(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-17
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】コンクリート部材間の接合構造
(51)【国際特許分類】
E01D 19/10 20060101AFI20220106BHJP
【FI】
E01D19/10
(21)【出願番号】P 2017172033
(22)【出願日】2017-09-07
【審査請求日】2020-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000103769
【氏名又は名称】オリエンタル白石株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000161817
【氏名又は名称】ケイコン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000229667
【氏名又は名称】日本ヒューム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【氏名又は名称】安彦 元
(74)【代理人】
【識別番号】100198214
【氏名又は名称】眞榮城 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】高橋 謙一
(72)【発明者】
【氏名】神谷 裕司
(72)【発明者】
【氏名】正司 明夫
(72)【発明者】
【氏名】中村 敏之
(72)【発明者】
【氏名】夛田 幸生
(72)【発明者】
【氏名】松崎 進
(72)【発明者】
【氏名】三岡 善平
(72)【発明者】
【氏名】秋元 昌哲
(72)【発明者】
【氏名】水上 大樹
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 翔平
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-160690(JP,A)
【文献】特開平08-027731(JP,A)
【文献】特開2001-115415(JP,A)
【文献】特開2011-106134(JP,A)
【文献】特開2014-101676(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1コンクリート部材と第2コンクリート部材とを接合するためのコンクリート部材間の接合構造において、
上記第1コンクリート部材は、繊維状の繊維部材が突出され、
上記第2コンクリート部材は、外面に形成された挿通孔に対して上記繊維部材が挿入されてなると共に経時硬化性材料が充填され
、
上記第1コンクリート部材は、弾性力を有する弾性部材が突出されるとともに上記繊維部材に当接され、
上記弾性部材は、上記第2コンクリート部材の上記挿通孔に充填された上記経時硬化性材料に埋め込まれること
を特徴とするコンクリート部材間の接合構造。
【請求項2】
上記第2コンクリート部材は、上記挿通孔を囲むようにスパイラル鉄筋が埋め込まれていること
を特徴とする請求項1記載のコンクリート部材間の接合構造。
【請求項3】
上記第1コンクリート部材は、上記繊維部材の一部が埋め込まれ、埋め込まれた上記繊維部材の周囲にスパイラル鉄筋が埋め込まれていること
を特徴とする請求項1又は2記載のコンクリート部材間の接合構造。
【請求項4】
第1コンクリート部材と第2コンクリート部材とを接合するためのコンクリート部材間の接合構造において、
上記第1コンクリート部材は、外面に形成された第1の挿通孔に対して繊維状の繊維部材が挿入され、
上記第2コンクリート部材は、上記第1の挿通孔に対向する外面に形成された第2の挿通孔に対して上記繊維部材が挿入され、
上記第1の挿通孔及び上記第2の挿通孔には、経時硬化性材料が充填され
、
上記第1の挿通孔及び上記第2の挿通孔には、弾性力を有する弾性部材が挿入され、上記弾性部材が上記繊維部材に当接されること
を特徴とするコンクリート部材間の接合構造。
【請求項5】
上記第1コンクリート部材及び上記第2コンクリート部材の何れか一方又は両方は、上記第1の挿通孔及び上記第2の挿通孔の何れか一方又は両方を囲むようにスパイラル鉄筋が埋め込まれていること
を特徴とする請求項
4記載のコンクリート部材間の接合構造。
【請求項6】
上記繊維部材は、平板状に形成され、せん断力が作用する方向に対して直交して平板状の面が配置されること
を特徴とする請求項1~
5の何れか1項記載のコンクリート部材間の接合構造。
【請求項7】
上記第1コンクリート部材は、床版及び壁高欄の何れか一方であり、
上記第2コンクリート部材は、床版及び壁高欄の何れか他方であること
を特徴とする請求項1~
6の何れか1項記載のコンクリート部材間の接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1コンクリート部材と第2コンクリート部材とを接合するためのコンクリート部材間の接合構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリート部材同士を接合するための技術として、例えば、コンクリート床版とコンクリート壁高欄との接合に関する特許文献1、2の開示技術が提案されている。
【0003】
特許文献1の開示技術は、鉄筋コンクリート製の壁高欄の底部から貫通孔が形成されており、当該貫通孔には、床版から上方に突出されたアンカ筋が挿入された上でモルタルが注入されている。
