(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-17
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】表面処理装置および表面処理方法
(51)【国際特許分類】
C25D 17/00 20060101AFI20220106BHJP
C25D 17/06 20060101ALI20220106BHJP
C25D 17/08 20060101ALI20220106BHJP
C25D 21/10 20060101ALI20220106BHJP
C23C 18/31 20060101ALI20220106BHJP
C23C 18/16 20060101ALI20220106BHJP
C25D 7/00 20060101ALI20220106BHJP
C25D 7/12 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
C25D17/00 K
C25D17/00 C
C25D17/00 L
C25D17/06 C
C25D17/08 A
C25D21/10 301
C25D21/10 302
C23C18/31 E
C23C18/16 B
C25D7/00 J
C25D7/12
C25D17/08 S
(21)【出願番号】P 2017180414
(22)【出願日】2017-09-20
【審査請求日】2020-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000189327
【氏名又は名称】上村工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】特許業務法人アスフィ国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075409
【氏名又は名称】植木 久一
(74)【代理人】
【識別番号】100129757
【氏名又は名称】植木 久彦
(74)【代理人】
【識別番号】100115082
【氏名又は名称】菅河 忠志
(74)【代理人】
【識別番号】100125243
【氏名又は名称】伊藤 浩彰
(72)【発明者】
【氏名】奥田 朋士
(72)【発明者】
【氏名】松山 大輔
(72)【発明者】
【氏名】立花 眞司
(72)【発明者】
【氏名】内海 雅之
【審査官】岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2014-0137164(KR,A)
【文献】特表2010-530029(JP,A)
【文献】特開平11-328749(JP,A)
【文献】特開2005-097732(JP,A)
【文献】特開2004-359994(JP,A)
【文献】実開昭56-042976(JP,U)
【文献】特開昭62-274093(JP,A)
【文献】特開2002-266098(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 5/00 - 7/12
B05C 1/00 - 3/20
B05D 1/00 - 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部が液に浸漬されている被処理物に表面処理を施す装置であって、
該装置は、被処理物の被処理面に向けて処理液を噴射する噴射部を有し、
前記噴射部は前記被処理物に対向して設けられており、
前記噴射部の向きは、該噴射部から噴射される処理液の噴射方向の角度が、水平方向を0度としたとき、-70度~+70度であり、且つ
前記被処理物の被処理面に対して平行な面内で前記噴射部を回転させる噴射部回転手段を有し、
前記被処理物は、前記被処理面が液面に対して垂直に配置されており、
表面処理装置の処理槽の一部はベースフレームで囲まれており、
前記表面処理装置は処理槽の上方に垂直フレームを有しており、
前記噴射部はスパージャパイプと連通しており、該スパージャパイプは前記垂直フレームに取り付けられており、
前記垂直フレームは前記噴射部回転手段を介して前記ベースフレームに固定されていることを特徴とする表面処理装置。
【請求項2】
更に、前記噴射部から噴射される処理液の噴射方向に対して垂直な面内で前記被処理物を回転させる被処理物回転手段を有する請求項1に記載の表面処理装置。
【請求項3】
前記被処理物または前記噴射部の少なくとも一方は、平均回転速度100~3000mm/分で回転する請求項1または2に記載の表面処理装置。
【請求項4】
前記被処理物または前記噴射部の少なくとも一方は、円相当直径20~200mmで回転する請求項1~3のいずれかに記載の表面処理装置。
【請求項5】
少なくとも一部が液に浸漬されている被処理物に表面処理を施す装置であって、
該装置は、被処理物の被処理面に向けて処理液を噴射する噴射部を有し、
前記被処理物を液面に対して傾斜して固定する固定手段と、
前記噴射部を回転させる噴射部回転手段を有し、
前記被処理物の被処理面と液面と成す角度θは、0度超、90度未満であることを特徴とする表面処理装置。
【請求項6】
表面処理装置の処理槽の一部はベースフレームで囲まれており、
前記表面処理装置は処理槽の上方に垂直フレームを有しており、
前記垂直フレームは前記噴射部回転手段を介して前記ベースフレームに固定されており、
前記噴射部はスパージャパイプと連通しており、該スパージャパイプは前記垂直フレームに取り付けられている請求項5に記載の表面処理装置。
【請求項7】
前記被処理物の被処理面と、前記噴射部から噴射される処理液の噴射方向が垂直となるように前記噴射部を傾斜する傾斜手段を更に有する請求項5または6に記載の表面処理装置。
【請求項8】
少なくとも一部が液に浸漬されている被処理物に表面処理を施す装置であって、
該装置は、被処理物の被処理面に向けて処理液を噴射する噴射部を有し、
前記噴射部は前記被処理物に対向して設けられており、
前記噴射部の下方に前記被処理物を配置し、前記噴射部と前記被処理物の被処理面は液面に対して平行であり、且つ
前記被処理面に平行な軸を中心に前記噴射部を回転させる噴射部回転手段を有することを特徴とする表面処理装置。
【請求項9】
前記噴射部は、平均回転速度100~3000mm/分で回転する請求項5~8のいずれかに記載の表面処理装置。
【請求項10】
前記噴射部は、円相当直径20~200mmで回転する請求項5~9のいずれかに記載の表面処理装置。
【請求項11】
前記噴射部の向きは、該噴射部から噴射される処理液の噴射方向の角度が、水平方向を0度としたとき、-70度~+70度である請求項
5~10のいずれかに記載の表面処理装置。
【請求項12】
前記噴射部は、前記処理液を平均流速1~30m/秒で噴射する請求項1~
11のいずれかに記載の表面処理装置。
【請求項13】
前記処理液を前記表面処理装置の処理槽から抜き出し、前記噴射部へ送給する循環経路と、該循環経路上に、前記処理液を前記処理槽から抜き出すためのポンプを更に有する請求項1~
12のいずれかに記載の表面処理装置。
【請求項14】
前記表面処理は、めっき処理であり、めっき浴温は20~50℃である請求項1~
13のいずれかに記載の表面処理装置。
【請求項15】
前記表面処理は、電解めっき処理であり、平均電流密度は1~30A/dm
2である請求項1~
14のいずれかに記載の表面処理装置。
【請求項16】
前記噴射部は、噴射孔径が1~5mmである請求項1~
15のいずれかに記載の表面処理装置。
【請求項17】
前記噴射部の噴射孔は、隣り合う噴射孔の平均距離が5~150mmである請求項1~
16のいずれかに記載の表面処理装置。
【請求項18】
前記噴射部の噴射孔と、前記被処理物との距離が10~100mmである請求項1~
17のいずれかに記載の表面処理装置。
【請求項19】
少なくとも一部が液に浸漬されている被処理物に表面処理を施す方法であって、
被処理物の被処理面に向けて処理液を噴射する噴射部を有し、
前記噴射部は前記被処理物に対向して設けられており、且つ
前記被処理物の被処理面に対して平行な面内で前記噴射部を回転させる噴射部回転手段を有し、
表面処理装置の処理槽の一部はベースフレームで囲まれており、
前記表面処理装置は処理槽の上方に垂直フレームを有しており、
前記噴射部はスパージャパイプと連通しており、該スパージャパイプは前記垂直フレームに取り付けられており、
前記垂直フレームは前記噴射部回転手段を介して前記ベースフレームに固定されている表面処理装置を用い、
前記被処理物を、前記被処理面が液面に対して垂直になるように配置し、
噴射部から被処理物の被処理面に向けて処理液を噴射するにあたり、
前記噴射部を前記被処理物に対向して設け、
前記噴射部から噴射される処理液の噴射方向の角度は、水平方向を0度としたとき、-70度~+70度であり、且つ
