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  • 特許-見当測定装置及び見当測定方法 図1
  • 特許-見当測定装置及び見当測定方法 図2
  • 特許-見当測定装置及び見当測定方法 図3
  • 特許-見当測定装置及び見当測定方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-17
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】見当測定装置及び見当測定方法
(51)【国際特許分類】
   B41F 33/00 20060101AFI20220106BHJP
【FI】
B41F33/00 290
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2017139366
(22)【出願日】2017-07-18
(65)【公開番号】P2019018467
(43)【公開日】2019-02-07
【審査請求日】2020-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】714000460
【氏名又は名称】リョービMHIグラフィックテクノロジー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】木村 隆志
(72)【発明者】
【氏名】広川 勝士
【審査官】亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-052257(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0083316(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の印刷ユニットにより構成される多色印刷機によって印刷された印刷物であって、該印刷物は該印刷ユニットによりそれぞれ印刷される見当マークを有しており、該印刷物の該見当マーク間の間隔を見当測定装置により測定する見当測定方法において、該見当マークは、天地方向の直線上に並んでいる少なくとも2つの見当マークと、該天地方向の直線上に並んでいない1つの見当マークからなる少なくとも3つの同色の見当マークを含み、更に該天地方向の直線上に並んでいない1つの見当マークは、該天地方向の直線上に並んでいる少なくとも2つの見当マークの中の天地方向一端側の見当マークに対して更に天地方向一端側の方向にずれた位置に配置されており、該見当測定装置により該少なくとも3つの同色の見当マークを読取り、該少なくとも3つの同色の見当マークのうち、該天地方向の直線上に並んでいない1つの見当マークの位置により、該印刷物の天地方向を認識することを特徴とする見当測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は印刷機により印刷された印刷物の見当を測定する装置及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に印刷機は複数の印刷ユニットを有しており、各印刷ユニットにはそれぞれ異なる色のインキが供給される。具体的には、各印刷ユニットの版胴に取付けられる版にインキが供給されることで版に形成された画像に着色が施され、この画像がゴム胴に転写され、更にゴム胴と圧胴との間を搬送される用紙に印刷が行われる。複数の印刷ユニットで各色の印刷が施されることにより印刷物が作成されるのであるが、各印刷ユニットの版胴に取付けられる版の取付け状態や版への画像の焼き位置のずれ等によって各印刷ユニット間での印刷ズレが生じる可能性がある。よって、この印刷ズレを測定するための見当測定装置が用いられている。各印刷ユニットの版には画像以外に見当マークが設けられており、印刷物には色毎の見当マークが印刷される。見当測定装置は各見当マーク間の間隔を測定し、各印刷ユニット間の印刷ズレを算出する。そして測定した印刷ズレを基に、版胴に取付けられた版の位置を調節したり、版胴のゴム胴に対する相対位置を調整したりして印刷ズレを解消しようとするのである。特許文献1にはこのような印刷物見当測定装置の開示がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第2587053公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところでこのような見当測定を行うにあたり、色見台に印刷物をセットする際、印刷物の天地方向(上下方向)において、天側(上側)を上にセットするのが慣例となっている。