【0004】
また、特許文献2の開示技術は、プレキャストコンクリート部材とされたコンクリート壁高欄の下端部にボルト挿通孔を形成させてなり、当該ボルト挿通孔に対して、床版から上方に突出させたアンカーボルトを挿入させる構成が開示されており、当該ボルト挿通孔に対してモルタルを充填する技術が開示されている。
【0005】
特許文献1、2の開示技術は、アンカーボルト等に対してモルタルを強固に付着させることにより、コンクリート壁高欄を床版に対して安定的に接合することを期待したものである。
【0006】
しかしながら、これら特許文献1、2の開示技術によれば、プレキャスト壁高欄が劣化した状態で、かつ車両の衝突等による外力が加わった場合、アンカーボルトが付着されているモルタルから簡単に引き抜けてしまう場合もある。またこのような外力が加わった場合には、アンカーボルトが付着されているモルタルごと引き抜けてしまう場合もあり、更にはモルタルに付着している壁高欄のコンクリートの一部が割裂して一緒に引きぬけてしまう場合もある。即ち、これら特許文献1、2の開示技術のみからでは、壁高欄に負荷される外力に対する耐久性を向上させることができないという問題点があった。
【0007】
また、これら特許文献1、2の開示技術によれば、コンクリート部材間の継目部分にアンカーボルトが配置されているものの、この継目部分から雨水等が侵入することでアンカーボルトが腐食してしまい、その結果、コンクリート部材同士の継目の部分からコンクリート部材の耐力が低下してしまうという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2001-226912号公報
【文献】特開2015-71907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、第1コンクリート部材と第2コンクリート部材とを接合するためのコンクリート部材間の接合構造において、コンクリート部材同士の継目部分から耐力が低下するのを防止することが可能となり、コンクリート部材に対して大きな外力が負荷された場合においても強固な耐久性を発揮することが可能なコンクリート部材間の接合構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1発明に係るコンクリート部材間の接合構造は、第1コンクリート部材と第2コンクリート部材とを接合するためのコンクリート部材間の接合構造において、上記第1コンクリート部材は、繊維状の繊維部材が突出され、上記第2コンクリート部材は、外面に形成された挿通孔に対して上記繊維部材が挿入されてなると共に経時硬化性材料が充填され、上記第1コンクリート部材は、弾性力を有する弾性部材が突出されるとともに上記繊維部材に当接され、上記弾性部材は、上記第2コンクリート部材の上記挿通孔に充填された上記経時硬化性材料に埋め込まれることを特徴とする。
【0011】
第2発明に係るコンクリート部材間の接合構造は、第1発明において、上記第2コンクリート部材は、上記挿通孔を囲むようにスパイラル鉄筋が埋め込まれていることを特徴とする。
【0012】
第3発明に係るコンクリート部材間の接合構造は、第1発明又は第2発明において、上記第1コンクリート部材は、上記繊維部材の一部が埋め込まれ、埋め込まれた上記繊維部材の周囲にスパイラル鉄筋が埋め込まれていることを特徴とする。
【0014】
第4発明に係るコンクリート部材間の接合構造は、第1コンクリート部材と第2コンクリート部材とを接合するためのコンクリート部材間の接合構造において、上記第1コンクリート部材は、外面に形成された第1の挿通孔に対して繊維状の繊維部材が挿入され、上記第2コンクリート部材は、上記第1の挿通孔に対向する外面に形成された第2の挿通孔に対して上記繊維部材が挿入され、上記第1の挿通孔及び上記第2の挿通孔には、経時硬化性材料が充填され、上記第1の挿通孔及び上記第2の挿通孔には、弾性力を有する弾性部材が挿入され、上記弾性部材が上記繊維部材に当接されることを特徴とする。
【0015】
第5発明に係るコンクリート部材間の接合構造は、第4発明において、上記第1コンクリート部材及び上記第2コンクリート部材の何れか一方又は両方は、上記第1の挿通孔及び上記第2の挿通孔の何れか一方又は両方を囲むようにスパイラル鉄筋が埋め込まれていることを特徴とする。
【0017】
第6発明に係るコンクリート部材間の接合構造は、第1発明~第5発明の何れかにおいて、上記繊維部材は、平板状に形成され、せん断力が作用する方向に対して直交して平板状の面が配置されることを特徴とする。
【0018】
第7発明に係るコンクリート部材間の接合構造は、第1発明~第6発明の何れかにおいて、上記第1コンクリート部材は、床版及び壁高欄の何れか一方であり、上記第2コンクリート部材は、床版及び壁高欄の何れか他方であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
上述した構成からなる本発明によれば、コンクリート部材間の接合構造に対して、例えば車両の衝突により道路側面から外側に向けた略水平方向の外力が負荷される場合において、顕著な効果を発揮する。即ち、外力が負荷されることにより第2コンクリート部材が外側に傾いたときに繊維部材が接合方向に向けて引き抜けようとする引張力と、接合方向に直交する幅方向に向けてせん断破壊しようとするせん断力とが作用することとなるが、これらの力に対して繊維部材に対する経時硬化性材料の強固な付着力を介して対抗することができる。
【0020】