前記被処理物の被処理面に対して平行な面内で前記噴射部を回転させることを特徴とする表面処理方法。
【請求項20】
更に前記噴射部から噴射される処理液の噴射方向に対して垂直な面内で前記被処理物を回転させる被処理物回転手段を有する表面処理装置を用いる請求項19に記載の表面処理方法。
【請求項21】
前記被処理物または前記噴射部の少なくとも一方を、平均回転速度100~3000mm/分で回転させる請求項19または20に記載の表面処理方法。
【請求項22】
前記被処理物または前記噴射部の少なくとも一方を、円相当直径20~200mmで回転させる請求項19~21のいずれかに記載の表面処理方法。
【請求項23】
少なくとも一部が液に浸漬されている被処理物に表面処理を施す方法であって、
噴射部から被処理物の被処理面に向けて処理液を噴射するにあたり、前記被処理物を液面に対して傾斜させ、且つ前記噴射部を回転させ、
前記被処理物の被処理面と前記液面と成す角度θは、0度超、90度未満とすることを特徴とする表面処理方法。
【請求項24】
被処理物の被処理面に向けて処理液を噴射する噴射部を有し、
前記被処理物を液面に対して傾斜して固定する固定手段と、
前記噴射部を回転させる噴射部回転手段を有し、
表面処理装置の処理槽の一部はベースフレームで囲まれており、
前記表面処理装置は処理槽の上方に垂直フレームを有しており、
前記垂直フレームは前記噴射部回転手段を介して前記ベースフレームに固定されており、
前記噴射部はスパージャパイプと連通しており、該スパージャパイプは前記垂直フレームに取り付けられている表面処理装置を用いる請求項23に記載の表面処理方法。
【請求項25】
前記被処理物の被処理面と、前記噴射部から噴射される処理液の噴射方向が垂直となるように前記噴射部を傾斜する請求項23または24に記載の表面処理方法。
【請求項26】
少なくとも一部が液に浸漬されている被処理物に表面処理を施す方法であって、
噴射部から被処理物の被処理面に向けて処理液を噴射するにあたり、
前記噴射部を前記被処理物に対向して設け、
前記噴射部の下方に前記被処理物を配置し、前記噴射部と前記被処理物の被処理面は液面に対して平行とし、且つ
前記被処理面に平行な軸を中心に前記噴射部を回転させることを特徴とする表面処理方法。
【請求項27】
被処理物の被処理面に向けて処理液を噴射する噴射部を有し、
前記噴射部は前記被処理物に対向して設けられており、且つ
前記被処理面に平行な軸を中心に前記噴射部を回転させる噴射部回転手段を有する表面処理装置を用いる請求項26に記載の表面処理方法。
【請求項28】
前記噴射部は、平均回転速度100~3000mm/分で回転する請求項23~27のいずれかに記載の表面処理方法。
【請求項29】
前記噴射部は、円相当直径20~200mmで回転する請求項23~28のいずれかに記載の表面処理方法。
【請求項30】
前記噴射部から噴射される処理液の噴射方向の角度は、水平方向を0度としたとき、-70度~+70度である請求項
23~29のいずれかに記載の表面処理方法。
【請求項31】
前記噴射部から前記処理液を平均流速1~30m/秒で噴射させる請求項19~
30のいずれかに記載の表面処理方法。
【請求項32】
前記被処理物を少なくとも2つ準備し、該被処理物の被処理面を外側として処理槽内に配置する請求項19~
31のいずれかに記載の表面処理方法。
【請求項33】
前記被処理物は、表層に凹部を有する請求項19~
32のいずれかに記載の表面処理方法。
【請求項34】
前記凹部を有する被処理物は、プリント基板、半導体、またはウエハである請求項
33に記載の表面処理方法。
【請求項35】
前記表面処理は、電解めっき処理または無電解めっき処理である請求項19~
34のいずれかに記載の表面処理方法。
【請求項36】
前記表面処理は、めっき処理であり、めっき浴温を20~50℃とする請求項19~
34のいずれかに記載の表面処理方法。
【請求項37】
前記表面処理は、電解めっき処理であり、平均電流密度を1~30A/dm
2とする請求項19~
34のいずれかに記載の表面処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板、半導体、ウエハなどの被処理物に表面処理を施す装置および方法に関する。表面処理は、被処理物にめっきなどを施す被覆処理のほか、機械加工時等に付着した樹脂残渣等を被処理物から除去するデスミア処理、被処理物に所定の処理を施す前の前処理、所定の処理を施した後の後処理、各処理の前後に必要に応じて行う洗浄処理なども含む意味である。
【背景技術】
【0002】
プリント基板、半導体、ウエハなどは、被処理物に対し、所望の機械加工等を行った後、デスミア処理し、めっきなどの被覆処理が施されることによって得られる。また、各処理の前後には、必要に応じて前処理や後処理が行われ、洗浄処理が行われることもある。こうした各処理は、被処理物を処理槽に装入し、被処理物の少なくとも一部、あるいは全部を液に浸漬した状態で行われる。例えば、プリント基板などの板状ワークに電気めっきする技術として、特許文献1の技術が知られている。特許文献1の技術は、本出願人が先に提案したものであり、めっき処理の品質を向上させるために、被処理物に向けてめっき処理液を噴出する噴出手段を表面処理装置またはめっき槽に設けることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
種々の処理が施されるプリント基板、半導体、ウエハなどの表面には、ビアホール(層間接続孔)やトレンチ(配線溝)などが形成されており、半導体装置の高集積化に対応するために、ビアホールの直径やトレンチの幅は減少する傾向にある。一方、ビアホールの直径に対する深さの比(ビアホールの深さ/直径)やトレンチの幅に対する深さの比(ビアホールの深さ/幅)は大きくなる傾向にある。そのため、プリント基板、半導体、ウエハなどの表面に処理を施しても、処理液や洗浄液がビアホールやトレンチの内部に充分浸透せず、処理ムラが発生することがある。
【0005】
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、被処理物に表面処理を施すにあたり、表面処理品質を向上できる表面処理装置、および表面処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決することのできた本発明に係る第一の表面処理装置とは、少なくとも一部が液に浸漬されている被処理物に表面処理を施す装置であって、該装置は、被処理物の被処理面に向けて処理液を噴射する噴射部を有し、前記噴射部は前記被処理物に対向して設けられており、且つ前記被処理物の被処理面に対して平行な面内で前記噴射部を回転させる噴射部回転手段、および前記噴射部から噴射される処理液の噴射方向に対して垂直な面内で前記被処理物を回転させる被処理物回転手段のうち少なくとも一方を有する点に特徴がある。
【0007】
上記第一の表面処理装置において、前記被処理物または前記噴射部の少なくとも一方は、平均回転速度100~3000mm/分で回転させることが好ましい。また、前記被処理物または前記噴射部の少なくとも一方は、円相当直径20~200mmで回転させることが好ましい。
【0008】
上記課題は、少なくとも一部が液に浸漬されている被処理物に表面処理を施す装置であって、該装置は、被処理物の被処理面に向けて処理液を噴射する噴射部を有し、前記被処理物を液面に対して傾斜して固定する固定手段と、前記噴射部を回転させる噴射部回転手段とを有する第二の表面処理装置によっても解決できる。
【0009】
上記第二の表面処理装置は、前記被処理物の被処理面と、前記噴射部から噴射される処理液の噴射方向が垂直となるように前記噴射部を傾斜する傾斜手段を更に有することが好ましい。
【0010】
上記課題は、少なくとも一部が液に浸漬されている被処理物に表面処理を施す装置であって、該装置は、被処理物の被処理面に向けて処理液を噴射する噴射部を有し、前記噴射部は前記被処理物に対向して設けられており、且つ前記被処理面に平行な軸を中心に前記噴射部を回転させる噴射部回転手段を有する第三の表面処理装置によっても解決できる。
【0011】
上記第二および第三の表面処理装置において、前記噴射部は、平均回転速度100~3000mm/分で回転させることが好ましい。また、前記噴射部は、円相当直径20~200mmで回転させることが好ましい。
【0012】
