IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オリエンタル白石株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-17
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】既設コンクリート桁の支承取替工法
(51)【国際特許分類】
   E01D 19/04 20060101AFI20220106BHJP
   E01D 22/00 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
E01D19/04 A
E01D22/00 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2017225900
(22)【出願日】2017-11-24
(65)【公開番号】P2018204419
(43)【公開日】2018-12-27
【審査請求日】2020-08-04
(31)【優先権主張番号】P 2017011597
(32)【優先日】2017-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017117426
(32)【優先日】2017-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000103769
【氏名又は名称】オリエンタル白石株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(74)【代理人】
【識別番号】100198214
【弁理士】
【氏名又は名称】眞榮城 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】正司 明夫
(72)【発明者】
【氏名】岩本 ▲靖▼
(72)【発明者】
【氏名】崎谷 和也
(72)【発明者】
【氏名】井隼 俊也
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-239306(JP,A)
【文献】特開平10-252016(JP,A)
【文献】特開2005-240382(JP,A)
【文献】特開平09-189136(JP,A)
【文献】特開2009-287183(JP,A)
【文献】特開2001-106484(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 19/04
E01D 22/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設コンクリート桁と下部構造との間に介装された既設支承を新設支承に取り替える既設コンクリート桁の支承取替工法であって、
前記既設支承で前記既設コンクリート桁を支承しつつ、前記既設支承の橋軸方向と直交する橋幅方向に近接した両脇の前記下部構造に前記新設支承のアンカーを挿置するためのアンカー孔を穿孔するアンカー孔穿孔工程と、を有すること
を特徴とする既設コンクリート桁の支承取替工法。
【請求項2】
前記既設支承の近傍の既設コンクリート桁の脇に前記新設支承の上沓のアンカーを定着させる定着ブロックを取り付ける定着ブロック取付工程と、を有すること
を特徴とする請求項1に記載の既設コンクリート桁の支承取替工法。
【請求項3】
前記定着ブロック取付工程の前に、前記定着ブロックを止め付ける横締めPC鋼材を挿通するPC鋼材孔を、前記既設コンクリート桁に削孔するPC鋼材孔削孔工程を行うこと
を特徴とする請求項2に記載の既設コンクリート桁の支承取替工法。
【請求項4】
前記新設支承の設置が完了し、前記新設支承で既設コンクリート桁を支承した後、前記既設支承を撤去する既設支承撤去工程を行うこと
を特徴とする請求項2又は3に記載の既設コンクリート桁の支承取替工法。
【請求項5】
前記定着ブロックは、前記新設支承の上沓及びそのアンカーが一体となった鋼製プレートであり、
前記定着ブロック取付工程では、前記PC鋼材孔に前記PC鋼材を挿通して前記鋼製プレートを取り付けるだけで前記新設支承の上沓の設置が完了すること
を特徴とする請求項3又は4に記載の既設コンクリート桁の支承取替工法。
【請求項6】
前記新設支承のアンカーの設置が完了した後、仮支承で前記既設コンクリート桁を支承し、その後、前記既設支承を前記新設支承に取り替える新設支承取替工程を行うこと
を特徴とする請求項4又は5に記載の既設コンクリート桁の支承取替工法。
【請求項7】
新設支承取替工程では、前記定着ブロックに取り付けられた仮支承で前記既設コンクリート桁を支承すること
を特徴とする請求項6に記載の既設コンクリート桁の支承取替工法。
【請求項8】
前記アンカー孔穿孔工程では、前記既設支承で前記既設コンクリート桁を支承しつつ、前記既設支承の脇の橋梁の上部構造及び前記下部構造のいずれにも前記新設支承の上沓のアンカーを挿置するためのアンカー孔を穿孔すること
を特徴とする請求項1に記載の既設コンクリート桁の支承取替工法。
【請求項9】
前記アンカー孔穿孔工程では、エルボー管を有するウォータージェット装置を用いてエルボー管の先に管を継ぎ足しながら穿孔して行くこと
を特徴とする請求項8に記載の既設コンクリート桁の支承取替工法。
【請求項10】
前記アンカー孔穿孔工程で穿孔したアンカー孔に新設支承の支承アンカーのアンカーボルトを継ぎ足しながら設置する支承アンカー設置工程を有すること
を特徴とする請求項8又は9に記載の既設コンクリート桁の支承取替工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設コンクリート桁の支承取替工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
橋梁は、一般的に、橋台や橋脚などの鉄筋コンクリート製の下部構造の上に、支承を介して、橋桁などの上部構造が設置されている。近年、支承の耐用年数を超えてしまい、BP沓(ベアリングプレート沓)などのメタル沓が錆び付いて機能不全に陥っている橋梁が増加している。このため、錆び付いたメタル沓等を現行の基準を満たしたアンカーボルト付きのゴム支承へ取り替えることが行われている。勿論、メタル沓に限らず、紫外線劣化したゴム沓も同様である。
【0003】
しかし、橋梁が鉄筋コンクリート製の桁の場合、アンカーボルト付きの支承を取り付けるには、ジャッキアップした上、アンカーボルトの定着長さ(アンカーボルト径の10倍)を確保するため、コンクリート桁の下部を大きく斫り取ったり、桁の深くまでコア抜きしたりする必要があった。
【0004】
その場合、既設のコンクリート桁の強度を大きく損なうおそれがある上、空頭制限のある極めて狭隘な空間でジャッキアップした上、振動を伴う斫り作業やコア抜き作業を行わなくてはならず、危険で作業効率が極めて悪いという問題があった。
【0005】
また、既設の支承を撤去する時間、及び新設の支承のアンカーボルトを設置する時間、不安定な仮支承で橋梁の上を通行させなければならず(共用しなければならず)、安全を確保するのに非常に手間が掛かるという問題もあった。
【0006】
その上、上沓のアンカーの周りにコンクリートやモルタルを打設する場合は、型枠で塞いで中が見えない状態で上方へ向けコンクリートを打設するいわゆる逆打ちとなり、ジャンカ等の空洞ができてしまうおそれがあり品質確保が困難であるという問題があった。
【0007】
具体的には、例えば、特許文献1には、橋梁の上部構造をジャッキアップして支承の下沓を撤去し、上部構造の下面を斫りとって上沓のアンカーバーを露出させた上、切断し、複数のコア抜きを行って、アンカーバーの残部と溶接するとともにコアに新設アンカーバーを設置するコンクリート桁の支承取替工法が開示されている(特許文献1の特許請求の範囲の請求項1、明細書の段落[0010]~[0016]、図面の図1図3参照)。
【0008】