このとき繊維部材を上端から下端に至るまで繊維が編み込まれることで外面を凹凸状に形成させておくことにより、経時硬化性材料への付着力を高めることができ、繊維部材の引き抜け防止効果を増強させることができる。同様に挿通孔の内周面には細かい凹凸等が形成されていることにより、経時硬化性材料への付着力を高めることができる。その結果、経時硬化性材料が繊維部材と共に挿通孔から引き抜けてしまうのを防止することができる。
【0021】
更に本発明によれば、この挿通孔を取り囲むようにスパイラル鉄筋が埋め込まれている。仮に繊維部材が引き抜けようとする力が作用したときに、スパイラル鉄筋を介して挿通孔に対して作用している内向きの拘束力を介して対抗することが可能となる。
【0022】
これに加えて、経時硬化性材料に付着している第2コンクリート部材を構成するコンクリートの一部が割裂して一緒に引き抜けるように作用する場合もあるが、スパイラル鉄筋を介して内向きの拘束力が発揮されていることにより、このようなコンクリートの割裂自体を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明を適用したコンクリート部材間の接合構造の第1実施形態における斜視図である。
【
図2】本発明を適用したコンクリート部材間の接合構造の第1実施形態における正断面図である。
【
図3】本発明を適用したコンクリート部材間の接合構造の第1実施形態における側断面図である。
【
図4】第1コンクリート部材と第2コンクリート部材との接合方法について説明するための図である。
【
図5】本発明を適用したコンクリート部材間の接合構造の第2実施形態について説明するための図である。
【
図6】本発明を適用したコンクリート部材間の接合構造の第3実施形態について説明するための図である。
【
図7】本発明を適用したコンクリート部材間の接合構造の第4実施形態について説明するための図である。
【
図8】本発明を適用したコンクリート部材間の接合構造の第5実施形態について説明するための図である。
【
図9】本発明を適用したコンクリート部材間の接合構造の第5実施形態において、挿通孔が形成された第1コンクリート部材から繊維部材を突出させる手順を説明するための図である。
【
図10】本発明を適用したコンクリート部材間の接合構造の第5実施形態において、第1コンクリート部材の挿通孔と、第2コンクリート部材の挿通孔とに同時に経時硬化性材料を充填する手順を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を適用したコンクリート部材間の接合構造を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明をする。
【0025】
図1は、本発明を適用したコンクリート部材間の接合構造1の第1実施形態における斜視図であり、
図2は、その正断面図であり、
図3はその側断面図である。本発明を適用したコンクリート部材間の接合構造1は、第1コンクリート部材2と第2コンクリート部材3とを接合するために用いられる。
【0026】
第1コンクリート部材2は、橋梁等に用いられるコンクリート床版であり、幅方向の側端部に第2コンクリート部材3が配置される。第2コンクリート部材3は、プレキャスト製のコンクリート壁高欄であり、第1コンクリート部材2の軸方向に延長されることで道路側と外部側とを隔てるものとなる。第2コンクリート部材3は、第1コンクリート部材2の幅方向の側端部に沿って配置される。なお、第1実施形態に係るコンクリート部材間の接合構造1は、第1コンクリート部材2が橋梁等に用いられるコンクリート床版であり、第2コンクリート部材3がプレキャスト製のコンクリート壁高欄を例示して説明するが、本発明においては、第1コンクリート部材2がプレキャスト製のコンクリート壁高欄であり、第2コンクリート部材3が橋梁等に用いられるコンクリート床版であってもよい。
【0027】
第2コンクリート部材3は、長手方向が上下方向とされた長方形状とされており、内部に鉄筋35、36が埋設されたいわゆる鉄筋コンクリート製で構成されている。このうち鉄筋36は、軸方向に向けて直線状に延長されてなる複数本で構成されている。また鉄筋35は、これら鉄筋36を内接させるように上下方向に延長されてなると共に上下端は円弧状に折り曲げられてなる。第2コンクリート部材3の側面は、道路側に向いている道路側面3aと、道路橋の外部側に向いている外側面3bとからなる。
【0028】
このような鉄筋コンクリート製の第2コンクリート部材3は、更に挿通孔31と、この挿通孔31に通じる孔32、孔33と、挿通孔31の周囲に埋設されているスパイラル鉄筋34と、鉄筋35により囲まれる領域内に設けられたケーブル37とを備えている。また、この第2コンクリート部材3の底面3dは、上方に向けて凹状に凹ませた凹部38と、凹部38から道路側面3aに向けて延長されている第1底部39aと、凹部38から外側面3bに向けて延長されている第2底部39bとを有する。
【0029】
第1コンクリート部材2は、繊維部材4と、繊維部材4の周囲に埋設されているスパイラル鉄筋24とを備えている。第1コンクリート部材2における幅方向の側端部上面には、上方に向けて凸状に凸設させた凸部28と、凸部28から道路側面3aに向けて延長されている第1上部29aと、凸部28から外側面3bに向けて延長されている第2上部29bとを有する。
【0030】
