(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-17
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】廃液回収容器
(51)【国際特許分類】
A61B 50/36 20160101AFI20220106BHJP
【FI】
A61B50/36
(21)【出願番号】P 2017203279
(22)【出願日】2017-10-20
【審査請求日】2020-07-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000110044
【氏名又は名称】株式会社リブドゥコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100110847
【氏名又は名称】松阪 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100136526
【氏名又は名称】田中 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100136755
【氏名又は名称】井田 正道
(72)【発明者】
【氏名】山口 愛弓
【審査官】和田 将彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-532615(JP,A)
【文献】米国特許第05385105(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0029006(US,A1)
【文献】米国特許第06053314(US,A)
【文献】米国特許第05707173(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0032764(US,A1)
【文献】特表2012-505042(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 50/36 - 50/37
B09B 1/00
B09B 5/00
A61M 1/00
A61M 27/00
B65D 81/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療廃液を回収する廃液回収容器であって、
底部と側壁部と天蓋部とを有する容器本体と、
前記容器本体の内部空間に収容されて医療廃液を吸収する吸収体と、
を備え、
前記吸収体は、粒状または繊維状の高吸収性材料を担持した不織布シートであり、前記容器本体の前記側壁部に沿って配置され、
平面視における前記容器本体の前記内部空間が、
前記天蓋部に設けられた開口と上下方向に重なる第1領域と、
前記第1領域の周囲に位置し、前記吸収体が配置される第2領域と、
を備え、
平面視における単位面積当たりの液体吸収量である平面吸収量について、前記第1領域の平面吸収量が、前記第2領域の平面吸収量よりも小さ
く、
前記吸収体が存在しない開口下方空間が前記開口から鉛直下方に延び、
前記開口下方空間と前記吸収体との間に、前記廃液回収容器を構成する部材が設けられない余剰空間が、前記開口下方空間の周囲全周に亘って筒状に設けられることを特徴とする廃液回収容器。
【請求項2】
請求項1に記載の廃液回収容器であって、
平面視における前記開口の全体が前記第1領域に含まれることを特徴とする廃液回収容器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の廃液回収容器であって、
前記第1領域が非吸収領域であることを特徴とする廃液回収容器。
【請求項4】
請求項1ないし
3のいずれか1つに記載の廃液回収容器であって、
前記開口が、前記天蓋部の中央に位置することを特徴とする廃液回収容器。
【請求項5】
請求項1ないし
4のいずれか1つに記載の廃液回収容器であって、
前記吸収体が前記第1領域の周囲において放射状に配置されることを特徴とする廃液回収容器。
【請求項6】
請求項1ないし
5のいずれか1つに記載の廃液回収容器であって、
不透液性の材料により形成され、前記開口を覆うカバー部をさらに備え、
前記カバー部が、中央部から放射状に延びる複数の切れ目により複数のカバー要素に分割され、
前記複数のカバー要素が、下向きに弾性変形可能であることを特徴とする廃液回収容器。
【請求項7】
請求項1ないし
6のいずれか1つに記載の廃液回収容器であって、
前記開口を覆い、液体が透過可能なフィルタ部をさらに備えることを特徴とする廃液回収容器。
【請求項8】
請求項1ないし
7のいずれか1つに記載の廃液回収容器であって、
前記底部と前記側壁部とが一繋がりの部材であり、
前記天蓋部が、前記側壁部の上端部に着脱可能に取り付けられることを特徴とする廃液回収容器。
【請求項9】
請求項1ないし
8のいずれか1つに記載の廃液回収容器であって、
前記天蓋部と前記側壁部との接続部が液密であることを特徴とする廃液回収容器。
【請求項10】
請求項1ないし
9のいずれか1つに記載の廃液回収容器であって、
前記容器本体の前記底部の下面に滑り止め構造が設けられることを特徴とする廃液回収容器。
【請求項11】
請求項1ないし
10のいずれか1つに記載の廃液回収容器であって、
前記天蓋部が透明または半透明であることを特徴とする廃液回収容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療廃液を回収する廃液回収容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療施設において、シリンジ内の血液等の医療廃液を安全に廃棄するために、医療廃液を回収する廃液回収容器が利用されている。例えば、特許文献1では、略直方体状の容器の上蓋中央部に、シリンジ挿入用の円形開口が設けられた廃液回収容器が開示されている。当該容器の底面上には、廃液を吸収するための複数枚のセルロースシートが積層されている。当該セルロースシートは、容器の底面の略全体に亘って広がる矩形シートである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の廃液回収容器では、セルロースシートが、シリンジからの廃液を吸収して膨張する。当該セルロースシートでは、特に、シリンジからの廃液が直接的に付与される部位、すなわち、上蓋中央部の開口の鉛直下方の部位が大きく膨張する。