しかし、特許文献1に記載のコンクリート桁の支承取替工法では、コンクリートの斫り部分を小さくすることはできるものの、全て無くすことはできず、前記問題が依然解消されていなかった。特に、ジャッキアップした不安定な状態で狭隘な作業空間で天井面に向けコア抜きや斫り等をすることは、安全確保のための措置を厳重に施さなければならず、作業時間が掛かりコストアップの要因となっていた。
【0009】
また、特許文献2には、上下部のそれぞれの中央部に水平力に抵抗する上下柱状部10a,11aと上楊力に抵抗する上下大径部10b,11bが一体に形成された支承部材8と、下部構造側に固定され、水平方向の一端が開口し、下挿入溝を中央部まで形成した下部鋼板5と、上部構造に固定され、水平方向の一端が開口し、上挿入溝を中央部まで形成した上部鋼板7と、支承部材8を上下部挿入溝に沿って挿入した後、上下固定部材を前記上下挿入溝に沿って挿入して上下柱状部10a,11aと上下大径部10b,11bを前記上下固定部材の先端で押し付け、前記上下固定部材を上部鋼板7及び下部鋼板5に固定し支承部材8を固定する橋梁用交換容易支承装置が開示されている(特許文献2の特許請求の範囲の請求項1、明細書の段落[0013]~[0024]、図面の図1図3参照)。
【0010】
特許文献2に記載の橋梁用交換容易支承装置は、頭付きスタッドを用いることでアンカーボルトの長さを短くし、コンクリート桁の斫る部分を従来のものより小さくすることはできるとされている。しかし、狭隘な空間で構造物の下面を斫ったり、コンクリートを逆打ちしたりする必要があるのは変わらず、既設の支承を撤去したり、新設の支承のアンカーボルトを設置したりする間、橋梁の上を通行させなければならないという問題も解決されてはいなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2009-287183号公報
【文献】特開2013-234508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、本発明は、前述した問題に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、取替工事によるコンクリート桁の損傷を極力小さくできるとともに、不安定な仮支承での共用期間を極力短くすることができる既設コンクリート桁の支承取替工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1発明に係る既設コンクリート桁の支承取替工法は、既設コンクリート桁と下部構造との間に介装された既設支承を新設支承に取り替える既設コンクリート桁の支承取替工法であって、前記既設支承で前記既設コンクリート桁を支承しつつ、前記既設支承の橋軸方向と直交する橋幅方向に近接した両脇の前記下部構造に前記新設支承のアンカーを挿置するためのアンカー孔を穿孔するアンカー孔穿孔工程と、を有することを特徴とする。
【0014】
第2発明に係る既設コンクリート桁の支承取替工法は、第1発明において、前記既設支承の近傍の既設コンクリート桁の脇に前記新設支承の上沓のアンカーを定着させる定着ブロックを取り付ける定着ブロック取付工程を有することを特徴とする。
【0015】
第3発明に係る既設コンクリート桁の支承取替工法は、第2発明において、前記定着ブロック取付工程の前に、前記定着ブロックを止め付ける横締めPC鋼材を挿通するPC鋼材孔を、前記既設コンクリート桁に削孔するPC鋼材孔削孔工程を行うことを特徴とする。
【0016】
第4発明に係る既設コンクリート桁の支承取替工法は、第2発明又は第3発明において、前記新設支承の設置が完了し、前記新設支承で既設コンクリート桁を支承した後、前記既設支承を撤去する既設支承撤去工程を行うことを特徴とする。
【0017】
第5発明に係る既設コンクリート桁の支承取替工法は、第3発明又は第4発明において、前記定着ブロックは、前記新設支承の上沓及びそのアンカーが一体となった鋼製プレートであり、前記定着ブロック取付工程では、前記PC鋼材孔に前記PC鋼材を挿通して前記鋼製プレートを取り付けるだけで前記新設支承の上沓の設置が完了することを特徴とする。
【0018】
第6発明に係る既設コンクリート桁の支承取替工法は、第4発明又は第5発明において、前記新設支承のアンカーの設置が完了した後、仮支承で前記既設コンクリート桁を支承し、その後、前記既設支承を前記新設支承に取り替える新設支承取替工程を行うことを特徴とする。
【0019】
第7発明に係る既設コンクリート桁の支承取替工法は、第6発明において、新設支承取替工程では、前記定着ブロックに取り付けられた仮支承で前記既設コンクリート桁を支承することを特徴とする。
【0020】
第8発明に係る既設コンクリート桁の支承取替工法は、第1発明において、前記アンカー孔穿孔工程では、前記既設支承で前記既設コンクリート桁を支承しつつ、前記既設支承の脇の橋梁の上部構造及び前記下部構造のいずれにも前記新設支承の上沓のアンカーを挿置するためのアンカー孔を穿孔することを特徴とする。
【0021】
第9発明に係る既設コンクリート桁の支承取替工法は、第8発明において、前記アンカー孔穿孔工程では、エルボー管を有するウォータージェット装置を用いてエルボー管の先に管を継ぎ足しながら穿孔して行くことを特徴とする。
【0022】
第10発明に係る既設コンクリート桁の支承取替工法は、第8発明又は第9発明において、前記アンカー孔穿孔工程で穿孔したアンカー孔に新設支承の支承アンカーのアンカーボルトを継ぎ足しながら設置する支承アンカー設置工程を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
第1発明~第10発明によれば、桁下を斫る必要もないため、取替工事によるコンクリート桁の損傷を極力小さくすることができる。その上、既設支承で既設コンクリート桁を支承しつつ、新設支承のアンカー孔を削孔するので、不安定な仮支承での共用期間を極力短くすることができる。
【0026】
第2発明~第7発明によれば、既設コンクリート桁の両脇に定着ブロックを取り付け、既設支承で既設コンクリート桁を支承しつつ、下沓のアンカー孔を削孔するので、比較的上方にもスペースのあるコンクリート桁脇で作業を行うこととなり、作業空間を広くとることができる。また、定着ブロックも上からコンクリートを打設可能であるため、コンクリート打設が逆打ちとならず、ジャンカ等の空洞ができてしまうおそれが少ない。また、桁下を斫る必要もないため、取替工事によるコンクリート桁の損傷を極力小さくすることができる。その上、既設支承で既設コンクリート桁を支承しつつ、下沓のアンカー孔を削孔するので、不安定な仮支承での共用期間を極力短くすることができる。
【0027】
特に、第3発明によれば、PC鋼材孔削孔工程を行うので、定着ブロックのコンクリート桁への固定を、強度及び信頼性の高いPC鋼材を用いて短時間で行うことができる。このため、支承取替工事のコストダウンを達成することができる。
【0028】
特に、第4発明によれば、新設支承で既設コンクリート桁を支承した後、既設支承を撤去するので、不安定な仮支承での共用期間がなくなり極めて安全である。このため、安全確保のための作業を低減してさらに支承取替工事のコストダウンを達成することができる。
【0029】
特に、第5発明によれば、定着ブロックが上沓とアンカーが一体となった鋼製プレートであり、PC鋼材孔にPC鋼材を挿通して鋼製プレートを取り付けるだけで上沓の設置が完了するので、支承取替工事の作業工程を削減して極めて短期間で支承取替工事を完了することができる。このため、さらに支承取替工事のコストダウンを達成することができる。
【0030】
特に、第6発明によれば、新設支承のアンカーの設置が完了した後、仮支承で既設コンクリート桁を支承し、その後既設支承を新設支承に取り替えるので、不安定な仮支承での共用期間を極力短くすることができるだけでなく、新設支承を既設支承より橋梁の幅方向に大きくとることも容易となる。このため、新設支承の大きさへの制限が少なくなり、より耐震性の高い支承の設置も可能となる。
【0031】