上記第一~第三の表面処理装置について、前記噴射部は、前記処理液を平均流速1~30m/秒で噴射させることが好ましい。また、前記表面処理装置は、前記処理液を前記表面処理装置の処理槽から抜き出し、前記噴射部へ送給する循環経路と、該循環経路上に、前記処理液を前記処理槽から抜き出すためのポンプを更に有することが好ましい。前記表面処理がめっき処理の場合は、めっき浴温は20~50℃が好ましい。前記表面処理が電解めっき処理の場合は、平均電流密度は1~30A/dm2が好ましい。前記噴射部は、噴射孔径が1~5mmであることが好ましい。前記噴射部の噴射孔は、隣り合う噴射孔の平均距離が5~150mmであることが好ましい。前記噴射部の噴射孔と、前記被処理物との距離は、10~100mmが好ましい。前記噴射部の向きは、該噴射部から噴射される処理液の噴射方向の角度が、水平方向を0度としたとき、-70度~+70度が好ましい。
【0013】
上記課題を解決できた本発明に係る第一の表面処理方法は、少なくとも一部が液に浸漬されている被処理物に表面処理を施す方法であって、噴射部から被処理物の被処理面に向けて処理液を噴射するにあたり、前記噴射部を前記被処理物に対向して設け、且つ前記被処理物の被処理面に対して平行な面内で前記噴射部を回転させるか、或いは前記噴射部から噴射される処理液の噴射方向に対して垂直な面内で前記被処理物を回転させるか、少なくとも一方を行う点に要旨を有する。
【0014】
上記第一の表面処理方法において、前記被処理物または前記噴射部の少なくとも一方は、平均回転速度100~3000mm/分で回転させることが好ましい。また、前記被処理物または前記噴射部の少なくとも一方は、円相当直径20~200mmで回転させることが好ましい。
【0015】
上記課題は、少なくとも一部が液に浸漬されている被処理物に表面処理を施す方法であって、噴射部から被処理物の被処理面に向けて処理液を噴射するにあたり、前記被処理物を液面に対して傾斜させ、且つ前記噴射部を回転させる第二の表面処理方法によっても解決できる。
【0016】
上記第二の表面処理方法では、前記被処理物の被処理面と、前記噴射部から噴射される処理液の噴射方向が垂直となるように前記噴射部を傾斜することが好ましい。
【0017】
上記課題は、少なくとも一部が液に浸漬されている被処理物に表面処理を施す方法であって、噴射部から被処理物の被処理面に向けて処理液を噴射するにあたり、前記噴射部を前記被処理物に対向して設け、且つ前記被処理面に平行な軸を中心に前記噴射部を回転させる第三の表面処理方法によっても解決できる。
【0018】
上記第二および第三の表面処理方法において、前記噴射部は、平均回転速度100~3000mm/分で回転させることが好ましい。また、前記噴射部は、円相当直径20~200mmで回転させることが好ましい。
【0019】
上記第一~第三の表面処理方法について、前記噴射部から前記処理液を平均流速1~30m/秒で噴射させることが好ましい。前記被処理物を少なくとも2つ準備し、該被処理物の被処理面を外側として処理槽内に配置してもよい。前記被処理物は、表層に凹部を有してもよい。前記凹部を有する被処理物は、例えば、プリント基板、半導体、またはウエハが挙げられる。前記表面処理は、電解めっき処理または無電解めっき処理であってもよい。前記表面処理がめっき処理の場合は、めっき浴温は20~50℃が好ましい。前記表面処理が電解めっき処理の場合は、平均電流密度は1~30A/dm2が好ましい。前記噴射部から噴射される処理液の噴射方向の角度は、水平方向を0度としたとき、-70度~+70度が好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、被処理物に表面処理を施すにあたり、被処理物に対向して設けられた噴射部から処理液を被処理物へ向けて噴射し、且つ噴射部または被処理物の少なくとも一方を回転させている。その結果、被処理物の表面に噴射される処理液の方向が種々変化するため、処理ムラを低減でき、表面処理品質を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明に係る第一の表面処理装置の構成例を示す模式図である。
【
図2】
図2の(a)は、
図1に示した噴射手段21の側面図であり、
図2の(b)は、(a)に示した噴射手段21をA方向から示した図であり、
図2の(c)は、(a)に示した噴射手段21をB方向から示した図である。
【
図3】
図3は、フレーム33とモータ35との接続状態を示した斜視図である。
【
図4】
図4は、本発明に係る第一の表面処理装置の他の構成例を示す模式図である。
【
図5】
図5は、本発明に係る第一の表面処理装置の他の構成例を示す模式図である。
【
図6】
図6は、
図5に示した第一の表面処理装置をA方向から示した断面図である。
【
図7】
図7は、本発明に係る第二の表面処理装置の構成例を示す模式図である。
【
図8】
図8は、本発明に係る第二の表面処理装置の他の構成例を示す模式図である。
【
図9】
図9は、本発明に係る第三の表面処理装置の構成例を示す模式図である。
【
図10】
図10は、被処理物の被処理面に対して平行な面内で噴射部を回転させる噴射部回転手段を説明するための模式図である。
【
図11】
図11は、
図1に示した噴射部回転手段31を有する表面処理装置を用い、被処理物2に表面処理を施す手順を説明するための模式図である。
【
図12】
図12は、
図4に示した被処理物回転手段61を有する表面処理装置を用い、被処理物2に表面処理を施す手順を説明するための模式図である。
【
図13】
図13は、
図1に示した噴射部回転手段31を有する表面処理装置を用い、被処理物2に表面処理を施す他の手順を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の第一~第三の表面処理方法は、いずれも、少なくとも一部が液に浸漬されている被処理物に表面処理を施す方法であり、噴射部から被処理物の被処理面に向けて処理液を噴射している点で共通している。
【0023】
そして、本発明に係る第一の表面処理方法は、噴射部から被処理物の被処理面に向けて処理液を噴射するにあたり、前記噴射部を前記被処理物に対向して設け、且つ前記被処理物の被処理面に対して平行な面内で前記噴射部を回転させるか、或いは前記噴射部から噴射される処理液の噴射方向に対して垂直な面内で前記被処理物を回転させるか、少なくとも一方を行うところに特徴がある。前記噴射部を回転させるか、前記被処理物を回転させることによって、噴射部から噴射された処理液が被処理物に接触する位置や方向が変動するため、処理液が被処理物に種々の方向から接触する。その結果、処理液が被処理物の表面に均一に接触するため、処理ムラを低減でき、表面処理品質を向上できる。
【0024】
本発明に係る第二の表面処理方法は、噴射部から被処理物の被処理面に向けて処理液を噴射するにあたり、前記被処理物を液面に対して傾斜させ、且つ前記噴射部を回転させるところに特徴がある。前記噴射部を回転させることによって、噴射部から噴射された処理液が被処理物に接触する位置や方向が変動するため、処理液が被処理物に種々の方向から接触する。また、前記被処理物を液面に対して傾斜させることによって、被処理物表面に付着した気泡や、被処理物表面に形成された凹部や貫通孔内に付着した気泡が除去、排出されやすくなる。その結果、処理液が被処理物の表面に均一に接触するため、処理ムラを低減でき、表面処理品質を向上できる。
【0025】
上記第二の表面処理方法において、前記被処理物の被処理面と、前記噴射部から噴射される処理液の噴射方向が垂直となるように前記噴射部を傾斜することが好ましい。液面に対する被処理物の被処理面の傾斜角度と、液面に対する噴射部の傾斜角度を同じにすることにより、処理液が被処理物の表面に均一に接触するため、処理ムラを低減でき、表面処理品質を一層向上できる。
【0026】
本発明に係る第三の表面処理方法は、噴射部から被処理物の被処理面に向けて処理液を噴射するにあたり、前記噴射部を前記被処理物に対向して設け、且つ前記被処理面に平行な軸を中心に前記噴射部を回転させるところに特徴がある。噴射部を被処理物に対向して設け、この噴射部を、被処理面に平行な軸を中心に回転させることによって、噴射部から噴射された処理液が被処理物に接触する位置や方向が変動するため、処理液が被処理物に種々の方向から接触する。その結果、処理液が被処理物の表面に均一に接触するため、処理ムラを低減でき、表面処理品質を向上できる。
【0027】
以上の通り、本発明に係る第一の表面処理方法では、噴射部または被処理物の少なくとも一方を回転させており、第二、第三の表面処理方法では、噴射部を回転させることによって、表面処理品質を向上できる。以下、第一~第三の表面処理方法について、詳細に説明する。
【0028】
本発明に係る表面処理方法では、被処理物の少なくとも一部を液に浸漬しており、この被処理物に噴射部から処理液を噴射する。
【0029】
上記被処理物を浸漬する液と、上記噴射部から噴射する処理液の組成は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0030】
