(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-17
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】空調システム、建物及び空調方法
(51)【国際特許分類】
F24F 5/00 20060101AFI20220128BHJP
F24F 3/044 20060101ALI20220128BHJP
F24F 11/74 20180101ALI20220128BHJP
E04B 1/76 20060101ALI20220128BHJP
F24F 120/12 20180101ALN20220128BHJP
【FI】
F24F5/00 K
F24F3/044
F24F11/74
E04B1/76 200Z
F24F120:12
(21)【出願番号】P 2017230533
(22)【出願日】2017-11-30
【審査請求日】2020-10-15
(73)【特許権者】
【識別番号】303046244
【氏名又は名称】旭化成ホームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【氏名又は名称】小松 靖之
(72)【発明者】
【氏名】村松 朋哉
【審査官】安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-077693(JP,A)
【文献】特開平11-014178(JP,A)
【文献】特開2017-026270(JP,A)
【文献】特開2019-045057(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 5/00
F24F 3/044
F24F 11/00 - 11/89
E04B 1/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの床部を挟んで鉛直方向の上下に位置する下階空間及び上階空間と、前記下階空間及び前記上階空間と水平方向で連続すると共に、前記下階空間の階層から前記上階空間の階層に亘って延在している2つの連通路と、を備える建物、の空調システムであって、
前記下階空間の階層において、平面視で、前記下階空間、又は、前記2つの連通路、の位置に設置されている第1空調機と、
前記上階空間の階層において、平面視で、前記上階空間、又は、前記2つの連通路、の位置に設置されている第2空調機と、を備え
、
前記2つの連通路の一方の連通路である第1連通路を区画する第1区画壁面は、前記下階空間及び前記上階空間と対向して配置される第1対向壁面を備え、
前記2つの連通路の他方の連通路である第2連通路を区画する第2区画壁面は、前記下階空間及び前記上階空間と対向して配置される第2対向壁面を備え、
前記第1空調機は、前記第1対向壁面及び前記第2対向壁面の一方の対向壁面に沿って、前記上階空間の階層に風を供給可能であり、
前記第2空調機は、前記第1対向壁面及び前記第2対向壁面の他方の対向壁面に沿って、前記下階空間の階層に風を供給可能であり、
前記第1空調機は、平面視で前記第1連通路の位置に設けられ、前記第2連通路に向かって吹き出し口が向けられており、
前記第2空調機は、平面視で前記第2連通路の位置に設けられ、前記第1連通路に向かって吹き出し口が向けられている、空調システム。
【請求項2】
前記第1連通路及び前記第2連通路は、平面視で前記下階空間及び前記上階空間を挟む位置に配置されており、
前記第1対向壁面及び前記第2対向壁面は、対向して配置されている、請求項
1に記載の空調システム。
【請求項3】
前記第1空調機は、前記第2対向壁面に沿って、前記下階空間の階層から前記上階空間の階層に風を供給し、
前記第2空調機は、前記第1対向壁面に沿って、前記上階空間の階層から前記下階空間の階層に風を供給する、請求項
1又は2に記載の空調システム。
【請求項4】
前記第2区画壁面は、平面視で、前記第2対向壁面の延在方向において前記第2対向壁面の両側に位置し、前記下階空間及び前記上階空間に向かって延在する2つの側壁面を備え、
前記第1空調機は、前記2つの側壁面の一方に沿って風を送り出し、前記第2対向壁面、前記2つの側壁面の他方、の順に沿うように風を送り出した後、前記第1対向壁面に沿って、前記下階空間の階層から前記上階空間の階層に、風を供給可能である、請求項
1乃至
3のいずれか1つに記載の空調システム。
【請求項5】
前記2つの側壁面を、2つの第2側壁面とした場合、
前記第1区画壁面は、平面視で、前記第1対向壁面の延在方向において前記第1対向壁面の両側に位置し、前記下階空間及び前記上階空間に向かって延在する2つの第1側壁面を備え、
前記第2空調機は、前記2つの第1側壁面の一方に沿って風を送り出し、前記第1対向壁面、前記2つの第1側壁面の他方、の順に沿うように風を送り出した後、前記第2対向壁面に沿って、前記上階空間の階層から前記下階空間の階層に、風を供給可能である、請求項
4に記載の空調システム。
【請求項6】
前記2つの第1側壁面の少なくとも1つは、前記下階空間を区画する下階区画壁面、及び、前記上階空間を区画する上階区画壁面、の少なくともいずれか一方の壁面と連続しており、
前記少なくともいずれか一方の壁面は、前記2つの第2側壁面の少なくとも1つと連続している、請求項
5の記載の空調システム。
【請求項7】
前記第1空調機及び前記第2空調機の風量を制御する制御装置を備え、
前記制御装置は、前記第1空調機の風量と前記第2空調機の風量との大小関係を、冷房時と暖房時とで変更する、請求項1乃至
6のいずれか1つに記載の空調システム。
【請求項8】
前記制御装置は、冷房時において、前記第2空調機の風量を、前記第1空調機の風量よりも小さくする、請求項
7に記載の空調システム。
【請求項9】
前記制御装置は、暖房時において、前記第1空調機の風量を、前記第2空調機の風量よりも小さくする、請求項
7又は
8に記載の空調システム。
【請求項10】
前記第1空調機及び前記第2空調機の風量を制御する制御装置と、
前記下階空間の階層に設けられた下階人感センサと、
前記上階空間の階層に設けられた上階人感センサと、を備え、
前記制御装置は、前記下階人感センサ及び前記上階人感センサの検出結果に基づき、前記第1空調機及び前記第2空調機の風量を制御する、請求項1乃至
6のいずれか1つに記載の空調システム。
【請求項11】
前記下階人感センサ及び前記上階人感センサの一方の人感センサが人を検出し、かつ、他方の人感センサが人を検出していない場合、前記制御装置は、前記第1空調機及び前記第2空調機のうち、前記一方の人感センサが配置されている階層に設けられている空調機の風量を、前記他方の人感センサが配置されている階層に設けられている空調機の風量よりも小さくする、請求項
10に記載の空調システム。
【請求項12】
前記制御装置は、前記第1空調機の風量及び前記第2空調機の風量の総和を所定値以上に維持するように、前記第1空調機の風量及び前記第2空調機の風量を制御する、請求項
7乃至
11のいずれか1つに記載の空調システム。
【請求項13】
請求項1乃至
12のいずれか1つに記載の空調システムを備える建物。
【請求項14】
