(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-17
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】固定用部材及びそれが用いられている簡易構造物
(51)【国際特許分類】
F16B 37/04 20060101AFI20220106BHJP
E04B 1/343 20060101ALI20220106BHJP
E04H 1/12 20060101ALI20220106BHJP
E04B 1/38 20060101ALI20220106BHJP
E04B 1/58 20060101ALI20220106BHJP
F16B 5/02 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
F16B37/04 K
E04B1/343 V
E04H1/12 306B
E04B1/38 400Z
E04B1/58 603
F16B5/02 U
(21)【出願番号】P 2018031403
(22)【出願日】2018-02-24
【審査請求日】2020-09-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000002462
【氏名又は名称】積水樹脂株式会社
(72)【発明者】
【氏名】上田 樹
【審査官】児玉 由紀
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-055508(JP,U)
【文献】実開昭51-113559(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2013/0156526(US,A1)
【文献】実開平07-029315(JP,U)
【文献】特開2012-207369(JP,A)
【文献】実開昭51-029160(JP,U)
【文献】実開平01-015816(JP,U)
【文献】実開昭63-051914(JP,U)
【文献】米国特許第02495037(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/00- 1/61
7/00- 7/24
E04H 1/00- 1/14
F16B 5/00- 5/12
23/00-43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蟻溝部を備えた被固定部材を支持部材に固定する固定具が固定具保持部材に保持されて形成されている固定用部材であって、
底板部から縦壁部が2個設けられ、この2個の縦壁部を両側から押さえると縦壁部が相互に近付き、放すと元に戻り前記蟻溝部の開口部を形成する2個の突部にそれぞれの前記縦壁部が当接して、前記固定具が蟻溝部の所望の位置に保持される様になされている固定具保持部材に、前記固定具が保持されており、
2個の前記縦壁部から左右方向に水平板部が互いに反対方向に突設され、2個の前記縦壁部を両側から押さえる際に用いられる把持部が前記各水平板部の端部が下方に折り曲げられて形成されていると共に、該各把持部が保持された前記固定具よりも左右方向の外側に配置されるように形成されている固定用部材。
【請求項2】
前記固定具を保持する固定具保持部材の保持部が、固定具保持部材の2個の縦壁部が切欠かれて形成されている
請求項1に記載の固定用部材。
【請求項3】
2個の前記縦壁部を両側から押さえる際に用いられる把持部が前記水平板部に設けられている
請求項1または2に記載の固定用部材。
【請求項4】
請求項1~3に記載の固定用部材が前記蟻溝部に挿入され、前記被固定部材が支持部材に固定されている簡易構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駅前広場、ショッピングセンター、公園などに設置された簡易屋根構造物などの屋根を、その屋根を支持する支持材に取付ける際に用いたり、ベンチ材の座部を、その座部を支持する支持材に取付ける際に用いられる固定用部材、及びそれが用いられている簡易構造物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、駅前広場、ショッピングセンター、公園などに設置されたシェルターやベンチ等の簡易構造物において、シェルターの梁材、屋根材やベンチの座部をそれらの支持部材に固定する場合、本出願人が出願した特許文献1に開示されている様に、桁梁2の下面には長手方向に受け金具用レール溝21が2個形成され、桁梁2に前記受け金具5を固定するためのボルトの頭部を前記受け金具用レール溝21に挿入して摺動自在となすことにより、支柱1の設置場所の変更にも対応可能になされている。また、桁梁2の内側面22には長手方向に小梁用レール溝23が1個形成され、桁梁2に前記小梁3を固定するためのボルトの頭を前記小梁用レール溝23に挿入して摺動自在となすことにより、小梁3の位置変更にも対応可能となされている。更に、桁梁2の桁梁外側面24にはその上部から突設され下方に折曲された係止部25の先端が内方に折曲され、且つ桁梁外側面24下部から突設され上方に折曲された受け部26が形成されている。
