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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-17
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】燃料タンク
(51)【国際特許分類】
   B60K 15/03 20060101AFI20220106BHJP
   B60K 15/073 20060101ALI20220106BHJP
   F02M 37/00 20060101ALI20220106BHJP
   B32B 1/02 20060101ALI20220106BHJP
   B32B 3/26 20060101ALI20220106BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20220106BHJP
   B65D 25/34 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
B60K15/03 B
B60K15/073
F02M37/00 301D
B32B1/02
B32B3/26 A
B32B15/08 E
B65D25/34 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018004601
(22)【出願日】2018-01-16
(65)【公開番号】P2019123340
(43)【公開日】2019-07-25
【審査請求日】2020-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】308039414
【氏名又は名称】株式会社FTS
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 佳史
(72)【発明者】
【氏名】小澤 大吾
(72)【発明者】
【氏名】田所 卓也
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-285393(JP,A)
【文献】特開2001-246946(JP,A)
【文献】特開2011-93409(JP,A)
【文献】特開2001-130270(JP,A)
【文献】実開平4-90425(JP,U)
【文献】中国実用新案第205439969(CN,U)
【文献】特開2017-88059(JP,A)
【文献】実開平6-47023(JP,U)
【文献】実開平4-106014(JP,U)
【文献】実開昭62-137725(JP,U)
【文献】米国特許第5011743(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 11/00- 15/10
B60K 16/00
B65D 23/00- 25/56
B32B 1/00- 43/00
F02M 31/20
F02M 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を貯留するタンク本体と、
前記タンク本体の外面を覆う断熱部材と、
耐火性を有する材料からなり、前記断熱部材の外面を覆う状態で前記タンク本体に取り付けられたプロテクタとを備え、
前記プロテクタの外面にヒートシンクが形成されていることを特徴とする燃料タンク。
【請求項2】
燃料を貯留するタンク本体と、
前記タンク本体の外面を覆う断熱部材と、
耐火性を有する材料からなり、前記断熱部材の外面を覆う状態で前記タンク本体に取り付けられたプロテクタとを備え、
前記プロテクタには、前記プロテクタの内面を凹ませた形態であって、前記断熱部材との間に通気室を形成する複数の凹部が形成され、
前記通気室は、前後方向に延びており、
前記通気室内では、空気の流動が可能であることを特徴とする燃料タンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料タンクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料タンクとして、排気管等の高温となる放熱性部材との干渉回避のために下面中央部に底上げ部が形成された鞍型のものがある。この鞍型燃料タンク内には、底上げ部を挟んで左右に区画された第1貯留部と第2貯留部が形成されており、第1貯留部と第2貯留部の上端同士が連通している。給油時には、燃料が第1貯留部に向けて流入され、第1貯留部に流入した燃料の一部は、底上げ部を乗り越えて第2貯留部へ流入し、満タン状態となる。また、第1貯留部に燃料ポンプが取り付けられる場合、燃料消費の際には、燃料ポンプに設けられているジェットポンプにより第2貯留部内の燃料が先に使用されるようになっている。そのため、タンク内の燃料が少なくなった場合、第1貯留部のみに燃料が貯留されて、第2貯留部が空となるため、放熱性部材が発する熱の影響により、空になった第2貯留部の温度が高くなり易い。
【0003】