ところが、特許文献1の図3に示すような手動測定装置を用いた場合、操作者の見当マークの測定操作の仕方によっては天地方向が異なった状態、すなわち天側が下になるような測定をしてしまう可能性があった。このような誤測定をすると、測定結果を基に版胴の位置調整等をする場合に調整が正しく出来ず、余計に見当ズレが大きくなるという問題があった。特許文献1の図4のようなタイプのものについては測定方向が定められるので上述のような誤測定はないものの、色見台に印刷物をセットする際に天地方向を逆側(すなわち天側を下)にセットすると同様の問題が生じる可能性があり、改善の余地があった。また、測定の際、測定順を操作者が間違ってしまうこともあった。
【0005】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、印刷物の見当測定を正確に行うことのできる見当測定装置及び見当測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成するため、複数の印刷ユニット5により構成される多色印刷機によって印刷された印刷物Pであって、該印刷物Pは該印刷ユニット5によりそれぞれ印刷される見当マーク31~34を有しており、該印刷物Pの該見当マーク31~34間の間隔を見当測定装置により測定する見当測定方法おいて、該見当マーク31~34は、天地方向の直線上に並んでいる少なくとも2つの見当マークと、該天地方向の直線上に並んでいない1つの見当マークからなる少なくとも3つの同色の見当マークを含み、更に該天地方向の直線上に並んでいない1つの見当マークは、該天地方向の直線上に並んでいる少なくとも2つの見当マークの中の天地方向一端側の見当マークに対して更に天地方向一端側の方向にずれた位置に配置されており、該見当測定装置により該少なくとも3つの同色の見当マークを読取り、該少なくとも3つの同色の見当マークのうち、該天地方向の直線上に並んでいない1つの見当マークの位置により、該印刷物Pの天地方向を認識可能であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明においては、印刷物の見当測定を正確に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る印刷機の概略断面側面図である。
図2】本発明に係る印刷物の平面図である。
図3】本発明に係る印刷物に設けられる見当マーク群を示す平面図である。
図4】本発明に係る見当測定装置のスキャナを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態にかかる印刷機について図1図4を参酌しつつ説明する。
【0011】
図1は本発明に係る表面処理部を供えた印刷機の一例である。図1に示す通り、本実施形態に係る印刷機は枚葉オフセット印刷機である。この印刷機は、紙積み台からフィーダ装置や用紙分離装置等により一枚ずつ印刷用紙としての枚葉紙を送り出すための給紙部Aと、この給紙部Aからの枚葉紙に印刷を行うための印刷部Bと、印刷部Bで印刷された枚葉紙に表面処理を施す表面処理部Cと、枚葉紙を排紙するための排紙部Dを備えている。ここで印刷部Bは、4色の印刷が行えるように4台の印刷ユニット5を備えた印刷部Bとしているが、4色以外の色、つまり1色又は2色以上の印刷が行える印刷部であってもよい。又、印刷機を構成する各部の具体的な構成は図に示されるものに限定されるものではない。
【0012】
前記印刷ユニット5は、版胴1とゴム胴2とインキローラ群4、そして圧胴3と渡し胴6とを備えている。図示していないが、圧胴3のそれぞれには、送り出されてきた枚葉紙を爪台と爪とで把持するグリッパを、円周方向の2箇所(1箇所又は3箇所以上でもよい)に備えている。符号7は給紙胴であり、フィーダーボード8、口板9上を搬送される枚葉紙をスイングアーム10から受け取り、圧胴3に渡す役割を果たす。給紙胴7、スイングアーム10にも前記の爪台と爪が設けられている。また、版胴1には画像の形成された図示しない版が巻回され、固定されている。更に版胴1には図示しない調整装置が設けられており、この調整装置は版胴1をゴム胴2に対して回転方向及び軸方向に移動調整可能となっている。
【0013】