【0003】
また、本出願人が出願した特許文献2に開示されている様に、前記座部本体11は、断面視において横長の長方形の前記芯材111の四隅が角を落とされアール状になされ、前記中空部112が長手方向に3個並設されて形成されるとともに、その下面には長手方向に連続して蟻溝状の取付溝13が設けられている。つまり、前記取付溝13は、開口部131の幅よりその奥側に設けられている内室部132の幅のほうが広くなされており、前記座部用金具12に前記座部本体11を固定する座部本体用固定ボルトB1のボルト頭の幅が前記開口部131の幅より広く、かつ前記内室部132の幅より狭くなされているので、前記座部本体用固定ボルトB1が前記開口部131から抜け出すことがなく、かつ前記取付溝13内をスライド自在になされている。これにより、前記座部本体用固定ボルトB1を前記取付溝13内をスライドさせ所望の位置に配置して、前記座部本体11と座部用金具12とを固定し、その座部固定用金具12を前記脚部2に固定することにより、前記座部1を前記脚部2に固定することができるので、既設のベンチを座部のみ取り替えて補修する際などの場合、脚部間の距離が異なることがあっても、その都度特別な部材を用いることなく、同一の部材を用いてベンチを形成することができるようになされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-38467
【文献】特開2016-67450
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記簡易屋根は、前記桁梁2に設けられている金具用レール溝21に挿入されたボルトを所望の位置にスライドさせることにより、支柱1の設置場所の変更にも対応可能になされており、また、上記ベンチは、前記座部本体11に設けられている取付溝13に挿入された座部本体用固定ボルトB1をスライドさせ所望の位置に配置して、前記座部本体11と座部用金具12とを固定し、その座部固定用金具12を前記脚部2に固定できるようになされているものの、ボルトや座部本体用固定ボルトB1である固定具に作業者の手や被固定部材等が接触すると、金具用レール溝21や取付溝13内で滑って移動し、再度、所望の位置に戻す作業を行わなければならず手間がかかるものであった。加えて、連続して設置される場合には、1個の固定具のみならず、複数個の固定具を全てやらなければならない状況も想定され、さらに効率良く作業できるものが要望されていた。
【0006】
本発明は、前記の如き問題点を解消し、被固定部材を固定する固定具が溝内の所望の位置に移動可能であり、かつ一度その位置に配置した後、そこからずれにくくすることができる固定用部材及びそれが用いられている簡易構造物を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は次のような構成としている。
すなわち、本発明に係る固定用部材は、蟻溝部を備えた被固定部材を支持部材に固定する固定具が固定具保持部材に保持されて形成されている固定用部材であって、底板部から縦壁部が2個設けられ、この2個の縦壁部を両側から押さえると縦壁部が相互に近付き、放すと元に戻り前記蟻溝部の開口部を形成する2個の突部にそれぞれの前記縦壁部が当接して、前記固定具が蟻溝部の所望の位置に保持される様になされている固定具保持部材に、前記固定具が保持されており、2個の前記縦壁部から左右方向に水平板部が互いに反対方向に突設され、2個の前記縦壁部を両側から押さえる際に用いられる把持部が前記各水平板部の端部が下方に折り曲げられて形成されていると共に、該各把持部が保持された前記固定具よりも左右方向の外側に配置されるように形成されていることを特徴とするものである。
【0008】
また本発明に係る固定用部材は、前記固定具を保持する固定具保持部材の保持部を、固定具保持部材の2個の縦壁部を切欠いて形成してもよい。
【0009】
