/Atrial Premature Beats During Sinus Rhythm」、米国特許第9,380,953号、発明の名称「Hybrid Bipolar/Unipolar Detection of Activation Wavefront」、及び米国特許出願公開第20150208942号、発明の名称「Double Bipolar Configuration for Atrial Fibrillation Annotation」(これらは本明細書において参照により取り入れられている)。
【0043】
次に拍動取得ステップ43を行なう。ステップ43は、テンプレート選択ステップ45と、テンプレート適合ステップ47とを含んでいる。テンプレート適合ステップ47では、心内電位図の形態は自動的に、テンプレートに心拍ごとに適合される。ステップ43はまた、分類された拍動データを対応する記憶装置に蓄積するステップ49を含んでいる。
【0044】
次に最終ステップ51で、機能的な電気解剖学的マップ(例えば、LATマップ)を、ステップ43で特定した各種類に対して自動的に生成する。
【0045】
不整脈特定。
セッション中に、患者は種々の不整脈状態を示す場合がある。例えば患者は、洞リズム、心室性期外収縮、心房粗動、及び心室性頻脈症の間の種々の組合せ及び副組合せにおいて移行を示す場合がある。種々の不整脈は電気解剖学的マップに影響する。本発明の実施形態では、心内電位図を形態学的に分析し、種々の不整脈を伴う拍動を特定し、すべての形態学的テンプレートを検出して、同時に、対応する電気解剖学的マップを生成する。各マップは、個々のテンプレートに対応する形態学的拍動を含んでいるため、同じ不整脈を表す。
【0046】
次に図3を参照して、本発明の実施形態による信号分析アルゴリズムの操作を例示する概略的なブロック図である。アルゴリズムは、心不整脈を表すテンプレートを用いて拍動を形態学的に特定する。アルゴリズムはプロセッサ53によって実行される。入力データは、体表面電極又は内部の単極若しくは双極電極から得られた処理された信号55を含む。入力データは、参照注釈57、パターン59、及び相関閾値61を含んでいる。すべての入力は形態適合フィルタ63に送信される。アルゴリズムの出力には、受容された拍動65、拍動の単一チャンネルとの相関67、及び全体的な振幅重み付き相関69が含まれる。出力を表示装置71上に示してもよい。使用目的によっては、相関計算を連続的に行なうことが、予め定められた離散的なポイントの周りにテンプレートを位置させるのではなくて、ECG信号に対してテンプレートを移動させることによって可能となる。
【0047】
次に図4を参照して、本発明の実施形態による形態適合フィルタ63(図3)の詳細なブロック図である。フィルタ63は、単一チャンネル相関67、全体重み付き相関69、及び位相シフト表示器73を形成する。
【0048】
次に図5を参照して、本発明の実施形態によるフィルタ63(図4)のより詳細なブロック図である。パターンテンプレートが、電位図とともにブロック75における入力である。テンプレートiを電極読み取り値から自動的に及び適応して調製する。拍動を規定する関心ウィンドウが、各電位図における注釈について、既知の方法を用いて自動的に規定される。
【0049】
次にブロック77で、単一チャンネル相関を、各テンプレートチャンネルとブロック75における各電位図入力との間で形成する。
【0050】
次にブロック79において、電位図とテンプレートとの間の全体重み付き相関を計算する。詳細は以下で図7の説明において示す。
【0051】
ブロック81において、位相シフトをブロック77の入力にフィードバックして、反復を位相シフトされた信号を用いて繰り返して、ブロック79における重み付き相関を最大にする。これについては、以下でより詳細に説明する。位相シフトされた信号を、テンプレート又は電極データのいずれかに印加してもよい。
【0052】
最後に、ブロック83において、判定を行なって拍動を受容又は拒否し、ブロック79で得られた相関を報告する。
【0053】
次に図6を参照して、ブロック77(図5)における計算のグラフ表示である。ブロック85における各テンプレート(パターンiとして示す)に対して、またブロック87における各電位図に対して、ブロック89において、示された相関式を用いて相関を計算する。結果をブロック91に出力する。
