(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-17
(45)【発行日】2022-01-14
(54)【発明の名称】スクラバー、およびスクラバーシステム
(51)【国際特許分類】
F01N 3/04 20060101AFI20220106BHJP
B01D 47/10 20060101ALI20220106BHJP
B01D 47/06 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
F01N3/04 A
B01D47/10 Z
B01D47/06 Z
(21)【出願番号】P 2018046489
(22)【出願日】2018-03-14
【審査請求日】2020-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000176752
【氏名又は名称】三菱化工機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】303047034
【氏名又は名称】株式会社ジャパンエンジンコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐野 裕二
(72)【発明者】
【氏名】桶谷 尚史
(72)【発明者】
【氏名】今井 勇治
【審査官】齊藤 彬
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-286826(JP,A)
【文献】特開平07-178315(JP,A)
【文献】特開2014-217809(JP,A)
【文献】特開2014-163364(JP,A)
【文献】特開2012-237242(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0108989(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/04
B01D 47/10
B01D 47/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンから排出された排気ガス中の固形成分をスクラバー水に吸収させるスクラバーであって、
上記スクラバーにおいて循環する循環スクラバー水を上記スクラバーに流入させる第1の流入部と、分離装置によって上記スクラバー内のスクラバー水から固形成分が除去された浄化後スクラバー水を上記スクラバーに流入させる第2の流入部とが、別個に設けられ
、
上記第1の流入部、および第2の流入部は、それぞれ、循環スクラバー水または浄化後スクラバー水をスクラバー内に噴射するスプレーノズルであることを特徴とするスクラバー。
【請求項2】
請求項1のスクラバーであって、
さらに、スクラバー内に貯留されるスクラバー水の液面に浄化後スクラバー水を噴射するスプレーノズルを備えたことを特徴とするスクラバー。
【請求項3】
請求項1から
請求項2のうち何れか1項のスクラバーであって、
上記第1の流入部、および第2の流入部の下方に充填材が設けられていることを特徴とするスクラバー。
【請求項4】
請求項1から
請求項2のうち何れか1項のスクラバーであって、
ベンチュリー型であることを特徴とするスクラバー。
【請求項5】
請求項1から
請求項4のうち何れか1項のスクラバーと、
上記スクラバー水に含まれる上記固形成分を除去する分離装置と、
を備えたことを特徴とするスクラバーシステム。
【請求項6】
請求項5のスクラバーシステムであって、
上記分離装置は、遠心分離機、フィルタろ過装置、およびノズルセパレータの少なくとも1つを含むことを特徴とするスクラバーシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶用ディーゼルエンジンの排気ガス中に含まれるSOx,NOx、および粒子状物質を取り除くなどのためのスクラバー、およびスクラバーシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
船舶用ディーゼルエンジン等では、排気ガスに含まれる未燃焼カーボン等の粒子状物質(固形成分)を除去するために、スクラバーが用いられる。このスクラバーでは、除塵用の水であるスクラバー水をスクラバー内でスプレーノズルから噴霧して、上記固形成分を吸収させるようになっている。スクラバー水は、循環配管およびスプレーノズルを介して循環される。循環配管を流れるスクラバー水の一部は、分岐して遠心分離機に送られ、固形成分が分離された後、循環配管に戻されて、分岐前のスクラバー水と合流されてスプレーノズルから噴霧される(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のようなスクラバーで循環するスクラバー水に対して遠心分離機で固形成分を除去する場合、その除去効率が低下しがちであった。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑み、遠心分離機における固形成分の除去効率低下を抑制することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明は、
エンジンから排出された排気ガス中の固形成分をスクラバー水に吸収させるスクラバーであって、