本発明に係る固定用部材は、2個の前記縦壁部から左右方向に水平板部を互いに反対方向に突設している。
【0010】
また本発明に係る固定用部材は、2個の前記縦壁部を両側から押さえる際に用いられる把持部を前記水平板部に設けるようにしてもよい。
【0011】
また本発明に係る簡易構造物は、上記固定用部材が前記蟻溝部に挿入され、前記被固定部材が支持部材に固定されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る固定用部材によれば、底板部から縦壁部が2個設けられ、この2個の縦壁部を両側から押さえると縦壁部が相互に近付き、放すと元に戻り前記蟻溝部の開口部を形成する2個の突部にそれぞれの前記縦壁部が当接して、前記固定具が蟻溝部の所望の位置に保持される様になされている固定具保持部材に、前記固定具が保持されているので、被固定部材を固定する固定具が挿入される蟻溝内の所望の位置に移動可能であり、かつ一度その位置に配置した後、その位置からずれにくくすることができる。
【0013】
また本発明に係る固定用部材によれば、前記固定具を保持する固定具保持部材の保持部を、固定具保持部材の2個の縦壁部を切欠いて形成しているので、固定用部材の構造を複雑なものにすることなく、固定具を保持する固定用部材をコストも安く製造することができる。
【0014】
また本発明に係る固定用部材によれば、2個の前記縦壁部から左右方向に水平板部を互いに反対方向に突設するようにしているので、前記蟻溝部の突部に当接する様にしている2個の前記縦壁部と前記突部との摩擦力に加えて、この水平板部が前記蟻溝部の突部に引っ掛り、固定具を保持した固定用部材を蟻溝部の所望の位置に確実に配置できる。
【0015】
また本発明に係る固定用部材によれば、2個の前記縦壁部を両側から押さえる際に用いられる把持部を前記水平板部に設けるようにしているので、前記蟻溝部の2個の突部と2個の前記縦壁とが離間する様に、つまり前記突部間の寸法より縦壁部間の寸法が小さくなる様に、縦壁部を両側から押さえてそれらを近付け、固定用部材を蟻溝の所望の位置に移動させるために、2個の縦壁部を両側から押さえる際、前記把持部を押えることで、押え付ける作業をよりやりやすくすることができ、前記固定用部材を蟻溝部の所望の位置に効率良く移動させることができる。
【0016】
また本発明に係る簡易構造物によれば、上記固定用部材が前記蟻溝部に挿入され、前記被固定部材が支持部材に固定されているので、被固定部材を固定する固定用部材が蟻溝部内の所望の位置に移動可能であり、かつ一度その位置に配置した後、その位置からずれにくい固定用部材を用いて、効率良く組み上げることができる簡易構造物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係る固定用部材を構成する固定具保持部材の一つの実施形態を示す斜視図である。
【
図4】
図1に示す固定具保持部材の左側面図である。
【
図5】
図1に示す固定具保持部材の右側面図である。
【
図9】
図1に示す固定具保持部材に固定具を保持させた固定用部材の一つの実施形態を示す斜視図である。
【
図17】
図9に示す固定用部材が用いられた簡易構造物の1つの実施形態を示す斜視図である。
【
図18】
図9に示す固定用部材を蟻溝部に挿入し、蟻溝部内を移動させる状態を説明するための説明図(斜視図)である。
【
図20】(a)は、
図9に示す固定用部材を蟻溝部内を移動させるために把持部が押さえられ縦壁部と蟻溝部の突部とが離間した状態を示す正面図であり、(b)は、
図9に示す固定用部材を蟻溝部内の所望の位置に保持した状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明を実施するための形態について図面を参照し、具体的に説明する。なお、本実施形態はあくまでも本発明を理解するための一例を示したに過ぎず、各部の形状、構造、材質等に関し、本実施形態以外のバリエーションが、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で許容されていることは言うまでもない。また、各図面に記載の前(正面)後(背面)左右上下の方向を明細書でも表記している。
【0019】
図面において、1は本願発明に係る固定用部材Pを構成する固定具保持部材であり、底板部11の端部から縦壁部12が2個立設されて成り、この2個の縦壁部12を両側から押さえると縦壁部12が相互に近付き、放すと元に戻るようになされている。そして、本願発明に係る固定用部材Pは、蟻溝部2を備えた被固定部材を支持部材に固定する固定具が前記固定具保持部材1に保持されて形成されている。詳細には、前記被固定部材の蟻溝部2の開口部21を形成する2個の突部22にそれぞれの前記縦壁部12が当接して、前記固定具が蟻溝部2の所望の位置に保持される様になされている固定具保持部材1に、前記固定具が保持されて固定用部材Pが形成されている。