少なくとも1つの床部を挟んで鉛直方向の上下に位置する下階空間及び上階空間と、前記下階空間及び前記上階空間と水平方向で連続すると共に、前記下階空間の階層から前記上階空間の階層に亘って延在している2つの連通路と、を備える建物、
を第1空調機及び第2空調機により空調する、空調方法であって、
前記第1空調機は、前記下階空間の階層において、平面視で、前記下階空間、又は、前記2つの連通路、の位置に設置されて
おり、
前記第2空調機は、前記上階空間の階層において、平面視で、前記上階空間、又は、前記2つの連通路、の位置に設置されており、
前記2つの連通路の一方の連通路である第1連通路を区画する第1区画壁面は、前記下階空間及び前記上階空間と対向して配置される第1対向壁面を備え、
前記2つの連通路の他方の連通路である第2連通路を区画する第2区画壁面は、前記下階空間及び前記上階空間と対向して配置される第2対向壁面を備え、
前記第1空調機は、平面視で前記第1連通路の位置に設けられ、前記第2連通路に向かって吹き出し口が向けられており、
前記第2空調機は、平面視で前記第2連通路の位置に設けられ、前記第1連通路に向かって吹き出し口が向けられており、
前記第1空調機により、前記2つの連通路の一方を通じて、前記下階空間の階層から
、前記第1対向壁面及び前記第2対向壁面の一方の対向壁面に沿って、前記上階空間の階層に風を供給すると共に、
前記第2空調機により、前記2つの連通路の他方を通じて、前記上階空間の階層から
、前記第1対向壁面及び前記第2対向壁面の他方の対向壁面に沿って、前記下階空間の階層に風を供給することにより、前記下階空間の階層と前記上階空間の階層とで空気を循環させる空調方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調システム、建物及び空調方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、建物の各居室に空調機を設置し、各居室で個別に空調する空調システムが知られている。特許文献1には、高気密高断熱住宅における大部屋の天井に設置した室内ユニットで冷房運転を行い、大部屋の最下部に設置した室内ユニットで暖房運転を行うことで、大部屋の室内空気温度を均一にする空気調和装置が開示されている。また、特許文献1に記載の住宅には、循環口を介して大部屋と連通する小部屋があり、大部屋及び小部屋で空気を循環させることで、住宅内全体を空気調和することが記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、建物の内部空間を構成する階段室や吹き抜け自体をダクトとして利用し、これらの階段室、吹き抜け及び各居室の間で空気を循環させ、ダクトを用いることなく全館空調を行うことを目的とした高気密高断熱建物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-14178号公報
【文献】特開平10-77693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の空気調和装置が設けられた住宅では、上下階に亘って延在する大部屋と、上下階それぞれに位置する各小部屋と、が循環口を通じて連通している。そのため、大部屋の温度と上下階それぞれに位置する小部屋の温度とを、循環口を通じた空気の循環により、均一化し得る。また、特許文献2に記載の高気密高断熱建物においても、吹き抜け又は階段室からなる連通路が、各階の居室と連通している。そのため、鉛直方向の上下に位置する各階の居室の温度を、連通路を通じた空気の循環により、均一化し得る。
【0006】
しかしながら、特許文献1において、空調機としての冷房用及び暖房用の室内ユニットの平面視での配置位置は何ら言及されていない。また、特許文献2においても、空調機としての冷房装置及び暖房装置の平面視での配置位置は何ら言及されていない。
【0007】
そこで本発明は、上下階での空気の循環性能を向上可能な位置に配置された空調機を備える空調システム、建物、及び、空調方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様としての空調システムは、少なくとも1つの床部を挟んで鉛直方向の上下に位置する下階空間及び上階空間と、前記下階空間及び前記上階空間と水平方向で連続すると共に、前記下階空間の階層から前記上階空間の階層に亘って延在している2つの連通路と、を備える建物、の空調システムであって、前記下階空間の階層において、平面視で、前記下階空間、又は、前記2つの連通路、の位置に設置されている第1空調機と、前記上階空間の階層において、平面視で、前記上階空間、又は、前記2つの連通路、の位置に設置されている第2空調機と、を備える。
【0009】
本発明の1つの実施形態として、前記2つの連通路の一方の連通路である第1連通路を区画する第1区画壁面は、前記下階空間及び前記上階空間と対向して配置される第1対向壁面を備え、前記2つの連通路の他方の連通路である第2連通路を区画する第2区画壁面は、前記下階空間及び前記上階空間と対向して配置される第2対向壁面を備え、前記第1空調機は、前記第1対向壁面及び前記第2対向壁面の一方の対向壁面に沿って、前記上階空間の階層に風を供給可能であり、前記第2空調機は、前記第1対向壁面及び前記第2対向壁面の他方の対向壁面に沿って、前記下階空間の階層に風を供給可能であることが好ましい。
【0010】
本発明の1つの実施形態として、前記第1連通路及び前記第2連通路は、平面視で前記下階空間及び前記上階空間を挟む位置に配置されており、前記第1対向壁面及び前記第2対向壁面は、対向して配置されていることが好ましい。
【0011】
本発明の1つの実施形態として、前記第1空調機は、平面視で前記第1連通路の位置に設けられ、前記第2連通路に向かって吹き出し口が向けられており、前記第2空調機は、平面視で前記第2連通路の位置に設けられ、前記第1連通路に向かって吹き出し口が向けられていることが好ましい。
【0012】
本発明の1つの実施形態として、前記第1空調機は、前記第2対向壁面に沿って、前記下階空間の階層から前記上階空間の階層に風を供給し、前記第2空調機は、前記第1対向壁面に沿って、前記上階空間の階層から前記下階空間の階層に風を供給することが好ましい。
【0013】
本発明の1つの実施形態として、前記第2区画壁面は、平面視で、前記第2対向壁面の延在方向において前記第2対向壁面の両側に位置し、前記下階空間及び前記上階空間に向かって延在する2つの側壁面を備え、前記第1空調機は、前記2つの側壁面の一方に沿って風を送り出し、前記第2対向壁面、前記2つの側壁面の他方、の順に沿うように風を送り出した後、前記第1対向壁面に沿って、前記下階空間の階層から前記上階空間の階層に、風を供給可能であることが好ましい。
【0014】
本発明の1つの実施形態として、前記2つの側壁面を、2つの第2側壁面とした場合、前記第1区画壁面は、平面視で、前記第1対向壁面の延在方向において前記第1対向壁面の両側に位置し、前記下階空間及び前記上階空間に向かって延在する2つの第1側壁面を備え、前記第2空調機は、前記2つの第1側壁面の一方に沿って風を送り出し、前記第1対向壁面、前記2つの第1側壁面の他方、の順に沿うように風を送り出した後、前記第2対向壁面に沿って、前記上階空間の階層から前記下階空間の階層に、風を供給可能であることが好ましい。