上記被処理物は、処理槽内の液に少なくとも一部が浸漬されていればよく、全部が浸漬されていてもよい。また、上記被処理物は、処理槽内の液に一部が浸漬している状態と、全部が浸漬している状態が、周期的に、或いはランダムに繰り返されてもよい。
【0031】
上記噴射部は、上記被処理物の被処理面に向けて設けられており、上記噴射部の先端には、処理液を噴射する噴射孔が設けられている。噴射孔については、後で詳述する。
【0032】
上記第一の表面処理方法では、噴射部または被処理物の少なくとも一方を回転させ、第二、第三の表面処理方法では、噴射部を回転させる。
【0033】
上記被処理物または上記噴射部の回転方向は特に限定されず、時計回り(正方向)でもよいし、反時計回り(反転方向)でもよい。また、時計回りと反時計回りを、周期的に、あるいはランダムに繰り返してもよい。
【0034】
上記被処理物または上記噴射部の回転条件は特に限定されないが、好ましい条件は次の通りである。
【0035】
[平均回転速度]
上記被処理物または上記噴射部は、平均回転速度100~3000mm/分で回転させることが好ましい。平均回転速度が100mm/分未満では、回転による表面処理品質向上効果が充分に得られない。平均回転速度は、より好ましくは150mm/分以上、更に好ましくは200mm/分以上である。しかし、平均回転速度が3000mm/分を超えると、処理槽内の液が攪拌され過ぎるため、被処理物上での処理液の流速が大きくなり過ぎ、表面処理の反応が促進されず、表面処理品質が却って劣化することがある。平均回転速度は、より好ましくは2500mm/分以下、更に好ましくは2000mm/分以下、特に好ましくは1500mm/分以下、最も好ましくは1000mm/分以下である。
【0036】
上記被処理物または上記噴射部の回転速度は、平均回転速度が上記範囲を満足するように適宜変更してもよい。例えば、表面処理の初期は、回転速度を相対的に大きくし、後期は、回転速度を相対的に小さくしてもよい。表面処理の初期に回転速度を大きくすることにより、処理液がビアホールやトレンチの奥まで到達し、回転速度を小さくすることにより、処理液がビアホールやトレンチの手前側と接触するため、表面処理を均一に行うことができる。また、表面処理の初期は、回転速度を大きくし、時間の経過と共に、小さくしてもよい。一方、表面処理の初期は、回転速度を相対的に小さくし、後期は、回転速度を相対的に大きくしてもよい。表面処理の初期における回転速度を小さくすることにより被処理物上での処理を緩やかに進行させることができるため、表面性状を良好にできる。上記被処理物または上記噴射部の回転速度は、表面処理品質を向上させる観点から、初期は回転速度を相対的に大きくし、後期は回転速度を相対的に小さくすることが好ましい。
【0037】
上記表面処理の初期とは、被処理物に処理液を噴射する処理時間全体に対して少なくとも1/3の時間を含む時間を意味し、上記表面処理の後期とは、処理時間全体に対して少なくとも1/3の時間を含む時間を意味する(以下同じ)。
【0038】
[円相当直径]
上記被処理物または上記噴射部を回転させるときの大きさは、円相当直径20~200mm(回転半径10~100mm)が好ましい。円相当直径が20mm未満では、回転による表面処理品質向上効果が充分に得られない。円相当直径は、より好ましくは30mm以上、更に好ましくは40mm以上である。しかし、円相当直径が200mmを超えると、回転による表面処理品質向上効果が飽和する。円相当直径は、より好ましくは150mm以下、更に好ましくは100mm以下である。
【0039】
[回転軌跡]
上記被処理物または上記噴射部を回転させるときの回転軌跡は特に限定されず、例えば、真円、楕円、三角、四角、多角、などが挙げられ、2つ以上を組み合わせてもよい。例えば、8の字を描くように回転させることもできる。
【0040】
上記第一の表面処理方法では、上記被処理物または上記噴射部は、少なくとも一方を回転させればよく、両方を回転させることもできる。上記被処理物および上記噴射部の両方を回転させることによって、処理液が被処理物の被処理面に接触しやすくなるため、表面処理が促進され、表面処理品質が向上する。上記被処理物および上記噴射部の両方を回転させる場合は、両方を同一方向に回転させてもよいし、一方を時計回り、他方を反時計回りに回転させてもよい。
【0041】
上記被処理物および上記噴射部の両方回転させるときの条件は、被処理物、噴射部のそれぞれについて、上述した範囲内で平均回転速度、円相当直径、回転軌跡などを適宜調整できる。
【0042】
上記第一の表面処理方法では、上記被処理物または上記噴射部は、該被処理物または該噴射部を回転させつつ揺動させてもよい。例えば、被処理物を回転させつつ、回転する被処理物を往復移動させて揺動させることができる。揺動させる方向は、例えば、液面に対して水平方向、液面に対して上下方向などであり、直線方向に往復移動させることができる。
【0043】
上記第一の表面処理方法では、上記被処理物または上記噴射部のうち、一方を回転させ、他方を揺動させてもよい。例えば、上記被処理物を回転させ、且つ上記噴射部を水平方向に往復移動させて揺動させてもよい。揺動させる方向は、例えば、液面に対して水平方向、液面に対して上下方向などであり、直線方向に往復移動させることができる。
【0044】
上記第二および第三の表面処理方法では、上記噴射部を回転させつつ揺動させてもよい。例えば、噴射部を回転させつつ、回転する噴射部を往復移動させて揺動させることができる。揺動させる方向は、例えば、液面に対して水平方向、液面に対して上下方向などであり、直線方向に往復移動させることができる。
【0045】
上記被処理物または上記噴射部の揺動条件は特に限定されないが、好ましい条件は次の通りである。
【0046】
[被処理物または噴射部の移動距離]
被処理物または噴射部を往復移動させて揺動させるときの片道の移動距離は、例えば、5~500mmが好ましい。移動距離が短すぎても、長すぎても、処理液が被処理物に接触する効率が低下するため、揺動による表面処理品質向上効果が得られにくい。移動距離は、より好ましくは10mm以上、更に好ましくは30mm以上であり、より好ましくは450mm以下、更に好ましくは400mm以下である。
【0047】
[1往復に要する時間]
揺動させるときの1往復に要する時間は、例えば、1~600秒が好ましい。時間が短すぎると、被処理物または噴射部が振動することになり、被処理物上の反応が進行しにくくなるため、揺動による表面処理品質向上効果が得られにくい。また、時間が長すぎると、被処理物または噴射部が殆ど揺動しないため、処理液が被処理物に接触する効率が低下し、表面処理品質向上効果が得られにくい。1往復に要する時間は、より好ましくは30秒以上、更に好ましくは60秒以上であり、より好ましくは550秒以下、更に好ましくは500秒以下である。
【0048】
上記第一~第三の表面処理方法では、噴射部から被処理物の被処理面に向けて処理液を噴射しており、噴射部から噴射される処理液の平均流速の好ましい範囲は次の通りである。
【0049】
[処理液の平均流速]
上記噴射部から噴射させる上記処理液の平均流速は1~30m/秒が好ましい。平均流速が1m/秒未満では、処理液の噴射による表面処理品質向上効果が充分に得られない。平均流速は、より好ましくは3m/秒以上、更に好ましくは5m/秒以上である。しかし、平均流速が30m/秒を超えると、被処理物の表面が損傷し、表面処理品質が却って劣化することがある。平均流速は、より好ましくは25m/秒以下、更に好ましくは20m/秒以下である。
【0050】
上記処理液の流速は、平均流速が上記範囲を満足するように適宜変更してもよい。例えば、表面処理の初期は、処理液の流速を相対的に大きくし、後期は、処理液の流速を相対的に小さくしてもよい。表面処理の初期に処理液の流速を大きくすることにより、処理液がビアホールやトレンチの奥まで到達し、処理液の流速を小さくすることにより、処理液がビアホールやトレンチの手前側と接触するため、表面処理を均一に行うことができる。また、処理液の流速は、初期は大きくし、時間の経過と共に小さくしてもよい。一方、表面処理の初期は処理液の流速を相対的に小さくし、後期は処理液の流速を相対的に大きくしてもよい。表面処理の初期における処理液の流速を小さくすることにより、被処理物上での処理を緩やかに進行させることができるため、表面性状を良好にできる。上記処理液の流速は、表面処理品質を向上させる観点から、初期は相対的に大きくし、後期は相対的に小さくすることが好ましい。
【0051】
上記処理液は、上記噴射部から連続的に噴射させてもよいし、断続的に噴射させてもよい。断続的に噴射させることにより、処理液が被処理物の表面に接触する機会が増えるため、表面処理が促進される。断続的に噴射させる場合は、周期的に噴射させてもよいし、ランダムに噴射させてもよい。