セルロースシートが上蓋の開口近傍まで膨張すると、当該開口から容器内部に廃液を注入することが阻害されるおそれがある。また、当該開口からシリンジを挿入する際に、開口に挿入されたシリンジの先端がセルロースシートに接触するおそれがある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、医療廃液を回収する廃液回収容器において、開口の鉛直下方における吸収体の膨張を抑制することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、医療廃液を回収する廃液回収容器であって、底部と側壁部と天蓋部とを有する容器本体と、前記容器本体の内部空間に収容されて医療廃液を吸収する吸収体とを備え、前記吸収体は、粒状または繊維状の高吸収性材料を担持した不織布シートであり、前記容器本体の前記側壁部に沿って配置され、平面視における前記容器本体の前記内部空間が、前記天蓋部に設けられた開口と上下方向に重なる第1領域と、前記第1領域の周囲に位置し、前記吸収体が配置される第2領域とを備え、平面視における単位面積当たりの液体吸収量である平面吸収量について、前記第1領域の平面吸収量が、前記第2領域の平面吸収量よりも小さく、前記吸収体が存在しない開口下方空間が前記開口から鉛直下方に延び、前記開口下方空間と前記吸収体との間に、前記廃液回収容器を構成する部材が設けられない余剰空間が、前記開口下方空間の周囲全周に亘って筒状に設けられる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の廃液回収容器であって、平面視における前記開口の全体が前記第1領域に含まれる。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の廃液回収容器であって、前記第1領域が非吸収領域である。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の廃液回収容器であって、前記開口が、前記天蓋部の中央に位置する。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の廃液回収容器であって、前記吸収体が前記第1領域の周囲において放射状に配置される。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項1ないし5のいずれか1つに記載の廃液回収容器であって、不透液性の材料により形成され、前記開口を覆うカバー部をさらに備え、前記カバー部が、前記開口の中央部から放射状に延びる複数の切れ目により複数のカバー要素に分割され、前記複数のカバー要素が、下向きに弾性変形可能である。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項1ないし6のいずれか1つに記載の廃液回収容器であって、前記開口に配置され、液体が透過可能なフィルタ部をさらに備える。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項1ないし7のいずれか1つに記載の廃液回収容器であって、前記底部と前記側壁部とが一繋がりの部材であり、前記天蓋部が、前記側壁部の上端部に着脱可能に取り付けられる。
【0015】
請求項9に記載の発明は、請求項1ないし8のいずれか1つに記載の廃液回収容器であって、前記天蓋部と前記側壁部との接続部が液密である。
【0016】
請求項10に記載の発明は、請求項1ないし9のいずれか1つに記載の廃液回収容器であって、前記容器本体の前記底部の下面に滑り止め構造が設けられる。
【0017】
請求項11に記載の発明は、請求項1ないし10のいずれか1つに記載の廃液回収容器であって、前記天蓋部が透明または半透明である。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、開口の鉛直下方における吸収体の膨張を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1の実施の形態に係る廃液回収容器の斜視図である。
【
図4】吸収体の一部を拡大して示す縦断面図である。
【
図8】第2の実施の形態に係る廃液回収容器の斜視図である。
【
図10】第3の実施の形態に係る廃液回収容器の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る廃液回収容器1の外観を示す斜視図である。
図2は、廃液回収容器1の縦断面図である。
図3は、廃液回収容器1の平面図である。
図3では、後述する天蓋部23およびフィルタ部4の図示を省略している。廃液回収容器1は、医療廃液を回収する容器である。当該医療廃液は、例えば、医療処置において患者に対して使用した生理食塩水等の液体、および、医療処置を施された患者の体液である。当該医療廃液は、廃液回収容器1内に固定された状態で、廃液回収容器1と共に廃棄される。
【0021】
廃液回収容器1は、容器本体2と、吸収部材30と、フィルタ部4とを備える。容器本体2の外形は、上下方向を向く中心軸J1を中心とする有蓋かつ有底の略円筒状である。容器本体2の内部には、空間20(以下、「内部空間20」と呼ぶ。)が設けられる。吸収部材30は、容器本体2の内部空間20に収容される。
図1ないし
図3に示す例では、4つの吸収部材30が容器本体2の内部空間20に収容される。吸収部材30の数は、1であってもよく、2以上であってもよい。フィルタ部4は、容器本体2の開口231(後述)に設けられる。
【0022】
容器本体2は、底部21と、側壁部22と、天蓋部23とを備える。底部21は、中心軸J1を中心とする略円板状の部位である。側壁部22は、中心軸J1を中心とする略円筒状の部位である。側壁部22は、底部21の外周部から上方に延びる。
図1に示す例では、側壁部22は、底部21から上方に向かうに従って径方向外方へと広がる。底部21と側壁部22とは、一体的に成形された一繋がりの部材である。天蓋部23は、中心軸J1を中心とする略円板状の部位である。天蓋部23は、底部21および側壁部22とは別部材である。天蓋部23は、側壁部22の上端部に着脱可能に取り付けられる。
【0023】