挿通孔31は、第2コンクリート部材3の底面3dに形成された孔部として構成されている。挿通孔31は、第2コンクリート部材3の底面3dを削孔機等で開削することで形成されてもよいし、予め第2コンクリート部材3の底面3dに箱抜き等を施しておくことで形成されてもよい。挿通孔31は、繊維部材4の外径よりも径大となるように構成されている。挿通孔31は、上方に向かうにつれて縮径された形状とされ、いわば角錐台又は円錐台の如き立体形状とされているが、これに限定されるものではない。即ち、挿通孔31は、上下方向に向かうにつれて拡径、縮径の無い円柱状又は直方体状とされていてもよいし、規則的又は不規則な拡径又は縮径が施されていてもよい。更にこの挿通孔31の内周面には細かい凹凸等が形成されていてもよい。なお、
図2に示す挿通孔31は、あくまで凹部38から上方に向けて開削された孔として構成されているが、あえて凹部38を設けない構成においては、第2コンクリート部材3における底面3dのいかなる箇所に設けられていてもよい。
【0031】
孔32は、第2コンクリート部材3における道路側面3aと、挿通孔31とを連結するための孔である。この孔32は、挿通孔31の上方に連続する孔であり、無収縮モルタル等を始めとした経時硬化性材料を挿通孔31から排出するために設けられている。この孔32は、挿通孔31から上方に向けて湾曲された上で道路側面3aに向けて下向きに傾斜させるようにしてもよい。また、孔32は、挿通孔31から上方に向けて湾曲された上で外側面3bに向けて下向きに傾斜させるようにしてもよい。
【0032】
孔33は、第2コンクリート部材3における道路側面3aと、挿通孔31とを連結するための孔である。この孔33は、挿通孔31の下方に連続する孔であり、無収縮モルタル等を始めとした経時硬化性材料を挿通孔31内に注入するために設けられている。この孔33は、挿通孔31から上方に向けて湾曲された上で道路側面3aに向けて下向きに傾斜させるようにしてもよい。また、孔33は、挿通孔31から上方に向けて湾曲された上で外側面3bに向けて下向きに傾斜させるようにしてもよい。
【0033】
スパイラル鉄筋34は、予めスパイラル状に折り曲げられた鉄筋である。このスパイラル鉄筋34は、挿通孔31の外周側から当該挿通孔31を取り囲むようにして配置されている。スパイラル鉄筋34は、この第2コンクリート部材3を構成するコンクリートの中に予め埋め込まれている。
【0034】
ケーブル37は、互いに橋軸方向に隣接する第2コンクリート部材3を連結する上で使用されるケーブルである。このケーブル37は、具体的には炭素繊維ケーブル、PC鋼材、ステンレス鋼材、鋼鉄製ケーブル等の各種ケーブルとして具現化される。各々の第2コンクリート部材3に対してそれぞれこのケーブル37を挿通するための図示しないケーブル孔が穿設されている。隣接する第2コンクリート部材3を接合する際には、この図示しないケーブル穴に対してケーブル37を挿通させ、必要に応じてこれに緊張力を付与することで実現するようにしてもよい。
【0035】
凹部38は、
図3に示すように軸方向に向けて間隔をおいて挿通孔31が設けられている。第1底部39aは、道路側面3aに向けて、下向きに傾斜してなる。第2底部39bは、外側面3bに向けて、下向きに傾斜してなる。換言すれば第1底部39a及び第2底部39bは、幅方向外側に向けて下向きに傾斜している。
【0036】
繊維部材4は、アラミド繊維、炭素繊維、ガラス繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、ポリアリレート繊維等の非金属系繊維が用いられる。繊維部材4は、上端から下端に至るまで繊維が編み込まれることで、外面41が凹凸状に形成される。繊維部材4は、繊維に樹脂を含浸させて平板状に形成されるが、これに限らず、棒状、筒状等如何なる形状で形成されるものであってもよい。第1コンクリート部材2と第2コンクリート部材3との接合する方向を接合方向としたとき、繊維部材4の繊維の編み込み方向を、この接合方向に向けて繊維状の繊維部材4を配置する。なお、繊維部材4は、非金属系繊維が用いられる以外に、スチール繊維が用いられてもよい。
【0037】
繊維部材4のほぼ下半分は、第1コンクリート部材2を構成するコンクリート内に埋め込まれて構成されている。その結果、繊維部材4の上半分は、第1コンクリート部材2の上面2dから上方に向けて突出された状態となる。この突出された繊維部材4の上半分は、挿通孔31に挿入された状態となる。挿通孔31は繊維部材4よりも径大であることから、繊維部材4は、挿通孔31に対していわば遊嵌状態となっている。このような遊嵌状態の繊維部材4が挿入されている挿通孔31には、無収縮モルタル等の経時硬化性材料が充填されている。
【0038】
繊維部材4の略中央部は、弾性力を有する弾性部材5が当接される。弾性部材5は、例えば、天然ゴム、クロロプレンゴム、ブタジエンゴム等の弾性体が用いられ、平板状に形成される。弾性部材5は、平板状の繊維部材4の両方の外面41を挟むように当接されて設けられ、繊維部材4を介装するものとなる。なお、弾性部材5は、繊維部材4の周囲を取り囲むように巻き付けられて設けられてもよい。また、弾性部材5は、繊維部材4に当接されていれば、平板状に形成されるのに限らず、如何なる形状で形成されてもよい。
【0039】
弾性部材5のほぼ下半分は、第1コンクリート部材2を構成するコンクリート内に埋め込まれて構成されている。その結果、弾性部材5の上半分は、第1コンクリート部材2の上面2dから上方に向けて突出された状態となる。この突出された弾性部材5の上半分は、挿通孔31に挿入された状態となる。挿通孔31は弾性部材5よりも径大であることから、弾性部材5は、挿通孔31に対していわば遊嵌状態となっている。このような遊嵌状態の弾性部材5が挿入されている挿通孔31には、無収縮モルタル等の経時硬化性材料が充填されている。