特に、第7発明によれば、定着ブロックに取り付けられた仮支承で前記既設コンクリート桁を支承するので、新たに仮支承のためのベントを組む必要がなくなり、作業期間やベントの設置費用やリース費用を低減してさらに支承取替工事のコストダウンを達成することができる。
【0032】
特に、第8発明によれば、横桁の下部を斫る必要がなくなり、橋梁の損傷をさらに小さくすることができる。また、第8発明によれば、横桁を復旧する必要もなくなり、支承取替の作業期間を短縮することができる。特に、通行止め等が必要となる不安定な仮支承で既設コンクリート桁を支承している期間が短く、極めて安全である。このため、安全確保のための作業を低減してさらに支承取替工事のコストダウンを達成することができる。
【0033】
特に、第9発明によれば、従来できなかった狭隘な橋梁の上部構造と下部構造との隙間においてアンカー孔を穿孔することが可能となる。このため、支承取替の作業期間をさらに短縮することができる。特に、仮支承で既設コンクリート桁を支承している期間が短く、極めて安全である。
【0034】
特に、第10発明によれば、従来できなかった狭隘な橋梁の上部構造と下部構造との隙間において新設支承の支承アンカーの設置が可能となる。このため、支承取替の作業期間をさらに短縮することができる。特に、仮支承で既設コンクリート桁を支承している期間が短く、極めて安全である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明を適用する橋梁の一例を示す鉛直断面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る既設コンクリート桁の支承取替工法の横桁撤去工程を示す工程説明図である。
図3】同上の支承取替工法のPC鋼材孔削孔工程を示す工程説明図である。
図4】同上の支承取替工法のアンカー孔削孔工程を示す工程説明図である。
図5】同上の支承取替工法の新設支承設置工程を示す工程説明図である。
図6】同上の支承取替工法の定着ブロック取付工程を示す工程説明図である。
図7】同上の支承取替工法の既設支承撤去工程を示す工程説明図である。
図8】同上の支承取替工法の横桁復旧工程を示す工程説明図である。
図9】本発明の第2実施形態に係る既設コンクリート桁の支承取替工法の横桁撤去工程を示す工程説明図である。
図10】同上の支承取替工法のアンカー孔削孔工程を示す工程説明図である。
図11】同上の支承取替工法の定着ブロック取付工程を示す工程説明図である。
図12】同上の支承取替工法の仮支承設置工程を示す工程説明図である。
図13】変形例1に係る仮支承でコンクリート桁を支承した状態を示す説明図である。
図14】変形例2に係る仮支承でコンクリート桁を支承した状態を示す説明図である。
図15】同上の支承取替工法の新設支承取替工程を示す工程説明図である。
図16】同上の支承取替工法の仮支承撤去工程を示す工程説明図である。
図17】同上の支承取替工法の横桁復旧工程を示す工程説明図である。
図18】本発明の第3実施形態に係る既設コンクリート桁の支承取替工法のアンカー孔穿孔工程を示す工程説明図である。
図19図1で示した橋梁の上部構造と下部構造との隙間を主に示す説明図であり、(a)が一般的なウォータージェット装置で穿孔できないことを示す図であり、(b)が同上のアンカー孔穿孔工程で用いるウォータージェット装置を示す説明図である。
図20】同上のアンカー孔穿孔工程の具体的作業手順を示す作業手順説明図であり、(a)~(f)の順番に作業を行う。
図21】同上の支承取替工法の定着ブロック取付工程を示す工程説明図である。
図22】同上の支承取替工法の支承アンカー設置工程を示す工程説明図である。
図23】同上の支承取替工法の仮支承設置工程を示す工程説明図である。
図24】同上の支承取替工法のグラウト注入工程を示す工程説明図である。
図25】同上の支承取替工法の新設支承取替工程を示す工程説明図である。
図26】同上の支承取替工法により支承取替工事が完了した状態を示す説明図である。
図27】本発明の第4実施形態に係る既設コンクリート桁の支承取替工法の仮支承設置工程を示す工程説明図である。
図28】同上の支承取替工法の下部構造上部斫り工程を示す工程説明図である。
図29】同上の支承取替工法の既設支承撤去工程を示す工程説明図である。
図30】同上の支承取替工法のアンカー孔削孔工程を示す工程説明図である。
図31】同上の支承取替工法の定着ブロック取付工程を示す工程説明図である。
図32】同上の支承取替工法の上沓設置工程を示す工程説明図である。
図33】同上の支承取替工法の新設支承設置工程を示す工程説明図である。
図34】同上の支承取替工法のグラウト注入工程及びコンクリート打設工程を示す工程説明図である。
図35】同上の支承取替工法の仮支承撤去工程を示す工程説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明に係る既設コンクリート桁の支承取替工法を実施するための一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0039】
[第1実施形態]
先ず、図1図8を用いて、本発明の第1実施形態に係る既設コンクリート桁の支承取替工法について説明する。先ず、本実施形態に係る支承取替工法によって支承を取り替える橋梁について簡単に説明する。図1は、本発明を適用する橋梁の一例を示す鉛直断面図である。
【0040】
図1に示すように、本実施形態に係る橋梁1は、鉄筋コンクリート製の橋梁であり、橋脚や橋台などの下部構造2の上に、上部構造3がBP沓(ベアリングプレート沓)からなる複数の既設支承4を介して載置されている橋梁である。勿論、既設支承4は、BP沓などのメタル沓だけでなく、ゴム製の支承であっても本発明を適用できることは云うまでもない。なお、一点鎖線は、橋梁1の中央の軸線を示し、左右対称の右半分は省略して示している。
【0041】
図示する上部構造3は、鉄筋コンクリート製の複数のコンクリート桁5と、これらのコンクリート桁5上に設けられた鉄筋コンクリート製のコンクリート床版6と、このコンクリート床版6の縁に沿って立設された鉄筋コンクリート製の高欄7など、から構成されている。また、複数のコンクリート桁5は、橋軸方向に所定間隔をおいて横桁8で一体化されている。そして、コンクリート床版6の上には、アスファルトからなる舗装9が敷設されている。
【0042】
(1)横桁撤去工程
図2は、本発明の第1実施形態に係る既設コンクリート桁の支承取替工法の横桁撤去工程を示す工程説明図である。図2に示すように、本実施形態に係る支承取替工法では、先ず、横桁8の支承取替工事において支障のある部分である撤去部8aを斫り取って撤去する横桁撤去工程を行う。
【0043】
本工程を行う理由は、一般的な橋梁では、既設支承4が配設されている箇所でコンクリート桁5が横桁8で一体化されているからである。勿論、既設支承4の周りに横桁8が無く、支承取替工事において支障が無い場合は本工程を行わなくても良いことは云うまでもない。
【0044】
具体的には、本工程では、コンクリートブレーカやエアーピックハンマーなどの重機、空圧工具又は電動工具などの斫り機を用いて図2の破線の斜線部で示す矩形の撤去部8aを斫り取る。撤去部8aは、後述の定着ブロック10(図7参照)のコンクリート打設に支障のないように、定着ブロック10の型枠よりコンクリート圧送用のホースを差し込んで少し余裕のある程度の高さに設定するとよい。
【0045】
(2)PC鋼材孔削孔工程
図3は、第1実施形態に係る既設コンクリート桁の支承取替工法のPC鋼材孔削孔工程を示す工程説明図である。次に、本実施形態に係る支承取替工法では、図3に示すように、定着ブロック10を止め付ける横締めPC鋼材11を挿通するPC鋼材孔50を削孔するPC鋼材孔削孔工程を行う。
【0046】
具体的には、本工程では、ダイアモンドコアドリルなどの電動コア抜き機等でコンクリート桁5に、定着ブロック10の大きさに応じた所定間隔の複数本のPC鋼材孔50を削孔する。PC鋼材孔50の径は、挿通する横締めPC鋼材11の径に応じて適宜定める。
