(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-17
(45)【発行日】2022-02-21
(54)【発明の名称】修正ガンマデルタT細胞およびその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 5/0783 20100101AFI20220214BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220214BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20220214BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220214BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20220214BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20220214BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20220214BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20220214BHJP
A61P 33/02 20060101ALI20220214BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220214BHJP
A61K 31/662 20060101ALI20220214BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20220214BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220214BHJP
A61K 38/21 20060101ALI20220214BHJP
A61K 38/20 20060101ALI20220214BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220214BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20220214BHJP
【FI】
C12N5/0783
C12N5/10
C12N15/62 Z ZNA
A61P35/00
A61P31/00
A61P31/12
A61P31/04
A61P31/10
A61P33/02 171
A61P43/00 121
A61K31/662
A61K35/17 Z
A61K45/00
A61K38/21
A61K38/20
A61K39/395 T
C07K16/28
(21)【出願番号】P 2017554035
(86)(22)【出願日】2016-04-14
(86)【国際出願番号】 GB2016051050
(87)【国際公開番号】W WO2016166544
(87)【国際公開日】2016-10-20
【審査請求日】2019-04-11
(32)【優先日】2015-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】PCT/GB2015/051985
(32)【優先日】2015-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】517009604
【氏名又は名称】ティーシー バイオファーム リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100181847
【氏名又は名称】大島 かおり
(72)【発明者】
【氏名】マイケル デイビッド リーク
(72)【発明者】
【氏名】アデル ハニガン
(72)【発明者】
【氏名】アガピトス パタカス
(72)【発明者】
【氏名】ダリア パルジナ
【審査官】伊達 利奈
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/124143(WO,A1)
【文献】PLoS Pathog.,2014年,10(10),e1004300
【文献】Front Immunol.,2014年,5,636
【文献】Journal of Leukocyte Biology,2013年,94(6),1141-1157
【文献】J Exp Med.,1998年,188(4),619-626
【文献】Mol Ther.,2013年,21(3),638-647
【文献】Cancer Discov,2013年,3(4),388-398
【文献】Sci Transl Med.,2013年,5(215),215ra172,pp.1-25
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00
C12N 5/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)
細胞表面標的と結合するときにT細胞受容体(TCR)シグナル(シグナル1)を提供するγδT細胞受容体と、
(ii)細胞膜を横断し、細胞内の共刺激性シグナル伝達ドメインに連結する膜貫通ドメインに結合し、共刺激性シグナル(シグナル2)を提供することができる、細胞表面標的を認識して標的とする合成受容体である少なくとも1つの共刺激性キメラ抗原受容体(CAR)と、
を含む、修正γδT細胞であって、
前記少なくとも1つの共刺激性キメラ抗原受容体(CAR)が、細胞表面標的と結合するときに共刺激性シグナル(シグナル2)を提供し、かつ、前記少なくとも1つの共刺激性CARがT細胞受容体(TCR)シグナル(シグナル1)を提供しない、修正γδT細胞。
【請求項2】
前記γδT細胞受容体がVγ9Vδ2TCRである、請求項1に記載の修正γδT細胞。
【請求項3】
阻害性キメラ抗原受容体(ICAR)をさらに含む請求項1に記載の修正γδT細胞であって、前記阻害性キメラ抗原受容体による抗原の結合は、共刺激性シグナル(シグナル2)を阻害する、修正γδT細胞。
【請求項4】
前記キメラ抗原受容体は、細胞感染症、細菌感染症、真菌感染症、または原虫感染症に見られるまたは関連する、細胞表面標的または天然リガンド;活性または非活性のウイルス断片;ペプチド;タンパク質;ウイルス由来の抗原セグメント;腫瘍特異的抗原または腫瘍関連抗原に結合することが可能である、請求項1~3の何れか一項に記載の修正γδT細胞。
【請求項5】
請求項1~4の何れか一項に記載のがんまたは感染症の処置で用いる修正γδT細胞であって、前記感染症はウイルス、細菌、真菌、または原虫の感染症から選択される、修正γδT細胞。
【請求項6】
請求項5の何れか一項に記載のがんまたは感染症の処置で用いる修正γδT細胞であって、前記修正γδT細胞は、アミノビスフォスフォネートまたはその代替品と共に対象に同時投与され、前記代替品は、生理学的なメバロン酸経路の調節不全を介して、標的細胞に存在するリン酸化抗原のレベルを高めることが可能である、修正γδT細胞。
【請求項7】
キメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸配列
を含む、核酸であって、前記CARは、細胞外抗原認識ドメイン、ヒンジ、膜貫通ドメイン、ならびに
CD3ゼータドメインが欠如している、シグナル2を提供するための1つもしくは複数の共刺激性シグナル伝達領域を含み、
かつ、
ヌクレオチド配列SEQ ID NO:7を含み、アミノ酸配列SEQ ID NO:8~11をコードすることが可能な、核酸配列
を含む、核酸。
【請求項8】
請求項7に記載の核酸をγδT細胞に組み込んで、または形質導入して、前記γδT細胞を遺伝子改変するステップを含む、CAR修正γδT細胞を提供するプロセス。
【請求項9】
自家的または同種的な移植により対象を処置するために組み合わせて用いる、請求項1~4の何れか一項に記載のγδT細胞とピロフォスファート/フォスフォネート薬物とを含む、キット。
【請求項10】
請求項1~4の何れか一項に記載のγδT細胞を含む医薬組成物。
【請求項11】
がんの処置で用いる、サイトカイン、インターフェロンガンマ、IL-2、化学療法薬、生物製剤、またはその組み合わせをさらに含む、請求項
10に記載の医
薬組成物。
【請求項12】
ウイルスの処置で用いる療法薬を
さらに含む、請求項
10または
11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
ドナー対象から採取したドナー細胞を、レシピエント対象に治療的に有効な量のγδT細胞を同種的に投与できるように処理するステップであって、前記処理ステップは前記γδT細胞を修正してキメラ抗原受容体を組み込み、請求項1に記載の修正γδT細胞を提供するステップを含
む、処置を準備する方法。
【請求項14】
ドナー対象から採取したドナー細胞を、前記ドナー対象に治療的に有効な量のγδT細胞を投与できるように処理するステップであって、前記処理ステップは前記γδT細胞を修正してキメラ抗原受容体を組み込み、請求項1に記載の修正γδT細胞を提供するステップを含み、前記キメラ抗原受容体は疾病抗原に対し結合特異性を有する細胞外抗原結合ドメイン、ヒンジ、膜貫通ドメイン、1つまたは複数の共刺激性シグナル伝達領域、および非機能性CD3ゼータドメインを含む、ステップを含み、前記非機能性CD3ゼータドメインは、前記キメラ抗原受容体におけるCD3ゼータドメインの欠如により提供される、処置を準備する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、ガンマデルタT細胞(γδT細胞)を調製し用いる方法、適切には、ウイルス感染症、真菌感染症、原虫感染症、およびがんを含む病状の処置のための、同種または自家のレシピエント対象におけるガンマデルタT細胞の使用、具体的には、キメラ抗原受容体(CAR)修正ガンマデルタ細胞の使用に関する。本発明はまた、キメラ抗原受容体を発現するγδT細胞の生成とCAR発現を検出するプロセスに関する。加えて、本発明は、がんおよび感染症などの疾病の処置における、本明細書で開示するプロセスで生成される細胞の医薬的使用に関する。
【0002】
ガンマデルタTリンパ球は、ヒトの末梢血の小サブセットである(10%未満)。Vγ9Vδ2(ガンマ9デルタ2)T細胞受容体を発現しているガンマデルタT細胞は、調節不全のメバロン酸経路の結果としてがん細胞で過剰産生される内因性のイソペンテニルピロフォスファート(IPP)を認識する。IFN-ガンマのような豊富な炎症誘発性サイトカインを産生するガンマデルタTリンパ球の機能、その強力な細胞毒性効果機能、およびMHC非依存性抗原認識は、ガンマデルタT細胞をがん免疫療法の重要な層にする。ガンマデルタT細胞は、in vitroで、白血病、神経芽細胞腫、および種々の癌腫を含む、多くの異なるタイプの腫瘍細胞株および腫瘍を殺傷できることが示されている。さらに、ガンマデルタT細胞は、自然発生的に、またはゾレドロネートを含む異なるビスフォスフォネートで処置した後で、多くの異なる分化した腫瘍細胞を認識し殺傷し得ることが実証されている。ヒト腫瘍細胞は、ガンマデルタT細胞にアミノビスフォスフォネートおよびピロホスホモノエステル化合物を効果的に提示し、ガンマデルタT細胞の増殖およびIFNガンマの産生を誘発する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ガンマデルタT細胞の自家移植戦略が、同種幹細胞移植に関連する欠点を克服するのに利用されてきた。このような自家移植技法の一部として、自家的に治療効果を発揮するのに十分な数のガンマデルタT細胞を誘発し培養する方法が、例えば米国特許出願公開第2002/0107392号明細書など、以前より開示されてきた。しかしながら、自家処置戦略はいくつかの欠点を有する。
【0004】
したがって、代わりのおよび/または改善されたガンマデルタT細胞を用いる処置戦略が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