【0040】
スパイラル鉄筋24は、スパイラル鉄筋34と同様に、予めスパイラル状に折り曲げられた鉄筋である。このスパイラル鉄筋24は、挿通孔31の外周側から繊維部材4を取り囲むようにして配置されている。スパイラル鉄筋24は、第1コンクリート部材2の中に予め埋め込まれている。
【0041】
凸部28は、
図2に示すように幅方向の位置が凹部38と整合するように設けられている。第1上部29aは、道路側面3aに向けて、下向きに傾斜してなる。第2底部19bは、外側面3bに向けて、下向きに傾斜してなる。換言すれば第1上部29a及び第2上部29bは、幅方向外側に向けて下向きに傾斜している。
【0042】
実際に第1コンクリート部材2の側端部に第2コンクリート部材3を設置する上では、凸部28を凹部38に対面させ、第1上部29aを第1底部39aに対面させ、更に第2上部29bを第2底部39bに対面させた上で、これらの間に無収縮モルタル又は樹脂モルタル等の経時硬化性材料を充填させる。
【0043】
次に第1コンクリート部材2と第2コンクリート部材3との接合方法について説明をする。
【0044】
先ず
図4(a)に示すように第1コンクリート部材2の施工が完了している状態からスタートする。この状態では、繊維部材4の上半分が第1コンクリート部材2の上面2dから上方に向けて突出されている状態となっている。
【0045】
次に工場において予め製作した第2コンクリート部材3を現地に搬入する。そして
図4(b)に示すように、凸部28を凹部38に対面させ、第1上部29aを第1底部39aに対面させ、更に第2上部29bを第2底部39bに対面させつつ、これらを互いに離間した状態で仮保持する。
【0046】
次に
図4(c)に示すように孔33から経時硬化性材料6を注入する。この経時硬化性材料6は、ホース91を介して、この孔33に注入される。孔33から注入された経時硬化性材料6は挿通孔31に到達し、これに挿入されている繊維部材4及び弾性部材5を埋めるようにして充填されることとなる。この充填した経時硬化性材料6が硬化し、繊維部材4及び弾性部材5と強固に付着すると共に挿通孔31にも強固に付着することとなる。その結果、この硬化した経時硬化性材料6を介して挿通孔31並びに繊維部材4及び弾性部材5が互いに強固に連結されることとなり、ひいては第2コンクリート部材3を第1コンクリート部材2に対して強固に設置することが可能となる。なお、経時硬化性材料6は、第1上部29aと第1底部39aとの間から注入される場合もある。
【0047】
またこの挿通孔31に到達した経時硬化性材料6は、そのまま第1コンクリート部材2の上面2dを構成する凸部28、第1上部29a、第2上部29bと、第2コンクリート部材3の底面3dを構成する凹部38、第1底部39a、第2底部39bとの間にも流れていく。その結果、この第1コンクリート部材2の上面2dと、第2コンクリート部材3の底面3dとの間にも経時硬化性材料6が充填され、この経時硬化性材料6が硬化することでこれらが互いに強固に接合されることとなる。
【0048】
ちなみに、第1コンクリート部材2の上面2dに経時硬化性材料6を予め敷設した上から第2コンクリート部材3を載置し、その上で孔32から経時硬化性材料6を注入することで挿通孔31内をこの経時硬化性材料6により充填するようにしてもよい。
【0049】
このようにして第1コンクリート部材2の側端部に設置された第2コンクリート部材3に対して、例えば車両の衝突により道路側面3aから外側に向けた略水平方向の外力が負荷される場合を考える。かかる場合には、第2コンクリート部材3が外側に傾いたときに繊維部材4が接合方向に向けて引き抜けようとする引張力と、接合方向に直交する幅方向に向けてせん断破壊しようとするせん断力とが作用することとなるが、これらの力に対して繊維部材4に対する経時硬化性材料6の強固な付着力を介して対抗することができる。
【0050】
このとき繊維部材4を上端から下端に至るまで繊維が編み込まれることで外面41を凹凸状に形成させておくことにより、経時硬化性材料6への付着力を高めることができ、繊維部材4の引き抜け防止効果とせん断破壊防止効果とを増強させることができる。同様に挿通孔31の内周面には細かい凹凸等が形成されていることにより、経時硬化性材料6への付着力を高めることができる。その結果、経時硬化性材料6が繊維部材4と共に挿通孔31から引き抜けてしまうのを防止することができる。また、繊維部材4が平板状に形成されるため、断面積に対する表面積が例えば棒状に形成されるよりも大きくなるため、経時硬化性材料6との付着力をより効果的に発揮させることができる。そして、繊維部材4が平板状に形成されて付着力を効果的に発揮させることで、第1コンクリート部材2に対する埋め込み長や挿通孔31に対する付着長さを短くすることもでき、ひいては第1コンクリート部材2及び第2コンクリート部材3の使用場所の適用性を広げることが可能となる。
【0051】
更に本発明によれば、この挿通孔31を取り囲むようにスパイラル鉄筋34が埋め込まれている。仮に繊維部材4に引張力が作用したときに、スパイラル鉄筋34を介して挿通孔31に対して作用している内向きの拘束力を介して対抗することが可能となる。
【0052】
これに加えて、経時硬化性材料6に付着している第2コンクリート部材3を構成するコンクリートの一部が割裂して一緒に引き抜けるように作用する場合もあるが、スパイラル鉄筋34を介して内向きの拘束力が発揮されていることにより、このようなコンクリートの割裂自体を抑制することが可能となる。