底部21、側壁部22および天蓋部23は、例えば、比較的硬質な樹脂製である。底部21、側壁部22および天蓋部23の材料は、同じであってもよく、異なっていてもよい。側壁部22および底部21の外面の色は、例えば、黄色、橙色または赤色等の危険喚起色である。側壁部22および底部21の外面の色は、他の色(例えば、青色または緑色)であってもよい。天蓋部23は、例えば、透明または半透明である。容器本体2の容量は、例えば、500ml(ミリリットル)以上かつ2000ml以下である。容器本体2の容量は、500ml未満であってもよく、2000mlよりも大きくてもよい。
【0024】
図2に示す例では、側壁部22の上端部に、径方向外方へと延びてさらに下方へと延びるフランジ部221が設けられる。また、天蓋部23の外周部には、下方へと延びてさらに径方向内方かつ上方へと折り返される係合部237が設けられる。天蓋部23が側壁部22に取り付けられる際には、天蓋部23の係合部237が、側壁部22のフランジ部221の外周部に係合する。側壁部22と天蓋部23との接続部は、好ましくは液密である。例えば、側壁部22のフランジ部221と天蓋部23の係合部237とは、シーラント層を介して液密に熱接合されてもよい。あるいは、側壁部22のフランジ部221と天蓋部23の係合部237との間に、略円環状のOリングが設けられることにより、天蓋部23と側壁部22との接続部が液密とされてもよい。
【0025】
天蓋部23の中央には、下方に凹む天蓋凹部230が設けられる。天蓋凹部230は、中心軸J1を中心とする略円柱状の凹部である。天蓋凹部230の上端縁236は、中心軸J1を中心とする略円形である。天蓋凹部230は、上側壁部232と、フランジ部233と、下側壁部234と、底部235とを備える。上側壁部232は、天蓋凹部230の上端縁236からから下方に延びる略円筒状の部位である。フランジ部233は、上側壁部232の下端部から径方向内方へと延びる略円環板状の部位である。下側壁部234は、フランジ部233の径方向内端部から下方へと延びる略円筒状の部位である。底部235は、下側壁部234の下端部から径方向内方へと延びる略円環板状の部位である。
【0026】
天蓋凹部230の底部235の中央には、天蓋部23を貫通する開口231が設けられる。開口231は、例えば、平面視において(すなわち、上側から鉛直下方を見た場合に)中心軸J1を中心とする略円形である。廃液回収容器1の使用時には、開口231を介して医療廃液が内部空間20に注入される。容器本体2では、開口231以外の部位は、液体が通過不能である。
【0027】
容器本体2の底部21の下面には、滑り止め構造24が設けられる。滑り止め構造24は、例えば、容器本体2の底部21の下面に接合された平板状の部材である。当該平板状の部材は、患者や機器台を覆うドレープとの間の摩擦係数が、容器本体2の底部21の当該摩擦係数よりも大きい材料により形成される。当該平板状の部材は、例えば、底部21の下面の略全面に亘って貼付されるテープ状の部材であってもよい。滑り止め構造24は、例えば、底部21の下面の略全面に亘って形成された微小な凹凸構造であってもよい。滑り止め構造24として、既述の構造以外の様々な構造が採用されてもよい。
【0028】
容器本体2の天蓋部23の上面には、封止部25が設けられる。封止部25は、使用後の廃液回収容器1において天蓋部23に貼付され、開口231および天蓋凹部230の上端開口を閉塞する。封止部25は、例えば、天蓋部23に対して着脱可能に貼付されるテープ状の部材である。封止部25の天蓋部23と対向する面(すなわち、貼付時の下面)には、粘着剤層が設けられている。廃液回収容器1が使用される前の状態では、封止部25は、天蓋部23に貼付されて開口231を閉塞していてもよく、天蓋部23の天蓋凹部230から離れた位置、または、天蓋部23以外の部位(例えば、側壁部22)に貼付されていてもよい。
【0029】
各吸収部材30は、略長方形状のシート部材である。4つの吸収部材30は、容器本体2の側壁部22に沿って、周方向に略等角度間隔に配置される。吸収部材30の上端部は、容器本体2の側壁部22の内周面にホットメルト接着剤等により固定される。吸収部材30の上部は、容器本体2の側壁部22に沿って略上下方向に延びており、吸収部材30の下部は、容器本体2の底部21に沿って略水平に延びている。
【0030】
各吸収部材30は、吸収体3と、吸収体カバー33とを備える。吸収体3は、容器本体2の内部空間20に注入された医療廃液を吸収し、容器本体2から漏出しないように保持(すなわち、固定)する。吸収体3は、例えば、粒状または繊維状の高吸収性材料、および、粉砕したパルプ繊維またはセルロース繊維等の親水性繊維の集合体のうち、少なくとも一方を吸収材として含む。当該高吸収性材料としては、例えば、粒状の高吸収性ポリマー(SAP(Super Absorbent Polymer))、または、繊維状の高吸収性ファイバー(SAF(Super Absorbent Fiber))が利用される。吸収体カバー33は、吸収体3の表面を被覆するシート状の部材である。吸収体カバー33は、例えば、透液性の不織布により形成される。なお、吸収体カバー33は、医療廃液を実質的に固定する部材ではないため、省略されてもよい。
【0031】
図2に示す例では、吸収体3は、粒状または繊維状の高吸収性材料を担持した略長方形状の不織布シートである。吸収体3の上部は、容器本体2の側壁部22に沿って略上下方向に延びており、吸収体3の下部は、容器本体2の底部21に沿って略水平に延びている。容器本体2の底部21の中央部では、4つの吸収部材30の吸収体カバー33が上下方向に重なっている。吸収体3は、平面視において、天蓋部23の開口231の外周縁よりも径方向外側に配置される。換言すれば、開口231の鉛直下方には、吸収体3は配置されない。すなわち、開口231の鉛直下方の領域は、吸収体3が存在しない吸収体非存在領域であり、実質的に医療廃液を吸収して固定する機能を有しない非吸収領域である。
【0032】
図4は、吸収体3の縦断面の一部を拡大した図である。
図4に示すように、吸収体3は、積層された2層のシート部31と、2層のシート部31の間に配置された高吸収性材料32とを備える。シート部31は、透液性の不織布(例えば、スパンレース不織布)である。高吸収性材料32は、粒状のSAPである。
図4では、高吸収性材料32を実際よりも大きく描いている。高吸収性材料32は、ホットメルト接着剤等により、2層のシート部31の間に固定される。