排紙部Dは2つの排紙胴とグリッパを備えるチェーン搬送装置にて構成されている。すなわち、表面処理部Cの圧胴3に隣接した第1排紙胴11と、これに隣接した第2排紙胴12が設けられ、そして枚葉紙の搬送方向前側(上流側)に設けられたスプロケット13と枚葉紙の搬送方向後側(下流側)に設けられたスプロケット14に無端状のチェーン15が巻回されており、スプロケット13、14の回転により、図示しないチェーンガイドに規制された状態でチェーン15は周回する。チェーン15に所定間隔で複数固定された図示しないチェーングリッパに把持されて枚葉紙は排紙されることとなる。
【0014】
図1に示すように、表面処理部Cには圧胴3と対向、当接するニス版胴16が設けられている。また、図示しないが、ニス版胴16に当接してニスを供給するアニロックスローラが設けられている。そして表面処理部Cは、ニス版胴16を圧胴3に対して昇降可能に支持する図示しない胴昇降装置を備えている。
【0015】
本発明に係る印刷物Pの平面図を図2に示す。印刷物Pには版に形成された画像が印刷されている。印刷物Pの幅方向(図2では上下方向)の両端に後述する見当マーク群30、30が画像と同様に印刷により設けられている。符号21は印刷物Pの天地方向(図2では左右方向)の天側(図2では左側)に設けられるカラーバーである。カラーバー21は印刷物Pの濃度あるいは色調を測定するためのものである。なお、本実施例においては、天地方向とは印刷物Pの搬送方向(圧胴3等の円周方向)のことであり、幅方向とはインキローラ群4の上流に設けられた図示しない複数のインキつぼキーの配列方向(圧胴3等の軸方向)のことである。
【0016】
図3は印刷物に2箇所設けられる見当マーク群30、30の1つを示す平面図である。見当マーク群30は印刷物Pの天地方向(図3では上下方向)に左列は3つ、右列は4つ並んだ見当マークが幅方向(図3では左右方向)に2列配置されることにより構成されている。具体的には左の列のつは全てK(スミ)の見当マーク31a~31cが配置され、右の列は上から順に、Kの見当マーク31d、C(シアン)の見当マーク32、M(マゼンタ)の見当マーク33、Y(イエロー)の見当マーク34が配置されている。図3から分かるように、各見当マークは一辺がLの正方形として構成されており、各見当マーク間の距離Iも見当マークの一辺Lと同一の距離となっている。但し見当マークは正方形でなくてもよく、また、見当マークの一辺と各見当マーク間の距離は同一でなくてもよい。
【0017】
本実施例においては、Kの見当マーク31a~31dが印刷物Pの天地方向を認識可能となる基準マークとして構成されている。すなわち、同一直線上に並ばないKの見当マーク31が3つ以上配置されているのである。具体的には、見当マーク31a~31cのうちのいずれか2つと、他の見当マーク31a~31cとは同一直線上に並んでいない見当マーク31dとの3つの配置があればよい。図3中右上の見当マーク31dの左側には見当マークを設置しておらず、左列と右列は非対称となっている。左列は見当マークを一つ減らしている分、省スペース化が計れている。なお、基準マークはK以外の色の見当マークとしてもよい。
【0018】
図4に本発明に係る見当測定装置のスキャナー50を示す。見当測定装置は図4に示すスキャナー50と、このスキャナー50に接続される図示しない制御部により構成されている。制御部は印刷機にも接続されており、印刷機を制御可能(印刷機とデータのやり取りができるよう)に構成されている。
【0019】
スキャナー50はカバー部51とベース部52により構成されている。ベース部52は方形状の部分に円筒状の部分が接続するように設けられており、この円筒状の部分にカメラ52aが設けられており、見当マークを測定するときの位置関係が把握しやすくなっている。カバー部51は平面部と傾斜部を有し、この傾斜部にタッチパネル51aが設けられている。タッチパネル51aにはカメラ52aで撮像された見当マークが表示されるほか、各種タッチ操作が可能な操作画面が表示される。カバー部51とベース部52との接続部には段差が形成されており、操作者がカバー部51を把持してスキャナー50を操作するときの滑り止めの機能を果たしている。
【0020】
本発明における印刷物の見当測定の動作について説明する。図4のように操作者がスキャナー50のカメラ52aを印刷物Pの幅方向左側の見当マーク群30上に設置して見当マーク間の距離Iの測定を行う。カメラ52aにより撮像された見当マーク群30の画像データは制御部に送られる他、タッチパネル51aにも表示される。なお、見当マーク群30の測定結果については、初めに印刷物Pの幅方向左側の結果が、次に右側の結果が送られるよう、制御部は認識しているので、測定順を間違わないようにする必要がある。