がん特異的なT細胞クローンを特定し増殖させる難しさが、キメラ抗原受容体(CAR)の開発につながった。CARはモノクローナル抗体を用いて、TCR-MHC/ペプチド認識に依存せず、T細胞特異性の対象を標的抗原に変える。これまでは多数の臨床研究においてアルファベータ(αβ)T細胞のCAR形質導入が利用されてきた一方、誰もガンマデルタ(γδ)T細胞/リンパ球を用いてそうすることはなかった。本研究者らは、ガンマデルタT細胞/リンパ球のCAR形質導入が有利であり得ることを明らかにした。
【0006】
前述のように、末梢血内の大部分のγδTリンパ球はVガンマ9Vデルタ2イソタイプである。Vガンマ9Vデルタ2T細胞受容体を発現しているγδT細胞は、調節不全メバロン酸経路の結果としてがん細胞において過剰産生される内因性イソペンテニルピロフォスファート(IPP)を認識する。発明者らは、IFN-ガンマのような豊富な炎症誘発性サイトカインを産生するガンマデルタ(γδ)Tリンパ球の機能、その強力な細胞毒性エフェクター機能およびMHC非依存性抗原認識は、γδTリンパ球をがん免疫療法の重要なプレーヤーにすると考える。
【0007】
ガンマデルタ(γδ)T細胞の効力を高めるCARの機能を調べるために、in vitroに限定して研究が行われた(Rischer et al., 2004, Deniger et al., 2013)。しかしながら、このような研究では、1個の対象に由来するCAR修正γδT細胞を用いて第2の異なる対象に治療を提供する(同種使用の)可能性は実現されなかった。このような研究はさらに、「調整可能な」反応が提供されるようにCAR修正γδT細胞を提供し得る方法も実現していない。
【0008】
したがって、本発明の第1態様は、疾病抗原に対し結合特異性を有する、キメラ抗原受容体を発現する修正γδT細胞を提供する。
【0009】
適切には、修正γδT細胞はキメラ抗原受容体を含み、該キメラ抗原受容体は、疾病抗原に対し結合特異性を有する細胞外抗原結合ドメイン、ヒンジ、膜貫通ドメイン、ならびに
(i)1つもしくは複数の共刺激性シグナル伝達領域および非機能性CD3ゼータ活性化/シグナル伝達ドメイン(調整可能CAR)、または
(ii)CD3ゼータ活性化/シグナル伝達ドメイン、または
(iii)1つもしくは複数の共刺激性シグナル伝達領域および機能性CD3ゼータ活性化/シグナル伝達ドメインを含む。
【0010】
実施形態では、修正γδT細胞はキメラ抗原受容体を含み得、該キメラ抗原受容体は、疾病抗原に対し結合特異性を有する細胞外抗原結合ドメイン、ヒンジ、膜貫通ドメイン、1つまたは複数の共刺激性シグナル伝達領域、および非機能性CD3ゼータ活性化ドメインを含む。
【0011】
実施形態では、修正γδT細胞は、キメラ抗原受容体におけるCD3ゼータ活性化ドメインの欠如により提供される非機能性CD3ゼータ活性化ドメインを含み得る。
【0012】
適切には、実施形態において、γδT細胞は、Vγ1~9およびVδ1~8に由来する任意のガンマデルタTCRペアリングのTCRを発現する。実施形態では、γδT細胞はVγ9Vδ2サブタイプである。
【0013】
本発明の第2態様により、がんまたは感染症などの病状の処置で用いる、本発明の第1態様の修正γδT細胞を提供する。
【0014】
本発明の第3態様により、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸配列を提供するが、該CARは、単鎖可変断片(scFv)などの細胞外抗原認識ドメイン、ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン、1つまたは複数の共刺激性シグナル伝達領域、および任意選択的にCD3ゼータ活性化ドメインを含む。適切なCD3ゼータドメインはまた、CD3ゼータ活性化ドメインまたはシグナル伝達ドメインであるとも考えられる。非機能性CD3ゼータドメインにより、シグナル伝達が提供されない、または、活性化を引き起こすほど十分には提供されないと考えられる。
【0015】
実施形態において、核酸配列はキメラ抗原受容体(CAR)をコードすることが可能であり、該CARは細胞外抗原認識ドメイン、ヒンジ、膜貫通ドメイン、ならびに
(i)1つもしくは複数の共刺激性シグナル伝達領域および非機能性CD3ゼータ活性化ドメイン、または
(ii)CD3ゼータ活性化ドメイン、または
(iii)1つもしくは複数の共刺激性シグナル伝達領域およびCD3ゼータ活性化ドメインを含む。
【0016】
実施形態において、非機能性CD3ゼータ活性化ドメインは、キメラ抗原受容体におけるCD3ゼータ活性化ドメインの欠如により提供され得る。
【0017】
前述のように、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法は免疫療法技法であり、T細胞は、HLAの制限とは無関係に、特定の抗原またはタンパク質(細胞表面標的)を認識し標的化する合成受容体で遺伝子改変されている。
【0018】
典型的には、「伝統的な」第2または第3世代のCARは、モジュール方式で設計されており、典型的には、細胞外標的結合ドメイン、通常は単鎖可変断片(scFv)、ヒンジ領域、CARを細胞膜に固定する膜貫通ドメイン、および1つまたは複数の細胞間シグナル伝達ドメインを含む。シグナル伝達ドメインには、通常、TCR様刺激(シグナル1と呼ばれる)を提供するCD3ゼータ(CD3ζ)鎖活性化ドメインという要素と、共刺激性シグナル(シグナル2と呼ばれる)を提供するCD28、CD137(4-1BB)、CD134(OX40)、CD244、またはICOSシグナル伝達部という要素が含まれる。このような典型的なCAR発現T細胞では、シグナル1とシグナル2の両方がT細胞を静止状態から解放するのに必要である。追加の共刺激性シグナル(シグナル2)がない場合、シグナル1の存在だけではT細胞を活性化するのに不十分であり、T細胞を非反応性/アネルギー性にする場合がある。したがって、両シグナルの存在がT細胞の活性化を誘発するのに必要である。
【0019】
CAR発現T細胞(CAR-T)を利用する臨床試験によりCAR-Tアプローチが証明され、2014年に抗CD19CART細胞療法がアメリカ合衆国のFDAにより承認された。目覚ましい反応率がCAR-T試験で観察されているが、現時点で該技術は、真の疾病抗原、つまり、健常な細胞ではなく疾病状態の細胞でのみ発現する抗原を欠くことにより、いくらか制限がある。これまでは大部分のCAR-T療法がCD19を標的にしていた。CD19はB細胞悪性腫瘍で発現するが、それは健常なB細胞でも発現する。この文脈においてCD19標的CAR-T治療は許容され得るが、患者は、免疫システムが著しく低下することから感染症のリスクの上昇に悩まされている。これは、他の腫瘍タイプの大部分、特に固形腫瘍では当てはまらないが、健常な組織の標的化は耐えがたいだろう。
【0020】
これまで臨床的に試験されたCAR-T療法のさらなる限界は、CAR-T療法に対し耐性ができることによる再発である。これはCD19標的CAR-T療法の臨床試験で観察されており、それは、標的(CA19)遺伝子の選択的スプライシングおよび/または有害な突然変異を呈するがん細胞の発生により現実のものとなる。これらの「エスケープ変異体」は、(遺伝子の機能性は十分に維持しているものの)CARのscFv部により認識できない修正標的(CD19)タンパク質の原因となる。これが任意の単一標的アプローチの限界であり、細胞つまりがんを増殖させる文脈では、これにより標的抗原発現を阻害する正の選択圧が提供される。
【0021】
本発明は、ストレスのかかった/疾病細胞(つまり、がん細胞または感染細胞)を特異的に認識するγδT細胞の天然機能を、キメラ抗原受容体技術の強力な抗原標的細胞毒性エフェクター機能と組み合わせて利用する。伝統的なCARを形質導入したガンマデルタT細胞は、CAR誘発抗原を発現する標的細胞に対するエフェクター機能の向上と、in vivoでの持続性の増大を示す。発明者らは、CAR修正ガンマデルタT細胞は、通常のγδT細胞に対して耐性を持つ場合があるがん細胞または感染細胞を、γδT細胞が介在する殺傷の影響を受けやすくさせることができると考える。適切には、理論に縛られることを望むものではないが、発明者らは、伝統的なCARを共発現するγδT細胞は、リン酸化抗原またはCAR標的抗原のいずれかを発現する細胞を認識可能であるため、細胞崩壊のために該細胞を標的化し得、したがってこのような修正ガンマデルタT細胞が標的化し得る細胞の幅が広がると考える。さらに、現在のCAR-T療法の限界、CAR抗原を発現しないがん細胞の正の選択による耐性の発現は、二重抗原特異性を有するであろうCAR発現γδT細胞により緩和されると考えられる。適切には、このようなCAR修正ガンマデルタT細胞は、同種対象、つまり、ガンマデルタT細胞を最初に得た対象とは異なる対象に提供することが可能である。
【0022】
当業者には理解されようが、本明細書で論じるCAR配列をγδT細胞に供給することにより得られる効果およびその使用は、適切には、CAR配列をγδT様細胞に供給することにより得ることができる。適切には、γδT様細胞には、機能性γδTCRを発現するように遺伝子改変した任意の細胞が含まれ得る。例えば、Vガンマ9Vデルタ2TCRの文脈では、機能性γδTCRを発現させるように遺伝子改変し、それにより細胞の特異性の対象をIPPなどの定義したγδTCR抗原に変更した、αβT細胞またはNKT細胞である。
【0023】
従来のCAR-T技術は、健常な組織におけるCAR誘発抗原の発現が原因の、in vivoで適用した場合にアプローチの成功を妨げるいくつかの安全性問題、つまり、「標的上」だが「腫瘍外」の毒性により妨害されると考えられる。実施形態では、(例えば、scFvを介した)MHC非依存性抗原認識機能および(1つまたは複数の共刺激性ドメインを介した)共刺激性機能は維持しつつ、CD3ζドメインを除去したかまたは非機能的にした、CAR修正ガンマデルタT細胞を提供する。
【0024】
実施形態において、非機能性または不活性のCD3ゼータドメインは、本明細書で論じるようにシグナル1を提供することができない。適切には、キメラ抗原受容体を含む修正γδT細胞を提供し得、該キメラ抗原受容体は、疾病関連抗原に対し結合特異性を有する細胞外抗原結合ドメイン、ヒンジ、膜貫通ドメイン、および1つまたは複数の共刺激性シグナル伝達領域を含み、機能性シグナル1提供ドメインを欠く。当業者に理解されるように、シグナル1はCD3ゼータドメインなどにより提供され得る。
【0025】
このような実施形態では、CARは、1つまたは複数の共刺激性ドメインの存在によるシグナル2機能は維持する一方、シグナル1を提供することはできない。有利なことに、これにより、TCRシグナル/シグナル1を欠く場合、CARが細胞毒性エフェクター機能を引き出すことは不可能になる。理論に縛られることを望むものではないが、発明者らは、このCAR設計はシグナル1の欠如により多クローン性αβT細胞集団では効果的ではない一方、in vitroで増殖させたγδT細胞集団においての斯かるCARの発現は、該γδTCRが活性化している場合、効果的なCARを提供すると考える。実施形態では、CARCD3ζドメインを除去したか、または不活性もしくは非機能的にした、Vγ9Vδ2イソタイプのCAR発現γδT細胞を提供することが可能である。このような実施形態では、シグナル1はVγ9Vδ2TCRのリン酸化抗原刺激により提供され得る。このような実施形態では、適切にはリン酸化抗原の存在下でのみ、CARは細胞介在性細胞毒性およびサイトカイン産生を引き起こし得る。適切には、このようなCAR設計は、(ストレスのかかった細胞にのみ存在する)リン酸化抗原に対し定義されたVγ9Vδ2T細胞の特異性を利用することができ、T細胞受容体シグナル伝達により調整可能な活性化を可能にする。
【0026】
実施形態では、本発明のガンマデルタT細胞、特にVγ9Vδ2細胞またはガンマデルタT細胞の細胞集団をキメラ抗原受容体を含むように修正して、該ガンマデルタT細胞の標的を特定の抗原またはタンパク質(細胞表面標的(細胞表面標的には、特定の細胞環境(つまり、腫瘍環境)で見られるが標的細胞とは結合しないリガンドが含まれ得る))にすることが可能である。実施形態において、細胞表面標的は、標的細胞に結合することが可能である。これは、キメラ抗原受容体(CAR)ガンマT細胞を標的細胞、特に細胞表面標的を含む標的細胞に近接させ、ガンマデルタT細胞の活性化を誘発することを可能にする。このようなキメラ抗原受容体(CAR)ガンマT細胞が本発明の態様を形成する。