【0054】
次に図7を参照して、全体重み付き相関(図4の相関69、図5のブロック79)の計算のグラフ表示である。一例として、12リード心臓の電位図を想定する。しかし本方法は、任意の数の電極に対して、例えば、前述したような多電極カテーテルにおいて適用可能である。
【0055】
複数のリードから得られた相関はブロック91(図6)に出力される。これらをブロック93によって表す。ECGチャンネルの振幅の絶対値の、それらの注釈における値及び心臓周期の全体に渡る値を、ブロック95、97によってそれぞれ表す。全体重み付き相関の計算をブロック99において、ブロック93、95、97からの入力を用いて、図示した式を用いて行なう。結果をブロック101に出力する。
【0056】
次に図8を参照して、ブロック81(図5)によって表されたフィードバックの詳細なグラフ表示である。ブロック81では、個々の電位図のそれぞれにおいて位相シフトを形成して、全体重み付き相関(図7)を最適化する。ブロック103によって表される予め規定された相関閾値を、全体相関69(図4)と比較する。これを図8のブロック105によって表す。結果を、ブロック107において、位相シフト(k)(ブロック109)に加える。これについては後述する。相関閾値が達成されていない場合、すべてのチャンネルの位相をシフトして相関アルゴリズムの次の反復で用いて、単一チャンネルに対する新しい相関、及び新しい全体相関をブロック111、113において形成する。位相シフトされた信号をテンプレート又は電極データのいずれかに印加してもよい。
【0057】
ブロック115において、ブロック113で生成されたシフトされた全体相関が、フィードバックループの以前の反復で得られた全体相関よりも良好であるか否かを判定する。そうである場合には、ブロック117において全体相関を更新する。
【0058】
そうでない場合には、又は判定ブロック119におけるブロック117の更新の後で、ループ反復の数が予め決められている制限に達したか否かを判定する。現在の位相の値が制限に達していない場合には、ブロック109において位相シフトを行なって、ループを繰り返す。
【0059】
そうでない場合には、判定ブロック121において、全体相関の電流値がブロック103における相関閾値入力を超えているか否かを判定する。そうである場合には、ブロック123において、現在の心臓周期拍動を対応するマップに受容する。そうでない場合には、ブロック125において現在の拍動を拒否してマップから除外する。いずれの場合でも、全体相関の電流値はブロック127、129の一方において報告される。
【0060】
複数のマップ形成。
次に図9を参照して、本発明の実施形態による複数の電気解剖学的マップ形成の方法のフローチャートである。図2の説明において前述したように、並列実施を選択してアルゴリズムが準リアルタイムで行なわれるようにしてもよい。複数の電極からの拍動が蓄積されて注釈を付けられると想定する。典型的に、図9に示すプロセスの事例を、対応するチャンネルに対して同時に行なう。前述したような注釈及び拍動の蓄積(図3図5)を図9のプロセスと同時に行なってもよい。代替的に、プロセスのステップを、異なるチャンネルの多くの組合せに対してオフラインで、同時に、又は連続して行なってもよい。この実施形態では、特定の患者の形態学的パターンに従ってテンプレートを動的に形成する。次に、新たに蓄積された拍動をテンプレートと相関させる。
【0061】
最初のステップ131では、テンプレートのうちの1つが基準テンプレートとして選択されて、テンプレートセットの最初のメンバーになる。この設定を、後述する条件下で拡張してもよい。
【0062】
次に、ステップ133において、チャンネルからの時間間隔(すなわち、相関ウィンドウ)を選択する。現在時刻間隔の基準テンプレートとの相関を、ステップ135において、図6の説明で前述したように計算する。
【0063】
次に、判定ステップ137において、ステップ135で計算した相関が予め規定された相関閾値を超えたか否かを判定する。判定ステップ137での判定が肯定である場合、制御はステップ139に進む。拍動を、最初のステップ131で選択した基準テンプレートに従って分類する。現在の拍動を蓄積して、既知の方法を用いて形成すべき電気解剖学的マップを形成する。