【0053】
また本発明においては、第1コンクリート部材2も同様にスパイラル鉄筋24が繊維部材4の周囲に設けられていることで、繊維部材4が引張力に対抗することができ、さらには繊維部材4の周囲にあるコンクリートの一部が割裂することで一緒に引き抜けてしまうことを強固に防止することができる。
【0054】
また本発明においては、繊維部材4の編み込み方向を、第1コンクリート部材2と第2コンクリート部材3との接合方向に向けて、繊維部材4を配置させている。このため、本発明によれば、繊維部材4に作用する引張力に対して効率よく対抗することができる。
【0055】
更に本発明によれば、繊維部材4の外面41がせん断力の作用する幅方向に対して直交して配置されることにより、仮に繊維部材4にせん断力が作用したときに、繊維部材4が柔軟に変形できるものとなるため繊維が破断するのを防止することが可能となる。ちなみに、本発明においては、繊維部材4の外面41がせん断力の作用する幅方向に対して平行して配置させてもよい。
【0056】
また、本発明によれば、第1コンクリート部材2から突出された弾性部材5が繊維部材4に当接されて設けられていることにより、仮に繊維部材4に引張力が作用したときに、弾性部材5がこの引張力に対抗することが可能となる。特に、本発明によれば、繊維部材4が弾性部材5に介装されることにより、弾性部材5がこの引張力に対抗する効果をより高めることが可能となる。
【0057】
また、本発明によれば、第1コンクリート部材2から突出された弾性部材5が繊維部材4に当接されて設けられていることにより、仮に繊維部材4にせん断力が作用したときに、弾性部材5がこのせん断力に対抗することが可能となる。特に、本発明によれば、繊維部材4が弾性部材5に介装されることにより、弾性部材5がこのせん断力に対抗する効果をより高めることが可能となる。
【0058】
更に本発明を適用したコンクリート部材間の接合構造1では、凸部28を凹部38に対面させ、第1上部29aを第1底部39aに対面させ、更に第2上部29bを第2底部39bに対面させた上で、これらの間に無収縮モルタル等の経時硬化性材料を充填させてなる。その結果、水平方向の外力が加わった場合に、これら対面している凸部28と凹部38とがいわゆるせん断応力に対抗しえるせん断キーとして作用させることが可能となる。即ち、道路側面3aから外側に向けた外力が加わった場合に凸部28と凹部38との間にせん断力が作用するものの、この凸部28が凹部38内に入り込んでいることにより、このせん断力に対して対抗することができる。
【0059】
特に、本発明によれば、経時硬化性材料6に埋め込まれる繊維部材4にはアラミド繊維等の非金属系繊維が用いられ、弾性部材5には弾性体が用いられる。このため、経時硬化性材料6に外部から水分や塩分等の腐食因子が浸入したとしても、腐食の原因となる金属系材料が用いられていないため、これら繊維部材4及び弾性部材5が腐食することがない。したがって、本発明によれば、第1コンクリート部材2と第2コンクリート部材3との継目の部分が腐食することなく、腐食による耐力の低下を確実に防止することが可能となる。
【0060】
また本発明によれば、孔32を外側面3bに向けて下向きに傾斜させるようにし、また孔33を道路側面3a及び外側面3bに向けて下向きに傾斜させるようにすることにより、外部から水分や塩分等の腐食因子が浸入しにくい構造とすることが可能となる。即ち、外部から侵入しようとする腐食因子にとっては、孔32や孔33が挿通孔31に向けて上向きに傾斜していることから、挿通孔31に到達前に浸入が食い止められることとなる。その結果、挿通孔31には腐食因子が入り込まないことから、内部に挿入される繊維部材4にスチール繊維が用いられたとしても、この繊維部材4が腐食してしまうのを防止することが可能となる。
【0061】
なお、上述した形態において、第1コンクリート部材2が床版であり、第2コンクリート部材3が壁高欄である例について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、如何なるコンクリート部材間の接合に用いられてもよい。
【0062】
図5は、本発明を適用したコンクリート部材間の接合構造1の第2実施形態の平断面図を示している。この形態では、第1コンクリート部材102及び第2コンクリート部材103は、共にプレキャスト製のコンクリート壁高欄である。
【0063】
第2コンクリート部材103の側面は、道路側に向いている道路側面103aと、道路橋の外部側に向いている外側面103bとからなる。第2コンクリート部材103は、挿通孔31と、この挿通孔31に通じる孔32、孔33と、挿通孔31の周囲に埋設されているスパイラル鉄筋34とを備える。また、この第2コンクリート部材103における軸方向の始端面103dは、側方(軸方向)に向けて凹状に凹ませた凹部138と、凹部138から道路側面103aに向けて延長されている第1底部139aと、凹部138から外側面103bに向けて延長されている第2底部139bとを有する。
【0064】
第1コンクリート部材102の側面は、道路側に向いている道路側面102aと、道路橋の外部側に向いている外側面102bとからなる。第1コンクリート部材102は、繊維部材4と、繊維部材4の周囲に埋設されているスパイラル鉄筋24とを備えている。第1コンクリート部材102における軸方向の終端面102dには、側方(軸方向)に向けて凸状に凸設させた凸部128と、凸部128から道路側面3aに向けて延長されている第1上部129aと、凸部128から外側面103bに向けて延長されている第2上部129bとを有する。