【0027】
実施形態では、CAR構成体の抗原認識ドメインは、細胞表面標的または標的細胞の同族受容体に連結する天然リガンドを特異的に認識し結合することが可能なライブラリより選択される、単鎖可変断片(ScFv)ドメインまたは断片抗原結合(Fab)ドメインとすることが可能である。
【0028】
実施形態において、本明細書で論じるキメラ抗原受容体が結合する疾病抗原は、細胞表面標的、がんもしくは感染症などの疾病状態に関連する抗原といった疾病関連抗原とすることができ、該疾病関連抗原は、γδT細胞に標的にされる細胞上にまたはその周辺に存在し得、その結果、γδT細胞は標的化すべき細胞を標的化することができる。実施形態において、細胞表面標的は、細胞感染症、細菌感染症、真菌感染症、または原虫感染症に見られる抗原とするか、または、斯かるウイルスの活性もしくは非活性のウイルス断片、ペプチド、タンパク質、もしくは抗原セグメントとすることが可能である。あるいは、細胞表面標的には、腫瘍特異的抗原および/または腫瘍関連抗原が含まれ得る。
【0029】
実施形態において、CAR、例えばガンマデルタT細胞の細胞外表面に備わるScFVは、細胞膜を横断し細胞内のシグナル伝達ドメインに連結する膜貫通ドメインに、スペーサを介して連結するか、または直接融合することが可能である。
【0030】
実施形態において、CAR、例えばScFvは、膜貫通ドメインを介して(シグナル1を提供する)CD3ゼータと、共刺激性免疫受容活性化チロシンモチーフ(ITAM)(シグナル2)に融合することが可能である。
【0031】
CARは、概して、T細胞特異性の対象を細胞表面標的に変えると考えられ、T細胞耐性に関する問題を克服する。理解されるだろうが、典型的には、ガンマデルタT細胞が対象の細胞、例えば、健常な細胞よりむしろ腫瘍細胞またはウイルス感染した細胞を確実に標的化するように、細胞表面標的を選択することが可能である。
【0032】
理解されるだろうが、例えば、細胞表面標的が発現する標的腫瘍細胞および正常な組織の両方において、キメラ抗原受容体技術は非常に強力であるものの、「標的上、腫瘍外毒性」の影響を受けやすい可能性がある。
【0033】
前述のように、キメラ抗原受容体がシグナル1およびシグナル2の要素を一体化させ単一構成物にするCAR標的系において、該系は、非常に強力かつ選択的な標的依存性エフェクター反応を提供することが可能である。しかしながら、斯かるCAR標的系は、標的細胞に発現する細胞表面標的のレベルに対し調整可能というわけではない。
【0034】
Vγ9Vδ2TCR介在性認識は、CAR反応を「調整」し、その結果、CARからの刺激シグナルがVγ9Vδ2TCR刺激の文脈においてのみ機能的反応に翻訳されることを可能にする、さらなるCAR非依存性標的戦略を提供すると考えられる。これは、例えば幅広い範囲の腫瘍標的(HMBPP/IPPストレス関連経路標的)を、追加の細胞表面標的を用いてCAR修正ガンマデルタT細胞により標的化することを可能にする。これらの本発明のCAR修正ガンマデルタT細胞は調整可能な反応を提供し、所与の腫瘍関連抗原、ピロフォスファート/フォスフォネート(薬物)用量に対し、特定の「共刺激性CAR」からのシグナル2との相乗作用を生む機能を有する、次善のシグナル1強度反応が生成される。
【0035】
実施形態では、in vitro活性化アッセイを用いて最適な「調整反応」用の関連薬物用量を求めて、高レベルの腫瘍関連抗原を発現する(よりシグナル2強度の高い)標的腫瘍株と、より低いレベルを発現する(より低いシグナル強度を生成する)関連非形質転換細胞を最大限に区別することが可能である。実施形態では、多数のCARを利用して異なる腫瘍/細胞タイプを標的することができた。このような多数のCARは、1つのガンマデルタT細胞、特にVγ9Vδ2細胞に設けることが可能であるか、または、各細胞において異なるCARを有する多数のガンマデルタT細胞、特にVγ9Vδ2細胞(処置バンク)を生成することが可能であり、各CARガンマデルタ細胞は特定の腫瘍および/または細胞タイプに用いられる。
【0036】
MHC分子を認識しないガンマデルタT細胞におけるヘテロ二量体γδTCRの発現は、斯かるガンマデルタ細胞が強力なエフェクター反応をし得ることを意味すると考えられる。特に斯かる細胞(例えば、Vγ9Vδ2)は細胞毒性が高く、1FNγおよびTNFαを含む高レベルのTh1サイトカインを産生する可能性がある。
【0037】
実施形態では、ガンマデルタT細胞はさらに阻害性キメラ抗原受容体(ICAR)を含み得、該ICARは、腫瘍外細胞、例えば、細胞表面標的が腫瘍関連的ではあるものの腫瘍特異的抗原ではない、非腫瘍細胞の活性化を最小にする。例えば、斯かる「標的上で腫瘍外の毒性」を最小化するように、阻害性CARに結合し得る標的細胞上または標的細胞外の第2抗原の存在が、細胞表面標的とCARの任意の結合により生成されるシグナルを阻害するだろう。
【0038】
実施形態において、ガンマデルタ細胞は、標的細胞に存在する異なる抗原に結合することが可能な、または、例えば腫瘍もしくはウイルス感染した細胞環境、例えば、ガンマデルタT細胞の活性化および漸増を刺激し得るIL-12に存在する可溶性シグナル伝達タンパク質に結合することが可能な、さらなるCARを含み得る。
【0039】
実施形態において、少なくとも第1キメラ抗原受容体を有し、任意選択的に少なくとも第1阻害性キメラ抗原受容体を有するガンマデルタT細胞は、Vγ9Vδ2T細胞である。
【0040】
キメラ抗原受容体のガンマデルタT細胞への提供は、キメラ抗原受容体をT細胞に提供するための、当技術分野で既知の手段によるものであり得る。
【0041】
本発明の第4態様により、第3態様の核酸をγδT細胞に組み込んで/形質導入してγδT細胞を遺伝子改変した、CAR修正γδT細胞を提供するプロセスを提供する。適切には、前記プロセスはレンチウイルスCAR構成物を利用することが可能である。適切には、前記プロセスは同時にCAR構成物を細胞に形質導入し、選択的にCAR形質導入γδT細胞を増殖させる。
【0042】
前記プロセスの実施形態は、「TCR調整可能な」または「共刺激性の」CARを提供することが可能だと考えられる。
【0043】
前述のように、斯かる実施形態では、共刺激性CARを発現するγδT細胞は、健常な細胞ではなく(感染したまたはがんの細胞表面に存在する)リン酸化抗原がある場合にのみ活性化されるだろう。これは、従来のCAR-T療法で見られる、「標的上」だが「腫瘍外」の毒性を回避すると考えられる。斯かる実施形態では、共刺激性CARの活性は、γδT細胞受容体を通した付随のTCRシグナル伝達により調整され得ると考えられる。
【0044】
本発明の第3態様の実施形態では、CARをコードする核酸配列は、タンパク質を細胞膜(GMCSF-R分泌性シグナルまたはCD8など)に向かわせるリーダー配列、抗原結合ドメイン、ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン、および1つまたは複数の共刺激性シグナル伝達領域を含み得、CD3ゼータシグナル伝達シグナル伝達ドメインはある場合もない場合もある。本明細書で論じるように、CD3ゼータシグナル伝達ドメインの欠如は、不活性または非機能的なCD3ゼータドメインにより提供され得る。
【0045】
CD3ゼータドメインを含む核酸の実施形態では、CARは「伝統的」または「調整不可」であると考えられる。CD3ゼータドメインが削除された実施形態では、CARは「共刺激性の」または「TCR調整可能な」なCARである。
【0046】
実施形態において、「伝統的な」または「調整不可の」CARをコードする核酸配列は、B細胞タンパク質CD19を認識するscFvを含み得る。特定の実施形態では、「伝統的な」CARは、ヌクレオチド配列SEQ ID NO:1を含み得、これは適切にはアミノ酸配列SEQ ID NO:2~6をコードし得る。
【0047】
核酸配列が「共刺激性の」または「TCR調整可能の」CARをコードする実施形態では、核酸はB細胞タンパク質CD19を認識するscFvを含み得る。特定の実施形態では、核酸配列はヌクレオチド配列SEQ ID NO:7を含み得、これはアミノ酸配列SEQ ID NO:8~11をコードし得る。
【0048】
実施形態において、核酸は、細胞表面標的を特異的に認識しそれに結合することが可能な、単一scFvである細胞外抗原結合ドメインをコードすることが可能である。適切には、実施形態において、FMC63として知られるクローンの細胞外抗原結合ドメイン、好適にはscFvは、前述のB細胞抗原CD19を認識し、それに結合する(Nicholson IC et al., 1997)。
【0049】
実施形態において、CARの抗原結合ドメインは、細胞表面標的、腫瘍抗原、および/または腫瘍関連抗原に結合する。実施形態において、細胞表面標的は、細胞感染症、細菌感染症、真菌感染症、原虫感染症、またはウイルス感染症に見られる抗原とするか、または、斯かるウイルスの活性もしくは非活性のウイルス断片、ペプチド、タンパク質、もしくは抗原セグメントなどとすることが可能である。
【0050】
適切には、本発明の実施形態において、細胞外抗原結合ドメインは、腫瘍細胞にのみ存在し、任意の他の細胞には存在しない腫瘍特異的抗原、および/または、一部の腫瘍細胞にも一部の正常細胞にも存在する腫瘍関連抗原を認識し、結合することが可能である。このような腫瘍特異的抗原としては、限定されるわけではないが、CD19、EGFRvRIII、ErbB2、GM3、GD2、GD3、CD20、CD22、gp100、NY-ESO-1、炭酸脱水酵素IX、WT1、がん胎児性抗原、CA-125、MUC-1、MUC-3、上皮性腫瘍抗原、および、MAGEA1、MAGEA3、MAGEA4、MAGEA12、MAGEC2を含むMAGEタイプ抗原、BAGE、GAGE、XAGE1B、CTAG2、CTAG1、SSX2、LAGE1、ウイルス抗原、もしくはその組み合わせ、または、限定されるわけではないが、カルバミル化タンパク質およびシトルリン化タンパク質を含み得る翻訳後修飾タンパク質を含み得る。
【0051】
実施形態において、細胞表面抗原は、免疫チェックポイントリガンド、例えばPD-L1とすることが可能である。
【0052】
実施形態において、抗原結合ドメインは細胞表面受容体の細胞外部分であってよく、これは次に、前述のように膜貫通ドメインおよび共刺激性ドメインに融合する。
【0053】
実施形態において、CARの膜貫通ドメインは、CD3またはCD4またはCD8またはCD28の、1つまたは複数の膜貫通ドメインを含み得る。
【0054】
実施形態において、CARの共刺激性シグナル伝達領域は、CD28、CD137(4-1BB)、ICOS、CD27、OX40、LFA1、PD-1、CD150、CD244、NKG2Dの、1つまたは複数の細胞内ドメインを含み得る。
【0055】
適切には、本発明で用いるγδT細胞は、血液単核細胞(BMC)またはがんもしくは感染組織の生検より生成することができる。適切には、BMCは、当業者に既知である任意の密度遠心分離法により、全血、白血球除去材、または臍帯血(UCB)から得ることができる。密度遠心分離法としては、限定されるわけではないが、フィコール比重またはリンホプレップ(lymphoprep)が挙げられる。加えて、細胞単離は、MACS(magnetic-activated cell sorting)法またはFACS(fluorescence-activated cell sorting)法により実行することが可能である。
【0056】
適切には、実施形態において、γδT細胞は、限定されるわけではないが、RPMI培地、TexMACS培地、IMDM培地、CTS OpTmizer培地、またはAIM-V培地が例として挙げられ得る化学的に定義された培養培地において、末梢血単核細胞(PBMC)、臍帯血単核細胞(CBMC)、または、組織由来細胞から増殖させることができる。細胞培養培地には、例えば、ウシ胎児血清(FCS)、ヒトAB血清、自家血漿、ヒト血小板溶解物、または、化学的に定義された血清代替品を補充することが可能である。さらに、血清/血漿/代替品は、0.1~20%(v/v)の量で培養溶液に加える。