【0015】
本発明の1つの実施形態として、前記2つの第1側壁面の少なくとも1つは、前記下階空間を区画する下階区画壁面、及び、前記上階空間を区画する上階区画壁面、の少なくともいずれか一方の壁面と連続しており、前記少なくともいずれか一方の壁面は、前記2つの第2側壁面の少なくとも1つと連続していることが好ましい。
【0016】
本発明の1つの実施形態としての空調システムは、前記第1空調機及び前記第2空調機の風量を制御する制御装置を備え、前記制御装置は、前記第1空調機の風量と前記第2空調機の風量との大小関係を、冷房時と暖房時とで変更することが好ましい。
【0017】
本発明の1つの実施形態として、前記制御装置は、冷房時において、前記第2空調機の風量を、前記第1空調機の風量よりも小さくすることが好ましい。
【0018】
本発明の1つの実施形態として、前記制御装置は、暖房時において、前記第1空調機の風量を、前記第2空調機の風量よりも小さくすることが好ましい。
【0019】
本発明の1つの実施形態としての空調システムは、前記第1空調機及び前記第2空調機の風量を制御する制御装置と、前記下階空間の階層に設けられた下階人感センサと、前記上階空間の階層に設けられた上階人感センサと、を備え、前記制御装置は、前記下階人感センサ及び前記上階人感センサの検出結果に基づき、前記第1空調機及び前記第2空調機の風量を制御することが好ましい。
【0020】
本発明の1つの実施形態として、前記下階人感センサ及び前記上階人感センサの一方の人感センサが人を検出し、かつ、他方の人感センサが人を検出していない場合、前記制御装置は、前記第1空調機及び前記第2空調機のうち、前記一方の人感センサが配置されている階層に設けられている空調機の風量を、前記他方の人感センサが配置されている階層に設けられている空調機の風量よりも小さくすることが好ましい。
【0021】
本発明の1つの実施形態として、前記制御装置は、前記第1空調機の風量及び前記第2空調機の風量の総和を所定値以上に維持するように、前記第1空調機の風量及び前記第2空調機の風量を制御することが好ましい。
【0022】
本発明の第2の態様としての建物は、上記空調システムを備える。
【0023】
本発明の第3の態様としての空調方法は、少なくとも1つの床部を挟んで鉛直方向の上下に位置する下階空間及び上階空間と、前記下階空間及び前記上階空間と水平方向で連続すると共に、前記下階空間の階層から前記上階空間の階層に亘って延在している2つの連通路と、を備える建物、の空調方法であって、前記下階空間の階層において、平面視で、前記下階空間、又は、前記2つの連通路、の位置に設置されている第1空調機により、前記2つの連通路の一方を通じて、前記下階空間の階層から前記上階空間の階層に風を供給すると共に、前記上階空間の階層において、平面視で、前記上階空間、又は、前記2つの連通路、の位置に設置されている第2空調機により、前記2つの連通路の他方を通じて、前記上階空間の階層から前記下階空間の階層に風を供給することにより、前記下階空間の階層と前記上階空間の階層とで空気を循環させる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、上下階での空気の循環性能を向上可能な位置に配置された空調機を備える空調システム、建物、及び、空調方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施形態としての建物の1階平面図である。
【
図4】
図1及び
図2におけるII-II断面での縦断面図である。
【
図5】
図1~
図4に示す建物において第1空調機及び第2空調機を用いて実行される空気の循環の一例を示す図である。
【
図6】
図1~
図4に示す建物において第1空調機及び第2空調機を用いて実行される空気の循環の別の一例のうち、1階での循環経路を示す図である。
【
図7】
図1~
図4に示す建物において第1空調機及び第2空調機を用いて実行される空気の循環の別の一例のうち、2階での循環経路を示す図である。
【
図8】本発明の一実施形態としての空調システムの運転制御の概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る空調システム、建物及び空調方法の実施形態について、
図1~
図8を参照して説明する。各図において共通する部材・部位には同一の符号を付している。
【0027】
図1、
図2は、本発明の一実施形態としての建物1の平面図である。具体的に、
図1は、建物1の1階平面図である。
図2は、建物1の2階平面図である。また、
図3は、
図1及び
図2におけるI-I断面での建物1の縦断面図である。
図4は、
図1及び
図2におけるII-II断面での建物1の縦断面図である。
【0028】
まず、本実施形態の建物1の概略について説明する。本実施形態の建物1は、例えば鉄骨造の軸組みを有する2階建ての住宅であり、鉄筋コンクリート造の基礎と、柱や梁などの軸組部材で構成された軸組架構を有し、基礎に固定された上部構造体と、で構成される。なお、軸組架構を構成する軸組部材は、予め規格化(標準化)されたものであり、予め工場にて製造されたのち建築現場に搬入されて組み立てられる。
【0029】
上部構造体の軸組架構は、複数の柱及び複数の梁などから構成されている。軸組架構の外周部には、外周壁を構成する外装材等が配置される。また、軸組架構の層間部には、床部を構成する床スラブ材等が配置される。更に、軸組架構の上部には、陸屋根を構成する屋根床スラブ材等が配置される。
【0030】
建物1の外周壁は、例えば、表面側に防水層としての塗膜が形成された軽量気泡コンクリート(ALC)からなる外装パネル材を連接されて構成された外部仕上げ層と、例えば、フェノールフォーム等の発泡樹脂系の断熱パネル材を外装仕上げ層の内面に沿って連接されて構成された断熱層と、石膏ボートと石膏ボード表面に貼設された壁クロス等の仕上げ材とで構成された内部仕上げ層と、を備えたものとすることができるが、特に限定されるものではない。外周壁は、少なくとも所定の防耐火性能及び防水性能を有するものであればよい。
【0031】
建物1の床部は、床スラブ材を含む。床スラブ材は、軸組架構の梁間に架設され、梁により直接的又は間接的に支持される。床スラブ材としては、例えば、ALCパネルを用いることできるが、折板、押出成形セメント板、木質パネル材などの別の部材を用いてもよい。床部は、床スラブ材に加えて、例えば、床スラブ材に対して直接的又は間接的に取り付けられる、下階としての1階の天井面を構成する天井内装材や、床スラブ材上に積層された、上階としての2階の床面を構成するフローリング等の床内装材などを含むものであってもよい。
【0032】
なお、陸屋根を構成する屋根床スラブ材についても、ALCパネルを用いることができるが、ALCパネルに限られるものではない。また、屋根床スラブ材は、例えば塩化ビニル樹脂から形成されている防水シート等により覆われることにより、防水処理が施されている。また、建物1の屋根は、陸屋根に限らず、スレート等の屋根外装材を用いた勾配屋根としてもよい。
【0033】
次に、本実施形態の建物1の間取りについて説明する。
【0034】
図1に示すように、本実施形態の建物1の1階には、リビング・ダイニング・キッチン81(以下、「LDK81」と記載する。)、個室82、玄関83、トイレ84、洗面所85、浴室86及び廊下87が設けられている。
