(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-17
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】段差防止装置
(51)【国際特許分類】
E01D 19/04 20060101AFI20220106BHJP
【FI】
E01D19/04 G
E01D19/04 Z
(21)【出願番号】P 2018023672
(22)【出願日】2018-02-14
【審査請求日】2020-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】505398963
【氏名又は名称】西日本高速道路株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】506045118
【氏名又は名称】NEXCO西日本コンサルタンツ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】503410557
【氏名又は名称】コスモシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095359
【氏名又は名称】須田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100143834
【氏名又は名称】楠 修二
(73)【特許権者】
【識別番号】595089972
【氏名又は名称】株式会社富士技建
(74)【代理人】
【識別番号】100095359
【氏名又は名称】須田 篤
(72)【発明者】
【氏名】芦塚 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】前田 良刀
(72)【発明者】
【氏名】秋田谷 米男
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-021817(JP,A)
【文献】特開2001-262515(JP,A)
【文献】登録実用新案第3176205(JP,U)
【文献】実開昭62-146793(JP,U)
【文献】実開昭52-163468(JP,U)
【文献】特開2004-225386(JP,A)
【文献】特開2016-103521(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋脚の上部で支承部により支持された橋桁が前記支承部から外れたとき前記橋桁を支持するための段差防止装置であって、
収容部を内部に有し、前記収容部に充填材を投入するための開口を上部に有し、前記橋脚の上部に固定可能な本体と、
前記開口を塞ぐ蓋部とを、
有することを特徴とする段差防止装置。
【請求項2】
前記本体は直方体状であって、正面および背面の周囲にそれぞれ突出する上縁部、下縁部および側縁部を有し、前記上縁部に貫通する蓋部取付孔を有し、前記下縁部に貫通する橋脚取付孔を有し、前記側縁部に貫通する側部取付孔を有し、前記蓋部は前記開口を塞いだとき前記蓋部取付孔と連通するボルト取付孔を有することを、
特徴とする請求項1記載の段差防止装置。
【請求項3】
前記本体と前記蓋部との間に高さ調整板を有し、前記高さ調整板は前記蓋部取付孔および前記ボルト取付孔と連通する貫通孔を有することを、
特徴とする請求項2記載の段差防止装置。
【請求項4】
前記正面または前記背面に前記収容部と連通する充填材取出口と、前記充填材取出口を塞ぐ閉じ板とを有することを、特徴とする請求項2または3記載の段差防止装置。
【請求項5】
前記本体の下部に弾性の緩衝板を有し、前記蓋
部は弾性板から成ることを、特徴とする請求項1、2、3または4記載の段差防止装置。
【請求項6】
前記本体はFRP、非鉄金属またはエンジニアリングプラスチックから成ることを、特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の段差防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋脚の上部で支承部により支持された橋桁が支承部から外れたとき橋桁を支持するための段差防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