このような場合における第2貯留部の昇温を抑制可能な手段として、特許文献1には、燃料タンクの外面を断熱部材で覆うとともに、この断熱部材の外面をプロテクタで覆い、放熱性部材から第2貯留部への輻射熱を断熱部材とプロテクタによって遮断する技術が開示されている。プロテクタは、断熱部材を支える機能と、断熱部材を雨水や飛び石等から保護する機能とを兼ね備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-088059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のプロテクタは合成樹脂製であるため、放熱性部材の温度がプロテクタの耐熱温度を上回ると、プロテクタが熱変形してしまう虞がある。プロテクタが熱変形すると、断熱部材を保護する機能と断熱部材を支える機能が損なわれることが懸念される。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、断熱部材を覆うプロテクタの信頼性低下を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、
燃料を貯留するタンク本体と、
前記タンク本体の外面を覆う断熱部材と、
耐火性を有する材料からなり、前記断熱部材の外面を覆う状態で前記タンク本体に取り付けられたプロテクタとを備え、前記プロテクタの外面にヒートシンクが形成されているところに特徴を有する。
第2の発明は、
燃料を貯留するタンク本体と、
前記タンク本体の外面を覆う断熱部材と、
耐火性を有する材料からなり、前記断熱部材の外面を覆う状態で前記タンク本体に取り付けられたプロテクタとを備え、
前記プロテクタには、前記プロテクタの内面を凹ませた形態であって、前記断熱部材との間に通気室を形成する複数の凹部が形成され、
前記通気室は、前後方向に延びており、
前記通気室内では、空気の流動が可能であるところに特徴を有する。
尚、本発明の「耐火性を有する材料」は、排気管のうち燃料タンク近傍の部位がエンジン駆動中に高温(400~500℃)になること、さらに第2貯留部が空の状態において車両火災時に燃料タンクを火炎(700~800℃)から保護する必要があることを勘案し、引張り強度が急激に低下する温度(つまり、材料が急激に軟化する温度)が火炎の温度(700~800℃)を上回る材料と定義する。
【発明の効果】
【0008】
排気管等の放熱性部材が高温になったり、タンク本体の近傍で車両火災が発生したりした場合でも、耐火性を有するプロテクタは熱変形する虞がないので、プロテクタの機能の信頼性が保たれる。また、第1の発明によれば、プロテクタに伝わった熱はヒートシンクから大気中へ放出されるので、プロテクタの温度上昇を抑制することができる。第2の発明によれば、プロテクタの内面と断熱部材の外面との接触面積が小さくなるので、プロテクタが高温になっても、プロテクタから断熱部材への熱伝達が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1の燃料タンクの正断面図
図2】プロテクタのヒートシンクを省略した燃料タンクの底面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施例1>
以下、本発明を具体化した実施例1を図1図2を参照して説明する。尚、以下の説明において、上下の方向については、図1にあらわれる向きを、そのまま上方、下方と定義し、左右の方向についても、図1,2にあらわれる向きを、そのまま左方、右方と定義する。
【0013】
本実施例1の燃料タンク10は、合成樹脂製のタンク本体11と、断熱部材18と、プロテクタ20とを備えて構成されている。タンク本体11は、ガソリン等の燃料Fを貯留するものであり、全体として前後寸法及び幅寸法(左右寸法)に対して高さ寸法が比較的小さい偏平な形状をなす。
【0014】
タンク本体11の底面には、その幅方向(左右方向)における中央部を凹ませた形態の底上げ部12が形成されている。底上げ部12は、プロペラシャフトP及び高温となる排気管E(放熱性部材)との干渉回避のために設けられた部位である。底上げ部12を形成したことにより、タンク本体11の内部は、底上げ部12より左側の第1貯留部13と底上げ部12より右側の第2貯留部14とに区画されている。第1貯留部13と第2貯留部14は、その上端部側領域において互いに連通している。
【0015】
第1貯留部13の底面と第2貯留部14の底面には、タンクバンド16を左右方向に位置決めするための手段として前後方向の位置決め溝15が形成されている。燃料タンク10は、位置決め溝15に沿わせた左右一対のタンクバンド16によって車体Bの床下に吊り下げられた状態で取り付けられている。第2貯留部14に取り付けられたタンクバンド16のうち位置決め溝15に嵌合した部分には、プロテクタ20をタンク本体11に固定する手段として、下向きに突出するスタッドボルト17が固着されている。
【0016】
燃料タンク10に給油する際には、燃料Fが第1貯留部13に向けて流入され、第1貯留部13に流入した燃料Fの一部が、底上げ部12を乗り越えて第2貯留部14へ流入し、満タン状態となる。また、燃料消費の際には、第1貯留部13に取り付けた燃料ポンプ(図示省略)に設けられているジェットポンプにより、第2貯留部14内の燃料Fが先に使用されるようになっているため、タンク本体11内の燃料Fが少なくなると、第2貯留部14が殆ど空になる。この状態で車両火災が発生した場合、火炎が第2貯留部14に直接当たると、第2貯留部14(タンク本体10)が溶融してしまうことになる。そこで、火炎が第2貯留部14に直接曝されることを防止する手段として、プロテクタ20で第2貯留部14を覆っている。また、タンク本体11は車体Bの床下に設けられているため、走行中に飛び石等の異物が第2貯留部14の底面16Rと右外側面19Rに衝突することが懸念されるが、プロテクタ20は、第2貯留部14への異物の干渉を抑制する手段としても機能する。
【0017】