上記スクラバーにおいて循環する循環スクラバー水を上記スクラバーに流入させる第1の流入部と、分離装置によって上記スクラバー内のスクラバー水から固形成分が除去された浄化後スクラバー水を上記スクラバーに流入させる第2の流入部とが、別個に設けられていることを特徴とする。
【0007】
これにより、固形成分濃度の低いスクラバー水がスクラバー内に噴射され、固形成分が捕捉されやすくなったり凝集しやすくなったりして、固形成分の除去効率が向上する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、遠心分離機における固形成分の除去効率低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態1のスクラバーシステムの概略構成を示す説明図である。
【
図2】実施形態2のスクラバーシステムの概略構成を示す説明図である。
【
図3】実施形態3のスクラバーシステムの概略構成を示す説明図である。
【
図4】実施形態4のスクラバーシステムの概略構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態として、ディーゼルエンジンの排気ガスを除塵するスクラバーシステムの例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の各実施形態や変形例において、他の実施形態等と同一または対応する構成要素については、同一または対応する符号を付して適宜説明を省略する。
【0011】
(実施形態1)
実施形態1のスクラバーシステム100は、
図1に示すように、ディーゼルエンジン等の排気ガスに含まれる未燃焼カーボン等の粒子状物質(固形成分)をスクラバー水によって捕捉するスクラバー装置110と、上記スクラバー水に捕捉された固形成分を除去する遠心分離機120(分離装置)とを備えている。
【0012】
スクラバー装置110は、排気ガス流入管111aを介してスクラバー111に送られる排気ガス中の固形成分をスクラバー111内でスクラバー水に吸収させて除塵し、除塵後の排気ガスを図示しない排気管から排出するようになっている。スクラバー111内に貯留される貯留スクラバー水は、ポンプ112、および循環配管113を介して循環され、第1スプレーノズル114(第1の流入部)を介してスクラバー111内に噴射(噴霧)されるようになっている。
【0013】
また、上記循環配管113を流れるスクラバー水の一部は、分岐管115を介して遠心分離機120に送られる。遠心分離機120では、固形成分が遠心力により分離され、スラッジとして排出されるようになっている。浄化後のスクラバー水は、一部が環境系外に排出されるとともに、他の一部は、スクラバー111に戻され、第2スプレーノズル116(第2の流入部)を介してスクラバー111内に噴射されるようになっている。なお、浄化後のスクラバー水は環境系外に排出されず全てスクラバー111内に噴射されるようにしてもよい。
【0014】
上記スプレーノズル114・116の具体的な配置は特に限定されず、例えば、それぞれ複数のノズルユニットが、市松模様状に縦横に交互に配置されたり、同心円状で直径方向に交互に配置されたりしてもよい。
【0015】
スクラバー111の内部における、スプレーノズル114・116の下方には、充填材111bが設けられている。スプレーノズル114・116から噴射されたスクラバー水は、充填材111bを伝って徐々に下方に移動した後、落下してスクラバー111の底部に溜まるようになっている。
【0016】
上記のように構成されたスクラバーシステム100では、スクラバー111内でスプレーノズル114・116から噴射されたスクラバー水の水滴や充填材111bを伝うスクラバー水が排気ガスに接触することにより、排気ガス中の固形成分を効率よく捕捉するようになっている。特に、循環配管113を介して循環するスクラバー水が噴射される第1スプレーノズル114と、遠心分離機120によって固形成分が除去された浄化後のスクラバー水が噴射される第2スプレーノズル116とが別個に設けられていることによって、固形成分濃度の低いスクラバー水と、相対的に固形成分濃度の高いスクラバー水とが噴射されることになる。この場合、遠心分離機120による浄化後のスクラバー水は、固形成分濃度は低いが、遠心分離機120内で作用する剪断力によって微細化された固形成分が含まれ得る。そのような微細化された固形成分は、遠心分離機120による分離効率を低下させる要因となる。ところが、そのようなスクラバー水が、循環配管113を介して循環するスクラバー水と混合されずにスクラバー111中に噴射されると、混合されて噴射される場合よりも、微細化された固形成分が凝集しやすくなると考えられる。それゆえ、遠心分離機120による固形成分の除去効率低下を抑制することが容易になる。また、固形成分濃度の低いスクラバー水が噴射されることによって、スクラバー111内でのスカムの発生や成長が抑制されやすくなり、スクラバーシステム100の動作を安定させることが容易にできる。
【0017】
(実施形態2)
実施形態2のスクラバーシステム100は、
図2に示すように、実施形態1の構成に加えて、さらに、ポンプ131、フィルタろ過装置132、および第3スプレーノズル117を備えている。
【0018】
上記フィルタろ過装置132は、スクラバー水中の固形成分をフィルタでこし取ることによって除去し、スラッジと浄化後のスクラバー水とを排出するようになっている。
【0019】