【0064】
次に、判定ステップ141において、チャンネルにおいてより多くの拍動を依然として処理すべきであるか否かを判定する。判定ステップ141における判定が否定である場合、制御は最終ステップ143に進んで、手順は終了する。判定ステップ141における判定が肯定である場合、制御はステップ133に戻って、別の拍動を用いて繰り返す。
【0065】
判定工程137における判定が否である場合、制御は工程145に進む。位相シフトを導入して(ブロック81、図5)、相関を、位相シフトされた拍動と基準テンプレートとの間で、また位相シフトされた拍動とプロセスの以前の反復又はプロセスの他の事例に導入されたテンプレートセットの他のすべてのメンバーとの間で算出する。
【0066】
次に、ステップ147において、ステップ145で計算した相関をランク付けする。次に判定ステップ149において、予め決められた相関閾値を最高ランクの相関が超えたか否かを判定する。ステップ149における判定が肯定である場合、制御はステップ139に進んで、最も大きく相関性があるテンプレートにより拍動を分類する。
【0067】
ステップ149における判定が否定である場合、判定ステップ151において、位相シフトの最大数を超える前に、ステップ145の反復を依然として現在の拍動を用いて行なうべきであるか否かを判定する。判定ステップ151における判定が肯定である場合、ステップ153において新しい位相シフトを導入し、その後に制御はステップ145に戻る。
【0068】
判定ステップ151における判定が否定である場合、ステップ155において、現在の拍動には任意の既存のテンプレートとの十分な相関がないと結論づけられる。新しいタイプの不整脈が現れている場合もある。新しいテンプレートを、現在の拍動から形成して、テンプレートセットに加え、以後の反復において評価する。次に制御は判定ステップ141に進む。これについては前述した。新しい不整脈が心内電位図において明らかになれば、全般的に既存のテンプレートとの相関が無く、したがってテンプレートセットに加えられることが明らかである。こうして、テンプレートセットは、この事例、及び他のチャンネルを用いて行なわれているプロセスの他の事例にとってアクセス可能な動的なライブラリを形成する。
【実施例
【0069】
図2の高レベル図表にまとめられたアルゴリズムは、心内電位図の形態に基づく特定の不整脈のマッピングとなる。次に図10を参照して、電位図から得られた拍動を含むグループ追跡を、本発明の実施形態により分析した図である。
【0070】
次に図11及び再び図2を参照する。図11は、図10に示す電位図と、本発明の実施形態により選択された基準テンプレート(ステップ45)との間の相関を例示するプロットである。相関を前述したアルゴリズム(図3図8)を用いて得た。各電位図の信号拍動の形態を、自動的に選択された基準テンプレートの形態パターンに対して適合させる(ステップ47)。高い相関スコア(少なくとも0.85)を伴う拍動が、同じ不整脈を表すと考えられる。図11では、合計で1173のデータポイントがある。これらのうち、767のデータポイントが線157の上方にあり、同じ不整脈を表している。
【0071】
前述したように、拍動の事例を蓄積して(ステップ49)、特定の不整脈の間に生じる相関性のある拍動から得られる対応するマップに取り入れる(最終ステップ51)。
【0072】
手順を、更なる選択されたテンプレート(それぞれ、図10の電位図で見出された他の不整脈を特徴付ける)を用いて繰り返す。
【0073】
第1の代替実施形態。
図9を再び参照して、この実施形態では、特定の不整脈を表す1つ以上のテンプレートを予め調製する。以前の実施形態で記載した第1の拍動を用いて最初の基準テンプレートを形成するのではなく、最初のステップ131を変更して、調製されたテンプレートからの基準テンプレートセットを用いてプロセスを始める。
【0074】
第2の代替実施形態。
図5図7で前述した相関手順の代わりに、注釈とテンプレートとの間の他の比較を用いてもよい。例えば、ピアソンの相関、絶対差の合計、及び平均絶対偏差である。