【0047】
(3)アンカー孔削孔工程(アンカー孔穿孔工程)
図4は、第1実施形態に係る既設コンクリート桁の支承取替工法のアンカー孔削孔工程を示す工程説明図である。次に、本実施形態に係る支承取替工法では、図4に示すように、既設支承4の脇に、後述の新設支承Sの下アンカーA1(図5参照)を挿置するためのアンカー孔20を削孔するアンカー孔削孔工程を行う。
【0048】
具体的には、本工程では、前工程と同様に、ダイアモンドコアドリルなどの電動コア抜き機等で下部構造2に、下アンカーA1の本数に応じた複数本のアンカー孔20を削孔する。なお、本工程と前工程は、同時期に連続して行っても良いし、いずれか一方の工程を先におこなってもよい。
【0049】
図4から明らかなように、本実施形態に係る支承取替工法では、アンカー孔の削孔を、従来の支承取替工法のように、既設支承4を撤去したコンクリート桁5の直下の狭隘なスペースで行う必要がない。よって、特許文献2に記載のように、ウォータージェット等の特殊な機械で削孔する必要がなく、通常の電動コア抜き機等で削孔することができる。このため、複数のアンカー孔20を同時に削孔することも容易であり、アンカー孔の削孔の作業時間を短縮して支承取替工事のコストダウンを達成することができる。
【0050】
(4)新設支承設置工程
図5は、第1実施形態に係る既設コンクリート桁の支承取替工法の新設支承設置工程を示す工程説明図である。次に、本実施形態に係る支承取替工法では、図5に示すように、前工程で削孔したアンカー孔20に下アンカーA1を挿入して左右一対の新設支承Sを設置する新設支承設置工程を行う。
【0051】
取り替える新設支承Sとしては、種々の支承を適用することが可能であるが、本実施形態では、図5に示すように、下沓であるベースプレートS1と上沓であるソールプレートS2との間に免振ゴムGが介装されたゴム支承を例示している。また、ベースプレートS1には、下部構造2に定着させるための下アンカーA1が下方へ向け突設され、ソールプレートS2には、上部構造3(コンクリート桁5)に定着させるための上アンカーA2が上方へ向け突設されている。
【0052】
具体的には、本工程では、新設支承Sを所定の位置に固定した上、前工程で削孔したアンカー孔20に無収縮モルタルや接着樹脂等の充填材で充填し、充填材が硬化することで下部構造2に新設支承Sを立設する。
【0053】
(5)定着ブロック取付工程
図6は、第1実施形態に係る既設コンクリート桁の支承取替工法の定着ブロック取付工程を示す工程説明図である。次に、本実施形態に係る支承取替工法では、図6に示すように、既設支承4の近傍の既設コンクリート桁5の両脇に定着ブロック10を取り付ける定着ブロック取付工程を行う。本実施形態に係る定着ブロック10は、鉄筋コンクリート製の直方体状のブロックであり、新設支承Sの上沓の上アンカーA2を定着させる機能を有している。
【0054】
なお、ここで両脇に取り付けるとは、橋梁の橋軸方向と直交する橋幅方向Xにおいて、コンクリート桁5の両側面に近接して設けることを指している。しかし、橋梁1の橋幅方向Xあまりスペースがない場合など、橋梁1の環境に応じてコンクリート桁5の両側面を多少斫り取って定着ブロック10を取り付けることを排除するものではない。要するに、既設支承4に接するまでは、コンクリート桁5の両側面を斫り取って定着ブロック10を取り付けることができる。
【0055】
具体的には、本工程では、定着ブロック10の形状に応じた型枠を作成し、その中に構造設計に応じた所定の鉄筋を配筋して設計強度に応じたコンクリートを打設して定着ブロック10を構築する。そして、定着ブロック10のコンクリート強度が所定強度に発現した後、横締めPC鋼材11をPC鋼材孔50に挿通した上、センターホールジャッキ等のジャッキで締め上げて横締めPC鋼材11にプレストレスを導入し、コンクリート桁5と定着ブロック10を一体化する。
【0056】
このように、定着ブロック10のコンクリート桁5への固定を、強度及び信頼性の高い横締めPC鋼材11を用いて行う。このため、コンクリート桁5と定着ブロック10の一体化を確実に行うことができ、コンクリート構造物同士の継ぎ足しを短期間で行うことができる。よって、支承取替工事のコストダウンを達成することができる。
【0057】
また、本実施形態では、定着ブロック10を現場施工のRC構造物として例示したが、工場等で予め打設して現場に搬入するプレキャストコンクリート構造物とすることもできる。その場合は、新設支承SのソールプレートS2及び上アンカーA2も定着ブロックと一体となるように構築する。定着ブロックをプレキャストコンクリート構造物とすることにより、横締めPC鋼材11をPC鋼材孔50に挿通して締め付け、コンクリート桁5と定着ブロックを一体化するだけで本工程が終了し、さらなる工期短縮を達成することができる。
【0058】
それに加え、定着ブロックは、ソールプレートS2及び上アンカーA2と一体成形された鋼製プレート(図示せず)とすることもできる。定着ブロックを鋼製プレートとすることにより、さらなる省スペース化を図ることができるとともに、プレキャストコンクリート構造物と同様に、さらなる工期短縮を達成することができる。
【0059】
(6)既設支承撤去工程
図7は、第1実施形態に係る既設コンクリート桁の支承取替工法の既設支承撤去工程を示す工程説明図である。次に、本実施形態に係る支承取替工法では、図7に示すように、既設支承4を撤去する既設支承撤去工程を行う。
【0060】
具体的には、本工程では、エアーピックハンマーなどの斫り機を用いて既設支承4を斫り出して撤去する。このとき、本実施形態に係る支承取替工法では、前工程において新設支承Sの設置が完了し、新設支承Sで既設コンクリート桁5を支承した後、本工程を行う。このため、不安定な仮支承での共用期間がなくなり極めて安全である上、安全確保のための作業を低減してさらに支承取替工事のコストダウンを達成することができる。
【0061】
なお、既設支承4を完全に撤去する場合を例示したが、既設支承4のプレートを一枚抜くなどして高さを低くし、新設支承Sの機能を阻害しない形で既設支承4の一部を残置しても構わない。要するに、既設コンクリート桁5を支承する機能が新設支承Sに置き換わっていれば、既設支承4を全て撤去する必要はない。その場合は、残置する既設支承4には、防錆塗料を塗布するなどして防錆処理を施すと好ましい。
【0062】
(7)横桁復旧工程
図8は、第1実施形態に係る既設コンクリート桁の支承取替工法の横桁復旧工程を示す工程説明図である。次に、本実施形態に係る支承取替工法では、図8に示すように、支承取替工事のため横桁撤去工程で撤去した横桁8の撤去部8aを復旧する横桁復旧工程を行う。
【0063】
但し、ここで復旧とは、横桁8の撤去部8aを基の状態に戻すことを指すのではなく、構造設計の応じた横桁とするべく、横桁8の存置部分に不足部分である新設部8’を新たに継ぎ足すことを指している。勿論、構造設計で撤去部8aがなくても構造上問題ないのであれば、本工程を行うは必要ないことは云うまでもない。
【0064】
具体的には、本工程では、横桁撤去工程で斫り出した鉄筋や後施工アンカー等により、横桁8の存置部分と新設する新設部8’の鉄筋とを重ね継手等で接続した上、型枠を組み立ててコンクリートを打設して横桁8の存置部分に不足部分である新設部8’を構築する。
【0065】
以上により、第1実施形態に係る既設コンクリート桁の支承取替工法による支承取替工事が完了する。
【0066】
本実施形態に係る支承取替工法によれば、既設コンクリート桁5の両脇に定着ブロック10を取り付け、既設支承4で既設コンクリート桁5を支承しつつ、アンカー孔20の削孔等の作業をするので、比較的上方にもスペースのあるコンクリート桁5の脇で作業を行うこととなり、作業空間を広くとることができる。
【0067】
また、本実施形態に係る支承取替工法によれば、定着ブロック10も上からコンクリートを打設可能であるため、コンクリート打設が逆打ちとならず、ジャンカ等の空洞ができてしまうおそれが少ない。