上記第3スプレーノズル117は、スプレーノズル114・116よりも下方、すなわちスクラバー111内に貯留される貯留スクラバー水の液面により近いところに設けられる。
【0020】
これによって、フィルタろ過装置132によって固形成分が除去された浄化後のスクラバー水が、貯留スクラバー水の液面に直接噴射されて、スカムが消泡されやすくなる。それゆえ、スカムの発生や成長がより抑制されやすくなり、スクラバーシステム100の動作を安定させることがより容易にできる。
【0021】
なお、フィルタろ過装置132によって浄化後のスクラバー水も、環境系外に排出されず全て第3スプレーノズル117を介してスクラバー111内に噴射されるようにしてもよい。
【0022】
また、上記のような消泡効果を得るためには、フィルタろ過装置132によって浄化されたスクラバー水に代えて、遠心分離機120によって浄化されたスクラバー水の一部を第3スプレーノズル117から噴射するようにしてもよい。
【0023】
(実施形態3)
実施形態3のスクラバーシステム100は、
図3に示すように、実施形態1の構成に加えて、さらに以下の構成要素を備えている。
【0024】
遠心分離機120によって固形成分が除去された浄化後のスクラバー水をろ過するフィルタろ過装置141が設けられ、さらに固形成分が除去されたスクラバー水が環境系外に排出されるようになっている。
【0025】
また、遠心分離機120によって分離された固形成分、および上記フィルタろ過装置141によってろ過された固形成分を受けるスラッジ受タンク142が設けられている。このスラッジ受タンク142に一旦貯留されたスラッジは、ポンプ143を介してフィルタプレス144に送られ、固形成分がろ過、圧縮されてケーク145として排出されるようになっている。フィルタプレス144でろ過されたスクラバー水は、清浄液受タンク146に溜められた後、適宜、ポンプ147により第3スプレーノズル117から噴射されるようになっている。
【0026】
上記のように、遠心分離機120から排出された浄化後のスクラバー水をさらにろ過するフィルタろ過装置141が設けられることによって、より清浄なスクラバー水を環境系外に排出することができる。
【0027】
また、遠心分離機120やフィルタろ過装置141から排出されたスラッジをフィルタプレス144によりろ過、圧縮してケーク145にすることによって、保管スペースを小さく抑えることが容易になる。
【0028】
(実施形態4)
実施形態4のスクラバーシステム100は、
図4に示すように、実施形態3の構成と比べて、スラッジ受タンク142およびフィルタプレス144に代えて、沈殿槽161とコレクティングタンク162とが一体的に形成された沈殿装置160が設けられている。遠心分離機120やフィルタろ過装置141から排出された固形成分(スラッジ)は、沈殿槽161で濃縮された後、ポンプ163を介して排出されるようになっている。
【0029】
沈殿槽161で固形成分が沈殿した後の上澄みは、コレクティングタンク162に溜められた後、ポンプ164、循環配管113、および第1スプレーノズル114を介して、スクラバー111内に噴射されるようになっている。上記コレクティングタンク162は、また、スクラバー111内で排気ガス中の固形成分を捕捉した後、循環配管118を介して送られたスクラバー水を貯留するためにも用いられるようになっている。この場合には、スクラバー111を小型化することが容易になる。また、沈殿槽161とコレクティングタンク162とを一体化したり、沈殿槽161の上澄みの貯留と、スクラバー111を循環するスクラバー水の貯留とをコレクティングタンク162が兼ねることによっても、スクラバーシステム100全体の小型化を図ることが容易になる。
【0030】
(その他の実施形態)
上記各実施形態では、分離装置として、遠心分離機120やフィルタろ過装置132等が用いられる例を示したが、これに限らず、種々の分離機能を有する装置を適用することができる。具体的には、例えば、遠心分離機、フィルタろ過装置、およびノズルセパレータや、これらの組み合わせなどが用いられてもよい。
【0031】
また、上記各実施形態では、充填材111bが設けられたスクラバー装置110が用いられる例を示したが、種々の形式のスクラバー装置を適用することができ、例えばベンチュリー型スクラバーを適用するなどしてもよい。
【0032】
また、上記各実施形態で説明した構成要素は、論理的に矛盾しない限り、種々組み合わせてもよい。具体的には、例えば、実施形態3で説明したようなスラッジ受タンク142やフィルタプレス144を設ける構成や、実施形態4で説明したような沈殿槽161を設ける構成を、実施形態1等の構成に適用して、より濃縮されたスラッジ等を排出し得るようにしてもよい。
【符号の説明】
【0033】
100 スクラバーシステム
110 スクラバー装置
111 スクラバー
111a 排気ガス流入管
111b 充填材
112 ポンプ
113 循環配管
114 第1スプレーノズル
115 分岐管
116 第2スプレーノズル
117 第3スプレーノズル
118 循環配管
120 遠心分離機
131 ポンプ
132 フィルタろ過装置
141 フィルタろ過装置
142 スラッジ受タンク
143 ポンプ
144 フィルタプレス
145 ケーク
146 清浄液受タンク
147 ポンプ
160 沈殿装置
161 沈殿槽
162 コレクティングタンク
163 ポンプ
164 ポンプ