【0052】
本発明の表面処理方法で複数の被処理物に表面処理を施す際は、被処理物の被処理面が外側になるように、背中合わせにして処理槽内に配置することが好ましい。即ち、上記被処理物を少なくとも2つ準備し、該被処理物の被処理面を外側として処理槽内に配置して表面処理を行えばよい。
【0053】
上記被処理面の表面性状は特に限定されず、平滑でも良いし、表層に凹部を有していてもよい。本発明では、噴射部または被処理物を回転させているため、被処理物の表層に凹部があっても、凹部の奥まで処理液を浸透させることができ、ムラなく表面処理できる。
【0054】
上記凹部は、被処理部の表層に形成された開口部を意味し、ビアホールやトレンチが挙げられる。ビアホールは、被処理物の厚み方向に向かって貫通孔でもよいし、非貫通孔でもよい。上記凹部を有する被処理物は、例えば、プリント基板、半導体、ウエハが挙げられる。上記ウエハとしては、例えば、ウエハレベルチップサイズパッケージやファンアウトウエハレベルパッケージなどが挙げられる。
【0055】
上記表面処理は、被処理物にめっきなどを施す被覆処理のほか、機械加工時等に付着した樹脂残渣等を被処理物から除去するデスミア処理、被処理物に所定の処理を施す前の前処理、所定の処理を施した後の後処理、各処理の前後に必要に応じて行う洗浄処理なども含む意味である。上記被覆処理としては、めっき処理が挙げられ、具体的には、電解めっき処理でもよいし、無電解めっき処理でもよい。
【0056】
めっき処理の好ましい条件は次の通りである。
【0057】
[めっき浴温]
上記めっき処理のめっき浴温は、例えば、20~50℃が好ましい。めっき浴温が低すぎると、めっき処理が進行しにくい。一方、めっき浴温が高すぎると、めっきムラが発生しやすくなり、表面処理品質が却って劣化する。めっき浴温は、より好ましくは23℃以上、更に好ましくは25℃以上であり、より好ましくは45℃以下、更に好ましくは40℃以下である。
【0058】
[電解めっき処理の平均電流密度]
上記電解めっき処理の平均電流密度は、例えば、1~30A/dm2が好ましい。平均電流密度が小さすぎると、電解めっき処理が進行しにくい。一方、平均電流密度が大きすぎると、電解めっきムラが発生しやすくなり、表面処理品質が却って劣化する。平均電流密度は、より好ましくは3A/dm2以上、更に好ましくは5A/dm2以上であり、より好ましくは25A/dm2以下、更に好ましくは20A/dm2以下である。
【0059】
[電解めっき処理の時間]
上記電解めっき処理の時間は、要求されるめっき膜厚に応じて調整することが好ましい。
【0060】
次に、本発明に係る表面処理装置について説明する。本発明の第一の表面処理装置は、少なくとも一部が液に浸漬されている被処理物に表面処理を施す装置であり、該装置は、被処理物の被処理面に向けて処理液を噴射する噴射部を有し、前記噴射部は前記被処理物に対向して設けられている。そして、前記被処理物の被処理面に対して平行な面内で前記噴射部を回転させる噴射部回転手段、および前記噴射部から噴射される処理液の噴射方向に対して垂直な面内で前記被処理物を回転させる被処理物回転手段のうち少なくとも一方を有する点に特徴がある。
【0061】
本発明の第一の表面処理装置について、図面を用いて具体的な態様について説明する。以下では、プリント基板に電解めっき処理するための第一の表面処理装置について説明するが、本発明の第一の表面処理装置はこれに限定されるものではない。
【0062】
図1は、本発明に係る第一の表面処理装置の構成例を示す模式図であり、被処理物の被処理面に対して平行な面内で噴射部を回転させる噴射部回転手段を有している。
図1において、処理槽1には液3が貯められており、被処理物2の全部が液3に浸漬されている。3aは処理液の液面を示している。搬送手段4は、被処理物2を処理槽1に出し入れする手段である。
図1では、被処理物2が搬送手段4に治具5を用いて保持されている。治具ガイド6は、治具5を保持している。陽極7は、処理槽1の壁面近傍に設けられている。
【0063】
噴射手段21は、処理液を噴射する手段であり、被処理物2の被処理面2aに向けて処理液を吹き付ける手段である。噴射手段21には、噴射部22が設けられており、噴射部22は被処理物2の被処理面2aに対向している。噴射部22は、以下、スパージャと呼ぶことがある。噴射部22は、スパージャパイプ23と連通している。上記噴射手段21について、
図2を用いてより詳細に説明する。
【0064】
図2の(a)は、噴射手段21の側面図であり、
図1に示した噴射手段21と同じ図である。
図2の(b)は、(a)に示した噴射手段21をA方向から示した図であり、
図2の(c)は、(a)に示した噴射手段21をB方向から示した図である。噴射部22には、噴射孔24が複数設けられており、この噴射孔24は被処理物2の被処理面2aに対向している。
【0065】
[噴射孔と、被処理物の被処理面との距離]
上記噴射孔24と、上記被処理物2の被処理面2aとの距離は、例えば、10~100mmが好ましい。上記距離が小さすぎると、被処理物の表面が処理液の勢いによって損傷することがあり、上記距離が大きすぎると、噴射部から噴射させる処理液の流速を高める必要があり、設備負荷が大きくなる。上記距離は、より好ましくは15mm以上、更に好ましくは20mm以上であり、より好ましくは90mm以下、更に好ましくは80mm以下である。
【0066】
図2には、噴射部22を10本設けた構成例を示したが、噴射部22の数は特に限定されず、表面処理方法の種類、表面処理の条件、第一の表面処理装置の大きさ等を考慮して決定できる。
【0067】
図2の(b)に示した噴射孔24の数も特に限定されず、表面処理方法の種類、表面処理の条件、第一の表面処理装置(特に、噴射部22)の大きさ等を考慮して設ければ良い。
【0068】
図1に戻って説明を続ける。循環経路8は、液3を循環させるための経路であり、処理槽1から液3を抜き出し、噴射手段21に設けたスパージャパイプ23を通して噴射部22へ送給する経路である。循環経路8には、処理槽1から液3を抜き出すためのポンプ9、液3に含まれる固形分を除去するためのフィルター10が設けられている。液3を循環経路8から噴射手段21へ供給することにより、噴射部22から被処理物2の被処理面2aへ液3を処理液として噴射できる。なお、
図1では、循環経路8を設けた構成を示したが、循環経路8は設けなくてもよく、循環経路8を設けない場合は、図示しない経路から噴射手段21へ処理液を供給すると共に、処理槽1の余分な液3を図示しない経路から排出することが好ましい。
【0069】
噴射手段21は、噴射部回転手段31に取り付けられており、噴射部22は、被処理物2の被処理面2aに対して平行な面内で回転するように構成されている。即ち、噴射手段21は、パイプサポート32に保持されており、パイプサポート32とフレーム33は、ブラケット34を介して接続されている。
【0070】
フレーム33とモータ35との接続状態を示した斜視図を
図3に示す。説明の便宜上、
図3では、
図1の一部は図示していない。また、
図3に示した括弧無しの符号と、括弧付きの符号は、同じ構成部材を示している。
【0071】
図3に示すように、フレーム33は、軸36a~36e、タイミングプーリー37a~37e、タイミングベルト38a~38cを介してモータ35と接続されている。
【0072】
図1、
図3に示すように、モータ35の回転動力が、軸、タイミングプーリー、タイミングベルトを介してフレーム33に伝達されることにより、噴射部22は、被処理物2の被処理面2aに対して平行な面内で回転する。また、
図1においては、軸受39、モータ35等を保持するフレーム40、フレーム40を移動させるための移動台座41、移動台座41を移動させるためのレール42をそれぞれ設けている。
【0073】
上記移動台座41を紙面に対して左右方向に揺動させることにより、噴射部22と、被処理物2の被処理面2aとの距離を変動させることができる。噴射部22と、被処理物2の被処理面2aとの距離を変動させることにより、被処理物の表面に均一に処理液が接触しやすくなり、表面処理品質が向上する。
【0074】
[変動幅]
上記噴射部22と、上記被処理面2aとの距離の変動幅は特に限定されないが、例えば、10~100mmが好ましい。上記変動幅が小さすぎるか大きすぎると、被処理物を移動させることによる表面処理品質向上効果が得られにくい。上記変動幅は、より好ましくは20mm以上、更に好ましくは30mm以上であり、より好ましくは90mm以下、更に好ましくは80mm以下である。
【0075】
上記噴射部22と、上記被処理面2aとの距離を変動させるときの条件は特に限定されず、表面処理の初期は、上記距離を短く、表面処理の末期に向けて上記距離を長くしてもよい。
【0076】