【0035】
図2に示すように、本実施形態の建物1の2階には、4つの個室88~91、トイレ92並びに廊下93が設けられている。
【0036】
但し、上述の1階及び2階の間取りは一例であり、この間取りに限られるものではない。
【0037】
本実施形態の建物1のLDK81には、2階まで連なる吹き抜け空間が設けられている。この吹き抜け空間が、本実施形態の後述する第1連通路4を構成している。
【0038】
また、本実施形態の建物1には、1階と2階とをつなぐ階段15が設けられた階段室94がある。この階段室94が、本実施形態の後述する第2連通路5を構成している。
【0039】
次に、建物1の更なる詳細について説明する。
【0040】
図1~
図4に示すように、建物1は、下階空間2と、上階空間3と、2つの連通路と、空調システムと、を備えている。本実施形態の建物1は、2つのみの連通路を備える構成であるが、2つのみの連通路に限らず、3つ以上の連通路を備える構成であってもよい。本実施形態の2つの連通路は、第1連通路4及び第2連通路5である。また、空調システムは、対流式の第1空調機6、及び、対流式の第2空調機7、を備えている。
【0041】
下階空間2及び上階空間3は、少なくとも1つの床部11(
図3参照)を挟んで鉛直方向の上下に位置する空間である。本実施形態の建物1は、上述したように2階建てである。そのため、本実施形態の下階空間2は、建物1の1階と2階との間の床部11(
図3参照)を挟んで鉛直方向下方に位置する1階の空間である。また、本実施形態の上階空間3は、建物1の1階と2階との間の床部11(
図3参照)を挟んで鉛直方向上方に位置する2階の空間である。なお、本実施形態の建物1において、下階空間2と上階空間3との間に挟まれる床部11には、鉛直方向に貫通する大きな孔など、下階空間2と上階空間3との間で風の移動を可能とする開口部は形成されていない。但し、下階空間2及び上階空間3の間で空気の流れが発生しない程度の孔であれば、形成されていてもよい。
【0042】
図3に示すように、第1連通路4は、下階空間2及び上階空間3と水平方向で連続する。また、
図3に示すように、第1連通路4は、下階空間2の階層としての1階から上階空間3の階層としての2階に亘って延在している。換言すれば、下階空間2及び上階空間3は、第1連通路4を介して連通している。
【0043】
図3に示すように、第2連通路5は、下階空間2及び上階空間3と水平方向で連続する。また、
図3に示すように、第2連通路5は、下階空間2の階層としての1階から上階空間3の階層としての2階に亘って延在している。換言すれば、下階空間2及び上階空間3は、第2連通路5を介して連通している。
【0044】
このように、下階空間2及び上階空間3は、水平方向で第1連通路4及び第2連通路5と連続する空間である。その一方で、下階空間2及び上階空間3は、水平方向で、第1連通路4及び第2連通路5とは異なる別の内部空間と連続しないようにすることが可能に構成された空間である。
【0045】
より具体的に、下階空間2とは、水平方向の周囲の一部で第1連通路4及び第2連通路5と連続し、かつ、水平方向の周囲の残りの部分が下階区画壁面16により区画されている空間である。本実施形態の建物1の下階空間2は、LDK81の一部である。また、上階空間3とは、水平方向の周囲の一部で第1連通路4及び第2連通路5と連続し、かつ、水平方向の周囲の残りの部分が上階区画壁面17により区画されている空間である。本実施形態の建物1の上階空間3は、廊下93である。
【0046】
下階区画壁面16には、建物1の別の内部空間につながる出入り口などの開口部が形成されているが、開口部には開閉可能な建具が設けられている。そのため、下階区画壁面16の開口部に設けられている建具を閉じることにより、下階空間2を、第1連通路4及び第2連通路5とは異なる、建物1の下階としての1階の別の内部空間、と連続しないようにすることができる。逆に、下階区画壁面16の開口部に設けられている建具を開けることにより、下階空間2を、第1連通路4及び第2連通路5に加えて、建物1の1階の別の内部空間と、水平方向で連続する空間とすることができる。
【0047】
本実施形態では、下階区画壁面16とは、LDK81を区画する壁面であり、個室82に出入り可能な出入り口82a、洗面所85に出入り可能な出入り口85a、及び、廊下87に出入り可能な出入り口87a、が形成されている。そして、各出入り口82a、85a及び87aには、建具82b、85b及び87bが設けられている。
【0048】
なお、下階空間2の鉛直方向の上方は下階天井面18により区画されている。また、下階空間2の鉛直方向の下方は下階床面19により区画されている。
【0049】
上階区画壁面17も、下階区画壁面16と同様である。上階区画壁面17には、建物1の別の内部空間につながる出入り口などの開口部が形成されているが、開口部には開閉可能な建具が設けられている。そのため、上階区画壁面17の開口部に設けられている建具を閉じることにより、上階空間3を、第1連通路4及び第2連通路5とは異なる、建物1の上階としての2階の別の内部空間、と連続しないようにすることができる。逆に、上階区画壁面17の開口部に設けられている建具を開けることにより、上階空間3を、第1連通路4及び第2連通路5に加えて、建物1の2階の別の内部空間と、水平方向で連続する空間とすることができる。
【0050】
本実施形態では、上階区画壁面17とは、廊下93を区画する壁面であり、個室88~91に出入り可能な出入り口88a~91a、及び、トイレ92に出入り可能な出入り口92a、が形成されている。そして、各出入り口88a~92aには、建具88b~92bが設けられている。また、廊下93と第1連通路4との間には、腰壁95が設けられており、廊下93と第2連通路5との間にも、別の腰壁96が設けられている。なお、腰壁95、96に代えて、手すり子等の縦材間に開口部が形成されている手摺を設けてもよい。このようにすれば、手摺の開口部を通じても空気を流通させることが可能となる。
【0051】
なお、上階空間3の鉛直方向の上方は上階天井面20により区画されている。また、上階空間3の鉛直方向の下方は上階床面21により区画されている。
【0052】
また、本実施形態の第1連通路4は、LDK81の一部である吹き抜け空間により構成されているが、下階空間2の階層から上階空間3の階層まで風の移動が可能な空間であれば、吹き抜け空間に限られるものではない。したがって、第1連通路4を、例えば、すのこ状の床など通気性を有する床により上下に分けられた空間により構成してもよく、階段室により構成してもよい。また、第2連通路5も同様である。本実施形態の第2連通路5は、階段室94により構成されているが、この構成に限らず、例えば、第2連通路5を吹き抜け空間としてもよく、すのこ状の床など通気性を有する床により上下に分けられた空間としてもよい。
【0053】
対流式の第1空調機6は、下階空間2の階層において、平面視(
図1参照)で、下階空間2、又は、2つの連通路、の位置に設置することができる。本実施形態の第1空調機6は、平面視(
図1参照)で、2つの連通路の一方の連通路である第1連通路4、の位置に配置されている。