【0057】
適切には、実施形態において、Vガンマ9サブタイプのγδT細胞は、IL-2、血清/血漿、およびソレドロン酸などのアミノビスフォスフォネートの提供による活性化を含む化学的に定義された培養培地において、PBMCまたはCBMCまたは組織由来の細胞より選択的に増殖させることができる。多数のγδTCRイソタイプを、Vγ1~9およびVδ1~8からの任意のガンマデルタTCRペアリングより用いることができる。当業者には、培養条件、特にTCR活性化方法により増殖されるイソタイプが定義されるだろうことが理解されよう。例として、γδT細胞はアミノビスフォスフォネートなどにより活性化され、増殖する一方、δ1細胞は、好適には、MICAまたはMICBなどのNKG2Dリガンドを用いて増殖させることができる。単離したPBMC/CBMCは、培養物中で増殖させる前に新たに単離するかまたは凍結保存することができる。
【0058】
ビスフォスフォネートは二リン酸のアナログであり、二リン酸骨格P-O-PのO(酸素原子)がC(炭素原子)で置換された化合物(P-C-P)である。ビスフォスフォネートは、概して、骨粗しょう症の治療薬物として用いられる。アミノビスフォスフォネートは、ビスフォスフォネート中にN(窒素原子)を有する化合物を指す。例えば、本発明で用いるアミノビスフォスフォネートは特に限定されず;その例としては、パミドロン酸とその塩および/またはその水和物、アレンドロン酸とその塩および/またはその水和物、ならびにゾレドロン酸とその塩および/またはその水和物が挙げられる。アミノビスフォスフォネートの濃度は、好適には、パミドロン酸とその塩および/またはその水和物では1~30μM、アレンドロン酸とその塩および/またはその水和物では1~30μM、ゾレドロン酸とその塩および/またはその水和物では0.1~10μMである。ここでは例として5μMのゾレドロン酸を加える。
【0059】
適切には、サイトカインIL-2も、50IU/ml~2000IU/mL、より好適には400IU/mL~1000IU/mLで含まれ得る。適切には、培養物には、50IU/ml~2000IU/mlで、IL-15、IL-18、またはIL-21などの1つまたは複数のサイトカインを捕捉することもできる。
【0060】
適切には、アミノビスフォスフォネートを介した抗原の提供は、イソペンチルピロフォスファート(IPP)、ホスホスチム/ブロモヒドリンピロホスフェート(BrHPP)、(E)-4-ヒドロキシ-3-メチル-but-2-エニルピロフォスフェート(HMBPP)またはDMAPPなどの合成抗原で代用することができる。抗原刺激はまた、放射線を照射した細胞および/または人工抗原提示細胞(aAPC)とともに共培養することにより提供することができる。このような成分の添加により、典型的には、培養サンプル中の総細胞数の70~100%のガンマデルタT細胞の正の選択を可能にする、培養環境が提供される。
【0061】
γδT細胞の増殖は、CD3、ガンマデルタTCR、CD28、およびCD137に対する1つまたは複数の抗体で刺激することもできる。これらは可溶性であるか、プレート結合するか、または、dynabeads(登録商標)もしくはMACSibeadsなどの適切なビーズに共役することが可能である。γδT細胞は、以前開示された任意の方法論を用いて増殖および拡大させることができる。
【0062】
適切には、CAR発現細胞は、CARにより認識される組換タンパク質、例えば、CD19標的CARの場合は組み換えCD19-Fcキメラまたは組み換えCD19を用いて選択的に増殖させることが可能である。これは、プレート結合しているか、可溶性であるか、または、dynabeadsもしくはMACSibeadsなどの適切なビーズ上にあり得る。任意のイソタイプのγδT細胞は、少なくとも7日間、より好適には14日間という時間枠の間で選択的に増殖させることができる。適切には、培養期間は、実質的に精製された多数のCAR発現ガンマデルタT細胞集団を得るために約9日間以上実行してよい。γδT細胞は、TCR抗原またはMICAもしくはMICBなどのNKG2Dリガンドを用いて増殖させることができる。単離したPBMCは、培養物中で増殖させる前に、新たに単離するかまたは凍結保存することができる。増殖させたγδ細胞は、培養物中において、さらなる増殖のために、凍結保存し、後になって蘇生することができる。
【0063】
γδT細胞を遺伝子改変してCAR設計をコードする核酸を組み込む方法には、当業者に既知の任意の技法が含まれ得る。適切な方法論としては、限定されるわけではないが、レンチウイルス/レトロウイルス/アデノウイルスを用いたウイルス形質導入、エレクトロポレーション、脂質ベースのトランスフェクション試薬、ナノ粒子、塩化カルシウムに基づくトランスフェクション法、またはバクテリア由来のトランスポゾンによる細胞トランスフェクションが挙げられる。
【0064】
実施形態において、レンチウイルス/レトロウイルス/アデノウイルスを形質導入に利用する場合、当業者に理解されるように、このプロセスを強化するために化学試薬の包含を用いることが可能である。該試薬としては、限定されるわけではないが、例えば、臭化ヘキサジメトリン(ポリブレン)、(RetroNectin-Takara Clontechなどの)組換ヒトフィブロネクチン、および、TransPlus Virus Transduction Enhancer(ALSTEM Cell Advancements)が挙げられる。
【0065】
適切には、CARをコードする核酸の組み込みは、培養期間の任意の時点で、PBMC、CBMC、または組織由来の増殖させたγδT細胞に導入することができる。
【0066】
γδT細胞によるCAR構成物の形質導入および発現の有効性の検出には、当業者に既知の任意の技法が含まれ得、該技法としては、限定されるわけではないが、定量PCRおよびフローサイトメトリーまたはウェスタンブロッティングなどの抗体ベースの検出方法が挙げられる。
【0067】
本発明の態様により、伝統的なCARと共刺激性CARを、SEQ ID NO:12およびSEQ ID NO:13と、SEQ ID NO:14およびSEQ ID NO:15の群から選択される少なくとも1つのプライマー対を用いて検出する方法を提供する。
【0068】
【0069】
適切には、前記方法は伝統的なCARと共刺激性CARの量的検出を可能にし得る。適切には、前記方法は、伝統的なCARと共刺激性CARの識別を可能にする。
【0070】
フローサイトメトリーを利用する一実施形態では、例えば、蛍光色素または蛍光標識したストレプトアビジンなどの第2試薬を用いて検出することが可能な抗原に共役した、scFvのイディオタイプに対する抗体を用いることができる。実施形態において、CARを検出するために用いる試薬は、CARにより認識される組換タンパク質を含み哺乳類抗体のFc断片と融合したキメラタンパク質、例えばCD19-Fcキメラとすることが可能である。これは、タンパク質のFc部分に対する抗体を用いて検出することが可能である。これらの試薬は、限定されるわけではないが、Vガンマ9、CD3、ガンマデルタTCR、アルファベータTCR、CD4、CD8、およびCD56が例として挙げられる免疫表現型検査マーカーに対する蛍光色素共役抗体と組み合わせることが可能である。
【0071】
CAR修正ガンマデルタ細胞を用いた処置方法
本発明の第2態様の実施形態において、調整可能/共刺激性CARまたは伝統的なCARを発現したγδT細胞を、ウイルス感染症、細菌感染症、真菌感染症、原虫感染症、またはがんなどの疾病を処置するために患者に投与することが可能である。
【0072】
実施形態では、調整可能/共刺激性CAR発現γδT細胞とアミノビスフォスフォネートまたはその代替品を、対象に同時投与するが、該代替品は、生理学的なメバロン酸経路の調節不全を介して、標的細胞に存在するリン酸化抗原のレベルを高めることが可能である。斯かる同時投与はVγ9Vδ2TCR認識に影響を及ぼして、リン酸化抗原が結合したγδTCRからのシグナル1強度の「薬物調整可能」滴定を可能にするのに有利であり得ると考えられる。調整可能/共刺激性CARは、CAR標的疾病関連抗原に基づき、細胞に限定された新規のシグナル2を提供し得る。
【0073】
特定の実施形態では、所与の疾病関連抗原に対しアミノビスフォスフォネート用量またはその代替品を調整して、次善のシグナル1強度を生成し、特定の調整可能/共刺激性CARからのシグナル2との相乗機能を得ることが可能である。in vitroでの活性化を用いて最適な「調整」のための関連薬物用量を推定して、高レベルの抗原(より高いシグナル2強度)を発現する疾病関連抗原発現細胞株と、(より低いシグナル2強度を生成する)より低いレベルを発現する非形質転換細胞を、最大限識別することができた。例えば、本発明で用いる同時投与するアミノビスフォスフォネートとしては、ゾレドロン酸とその塩および/またはその水和物、アレンドロン酸とその塩および/またはその水和物、ならびにパミドロン酸とその塩および/またはその水和物が挙げられる。
【0074】
治療における本発明のガンマデルタT細胞の同種使用では、ガンマデルタT細胞は本発明のCAR修正ガンマデルタT細胞を使用するが、斯かる同種使用は、典型的には、免疫系が介在する拒絶反応に関連した潜在的な問題により検討されてこなかった。発明者らは、ガンマデルタT細胞は、典型的には移植片対宿主病を引き起こさず、同種移植のためのガンマデルタT細胞を選択すれば、T細胞を移植片対宿主病のリスクを最小限にしてレシピエントに提供することが可能になると考える。ガンマデルタT細胞はMHC拘束的ではないことから、同種移植は、実行可能な治療であると考えられ、ガンマデルタT細胞はMHCハロタイプとは無関係に細胞崩壊のために細胞を標的化することが可能である。ガンマデルタT細胞がMHC提示抗原を認識しないことを鑑み、本発明者らは、B細胞およびアルファベータT細胞受容体(TCR)T細胞を含む、他の白血球から十分に精製されたガンマデルタT細胞の高純度の同種移植では、GVHDのリスクは最小化されると考える。加えて、限定されるわけではないが、例えば、エボラ、HIV、およびインフルエンザといったいくつかのウイルス感染症の患者ならびにPTLD-EBV患者および他のがんタイプの患者を含む、ある疾病状態にあるレシピエントの免疫力の低下に起因する移植片拒絶の可能性は低いと考えられる。
【0075】
述べたように、以前の処置戦略には、同種幹細胞移植の前に、負の選択または正の選択の方法論を用いて、ドナーの血液、特に末梢血からT細胞を除去することが含まれていた。
【0076】
細胞をドナー対象から採取するステップ、斯かるドナー細胞を十分な数のガンマデルタT細胞を同種的にレシピエント対象に提供できるように処理するステップを含む処置方法であって、前記処理ステップには、ガンマデルタT細胞を修正してキメラ抗原受容体に組み込み、その結果、該修正ガンマデルタT細胞を同種対象に提供してレシピエント対象に治療効果を与えるようにするステップが含まれる、方法を提供する。
【0077】
例えば、ガンマデルタT細胞増殖法には、末梢血単核細胞(PBMC)を、密度勾配遠心分離法を用いて、血液または白血球除去材から単離するステップが含まれ得る。単離したPBMCは、培養物中で増殖させる前に凍結保存することができる一方、血漿を共抽出して、後続のガンマデルタT細胞培養ステップで用いる自家賦形剤として保持する。実施形態では、新たに単離したPBMC(または凍結保存から蘇生したもの)を、ヒト組み換えIL-2(例えば、最大1000u/mL濃度)とゾレドロン酸(例えば、5μM)を含有する増殖培地に接種することが可能である。ゾレドロン酸の添加(0日目)と、14日間の増殖期間にわたる継続したIL-2の含有により、γδTリンパ球集団を活性化させ、PBMCから選択的に増殖させることができる。細胞懸濁物質はこの期間にわたり、(典型的には1:2の継代比率で)順次増殖させることができる。培養開始から14日目に、細胞を採取し、乳酸リンゲル液およびHSAに再懸濁させてから、100mLの食塩溶液を入れた注入ボトルに移すことが可能である。あるいは、後で蘇生するために凍結保存してよい。