【0065】
このとき、本発明を適用したコンクリート部材間の接合構造1は、第2実施形態においても、コンクリート部材同士の継目部分から耐力が低下するのを防止することが可能となり、コンクリート部材に対して大きな外力が負荷された場合においても強固な耐久性を発揮することが可能となる。
【0066】
図6は、本発明を適用したコンクリート部材間の接合構造1の第3実施形態の正断面図を示している。この形態では、第1コンクリート部材2及び第2コンクリート部材3は、共に土木構造物、建築構造物等に用いられるコンクリート柱材である。
【0067】
第2コンクリート部材3は、挿通孔31と、この挿通孔31に通じる孔32、孔33と、挿通孔31の周囲に埋設されているスパイラル鉄筋34とを備える。また、この第2コンクリート部材3における底面3dは、上方に向けて凹状に凹ませた凹部38と、凹部38から幅方向の一方側の側面に向けて延長されている第1底部39aと、凹部38から幅方向の他方側の側面に向けて延長されている第2底部39bとを有する。
【0068】
第1コンクリート部材2は、繊維部材4と、繊維部材4の周囲に埋設されているスパイラル鉄筋24とを備えている。第1コンクリート部材2における上面2dには、上方に向けて凸状に凸設させた凸部28と、凸部28から幅方向の一方側の側面に向けて延長されている第1上部29aと、凸部28から幅方向の他方側の側面に向けて延長されている第2上部29bとを有する。
【0069】
本発明を適用したコンクリート部材間の接合構造1は、第3実施形態においても、コンクリート部材同士の継目部分から耐力が低下するのを防止することが可能となり、コンクリート部材に対して大きな外力が負荷された場合においても強固な耐久性を発揮することが可能となる。
【0070】
図7は、本発明を適用したコンクリート部材間の接合構造1の第4実施形態の側断面図を示している。この形態では、第1コンクリート部材102及び第2コンクリート部材103は、共に橋梁等に用いられるコンクリート桁材である。
【0071】
本発明を適用したコンクリート部材間の接合構造1は、第1コンクリート部材102及び第2コンクリート部材103が略水平方向である軸方向に向けて連結され、幅方向が上下方向となる。このため、第1コンクリート部材102及び第2コンクリート部材103に対して、幅方向に重力が作用するものとなり、繊維部材4には幅方向にせん断力が作用するものとなる。
【0072】
このとき、本発明を適用したコンクリート部材間の接合構造1は、第4実施形態においても、コンクリート部材同士の継目部分から耐力が低下するのを防止することが可能となり、コンクリート部材に対して大きな外力が負荷された場合においても強固な耐久性を発揮することが可能となる。
【0073】
特に、本発明を適用したコンクリート部材間の接合構造1は、第4実施形態において、繊維部材4には幅方向にせん断力が作用するものとなる。このため、本発明を適用したコンクリート部材間の接合構造1は、第4実施形態において、繊維部材4の外面41がせん断力の作用する幅方向に対して直交して配置されることにより、繊維部材4にせん断力が作用したときに、繊維部材4が柔軟に変形できるものとなるため繊維が破断するのを防止することがが可能となる。
【0074】
図8は、本発明を適用したコンクリート部材間の接合構造1の第5実施形態の側断面図を示している。
【0075】
この形態では、第1コンクリート部材2に挿通孔27が形成され、挿通孔27には無収縮モルタル等の経時硬化性材料7が充填されている。
【0076】
挿通孔27は、第1コンクリート部材2の上面2dから開削された孔部として構成されている。挿通孔27は、第1コンクリート部材2の上面2dを削孔機等で開削することで形成されてもよいし、予め第1コンクリート部材2の上面2dに箱抜き等を施しておくことで形成されてもよい。挿通孔27は、繊維部材4の外径よりも径大となるように構成されている。挿通孔27は、上下方向に向かうにつれて拡径、縮径の無い円柱状に形成されるが、これに限定されるものではない。即ち、挿通孔27は、上下方向に向かうにつれて拡径、縮径の無い直方体状とされていてもよいし、規則的又は不規則な拡径又は縮径が施されていてもよい。また、挿通孔27は、下方に向かうにつれて縮径された形状とされ、いわば角錐台又は円錐台の如き立体形状とされていてもよい。更にこの挿通孔27の内周面には細かい凹凸等が形成されていてもよい。なお、
図8に示す挿通孔27は、あくまで凸部28から下方に向けて開削された孔として構成されているが、あえて凸部28を設けない構成においては、第1コンクリート部材2における上面2dのいかなる箇所に設けられていてもよい。
【0077】
繊維部材4のほぼ下半分は、第1コンクリート部材2の挿通孔27に充填された経時硬化性材料7に埋め込まれて構成されている。その結果、繊維部材4の上半分は、第1コンクリート部材2の上面2dから上方に向けて突出された状態となる。
【0078】
また、弾性部材5のほぼ下半分は、第1コンクリート部材2の挿通孔27に充填された経時硬化性材料7に埋め込まれて構成されている。その結果、弾性部材5の上半分は、第1コンクリート部材2の上面2dから上方に向けて突出された状態となる。
【0079】
スパイラル鉄筋24は、挿通孔27の外周側から当該挿通孔27を取り囲むようにして配置されている。スパイラル鉄筋24は、この第1コンクリート部材2を構成するコンクリートの中に予め埋め込まれている。