【0054】
対流式の第2空調機7は、上階空間3の階層において、平面視(
図2参照)で、上階空間3、又は、2つの連通路、の位置に設置することができる。本実施形態の第2空調機7は、平面視(
図2参照)で、2つの連通路の他方の連通路である第2連通路5、の位置に配置されている。
【0055】
本実施形態の第1空調機6及び第2空調機7は、風を供給可能な対流式の空調機であれば特に限定されない。但し、第1空調機6及び第2空調機7として、冷房装置及び暖房装置の両方を兼ねる空調機とすることが好ましい。
【0056】
建物1は、上述した下階空間2、上階空間3、並びに、2つの連通路としての第1連通路4及び第2連通路5、を備えている。そして、空調システムの対流式の第1空調機6及び第2空調機7を、平面視(
図1、
図2参照)において、上述の所定位置に配置することにより、下階空間2、上階空間3、第1連通路4及び第2連通路5を利用して、下階空間2の階層及び上階空間3の階層での空気の循環性能を向上させることができ、均一な温度に空調し易くすることができる。上記構成により実行可能な下階空間2の階層及び上階空間3の階層での空気の循環の具体例については後述する(
図5~
図7参照)。
【0057】
以下、本実施形態の空調システム及び建物1について、より詳細に説明する。
【0058】
図1~
図3に示すように、本実施形態の第1連通路4は、水平方向の周囲に位置する第1区画壁面8と、鉛直方向の上方に位置する第1天井面9と、鉛直方向の下方に位置する第1床面10と、により区画されている。
【0059】
第1区画壁面8は、下階空間2及び上階空間3と対向して配置される第1対向壁面8aと、平面視(
図1、
図2参照)で、第1対向壁面8aの延在方向Aにおいて第1対向壁面8aの両側に位置し、下階空間2及び上階空間3に向かって延在する一対の第1側壁面8b及び8cと、を備えている。なお、本実施形態では一対の第1側壁面8b及び8cとしているが、少なくとも2つの第1側壁面があればよい。
【0060】
より具体的に、本実施形態の第1対向壁面8aは、平面視(
図1、
図2参照)で延在方向Aに直線状に延在している。また、本実施形態の一対の第1側壁面8b及び8cは、平面視(
図1、
図2参照)で、延在方向Aと略直交する直交方向Bに直線状に延在している。更に、本実施形態の第1対向壁面8aは、一対の第1側壁面8b及び8cそれぞれと連続している。すなわち、第1区画壁面8は、平面視(
図1、
図2参照)で、コの字状に延在しており、平面視(
図1、
図2参照)で、第1区画壁面8、下階空間2及び上階空間3により囲まれている略四角形の空間が第1連通路4としての吹き抜け空間である。なお、第1側壁面8bのうち1階の部分には、引き違い戸を設けてもよい。
【0061】
なお、本実施形態の第1対向壁面8aは、建物1の外部空間と内部空間とを区画する外周壁の屋内側の面により構成されている。本実施形態の第1対向壁面8aの1階の位置には、開閉可能な建具としての掃き出し窓が設けられた開口部22が形成されている。また、本実施形態の一対の第1側壁面8b及び8cは、建物1の内部空間同士を区画する仕切壁の片側の面により構成されている。
【0062】
本実施形態の第1天井面9は、水平方向に略平行な面で構成されているが、第1連通路4の鉛直方向の上側を区画する面であればよく、その構成は特に限定されるものではない。したがって、第1天井面9を、例えば、水平方向に対して所定の角度で傾斜する面で構成してもよい。また、第1天井面9を、例えば、湾曲面により構成してもよい。
【0063】
更に、本実施形態の第1天井面9は、第1区画壁面8の鉛直方向の上端と連続している。具体的に、第1対向壁面8aの鉛直方向の上端、並びに、一対の第1側壁面8b及び8cそれぞれの鉛直方向の上端、は第1天井面9に連続している。
【0064】
本実施形態の第1床面10は、水平方向に略平行な面で構成されている。本実施形態の第1床面10は、建物1の1階において床面積が最大の居室としてのLDK81の床面の一部である。
【0065】
本実施形態の第2連通路5は、水平方向の周囲に位置する第2区画壁面12と、鉛直方向の上方に位置する第2天井面13と、鉛直方向の下方に位置する第2床面14と、により区画されており、第2連通路5内に、下階空間2と上階空間3とをつなぐ階段15が設けられている。
【0066】
第2区画壁面12は、下階空間2及び上階空間3と対向して配置される第2対向壁面12aと、平面視(
図1、
図2参照)で、第2対向壁面12aの延在方向C(本実施形態では延在方向Aと同じ方向)において第2対向壁面12aの両側に位置し、下階空間2及び上階空間3に向かって延在する一対の第2側壁面12b及び12cと、を備えている。なお、本実施形態では一対の第2側壁面12b及び12cとしているが、少なくとも2つの第2側壁面があればよい。
【0067】
より具体的に、本実施形態の第2対向壁面12aは、平面視(
図1、
図2参照)で延在方向Cに直線状に延在している。また、本実施形態の一対の第2側壁面12b及び12cは、平面視(
図1、
図2参照)で、延在方向Cと略直交する直交方向D(本実施形態では直交方向Bと同じ方向)に直線状に延在している。更に、本実施形態の第2対向壁面12aは、一対の第2側壁面12b及び12cそれぞれと連続している。すなわち、第2区画壁面12は、平面視(
図1、
図2参照)で、コの字状に延在しており、平面視(
図1、
図2参照)で、第2区画壁面12、下階空間2及び上階空間3により囲まれている略四角形の空間が第2連通路5としての階段室94である。
【0068】
なお、本実施形態の第2対向壁面12aは、建物1の外部空間と内部空間とを区画する外周壁の屋内側の面により構成されている。本実施形態の第2対向壁面12aの2階の位置には、ガラス窓が設けられた開口部23が形成されている。また、本実施形態の一対の第2側壁面12b及び12cは、建物1の内部空間同士を区画する仕切壁の片側の面により構成されている。
【0069】
本実施形態の第2天井面13は、水平方向に略平行な面で構成されているが、第2連通路5の鉛直方向の上側を区画する面であればよく、その構成は特に限定されるものではない。したがって、第2天井面13を、例えば、水平方向に対して所定の角度で傾斜する面で構成してもよい。また、第2天井面13を、例えば、湾曲面により構成してもよい。
【0070】
更に、本実施形態の第2天井面13は、第2区画壁面12の鉛直方向の上端と連続している。具体的に、第2対向壁面12aの鉛直方向の上端、並びに、一対の第2側壁面12b及び12cそれぞれの鉛直方向の上端、は第2天井面13に連続している。
【0071】
本実施形態の第2床面14は、水平方向に略平行な面で構成されている。本実施形態の第2床面14は、建物1の階段室94の1階の床面である。
【0072】
本実施形態の建物1の空調システムによれば、上述の第1連通路4及び第2連通路5を利用して、下階空間2及び上階空間3を効率的に均一温度にする空調を実現することができる。
【0073】