【0068】
その上、本実施形態に係る支承取替工法によれば、新設支承Sを取り付けるためにコンクリート桁5の桁下を斫る必要もないため、取替工事によるコンクリート桁5の損傷を極力小さくすることができる。
【0069】
それに加え、本実施形態に係る支承取替工法によれば、新設支承Sで既設コンクリート桁5を支承した後、既設支承4を撤去するので、不安定な仮支承での共用期間がなくなり極めて安全である。このため、安全確保のための作業を低減してさらに支承取替工事のコストダウンを達成することができる。
【0070】
[第2実施形態]
次に、図9図17を用いて、本発明の第2実施形態に係る既設コンクリート桁の支承取替工法について説明する。図1で示した橋梁1に第2実施形態に係る既設コンクリート桁の支承取替工法を適用する場合で説明する。
【0071】
第2実施形態に係る既設コンクリート桁の支承取替工法でも、第1実施形態に係る支承取替工法と同様に、(1)横桁撤去工程と、(2)PC鋼材孔削孔工程を行う。同様に行うため、説明は省略する。
【0072】
(3)アンカー孔削孔工程(アンカー孔穿孔工程)
図9は、第2実施形態に係る既設コンクリート桁の支承取替工法のアンカー孔削孔工程を示す工程説明図である。次に、本実施形態に係る支承取替工法では、図9に示すように、既設支承4の脇に、後述の新設支承S’の下アンカーA1’(図10参照)を挿置するためのアンカー孔20’を削孔するアンカー孔削孔工程を行う。
【0073】
具体的には、本工程でも、前述の第1実施形態に係る支承取替工法のアンカー孔削孔工程と同様に、電動コア抜き機等で下部構造2に、下アンカーA1’の本数に応じた複数本のアンカー孔20’を削孔する。勿論、本工程と前工程も、同時期に連続して行っても良いし、いずれか一方の工程を先におこなってもよい。
【0074】
(4)アンカー設置工程
図10は、第2実施形態に係る既設コンクリート桁の支承取替工法のアンカー孔削孔工程を示す工程説明図である。次に、本実施形態に係る支承取替工法では、図10に示すように、前工程で削孔したアンカー孔20’に新設支承S’の下アンカーA1’を挿入して設置するアンカー設置工程を行う。なお、図10に示すように、この下アンカーA1’には、後述の新設支承S’の下沓であるベースプレートS1’と接合するための接合プレートP1が取り付けられている。
【0075】
本工程では、接合プレートP1が付いた下アンカーA1’を所定の位置に固定した上、前工程で削孔したアンカー孔20’に無収縮モルタルや接着樹脂等の充填材で充填し、充填材が硬化することで下部構造2に下アンカーA1’を設置する。
【0076】
(5)定着ブロック取付工程
図11は、第2実施形態に係る既設コンクリート桁の支承取替工法の定着ブロック取付工程を示す工程説明図である。次に、本実施形態に係る支承取替工法では、図11に示すように、既設支承4の近傍の既設コンクリート桁5の両脇に定着ブロック10’を取り付ける定着ブロック取付工程を行う。本実施形態に係る定着ブロック10’は、鉄筋コンクリート製の直方体状のブロックであり、新設支承S’の上沓の上アンカーA2’を定着させる機能を有している。
【0077】
具体的には、本工程では、定着ブロック10’の形状に応じた型枠を作成し、その中に構造設計に応じた所定の鉄筋を配筋して設計強度に応じたコンクリートを打設して定着ブロック10’を構築する。本工程では、上アンカーA2’も鉄筋と一緒に配設し、定着ブロック10’と一緒にコンクリート内に埋設される。図11に示すように、この上アンカーA2’にも、後述の新設支承S’の上沓であるソールプレートS2’と接合するための接合プレートP2が取り付けられている。この接合プレートP2は、コンクリート桁5の底面と面一に取り付けられる。
【0078】
そして、定着ブロック10’のコンクリート強度が所定強度に発現した後、横締めPC鋼材11’をPC鋼材孔50に挿通した上、センターホールジャッキ等で締め上げて横締めPC鋼材11’にプレストレスを導入し、コンクリート桁5と定着ブロック10’を一体化する。
【0079】
また、本実施形態では、定着ブロック10’を現場施工のRC構造物として例示したが、工場等で予め打設して現場に搬入するプレキャストコンクリート構造物とすることもできる。定着ブロックをプレキャストコンクリート構造物とすることにより、横締めPC鋼材11’をPC鋼材孔50に挿通して締め付け、コンクリート桁5と定着ブロックを一体化するだけで本工程が終了し、さらなる工期短縮を達成することができる。
【0080】
それに加え、定着ブロックは、ソールプレートS2’及び上アンカーA2’と一体成形された鋼製プレートとすることもできる。定着ブロックを鋼製プレートとすることにより、さらなる省スペース化を図ることができるとともに、プレキャストコンクリート構造物と同様に、さらなる工期短縮を達成することができる。
【0081】
(6)仮支承設置工程
図12は、第2実施形態に係る既設コンクリート桁の支承取替工法の仮支承設置工程を示す工程説明図である。次に、本実施形態に係る支承取替工法では、図12に示すように、コンクリート桁5を一時的に支承する仮支承KSを設置する仮支承設置工程を行う。
【0082】
具体的には、本工程では、既設コンクリート桁5に沿った橋軸方向の既設支承4と隣接する位置に、ベントVを組んだ上、コンクリート桁5の下端を支承できるようにローラー支承の仮支承KSを設置する。勿論、仮支承KSの種類は、コンクリート桁5の下端を支承できるものであれば、特に限定されるものではない。
【0083】
次に、この仮支承の変形例について、図13図14を用いて説明する。図13は、仮支承KSの別の実施形態である変形例1に係る仮支承でコンクリート桁5を支承した状態を示す説明図であり、図14は、さらに別の実施形態である変形例2に係る仮支承でコンクリート桁5を支承した状態を示す説明図である。
【0084】
図13に示すように、変形例1に係る仮支承KS’は、定着ブロック10’に横締めPC鋼材11’を用いて固定するタイプのローラー支承の仮支承であり、ベントVを組む必要が無い分、省力化を図って、支承取替工事のコストダウンを達成することができる。
【0085】
図14に示すように、変形例1に係る仮支承KS”は、接合プレートP2及び上アンカーA2’を利用してローラーを定着ブロック10’の下端に装着するタイプの仮支承であり、仮支承KS’と同様にベントVを組む必要が無い分コストダウンを達成することができる。
【0086】
(7)新設支承取替
図15は、第2実施形態に係る既設コンクリート桁の支承取替工法の新設支承取替工程を示す工程説明図である。次に、本実施形態に係る支承取替工法では、図15に示すように、前工程で設置した仮支承KSで既設コンクリート桁5を支承しつつ既設支承4を新設支承S’に取り替える新設支承取替工程を行う。
【0087】
具体的には、本工程では、仮支承KSでコンクリート桁5を支承しつつ、コンクリート桁5から既設支承4を斫り取って撤去し、新設支承S’のベースプレートS1’及びソールプレートS2’を、下アンカーA1’の接合プレートP1及び上アンカーA2’の接合プレートP2にそれぞれ接合する。
【0088】
本工程では、従来の支承取替工法と同様に仮支承KSでコンクリート桁5を支承するものの、これまでの工程により、既に下アンカーA1’や上アンカーA2’が設置されており、新設支承S’への取り替えが短時間に容易に行うことができる。また、コンクリート桁5に振動を与えるような斫り工事やコア抜き工事が極力削減されているため、不安定な仮支承での共用期間が極めて短く安全である。このため、安全確保のための作業を低減してさらに支承取替工事のコストダウンを達成することができる。
【0089】
(8)仮支承撤去工程
図16は、第2実施形態に係る既設コンクリート桁の支承取替工法の仮支承撤去工程を示す工程説明図である。次に、本実施形態に係る支承取替工法では、図16に示すように、仮支承KSを撤去する仮支承撤去工程を行う。
【0090】
