(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-17
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】アンモニア分離方法、水処理方法、アンモニア分離装置、及び、水処理装置
(51)【国際特許分類】
B01D 61/00 20060101AFI20220106BHJP
C02F 1/20 20060101ALI20220106BHJP
C02F 1/44 20060101ALI20220106BHJP
F23G 7/04 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
B01D61/00
C02F1/20 B
C02F1/44 F
F23G7/04 601P
F23G7/04 ZAB
F23G7/04 603K
(21)【出願番号】P 2017179538
(22)【出願日】2017-09-19
【審査請求日】2020-07-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【氏名又は名称】赤岡 明
(72)【発明者】
【氏名】早見 徳介
(72)【発明者】
【氏名】松川 梢
(72)【発明者】
【氏名】茂庭 忍
(72)【発明者】
【氏名】毛受 卓
(72)【発明者】
【氏名】大江 真理
(72)【発明者】
【氏名】木内 智明
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-161305(JP,A)
【文献】特開2013-202475(JP,A)
【文献】特開平06-182325(JP,A)
【文献】特開2004-057859(JP,A)
【文献】特表2013-533245(JP,A)
【文献】特公昭55-035188(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
B01D 61/00 - 71/82
C02F 1/44
C02F 11/00 - 11/20
C02F 1/20 - 1/26
C02F 1/30 - 1/38
F23G 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と気体とを分離する気体分離膜を有する膜分離装置を用いて、
アンモニアと炭酸を含有するアンモニア含有水からアンモニアを含む気体を分離するステップと、
前記アンモニア含有水からアンモニアを含む気体を分離された後の液体を、返流水として水処理工程に戻して、空気を供給する曝気装置で曝気を行うステップと、
前記分離されたアンモニアを含む気体を、燃焼器を用いて燃焼させるステップと、
前記燃焼器により生成された燃焼エネルギーを、エネルギー回収装置を用いて回収するステップと、
を備える
水処理方法。
【請求項2】
前記アンモニア含有水は、生物還元処理で生成された消化汚泥を脱水した際に得られる脱水分離液である、請求項1に記載の
水処理方法。
【請求項3】
前記
分離されたアンモニアを含む気体を、精製装置を用いて精製して、不純物を除去
した後、前記燃焼器に移送するステップを、さらに備える請求項1又は請求項2に記載の
水処理方法。
【請求項4】
前記膜分離装置を用いて前記アンモニア含有水からアンモニアを含む気体を分離する前に、前記アンモニア含有水を、加温装置を用いて加温するステップをさらに備える、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の
水処理方法。
【請求項5】
当該水処理方法が実行される水処理装置が設置された処理場内で発生した余剰熱源を利用して、前記加温装置は前記アンモニア含有水を加温する、請求項4に記載の水処理方法。
【請求項6】
水と気体とを分離する気体分離膜を備える膜分離装置であって、前記気体分離膜を用いて、
アンモニアと炭酸を含有するアンモニア含有水からアンモニアを含む気体を分離する、膜分離装置と、
前記膜分離装置を用いて、前記アンモニア含有水からアンモニアを含む気体を分離された後の液体を、返流水として水処理工程に戻して、空気を供給する曝気を行う曝気装置と、
前記膜分離装置を用いて、前記アンモニア含有水から分離されたアンモニアを含む気体を燃焼させる、燃焼器と、
前記燃焼器により生成された燃焼エネルギーを回収する、エネルギー回収装置と、
を備える水処理装置。
【請求項7】