具体的に、第1空調機6は、第1対向壁面8a及び第2対向壁面12aの一方の対向壁面に沿って、上階空間3の階層に風を供給可能である。そして、第2空調機7は、第1対向壁面8a及び第2対向壁面12aの他方の対向壁面に沿って、下階空間2の階層に風を供給可能である。第1空調機6及び第2空調機7をこのような構成とすれば、第1空調機6から供給される風と、第2空調機7から供給される風と、が衝突して相殺することを抑制することができると共に、第1空調機6から供給される風と、第2空調機7から供給される風と、を協調させた空気の一方向の循環経路を形成し易くすることができる。なお、空気の循環経路の具体例については後述する(
図5~
図7参照)。
【0074】
また、
図1、
図2に示すように、本実施形態の第1連通路4及び第2連通路5は、平面視で下階空間2及び上階空間3を挟む位置に配置されている。そして、同平面視(
図1、
図2参照)において、第1対向壁面8a及び第2対向壁面12aは、対向して配置されている。
【0075】
更に、
図1に示すように、第1空調機6は、平面視で第1連通路4の位置に設けられ、
図3に示すように、第2連通路5に向かって吹き出し口6aが向けられている。また、
図2に示すように、第2空調機7は、平面視で第2連通路5の位置に設けられ、
図3に示すように、第1連通路4に向かって吹き出し口7aが向けられている。なお、第1空調機6の吹き出し口6aの角度、及び、第2空調機7の吹き出し口7aの角度、は後述する空気の循環経路に対応して適宜調整される。
【0076】
以下、本実施形態の建物1において、第1空調機6及び第2空調機7を用いて実行可能な、下階空間2、上階空間3、第1連通路4及び第2連通路5での空気の循環の具体例を説明する。
【0077】
図5は、本実施形態の建物1において、第1空調機6及び第2空調機7を用いて実行される、空気の循環の一例を示す図である。
図5は、
図3と同一断面を示しており、第1空調機6及び第2空調機7による風の循環経路を図中の矢印により示している。
【0078】
本実施形態の第1空調機6は、下階空間2の階層としての1階において、第1対向壁面8aに取り付けられており、第2連通路5に向かって風(以下、「第1吹き出し流」と記載する。)を供給可能である。具体的に、本実施形態の第1空調機6から供給される第1吹き出し流は、1階で、第1連通路4及び下階空間2を通って、第2連通路5に供給される。そして、第2連通路5に供給された第1吹き出し流は、第2対向壁面12aに沿って、上階空間3の階層としての2階に吹き込む。すなわち、本実施形態の第1空調機6は、第2対向壁面12aに沿って、下階空間2の階層としての1階から、上階空間3の階層としての2階に、風を供給することができる。
【0079】
本実施形態の第2空調機7は、上階空間3の階層としての2階において、第2対向壁面12aに取り付けられており、第1連通路4に向かって風(以下、「第2吹き出し流」と記載する。)を供給可能である。具体的に、本実施形態の第2空調機7から供給される第2吹き出し流は、2階で、第2連通路5及び上階空間3を通って、第1連通路4に供給される。そして、第1連通路4に供給された第2吹き出し流は、第1対向壁面8aに沿って、下階空間2の階層としての1階に吹き込む。すなわち、本実施形態の第2空調機7は、第1対向壁面8aに沿って、上階空間3の階層としての2階から、下階空間2の階層としての1階に、風を供給することができる。
【0080】
したがって、第1空調機6及び第2空調機7を同時に使用し、第1空調機6からの第1吹き出し流、及び、第2空調機7からの第2吹き出し流、を同時に利用することで、下階空間2、第2連通路5、上階空間3、第1連通路4の順に、空気を繰り返し循環させ易くすることができる。その結果、第1空調機6及び第2空調機7のいずれか一方のみを使用した空調と比較して、下階空間2、上階空間3、第1連通路4及び第2連通路5の温度を、より迅速に均一化することができる。
【0081】
なお、第1空調機6からの第1吹き出し流は、下階空間2の下階床面19及び第2連通路5の第2床面14に沿って第2連通路5まで供給される場合、そのまま第2対向壁面12aに沿うようにして2階へと上昇する。また、第1空調機6からの第1吹き出し流は、下階空間2の下階床面19及び第2連通路5の第2床面14を沿わずに第2連通路5まで供給される場合、第2対向壁面12aに衝突し、その一部が第2対向壁面12aに沿って2階へと上昇する。
【0082】
特に、暖房時は、暖気が上昇する性質、及び、上階の空気が出て行ったらその分を補給するための気流が生じる現象、を利用することができる。つまり、第1空調機6から第2連通路5に供給される暖気の第1吹き出し流が、第2連通路5を通じて上昇し易い。また、上階での第2空調機7からの第2吹き出し流による空気の移動により、移動した分の空気を補給するような気流を発生させ易くすることができる。その結果、第1吹き出し流が第2連通路5を通じて上昇し易くなる。暖房時にこれら性質及び現象を利用することで、下階空間2、上階空間3、第1連通路4及び第2連通路5の温度を、より一層、迅速に均一化することができる。
【0083】
また、第2空調機7からの第2吹き出し流は、上階空間3の上階天井面20及び第1連通路4の第1天井面9に沿って第1連通路4まで供給される場合、そのまま第1対向壁面8aに沿うようにして1階へと下降する。また、第2空調機7からの第2吹き出し流は、上階空間3の上階天井面20及び第1連通路4の第1天井面9を沿わずに、上階床面21に沿って、又は、上階床面21にも沿わずに、第1連通路4まで供給される場合、第1対向壁面8aに衝突し、その一部が第1対向壁面8aに沿って1階へと下降する。
【0084】
特に、冷房時は、冷気が下降する性質、及び、下階の空気が出て行ったらその分を補給するための気流が生じる現象、を利用することができる。つまり、第2空調機7から第1連通路4に供給される冷気の第2吹き出し流が、第1連通路4を通じて下降し易い。また、下階での第1空調機6からの第1吹き出し流による空気の移動により、移動した分の空気を補給するような気流を発生させ易くすることができる。その結果、第2吹き出し流が第1連通路4を通じて下降し易くなる。冷房時にこれら性質及び現象を利用することで、下階空間2、上階空間3、第1連通路4及び第2連通路5の温度を、より一層、迅速に均一化することができる。
【0085】
次に、本実施形態の建物1において、第1空調機6及び第2空調機7を用いて実行可能な、
図5に示す風の循環経路とは異なる循環経路の具体例について説明する。
図6及び
図7は、
図5に示す風の循環経路と異なる循環経路を示す図である。なお、
図6は
図1と同様の建物1の1階平面図であり、第1空調機6からの風である第1吹き出し流の循環経路を示している。また、
図7は
図2と同様の建物1の2階平面図であり、第2空調機7からの風である第2吹き出し流の循環経路を示している。
【0086】
ここで、
図5~
図7に示す第1空調機6及び第2空調機7は、いずれも同じ位置に配置されているが、
図6及び
図7に示す第1空調機6及び第2空調機7では、風の循環経路を
図5に示す循環経路と異ならせるため、第1空調機6の吹き出し口6aの鉛直方向及び水平方向の角度や、第2空調機7の吹き出し口7aの鉛直方向及び水平方向の角度等、が調整されている。但し、第1空調機6及び第2空調機7の平面視での位置を変更して、風の循環経路を変更することも可能である。例えば、第1空調機6を、1階の第1側壁面8c側に配置すると共に、第2空調機7を、トイレ92の出入り口92aの上部の壁面上に配置してもよい。また、第1空調機6は、下階空間2の下階区画壁面16又は下階天井面18に配置してもよい。更に、第2空調機7は、上階空間3の上階区画壁面17又は上階天井面20に配置してもよい。