(9)横桁復旧工程
図17は、第2実施形態に係る既設コンクリート桁の支承取替工法の横桁復旧工程を示す工程説明図である。次に、本実施形態に係る支承取替工法では、第1実施形態に係る支承取替工法と同様に、図17に示すように、支承取替工事のため横桁撤去工程で撤去した横桁8の撤去部8aを復旧する横桁復旧工程を行う。
【0091】
以上により、第2実施形態に係る既設コンクリート桁の支承取替工法による支承取替工事が完了する。
【0092】
本実施形態に係る支承取替工法によれば、既設コンクリート桁5の両脇に定着ブロック10’を取り付け、既設支承4で既設コンクリート桁5を支承しつつ、アンカー孔20’の削孔等の作業をするので、比較的上方にもスペースのあるコンクリート桁5の脇で作業を行うこととなり、作業空間を広くとることができる。
【0093】
また、本実施形態に係る支承取替工法によれば、定着ブロック10’も上からコンクリートを打設可能であるため、コンクリート打設が逆打ちとならず、ジャンカ等の空洞ができてしまうおそれが少ない。
【0094】
その上、本実施形態に係る支承取替工法によれば、新設支承S’を取り付けるためにコンクリート桁5の桁下を斫る必要もないため、取替工事によるコンクリート桁5の損傷を極力小さくすることができる。
【0095】
それに加え、本実施形態に係る支承取替工法によれば、新設支承S’の下アンカーA1’の設置が完了した後、仮支承KSで既設コンクリート桁5を支承し、その後既設支承4を新設支承S’に取り替えるので、不安定な仮支承KSでの共用期間を極力短くすることができるだけでなく、新設支承S’を既設支承4より橋梁の幅方向に大きくとることも容易となる。このため、新設支承S’の大きさ(横方の幅)への制限が少なくなり、より耐震性の高い支承の設置も可能となる。
【0096】
[第3実施形態]
次に、図18図26を用いて、本発明の第3実施形態に係る既設コンクリート桁の支承取替工法について説明する。図1で示した橋梁1に第3実施形態に係る既設コンクリート桁の支承取替工法を適用する場合で説明する。第3実施形態に係る支承取替工法が、前述の第1実施形態に係る支承取替工法及び第2実施形態に係る支承取替工法と相違する主な点は、(1)横桁撤去工程と、(2)PC鋼材孔削孔工程を行わない点である。
【0097】
(1)アンカー孔穿孔工程
図18は、第3実施形態に係る既設コンクリート桁の支承取替工法のアンカー孔穿孔工程を示す工程説明図である。先ず、本実施形態に係る支承取替工法では、図18に示すように、既設支承4の脇に、前述の新設支承S’の上アンカーA2”及び下アンカーA1”(図22参照)を挿置するためのアンカー孔80及びアンカー孔20”を穿孔するアンカー孔穿孔工程を行う。
【0098】
しかし、図19(a)に示すように、上部構造3(横桁8)と下部構造2との上下間隔は、既設支承4の高さ分(例えば、一般的にはh=200mm程度)しか離間していない狭隘な空間であり、通常のように、直線状の直管ノズルで穿孔することはできない。
【0099】
そこで、本工程では、図19(b)に示すように、エルボー管WJ1を備えたウォータージェット装置WJを用いて既設支承4の脇となる横桁8(上部構造3)及び下部構造2に、上アンカーA2”及び下アンカーA1”の本数に応じた複数本のアンカー孔80及びアンカー孔20を穿孔する。図19は、橋梁1の上部構造3と下部構造2との隙間を主に示す説明図であり、(a)が一般的なウォータージェット装置WJで穿孔できないことを示す図であり、(b)が本実施形態に係る支承取替工法でのアンカー孔穿孔工程で用いるウォータージェット装置WJを示す説明図である。
【0100】
具体的には、本実施形態に係るアンカー孔穿孔工程では、図20に示すように、エルボー管WJ1(曲がり管)の先に長さが短い直管を継ぎ足しながら穿孔して行く。図20は、アンカー孔穿孔工程の具体的作業手順を示す作業手順説明図であり、(a)~(f)の順番に作業を行う。
【0101】
図20(a)に示すように、先ず、ウォータージェット装置WJの吐出管の先端にエルボー管WJ1を取り付け、そのエルボー管WJ1の先端に先端ノズルWJ2を取り付ける。そして、先端ノズルWJ2を上に向けて、既設支承4の脇の横桁8の下に差し入れ、のアンカー孔80をウォータージェット装置WJの水の吐出圧で穿孔して行く。
【0102】
図20(b)に示すように、穿孔したアンカー孔80内において先端ノズルWJ2を上方へ上げて行き、横桁8の下面にエルボー管WJ1が当接するまで、ウォータージェット装置WJの吐出圧で穿孔可能な範囲まで穿孔する。
【0103】
図20(b)に示すように、横桁8の下面にエルボー管WJ1が当接して先端ノズルWJ2をそれ以上の高さに上げることができなくなると、次に、図20(c)に示すように、先端ノズルWJ2を取り外して穿孔したアンカー孔80内に先端ノズルWJ2を仮受材WJ3で仮支持した状態で一旦保持する。
【0104】
その状態で、図20(d)に示すように、両端にねじが形成された短尺な直管である短尺管WJ4を継ぎ足し、穿孔したアンカー孔80内において先端ノズルWJ2を上方へ設置できるようにする。
【0105】
そして、この短尺管WJ4の継ぎ足しにより、ウォータージェット装置WJの吐出圧で穿孔可能な高さが上昇し、図20(e)に示すように、アンカー孔80のさらなる穿孔を継続することができる。
【0106】
このように、仮受材WJ3での仮支持と、短尺管WJ4の継ぎ足しとを交互に繰り返し、図20(f)に示すように、ウォータージェット装置WJの先端ノズルWJ2を上方へ徐々に伸ばしていき、アンカー孔80を所定の深さ(高さ)まで穿孔する。
【0107】
なお、図示しないが、アンカー孔20もアンカー孔80と同様に、ウォータージェット装置WJの先端ノズルWJ2を下方に向けて設置し、ウォータージェット装置WJの先端ノズルWJ2を下方へ徐々に伸ばしていき、アンカー孔20を所定の深さまで穿孔する(図18図19参照)。
【0108】
本工程のように、ウォータージェット装置WJのエルボー管WJ1(曲がり管)の先に短尺管WJ4を継ぎ足しながら穿孔して行くことにより、従来できなかった狭隘な橋梁の上部構造3と下部構造2との隙間においてアンカー孔を穿孔することが可能となる。このため、前述の横桁撤去工程やPC鋼材孔削孔工程、及び横桁復旧工程を行う必要がなくなる。
【0109】
(2)定着ブロック取付工程
図21は、第3実施形態に係る既設コンクリート桁の支承取替工法の定着ブロック取付工程を示す工程説明図である。次に、本実施形態に係る支承取替工法では、図21に示すように、横桁8の無い既設支承4の外側の脇に、定着ブロック10”を取り付ける定着ブロック取付工程を行う。本実施形態に係る定着ブロック10”は、前述の定着ブロック10’と同様の鉄筋コンクリート製の直方体状のブロックであり、前述の新設支承S’の上沓の上アンカーA2’を定着させる機能を有している。
【0110】
具体的には、本工程では、定着ブロック10”の形状に応じた型枠を作成し、その中に構造設計に応じた所定の鉄筋を配筋して設計強度に応じたコンクリートを打設して定着ブロック10”を構築する。本工程では、上アンカーA2’も鉄筋と一緒に配設し、定着ブロック10”と一緒にコンクリート内に埋設される。図21に示すように、この上アンカーA2’にも、後述の新設支承S’の上沓であるソールプレートS2’と接合するための接合プレートP2が取り付けられている。
【0111】
本工程で取り付ける定着ブロック10”が、前述の定着ブロック10,10’と相違する点は、プレストレスでコンクリート桁5や横桁8と定着ブロック10”が一体化されているのではなく、ケミカルアンカー等の一般的なアンカーAでコンクリート桁5や横桁8に定着されている点である。
【0112】
(3)支承アンカー設置工程
図22は、第3実施形態に係る既設コンクリート桁の支承取替工法の支承アンカー設置工程を示す工程説明図である。次に、本実施形態に係る支承取替工法では、図22に示すように、アンカー孔穿孔工程で穿孔したアンカー孔80及びアンカー孔20”に、支承アンカーである上アンカーA2”及び下アンカーA1”を設置する支承アンカー設置工程を行う。