前記アンモニア含有水は、生物還元処理で生成された消化汚泥を脱水した際に得られる脱水分離液である、請求項
6に記載の
水処理装置。
【請求項8】
前記
分離されたアンモニアを含む気体を精製して、不純物を除去する、精製装置をさらに備える請求項
6又は請求項
7に記載の
水処理装置。
【請求項9】
前記膜分離装置を用いて前記アンモニア含有水からアンモニアを含む気体を分離する前に、前記アンモニア含有水を加温する、加温装置をさらに備える、請求項
6乃至請求項
8のいずれかに記載の
水処理装置。
【請求項10】
当該水処理装置が設置された処理場内で発生した余剰熱源を利用して、前記加温装置は前記アンモニア含有水を加温する、請求項9に記載の水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、アンモニア分離方法、水処理方法、アンモニア分離装置、及び、水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下水処理場の水処理や汚泥処理、産業用の排水処理などにおいては、受け入れた被処理水に生物還元処理を施し、水中の懸濁物や溶解物をガス化したり汚泥化したりすることで、被処理水を浄化する。汚泥は、一般的には、沈殿槽で分離された後、汚泥処理を施される。
【0003】
近年、このような下水処理場などからのエネルギー回収が技術的に注目されており、水処理で生成される汚泥を消化槽にて消化してメタン発酵させ、精製した後のメタンをガスエンジンで燃焼させて、発電機で電力としてエネルギー回収するプロセスの普及が進められている。ガスエンジンからは、温水による排熱回収もできるため、熱効率が60%以上と高いことが特徴である。
【0004】
消化槽を設置することで、汚泥からのエネルギー回収が可能となったが、一方で消化は嫌気反応であるため、消化汚泥は液相にアンモニア成分やリン酸などを多く含んでいる。これらのうちリン酸は、汚泥を脱水する前に添加される鉄・アルミ分を含む凝集剤により固形物化され脱水工程を経て除去される。しかしアンモニア成分は、脱水分離液に残留し、返流水に混合されて、水処理工程に戻される。戻されたアンモニア成分を含有する脱水分離液は、水処理装置における生物還元処理で、再度、曝気されて、硝化脱窒してガス化される。
【0005】
このように下水処理場などではエネルギー回収が促進され、使用動力の一部を賄うことでエネルギーの自立化が進められているが、消化槽を設置することで発生するアンモニア成分を含有する脱水分離液が再び水処理装置で処理されるため、必要な曝気動力が上昇するという問題が生まれている。このため、特に、設備能力に余裕のない下水処理場などでは、消化槽を導入したくてもできないなどの制約となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
アンモニア含有水からアンモニアを含む気体を分離可能にすることにより、エネルギーの効率化を図る。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態に係るアンモニア分離方法は、アンモニア含有水からアンモニアを分離するアンモニア分離方法であって、水と気体とを分離する気体分離膜を有する膜分離装置を用いて、前記アンモニア含有水からアンモニアを含む気体を分離するステップと、ポンプを用いて、前記アンモニア含有水から分離した気体を移送するステップと、を備える。
【0009】
本実施形態に係るアンモニア分離装置は、アンモニア含有水からアンモニアを分離するアンモニア分離装置であって、水と気体とを分離する気体分離膜を備える膜分離装置であって、前記気体分離膜を用いて、前記アンモニア含有水からアンモニアを含む気体を分離する、膜分離装置と、前記膜分離装置で前記アンモニア含有水から分離した気体を移送するポンプと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態に係る水処理装置の構成を説明するブロック図。
【
図2】アンモニア含有水を空気に接触させた際のpHと導電率の時間変化を示すグラフ。
【
図3】アンモニア含有水を空気に接触させた際の無機体炭素の除去率とアンモニア態窒素の除去率の時間変化を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、実施形態に係るアンモニア分離方法を説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行うこととする。
【0012】