【0033】
図2に示すように、フィルタ部4は、容器本体2の開口231の略全体を覆うように配置され、天蓋部23に取り付けられる。フィルタ部4は、中心軸J1を中心とする略円板状の部材である。フィルタ部4は、液体が透過可能な(すなわち、透液性の)部材であり、当該液体中の所定の大きさ以上の固形物またはゲル状物質を捕集する。フィルタ部4は、例えば、ナイロン等の樹脂製のメッシュ部材である。フィルタ部4の色は、例えば白色である。フィルタ部4の下側の領域は、フィルタ部4を透過して視認可能である。フィルタ部4のメッシュ(すなわち、1インチ当たりの網目の数であり、番手とも呼ぶ。)は、好ましくは10以上かつ400以下であり、より好ましくは150以上かつ350以下である。フィルタ部4のメッシュは、10未満であってもよく、400よりも大きくてもよい。
図2に示す例では、フィルタ部4は、天蓋凹部230内に配置され、開口231の略全体を覆って天蓋凹部230の底部235に固定される。例えば、フィルタ部4は、底部235の上面にホットメルト接着剤等により固定される。フィルタ部4の底部235への固定方法は、様々に変更されてよい。
【0034】
図5は、廃液回収容器1を示す平面図である。
図5では、フィルタ部4および容器本体2の天蓋部23の図示を省略し、容器本体2の内部空間20の様子を図示している。また、
図5では、天蓋部23の開口231、および、吸収部材30の吸収体3を破線にて示す。なお、吸収部材30の吸収体カバー33の図示は省略している。
【0035】
平面視における容器本体2の内部空間20は、第1領域201と、第2領域202とを備える。
図4では、第1領域201および第2領域202に異なる平行斜線を付す。第1領域201は、平面視において、吸収体3の内端縁よりも径方向内側の領域である。すなわち、第1領域201には吸収体3は配置されていない。換言すれば、第1領域201は、吸収体3が存在しない吸収体非存在領域であり、実質的に医療廃液を吸収して固定する機能を有しない非吸収領域である。
【0036】
第1領域201は、中心軸J1を中心とする略矩形の領域である。第1領域201は、天蓋部23の開口231と上下方向に重なる。
図5に示す例では、第1領域201は開口231よりも大きく、開口231の全体が、平面視において第1領域201に含まれる。換言すれば、第1領域201の外縁は、開口231の外周縁よりも全周に亘って径方向外側に位置する。
【0037】
第2領域202は、第1領域201の周囲に位置し、吸収体3が配置される領域である。換言すれば、第2領域202は、平面視において吸収体3と重なる領域である。
図5に示す例では、4つの吸収体3が第1領域201の周囲において放射状に配置されているため、平面視において略矩形の4つの第2領域202が、第1領域201の周囲を囲んで放射状に配置される。4つの第2領域202は、周方向に互いに離間しているが、周方向において隣接する2つの第2領域202が部分的に重なっていてもよい。各第2領域202は、平面視における吸収体3の内端縁において第1領域201に接する。
【0038】
以下の説明では、廃液回収容器1の平面視における単位面積当たりの液体吸収量を、「平面吸収量」と呼ぶ。上述の第2領域202には、液体を吸収する吸収体3が存在するため、第2領域202の平面吸収量は、第1領域201の平面吸収量よりも大きい。第1領域201は、上述のように非吸収領域であり、第1領域201の平面吸収量は実質的に0(g/m2)である。なお、非吸収領域の平面吸収量は、必ずしも厳密に0(g/m2)である必要はなく、当該非吸収領域において医療廃液を吸収して固定することが実質的にできなければよい。
【0039】
廃液回収容器1が使用される際には、まず、患者または機器台を覆うドレープ等の上に廃液回収容器1が載置される。このとき、廃液回収容器1の底部21の下面に設けられた滑り止め構造24がドレープに接触する。続いて、
図6に示すように、医療廃液を内部に保持しているシリンジ91の先端部が、廃液回収容器1の天蓋凹部230に挿入される。シリンジ91の先端は、開口231の近傍において、フィルタ部4よりも上側に位置する。そして、シリンジ91の先端からフィルタ部4および開口231に向けて、シリンジ91内部の医療廃液が吐出される。医療廃液は、例えば、シリンジ91を用いてカテーテル内から吸引した血液等である。
【0040】
医療廃液は、開口231に配置されたフィルタ部4を通過して容器本体2の内部空間20に流入する。シリンジ91の先端部の周囲は、天蓋凹部230の下側壁部234により囲まれているため、内部空間20に流入した医療廃液が容器本体2の底部21等で跳ね返った場合であっても、跳ね返った医療廃液がシリンジ91に付着することを抑制することができる。
【0041】
廃液回収容器1では、医療廃液に含まれていた所定の大きさ以上の固形物またはゲル状物質は、フィルタ部4により捕集されてフィルタ部4上に残る。フィルタ部4上の固形物またはゲル状物質は、医療者(例えば、医者)により、ピンセット等を使用してフィルタ部4上から採取される。当該固形物またはゲル状物質は、例えば、血栓や生体組織片等の回収対象物である。
【0042】
容器本体2の内部空間20に流入した医療廃液は、容器本体2の底部21の中央部に到達し、当該中央部から径方向外方へと広がる。容器本体2の底部21上にて広がった医療廃液は、吸収体3へと到達し、吸収体3により吸収されて固定される。換言すれば、容器本体2の内部空間20へと流入した医療廃液は、
図5に示す第1領域201から第2領域202に向かって径方向外方へと広がり、第2領域202において吸収体3により吸収されて固定される。容器本体2への医療廃液の注入は、例えば複数回行われる。容器本体2への医療廃液の注入が終了すると、
図6に示す封止部25により天蓋部23の開口231が閉塞される。
【0043】
以上に説明したように、廃液回収容器1は、容器本体2と、吸収体3とを備える。容器本体2は、底部21と、側壁部22と、天蓋部23とを有する。吸収体3は、容器本体2の内部空間20に収容されて、医療廃液を吸収する。平面視における容器本体2の内部空間20は、第1領域201と、第2領域202とを備える。第1領域201は、天蓋部23に設けられた開口231と上下方向に重なる。第2領域202は、第1領域201の周囲に位置する。第2領域202には、吸収体3が配置される。平面視における単位面積当たりの液体吸収量である平面吸収量について、第1領域201の平面吸収量は、第2領域202の平面吸収量よりも小さい。