【0113】
しかし、前述のように、横桁8と下部構造2との間隔が狭いため、新設支承S’の上アンカーA2”及び下アンカーA1”も通常のように、単純にアンカー孔80及びアンカー孔20”に上アンカーA2”及び下アンカーA1”を差し込むことはできない。
【0114】
そこで、本実施形態に係る支承アンカー設置工程では、前工程と同様に、アンカーボルト自体も継ぎ足しながら設置する。上アンカーA2”及び下アンカーA1”は、アンカーボルトにねじが形成されており、ナットを介してアンカーボルトを次々に螺着して継ぎ足し、延長可能に構成されている(図22の拡大図参照)。
【0115】
また、上アンカーA2”は、前述の新設支承S’のソールプレートS2’と接合するための接合プレートP2をホールインアンカー等のあと施工アンカーA’で横桁8の下面に止め付けて落下しないように設置する(図22の拡大図参照)。
【0116】
本工程のように、新設支承S’の上アンカーA2”及び下アンカーA1”のアンカーボルトを継ぎ足しながら設置するので、従来できなかった狭隘な橋梁の上部構造3と下部構造2との隙間において新設支承の支承アンカーの設置が可能となる。
【0117】
(4)仮支承設置工程
図23は、第3実施形態に係る既設コンクリート桁の支承取替工法の仮支承設置工程を示す工程説明図である。次に、本実施形態に係る支承取替工法では、図23に示すように、コンクリート桁5を一時的に支承する仮支承KSを設置する仮支承設置工程を行う。
【0118】
具体的には、本工程では、第2実施形態に係る支承取替工法の仮支承設置工程と同様に、既設コンクリート桁5に沿った橋軸方向の既設支承4と隣接する位置に、ベントVを組んだ上、コンクリート桁5の下端を支承できるようにローラー支承の仮支承KSを設置する。
【0119】
(5)グラウト注入工程
図24は、大3実施形態に係る支承取替工法のグラウト注入工程を示す工程説明図である。次に、本実施形態に係る支承取替工法では、図24に示すように、支承アンカー設置工程で上アンカーA2”及び下アンカーA1”が設置された状態で、アンカー孔80及びアンカー孔20にグラウトG’を注入して固定するグラウト注入工程を行う。
【0120】
具体的には、本工程では、横桁8の側面や下部構造2の側面などのコンクリート構造物の表面からアンカー孔穿孔工程で穿孔したアンカー孔80及びアンカー孔20に向け、削孔機等でグラウト注入用の孔を削孔する。なお、削孔前には、X線等で鉄筋などの内部補強の位置を把握し、これらを損傷しないように削孔する。
【0121】
そして、無収縮グラウトなどの小径の孔に注入可能な流動性経時硬化材であるグラウトG’を注入して横桁8及び下部構造2と上アンカーA2”及び下アンカーA1”を一体化させる。
【0122】
(6)新設支承取替工程
図25は、第3実施形態に係る既設コンクリート桁の支承取替工法の新設支承取替工程を示す工程説明図である。次に、本実施形態に係る支承取替工法では、図25に示すように、仮支承設置工程で設置した仮支承KSで既設コンクリート桁5を支承しつつ既設支承4を新設支承S’に取り替える新設支承取替工程を行う。
【0123】
具体的には、本工程では、第2実施形態に係る支承取替工法の新設支承取替工程と同様に、前述の仮支承KSでコンクリート桁5を支承しつつ、コンクリート桁5から既設支承4を斫り取って撤去する。その後、新設支承S’のベースプレートS1’及びソールプレートS2’を、下アンカーA1”の接合プレートP1及び上アンカーA2”の接合プレートP2にそれぞれ接合して新設支承S’を設置する。
【0124】
本工程では、従来の支承取替工法と同様に仮支承KSでコンクリート桁5を支承するものの、既に下アンカーA1’や上アンカーA2’が設置されており、新設支承S’への取り替えが短時間に容易に行うことができる。また、コンクリート桁5に振動を与えるような斫り工事やコア抜き工事が極力削減されているため、不安定な仮支承での共用期間が極めて短く安全である。このため、安全確保のための作業を低減してさらに支承取替工事のコストダウンを達成することができる。
【0125】
(7)仮支承撤去工程
次に、本実施形態に係る支承取替工法では、第2実施形態に係る支承取替工法の仮支承撤去工程と同様に、仮支承KSを撤去する仮支承撤去工程を行う(図示せず)。
【0126】
図26は、第3実施形態に係る既設コンクリート桁の支承取替工法により支承取替工事が完了した状態を示す説明図である。以上により、図26に示すように、第3実施形態に係る既設コンクリート桁の支承取替工法による支承取替工事が完了する。
【0127】
なお、第3実施形態に係る既設コンクリート桁の支承取替工法として、既設支承4を新設支承S’に取り替える場合を例示して説明したが、第1実施形態に係る支承取替工法で説明した新設支承Sに取り替えても構わない。勿論、前述のように、既設支承4の一部を残置しても構わない。
【0128】
本実施形態に係る支承取替工法によれば、前述の作用効果に加え、横桁8などの上部構造3の下部を斫ったり、新設支承S’を取り付けるためにコンクリート桁5の桁下を斫ったりする必要もないため、既存の構造物に与える損傷を最小限にすることができる。
【0129】
また、本実施形態に係る支承取替工法によれば、継ぎ足しながら設置するため、アンカー孔穿孔工程や支承アンカー設置工程に多少作業期間を要するものの、第1及び第2実施形態に係る支承取替工法のように、横桁撤去工程、PC鋼材孔削孔工程、横桁復旧工程を行う必要がない。このため、トータル的には、支承取替の作業期間を短縮することができる。特に、通行止め等が必要となる不安定な仮支承で既設コンクリート桁5を支承している期間が短く、極めて安全である。このため、安全確保のための作業を低減してさらに支承取替工事のコストダウンを達成することができる。
【0130】
[第4実施形態]
次に、図27図35を用いて、本発明の第4実施形態に係る既設コンクリート桁の支承取替工法について説明する。図1で示した橋梁1に第4実施形態に係る既設コンクリート桁の支承取替工法を適用する場合で説明する。第4実施形態に係る支承取替工法は、前述の第3実施形態に係る支承取替工法と同様に、第1実施形態及び第2実施形態に係る支承取替工法の(1)横桁撤去工程と、(2)PC鋼材孔削孔工程は行わない。
【0131】
(1)仮支承設置工程
図27は、第4実施形態に係る既設コンクリート桁の支承取替工法の仮支承設置工程を示す工程説明図である。先ず、本実施形態に係る支承取替工法では、図27に示すように、コンクリート桁5を一時的に支承する仮支承KSを設置する仮支承設置工程を行う。
【0132】
具体的には、本工程では、第3実施形態に係る支承取替工法の仮支承設置工程と同様に、既設コンクリート桁5に沿った橋軸方向の既設支承4と隣接する位置に、ベントVを組んだ上、コンクリート桁5の下端を支承できるようにローラー支承の仮支承KSを設置する。
【0133】
(2)下部構造上部斫り工程
図28は、第4実施形態に係る既設コンクリート桁の支承取替工法の下部構造上部斫り工程を示す工程説明図である。次に、本実施形態に係る支承取替工法では、図28に示すように、下部構造2の上部2a部分を斫り取って撤去する下部構造上部斫り工程を行う。
【0134】
本工程では、コンクリートブレーカやエアーピックハンマーなどの重機、空圧工具又は電動工具などの斫り機を用いて図28の破線で示す矩形の上部2aを斫り取って撤去する。このとき、既設支承4の下沓及びそのアンカーも一緒に撤去する。
【0135】
斫り取る上部2aの高さは、既設支承4の下沓のアンカーの長さ、及び新設支承S’の下アンカーA1’を考慮し、既設支承4の下沓を撤去でき、新設支承S’を設置できる高さを求めて決定する。また、下部構造2の鉄筋をどの程度残すか否かも、斫り取る上部2aの高さや状況に応じて適宜定めるとよい。
【0136】
なお、本工程では、上方から下方に向けて斫り取って撤去するので、前述の横桁8等を斫り取るよりは容易に斫り取ることができる。