【0075】
当業者であれば、本発明が上記で具体的に図示及び記載されたものに限定されない点を理解するであろう。むしろ、本発明の範囲は、上述の様々な特徴の組合せ及び部分的組合せ、並びに上記の説明を読むことで当業者が想到するであろう、先行技術にはない特徴の変形例及び改変例をも含むものである。
【0076】
〔実施の態様〕
(1) 方法であって、
生体被験者の心臓の電位図を複数のチャンネルに記録するステップであって、前記電位図は、形態学的特徴を有する複数の拍動を含む、ステップと、
前記拍動の前記形態学的特徴の、テンプレートセットのメンバーに対する類似性に従って、前記拍動を対応する分類に自動的に配置するステップと、
前記対応する分類における前記拍動から前記心臓の複数の電気解剖学的マップを生成するステップと、を含む方法。
(2) 記録が複数の電極を用いて行なわれて、複数の対応する電位図を形成する、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記テンプレートセットは予め規定されたテンプレートを含む、実施態様1に記載の方法。
(4) 前記拍動を対応する分類に配置することは、
すべての前記チャンネルにおける選択した拍動の事例と前記テンプレートセットの前記メンバーとの間の対応する全体相関を計算するステップと、
前記選択した拍動を、前記全体相関のうち最高ランクのものを有する前記テンプレートセットのメンバーと関連付けることを、前記全体相関のうち前記最高ランクのものが予め規定された相関閾値を超えたときに行なうステップと、を含む、実施態様1に記載の方法。
(5) 更に、
前記全体相関のうちどれも前記予め規定された相関閾値を超えないときに、前記選択した拍動を伴う前記テンプレートセットの新しいメンバーを形成するステップを含む、実施態様4に記載の方法。
【0077】
(6) 前記拍動を対応する分類に配置することは、
選択した拍動を伴う前記テンプレートセットの新しいメンバーを形成するステップと、
すべての前記チャンネルにおける前記選択した拍動の事例と前記新しいメンバーとの間の全体相関を計算するステップと、
前記全体相関が予め規定された相関閾値を超えたときに、前記選択した拍動を前記新しいメンバーと関連付けるステップと、を含む、実施態様1に記載の方法。
(7) 全体相関を計算することは、
前記チャンネルにおける前記選択した拍動の前記事例と前記新しいメンバーとの間の対応する相関を計算することと、
前記電位図における前記選択した拍動の前記事例の最大信号振幅に従って前記対応する相関を重み付けすることと、を含む、実施態様6に記載の方法。
(8) 更に、
前記全体相関が前記予め規定された相関閾値を超えないときに、
前記電位図の位相をシフトさせることと、
その後に前記計算するステップ及び関連付けるステップを繰り返すことと、を含む、実施態様6に記載の方法。
(9) 装置であって、
複数の電極を遠位部分に有するプローブと、
前記プローブが生体被験者の心臓内のある位置にあるときに、前記電極からの対応する時間的に変化する電位図を記録するための電気回路と、
前記電位図を記憶するためのメモリと、
表示装置と、
前記メモリに接続されたプロセッサであって、
前記電位図を複数のチャンネルに記録するステップであって、前記電位図は、形態学的特徴を有する複数の拍動を含む、ステップと、
前記拍動の前記形態学的特徴の、テンプレートセットのメンバーに対する類似性に従って、前記拍動を対応する分類に自動的に配置するステップと、
前記対応する分類における前記拍動から前記心臓の複数の電気解剖学的マップを生成するステップと、
前記マップを前記表示装置上に示すステップと、を行なうように動作するプロセッサと、を含む装置。
(10) 前記テンプレートセットは予め規定されたテンプレートを含む、実施態様9に記載の装置。
【0078】
(11) 前記拍動を対応する分類に配置することは、
すべての前記チャンネルにおける選択した拍動の事例と前記テンプレートセットの前記メンバーとの間の対応する全体相関を計算するステップと、
前記選択した拍動を、前記全体相関のうち最高ランクのものを有する前記テンプレートセットのメンバーと関連付けることを、前記全体相関のうち前記最高ランクのものが予め規定された相関閾値を超えたときに行なうステップと、を含む、実施態様9に記載の装置。