【0044】
廃液回収容器1では、第2領域202における平面吸収量を比較的大きくすることにより、廃液回収容器1による医療廃液の回収量(すなわち、吸収体3により吸収されて固定される医療廃液の量)を、比較的大きく確保することができる。また、第1領域201における平面吸収量を第2領域202よりも小さくすることにより、吸収体3が医療廃液を吸収した際に、開口231の鉛直下方における吸収体3の膨張を抑制することができる。その結果、容器本体2の内部空間20への医療廃液の注入が、膨張した吸収体3により阻害されることを抑制することができる。このため、廃液回収容器1による医療廃液の回収量を増大することができる。
【0045】
上述のように、廃液回収容器1では、平面視における開口231の全体が、第1領域201に含まれる。換言すれば、開口231の鉛直下方の領域全体が、第1領域201に含まれる。これにより、開口231の鉛直下方における吸収体3の膨張をさらに抑制することができる。また、上述の例では、第1領域201は非吸収領域である。これにより、開口231の鉛直下方における吸収体3の膨張を、より一層抑制することができる。
【0046】
廃液回収容器1では、吸収体3は、粒状または繊維状の高吸収性材料を担持した不織布シートである。これにより、吸収体3による医療廃液の吸収量を確保しつつ、吸収体3を小型化することができる。その結果、廃液回収容器1も小型化することができる。また、吸収体3からの液戻り(すなわち、吸収体3に一旦吸収された医療廃液が、吸収体3から外部に漏出する現象)の発生を抑制することができる。
【0047】
上述のように、開口231は、天蓋部23の中央に位置する。これにより、開口231から容器本体2の内部空間20に注入された医療廃液を、開口231の鉛直下方の領域から周囲へと略均等に拡散させることができる。その結果、第1領域201の周囲の第2領域202に配置されている吸収体3を、医療廃液の吸収に効率良く利用することができる。その結果、廃液回収容器1による医療廃液の回収量をさらに増大することができる。
【0048】
上述のように、吸収体3は、第1領域201の周囲において放射状に配置される。これにより、各吸収体3が医療廃液を吸収した際に、周方向への膨張を隣接する吸収体3により阻害されることが抑制される。その結果、廃液回収容器1による医療廃液の回収量をさらに増大することができる。
【0049】
廃液回収容器1では、容器本体2の底部21と側壁部22とが一繋がりの部材である。また、天蓋部23は、側壁部22の上端部に着脱可能に取り付けられる。これにより、吸収体3を含む吸収部材30を容器本体2とは分別して廃棄する必要がある場合等、天蓋部23を側壁部22から取り外すことにより、吸収部材30を容器本体2から容易に取り出すことができる。また、フィルタ部4を通過して容器本体2内に入った小さな回収対象物を回収する場合、天蓋部23を側壁部22から取り外すことにより、当該回収対象物を容易に回収することもできる。なお、天蓋部23と側壁部22との接続部の構造は、
図2に例示する構造には限定されず、様々に変更されてよい。
【0050】
上述のように、天蓋部23と側壁部22との接続部は液密である。これにより、容器本体2の内部空間20から外部へと医療廃液が漏出することを防止または抑制することができる。
【0051】
廃液回収容器1では、天蓋部23は、透明または半透明である。このため、医療者は、容器本体2の内部空間20の様子を容易に視認することができる。これにより、吸収体3による医療廃液の吸収の様子等を確認しつつ、医療廃液を容器本体2に注入することができるため、医療廃液が開口231等から溢れることを防止することができる。また、天蓋部23を側壁部22から安心して取り外すことができる。
【0052】
上述のように、容器本体2の底部21の下面には、滑り止め構造24が設けられる。これにより、廃液回収容器1を使用する際に、患者や機器台を覆うドレープ等の上に廃液回収容器1を安定して載置することができる。
【0053】
上述のように、廃液回収容器1は、開口231を覆い、液体が透過可能なフィルタ部4をさらに備える。これにより、医療廃液中に含まれる血栓等の回収対象物を容易に回収することができる。
【0054】
廃液回収容器1では、フィルタ部4は樹脂製である。これにより、フィルタ部4を廃液回収容器1の他の部位から分別して廃棄する必要がないため、廃液回収容器1の廃棄を容易とすることができる。
【0055】
また、フィルタ部4は白色である。これにより、フィルタ部4により捕集された回収対象物を容易に視認することができる。その結果、回収対象物のフィルタ部4からの回収を容易とすることができる。
【0056】
フィルタ部4のメッシュは、好ましくは10以上かつ400以下であり、より好ましくは150以上かつ350以下である。フィルタ部4のメッシュが400以下(より好ましくは、350以下)であることにより、フィルタ部4に向けて吐出された医療廃液がフィルタ部4で跳ね返ることを抑制し、医療廃液のフィルタ部4の通過を容易とすることができる。また、フィルタ部4のメッシュが10以上(より好ましくは、150以上)であることにより、回収対象物をフィルタ部4により好適に捕集することができる。さらに、フィルタ部4を通過した医療廃液が、容器本体2の底部21等で跳ね返った場合であっても、跳ね返った医療廃液がフィルタ部4を通過して外部へと漏出することを抑制することができる。
【0057】
図2に示す例では、フィルタ部4は容器本体2の天蓋部23に固定されているが、
図7に示すように、天蓋部23に対して着脱可能に取り付けられるフィルタ部4aが設けられてもよい。
図7に例示する廃液回収容器1aでは、フィルタ部4aは、フィルタ取付部41と、フィルタ本体42と、摘まみ部43とを備える。
【0058】
フィルタ取付部41は、容器本体2の天蓋部23に着脱可能に取り付けられる。フィルタ取付部41は、例えば、中心軸J1を中心とする略円環状の部材である。フィルタ取付部41は、例えば、比較的硬質な樹脂により形成される。フィルタ取付部41は、例えば、比較的粘着力が小さいホットメルト接着剤等により、天蓋凹部230の底部235の上面に着脱可能に取付られる。フィルタ部4aの天蓋部23への取付方法は、様々に変更されてよい。