上記移動台座41を紙面に対して左右方向に移動させるときの周期も特に限定されないが、1往復に要する時間は、例えば、1~300秒とすることが好ましい。上記1往復に要する時間が短すぎるか、長すぎると、上記噴射部22と、上記被処理面2aとの距離を変動させることによる表面処理品質向上効果が得られにくい。上記1往復に要する時間は、より好ましくは30秒以上、更に好ましくは60秒以上であり、より好ましくは250秒以下、更に好ましくは200秒以下である。
【0077】
なお、
図1には、モータ35等を移動させるために、移動台座41とレール42を設けた例を示したが、モータ35等を移動させない場合は、移動台座41とレール42は設けなくてよい。
【0078】
上記
図1では、噴射部回転手段31を1つ設けた構成例を示したが、噴射部回転手段31の数は1つに限定されず、2つ以上設けてもよい。例えば、噴射部回転手段31を2つ設ける場合は、被処理物2を2つ準備し、該被処理物2の被処理面2aを外側として処理槽1内に配置し、噴射部22が各被処理面に対して平行な面内で回転するように配置できる。
【0079】
次に、本発明に係る第一の表面処理装置の他の構成例について
図4を用いて説明する。
【0080】
図4は、被処理物2を、噴射部22から噴射される処理液の噴射方向に対して垂直な面内で回転する被処理物回転手段61を有している。上記図面と同じ箇所には同一の符号を付して重複説明を避ける。なお、
図4に示した第一の表面処理装置も、被処理物2の表面に電解めっきを施す装置を示している。
【0081】
図4の処理槽1には液3が貯められており、液3に被処理物2が浸漬している。上記被処理物2は、図示しない搬送手段によって処理槽1に搬送されたものであり、治具サポート53に設けられた治具ガイド54に沿って治具サポート53に装入され、処理槽1内に浸漬されている。
【0082】
図4では、二つの被処理物が、被処理面2aと2bを外側として処理槽1内に配置されており、被処理面2aと2bにそれぞれ対向して、噴射部22aと22bが設けられている。
【0083】
噴射部22aと22bは、スパージャパイプ23aと23bにそれぞれ連通しており、スパージャパイプ23aと23bは、固定具52aと52b、固定具55a、55bによって処理槽1に固定されている。
【0084】
図4でも上記
図1と同様、処理槽1の液3を循環する循環経路8を設けている。循環経路8は、途中で、経路8aと経路8bに分岐し、経路8aはスパージャパイプ23a、経路8bはスパージャパイプ23bにそれぞれ接続している。
【0085】
上記治具サポート53は、被処理物回転手段61に取り付けられており、被処理物2は、噴射部22a、22bから噴射される処理液の噴射方向に対して垂直な面内で回転するように構成されている。即ち、被処理物2は、治具サポート53に保持されており、治具サポート53とフレーム33は、ブラケット34で接続されている。
【0086】
上記治具サポート53と上記被処理物回転手段61とを接続するにあたっては、例えば、
図3に示したパイプサポート32の代わりに治具サポート53を取り付け、スパージャパイプ23の代わりに被処理物2を取り付ければよい。なお、治具サポート53には、上述したように治具ガイド54を設け、治具5に取り付けた被処理物2を治具ガイド54に沿って治具サポート53に装入できる。
【0087】
上記被処理物2は、モータ35の回転動力が、軸、タイミングプーリー、タイミングベルトを介してフレーム33に伝達されることにより、噴射部22a、22bから噴射される処理液の噴射方向に対して垂直な面内で回転する。
【0088】
図4では、被処理物回転手段61を2つ設けた構成例を示したが、被処理物回転手段61の数は2つに限定されず、1つであってもよいし、3つ以上設けてもよい。
【0089】
以上、
図1には、被処理物の被処理面に対して平行な面内で噴射部を回転する噴射部回転手段を備えた第一の表面処理装置を示し、
図4には、噴射部から噴射される処理液の噴射方向に対して垂直な面内で被処理物を回転する被処理物回転手段を備えた第一の表面処理装置を示した。
【0090】
次に、本発明に係る第一の表面処理装置の他の構成例を、
図5および
図6を用いて説明する。
図5に示した第一の表面処理装置は、上記
図1に示した第一の表面処理装置と同じく、被処理物の被処理面に対して平行な面内で噴射部を回転する噴射部回転手段を備えた第一の表面処理装置の構成例を示している。
図6は、
図5に示した第一の表面処理装置をA方向から示した断面図である。
【0091】
上記
図1に示した第一の表面処理装置と上記
図5に示した第一の表面処理装置は、噴射部を回転させる手段を有している点で一致しており、
図1では、噴射部回転手段をフレーム33に取り付け、モータ35の回転動力をフレーム33に伝達させることにより、噴射部回転手段を回転させているのに対し、
図5、6では、噴射部回転手段を垂直フレーム106に取り付け、該垂直フレーム106を、軸36i、ピン107、および軸受39a~軸受39d用いてベースフレーム101に固定している点で相違している。
【0092】
以下、
図5および
図6について詳述する。なお、
図1~
図4と同じ箇所には同一の符号を付して重複説明を避ける。また、
図5および
図6では、
図1~
図4に示した部材の一部を省略して示している。
【0093】
まず、
図6を参酌する。スパージャパイプ23と連通している噴射部(スパージャ)は、被処理物2の被処理面に対向しており、スパージャパイプ23は、垂直フレーム106に取り付けられている。垂直フレーム106は、処理槽1を挟むように1組備えられており、水平フレーム102で接続されている。
【0094】
垂直フレーム106には、軸受39cおよび軸受39dが固定されている。軸受39cおよび軸受39dを通るように、ピン107が設けられており、ピン107の両端は、それぞれ、プレート105iおよびプレート105jの中心軸から外れた位置に固定されている。一方、プレート105iおよびプレート105jの中心には、軸36iおよび軸36jがそれぞれ接続されている。
【0095】
ベースフレーム101には、軸受39aおよび軸受39bが固定されており、上記プレート105jの中心を通る軸36jは軸受39bと接続されている。一方、上記プレート105iの中心を通る軸36iは、軸受39aと接続されており、軸36iの末端は、カップリング104に接続されている。カップリング104には、ギヤボックス103と軸kで接続されている。
【0096】
次に、
図5を参酌する。ベースフレーム101は、処理槽1の一部を囲むU字状であり、軸受39がベースフレーム101に固定されている。
図5では、軸受39を4つ示したが、軸受39の数はこれに限定されるものではない。ギヤボックス103cには、軸36kとは別に、軸36hが接続されており、軸36hの末端は、ギヤボックス103cに接続されている。また、軸36hは、軸受39で固定されている。
【0097】
本発明の第一の表面処理装置は、これらの構成に限定されるものではなく、例えば、被処理物の被処理面に対して平行な面内で噴射部を回転させ、且つ噴射部から噴射される処理液の噴射方向に対して垂直な面内で被処理物を回転、即ち、噴射部と被処理物の両方を回転してもよい。
【0098】
次に、本発明の第二の表面処理装置について説明する。本発明の第二の表面処理装置は、少なくとも一部が液に浸漬されている被処理物に表面処理を施す装置であり、該装置は、被処理物の被処理面に向けて処理液を噴射する噴射部を有している。そして、前記被処理物を液面に対して傾斜して固定する固定手段と、前記噴射部を回転させる噴射部回転手段とを有する点に特徴がある。
【0099】
本発明の第二の表面処理装置について、
図7を用いて詳細に説明する。以下では、プリント基板に電解めっき処理するための第二の表面処理装置について説明するが、本発明の第二の表面処理装置はこれに限定されるものではない。なお、上記図面と同じ箇所には同一の符号を付して重複説明を避ける。
【0100】
図7に示した噴射部は、液面に平行な軸を中心に回転する点で、上記
図6と同じである。一方、
図7では、図示しない固定手段によって、被処理物2を液面に対して傾斜して固定している。被処理物2を液面に対して傾斜させることによって、被処理物表面に付着した気泡や、被処理物表面に形成された凹部や貫通孔内に付着した気泡が排出、除去される。その結果、処理液が被処理物の表面に均一に接触するため、処理ムラを低減でき、表面処理品質を向上できる。
【0101】
上記被処理物2の被処理面が液面と成す角度θは、0度超、90度未満が好ましく、より好ましくは20度以上、更に好ましくは40度以上であり、より好ましくは80度以下、更に好ましくは60度以下である。
【0102】