(アンモニア分離方法の基本概念)
まず、本実施形態におけるアンモニア分離方法の基本的概念について説明する。生物還元処理を行う消化槽にて発生するアンモニア成分は、消化汚泥を脱水した際に得られる脱水分離液に含まれており、この脱水分離液を返流水として水処理工程に戻して混合するとアンモニア成分の濃度が低下してしまう。このため、本実施形態においては、アンモニア成分の濃度が高い脱水分離液から、アンモニアを分離する。ここで、アンモニア成分という文言は、純粋なアンモニア(NH3)のみならず、NH4
+のアンモニアイオン、アンモニア態窒素(NH3-N)などの種々のアンモニウム化合物を含む意味で用いている。
【0013】
脱水分離液には、アンモニア成分として、アンモニア態窒素が数百mg/L~千数百mg/L程度含まれている。また、消化後であるので、pHは弱アルカリ性である。水中のアンモニア態窒素は、NH4
+のイオン状の形態とNH3のアンモニア分子の形態とで解離平衡の関係にあり、更に液中のNH3と気相中のNH3との気液平衡の関係にある。解離平衡をNH3の方向へ進ませるためには、pHを高くする、水温を上昇させる、NH3を液中から除去する、といった手段を用いることができる。気液平衡を液相のNH3から気相のNH3に移動するように動かすためには、液相中のNH3濃度を上昇させる、水温を上昇させる、気相のガスを入れ替える、といった手段を用いることができる。
【0014】
本実施形態においては、解離平衡を動かすために水温を上昇させ、必要に応じてアルカリ剤を用いてpHをアルカリ側へ調整し、気液接触によりアンモニアを気相へ抽出する。 抽出したアンモニアは、腐食性のある物質であり、何らかの手段を用いて無害化する必要があるが、燃焼器を用いて燃焼させることで無害化する。燃焼器の前段に必要に応じてガスを精製する精製装置を設けてもよく、アンモニアに随伴する水、炭酸ガス、硫化水素等の不純物を除去する。ここで、燃焼器には発電装置を接続してもよく、その場合はアンモニアを燃料としたエネルギー回収を行うことができるので、水処理系の曝気動力削減だけではなく、エネルギー創出によってエネルギー自立化を促進することができる。
【0015】
(一実施形態)
次に図面に基づいて、本実施形態の水処理装置の具体的構成の一例を説明する。
図1は、本実施形態に係る水処理装置1の全体構成を説明するブロック図である。この
図1に示すように、本実施形態に係る水処理装置1は、前処理装置10と、加温装置12と、余剰熱源14と、膜分離装置16と、曝気装置18と、ポンプ20と、精製装置22と、燃焼器24と、エネルギー回収装置26とを備えて構成されている。
【0016】
前処理装置10には、原水として、アンモニア成分を含有するアンモニア含有水が供給される。特に、本実施形態においては、消化汚泥を脱水した、脱水分離液が原水として供給される。脱水分離液は、脱水の状態に応じて固形物を多く含む場合がある。このため、この原水をそのまま後段で処理すると、水処理装置1における各所配管に固形物が付着して、配管閉塞を引き起こす恐れがある。そこで、前処理装置10を付加的に設けて、アンモニア含有水である原水から固形物を除去する。前処理装置10には、必要に応じて、例えば、傾斜板を備えた滞留沈殿槽の他、砂ろ過装置や膜処理装置を用いることができる。
【0017】
加温装置12には、前処理装置10で前処理されて固形物が除去されたアンモニア含有水が供給される。この加温装置12により、固形物を除去したアンモニア含有水を加温する。本実施形態においては、加温するための熱源としては、余剰熱源14を利用する。余剰熱源14としては、ガスエンジンの容量調整などの都合で燃焼して廃棄されていたメタンガスをバイオガスボイラで燃焼させた熱を用いたり、ガスエンジンから排熱回収された温水を用いたりすることができる。これらは元々、水処理装置1が設置された処理場内で発生したものであり、更に余剰が発生して一部廃棄されることもあるエネルギーであるので、本実施形態に係る水処理装置1でアンモニア分離に使用することで、有効活用することができる。
【0018】
原水である脱水分離液は、30℃程度であることが多いが、加温装置12による加温で概ね60℃以上とすることが望ましい。余剰熱源14の熱量は、この水処理装置1が設置された処理場の設計思想により異なるが、調査検討の結果によれば、ある処理場においては脱水分離液の全量を30℃~40℃温度分上昇させるだけの余剰エネルギーが存在している。また、脱水分離液の全量を60℃以上に温度上昇させることができない場合は、脱水分離液の一部だけを、前処理装置10に供給して、一部の脱水分離液からアンモニアを分離するようにしてもよい。その場合でも、返流水のアンモニアの量が減少しているので、曝気動力の削減効果や、アンモニアを燃料とした発電からのエネルギー回収効果を得ることができる。加温装置12における熱交換には、シェル&チューブや、プレート型の熱交換器を用いることができる。