【0021】
次に制御部は見当マークのうち基準マークを探す。本実施例では4つのKの見当マーク31a~31dを探すのである。そして4つの見当マークのうち、他の見当マーク31a~31cとは同一直線上に並んでいない見当マーク、ここでは31dの位置を把握し、天地方向における見当マーク31dのある側を天側と認識する。そして天地方向を認識した後、見当マーク群30の各見当マーク間の天地左右方向の距離Iを測定するのである。
【0022】
次に操作者はスキャナー50のカメラ52aを印刷物Pの幅方向右側の見当マーク群30上に設置して同様に見当マーク間の距離Iの測定を行う。すると制御部は前述と同様、基準見当マークを探して天地方向を認識し、見当マーク群30の各見当マーク間の距離Iを測定する。そして各見当マーク群30内の見当マーク間の距離Iと見当マーク群30同士の相対位置を基に、各印刷ユニット5間の印刷ズレを把握し、制御部は前述の版胴1の調整装置を移動調整するのである。
【0023】
このように、天地方向を認識した後に見当マーク間の距離Iを測定するようにしたので、天地方向を誤った測定結果となることがない。スキャナー50は操作者が手動で操作するので、例えば右手で把持したときと左手で把持したときの見当マーク群30への設置角度が大きく異なることがあり、場合によっては90度以上傾けて測定してしまうと、誤測定となってしまうが、このような問題が解消される。また、色見台に印刷物Pを天地反対に設置してしまっても同様の問題が生じるが、このような場合でも誤測定をすることがない。
【0024】
前述の実施形態においては、見当マーク群30の測定順を間違わないようにする必要があったが、測定順を問わないようにすることも可能である。すなわち、見当マーク群30を左右で異なるものにしておけばよい。具体的には、右側の見当マーク群30が図3に示すように左列にKの見当マーク31a~31cを、右列にK、C、M、Yの見当マークを配置するものとした場合、左側の見当マーク群30は、右列にKの見当マーク31a~31cを、左列にK、C、M、Yの見当マークを配置するものとし、予め制御部に各見当マーク群30、30の見当マーク配置を記憶させておけばよいのである。こうすればどちらの見当マーク群30から測定しても、制御部は正しく左右の見当マーク群30を認識できるのである。
【0025】
尚、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば前述の実施形態では、1つの見当マーク群30には基準マークとなるKの見当マーク31が4つ設けられていたが、これに限らず、少なくとも3つの同色の見当マークが同一直線上に並ばないものであれば、これ以外の数であってもよい。また、前述の実施形態では基準色をKとしていたが、他の色を基準色に設定しても同様のことが可能となる。また、制御部が版胴1の調整装置を自動調整するように制御されていたが、測定結果をモニターに表示するようにして、操作者が表示された結果を基に版胴1の調整装置を調整するようにしてもよい。
【0026】
また、前述の実施形態では印刷物は枚葉紙であったが、これに限定されず、見当マークを備えた印刷物であれば輪転紙であってもよい。さらに、前述の実施形態では印刷部がオフセット式の印刷機であったが、見当マークが設けられる印刷物であればこれに限らず、インクジェット式印刷機や電子写真式印刷機で印刷された印刷物にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明に係る見当測定装置及び見当測定方法は、見当マークを有する印刷物の測定技術において極めて有用である。
【符号の説明】
【0028】
1 :版胴
2 :ゴム胴
3 :圧胴
4 :インキローラ群
5 :印刷ユニット
6 :渡し胴
7 :給紙胴
8 :フィーダーボード
9 :口板
10 :スイングアーム
11 :第1排紙胴
12 :第2排紙胴
13 :スプロケット
14 :スプロケット
15 :チェーン
16 :ニス版胴
21 :カラーバー
30 :見当マーク群
31a~31d:K(スミ)の見当マーク
32 :C(シアン)の見当マーク
33 :M(マゼンタ)の見当マーク
34 :Y(イエロー)の見当マーク
50 :スキャナー
51 :カバー部
51a :タッチパネル
52 :ベース部
52a :カメラ
A :給紙部
B :印刷部
C :表面処理部
D :排紙部
I :距離
L :一辺
P :印刷物
図1
図2
図3
図4