【0087】
まず、
図6に示す第1空調機6から供給される第1吹き出し流の循環経路について説明する。
図6に示すように、第1空調機6は、一対の第2側壁面12b及び12cの一方(本実施形態では第2側壁面12c)に沿って風を送り出し、第2対向壁面12a、一対の第2側壁面12b及び12cの他方(本実施形態では第2側壁面12b)、の順に沿うように風を送り出す。つまり、
図6に示す第1空調機6からの第1吹き出し流は、主に、第2連通路5から上階に上昇せず、第2連通路5を区画する第2区画壁面12を利用して下階空間2内へと折り返し、第1連通路4に戻る。このように、
図6に示す風の循環経路によれば、
図5に示す風の循環経路と比較して、下階空間2の階層としての1階において、第1吹き出し流を、下階空間2、第1連通路4及び第2連通路5に、より広く行き渡らせることができる。すなわち、下階空間2の階層としての1階での、下階空間2、第1連通路4及び第2連通路5の温度ムラを、より軽減することができる。
【0088】
そして、
図6に示す第1空調機6によれば、第1吹き出し流を1階で循環させた後、第1対向壁面8aに沿って、下階空間2の階層である1階から、上階空間3の階層である2階に、風を供給可能である。つまり、
図6に示す第1空調機6からの第1吹き出し流は、主に、第1連通路4から2階に上昇する。
【0089】
次に、
図7に示す第2空調機7から供給される第2吹き出し流の循環経路について説明する。
図7に示すように、第2空調機7は、一対の第1側壁面8b及び8cの一方(本実施形態では第1側壁面8c)に沿って風を送り出し、第1対向壁面8a、一対の第1側壁面8b及び8cの他方(本実施形態では第1側壁面8b)、の順に沿うように風を送り出す。つまり、
図7に示す第2空調機7からの第2吹き出し流は、主に、第1連通路4から下階に下降せず、第1連通路4を区画する第1区画壁面8を利用して上階空間3内へと折り返し、第2連通路5に戻る。このように、
図7に示す風の循環経路によれば、
図5に示す風の循環経路と比較して、上階空間3の階層としての2階において、第2吹き出し流を、上階空間3、第1連通路4及び第2連通路5に、より広く行き渡らせることができる。すなわち、上階空間3の階層としての2階での、上階空間3、第1連通路4及び第2連通路5の温度ムラを、より軽減することができる。
【0090】
そして、
図7に示す第2空調機7によれば、第2吹き出し流を2階で循環させた後、第2対向壁面12aに沿って、上階空間3の階層である2階から、下階空間2の階層である1階に、風を供給可能である。つまり、
図7に示す第2空調機7からの第2吹き出し流は、主に、第2連通路5から1階に下降する。
【0091】
このように、
図6及び
図7に示す風の循環経路を形成すれば、上下階の空気の循環の効率化に加えて、各階での温度ムラを抑制することができる。
【0092】
なお、
図6及び
図7に示す、風の同一階層内での循環を効率的に行うため、下階空間2を区画する下階区画壁面16、及び、上階空間3を区画する上階区画壁面17、は第1連通路4と第2連通路5との間を風が移動し易いようなガイド面を構成することが好ましい。本実施形態では、1階において、第1区画壁面8の第1側壁面8bが、下階区画壁面16に直線状に連続している。また、2階において、第1区画壁面8の第1側壁面8bが、上階区画壁面17に直線状に連続している。更に、本実施形態では、1階において、第2区画壁面12の第2側壁面12cが、下階区画壁面16に直線状に連続している。また更に、2階において、第2区画壁面12の第2側壁面12cが、上階区画壁面17に直線状に連続している。
【0093】
したがって、第1空調機6からの第1吹き出し流は、1階において、直線状に並ぶ、第1側壁面8b、下階区画壁面16の一部(本実施形態では出入り口82a及び出入り口87aが形成されている壁面)及び第2側壁面12cに沿って、第2対向壁面12aまでガイドされる。また、第2空調機7からの第2吹き出し流は、2階において、第1側壁面8c及び第1対向壁面8aに沿って進み、その後、直線状に並ぶ、第1側壁面8b、上階区画壁面17の一部(本実施形態では出入り口90a及び出入り口91aが形成されている壁面)及び第2側壁面12cに沿って、第2対向壁面12aまでガイドされる。このように、第1連通路4と第2連通路5との間での風の行き来をガイドするようにすることが好ましい。換言すれば、一対の第1側壁面8b及び8cの少なくとも1つは、下階区画壁面16及び上階区画壁面17のいずれか一方の壁面と連続しており、かつ、このいずれか一方の壁面が、一対の第2側壁面12b及び12cの少なくとも1つと連続している、ことが好ましい。特に、本実施形態のように直線状に連続していることが好ましい。
【0094】
以上のように、本実施形態の建物1の空調システムによれば、
図5に示す風の循環経路、及び、
図6、
図7に示す風の循環経路、を実現することができる。すなわち、本実施形態の空調システムによれば、対流式の第1空調機6により、2つの連通路の一方(
図5の例では第2連通路5であり、
図6の例では第1連通路4)を通じて、下階空間2の階層(本実施形態では1階)から上階空間3の階層(本実施形態では2階)に風を供給することができる。また、本実施形態の空調システムによれば、対流式の第2空調機7により、2つの連通路の他方(
図5の例では第1連通路4であり、
図7の例では第2連通路5)を通じて、上階空間3の階層(本実施形態では2階)から下階空間2の階層(本実施形態では1階)に風を供給することができる。これにより、下階空間2の階層と上階空間3の階層とで空気を循環させる空調方法を実行することができる。その結果、下階空間2、上階空間3、第1連通路4及び第2連通路5を、均一温度に空調することができる。
【0095】
なお、建物1は、外皮平均熱貫流率Ua値が0.6[W/(m2・K)]以下の高断熱建物であることが好ましい。建物1が上記Ua値の基準を満足する高断熱建物である場合、気密性が高く、気流の流れがよくなるため、本実施形態の第1空調機6及び第2空調機7を用いた上下階空間の均一空調が、より達成され易くなる。
【0096】
最後に、本実施形態の建物1の空調システムの制御例について説明する。
図8は、空調システムの運転制御の概要を示す図である。
【0097】
上述したように、建物1の空調システムは、第1空調機6及び第2空調機7を利用して、上下階の温度を効率的に均一化する風の循環経路を形成するものである。このような風の循環経路を形成する目的で、本実施形態の空調システムは、
図8に示すように、第1空調機6及び第2空調機7の風量を制御する制御装置50を備えている。本実施形態の制御装置50は、第1空調機6の風量と第2空調機7の風量との大小関係を、冷房時と暖房時とで変更することができる。なお、「冷房時」とは、例えば、温度設定を25℃~28℃に設定して稼働した状態である。また、「暖房時」とは、例えば、温度設定を20℃~25℃に設定して稼働した状態である。
【0098】