【0019】
ここで、加温装置12においては、必要に応じてアルカリ剤を添加してpH調整をすることが望ましい。この加温装置12の後段でアンモニアをアンモニア含有水から除去すると、アンモニア含有水のpHが低下する。pHが低下するとアンモニアの気相への移動が遅くなり、時間がかかったり、所期の除去率を達成できなくなったりする。そのため、予めアルカリ剤を用いて所定のpHへ調整しておくことで、アンモニア抽出の反応時間と抽出・除去率をコントロールすることができる。例えば、アンモニア含有水からのアンモニアの除去率80%程度とするにあたっては、概ねpH8以上とすることが必要であり、望ましくはpH9以上とすることで時間を短縮することができる。また、消化汚泥の脱水に用いた凝集剤の量が、計測や設定値などで予めわかっている場合には、凝集剤に含まれる酸の量からアルカリ剤の量を設定してもよい。
【0020】
膜分離装置16には、加温装置12で加温され、必要に応じてpH調整されたアンモニア含有水が供給される。膜分離装置16においては、膜分離装置16に備えられた気体分離膜を用いて、気液平衡によりアンモニア含有水のアンモニアが気相へ移動する。また、膜分離装置16においては、ポンプと散気板により空気を吹き込んでバブリングしたり、脱気用のガス分離膜を用いて一次側に脱水分離液を流し二次側に空気を流したりして、アンモニアの液相から気相への移行を促進するなどしてもよい。膜分離装置16に吹き込む空気は、例えば余剰熱源14或いは図示しない熱源を用いて、予め、供給されるアンモニア含有水と同等の温度まで加熱しておくことが望ましい。
【0021】
図2は、脱水分離液を模擬したアンモニア含有水を60℃として空気と接触させた際のpHと導電率の時間変化を示すグラフである。この
図2においては、横軸に時間Tをとっており、左縦軸にpHを、右縦軸に導電率(mS/cm)をとっている。また、
図3は、
図2と同様の条件における、無機体炭素の除去率挙動とアンモニア態窒素の除去率挙動の時間変化を示すグラフである。この
図3においては、横軸に時間Tをとっており、縦軸に無機体炭素とアンモニア態窒素の除去率(%)をとっている。
【0022】
これら
図2及び
図3のグラフにより、無機体炭素は炭酸成分であり、まず炭酸が気相中に放出されることで水のpHが上昇し、これによりアンモニアが放出されやすい環境となるので、それに応じてアンモニアの除去率が上昇することがわかる。導電率は、イオン成分である炭酸とアンモニウムイオンの減少により低下している。このようにして、膜分離装置16では、アンモニア含有水である脱水分離液から、アンモニアを分離することができる。
【0023】
再び
図1に示すように、膜分離装置16にて、アンモニア含有水からアンモニアを分離された液体は、返流水として、水処理装置1の上流工程に戻される。本実施形態においては、返流水は曝気装置18に戻されて、曝気される。このとき、
図3のグラフに示すように、アンモニア態窒素が削減されていることにより、曝気装置18の曝気動力が、数%~10%程度削減される。なお、本実施形態においては、上述した前処理装置10において固液分離された固形物も、返流水として上流工程に戻される。そして、本実施形態においては、前処理装置10からの返流水も曝気装置18にて曝気される。
【0024】
膜分離装置16にて分離されたアンモニアを含む気体は、ポンプ20により吸引され、精製装置22に移送される。ここで、ポンプ20とは、アンモニアを含む気体を膜分離装置16から移送するための機械装置の総称であり、一方から他方へ気体を運ぶ能力を有する種々の機械装置が含まれる。
【0025】
ポンプ20により移送される気体には、アンモニア(NH3)の他に、二酸化炭素(CO2)、水蒸気(H2O)などの不純物が含まれていることもある。燃焼器24によっては不純物による反応阻害を受ける場合があるため、必要に応じて前処理としての精製装置22を設置する。例えば、燃焼器24が燃料電池や触媒燃焼装置である場合には、硫化水素の除去が必要であるので、鉄成分などを含む脱硫剤を用いて除去する。燃焼器24がガスタービンやガスエンジンである場合には、水の除去のためにガス分離膜によるエアドライヤを設置する。