【0078】
増殖後、実施形態において、ガンマデルタT細胞生成物は、以下の最低限の仕様を満たす;総細胞の80%超がTリンパ球(CD3陽性)であり、ガンマデルタTリンパ球は、総Tリンパ球集団の60%以上を含み(Vガンマ9陽性)、NK細胞は総Tリンパ球集団の25%未満であり(CD3陰性/CD56陽性)、細胞毒性T細胞は総Tリンパ球集団の10%未満であり(CD3/CD8陽性)、Tヘルパー細胞は総Tリンパ球集団の5%未満である(CD3/CD4陽性)。実施形態において、これらの仕様を満たす細胞集団を、99%超のガンマデルタT細胞を有することを目標にする高純度同種細胞バンク生成の開始材料として用いることが可能である。
【0079】
したがって、以下のステップ
-第1対象からガンマデルタT細胞のサンプルを提供するステップと:
-前記ガンマデルタT細胞を培養して、それを第2対象に投与するステップであって、前記ガンマデルタT細胞はCAR修正ガンマデルタT細胞を提供するように修正されている、ステップとを含む、第2対象にガンマデルタT細胞を同種的に提供するプロセスを提供する。
【0080】
実施形態において、提供ステップには、ガンマデルタT細胞を第1対象から採取するステップが含まれ得る。採取は、即時に健康だと認められる状態ではないドナー対象からとすることが可能である。適切には、レシピエント対象は、脊椎動物、例えば哺乳類、例えばヒト、または商業的に加値のある家畜類、研究動物、ウマ、ウシ、ヤギ、ラット、マウス、ウサギ、およびブタなどとすることができる。実施形態では、第1および第2の対象はヒトとすることができる。理解されるように、本発明の文脈において、第1対象は、ガンマデルタT細胞を採取するドナー対象であり、細胞は異なる第2の(レシピエント)対象の同種治療に用いる。適切には、第1の対象は病気にかかる前の状態である。本明細書で用いる場合、用語「疾病前の」状態は、「健康な」、「疾病のない」という絶対的な用語と、「疾病の潜在的進行の段階的変化」、病気にかかった状態よりも「健康である」、または「病的ではない」という相対的な用語をカバーする。「疾病前の」は、第1対象が病気であると診断されるより前の時間により定義され得るため、第1対象は絶対的に健康であるか、または、すでに病気であっても、その病気自体が発症していないか、または診断も検出もされていない場合もある。実施形態において、プロセスは、第1対象から得られたガンマデルタT細胞を培養して、該ガンマデルタT細胞を第2対象に提供できるようにするステップを含み得る。
【0081】
実施形態において、ガンマデルタT細胞は、アフェレーシスもしくは白血球除去療法に従って得られる末梢血もしくは末梢血単核細胞、または臍帯血から採取することが可能である。ex vivoにおける末梢血由来のガンマデルタT細胞の増殖は、リン酸化抗原またはアミノビスフォスフォネートで活性化した場合、Vγ9Vδ2表現型のガンマデルタT細胞を優先的に生じさせるだろう。ex vivoでの増殖のために出発材料として臍帯血を使用すると、活性化抗原次第でいくつかのT細胞受容体(TCR)サブタイプの選択的増殖が可能になる。これらのTCRイソタイプには、Vγ1~9およびVδ1~8、例えば、限定されるわけではないが、Vδ1、Vδ2、およびVδ3TCR変異体からの任意のガンマデルタTCRペアリングが含まれ得る。別のサブタイプのガンマデルタT細胞は、別個の抗原を認識するため、標的細胞により提示される抗原次第で異なるレベルの細胞毒性が示されるだろう。各デルタTCRサブタイプの相対的存在量は、培養条件および提示される特異的抗原に大きく左右される。培養条件は、臍帯血から所望のTCRイソタイプを優先的に増殖させるように調整することができる。例えば、特異なTCRイソタイプを発現しているガンマデルタT細胞が、特定のがんタイプの処置において、または特定のウイルス感染症の処置により有効な場合がある。
【0082】
実施形態において、採取ステップには、第1の対象からガンマデルタT細胞を採取する前に、第1の対象にガンマデルタT細胞強化剤を投与するステップが含まれ得る。
【0083】
実施形態において、ガンマデルタT細胞を採取する方法は、第1の対象に、G-CSF、アミノビスフォスフォネート、特にパミドロン酸、アレンドロン酸、ゾレドロン酸、リセドロン酸、イバンドロン酸、インカドロン酸、その塩および/またはその水和物といった、骨髄からの白血球動員を誘発する成長因子などの強化剤を投与するステップを含み得る。
【0084】
実施形態において、処理ステップまたはプロセスは、
-第1の対象(ドナー)から、血液、例えば、臍帯血、または除去療法/白血球除去療法由来の細胞を提供するステップと、
-前記血液から末梢血単核細胞を分離するステップと、
-アミノビスフォスフォネートおよび標的抗原を前記末梢血単核細胞に加えるステップと、
-前記末梢血単核細胞を培養して標的抗原特異性細胞毒性T細胞(CTL)およびガンマデルタT細胞を増殖/誘発するステップと、
-前記ガンマデルタT細胞を修正して、本明細書で論じるCAR修正ガンマデルタT細胞を提供し、任意選択的に、PBMCまたはCBMCまたはT細胞を人工抗原提示細胞(aAPC)と共に共培養して標的抗原特異性細胞毒性T細胞(CTL)およびガンマデルタT細胞を増殖/誘発するステップのうち1つまたは複数を含み得る。
【0085】
本発明者らは、全血の他の成分から実質的に単離したガンマデルタT細胞の提供により、その実質的に単離したガンマデルタT細胞を同種的に第2の対象に投与する場合の移植不全が減少すると考える。結果として、本発明のプロセスは、全血またはその成分からガンマデルタT細胞を精製するステップを含み得る。末梢血の細胞総数の10%未満がガンマデルタT細胞から構成されるため、試料の10質量%超がガンマデルタT細胞からなるように、例えば抗ガンマデルタT細胞抗体を用いて全血またはその成分の試料を精製することは、レシピエント対象を同種的に処置することの有効性を向上させると考えられる。結果として、本発明のプロセスは、精製した試料における細胞総数の10、25、50、75、85、90、95、または98%超がガンマデルタT細胞であることを達成するために、全血またはその成分の試料を精製するステップを含み得る。
【0086】
全血、臍帯血、またはその成分からガンマデルタT細胞を精製することが可能な当業者に既知の任意の方法は、本発明の一部をなし得る。明らかに、精製ステップはガンマデルタT細胞の生存能力に影響を与えないか、または影響は最小限であるべきである。例えば、以下のステップは、前述のガンマデルタT細胞の精製を達成するために、組み合わせてまたは単独で用いることができる:-透析プロセス(例えば除去療法および/または白血球除去療法);分画遠心分離;培養物中でのガンマデルタT細胞の増殖(例えば培養物中での優先増殖)。
【0087】
精製ステップは、少なくとも部分的に、培養ステップの間で実行することが可能である。例えば、培養ステップの間、アミノビスフォスフォネート、特にパミドロン酸、アレンドロン酸、ゾレドロン酸、リセドロン酸、イバンドロン酸、インカドロン酸、その塩および/またはその水和物など特有の成分の少なくとも1つまたは組み合わせを加えると、ガンマデルタT細胞が培養物中で増殖することが可能になる。細胞培養中の精製は、また、ホスホスチム/ブロモハロヒドリンピロフォスファート(BrHPP)、合成イソペンテニルピロフォスファート(IPP)、(E)-4-ヒドロキシ-3-メチル-but-2-エニルピロフォスファート(HMB-PP)などの合成抗原の添加または人工抗原提示細胞(aAPC)との共培養によっても達成することができる(Wang et al., 2011)。こうした成分の添加により、典型的には精製試料の総細胞数の70%以上の数のガンマデルタT細胞の正の選択を可能にする、培養環境が提供される。このような成分の添加により、典型的には精製された試料の総細胞数の70%の数のガンマデルタT細胞の正の選択を可能にする、培養環境が提供される。
【0088】
アミノビスフォスフォネートは、ガンマデルタT細胞を培養する初日よりいつでも加えることが可能である。アミノビスフォスフォネートは、0.05~100マイクロモル、好適には0.1~30マイクロモルの濃度で末梢血単核細胞に加えることが可能である。適切には、ビスフォスフォネートは、二リン酸アナログであり、二リン酸骨格P-O-PのO(酸素原子)がC(炭素原子)で置換された化合物(P-C-P)である。ビスフォスフォネートは、概して、骨粗しょう症の治療薬物として用いられる。アミノビスフォスフォネートは、ビスフォスフォネート中にN(窒素原子)を有する化合物を指す。例えば、本発明において用いるアミノビスフォスフォネートは特に限定されず、国際公開第2006/006720号および国際公開第2007/029689号に開示されているようなアミノビスフォスフォネートなどを用いてよい。その特定の例としては、パミドロン酸とその塩および/またはその水和物、アレンドロン酸とその塩および/またはその水和物、ならびにゾレドロン酸とその塩および/またはその水和物が挙げられる。アミノビスフォスフォネートの濃度は、好適には、パミドロン酸とその塩および/またはその水和物では1~30μM、アレンドロン酸とその塩および/またはその水和物では1~30μM、ゾレドロン酸とその塩および/または水和物では0.1~10μMである。ここでは、5μMのゾレドロン酸を例として加える。
【0089】
適切には、培養期間が7日間以上の場合、ガンマデルタT細胞を含む細胞群が高純度で得ることができるが、しかしながら、培養は、好ましくは、ガンマデルタT細胞の数をさらに増加させるために約14日間実行する。
【0090】
実施形態において、培養の期間は、約7日間以上とすることができる。適切には、培養期間は、実質的に精製されたガンマデルタT細胞集団を多数得るために約14日間以上実行してよい。培養は典型的には14日間実行し、その後ガンマデルタT細胞は急激な増殖の継続を停止する。しかしながら、ある実施形態は、培養の延長およびより大きな数までのガンマデルタT細胞の選択的増殖を提供する。こうした実施形態には、培養物への合成抗原(例えば合成IPP、DMAPP、Br-HPP、HMB-PP)の供給、人工のもしくは照射した抗原提示細胞への繰返し暴露、固定した抗原もしくは抗体の提供、または細胞培養の出発原料としての臍帯血の使用が含まれる。
【0091】
適切には、細胞は、最低少なくとも2集団を倍加させた後、その細胞表面受容体プロファイルをリセットするために少なくとも7日という期間この環境で培養してよい。
【0092】
任意選択的に、ガンマデルタT細胞を培養するステップは、ガンマデルタT細胞表面受容体プロファイルを変更するためのステップを含んでいてよい。
【0093】
例えば、培養ステップは、第1の対象由来の試料において提供されたガンマデルタT細胞に存在する1つまたは複数のガンマデルタT細胞表面受容体タイプを減少または除去する、1つまたは複数のサブステップを含んでよい。こうしたステップは、ガンマデルタT細胞の受容体プロファイルを「リセット」または「部分的にリセット」して、未処置のまたは部分的に未処置の形態に戻すと考えられ得る。こうしたリセットは、ガンマデルタT細胞のがんおよびウイルス感染症を処置する機能を向上させると考えられる。一部のT細胞受容体は、該T細胞が由来する対象におけるがんまたはウイルスの存在によって誘発され得ることが知られており、かつこれらの受容体は、一部の場合ではT細胞による腫瘍またはウイルス感染への反応性を抑制し得ることが分かっている。結果として、こうした受容体を除去することは、本発明のガンマデルタT細胞の効力を増大し得る。
【0094】
1つまたは複数のガンマデルタT細胞受容体タイプの減少または除去は、細胞集団の大きさが数倍に拡大する数日間にわたって第1の対象由来のガンマデルタT細胞を培養することによる、本発明のプロセスによって達成することができる。例えば、細胞を、最低少なくとも2集団を倍加させた後、その細胞表面受容体プロファイルをリセットするために少なくとも7日という期間培養してよい。
【0095】
ガンマデルタT細胞表面受容体プロファイルがリセットされた場合、腫瘍特異的細胞表面受容体B7-H1/PD-L1、B7-DC/PD-L2、PD-1およびCTLA-4など、初期の未培養ガンマデルタ細胞上に存在した細胞表面受容体は、培養増殖期間の間になくなるか、または実質的に数を減少させることができる。