【0020】
なお、本明細書及び図面に示す本願発明の1つの実施形態においては、前記被固定部材が屋根材Yであり、支持部材がこの屋根材Yを支持する支柱10であり、前記固定具保持部材1に保持される固定具は六角ナットN及び平ワッシャーWであり、
図17に示すように、前記固定用部材1により屋根材Yが支柱10に固定されて、簡易構造物であるシェルターSが形成されているが、これに限定されるものではなく、例えば、被固定部材として座部、支持部材として座部支持部材が用いられ、これらを前記固定用部材1により固定し、簡易構造物としてベンチを形成するようにしてもよいし、また本実施形態に示す前記固定具である六角ナットN及び平ワッシャーWに替えて、固定具として六角ボルトを用いる様にしてもよい。
【0021】
前記固定具保持部材1においては、固定具である六角ナットN及び平ワッシャーWを保持する保持部13が、前記固定具保持部材の2個の縦壁部12が縦方向に切欠かれることにより形成されると共に、その切欠が底板部11まで連続して形成されている。そして、2個の前記縦壁部12から左右方向に水平板部14が互いに反対方向に突設されている。さらに、2個の前記縦壁部12を両側から押さえる際に用いられる把持部15が前記水平板部14の端部が下方に折り曲げられることにより形成されている。また、前記保持部13は、縦壁部12の上部側に、前記六角ナットNを収容し保持する六角ナット保持部131より切欠幅が広い部分である平ワッシャー保持部132が形成されており、固定具である前記平ワッシャーWがその部分に収容されるようになされている。
【0022】
前記固定用部材1は、2個の前記把持部15を両側から押さえると2個の前記縦壁部12が近付き、放すと元に戻り前記蟻溝部2の突部22に当接する様に成されていればよく、金属材料、合成樹脂材料などそれを構成する材質は特には問わないが、前記簡易構造物の1つの実施形態である
図17に示すシェルターSや、上述のベンチと言った屋外に用いられる簡易構造物の場合には、その耐久性及び復元性を考慮して、金属材料であり且つ弾性を備えたものである薄板状のバネ鋼で形成するのが好ましい。
【0023】
前記支柱10は、その上部に梁材Hが前方に突設されている。そして、複数個(本実施形態においては4個)の桁材Kが前記梁材Hに架け渡され、それらの桁材Kに複数個の屋根材Yが並列されて取付けられている。そして、前記屋根材Yは、その中央上面側に蟻溝部2が長手方向に設けられている。
【0024】
前記蟻溝部2は、長手方向に上方に開口した開口部21を形成する2個の突部22と、この突部22の下側に開口部21の開口幅より広く形成された固定具収容部23を備えており、前記屋根材Yを桁材Kに取付ける際に用いる固定具である六角ナットNと平ワッシャーWとを収容する固定具収容部23とを備えている。そして、本実施形態においては、1個の前記屋根材Yあたり、前記固定具収容部23に4個の六角ナットNと平ワッシャーWとを保持した4個の固定用部材1を蟻溝部2に挿入し、それらをボルトで固定して、前記屋根材Yを桁材Kに取付け、その桁材Kが梁材Hに取付けて簡易構造物であるシェルターSが形成されている。
【0025】
次に
図18、19、20を用いて、屋根材Yの蟻溝部2に固定用部材1挿入し、蟻溝部2内を移動させる状態を説明する。
屋根材Yの蟻溝部2の開口部21の幅より固定用部材1の2個の縦壁部12の幅を小さくするために、六角ナットNと平ワッシャーWとが保持された固定用部材1の把持部15を両側から押え図面において矢印で示す方向に力を加え、その状態を保持したままで固定用部材Pを蟻溝部2に挿入し、固定用部材Pを蟻溝部の所望の位置まで移動させ、その把持部15を押さえている前記固定用部材1に加えている押圧力を開放すると、2個の前記縦壁部12が元の位置まで戻る途中で前記蟻溝部の突部22に当接して、固定用部材1が蟻溝部2に保持される。
【符号の説明】
【0026】
1 固定具保持部材
11 底板部
12 縦壁部
13 保持部
131 六角ナット保持部
132 平ワッシャー保持部
14 水平板部
15 把持部
2 蟻溝部
21 開口部
22 突部
23 固定具収容部
P 固定具用部材
N 六角ナット
W 平ワッシャー
Y 屋根材
10 支柱
S シェルター
H 梁材
K 桁材