具体的に、本実施形態の制御装置50は、冷房時において、第2空調機7の風量を、第1空調機6の風量よりも小さくする。上述したように、冷房時は、冷気が下降する性質を利用することができるため、第2空調機7からの第2吹き出し流を、第1連通路4又は第2連通路5を通じて、下階に供給し易い。したがって、冷房時は、第2空調機7の風量を、第1空調機6の風量よりも小さくすることで、第2空調機7によるエネルギー消費を抑制しつつ、上下階の温度を効率的に均一化する風の循環経路を形成することができる。
【0099】
逆に、本実施形態の制御装置50は、暖房時において、第1空調機6の風量を、第2空調機7の風量よりも小さくする。上述したように、暖房時は、暖気が上昇する性質を利用することができるため、第1空調機6からの第1吹き出し流を、第1連通路4又は第2連通路5を通じて、上階に供給し易い。したがって、暖房時は、第1空調機6の風量を、第2空調機7の風量よりも小さくすることで、第1空調機6によるエネルギー消費を抑制しつつ、上下階の温度を効率的に均一化する風の循環経路を形成することができる。
【0100】
また、
図8に示すように、本実施形態の空調システムは、下階空間2の階層としての1階に設けられた下階人感センサ51と、上階空間3の階層としての2階に設けられた上階人感センサ52と、を備えている。なお、本実施形態の下階人感センサ51は、1階の位置での、下階空間2、第1連通路4及び第2連通路5において、人の存在の有無を検出することができる。また、本実施形態の上階人感センサ52は、2階の位置での、上階空間3、第1連通路4及び第2連通路5において、人の存在の有無を検出することができる。下階人感センサ51及び上階人感センサ52は、サーモ機能や画像認証機能をカメラ本体又は別体に備えるカメラ等を用いることで、居住者等の人の体温や脈拍、人の年齢や男女、を特定可能である。なお、下階人感センサ51は、下階空間2を含むLDK81に配置されていてもよく、個室82に配置されていてもよい。また、上階人感センサ52は、上階空間3としての廊下93に配置されていてもよく、個室88~91のいずれか又は全てに配置されていてもよい。
【0101】
そして、本実施形態の制御装置50は、下階人感センサ51及び上階人感センサ52の検出結果に基づき、第1空調機6及び第2空調機7の風量を制御することができる。例えば、下階人感センサ51及び上階人感センサ52の一方の人感センサが人を検出し、かつ、他方の人感センサが人を検出していない場合、制御装置50は、第1空調機6及び第2空調機7のうち、上記一方の人感センサが配置されている階層に設けられている空調機の風量を、上記他方の人感センサが配置されている階層に設けられている空調機の風量よりも小さくする。
【0102】
より具体的には、
図8に示すように、下階人感センサ51が人を検出し、かつ、上階人感センサ52が人を検出していない場合、制御装置50は、第1空調機6の風量を、第2空調機7の風量よりも小さくする。また、下階人感センサ51が人を検出しておらず、かつ、上階人感センサ52が人を検出している場合、制御装置50は、第2空調機7の風量を、第1空調機6の風量よりも小さくする。すなわち、本実施形態の制御装置50は、人がいる階層に設置された空調機の風量を小さくするように制御する。このように制御することで、空調機から供給される風が人に直接あたることを抑制し、風があたることによる不快感を与え難くすることができる。なお、制御装置50は、一方の空調機の風量を小さくする制御を実行するが、他方の空調機の風量を大きくする制御を併せて実行してもよい。
【0103】
更に、制御装置50は、下階人感センサ51により検出された人の数と、上階人感センサ52により検出された人の数と、を比較して、検出された人の数が少ない人感センサが設置されている階層にある空調機の風量を、検出された人の数が多い人感センサが設置されている階層にある空調機の風量よりも、小さくするように制御してもよい。
【0104】
また、本実施形態の制御装置50は、第1空調機6及び第2空調機7の風量の総和を所定値以上に維持するように、第1空調機6の風量及び第2空調機7の風量を制御することが好ましい。このように閾値を設定することで、空調機からの風の吹き出し量が、上下階での円滑な風の循環ができない程度まで低下することを、抑制することができる。
【0105】
なお、本実施形態の制御装置50には、特に限定されるものではないが、例えばHEMSが設置されている住宅においては、HEMSに用いるCPU、MPU等のプロセッサを含む装置を、制御装置50として利用することができる。
【0106】
本発明に係る空調システム、建物及び空調方法は、上述した実施形態に記載した具体的な構成及び工程に限られるものではなく、特許請求の範囲の記載を逸脱しない限り、種々の変更、変形が可能である。上述の実施形態の空調システムは、第1空調機6及び第2空調機7の2台の空調機のみを備える構成であるが、3台以上の空調機を備える空調システムであってもよい。つまり、本発明に係る空調システムで特定される第1空調機及び第2空調機があればよく、建物1に設置される全空調機の数が2つに限られるものではない。また、上述した実施形態の建物1は、2階建ての住宅であったが、3階以上の建物であってもよい。更に、上述の実施形態では、第1空調機6を第1連通路4の位置に配置し、第2空調機7を第2連通路5の位置に配置したが、この配置に限らず、第1空調機6を第2連通路5の位置に配置し、第2空調機7を第1連通路4の位置に配置してもよい。また更に、第1空調機6及び第2空調機7を、共に第1連通路4の位置に配置してもよく、共に第2連通路5の位置に配置してもよい。但し、風の循環性能を高める観点等により、本実施形態のように、第1空調機6及び第2空調機7の一方の空調機を、第1連通路4及び第2連通路5の一方の連通路に配置し、他方の空調機を、他方の連通路に配置するようにすることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明は、空調システム、建物及び空調方法に関する。
【符号の説明】
【0108】
1:建物
2:下階空間
3:上階空間
4:第1連通路
5:第2連通路
6:第1空調機
6a:第1空調機の吹き出し口
7:第2空調機
7a:第2空調機の吹き出し口
8:第1区画壁面
8a:第1対向壁面
8b、8c:第1側壁面
9:第1天井面
10:第1床面
11:床部
12:第2区画壁面
12a:第2対向壁面
12b、12c:第2側壁面
13:第2天井面
14:第2床面
15:階段
16:下階区画壁面
17:上階区画壁面
18:下階天井面
19:下階床面
20:上階天井面
21:上階床面
22、23:開口部
50:制御装置
51:下階人感センサ
52:上階人感センサ
81:LDK
82:個室
82a:出入り口
82b:建具
83:玄関
84:トイレ
85:洗面所
85a:出入り口
85b:建具
86:浴室
87:廊下
87a:出入り口
87b:建具
88~91:個室
88a~91a:出入り口
88b~91b:建具
92:トイレ
92a:出入り口
92b:建具
93:廊下
94:階段室
95、96:腰壁
A:平面視での第1対向壁面の延在方向
B:平面視での第1対向壁面の延在方向と略直交する直交方向
C:平面視での第2対向壁面の延在方向
B:平面視での第2対向壁面の延在方向と略直交する直交方向