橋桁は橋脚の上部で支承部により支持されているが、地震などによって橋桁が支承部から外れて落ち、橋桁上の道路に段差を生じた場合、車両の通行ができなくなるおそれがある。従来、これを防ぐため、橋脚上に段差防止材が固定された橋梁の支持構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の段差防止材は、橋桁を支持する強度を持たせるため、鋼鉄製であることから、搬送と設置に重機を必要とし、設置するのにコストがかさむとともに作業時間がかかるという課題があった。
【0005】
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、設置コストの低減と作業時間の短縮を図ることが可能な段差防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る段差防止装置は、橋脚の上部で支承部により支持された橋桁が前記支承部から外れたとき前記橋桁を支持するための段差防止装置であって、収容部を内部に有し、前記収容部に充填材を投入するための開口を上部に有し、前記橋脚の上部に固定可能な本体と、前記開口を塞ぐ蓋部とを、有することを特徴とする。
【0007】
本発明に係る段差防止装置は、橋脚の上部に本体を固定し、収容部に開口から充填材を投入して使用される。収容部を充填材で満たした後、蓋部で開口を塞ぐ。収容部の充填材により圧縮強度が高められるので、橋桁を支持する強度をもたせることができる。本発明に係る段差防止装置は、収容部に充填材を投入しない状態では、収容部が空洞で軽量のため、搬送および設置が容易で、設置コストの低減と作業時間の短縮を図ることができる。
なお、充填材としては、例えば、砂等の粉体または粒体、水・油等の液体、ウレタンフォーム等の発泡体などが挙げられる。充填材は、温度や圧力による状態変化または化学反応で液体化できる固体であってもよい。
【0008】
本発明に係る段差防止装置において、前記本体は直方体状であって、正面および背面の周囲にそれぞれ突出する上縁部、下縁部および側縁部を有し、前記上縁部に貫通する蓋部取付孔を有し、前記下縁部に貫通する橋脚取付孔を有し、前記側縁部に貫通する側部取付孔を有し、前記蓋部は前記開口を塞いだとき前記蓋部取付孔と連通するボルト取付孔を有することが好ましい。
【0009】
この場合、本体の正面および背面から橋脚取付孔にボルトを挿入して本体を橋脚に固定することができる。また。蓋部のボルト取付孔および本体の蓋部取付孔にボルトを挿入して、本体に蓋部を取り付けることができる。また、側部取付孔にボルトを挿入して、複数の段差防止装置を側部で連結することができる。
【0010】
本発明に係る段差防止装置において、前記本体と前記蓋部との間に高さ調整板を有し、前記高さ調整板は前記蓋部取付孔および前記ボルト取付孔と連通する貫通孔を有することが好ましい。
この場合、必要に応じて、本体と蓋部との間に1枚または複数枚の高さ調整板を挟んで、橋桁を支持する高さを調整することができる。
【0011】
本発明に係る段差防止装置は、前記正面または前記背面に前記収容部と連通する充填材取出口と、前記充填材取出口を塞ぐ閉じ板とを有することが好ましい。
この場合、撤去するとき、閉じ板を開いて充填材取出口から収容部の充填材を取り出し、撤去および搬送を容易にすることができる。
【0012】
本発明に係る段差防止装置は、前記本体の下部に弾性の緩衝板を有し、前記蓋部は弾性板から成ることが好ましい。
この場合。橋桁を支持するとき、橋桁が落下する衝撃を弾性の緩衝板および弾性板の蓋部で吸収することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、設置コストの低減と作業時間の短縮を図ることが可能な段差防止装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の形態の段差防止装置を示す分解斜視図である。
【
図2】
図1の段差防止装置を複数配置した状態を示す斜視図である。
【
図3】
図1の段差防止装置を橋脚上に設置した状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づき、本発明の実施の形態について説明する。
図1~
図3は、本発明の実施の形態の段差防止装置を示している。
段差防止装置1は、橋脚2の上部で支承部により支持された橋桁3が支承部から外れたとき橋桁3を支持するために使用される。
段差防止装置1は、本体10と蓋部20と緩衝板30と高さ調整板40とを有している。
【0016】