断熱部材18は、例えば発泡性の合成樹脂材料からなる湾曲した板材であり、第2貯留部14の底面と左右両外側面とを覆うように配置されている。断熱部材18の内面(上面)はタンク本体11(第2貯留部14)の外面に対し接触又は僅かに隙間を空けて対向した状態となっている。断熱部材18は、断熱部材18の外部(第2貯留部14の下方)からの輻射熱が第2貯留部14に伝わることを抑制するとともに、断熱部材18の外面に伝達された熱が第2貯留部14に伝わることを抑制する。断熱部材18には、スタッドボルト17との干渉を回避するための連通孔19が形成されている。
【0018】
プロテクタ20は、耐火性を有する金属材料(例えば、鉄、ステンレス鋼等)からなる板材である。本実施例における「耐火性を有する材料」は、排気管Eのうち燃料タンク10の近傍の部位がエンジン駆動中に高温(400~500℃)になること、さらに第2貯留部14が空の状態において車両火災時に燃料タンク10を火炎(700~800℃)から保護する必要があることを勘案し、引張り強度が急激に低下する温度(つまり、材料が急激に軟化する温度)が火炎の温度(700~800℃)を上回る材料と定義する。プロテクタ20は、断熱部材18の外面に沿うように湾曲した形状である。
【0019】
プロテクタ20の幅方向中央部には、上下方向に貫通する取付孔21が形成されている。取付孔21はスタッドボルト17に嵌合され、プロテクタ20の下方からスタッドボルト17に螺合したナット22が締め付けられている。このスタッドボルト17とナット22により、プロテクタ20がタンク本体11(第2貯留部14)に固定されている。タンク本体11に取り付けられたプロテクタ20は、断熱部材18の外面の全領域を殆ど隙間なく覆っている。これにより、プロテクタ20は、断熱部材18をタンク本体11から離脱しないように支える機能と、断熱部材18を雨水や飛び石等から保護する機能とを発揮する。
【0020】
プロテクタ20には、その内面を凹ませた形態の複数の凹部23が形成されている。プロテクタ20の内面のうち凹部23が形成されている領域には、断熱部材18の外面との間に通気室24が形成されている。通気室24は前後方向に延びていて、通気室24の前後両端は大気中に開放されている。したがって、車両の走行中は、通気室24内を空気が流動するようになっている。
【0021】
プロテクタ20の外面には、ヒートシンク25が一体に形成されている。ヒートシンク25は、プロテクタ20の外面から突出する複数の放熱リブ26から構成されている。放熱リブ26は、前後方向に沿って延びている。したがって、車両の走行中は、放熱リブ26の側面に沿って空気が流動し、放熱リブ26の熱が奪われるようになっている。
【0022】
また、プロテクタ20の底面及び右側面との対向する領域には、車体Bの床下に固定された空力カバーAが配置されている。空力カバーAは、第2貯留部14の底面及び右側面に対して比較的接近して配置されているが、空力カバーAと第2貯留部14との間に配置されているのは断熱部材18とプロテクタ20だけなので、プロテクタ20と空力カバーAが干渉する虞はない。
【0023】
本実施例1の燃料タンク10は、燃料Fを貯留するタンク本体11と、タンク本体11の外面を覆う断熱部材18と、耐火性を有する材料からなり、断熱部材18の外面を覆う状態でタンク本体11に取り付けられたプロテクタ20とを備えている。この構成によれば、排気管Eが高温になっても、耐火性を有するプロテクタ20は熱変形する虞がない。これにより、プロテクタ20の機能の信頼性が保たれるので、断熱部材18はタンク本体11に取り付けた状態に確実に保持されるとともに、排気管Eから断熱部材18への熱輻射が確実に防止される。
【0024】
また、プロテクタ20の内面には、断熱部材18の外面との間に通気室24を形成する凹部23が形成されている。プロテクタ20の内面と断熱部材18の外面との間に通気室24が介在することにより、プロテクタ20が高温になっても、通気室24内を流動する空気により、プロテクタ20が冷却される。また、プロテクタ20の内面から断熱部材18の外面への熱伝達が抑制される。しかも、プロテクタ20の内面に凹部23を形成したことで、プロテクタ20の内面と断熱部材18の外面との接触面積が小さくなっている。このように、通気室24の存在と接触面積を小さくすることにより熱抵抗が大きくなっているので、プロテクタ20が高温になっても、プロテクタ20から断熱部材18への熱伝達が効果的に抑制される。
【0025】
また、プロテクタ20の外面にはヒートシンク25が形成されているので、排気管Eからの輻射熱がプロテクタ20に伝わっても、プロテクタ20に伝わった熱はヒートシンク25から大気中へ放出される。これにより、プロテクタ20の温度上昇を抑制し、ひいては、プロテクタ20から断熱部材18への熱伝達を抑制することができる。
【0026】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例では、プロテクタの内面に通気室を形成するための凹部を形成したが、プロテクタは凹部を有しない形態であってもよい。
(2)上記実施例では、プロテクタの外面にヒートシンクを形成したが、プロテクタは、ヒートシンクを有しない形態であってもよい。
(3)上記実施例では、プロテクタがタンクバンドを介してタンク本体に取り付けられているが、プロテクタは、タンクバンドを介さずにタンク本体に直接取り付けられていてもよい。
(4)上記実施例では、タンク本体が2つの貯留部に区画された鞍型の燃料タンクについて説明したが、本発明は鞍型以外の燃料タンクにも適用できる。
【符号の説明】
【0027】
10…燃料タンク
11…タンク本体
18…断熱部材
20…プロテクタ
23…凹部
24…通気室
25…ヒートシンク
F…燃料
図1
図2