(12) 前記プロセッサは、
前記全体相関のうちどれも前記予め規定された相関閾値を超えないときに、前記選択した拍動を伴う前記テンプレートセットの新しいメンバーを形成するステップを行なうように動作する、実施態様11に記載の装置。
(13) 前記拍動を対応する分類に配置することは、
選択した拍動を伴う前記テンプレートセットの新しいメンバーを形成するステップと、
すべての前記チャンネルにおける前記選択した拍動の事例と前記新しいメンバーとの間の全体相関を計算するステップと、
前記全体相関が予め規定された相関閾値を超えたときに、前記選択した拍動を前記新しいメンバーと関連付けるステップと、を含む、実施態様9に記載の装置。
(14) 全体相関を計算することは、
前記チャンネルにおける前記選択した拍動の前記事例と前記新しいメンバーとの間の対応する相関を計算することと、
前記電位図における前記選択した拍動の前記事例の最大信号振幅に従って前記対応する相関を重み付けすることと、を含む、実施態様13に記載の装置。
(15) 前記プロセッサは、
前記全体相関が前記予め規定された相関閾値を超えないときに、
前記電位図の位相をシフトさせるステップと、
その後に前記計算するステップ及び関連付けるステップを繰り返すステップと、を行なうように動作する、実施態様13に記載の装置。
【0079】
(16) コンピュータソフトウェア製品であって、コンピュータプログラム命令が記憶された非一時的コンピュータ可読記憶媒体を含み、前記命令は、コンピュータによって実行されると、前記コンピュータに、
複数のチャンネルにおいて生体被験者の心臓の電位図を受容するステップであって、前記電位図は、形態学的特徴を有する複数の拍動を含む、ステップと、
前記拍動の前記形態学的特徴の、テンプレートセットのメンバーに対する類似性に従って、前記拍動を対応する分類に自動的に配置するステップと、
前記対応する分類における前記拍動から前記心臓の複数の電気解剖学的マップを生成するステップと、を実行させる、コンピュータソフトウェア製品。
(17) 前記拍動を対応する分類に配置することは、
すべての前記チャンネルにおける選択した拍動の事例と前記テンプレートセットの前記メンバーとの間の対応する全体相関を計算するステップと、
前記選択した拍動を、前記全体相関のうち最高ランクのものを有する前記テンプレートセットのメンバーと関連付けることを、前記全体相関のうち前記最高ランクのものが予め規定された相関閾値を超えたときに行なうステップと、を含む、実施態様16に記載のコンピュータソフトウェア製品。
(18) 前記コンピュータは更に、
前記全体相関のうちどれも前記予め規定された相関閾値を超えないときに、前記選択した拍動を伴う前記テンプレートセットの新しいメンバーを形成するステップを実行するように命令される、実施態様17に記載のコンピュータソフトウェア製品。
(19) 前記拍動を対応する分類に配置することは、
選択した拍動を伴う前記テンプレートセットの新しいメンバーを形成するステップと、
すべての前記チャンネルにおける前記選択した拍動の事例と前記新しいメンバーとの間の全体相関を計算するステップと、
前記全体相関が予め規定された相関閾値を超えたときに、前記選択した拍動を前記新しいメンバーと関連付けるステップと、を含む、実施態様16に記載のコンピュータソフトウェア製品。
(20) 全体相関を計算することは、
前記チャンネルにおける前記選択した拍動の前記事例と前記新しいメンバーとの間の対応する相関を計算することと、
前記電位図における前記選択した拍動の前記事例の最大信号振幅に従って前記対応する相関を重み付けすることと、を含む、実施態様19に記載のコンピュータソフトウェア製品。
【0080】
(21) 更に、
前記全体相関が前記予め規定された相関閾値を超えないときに、
前記電位図の位相をシフトさせることと、
その後に前記計算するステップ及び関連付けるステップを繰り返すことと、を含む、実施態様19に記載のコンピュータソフトウェア製品。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11