【0080】
このとき、本発明を適用したコンクリート部材間の接合構造1は、第5実施形態においても、コンクリート部材同士の継目部分から耐力が低下するのを防止することが可能となり、コンクリート部材に対して大きな外力が負荷された場合においても強固な耐久性を発揮することが可能となる。
【0081】
図9は、本発明を適用したコンクリート部材間の接合構造1の第5実施形態において、挿通孔27が形成された第1コンクリート部材2から繊維部材4を突出させる手順を説明するための図である。
【0082】
挿通孔27が形成された第1コンクリート部材2から繊維部材4を突出させる際には、先ず
図9(a)に示すように、第1コンクリート部材2の施工が完了している状態からスタートする。この状態では、第1コンクリート部材2の上面2dから繊維部材4が上方に向けて突出されていない状態となっている。
【0083】
次に、
図9(b)に示すように、第1コンクリート部材2の上面2dから下方に向けて挿通孔27を開削する。この挿通孔27の開削は、第1コンクリート部材2の施工が完了した現場で行うこととなる。なお、第1コンクリート部材2は、予め挿通孔27が形成されるものが用いられてもよい。このとき、挿通孔27の開削作業は、省略できる。
【0084】
次に、
図9(c)に示すように、挿通孔27に経時硬化性材料7を充填する。このとき、挿通孔27に繊維部材4及び弾性部材5を仮保持した状態で挿入しておき、経時硬化性材料7を充填してもよいし、挿通孔27に経時硬化性材料7を充填し、充填した経時硬化性材料7が硬化する前に、繊維部材4及び弾性部材5を挿入してもよい。そして、充填した経時硬化性材料7が硬化し、繊維部材4及び弾性部材5と強固に付着すると共に挿通孔27にも強固に付着することとなる。その結果、この硬化した経時硬化性材料7を介して挿通孔27並びに繊維部材4及び弾性部材5が互いに強固に連結されることとなり、繊維部材4の上半分が第1コンクリート部材2の上面2dから上方に向けて突出されている状態となっている。その後、第1コンクリート部材2と第2コンクリート部材3とを接合すればよい。
【0085】
このように、本発明を適用したコンクリート部材間の接合構造1は、第5実施形態において、第1コンクリート部材2に挿通孔27を開削し、挿通孔27に充填された経時硬化性材料7から繊維部材4を突出させるものとなる。このため、本発明を適用したコンクリート部材間の接合構造1は、既設の第1コンクリート部材2に対して、繊維部材4を介して新たに第2コンクリート部材3を接合することが可能となり、例えば、コンクリート部材の取替工事や補修工事にも適用することが可能となる。
【0086】
なお、上述した形態では、挿通孔27に経時硬化性材料7を充填した後に、挿通孔31に経時硬化性材料6を充填したが、挿通孔27と挿通孔31とに同時に経時硬化性材料6を充填してもよい。
図10は、本発明を適用したコンクリート部材間の接合構造1の第5実施形態において、第1コンクリート部材2の挿通孔27と第2コンクリート部材3の挿通孔31とに同時に経時硬化性材料6を充填する手順を説明するための図である。
【0087】
先ず
図10(a)に示すように、第1コンクリート部材2の施工が完了した現場において、第1コンクリート部材2の上面2dから下方に向けて挿通孔27を開削し、開削した挿通孔27に繊維部材4及び弾性部材5を仮保持した状態で挿入する。このとき、繊維部材4に弾性部材5が当接された状態となっている。
【0088】
次に、
図10(b)に示すように、第2コンクリート部材3を現場に搬入して、挿通孔27に仮保持した状態で挿入した繊維部材4及び弾性部材5を挿通孔31に挿通する。
【0089】
次に、
図10(c)に示すように、挿通孔27と挿通孔27に対向される挿通孔31とに経時硬化性材料6を充填する。そして、充填した経時硬化性材料6が硬化し、繊維部材4及び弾性部材5と強固に付着すると共に挿通孔27と挿通孔31とにも強固に付着することとなる。その結果、この硬化した経時硬化性材料6を介して挿通孔27及び挿通孔31並びに繊維部材4及び弾性部材5が互いに強固に連結されることとなり、第1コンクリート部材2と第2コンクリート部材3との接合が完了することとなる。
【0090】
なお、本発明を適用したコンクリート部材間の接合構造1は、第1実施形態~第5実施形態において、スパイラル鉄筋24、34を省略してもよい。
【0091】
以上、本発明の実施形態の例について詳細に説明したが、上述した実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。
【0092】
特に、第1コンクリート部材2、102及び第2コンクリート部材3、103は、壁材、柱材、梁材、桁材、床版、コンクリート躯体等のコンクリート部材同士の接合に用いられればよく、これらは如何なる組み合わせであってもよい。
【符号の説明】
【0093】
1 コンクリート部材間の接合構造
2 第1コンクリート部材
2d 上面
24 スパイラル鉄筋
27 挿通孔
28 凸部
29a,29b 上部
3 第2コンクリート部材
3a 道路側面
3b 外側面
3d 底面
31 挿通孔
32 孔
33 孔
34 スパイラル鉄筋
35 鉄筋
36 鉄筋
37 ケーブル
38 凹部
39a,39b 底部
4 繊維部材
41 外面
5 弾性部材
6 経時硬化性材料
7 経時硬化性材料
102 第1コンクリート部材
102d 終端面
128 凸部
129a,129b 側部
103 第2コンクリート部材
103d 始端面
138 凹部
139a,139b 側部