【0059】
フィルタ本体42は、液体が透過可能な部材であり、フィルタ取付部41に接続される。フィルタ本体42は、例えば、中心軸J1を中心とする略円板状のメッシュ部材である。フィルタ本体42は、フィルタ取付部41の開口(すなわち、フィルタ取付部41の径方向内側の領域)全体を覆ってフィルタ本体42に固定される。フィルタ本体42の形状、材料、色、メッシュ等は、
図2に示すフィルタ部4とおよそ同じである。
【0060】
摘まみ部43は、フィルタ取付部41から上方に突出する部材である。摘まみ部43は、例えば、比較的軟質の樹脂により形成された帯状部材である。摘まみ部43の下端部は、フィルタ取付部41に固定されている。摘まみ部43の上端部は自由端であり、医療者により把持可能である。
図7に示す例では、摘まみ部43は、天蓋凹部230の上端縁236よりも上方に突出している。
【0061】
フィルタ部4aにより血栓等の回収対象物が捕集されると、医療者により摘まみ部43が摘ままれ、上方へと引っ張られる。これにより、フィルタ部4aが、容器本体2の天蓋部23から取り外されて持ち上げられる。フィルタ部4aは、膿盆やトレイ等に載置される。そして、フィルタ部4a上の回収対象物が、医療者により採取される。
【0062】
このように、フィルタ部4aが、天蓋部23に着脱可能に取り付けられるフィルタ取付部41と、フィルタ取付部41に接続され、液体が透過可能なフィルタ本体42とを備えることにより、フィルタ部4aにより捕集された回収対象物の回収を容易とすることができる。また、フィルタ部4aが、フィルタ取付部41から上方に突出する摘まみ部43をさらに備えることにより、フィルタ部4aの天蓋部23からの取り外しを容易とすることができる。
【0063】
なお、廃液回収容器1aでは、フィルタ部4aによる回収対象物の回収が行われない場合、使用前にフィルタ部4aが天蓋部23から取り外されてもよい。この場合、天蓋凹部230の底部235の内径が、シリンジ91(
図6参照)の先端の径よりも大きく、かつ、シリンジ91の本体の径よりも小さくされることにより、シリンジ91の本体が底部235よりも下方まで挿入されることを防止することができる。
【0064】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る廃液回収容器1bについて説明する。
図8は、廃液回収容器1bの斜視図である。
図9は、廃液回収容器1bの縦断面図である。廃液回収容器1bは、カバー部5を備える点を除き、
図1に示す廃液回収容器1と略同様の構造を有する。以下の説明では、廃液回収容器1の各構成に対応する廃液回収容器1bの構成に同符号を付す。
【0065】
図8および
図9に示すように、カバー部5は、中心軸J1を中心とする略円板状の部材である。カバー部5は、容器本体2の天蓋部23に固定される。カバー部5は、例えば、天蓋凹部230のフランジ部233の上面に、ホットメルト接着剤等により固定される。カバー部5は、天蓋凹部230および開口231を略全面に亘って覆う。カバー部5は、開口231およびフィルタ部4から上方に離間している。
【0066】
カバー部5は、その中央部から放射状に延びる複数の切れ目により、複数のカバー要素51に分割されている。換言すれば、カバー部5は、いわゆる菊割れ蓋である。複数のカバー要素51は、少なくとも下向きに弾性変形可能である。カバー部5は、液体を透過しない材料により形成される。カバー部5は、例えば、比較的軟質の樹脂により形成される。カバー部5の色は、例えば、青色または緑色等である。あるいは、カバー部5は、透明または半透明であってもよい。好ましくは、カバー部5の色は、天蓋部23の色と異なる。
【0067】
廃液回収容器1bが使用される際には、シリンジ91(
図6参照)が、カバー部5を介して、天蓋凹部230へと挿入される。このとき、カバー部5の複数のカバー要素51は、シリンジ91によって下向きに押されて弾性変形する。複数のカバー要素51は、シリンジ91の外側面に接触する。
【0068】
以上に説明したように、廃液回収容器1bは、開口231を覆うカバー部5をさらに備える。カバー部5は、不透液性の材料により形成される。カバー部5は、中央部から放射状に延びる複数の切れ目により、複数のカバー要素51に分割される。複数のカバー要素51は、下向きに弾性変形可能である。これにより、医療廃液がフィルタ部4等で跳ね返った場合であっても、跳ね返った医療廃液がシリンジ91の周囲を通過してカバー部5から外部へと漏出することを抑制することができる。なお、カバー部5の形状、材料、色等は、様々に変更されてよい。
【0069】
次に、本発明の第3の実施の形態に係る廃液回収容器1cについて説明する。
図10は、廃液回収容器1cの斜視図である。
図11は、廃液回収容器1cの縦断面図である。
図12は、廃液回収容器1cの平面図である。
図12では、後述する天蓋部23cおよびフィルタ部4cの図示を省略し、容器本体2cの内部空間20cの様子を図示している。また、
図12では、天蓋部23cの開口231cを破線にて示す。
【0070】
廃液回収容器1cは、容器本体2cと、吸収体3cと、フィルタ部4cとを備える。容器本体2cは、中心軸J1を中心とする有蓋かつ有底の略円筒状である。容器本体2cは、底部21cと、側壁部22cと、天蓋部23cとを備える。側壁部22cは、中心軸J1を中心とする略円筒状の部位である。底部21cおよび天蓋部23cは、中心軸J1を中心とする略円板状の部位である。側壁部22cは、底部21cの外周部から上方に延び、天蓋部23cの外周部に接続される。
図10に示す例では、側壁部22cは、底部21cから上方に向かうに従って径方向外方へと広がる。底部21c、側壁部22cおよび天蓋部23cは、一体的に成形された一繋がりの部材である。底部21cと側壁部22cとの接続部、および、側壁部22cと天蓋部23cとの接続部は、液密である。容器本体2cでは、開口231c以外の部位は、液体が通過不能である。底部21c、側壁部22cおよび天蓋部23cの外面の色は、例えば、黄色、橙色または赤色等の危険喚起色である。底部21c、側壁部22cおよび天蓋部23cの外面の色は、他の色(例えば、青色または緑色)であってもよい。
【0071】
天蓋部23cには、上述の天蓋凹部230(