【0026】
また、本実施形態においては、精製装置22に、二酸化炭素吸収液を供給し、この二酸化炭素吸収液に、ポンプ20により移送された気体に含まれる二酸化炭素(CO2)を吸収させる。二酸化炭素が吸収された溶液は、精製装置22から二酸化炭素吸収溶液の回収槽に送出される。
【0027】
なお、膜分離装置16で分離されたアンモニアを含む気体に、不純物が含まれていない場合、不純物が含まれていても問題の無いレベルである場合、或いは、後段の燃焼器24の燃焼に問題が生じない場合には、この精製装置22は省略することもできる。
【0028】
燃焼器24には、精製装置22で不純物が除去された、アンモニアを含む気体が供給される。燃焼器24には、燃料電池、ガスタービン、ガスエンジン、及び、触媒燃焼装置などを用いることができる。このうち、燃料電池、ガスタービン、及び、ガスエンジンにおいては、燃焼エネルギーを回収するエネルギー回収装置26として、発電機を用いることができ、発電機の発電機能により、エネルギーの回収量を増大させることができる。触媒燃焼装置については、用いる触媒により異なるが、数百℃で燃焼させる、発熱反応であることから、エネルギー回収装置26として、熱回収装置を用いることができる。熱回収装置で回収した熱は、例えば、上述した加温装置12の余剰熱源14として用いることができるので、本実施形態に係る水処理装置1におけるアンモニア分離プロセス自体のエネルギー効率を上昇させることができる。
【0029】
また、燃焼器24における燃焼にあたっては、抽出できるアンモニア量は熱量ベースでメタンに対して数~20%程度と少ないこと、また、アンモニア専焼よりも燃焼技術の面で容易であることから、消化ガスと混合して混焼させてもよい。
【0030】
上述したところから分かるように、
図1に示した本実施形態に係る水処理装置1においては、前処理装置10と、加温装置12と、膜分離装置16と、ポンプ20と、精製装置22とにより、本実施形態におけるアンモニア分離装置が構成されている。すなわち、このアンモニア分離装置で分離されたアンモニアを含む気体が、燃焼器24で燃焼され、その燃焼エネルギーがエネルギー回収装置26にて回収される。また、アンモニア分離装置で、アンモニア含有水からアンモニアを含む気体が分離された液体が、返流水として曝気装置18に送られる。
【0031】
以上のように、本実施形態に係る水処理装置1によれば、アンモニア含有水が供給された膜分離装置16において、気体分離膜により、アンモニア含有水からアンモニアが分離され、この分離された気体をポンプ20で移送することとしたので、膜分離装置16からの返流水に含まれるアンモニア成分を減少させることができる。このため、返流水の曝気を行う曝気装置18の負荷を低減して、曝気装置18の風量を抑制し、エネルギー消費の削減を図ることができる。また、このように、曝気装置18の負荷を軽減できることから、設備能力の十分でない下水処理場などにおいても、消化槽を新たに導入することが可能になる。
【0032】
また、ポンプ20により移送されたアンモニアを含む気体は、精製装置22を介して、或いは、直接、燃焼器24で燃焼され、燃焼エネルギーをエネルギー回収装置26で回収することができる。このため、この水処理装置1のエネルギー効率も向上させることができる。さらに、エネルギー回収装置26で回収した燃焼エネルギーを、加温装置12の熱源として利用すれば、この水処理装置1のエネルギーサイクルを自立させることができる。
【0033】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例としてのみ提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図したものではない。本明細書で説明した新規な装置および方法は、その他の様々な形態で実施することができる。また、本明細書で説明した装置および方法の形態に対し、発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。添付の特許請求の範囲およびこれに均等な範囲は、発明の範囲や要旨に含まれるこのような形態や変形例を含むように意図されている。
【符号の説明】
【0034】
1:水処理装置、10:前処理装置、12:加温装置、14:余剰熱源、16:膜分離装置、18:曝気装置、20:ポンプ、22:精製装置、24:燃焼器、26:エネルギー回収装置