【0096】
培養ステップは、選択したガンマデルタT細胞表面受容体(例えば、上述の受容体のいずれか1つまたは任意の組み合わせ)を著しく減少または除去するのに必要な培養ステップの適切な期間を決定するために、ガンマデルタT細胞の表面受容体プロファイルを観察するステップをさらに含んでよい。ガンマデルタT細胞受容体を観察するプロセスは、例えば、Chan et al , Genes and Immunity (2014) 15, 25 to 32によって概説されているようなフローサイトメトリー技術を用いて実行することができる。簡単に言えば、免疫チェックポイント阻害剤受容体および/またはリガンドに特異的な抗体が、その細胞表面上の免疫チェックポイント阻害剤を発現している(例えば抗Vガンマ9で共染色した)ガンマデルタT細胞の部分集団を特定するために用いられるであろう。
【0097】
加えて、または任意選択的に、本発明の培養ステップは、第1の対象から抽出された際には未培養ガンマデルタ細胞の表面に存在しなかったガンマデルタT細胞表面受容体タイプの発現をガンマデルタT細胞において誘発するステップ、または、第1の対象から抽出された際に未培養ガンマデルタ細胞の表面上に存在した細胞表面受容体タイプの発現量の増加を誘発するステップを含んでいてよい。これは、がん、細菌、真菌、原虫、またはウイルスに由来する抗原でガンマデルタT細胞を攻撃することによって達成することができる。この抗原を培養増殖培地に加えて、増殖させたガンマデルタT細胞の有効性、抗原提示可能性、および細胞毒性を向上させることが可能である。適切には、抗原は、限定されるわけではないが、固定した抗原または抗体、照射した腫瘍細胞株、人工抗原提示細胞、および合成可溶性抗原の添加を含む、種々の形式で提供することができる。抗原は、培養の初日に培養増殖培地に加えてよい。実施形態において、ウイルスは、インフルエンザ、HIV、C型肝炎、B型肝炎、ヘルペス変異体、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタインバーウイルス、水痘、パピローマウイルス、エボラ、水痘帯状疱疹ウイルス、または天然痘から選択することができる。代わりに、抗原を、細胞感染症、細菌感染症、真菌感染症、または原虫感染症で見られる抗原とすることが可能である。特に、標的抗原は、インフルエンザ、HIV、C型肝炎、B型肝炎、ヘルペス変異体、サイトメガロウイルス(CMV)、エボラウイルス、エプスタインバーウイルス、水痘、パピローマウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、または天然痘に由来し得る。
【0098】
適切には、抗原は、斯かるウイルス生物の、活性または不活性のウイルス断片、ペプチド、タンパク質、抗原セグメントなどを含み得る。
【0099】
適切には、抗原には、腫瘍細胞上にのみ存在し、任意の他の細胞上には存在しない腫瘍特異的抗原、および/または、一部の腫瘍細胞にも一部の正常細胞にも存在する腫瘍関連抗原が含まれ得る。斯かる腫瘍特異的抗原としては、限定されるわけではないが、がん胎児抗原、CA-125、MUC-1、上皮腫瘍抗原およびMAGEA1、MAGEA3、MAGEA4、MAGEA12、MAGEC2を含むMAGEタイプ抗原、BAGE、GAGE、XAGE1B、CTAG2、CTAG1、SSX2、またはLAGE1、またはその組み合わせが含まれ得る。
【0100】
適切には、適した抗原を提供するために、感染細胞、壊死細胞、またはがん細胞の溶解物を利用することができる。実施形態において抗原は、合成抗原、例えば、合成ペプチドであってよい。あるいは、抗原は対象から採取してよい。適切には、抗原1mL当たり約0.02~2マイクログラムを培養ステップの間に細胞に提供することができる。
【0101】
実施形態では、ガンマデルタT細胞の増殖およびIL-2、IL-15、またはIL-18などの細胞表現型の維持を促進する因子(Garcia V. et al., 1998, Nussbaumer O. et al., 2013)を、末梢血単核細胞を培養するステップで提供することができる。適切には、こうした実施形態において、IL-2、IL-15、もしくはIL-18、またはその組み合わせを、50~2000U/mL、より好適には400~1000U/mLの範囲で培養培地に提供することができる。培養は、典型的には2から10%、より好適には5%のCO2の存在下で摂氏34度から38度、より好ましくは摂氏37度で実行される。培養培地は、培養する細胞の数に応じて追加してよい。適切には、血清は0.1~20%の量で培養液に加えてよい。血清として、例えば、ウシ胎児血清AB血清、または自家血漿を用いることができる。適切には、化学的に定義した血清代替品を、血清または血漿の代わりに用いてよい。
【0102】
実施形態において、消耗したまたはアネルギー性のガンマデルタT細胞の回復を促進する因子を、培養培地に加えてよい。適切には、これらの因子としては、IL-15もしくはIL-18などのサイトカインまたは特定の免疫チェックポイント阻害剤受容体もしくはリガンドを標的化する抗体、例えば抗PD-L1抗体が挙げられるが(Chang K. et al., 2014)、CTLA-4、PD-1、PD-2、LAG3、CD80、CD86、B7-H3、B7-H4、HVEM、BTLA、KIR、TIM3またはA2aRを対象とする抗体も含まれ得る。
【0103】
実施形態において、提供ステップには、ドナー対象からの血液または臍帯血の採取が含まれ得る。こうした採血は、例えば、ドナー対象からの約15~25mLの血液とすることができる。実施形態において、提供ステップには採取ステップが含まれ得、該採取ステップは、単一の採取プロセスにおいて第1の対象から少なくともガンマデルタT細胞を採取することである。実施形態において、採取ステップは、複数の採取セッションにわたっていてよい。
【0104】
本発明の実施形態において、ガンマデルタT細胞を提供するプロセスには、第1の対象から採取した細胞の少なくとも1つの特徴を決定する分析ステップが含まれ得る。実施形態において、細胞の少なくとも1つの特徴は、細胞のDNA配列、RNA配列、もしくはアミノ酸配列、細胞のプロテオーム、または細胞の細胞表面マーカーとすることができる。実施形態において、プロセスには、ガンマデルタT細胞の組織型を決定するステップが含まれ得る。ガンマデルタ細胞表面マーカー特徴としては、(限定されるわけではないが)CD3、CD4、CD8、CD69、CD56、CD27CD45RA、CD45、TCR-Vg9、TCR-Vd2、TCR-Vd1、TCR-Vd3、TCR-pan g/d、NKG2D、モノクローナルケモカイン受容体抗体CCR5、CCR7、CXCR3、もしくはCXCR5、またはその組み合わせが挙げられる。この分類には、遺伝子型または表現型の情報が含まれ得る。表現型の情報には、顕微鏡、細胞、または分子レベルで観察可能または測定可能な特性が含まれ得る。遺伝子型の情報は、例えば、ヒト白血球抗原(ドナーのHLA型)の、特有の遺伝的変異または突然変異に関連し得る。
【0105】
適切には、本発明のガンマデルタT細胞は、多数の患者で使用するために増殖および分化させることが可能な臨床等級の細胞株バンクを提供し得る。実施形態では、ガンマデルタT細胞を臍帯血出発原料からex vivoで増殖させ、複数のドナーに由来するものと組み合わせて、細胞バンクを充実させるのに十分な数のガンマデルタT細胞を生成することができる。斯かる細胞バンクおよびその中の単離細胞は、本発明の別個の態様を形成する。実施形態において、斯かるバンクには、適切には、ヒト白血球抗原(HLA)マッチングの可能性を最大化するように選択され、それによって同種移植拒絶のリスクまたは免疫抑制剤の実質的な使用の必要性を最小化する、血液型Oの健常なボランティアドナーから得られたガンマデルタT細胞が入れられるだろう。例えば、UK/EU患者向けの斯かるバンクは以下のものを含み得、これは拒絶のリスクを減少しつつかなりの割合のUK/EU人口の治療を可能にする。
【0106】
【0107】
実施形態において、本発明の採取し処理したガンマデルタT細胞を、今後の使用のために細胞バンクまたは保管所に預けることが可能である。したがって、細胞は、DMSOまたはCryoStor(商標)などの凍結保存物質内で貯蔵され、制御された凍結速度および液体窒素内での貯蔵に供され得る。ガンマデルタT細胞は、単一または多数の処置ステップで必要とされる定義した単位または投薬量のユニット化ストレージで保存することができる。
【0108】
一実施形態において、プロセスは、採取試料内のガンマデルタT細胞の貯蔵、生存能力、または治療能力を向上させる薬剤で第1の対象から採取した細胞集団を処置するステップを含み得る。一実施形態において、プロセスは、ガンマデルタT細胞試料中のガンマデルタT細胞に凍結保存剤を与える保存ステップを含み得る。
【0109】
実施形態において、ガンマデルタT細胞は、リン酸化抗原イソペンテニルピロフォスファート(IPP)増殖ヒトVγ9Vδ2T細胞であり得る。
【0110】
支配的な末梢血γδT細胞サブセットは、標準的なVγ9Vδ2TCRを発現し、これはTCR依存的な方法で、メバロン酸経路の調節不全に基づき、小分子量(~350Da)のピロフォスファート抗原のレベル上昇の感知を介して、標的細胞を認識する。これらは、細菌感染症を意味する外来由来であるか(HMBPPなど)、または、腫瘍化時のイソプレノイド合成の増加を指す内因性(IPP)の何れかであり得る。
【0111】
Vγ9Vδ2細胞は、非常に広範囲の標的細胞に発現し、ピロフォスファート抗原に特異的に結合する細胞質B30.2ドメインを含有する細胞表面糖たんぱく質BTN3A1を認識するために出現し、BTN3A1のクラスタリングおよび生産的TCR認識に至る。重要なことに、Vγ9Vδ2の活性化はCD3ゼータおよびZAP-70が介在するTCRシグナル伝達に依存するが、それは、TCR介在性シグナル伝達と最終的に統合するPI3-キナーゼ経路シグナルを強めるCD28などの共刺激性受容体またはNKG2Dなどの「ストレスのかかった」受容体が介在し得る、共刺激性経路に強く影響される。
【0112】
実施形態において、ガンマデルタT細胞は増殖したヒトVδ1T、Vδ2T、またはVδ3T細胞であり得る。
【0113】
個体の感染症またはがんを処置する方法であって、前記個体に別の固体から得たガンマデルタT細胞を提供するステップを含む方法も提供する。したがって、ドナーのガンマデルタT細胞を、例えばウイルス、細菌、真菌、もしくは原虫の感染症の処置、またはレシピエント対象のがんの処置に用い、ここではドナーとレシピエントは同一の固体ではない。理解されるように、ガンマデルタT細胞を第2対象に提供する前、このガンマデルタT細胞を本明細書で論じるように修正して、CAR修正ガンマデルタT細胞を提供する。
【0114】
適切には、ガンマデルタT細胞をレシピエント対象に提供する投与法には、静脈内注射、皮内注射、または皮下注射が含まれ得る。投与は、個体に対し、患部にまたは全身的になされ得る。適切には、投与法は、個体に利益を示すのに十分な「予防的に有効な量」または「治療的に有効な量」のガンマデルタT細胞を提供する、予防法(場合によっては、予防は治療と考えられる場合もあるが)とすることが可能である。実際の投与量、投与速度、および投与の時間的経過は、処置するものの性質および重症度に左右されるだろう。処置についての処方、例えば投与量などの決定は、総合診療医および他の医師の責任の範囲内にある。
【0115】
実施形態において、第1の対象に由来するガンマデルタT細胞を、ウイルス、細菌、真菌、または原虫に感染した第2の異なる対象の治療で用いるために提供し、前記対象の治療は同種的である。
【0116】
実施形態において、第1の対象に由来するガンマデルタT細胞を、ウイルスに感染した第2の異なる対象の治療のために提供し、前記ウイルスは、HIV、インフルエンザ、または肝炎から選択され、前記治療は同種的である。実施形態において、ウイルスは、B肝炎、C型肝炎、インフルエンザ、ヘルペス変異体、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタインバーウイルス、水痘、パピローマウイルス、エボラ、水痘帯状疱疹ウイルス、または天然痘であり得る。