図2参照)は設けられない。天蓋部23cの中央には、天蓋部23cを貫通する開口231cが設けられる。開口231cは、例えば、平面視において(すなわち、上側から鉛直下方を見た場合に)中心軸J1を中心とする略円形である。廃液回収容器1cの使用時には、開口231cを介して医療廃液が内部空間20cに注入される。容器本体2cの容量は、例えば、500ml以上かつ2000ml以下である。容器本体2cの容量は、500ml未満であってもよく、2000mlよりも大きくてもよい。
【0072】
吸収体3cは、容器本体2cの内部空間20cに収容される。吸収体3cは、上述の吸収体3(
図2参照)と同様に、容器本体2cの内部空間20cに注入された医療廃液を吸収し、容器本体2cから漏出しないように保持(すなわち、固定)する。吸収体3cの構造および材料は、吸収体3と略同じである。すなわち、吸収体3cは、粒状または繊維状の高吸収性材料、および、粉砕した親水性繊維の集合体のうち、少なくとも一方を吸収材として含む。なお、吸収体3cは、上述の吸収体カバー33(
図2参照)により被覆されていてもよい。
【0073】
図10に示す例では、吸収体3cは、粒状または繊維状の高吸収性材料を担持した不織布シートである。吸収体3cは、略長方形状のシート部材であり、中心軸J1を中心とする略円筒状に丸められた状態で容器本体2cの内部空間20cに収容されている。吸収体3cは、ホットメルト接着剤等により容器本体2cの内面に固定される。吸収体3cは、平面視において、天蓋部23cの開口231cの外周縁よりも径方向外側に配置される。換言すれば、開口231cの鉛直下方には、吸収体3cは配置されない。なお、
図10に示す例では、吸収体3cの数は1であるが、2つ以上の吸収体3cが容器本体2c内に設けられてもよい。
【0074】
フィルタ部4cは、容器本体2cの開口231cの略略全体を覆うように配置され、天蓋部23cに取り付けられる。フィルタ部4cの構造および材料は、上述のフィルタ部4(
図2参照)と略同じである。フィルタ部4cは、例えば、天蓋部23cの開口231cの周囲の部位にホットメルト接着剤等により固定される。
図10に示す例では、フィルタ部4cは、開口231c内に配置され、略平板状の天蓋部23cと上下方向の略同じ位置に位置する。
【0075】
平面視における容器本体2cの内部空間20cは、第1領域201cと、第2領域202cとを備える。
図12では、第1領域201cおよび第2領域202cに異なる平行斜線を付す。第1領域201cは、平面視において、吸収体3cの内周縁よりも径方向内側の領域である。すなわち、第1領域201cには吸収体3cは配置されておらず、第1領域201cの全体において、容器本体2cの底部21cの上面が吸収体3cから露出している。換言すれば、第1領域201cは、液体を吸収する機能を有しない非吸収領域である。
【0076】
第1領域201cは、中心軸J1を中心とする略円形の領域である。第1領域201cは、天蓋部23cの開口231cと上下方向に重なる。
図12に示す例では、第1領域201cは開口231cよりも大きく、開口231cの全体が、平面視において第1領域201cに含まれる。換言すれば、第1領域201cの外周縁は、開口231cの外周縁よりも全周に亘って径方向外側に位置する。
【0077】
第2領域202cは、第1領域201cの周囲に位置し、吸収体3cが配置される領域である。換言すれば、第2領域202cは、平面視において吸収体3cと重なる領域である。
図12に示す例では、第2領域202cは、平面視において中心軸J1を中心とする略円環状の領域である。第2領域202cの内周縁は、平面視における吸収体3cの内周縁である。第2領域202cは、平面視における吸収体3cの内周縁において第1領域201cに接する。第2領域202cには、液体を吸収する吸収体3cが存在するため、第2領域202cの平面吸収量は、第1領域201cの平面吸収量よりも大きい。第1領域201cは、上述のように非吸収領域であり、第1領域201cの平面吸収量は実質的に0(g/m
2)である。
【0078】
以上に説明したように、廃液回収容器1cは、容器本体2cと、吸収体3cとを備える。容器本体2cは、底部21cと、側壁部22cと、天蓋部23cとを有する。吸収体3cは、容器本体2cの内部空間20cに収容されて、医療廃液を吸収する。平面視における容器本体2cの内部空間20cは、第1領域201cと、第2領域202cとを備える。第1領域201cは、天蓋部23cに設けられた開口231cと上下方向に重なる。第2領域202cは、第1領域201cの周囲に位置する。第2領域202cには、吸収体3cが配置される。平面視における単位面積当たりの液体吸収量である平面吸収量について、第1領域201cの平面吸収量は、第2領域202cの平面吸収量よりも小さい。
【0079】
これにより、上述の廃液回収容器1と同様に、第2領域202cにおける平面吸収量を比較的大きくすることにより、廃液回収容器1cによる医療廃液の回収量(すなわち、吸収体3cにより吸収されて固定される医療廃液の量)を、比較的大きく確保することができる。また、第1領域201cにおける平面吸収量を第2領域202cよりも小さくすることにより、吸収体3cが医療廃液を吸収した際に、開口231cの鉛直下方における吸収体3cの膨張を抑制することができる。その結果、容器本体2cの内部空間20cへの医療廃液の注入が、膨張した吸収体3cにより阻害されることを抑制することができる。このため、廃液回収容器1cによる医療廃液の回収量を増大することができる。
【0080】
上述のように、廃液回収容器1cでは、平面視における開口231cの全体が、第1領域201cに含まれる。換言すれば、開口231cの鉛直下方の領域全体が、第1領域201cに含まれる。これにより、開口231cの鉛直下方における吸収体3cの膨張をさらに抑制することができる。また、上述の例では、第1領域201cは非吸収領域である。これにより、開口231cの鉛直下方における吸収体3cの膨張を、より一層抑制することができる。
【0081】
廃液回収容器1cでは、底部21c、側壁部22cおよび天蓋部23cは一繋がりの部材である。これにより、容器本体2cの内部空間20cから外部へと医療廃液が漏出することを防止または抑制することができる。
【0082】
上述のように、廃液回収容器1cは、開口231cを覆い、液体が透過可能なフィルタ部4cをさらに備える。これにより、医療廃液中に含まれる血栓等の回収対象物を容易に回収することができる。