なお、被処理物2に貫通孔が形成される場合は、上記被処理物2の被処理面が液面と成す角度θは、例えば、90度超、180度未満であってもよい。角度θは、より好ましくは110度以上、更に好ましくは130度以上であり、より好ましくは170度以下、更に好ましくは150度以下である。
【0103】
次に、本発明の第二の表面処理装置の他の構成例について、
図8を用いて詳細に説明する。以下では、プリント基板に電解めっき処理するための第二の表面処理装置について説明するが、本発明の第二の表面処理装置はこれに限定されるものではない。なお、上記図面と同じ箇所には同一の符号を付して重複説明を避ける。
【0104】
図8に示した噴射部は、液面に平行な軸を中心に回転する点で、上記
図6および
図7と同じである。また、
図8では、図示しない固定手段によって、被処理物2を液面に対して傾斜して固定している点で、
図7と同じである。一方、
図8では、前記被処理物2の被処理面と、前記噴射部22から噴射される処理液の噴射方向が垂直となるように、スパージャパイプ23の途中に前記噴射部22を傾斜する傾斜手段25を更に有している。傾斜手段25の角度を調整することにより、液面に対する噴射部22の傾斜角度θ1を調整できる。
【0105】
液面に対する被処理物2の被処理面の傾斜角度θと、液面に対する噴射部22の傾斜角度θ1を同じにすることにより、処理液が被処理物2の表面に均一に接触するため、処理ムラを低減でき、表面処理品質を一層向上できる。
【0106】
上記角度θおよびθ1は、0度超、90度未満が好ましく、より好ましくは20度以上、更に好ましくは40度以上であり、より好ましくは80度以下、更に好ましくは60度以下である。なお、被処理物2に貫通孔が形成される場合は、上記角度θおよびθ1は、例えば、90度超、180度未満であってもよい。角度θは、より好ましくは110度以上、更に好ましくは130度以上であり、より好ましくは170度以下、更に好ましくは150度以下である。
【0107】
図8において、噴射孔の先端から上記被処理物2の被処理面までの最短距離は、例えば、10~100mmが好ましい。上記最短距離が小さすぎると、被処理物の表面が処理液の勢いによって損傷することがあり、上記最短距離が大きすぎると、噴射部から噴射させる処理液の流速を高める必要があり、設備負荷が大きくなる。上記最短距離は、より好ましくは15mm以上、更に好ましくは20mm以上であり、より好ましくは90mm以下、更に好ましくは80mm以下である。
【0108】
次に、本発明の第三の表面処理装置について説明する。本発明の第三の表面処理装置は、少なくとも一部が液に浸漬されている被処理物に表面処理を施す装置であり、該装置は、被処理物の被処理面に向けて処理液を噴射する噴射部を有している。そして、前記噴射部は前記被処理物に対向して設けられており、且つ前記被処理面に平行な軸を中心に前記噴射部を回転させる噴射部回転手段を有する点に特徴がある。
【0109】
本発明の第三の表面処理装置について、
図9を用いて詳細に説明する。以下では、プリント基板に電解めっき処理するための第三の表面処理装置について説明するが、本発明の第三の表面処理装置はこれに限定されるものではない。なお、上記図面と同じ箇所には同一の符号を付して重複説明を避ける。
【0110】
図9に示した噴射部は、液面に平行な軸を中心に回転する点で、上記
図6、
図7、および
図8と同じである。一方、
図9では、図示しない固定手段によって、被処理物2の被処理面と、液面が平行となるように固定されており、被処理物2の被処理面と噴射部は対向している。即ち、第三の表面処理装置では、水平フレーム43にスパージャパイプ23が設けられており、スパージャパイプ23の噴射部22の下方に被処理物2を配置し、噴射部と被処理物の被処理面は液面に対して平行としている。噴射部22から噴射する処理液は、鉛直方向下向きに噴射される。噴射部22を被処理物2に対向して設け、この噴射部22を、被処理物2の被処理面に平行な軸を中心に回転させることによって、噴射部22から噴射された処理液が被処理物2に接触する位置や方向が変動するため、処理液が被処理物2に種々の方向から接触する。その結果、処理液が被処理物2の表面に均一に接触するため、処理ムラを低減でき、表面処理品質を向上できる。
【0111】
噴射部22の噴射孔の先端から上記被処理物2の被処理面までの最短距離は、例えば、10~100mmが好ましい。上記最短距離が小さすぎると、被処理物2の表面が処理液の勢いによって損傷することがあり、上記最短距離が大きすぎると、噴射部22から噴射させる処理液の流速を高める必要があり、設備負荷が大きくなる。上記最短距離は、より好ましくは15mm以上、更に好ましくは20mm以上であり、より好ましくは90mm以下、更に好ましくは80mm以下である。
【0112】
なお、上記
図9では、被処理物2を固定した構成例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、噴射部22から噴射される処理液の噴射方向に対して垂直な面内で被処理物2を回転させてもよい。
【0113】
上記
図9に示した第三の表面処理装置において、被処理物の被処理面に対して平行な面内で噴射部を回転させる噴射部回転手段を設けてもよい。該噴射部回転手段について
図10を用いて説明する。なお、上記図面と同じ箇所には同一の符号を付して重複説明を避ける。
【0114】
図10では、水平フレーム43に、垂直フレーム44が接続されており、垂直フレーム44にスパージャパイプ23が接続されている。スパージャパイプ23には、スパージャパイプ23に処理液を供給するための給水口45が設けられている。水平フレーム43には、垂直フレームの他に、タイミングプーリー37f~37iが備えられており、タイミングプーリー37fと37gはタイミングベルト38d、タイミングプーリー37gとタイミングプーリー37hはタイミングベルト38e、タイミングプーリー37fとタイミングプーリー37iはタイミングベルト38fでそれぞれ接続されている。タイミングプーリー37fは、モータ35ともベルトで接続されている。
【0115】
図10に示すように、モータ35の回転動力が、タイミングプーリーおよびタイミングベルトを介して水平フレーム43に伝達され、水平フレーム43は、液面に対して平行な面内で回転する。水平フレーム43が、液面に対して平行な面内で回転することにより、該水平フレーム43に接続された垂直フレーム44も回転し、スパージャパイプ23も回転する。
【0116】
次に、上記第一~第三の表面処理装置において設けた噴射孔について説明する。
【0117】
[噴射孔の孔径]
上記噴射孔24の孔径は特に限定されないが、例えば、1~5mmが好ましい。孔径が小さ過ぎると、被処理物に接触する処理液の勢いが強くなり過ぎるため、被処理物の表面が損傷することがあり、孔径が大き過ぎると、噴射部から処理液を噴射するための設備負荷が大きくなる。孔径は、より好ましくは1.3mm以上、更に好ましくは1.5mm以上であり、より好ましくは4mm以下、更に好ましくは3mm以下である。
【0118】
[隣り合う噴射孔の平均距離]
上記噴射孔24は、隣り合う噴射孔の平均距離が5~150mmであることが好ましい。上記平均距離が短すぎると、噴射部から処理液が噴射しにくくなり、上記平均距離が長すぎると、噴射部から噴射される処理液が被処理物に均一に接触しないため、表面処理品質向上効果が得られにくい。上記平均距離は、より好ましくは10mm以上、更に好ましくは30mm以上であり、より好ましくは130mm以下、更に好ましくは100mm以下である。
【0119】
上記噴射孔24は、
図2の(b)に示したように、矩形格子状に配列してもよいし、斜方格子状、六角格子状(千鳥状と呼ばれることがある)、正方格子状、平行体格子状に配列してもよい。
【0120】
[噴射方向の角度]
上記噴射部22の上記噴射孔24から噴射される処理液の噴射方向は特に限定されず、水平方向を0度としたとき、噴射方向の角度は、例えば、-70度~+70度の範囲が好ましい。噴射方向の角度がプラス方向またはマイナス方向に大きすぎると、噴射部から噴射された処理液が被処理物の表面に接触しにくくなるため、処理液を噴射することによる表面処理品質向上効果が得られにくい。噴射方向の角度は、より好ましくは-50度以上、更に好ましくは-30度以上であり、より好ましくは50度以下、更に好ましくは30度以下である。
【0121】
上記噴射部22の上記噴射孔24の配列状態も特に限定されず、全ての噴射孔24の向きが水平方向、下向き、または上向きとなるように角度を調整してもよいし、噴射部22ごとに噴射孔24の向きが水平方向、下向き、または上向きとなるように角度を調整してもよい。また、噴射孔24ごとに向きを調整してもよい。
【0122】
[面積の割合]