【0117】
実施形態において、インフルエンザウイルスはA型インフルエンザ(FluA)ウイルスであり得る。実施形態において、インフルエンザウイルスは、鳥類またはブタ由来のパンデミックインフルエンザウイルス、例えば、H5N1、H7N3、H7N7、H7N9およびH9N2(鳥類サブタイプ)またはH1N1、H1N2、H2N1、H3N1、H3N2H2N3(ブタサブタイプ)であり得る。
【0118】
実施形態において、がんを有する対象の治療のためのガンマデルタT細胞を提供し、前記治療は同種的である。
【0119】
実施形態において、第1の対象に由来するガンマデルタT細胞を、ウイルス、真菌、または原虫の少なくとも1つに感染している第2の対象の治療で用いるために提供する。実施形態において、ガンマデルタT細胞を提供された対象には、免疫抑制剤を同時に、連続的に、または別々に投与することが可能である。免疫抑制剤の投与は、ガンマデルタT細胞に対する任意の有害なシステム反応の緩和に役立ち得る。
【0120】
実施形態において、エプスタインバーウイルス誘発性リンパ増殖性疾患(EBV-LPD)を有する対象の治療のためのガンマデルタT細胞を提供する。
【0121】
エプスタインバーウイルス(EBV)は、ガンマヘルペスウイルスファミリーのメンバーであり、西欧人の間でよく見られる(>90%の成人が血清陽性である)。EBVは、ウイルスの再活性化を防ぐ宿主の細胞毒性T細胞(CTL)によって潜在性感染として維持されるため、EBVが宿主のβ細胞において潜在性感染として無症候的に残ることが可能である。
【0122】
EBVは、鼻咽頭癌(UPC)および胃がんなどの上皮由来のがんに加えて、バーキットリンパ腫(BL)、ホジキン病(HD)、および移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)などのβ細胞由来のいくつかの悪性腫瘍に関連する。
【0123】
PTLDは、固形臓器移植および造血幹細胞移植に関連する一般的なリスクである。
【0124】
実施形態において、第1の対象に由来するガンマデルタT細胞を、EVB関連の悪性腫瘍を有する第2対象の治療で用いるために提供する。
【0125】
実施形態において、対象の自家的または同種的治療で用いるための、少なくとも1つの共刺激性CARを含む、特にVγ9Vδ2細胞を有するガンマデルタT細胞を提供する。
【0126】
実施形態において、異なるウイルス徴候の治療のための1つまたは複数の特異的ガンマデルタTCRイソタイプのガンマデルタT細胞を提供する。例えば、Vδ2posサブタイプが、HIVおよびインフルエンザ感染の治療において最も有効で有り得る一方で(Wallace M. et al., 1996 Tu W. et al. 2011)、EBV感染細胞のコントロールにおける少なくとも2つのガンマデルタT細胞サブタイプ;Vδ1pos(Farnault L, et al., 2013)およびVδ2pos細胞(Xiang Z. et al., 2014)の役割についてもエビデンスが存在する。適切には、ガンマデルタT細胞療法の有効性を高めるようにガンマデルタT細胞サブタイプの組み合わせを選択し、患者に投与することができる。適切には、これらは、個別の培養条件を用いて生成された単一のイソタイプガンマデルタT細胞集団または定義された細胞培養パラメータの単一セットを用いて同時に生成された多価のガンマデルタT細胞集団を含み得る。
【0127】
実施形態において、対象を自家的または同種的に治療する際に用いるガンマデルタT細胞、特にVγ9Vδ2細胞と、ピロフォスファート/フォスフォネート薬物を提供する。
【0128】
また、ガンマデルタT細胞を自家的に対象に提供するプロセスであって、
-対象由来のガンマデルタT細胞のサンプルを提供するステップと;
-前記ガンマデルタT細胞を培養してそれらを前記対象に再び投与するステップであって、前記培養ステップは前記ガンマデルタT細胞を修正してCAR修正ガンマデルタT細胞、好適には本明細書で論じる「共刺激性」または「TCR調整可能」CARを提供することを含む、ステップとを含む、プロセスを提供する。
【0129】
上記の提供ステップおよび培養ステップは何れも本発明のガンマデルタT細胞に適用することができる。例えば、ガンマデルタT細胞を培養するステップは、上記で論じたように、ガンマデルタT細胞表面受容体プロファイルを変更するステップを含んでいてよい。
【0130】
また、個体の感染症またはがんを処置する方法であって、前記個体にその固体から得たガンマデルタT細胞を提供するステップを含み、前記ガンマデルタT細胞は本発明により記載するプロセスによって提供された、方法を提供する。
【0131】
実施形態においてがんは、骨髄腫または黒色腫であり得る。実施形態において、がんとしては、限定されるわけではないが、胃がん、腎細胞がん、肝細胞がん、膵臓がん、急性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、急性リンパ芽球性白血病、非小細胞肺がん、EBV-LPD、バーキットリンパ腫、およびホジキン病を含む腫瘍型が挙げられる。
【0132】
本発明のさらなる態様に従って、本発明で用いる単離したガンマデルタT細胞、特に、少なくとも1つの共刺激性CARを含むVγ9Vδ2細胞を提供する。実施形態において、単離したガンマデルタT細胞、特にVγ9Vδ2細胞、具体的にはガンマデルタT細胞、例えば、少なくとも1つの共刺激性CARを含むVγ9Vδ2細胞と、ピロフォスファート/フォスフォナート薬物を、対象を自家的または同種的に処置するために組み合わせて用いるキットとして提供する。
【0133】
本発明のさらなる態様に従って、本発明のまたは本発明のプロセスのいずれかのガンマデルタT細胞を含む医薬組成物を提供する。
【0134】
実施形態において、組成物は、個体に提供して治療効果をもたらすのに適した、統一用量のガンマデルタT細胞を含む。
【0135】
実施形態において、医薬組成物は、一人当たり25×109個のガンマデルタT細胞を超える総用量を含み得る。
【0136】
実施形態において、がんの処置で用いるための、本発明のガンマデルタT細胞および抗体免疫療法を含む医薬組成物を提供する。
【0137】
実施形態において、抗体免疫療法は、例えば、RocheおよびBristol Myers Squibbによって開発されたような、PD-1、PDL-1、および/またはCTLA-4阻害剤などの免疫カスケードブロッキング剤とすることが可能である。
【0138】
実施形態において、医薬組成物は、CTLA-4阻害シグナルをブロックできる抗体を含んでいてよい。CTLA-4シグナルをブロックすることにより、Tリンパ球が細胞を認識および破壊することが可能になる。実施形態において、斯かる抗体は、イピリムマブ(MDX-010、MDX-101)であり得る。
【0139】
実施形態において、抗体は、プログラムされたデスリガンド1(PDL-1)を阻害し得る。実施形態において斯かる抗体は、MPDL3280A(Roche)またはMDX-1105から選択することが可能である。
【0140】
実施形態において、医薬組成物は、サイトカイン、例えば、IL-2またはIL-12と組み合わせることができる。実施形態において医薬組成物は、インターフェロンガンマを含んでいてよい。
【0141】
実施形態において、がんの治療において用いるための、本発明のガンマデルタT細胞と化学療法薬を含む医薬組成物を提供する。
【0142】
実施形態において、ウイルスの処置において用いるための、本発明のガンマデルタT細胞と療法薬を含む医薬組成物を提供する。
【0143】
実施形態において医薬組成物を、がんまたは感染症用の治療剤または予防剤として用いることが可能である。
【0144】
本発明の実施形態において、ガンマデルタT細胞は、Vγ9Vδ2T細胞とすることが可能である。
【0145】
適切には、実施形態において、本発明は、共刺激性CAR配列を、定義された抗原特異性を有するT細胞またはT細胞様細胞、例えば、α-GalCerに対し特異性を有するNKT細胞、または、例えば、ビタミンB関連抗原に対し特異性を有する粘膜関連インバリアントT(MAIT)細胞に提供することを包含し得る。実施形態では、(伝統的(機能性CD3ゼータドメインを含む)または共刺激性(非機能性のCD3ゼータドメインを有する/CD3ゼータドメインを欠く)の)CARをγδT様細胞に提供することができ、該γδT様細胞は、機能性ガンマデルタT細胞受容体を発現するように遺伝子改変したαβT細胞である。適切には、このような修正細胞が本発明の態様を形成する。実施形態では、(伝統的または共刺激性の)CARをγδT様細胞に提供することが可能であり、該γδT様細胞は、機能性ガンマデルタT細胞受容体を発現するように遺伝子操作した任意のT細胞である。適切には、このような修正細胞が本発明の態様を形成する。
【0146】
実施形態において、(非機能性のCD3ゼータドメインを有する/CD3ゼータドメインを欠く)共刺激性CARを、定義した抗原特異性を備えたT細胞受容体を有する(伝統的または非伝統的な)任意のT細胞に提供することが可能である。このような修正細胞が本発明の態様を形成する。適切には、本発明の第1態様に関連して論じた実施形態を、本発明のさらなる態様であるこれらの修正細胞に適用することが可能である。適切には、このような修正細胞は、本発明の第1態様およびその実施形態の細胞に関連して本明細書で論じるように用いることができる。
【0147】
本発明の各態様の好ましい特徴および実施形態は、文脈上、他が求められる場合を除き、他の態様のそれぞれについても必要な変更を加えれば同様である。
【0148】
本文で引用する各文書、参考文献、特許出願、または特許は、参照によってそれらの全体が本明細書に明白に組み込まれ、これは読者によって本文の一部として読まれ、考慮されるべきであることを意味する。本文で引用する各文書、参考文献、特許出願、または特許が本文において繰り返されないのは、単に簡潔さのためである。
【0149】
本文に引用されている資料または含まれている情報への言及は、該資料または情報が常識の一部であったまたは任意の国において既知であったことの承認として理解されるべきではない。
【0150】
本明細書を通して、文脈上、他が求められる場合を除き、語「含む(comprise)」もしくは「含む(include)」、または、「含む(comprises)」もしくは「含んでいる(comprising)」、「含む(includes)」もしくは「含んでいる(including)」などの変形形態は、言明した整数または整数の群の包含を意味するが、他の任意の整数または整数の群の除外を意味するものではないと理解されたい。
【0151】
本発明の実施形態を単なる例示として、添付図面を参照して記載する。
【図面の簡単な説明】
【0152】
【
図1A】伝統的なCARを発現しているVガンマ9サブタイプのγδT細胞の長所と短所についての図式的表示を提供する図である。これらの、γδT細胞は、CAR誘発抗原を発現している健常な細胞により活性化されるため、「標的上、腫瘍外」毒性の傾向がある(上部パネル)。しかしながら、これらの細胞は、CARおよびγδTCRを介した二重のシグナル伝達により、CAR標的抗原を発現している感染細胞またはがん細胞に対する活性の増大を示し得る(下部パネル)。
【
図1B】共刺激性CARを発現するVガンマ9タイプのγδT細胞の長所についての図式的表示を提供する図である。共刺激性CARを発現しているγδT細胞は、(CD3ゼータドメイン/シグナル1を欠くため)「標的上、腫瘍外」毒性を欠くが、高レベルのリン酸化抗原(そのためγδTCRを介してシグナル1が提供される)およびCAR誘発抗原を発現する感染または形質転換細胞に対しては、細胞毒性活性の増加を引き出すだろう。
【
図2】伝統的および共刺激性の構成物の設計についての例示的な実施形態を提供する図である。(A)は、GMCSF-R分泌シグナルドメイン、CD19を標的とするscFv、CD28ヒンジ、膜貫通、および活性化ドメイン、CD137(4-1BB)活性化ドメイン、ならびにCD3ζ活性化ドメインを含む、伝統的なCAR構成物の設計を示す。(B)は、GMCSF-R分泌シグナルドメイン、CD19に対するscFv、CD28ヒンジ、膜貫通、および活性化ドメイン、ならびにCD137(4-1BB)活性化ドメインを含む共刺激性CAR構成物を示す。