【0083】
上述の廃液回収容器1,1a~1cでは、様々な変更が可能である。
【0084】
例えば、吸収部材30および吸収体3,3cの形状、構造、材料等は、様々に変更されてよい。吸収部材30は、例えば、吸収体3の長手方向の中央部にて2つ折りにされた状態で、折り目を上側に向けて容器本体2の側壁部22に固定されてもよい。また、吸収部材30の当該2つ折りにされた部位同士は、粘着剤等により互いに接合されていてもよい。
【0085】
例えば、吸収体3cは、略円筒状ではなく、平面視において略C字状に丸められた状態で容器本体2cの内部空間20cに収容されてもよい。また、平面視において中心軸J1を中心とする略円環状、かつ、上下方向の厚さが比較的薄いシート状の吸収体が、容器本体2,2cの底部21,21cの上面に配置されてもよい。また、当該略円環状の吸収体は、略円形の吸収体カバーにより被覆されていてもよい。この場合、略円環状の吸収体の内側の領域(すなわち、吸収体カバーのみが存在し、吸収体が設けられない領域)が、上述の第1領域201,201cに相当する。
【0086】
上述の例では、第1領域201,201cは非吸収領域であるが、第1領域201,201cにも吸収体が配置され、第1領域201,201cの平面吸収量が0(g/m2)よりも大きくてもよい。この場合であっても、第1領域201,201cの平面吸収量が第2領域202,202cの平面吸収量よりも小さくされることにより、開口231,231cの鉛直下方における吸収体3,3cの膨張を抑制することができる。第1領域201,201cと第2領域202,202cとの平面吸収量の差は、例えば、単位面積当たりに配置される高吸収性材料32の量(すなわち、密度)を異ならせることにより実現されてもよい。
【0087】
上述の例では、平面視において第1領域201,201cは開口231,231cよりも大きいが、本発明の関連技術では、例えば、第1領域201,201cと開口231,231cとが平面視において略同形状であり、第1領域201,201cの外周縁と開口231,231cの外周縁とが平面視においておよそ一致してもよい。また、本発明の関連技術では、第1領域201,201cは、開口231,231cの少なくとも一部と上下方向に重なっていればよい。例えば、第1領域201,201cは、開口231,231cの中央部と上下方向に重なっており、開口231,231cの中央部の周囲の部位は、第2領域202,202cと上下方向に重なっていてもよい。この場合であっても、開口231,231cの鉛直下方における吸収体3,3cの膨張を抑制することができる。
【0088】
吸収体3,3cは、表面にSAP等の高吸収性材料が塗布された不織布であってもよい。また、吸収体3,3cは、SAP等の高吸収性材料が混抄された不織布であってもよい。あるいは、吸収体3,3cは、粉砕したパルプ繊維またはセルロース繊維等の親水性繊維の集合体に高吸収性材料を混合したものを、ティッシュペーパーや不織布により包んだものであってもよい。本発明の関連技術では、吸収体3,3cは、粉砕したパルプ繊維またはセルロース繊維等の親水性繊維の集合体を、ティッシュペーパーや不織布により包んだものであってもよい。
【0089】
フィルタ部4,4a,4cの形状、材料、色、メッシュ等は様々に変更されてよい。例えば、フィルタ部4cは、開口231cから下方に延びる袋状のメッシュ部材であってもよい。フィルタ部4cは、例えば、開口231cから下方に延びる有底円筒状または半球状であってもよい。いずれの場合も、フィルタ部4cの底部は、容器本体2cの底部21cから上方に離間した位置に位置する。また、フィルタ部4,4cはメッシュ部材には限定されず、他の構造を有する部材(例えば、多数の微小な穴が形成されたシート部材(いわゆる、パンチングシート))であってもよい。フィルタ部4aのフィルタ本体42においても同様である。
【0090】
廃液回収容器1では、必ずしもフィルタ部4は設けられる必要はない。廃液回収容器1a~1cにおいても同様である。廃液回収容器1では、天蓋部23を側壁部22から取り外すことができるため、フィルタ部4が省略される場合であっても、容器本体2の内部空間20から回収対象物を容易に回収することができる。廃液回収容器1a,1bにおいても同様である。
【0091】
容器本体2では、天蓋部23の上面は、天蓋凹部230の上端縁236から径方向外方へと向かうに従って上方へと向かう傾斜面であってもよい。これにより、仮に、天蓋部23の天蓋凹部230の周囲の部位に医療廃液が滴下した場合等であっても、当該医療廃液は、天蓋部23の上面に沿って天蓋凹部230へと導かれ、開口231を介して容器本体2の内部空間20へと落下する。これにより、医療廃液を好適に回収することができる。なお、天蓋部23と側壁部22との接続部は、必ずしも液密でなくてもよい。容器本体2cにおいても同様である。また、天蓋部23の上面では、側壁部22のフランジ部221と上下方向に重なる外周部が、当該外周部よりも内側の部位から上側に突出し、当該外周部と内側の部位との間に段差が設けられてもよい。これにより、天蓋部23を側壁部22に容易に取り付けることができる。
【0092】
容器本体2では、開口231の位置は、必ずしも天蓋部23の中央には限定されず、天蓋部23の中央から離れていてもよい。また、開口231の形状は、様々に変更されてよい。例えば、開口231は矩形であってもよい。容器本体2cにおいても同様である。
【0093】
容器本体2,2cの外形は、様々に変更されてよい。例えば、容器本体2,2cの外形は、略直方体状であってもよい。
【0094】
滑り止め構造24、封止部25およびカバー部5はそれぞれ、必ずしも設けられる必要はなく、適宜省略されてよい。
【0095】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【符号の説明】
【0096】
1,1a~1c 廃液回収容器
2,2c 容器本体
3,3c 吸収体
4,4a,4c フィルタ部
5 カバー部
20,20c 内部空間
21,21c 底部
22,22c 側壁部
23,23c 天蓋部
24 滑り止め構造
31 シート部
32 高吸収性材料
51 カバー要素
201,201c 第1領域
202,202c 第2領域
231,231c 開口