上記被処理物2の被処理面2aの面積に対して、上記噴射手段21のうち噴射孔24が設けられている領域の面積の割合は、例えば、100~200%が好ましい。上記面積の割合が小さすぎると、噴射部から噴出される処理液が被処理物の表面に均一に接触しにくくなるため、表面処理品質向上効果が得られにくい。一方、上記面積の割合を大きくしても処理液を噴射させることによる効果は飽和し、無駄となる。上記面積の割合は、より好ましくは103%以上、更に好ましくは105%以上であり、より好ましくは180%以下、更に好ましくは160%以下である。
【0123】
次に、本発明に係る表面処理装置を用いて被処理物に表面処理を施す手順について説明する。
図11は、
図1に示した噴射部回転手段31を有する第一の表面処理装置を用い、被処理物2に表面処理を施す手順を説明するための模式図である。上記図面と同一の箇所には同じ符号を付して重複説明を避ける。
【0124】
図11の(a)は、表面処理設備の鳥瞰図であり、
図11の(a)には、噴射部回転手段31を有する第一の表面処理装置を4つ(I~IV)配置している。また、
図11の(a)のIIに示した第一の表面処理装置を、A方向から示した断面図を
図11の(b)に示す。
図11では、処理槽1に隣接して干満槽1aを設けている。なお、
図11では、干満槽1aを設けた構成例を示したが、干満槽1aは設けなくてもよい。
【0125】
図11の4aは被処理物2を搬送する搬送装置であり、レール71上を移動可能である。第一の表面処理装置I~IVは、レール71に隣接して配置されており、
図11の(a)では、搬送装置4aと第一の表面処理装置IIが接続されている。被処理物2は、搬送装置4aから第一の表面処理装置IIへ装入、或いは第一の表面処理装置IIから搬送装置4aへ取り出すことができる。
【0126】
図11の(b)は、搬送装置4aと第一の表面処理装置IIを接続した状態を示している。被処理物2は、治具5で搬送装置4aに保持されている。
図11の(b)には、処理槽1に貯めた液3に被処理物2を浸漬した状態、および干満槽1aに装入した被処理物2を液3に一部浸漬した状態を点線で示している。
【0127】
搬送装置4aから被処理物2を処理槽1へ装入するにあたっては、まず、干満槽1aに設けられたシャッター81aを降ろし、搬送装置4aに取り付けた被処理物2を治具5ごと搬送手段4へ水平にスライドさせて干満槽1aへ装入する。次に、シャッター81aを上げ、干満槽1a内の被処理物2が浸漬するまで液3を貯める。次に、シャッター81bを降ろし、被処理物2を取り付けた治具5を処理槽1内へスライドさせる。処理槽1内には、液3を予め貯めておけばよい。処理槽1内へ被処理物2を搬送したら、シャッター81bを上げ、
図11の(b)には図示しない噴射部回転手段31によって被処理物2の表面に処理を施せばよい。被処理物2の表面処理後は、逆の手順で被処理物2を処理槽1から取り出せばよい。
【0128】
図12は、
図4に示した被処理物回転手段61を有する第一の表面処理装置を用い、被処理物2に表面処理を施す手順を説明するための模式図である。上記図面と同一の箇所には同じ符号を付して重複説明を避ける。
【0129】
図12の(a)は、表面処理設備の鳥瞰図であり、
図12の(a)には、被処理物回転手段61を有する第一の表面処理装置を4つ(I~IV)配置している。また、
図12の(a)のIIに示した第一の表面処理装置を、A方向から示した断面図を
図12の(b)に示す。
【0130】
図12の(b)は、搬送装置4aと第一の表面処理装置IIを接続した状態を示している。被処理物2は、治具5で搬送装置4aに保持されている。
図12の(b)には、処理槽1に貯めた液3に被処理物2を浸漬した状態を点線で示している。
【0131】
搬送装置4aから被処理物2を処理槽1へ装入するにあたっては、まず、搬送装置4aに取り付けた被処理物2を治具5ごと処理槽1の上方まで水平にスライドさせる。次に、治具5で保持する被処理物2を処理槽1内に垂下させ、処理槽1内に設けた治具サポート53に装入する。治具サポート53の壁面には、
図4に示すように、治具ガイド54を設ければよい。処理槽1内には、液3を予め貯めてもよい。
【0132】
被処理物2を処理槽1内へ搬送したら、
図12の(b)には図示しない被処理物回転手段61によって被処理物2を回転させつつ、被処理物2の表面に処理を施せばよい。被処理物2の表面処理後は、逆の手順で被処理物2を処理槽1から取り出せばよい。
【0133】
なお、
図12には、処理槽を一つ設け、被処理物2を処理槽1の上方から垂下させて装入する構成例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、上記
図11に示したように、処理槽1の壁面にシャッターを設け、被処理物2を水平方向から処理槽1内へ装入したり、処理槽1とは別に干満槽1aを設けてもよい。
【0134】
図13は、上記
図11と同様、
図1に示した噴射部回転手段31を有する第一の表面処理装置を用い、被処理物2に表面処理を施す他の手順を説明するための模式図であり、
図13では、噴射部回転手段31を2つ設けている。また、
図13では、上記
図11と異なり、干満槽1aは設けていない。上記図面と同一の箇所には同じ符号を付して重複説明を避ける。
【0135】
図13では、被処理物2の被処理面が外向きになるように配置しており、それぞれの被処理面に対向して噴射部を設けている。噴射部は、被処理物2の被処理面に対して平行な面内で回転する。
【0136】
図13の(b)に示すように、搬送装置4aから被処理物2を処理槽1へ装入するにあたっては、まず、搬送装置4aに取り付けた被処理物2を治具5ごと処理槽1の上方まで水平にスライドさせる。次に、治具5で保持する被処理物2を処理槽1内に垂下させ、処理槽1内に設けた治具ガイド6で固定できる。処理槽1内には、液3を予め貯めてもよい。
【0137】
被処理物2を処理槽1内へ搬送したら、
図13の(b)に図示しない噴射部回転手段31によって噴射部を回転させつつ、被処理物2の表面に処理を施せばよい。被処理物2の表面処理後は、逆の手順で被処理物2を処理槽1から取り出せばよい。
【0138】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例によって制限を受けるものではなく、前記および後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0139】
図1に示した第一の表面処理装置を用い、被処理物の被処理面に表面処理を施した。被処理物としてはパターンおよびビアホール付プリント基板を用い、表面処理として電解めっきを行った。被処理物の表層には、凹部としてビアホールが形成されている。ビアホールの開口部の円相当直径は40μmである。電解めっき時のめっき浴温は30℃、平均電流密度は10A/dm
2とした。表面処理時には、噴射部を、被処理物の被処理面に対して平行な面内で回転させつつ、噴射部から被処理物の被処理面に処理液を噴射させた。
【0140】
上記噴射部は10本、各噴射部に設けた噴射孔の孔径は2mm、隣り合う噴射孔の平均距離は50mm(即ち、噴射孔が上下左右ともに50mmずつ離れている。)、噴射孔の平面配列は矩形格子状とした。上記噴射孔から噴射される処理液の噴射方向は水平方向(0度)であった。上記被処理面の面積に対して、上記噴射孔が設けられている領域の面積の割合は、110%であった。上記噴射孔と、上記被処理面との距離は35mmとした。
【0141】
上記噴射部を回転させるときの円相当直径は75mm(回転半径は37.5mm)、回転方向は正方向(時計回り)、平均回転速度は600mm/分とした。上記噴射部から噴射させる上記処理液の平均流速は、10m/秒とした。
【0142】
表面処理後、被処理物の表層を断面観察で測定し、凹部にめっきが施されているかどうか観察し、表面処理品質を評価した。その結果、凹部の奥までめっきが施されており、表面処理品質は良好であった。
【符号の説明】
【0143】
1 処理槽
1a 干満槽
2 被処理物
2a、2b 被処理面
3 液
3a 液面
4 搬送手段
4a 搬送装置
5 治具
6 治具ガイド
7 陽極
8 循環経路
8a、8b 経路
9 ポンプ
10 フィルター
21 噴射手段
22、22a、22b 噴射部
23、23a、23b スパージャパイプ
24 噴射孔
25 傾斜手段
31 噴射部回転手段
32 パイプサポート
33 フレーム
34 ブラケット
35 モータ
36a~36e 軸
37a~37i タイミングプーリー
38a~38f タイミングベルト
39 軸受
40 フレーム
41 移動台座
42 レール
43 水平フレーム
44 垂直フレーム
45 給水口
52a、52b 固定具
53 治具サポート
54 治具ガイド
55a、55b 固定具
61 被処理物回転手段
71 レール
81a、81b シャッター