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図3A】本発明で用いる伝統的なCAR構成物の配列を提供する図である。「伝統的な」/「調整不可の」CARのヌクレオチド配列を提供する。機能性ドメインはそれぞれアミノ酸配列内にアノテーションされ、これには、抗CD19scFv配列、CD28ヒンジ、膜貫通、細胞内活性化ドメイン、CD137(4-1BB)活性化ドメイン、およびCD3ζ細胞内活性化ドメインが含まれる。
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図3B】本発明で用いる伝統的なCAR構成物の配列を提供する図である。「伝統的な」/「調整不可の」CARのアミノ酸配列を提供する。
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図4A】本発明で用いる共刺激性CAR構成物の配列を提供する図である。「共刺激性の」/「TCR調整可能な」CARのヌクレオチド配列を提供する。機能性ドメインはそれぞれアミノ酸配列内にアノテーションされ、これには、抗CD19scFv配列、CD28ヒンジ、膜貫通、細胞内活性化ドメイン、およびCD137(4-1BB)活性化ドメインが含まれる。
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図4B】本発明で用いる共刺激性CAR構成物の配列を提供する図である。「共刺激性の」/「TCR調整可能な」アミノ酸配列を提供する。
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図5】伝統的CARおよび共刺激性CARの両方にある、CD28配列およびCD137(4-1BB)配列にまたがる標的を増幅するように設計したユニバーサルプライマー対を示す図である。CD137(4-1BB)配列とCD3ζ活性化ドメインを含有する配列からアンプリコンを生成し、そのために伝統的なCARから生成物を増幅することはできるが、共刺激性CARヌクレオチド配列からは生成物を増幅できないように、差別的プライマー対を設計した。(A)伝統的CAR配列および共刺激性CAR配列を検出するために用いる、2つのプライマー対のヌクレオチド配列を提供する。(B)伝統的CAR設計におけるユニバーサルプライマーおよび差別的プライマーのアニーリング位置についてのメモリ付き図である。(C)共刺激性CAR設計におけるユニバーサルプライマーのアニーリング位置についてのメモリ付き図である。
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図6】ユニバーサルプライマーを用いて伝統的CARプラスミド(r
2=0.998)(A)と共刺激性CARプラスミド(r
2=0.987)の標準曲線(C)を生成する、段階的に希釈したプラスミドDNAのqPCR増幅を示す図である。したがって、ユニバーサルプライマー対を用いて、qPCRにより両配列のレベルを量的に検出することが可能である。qPCRは、いずれかのウイルスを形質導入した細胞において実行した。40サイクルのPCR増幅の後に実行した融解曲線分析は、両プライマー対が、伝統的なCAR形質導入細胞に由来するRNAから単一アンプリコンを生成する一方(B)、ユニバーサルプライマー対(薄灰色)のみが共刺激性CAR形質導入細胞からの抽出RNAよりアンプリコンを生成することが可能である(D)ことを示す。このデータは、両プライマー対が1つのみの生成物を増幅し、差別的プライマー対(濃い灰色)は2つの転写物を区別することが可能であるという点で特異的であることを示す。
【
図7】2つのB細胞リンパ腫細胞株を、フローサイトメトリーによりCD19標的抗原発現について評価した;Daudiバーキットリンパ腫細胞(上部パネル)およびRamosバーキットリンパ腫細胞(下部パネル)。各細胞株の98%がCD19を発現する一方、MFIにより求められるように、Daudi細胞はより高い強度/発現レベルを示した(A)。非形質導入γδT細胞と比較し、CD19
+がん細胞株に対し伝統的なCAR構成物を発現するVガンマ9γδT細胞の細胞毒性機能の増大が観察された。ゾレドロン酸を用いた刺激の48時間後、PBMCに伝統的CARを含有するレンチウイルスベクターを形質導入した。形質導入した細胞をさらに7日間増殖させ、CD19陽性細胞株Daudi(上部パネル)およびRamos(下部パネル)に対するその細胞毒性機能をフローサイトメトリーにより調べた。Daudi細胞およびRamos細胞を、フローサイトメトリーによる検出を可能にする非毒性細胞膜マーカーPKH67で蛍光標識した。蛍光性標識細胞を、形質導入した伝統的CAR(右手側)または(非形質導入の)γδT細胞(左手側)とともに4.5時間共培養した。標的がん細胞株の生存能力をAnnexin VおよびPIの染色により評価した(B)。Annexin VまたはAnnexin VおよびPIを発現するがん細胞を、それぞれ、早期アポトーシスおよび後期アポトーシスと考えた。Daudi細胞は、γδT細胞介在性殺傷に対しより高い相対感度を呈し(76.4%特異性細胞死)、これはさらに、Daudi細胞を伝統的CARγδT細胞とともに共培養した場合に高まった(86.4%特異性細胞死)。Ramos細胞は、γδT細胞介在性殺傷に対し比較的感度が低かったが(39%特異性細胞死)これは、Ramos細胞を伝統的CARγδT細胞とともに共培養した場合に著しく高まった。著しく高いレベルの細胞崩壊が観察された(55%特異性細胞死)。このデータは、伝統的CAR発現γδT細胞が、非形質導入γδT細胞と比較した場合、CD19陽性がん細胞株に対する細胞毒性機能を高めたことを明確に示す。伝統的CARγδT細胞での特異的細胞死の増加率は、Daudi細胞(~13%)よりもRamos細胞株(~46%)でより高かった(C)。このデータは、伝統的CARを形質導入したγδT細胞が、耐性細胞株の細胞崩壊に対する感受性を高め得ることを示す。
【
図8】白血球除去材から単離したPBMCを、5μMのゾレドロン酸と1000IU/mLのIL-2を共に培養物に入れた。培養物中において48時間後、細胞に、MOI10で伝導的CAR構成物を含有するレンチウイルスとウイルス形質導入の効率性を高めるための5μg/mLのポリブレンの包含物を用いて形質導入した。レンチウイルス形質導入を24時間後(3日目)に繰り返した。10日目に、抗CD3抗体および抗Vガンマ9抗体を用いて、細胞のγδT細胞の純度についてフローサイメトリーにより評価した。一貫して、高純度γδT細胞集団が形質導入した構成物に関係なく細胞集団の全てにおいて産生された;非形質導入対照(81%γδT細胞)、伝統的CAR(86%γδT細胞)、共刺激性CAR(89%γδT細胞)(A)。5日目に、RNAを1×10
5細胞と、ランダムヘキサマーおよび逆転写酵素を用いて合成したcDNAと、SYBRグリーンおよび前述のユニバーサルプライマーを用いてqPCRを実行した。同等レベルのCAR転写産物発現を示す形質導入後5日目の形質導入細胞において、伝統的なCARmRNAおよび共刺激性CARmRNAのCAR転写産物発現の相対定量を、構成物に関わらず検出する(データは18SリボソーマルRNAレベルに対し正規化し、レトロネクチン系形質導入におけるCAR発現に関連して表現した)(B)。形質導入した細胞を、CD19陽性細胞株DaudiおよびRamosに対する細胞毒性機能について調べた。Daudi細胞およびRamos細胞を、24時間、+/-5μMゾレドロン酸で予め処置し、次にフローサイトメトリーによる検出を可能にする非毒性細胞膜マーカーPKH67で蛍光標識した。蛍光性標識細胞を、形質導入した伝統的CAR、共刺激性CAR、または(非形質導入の)γδT細胞とともに4.5時間共培養した。標的がん細胞株の生存能力をAnnexin VおよびPIの染色により評価した。Daudi細胞はγδT細胞介在性細胞崩壊の影響を受けやすく(36%特異性細胞死)、これはゾレドロン酸の前処理により上昇した(48%特異性細胞死)。Daudi細胞を、伝統的CARまたは共刺激性CARの何れかを発現しているγδT細胞とともに共培養した場合、アポトーシスのレベルはさらに上昇した(伝統的CARでは64%特異性細胞死、共刺激性CARでは54%特異性細胞死)(C)。これは、共刺激性CARは単独では両方のシグナルを提供することはできないが、活性化γδT細胞の文脈で発現する場合は追加の効果を呈し得ることを示す。この観測を拡大するため、感受性の低いRamos細胞株を用いた。γδT細胞は、これらの細胞においてはより低いレベルのアポトーシスを媒介した一方(11%特異性細胞死)、ゾレドロン酸の前処理は効果がなかった(10%特異性細胞死)。しかしながら、γδT細胞が伝統的CARまたは共刺激性CARの何れかを発現した場合、アポトーシスのレベルは著しく上昇した(伝統的CARでは25%特異性細胞死、共刺激性CARでは30%特異性細胞死)(D)。このデータは、抗原が活性化γδT細胞の文脈に関与する場合、CD3ζを欠くCAR(つまり、共刺激性CAR)の機能性へのさらなる裏付けを提供する。
【実施例】
【0153】
実施例1
PBMCを密度遠心分離法(lymphoprep)により白血球除去材から単離し、凍結保存した。PBMCを蘇生させ、ゾレドロン酸(5μM)で刺激したPBMCをIL-2(1000IU/mL)と5%ヒトAB血清の存在下で、増殖培地において培養した。培養物において48時間後(37℃、5%CO
2、加湿雰囲気)、細胞に、伝統的CAR配列(抗CD19scFv-CD28-CD137-CD3ζ)または共刺激性CAR配列(抗CD19scFv-CD28-CD137)のいずれかと、MOI10の5μg/mLのポリブレンと共に、レンチ-CMV-MCS-EF1a-puro構成物を含有するレンチウイルスを形質導入した。形質導入を24時間後に繰り返した。CARmRNA発現を、5日目に両構成物の発現を検出するユニバーサルプライマーを用いて、QPCRにより検証した。各構成物の特異的な発現を、差別的プライマーおよびユニバーサルプライマーの組み合わせを用いて確かめた(
図5、6のように)。
【0154】
実施例2
細胞に伝統的CAR配列を含有するレンチウイルスを形質導入し、例1に記載したように増殖させた。形質導入後7日目に、形質導入したまたは形質導入していないγδT細胞を、CD19陽性標的細胞株、DaudiまたはRamosと共に共培養することにより細胞毒性活性を評価した。標的細胞株を、フローサイトメトリーを用いて、CD19標的集団の特異的視覚化のために、非毒性膜染料PKH67(5μM)で染色した。ガンマデルタT細胞または伝統的なCARを発現するγδT細胞と共に4.5時間共培養した後、共培養物をannexin Vおよびヨウ化プロピジウム(PI)で染色してアポトーシス細胞を可視化した。特異性細胞死率を標的細胞集団においてのみ計算した。非形質導入γδT細胞と比較し、CAR形質導入γδT細胞の効能はCD19陽性標的細胞において増大した(
図7)。
【0155】
実施例3
細胞に伝統的CAR配列または共刺激性CAR配列を含有するレンチウイルスを形質導入し、実施例1に記載したように増殖させた。CD19陽性標的細胞株、DaudiまたはRamosを24時間、+/-5μMゾレドロン酸で前処理した。細胞毒性活性を実施例2に記載するように評価した。PKH67染色標的細胞(+/-ゾメタ前処理)を形質導入したまたは形質導入していないγδT細胞とともに共培養した。共刺激性CAR発現γδT細胞は、CD3ζ活性化ドメインを欠くにも関わらず、IPP感知によるγδTCRを介した活性化により代わりにシグナル1が提供され、CD19陽性標的細胞に対して伝統的CAR発現γδT細胞と同様の細胞毒性を呈した。両CARは、非形質導入γδT細胞と比較した場合、γδT細胞に対し細胞毒性の増大を提供した(
図8)。
【0156】
本発明は特定の例に関連して特に示し、記載したが、形態および詳細における種々の変更を本発明の範囲から外れることなく本明細書において行えることが当業者により理解されよう。
【配列表】