【0137】
(3)既設支承撤去工程
次に、本実施形態に係る支承取替工法では、図29に示すように、既設支承4を撤去する既設支承撤去工程を行う。
【0138】
具体的には、本工程では、溶断用の切断器や切断砥石等を用いてアンカー部分を切断し、既設支承4の上沓を撤去する。このとき、本実施形態に係る支承取替工法では、仮支承KSで支承しているものの、既設支承4の上沓のアンカーは、既設コンクリート桁5に存置したままでよいため、既設支承4の上沓の撤去が極めて容易である。また、振動を伴う斫り作業やコア抜き作業などの危険な作業がないため、仮支承KSで支承していても安全である。また、作業効率が極めて悪い、高さ方向にスペースのない狭隘な空間でコアドリルや斫り機で下から上方に向け削孔したり斫ったりする作業がないため作業効率もよい。
【0139】
(4)アンカー孔削孔工程
図30は、第4実施形態に係る既設コンクリート桁の支承取替工法のアンカー孔削孔工程を示す工程説明図である。次に、本実施形態に係る支承取替工法では、図30に示すように、既設支承4の脇に、前述の新設支承S’の上アンカーA2’(図32参照)を挿置するためのアンカー孔80を穿孔するアンカー孔穿孔工程を行う。
【0140】
具体的には、本工程でも、電動コア抜き機等で横桁8に新設支承S’の上アンカーA2’の本数に応じた複数本のアンカー孔80を削孔する。勿論、ウォータージェット装置を用いて穿孔してもよい。但し、第3実施形態に係る既設コンクリート桁の支承取替工法と相違して、下部構造上部斫り工程で下部構造2の上部2aを斫り取っているため、高さ方向に若干のスペースがあり、前述のエルボー管WJ1等を継ぎ足して穿孔する必要はない。
【0141】
さらに、本工程では、横桁8の側面から穿孔したアンカー孔80に向け、削孔機等でグラウト注入用の孔も併せて削孔する。また、削孔前には、X線等で鉄筋などの内部補強の位置を把握し、これらを損傷しないように削孔する。勿論、グラウト注入用の孔は、後工程であるグラウト注入工程前に削孔すればよいことは云うまでもない。
【0142】
(5)定着ブロック取付工程
図31は、第4実施形態に係る既設コンクリート桁の支承取替工法の定着ブロック取付工程を示す工程説明図である。次に、本実施形態に係る支承取替工法では、図31に示すように、第3実施形態に係る既設コンクリート桁の支承取替工法と同様に、横桁8の無い既設支承4の外側の脇に、定着ブロック10”を取り付ける定着ブロック取付工程を行う。定着ブロック10”は、前述の定着ブロック10”と同様であるため、説明を省略する。
【0143】
(6)上沓設置工程
図32は、第4実施形態に係る既設コンクリート桁の支承取替工法の上沓設置工程を示す工程説明図である。次に、本実施形態に係る支承取替工法では、図32に示すように、前工程で削孔したアンカー孔80に新設支承S’の上アンカーA2’を挿入し、新設支承S’の上沓である前述のソールプレートS2’を設置する上沓設置工程を行う。但し、定着ブロック10”には、上アンカーA2’は埋設してある。
【0144】
(7)新設支承設置工程
図33は、第4実施形態に係る既設コンクリート桁の支承取替工法の新設支承設置工程を示す工程説明図である。次に、本実施形態に係る支承取替工法では、図33に示すように、前工程で設置したソールプレートS2’にベースプレートS1’及び下アンカーA1’などの下沓部分を接合して新設支承S’を設置する新設支承取替工程を行う。
【0145】
なお、本工程では、ベースプレートS1’や下アンカーA1’を上部2a部分を斫り取った下部構造2’の上方の所定の位置に設置する必要があるため、パイプや鋼材等の仮設材を用いて、新設支承S’の仮受けを組み立てて設置する必要がある。
【0146】
(8)グラウト注入工程及びコンクリート打設工程
図34は、第4実施形態に係る既設コンクリート桁の支承取替工法のグラウト注入工程及びコンクリート打設工程を示す工程説明図である。次に、本実施形態に係る支承取替工法では、図34に示すように、アンカー孔80に無収縮グラウトなどのグラウトG’を注入して固定するグラウト注入工程を行うとともに、斫り取った下部構造2の上部2aにコンクリートを打設するコンクリート打設工程を行う。グラウト注入工程は、第3実施形態に係る既設コンクリート桁の支承取替工法と同様であるため説明を省略する。
【0147】
コンクリート打設工程では、斫り取った上部2aを復旧させるために、型枠を組み、必要な配筋をした上、コンクリートの打設を行う。
【0148】
(9)仮支承撤去工程
図35は、第4実施形態に係る既設コンクリート桁の支承取替工法の仮支承撤去工程を示す工程説明図である。次に、本実施形態に係る支承取替工法では、図35に示すように前工程で打設したコンクリートや注入したグラウトが所定の強度を発現した後、前述の第2実施形態及び第3実施形態に係る支承取替工法の仮支承撤去工程と同様に、仮支承KSを撤去する仮支承撤去工程を行う。
【0149】
以上により、第4実施形態に係る既設コンクリート桁の支承取替工法による支承取替工事が完了する。
【0150】
本実施形態に係る支承取替工法によれば、前述の作用効果に加え、下部構造2の上部2aは斫るものの、第3実施形態に係る既設コンクリート桁の支承取替工法と同様に、橋梁の耐久性に特に影響のある上部構造であるコンクリート桁5の桁下や横桁8を斫る必要がないため、既存の構造物に与える損傷を最小限にすることができる。
【0151】
また、本実施形態に係る支承取替工法によれば、第3実施形態に係る既設コンクリート桁の支承取替工法と比べて、エルボー管等を継ぎ足しながら穿孔する必要がないため、短時間でアンカー孔削孔工程を終了することができる。このため、支承取替の作業期間を短縮することができる。その上、下部構造2の上部2aを斫ることで、高さ方向に作業スペースが生まれるため、その後の作業効率が向上し、さらなる作業時間の短縮を達成することができる。
【0152】
それに加え、本実施形態に係る支承取替工法によれば、仮支承で支持している期間はあるものの、振動を伴う斫り作業やコア抜き作業などの危険な作業がないため、仮支承KSで支承していても安全である。
【0153】
さらに、本実施形態に係る支承取替工法によれば、下部構造2の上部2aを斫って新設支承に取り替えるので、新設支承と既設支承の高さが違う場合であっても取替が可能である。このため、新設支承の選択肢が増えるため、設計の自由度が高まるとともに、安価で高性能で耐久性の高い新設支承とすることもできる。
【0154】
以上、本発明の実施形態に係る既設コンクリート桁の支承取替工法について詳細に説明したが、前述した又は図示した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたって具体化した一実施形態を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。特に、既設支承を新設支承に取り替えるとは、即ち、支承取替とは、機能的に新しい支承に取り替えることを指し、既設支承の一部を残置することを排除するものではない。
【符号の説明】
【0155】
1:橋梁
2:下部構造
2a:上部
20,20’,20”:アンカー孔
3:上部構造
4:既設支承
5:(既設)コンクリート桁(上部構造)
50:PC鋼材孔
6:コンクリート床版(上部構造)
7:高欄
8:横桁(上部構造)
8a:撤去部
8’:新設部
80:アンカー孔
9:舗装
10,10’,10”:定着ブロック
11,11:横締めPC鋼材
S,S’:新設支承
S1,S1’:ベースプレート
S2,S2’:ソールプレート
A1,A1’,A1”:下アンカー(アンカー)
A2,A2’,A2”:上アンカー(アンカー)
P1,P2:接合プレート
G:免振ゴム(ゴム)
G’:グラウト
KS、KS’:仮支承
V:ベント
WJ:ウォータージェット装置
WJ1:エルボー管
WJ2:先端ノズル
WJ3:仮受材
WJ4:短尺管(直管)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35