図1に示すように、本体10は、直方体状であって、空洞の収容部12を内部に有し、収容部12に充填材を投入するための開口13を上部に有している。なお、本体10は、直方体状のほか、箱状、円柱状、多角柱状、多面体状、その他いかなる形状であってもよい。充填材としては、砂等の粉体または粒体、水・油等の液体、ウレタンフォーム等の発泡体などを用いることができる。収容部12は、開口13から底部に伸びる仕切り14により4つに分かれている。本体10は、FRP、アルミニウム等の軽量非鉄金属または高強度のエンジニアリングプラスチックから成る。
【0017】
本体10は、正面および背面の周囲にそれぞれ突出する上縁部15a、下縁部15bおよび側縁部15cを有している。上縁部15aおよび下縁部15bの中央には、突出するリブ15dが結合している。本体10は、正面および背面の各上縁部15aに貫通する1対の蓋部取付孔16aを有し、各下縁部15bに貫通する1対の橋脚取付孔16bを有し、各側縁部15cに貫通する3つの側部取付孔16cを有している。橋脚取付孔16bにボルト17を挿入させることにより、橋脚2の上部に本体10を固定可能である。ボルト17は、高耐食メッキを施したボルトまたはステンレス等の高耐食性素材のボルトから成る。本体10は、正面に収容部12と連通する充填材取出口と、充填材取出口を塞ぐ閉じ板18とを有している。
【0018】
蓋部20は、開口13を塞ぐ四角形状の弾性板から成り、本体10の上面とほぼ同じ大きさを有している。蓋部20は、ゴム製である。蓋部20は、開口13を塞いだとき蓋部取付孔16aと連通するボルト取付孔21を有する。蓋部20の上面には、水はけ用の溝22が形成されている。
緩衝板30は、本体10の底面とほぼ同じ大きさの四角形状の弾性板から成り、本体10の下部に設けられている。緩衝板30は、橋脚取付孔16bと連通するボルト取付孔31を有する。緩衝板30の下面には、水はけ用の溝32が形成されている。
【0019】
高さ調整板40は、本体10の上面とほぼ同じ大きさを有し、必要に応じて本体10と蓋部20との間に設けられる。高さ調整板40は、蓋部取付孔16aおよびボルト取付孔21と連通する貫通孔41を有している。高さ調整板40は、FRP、アルミニウム等の軽量非鉄金属または高強度のエンジニアリングプラスチックから成る。
【0020】
段差防止装置1を設置する際、本体10の橋脚取付孔16bおよび緩衝板30のボルト取付孔31にボルト17を挿入させて、橋脚2の上部に緩衝板30および本体10を固定する。本体10の正面および背面から橋脚取付孔16bにボルト17を挿入して本体10を橋脚2に固定することができるので、本体10取り付けやすくなっている。また、側部取付孔16cにボルト19を挿入して、複数の段差防止装置1を側部で連結することができる。本体10を固定したならば、収容部12に開口13から充填材を投入して使用される。収容部12の充填材により圧縮強度が高められるので、橋桁3を支持する強度をもたせることができる。
【0021】
収容部12を充填材で満たした後、必要に応じて、本体10と蓋部20との間に1枚または複数枚の高さ調整板40を挟んで、橋桁3を支持する高さを調整する。次に、蓋部20で開口13を塞ぎ、ボルト取付孔21、貫通孔41および蓋部取付孔16aにボルト23を挿入してナットを螺合し、蓋部20および高さ調整板40を本体10に固定する。
段差防止装置1は、橋桁3の下方に設置され、地震などで橋桁3が落下したとき、橋桁3を支えるようになっている。段差防止装置1は、橋桁3を支持するとき、橋桁3が落下する衝撃を弾性の緩衝板30および弾性板の蓋部20で吸収することができる。
【0022】
段差防止装置1は、撤去するとき、閉じ板18を開いて充填材取出口から収容部12の充填材を取り出し、撤去および搬送を容易にすることができる。段差防止装置1は、収容部12に充填材を投入しない状態では、収容部12が空洞で軽量のため、搬送および設置が容易で、設置コストの低減と作業時間の短縮を図ることができる。また、本体10はFRP、アルミニウム等の軽量非鉄金属または高強度のエンジニアリングプラスチックから成るため、強度が高く、軽量化が図られている。
【符号の説明】
【0023】
1 段差防止装置
2 橋脚
3 橋桁
10 本体
12 収容部
13 開口
16a 蓋部取付孔
16b 橋脚取付孔
16c 側部取付孔
18 閉じ板
20 蓋部
21 ボルト取付孔
22 溝
30 緩衝板
31 ボルト取付孔
32 溝
40 高さ調整板
41 貫通孔